JP6631787B2 - 真偽判別可能な情報担持体 - Google Patents

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Description

本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、光が入射することで優れた画像のチェンジ効果を生じる、高い真偽判別性を備えた情報担持体に関する。
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのため、複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、観察角度の違いによって画像がチェンジするホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、アルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキ又は塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した一般的な印刷方法で画像のチェンジ効果を実現した偽造防止用印刷物が出現している。
ここで、同じ画像のチェンジ効果であっても、チェンジする画像の数が多いほど一般に偽造抵抗力に優れる。当然のことながら、二つの画像がチェンジする効果を実現するよりも、三つの画像がチェンジする効果を実現するほうが難しいためである。そのため、可視光下で三つの画像のチェンジ効果を有した偽造防止技術も存在する。
本出願人は、一般的で、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、可視光下の観察角度を変化させることによって、全く異なる三つの情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明を出願している(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許第5597874号公報 特許第5142156号公報
特許文献1の技術は、二つの異なる印刷層を重ねて構成する技術であり、拡散反射光下、弱い正反射光下、強い正反射光下の三つの異なる観察条件に応じて三つの画像がチェンジする効果を有する技術である。しかし、強い正反射光下の観察条件に関しては、印刷物を深く傾け、さらに画像を正反射させるという、他に類を見ない観察方法であるため、真偽判別に慣れが必要であるとともに視認性も低いという問題があった。そのため、はじめて観察する観察者は、三つ目の画像の変化に気が付かない場合もあった。
特許文献2の技術は、少なくとも2回のスクリーン印刷で構成する技術であり、拡散反射光下、拡散反射光と正反射光が混在する条件下、正反射光が支配的な条件下の三つの異なる観察条件に応じて、三つの画像がチェンジする効果を有する技術である。特許文献1の技術と異なり、いずれの画像も容易に観察でき、かつ、視認性が高い優れた技術であるが、2回のスクリーン印刷を必要とし、かつ、それぞれのスクリーン画線同士を重なり合わないように隙間なく刷り合わせる必要があった。
スクリーン印刷を1パスで2回行う印刷機は極めて珍しいため、通常、スクリーン印刷機に通して一回スクリーン印刷をした印刷物を、更にもう一度スクリーン印刷機に通して再度刷り合わせを合わせながら二回目のスクリーン印刷を行う必要があった。スクリーン印刷機は、一般的にはオフセット印刷機と比較すると刷り合わせ精度が高くないため、製造が難しく、歩留まりが悪くなるという問題があった。また、インキ中には干渉色の異なる二種類の特殊な機能性材料を配合する必要があり、通常の印刷物よりコスト高となるという問題があった。
また、特許文献2の技術は、二つの盛り上がりのある蒲鉾状画線によって構成する技術であって、拡散反射光下では可視画像が視認され、拡散反射光と正反射光が混在する条件下では盛り上がりのある画線群の画線方向の違いによって構成された第一の潜像画像が出現し、正反射光下では画線の干渉色の異なる第二の潜像画像が出現する。これらの画像のチェンジ効果は、蒲鉾状画像の光学特性に依存する。すなわち、チェンジ効果を得るためには、正反射光下で可視画像を消失させる必要があるため、蒲鉾状画像の反射光量が大きくなければならず、また、第一の潜像画像を出現させるためには、蒲鉾状画線の画線角度の違いから生じる反射光量の差が大きくなければならず、第二の潜像画像を出現させるためには、異なる干渉色の機能性材料を含んで形成された蒲鉾状画線間の色相が大きく異ならなければならない。
蒲鉾状画線に前述のような特別な光学特性を付与するには、蒲鉾状画線を形成するインキに特殊な光学特性を有する機能性材料を混合する必要がある。これらの機能性材料の代表例としては、パール顔料、メタリック顔料、ガラスフレーク、エフェクト顔料等が存在する。また、市販されている色彩変化に富んだ特性を有するインキ、例えば、OVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)、コレステリック液晶インキ等を使用することでも同じ効果を得ることができる。このように光学特性に優れた機能性材料が配合されたインキや光学特性に優れたインキを用いて印刷した画線は、機能性材料やインキ由来の優れた光学特性が発揮される。しかしながら、通常の厚みのない、平坦な印刷画線と異なり、盛り上がりを有する蒲鉾状画線にこのような特殊なインキを用いて優れた光学特性を付与することには、以下のような問題があった。
これらのインキに含まれる機能性材料のうち、パール顔料に代表される機能性材料の多くは、薄くて平らな鱗ペン形状をしている。このような形状をした材料は、全ての材料が同じ向きに揃って並んだ(リーフィングした)場合に光の反射する光量が最も大きくなり、効果が高まる一方で、それぞれの顔料が個別に異なる角度を成してランダムに並んだ場合には、反射光量は極端に小さくなり、効果が著しく低くなる。
通常の印刷物のように、印刷画線に厚みがなく平坦な画線である場合、画線のインキ膜内で顔料の角度を変える自由度がほとんどないため、インキ中の鱗ペン状の機能性材料は、乾燥過程で自然に平坦となり、全ての材料の向きが揃うことから、特段の工夫を施さなくても一定以上の効果を常に得ることができる。しかしながら、盛り上がりのある蒲鉾状画線中では、図9(a)に示すようにインキ樹脂(a)に高さがあり、機能性材料(b)が角度を変えられる自由度が存在することから、機能性材料(b)がランダムに別々の方向に傾いて固定され、蒲鉾状画線から生じる反射光量が平坦な画線と比較して極端に小さくなり、出現する画像の視認性が低くなるという問題があった。
また、拡散反射光と正反射光が混在する条件下で出現する第二の潜像画像は、蒲鉾状画線の画線方向の違いによって構成されているため、第二の潜像画像が可視化されるためには蒲鉾状画線の画線方向由来の反射光が生じる必要がある。そのためには、正反射光下においては蒲鉾状画線の画線表面で反射された表面反射光(c)が支配的である必要がある。
しかしながら、図9(b)に示すように盛り上がりのある蒲鉾状画線中では、表面反射光(c)以外に、蒲鉾状画線内部にランダムに固定された機能性材料(b)から蒲鉾状画線方向とは無関係なランダムな内面反射光(d)が生じてしまう。表面反射光(c)の光量に対する内面反射光(d)の光量が多くなれば多くなるほど、拡散反射光と正反射光が混在する条件下で出現する第二の潜像画像は不明瞭になるという問題があった。以上のように、鱗ペン状の機能性材料を配合したインキによって盛り上がりのある蒲鉾状画線を形成した場合、反射光量が低下するとともに、蒲鉾状画線内面から生じる不適切な内面反射光(d)の介在によって、出現する画像の視認性が低下したり、出現した画像が不明瞭な画像となる問題があった。
この問題を回避する一つの方法として、特許文献2に記載の技術の中では、鱗ペン状の機能性材料の表面に特殊な撥水・撥油処理を施して用いる場合がある。この場合、図10(a)に示すように、印刷直後に蒲鉾状画線の画線表面の盛り上がりに沿って機能性材料(b)がリーフィングすることから、図9(a)のような機能性材料(b)がランダムに別々の方向に傾いた状態と比較して、より大きな反射光量を得ることができる。
また、図10(b)に示すように光が入射した場合、機能性材料(b)は蒲鉾状画線表面にのみ存在することから、蒲鉾状画線内面由来の不適切な反射光が生じることなく、蒲鉾状画線表面由来の反射光(c)のみが生じ、画線方向由来の第二の潜像画像が鮮明に出現する。
以上のように、図10(a)に示すような蒲鉾状画線の画線表面の盛り上がりに沿って機能性材料(b)がリーフィングした構造を作り出すことによって、図9(b)のような蒲鉾状画線で生じる問題を解決する方法が存在する。しかし、この機能性材料(b)の特別な表面処理には大きな手間とコストがかかるという問題があった。また、撥水及び撥油処理が施された鱗ペン状顔料は、インキ樹脂との密着性が弱いことに加え、画線表面に機能性材料(b)の一部が露出した状態や機能性材料(b)が十分にインキ樹脂に被覆されていない状態となるため、画線表面が擦られることで機能性材料(b)が脱落し易いという堅牢性の問題があった。
また、図9(a)のような機能性材料(b)の向きがランダムな蒲鉾状画線であっても、図10(a)のような機能性材料(b)がリーフィングした蒲鉾状画線であっても、それぞれの蒲鉾状画線に共通して要求される事項として、高い視認性と鮮明さを実現するためには、それぞれの蒲鉾状画線の画線形状は、全て一定の高さを有した完全に均質な三次元構造を有する必要があって、かつ、蒲鉾状画線の表面は、微細な凹凸のない滑らかな表面構造を有することが求められる。このような蒲鉾状画線の構造を実現するために、インキの粘度は高いことが好ましい。一方で、蒲鉾状画線に対して前述のような特殊な光学特性を付与するために、顔料の配向を阻害させないために、インキの粘度は低いことが好ましい。
以上のように、蒲鉾状画線に対して前述のような特殊な光学特性を満たすためのインキの条件と、画線形状としても均質で滑らかな三次元構造を実現するためのインキの条件は相反するため、印刷によって一瞬で形成される単一の画線に対して、これら相互に異なる要求を高いレベルで同時に実現することは困難であった。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、盛り上がりを有した蒲鉾状画線によって構成された第一の画像の上に、光輝性材料によって構成された反射層の二層構造で形成する、自然光下で三つの異なる画像にチェンジする効果を有した印刷物であって、蒲鉾状画線から生じる反射光の反射光量を高めるとともに、その反射光も蒲鉾状画線表面由来の反射光のみとすることで、正反射光下で出現する潜像の視認性が高く、チェンジ効果が明瞭であって、特別な機能性材料を必要とせず安価であって、かつ、製造が容易である潜像印刷物を提供する。
本発明は、基材上の少なくとも一部に、透明又は基材と同じ色彩を有する樹脂系の第1のインキにより、盛り上がりを有するように印刷された万線状の画線から成る第一の画像と、第一の画像上に、基材及び第一の画像と異なる色彩を有し、かつ、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を備えた第2のインキにより印刷された第二の画像が形成され、第一の画像は、互いに重ならないように隣接して配置された四つの画線群から成り、四つの画線群は、第一の蒲鉾状画線が第2の方向に第一の画線面積率で万線状に配置された第一の蒲鉾状画線群と、第二の蒲鉾状画線が第2の方向に、第一の画線面積率とは異なる第二の画線面積率で万線状に配置された第二の蒲鉾状画線群と、第三の蒲鉾状画線が第2の方向とは異なる第1の方向に第一の画線面積率で万線状に配置された第三の蒲鉾状画線群と、第四の蒲鉾状画線が第1の方向に第二の画線面積率で万線状に配置された第四の蒲鉾状画線群から成り、第1の方向に配置された蒲鉾状画線群と第2の方向に配置された蒲鉾状画線群により、第二の有意情報が形成され、第一の画線面積率を有する蒲鉾状画線群と、第二の画線面積率を有する蒲鉾状画線群により、第三の有意情報が形成され、第二の画像は、所定の階調表現域の範囲で構成された第一の有意情報を有して成り、基材に対して、拡散反射光下では第一の有意情報のみが観察でき、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度において第二の有意情報のみが視認され、正反射光が支配的な観察角度では、第三の有意情報のみが観察できることを特徴とする真偽判別可能な情報担持体である。
本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第一の面積率と第二の面積率の差異が5%以上50%以下であることを特徴とする。
本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第二の画像における最大反射濃度と最小反射濃度の差異が0.05以上1以下であることを特徴とする。
本発明の真偽判別可能な情報担持体は、スクリーン印刷で形成した第一の画像の上に、オフセット印刷で形成した第二の画像を重ねて形成する。これらの二つの画像は、単純に重畳されていればよく、高精度な刷り合わせは必要ない。よって、単純に第一の画像と第二の画像を重ね合わせるだけで、容易に三つの画像がチェンジする印刷物を製造することができる。
本発明の真偽判別可能な情報担持体は、従来技術のように、蒲鉾状画線自体が明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性のような特別な光学特性を備える必要がない。この光学特性は、蒲鉾状画線の上に別に印刷される第二の画像が担う。そのため、第二の画像は、優れた光学特性を実現することに目的を絞って作製すればよいことから、必要とされる特殊な光学特性を実現しやすい。また、蒲鉾状画線群が一定の盛り上がりを有し、かつ、それぞれが均質であって、画線表面が滑らかで凹凸の少ない盛り上がりのある画線を形成することに特化して設計されたインキを用いることができ、従来よりも高品質な蒲鉾状画線を形成することができ、潜像の鮮明さが向上した。
また、第二の画像は、基材上に形成されるのではなく、光沢を有するインキ樹脂で形成された蒲鉾状画線の上に重なる。インキ樹脂上に印刷された第二の画像の反射光量は、第二の画像自体の反射光量に加えて、下地となるインキ樹脂の反射光量に準じる光量が加算され全体に大きく嵩上げされることから、通常の上質紙やコート紙上に同じインキで印刷された第二の画像の反射光量よりも、インキ樹脂上に印刷された第二の画像の反射光量の方がはるかに大きくなる。このため、従来技術の蒲鉾状画線と比較して反射光量が高くすることができるため、主に拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で出現する潜像の視認性が向上した。
本発明の真偽判別可能な情報担持体は、従来技術のように、蒲鉾状画線自体が明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性のような特別な光学特性を備える必要がない。
また、仮に蒲鉾状画線が印刷された段階で蒲鉾状画線の画線表面に滑らかさが欠け、画線表面に微小な凹凸が存在していたとしても、後刷りで形成される反射層のインキ皮膜によって表面の凹凸が被覆されるため、蒲鉾状画線の画線表面を、より平滑化する作用が生まれる。この作用により、正反射光下で出現する潜像の鮮明さが向上した。
本発明の真偽判別可能な情報担持体において、第二の画像から生じる反射光は、蒲鉾状画線から生じる画線表面由来の反射光となる。このため、従来技術のように、内面反射光のような不必要な反射光によって第二の有意情報が不鮮明となることがなく、従来技術と比較して出現する潜像の鮮明さが向上した。
本発明の真偽判別可能な情報担持体の蒲鉾状画線は、従来技術のように、第二の画像の形成に特殊な機能性材料を用いることなく、従来技術以上の画像のチェンジ効果を実現できる。また、従来技術の蒲鉾状画線のように、撥水・撥油処理された機能性材料を用いる必要がないことから、画線表面が擦られることで機能性材料が脱落することがなく、従来技術と比較して堅牢性が向上した。また、特殊な機能性材料を用いる必要がなく、安価に形成可能である。
本発明の真偽判別可能な情報担持体を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の構成の概要図を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の第一の画像を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の第一の画像を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の第二の画像を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体のそれぞれの画像の積層関係を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の第一の画像と第二の画像の積層画線が入射光を反射する概要図を示す。 本発明の真偽判別可能な情報担持体の効果を示す。 従来の真偽判別可能な情報担持体の蒲鉾状画線を示す。 従来の真偽判別可能な情報担持体の蒲鉾状画線を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
実施の形態として、本発明における真偽判別可能な情報担持体(1)の基本的な構成について、図1から図8を用いて説明する。図1に、本発明の真偽判別可能な情報担持体(以下「担持体」という。)(1)を示す。担持体(1)は、基材(2)上に印刷画像(3)を有して成る。基材(2)は、印刷画像(3)が形成可能な平面を備えていればよく、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等、材質は特に限定されない。その他、基材(2)の色彩や大きさについても特に制限はない。印刷画像(3)の色彩については、基材(2)と異なる色彩を有する必要がある。具体的な色彩や要求される光学特性については、第二の画像(5)の色彩や光学特性として後述する。
図2に、印刷画像(3)の構成の展開図を示す。印刷画像(3)は、第一の画像(4)の上に第二の画像(5)が重なって形成されて成る。第一の画像(4)は、盛り上がりを有した蒲鉾状画線(6)によって構成される蒲鉾状画線群(7)の集合によって形成されて成り、その画像中に、第二の有意情報及び第三の有意情報を含んで成る。また、第二の画像(5)は、第一の有意情報を表して成る。本実施の形態において、第一の有意情報とは「桜花流水」の画像であり、第二の有意情報とは、桜の花びらの画像であり、第三の有意情報はアルファベットの「JPN」の文字である。
まず、第一の画像(4)について説明する。図3に第一の画像(4)の画線構成の一例の拡大図を示す。第一の画像(4)は、画線方向と画線幅の異なる四種類の蒲鉾状画線(6)、すなわち、第一の蒲鉾状画線(6A)、第二の蒲鉾状画線(6B)、第三の蒲鉾状画線(6C)及び第四の蒲鉾状画線(6D)から成る。本実施の形態における第一の蒲鉾状画線(6A)は、第一の方向(図中S1方向)の画線方向、かつ、第一の画線幅(W1)を有する。第二の蒲鉾状画線(6B)は、第一の方向(S1)の画線方向、かつ、第一の画線幅(W1)とは異なる画線幅(W)の第二の画線幅(W2)を有する。第三の蒲鉾状画線(6C)は、第一の方向(S1)とは異なる方向の第二の方向(S2)の画線方向、かつ、第一の画線幅(W1)を有する。第四の蒲鉾状画線(6D)は、第二の方向(S2)の画線方向、かつ、第二の画線幅(W2)を有する。
なお、第一の方向と第二の方向の角度は少なくとも10度以上異なっている必要がある。角度差が小さい場合、拡散反射光と正反射光が混在した領域で出現する第二の有意情報の視認性が低くなるためである。
第一の画像(4)は、図4に示すように、四種類の異なる蒲鉾状画線(6)によって構成された四種類の蒲鉾状画線群(7)から構成される。具体的には、第一の蒲鉾状画線(6A)が第二の方向(S2)に万線状に配置された第一の蒲鉾状画線群(7A)、第二の蒲鉾状画線(6B)が第二の方向(S2)に万線状に配置された第二の蒲鉾状画線群(7B)、第三の蒲鉾状画線(6C)が第一の方向(S1)に万線状に配置された第三の蒲鉾状画線群(7C)、第四の蒲鉾状画線(6D)が第一の方向(S1)に万線状に配置された第四の蒲鉾状画線群(7D)から成る。それぞれの蒲鉾状画線群(7)は互いに重なり合うことなく、隣接して成る。なお、本発明において、「万線状に配置する」とは、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態をいう。
図3の例においては、全ての蒲鉾状画線群(7)における蒲鉾状画線(6)の配置ピッチを同じ値(P1)として説明したため、第一の蒲鉾状画線(6A)と第三の蒲鉾状画線(6C)の画線幅(W)を同じ第一の画線幅(W1)とし、第二の蒲鉾状画線(6B)と第四の蒲鉾状画線(6D)の画線幅(W)を同じ第二の画線幅(W2)としたが、配置ピッチが異なっていれば、画線幅自体は同じ必要はない。重要なのは、第一の蒲鉾状画線群(7A)における画線面積率と第三の蒲鉾状画線群(7C)における画線面積率は、等しい面積率(第一の画線面積率)である必要があり、第二の蒲鉾状画線群(7B)における画線面積率と第四の蒲鉾状画線群(7D)における画線面積率は、等しい面積率(第二の画線面積率)であり、なおかつ、第一の画線面積率と第二の画線面積率は異なる値をとることである。以上の条件を満たす限り、図3や図4に示した画線構成を用いなければならない訳ではなく、例えば、特開2013−215953に示すような、様々な画線と画素を組み合わせた画線構成を用いてもよい。
それぞれの蒲鉾状画線群(7)の組合せ方によって、第二の有意情報と第三の有意情報が現れる。まず、画線面積率が同じ第一の画線面積率同士、第二の面積率同士、すなわち、第一の蒲鉾状画線群(7A)と第三の蒲鉾状画線群(7C)を一組とし、第二の蒲鉾状画線群(7B)と第四の蒲鉾状画線群(7D)をもう一組として、第一の画像(4)を区分けすると、第三の有意情報であるアルファベットの「JPN」の文字と、その背景に区分けされる。
次に、画線の方向が同じ第一の画線方向(S1)同士、第二の画線方向(S2)同士、すなわち、第一の蒲鉾状画線群(7A)と第二の蒲鉾状画線群(7B)を一組とし、第三の蒲鉾状画線群(7C)と第四の蒲鉾状画線群(7D)をもう一組として、この組別として第一の画像(4)を区分けすると、第二の有意情報である「桜」の画像と、その背景に区分けされる。
以上のように、第一の画像(4)は、画線面積率で画像を区分けした場合には、第三の有意情報が形成され、画線方向で画像を区分けした場合には、第二の有意情報が形成される構成を有する。
なお、第一の画線面積率と第二の画線面積率は、少なくとも5%以上50%以下の差異がある必要がある。蒲鉾状画線(6)を形成するために用いるインキの色彩によって左右されるが、いかなる色彩であったとしても5%未満の差異しかない場合、正反射光下で視認される第三の有意情報の視認性が低くなり過ぎるためであり、50%を越える差異がある場合、拡散反射光と正反射光が混在する角度領域において第三の有意情報が出現してしまうためである。
なお、第一の実施の形態においてそれぞれの蒲鉾状画線群(7)は、盛り上がりを有した蒲鉾状の連続して繋がった画線の集合によって構成された例について説明するが、本発明における蒲鉾状画線群(7)は、これに限定されるものではなく、蒲鉾状画線群(7)の一形態として分断線や点線等の不連続線や曲線や波線、同心円等の曲がった線等の蒲鉾状画線(6)の集合で構成してもよい。
蒲鉾状画線(6)は、樹脂を含んだ材料によって構成される必要がある。ここでいう樹脂とは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の一般的な印刷インキのワニス成分に当たる、一定の光沢を有した樹脂を指す。透かしやエンボス等によって基材(2)に直接凹凸を形成する構成では、本発明の必須要件を満たさない。これは、基材(2)と同じ素材で構成した場合には、蒲鉾状画線(6)の上に形成される第二の画像(5)の反射光量を嵩上げする効果を得られないためである。
一般にUV硬化型のスクリーン印刷によって蒲鉾状画線(6)を形成する場合、スクリーンインキの粘度が高い方が、蒲鉾状画線(6)の盛りが高く、かつ、それぞれの蒲鉾状画線(6)の三次元立体形状は互いに均一になる傾向にある。このような蒲鉾状画線(6)の均一な構造は、潜像の視認性や鮮明さを高めるために極めて好ましいことから、本発明の蒲鉾状画線(6)を形成するに当たっては、粘度の高いインキを用いることが好ましい。
従来のように蒲鉾状画線(6)自体に特殊な光学特性を付与しなければならない形態において、高粘度のインキを使用した場合には、インキ内の機能性材料の配向に悪影響を与え、光学特性が低下することから、粘度の低いインキにせざるを得ず蒲鉾状画線(6)の三次元立体形状は犠牲になることが通例であった。これに対し、粘度の高いインキを用いて均質な蒲鉾状画線(6)の形成を成し得るのは、蒲鉾状画線(6)が特別な光学特性の実現を担う必要がないことに起因する、本発明の大きな長所の一つである。均質な立体構造の蒲鉾状画線(6)の形成を重視するのであれば、インキ粘度は1.5Pa・sを越えていることが好ましい。
また、蒲鉾状画線(6)は、透明又は半透明であって、特定の色彩を有さず不可視であるか、あるいは基材(2)と同じ色彩を有して、基材(2)と一体化した場合に目視上不可視である必要がある。これは、特定の色彩を有する場合、面積率の差異で構成された第三の有意情報が拡散反射光下で可視化されてしまうためである。なお、本発明でいう「半透明」とは、半透明な画線の下地が目視で視認できる程度の透過性を有することとする。以上が第一の画像(4)の説明である。
続いて、第二の画像(5)について説明する。図5に示す第二の画像(5)は、一定の反射濃度の範囲で第一の有意情報を表して成る。一定の反射濃度の具体的な範囲とは、第二の画像(5)の形成に使用するインキの光学特性や、下地となる第一の画像(4)のインキ樹脂の光学特性に依存するが、主色成分の反射濃度において最大反射濃度と最小反射濃度の差異が0.05以上1.0以下の範囲の必要がある。反射濃度の差異が0.05より小さい場合、拡散反射光下で視認できる第一の有意情報の濃淡が不鮮明となって観察者が判別できない場合があり、一方の反射濃度の差異が1.0を越える場合には、正反射光が生じる観察条件において第一の有意情報が完全に消失せず、チェンジ効果が不完全になる場合があるためである。
なお、本発明においては、第一の画像(4)と第二の画像(5)の二つの画像が重なり合った構造を印刷画像(3)と定義する。第一の画像(4)や第二の画像(5)のいずれか一つでも重なり合わずに単独で存在する構造は、印刷画像(3)に含まれない、印刷画像(3)に隣接する単なる修飾要素とみなす。
第二の画像(5)の最大面積率は、理論上面積率100%として形成することが正反射時に出現する第二の有意情報の視認性を高めるために効果的であるが、面積率100%で形成することで発生するムカレやピッキングといった印刷トラブルを避けることを目的に、面積率をやや低く形成しても何ら問題ない。基本的には第二の画像(5)全体の面積率を高く構成することが、本発明の画像の可視光下のチェンジ効果を高める上で重要である。
第二の画像(5)は、先に印刷されてあらかじめ硬化した第一の画像(4)の上に形成される。第二の画像(5)は、薄いながらも一定膜厚のインキ層から成ることから、第一の画像(4)と第二の画像(5)が重なった印刷画線(3)の表面は、第一の画像(4)の盛り上がりの高さや幅のような大まかな立体構造はそのまま反映されるが、一方で第一の画像(4)の画線表面のわずかな凹凸は、第二の画像(5)の膜厚によって、印刷直後にある程度平坦に埋められる。このため、印刷画像(3)の表面は、第一の画像(4)の表面よりも滑らかになり、結果として正反射光下で出現する第二の有意情報や第三の有意情報の鮮明さが向上することとなる。
また、第二の画像(5)は、光が入射した場合には強く光を反射する特性を有する必要がある。具体的には、光が入射した場合に、明るさ(明度)が上昇する特性、いわゆる明暗フリップフロップ性か、光が入射した場合に色相が変化する特性、いわゆるカラーフリップフロップ性の、少なくともいずれか一方の光学特性を有する必要がある。明暗フリップフロップ性は、アルミ、真鍮、酸化鉄等の一般的な金属顔料をインキ中に配合することで容易に付与することができる。また、カラーフリップフロップ性は、カラーフリップフロップ性を備えた機能性材料をインキ中に配合することで付与できる。カラーフリップフロップ性を備えた機能性材料の具体的な一例としては、パール顔料、コレステリック液晶、ガラスフレーク顔料、金属粉顔料、鱗ペン状金属顔料等がある。
また、当然のことながら機能性顔料をインキに配合するだけではなく、明暗フリップフロップ性、カラーフリップフロップ性を有するインキとして市販されているインキを用いて第二の画像(5)を形成してもよい。明暗フリップフロップ性を有する市販インキとしては、金インキ、銀インキ、樹脂自体の光沢が高いOPニス、グロスニス等が存在し、カラーフリップフロップ性を有する市販インキとしては、CSIやOVI、液晶インキ等がある。
また、第二の画像(5)は、透明や半透明であってはならず、基材と異なる色彩を有する必要がある。特定の色彩を有することによって、拡散反射光下で第一の有意情報を可視化させることが可能となることに加え、第二の画像(5)に光が入射した場合に生じる反射光以外は、全て第二の画像(5)で吸収され、印刷画像(3)から生じる反射光は、蒲鉾状画線(6)と第二の画像(5)の積層された画線の画線表面から生じる表面反射光のみとなることから、本発明の効果の一つである正反射光下における第二の有意情報と第三の有意情報の鮮明さを担保することができる。
以上の構成で作製した第一の画像(4)及び第二の画像(5)を、図6に示すように、第一の画像(4)の上に第二の画像(5)となる積層順序で重ね合わせて本発明の担持体(1)が完成する。二つの画像の重なり合いの位置関係に関しては、それぞれが単に重なり合ってさえいればよく、多少の刷り合わせズレが発生したとしても効果自体に影響を及ぼすことはない。
図7は、蒲鉾状画線(6)上の第二の画像(5)が光を反射した場合の模式図である。図7は、蒲鉾状画線(6)に重なった第二の画像(5)をデフォルメして厚く表現した図であり、実際の第二の画像(5)は、オフセット印刷で形成した場合には1μm程度であって、極めて薄い。なお、反射光は、第二の画像(5)から生じているため、実際には蒲鉾状画線(6)の画線表面から生じる表面反射光自体ではないが、蒲鉾状画線(6)の画線表面に沿って第二の画像(5)が形成されていることから、第二の画像(5)から生じる反射光は、蒲鉾状画線(6)の画線表面から生じる表面反射光にほぼ等しいと言える。
以上説明したとおり、本発明の担持体(1)において、インキ樹脂で形成された盛り上がりを有する蒲鉾状画線(6)の上に、基材(2)と異なる色彩を有して明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方を備えた第二の画像(5)を形成することで、反射光の光量を増大させるとともに、かつ、反射光を蒲鉾状画線(6)の画線表面由来の光のみとすることができる。
以上のような構成で作製した本発明の担持体(1)の効果について、図8を用いて説明する。図8(a)のように、拡散反射光下で担持体(1)の印刷画像(3)を観察した場合、観察者の視点(9)からは、第一の有意情報である「桜花流水」の画像が視認される。一方、図8(b)のように、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で担持体(1)の印刷画像(3)を観察した場合、観察者の視点(9)からは、第一の有意情報が消失して、第二の有意情報である「桜の花びら」の画像が視認される。また、入射する光の方向が変化することで、「桜の花びら」の画像の濃淡が反転するネガポジ反転効果が生じる。
以上のように、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される画像がチェンジする効果を有する。また、図8(c)に表すように、正反射光が支配的な観察角度で印刷画像(3)を観察するか、あるいは、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度であって、光が第一の方向(S1)と第二の方向(S2)の中間の角度(この例の場合には45度)から入射した場合には、第一の有意情報及び第二の有意情報が消失して、第三の有意情報であるアルファベットの「JPN」が視認される。
以上のような効果を生じる理由について説明する。まず、図8(a)に示すように、拡散反射光下で担持体(1)を観察した場合、第二の画像(5)が表す第一の有意情報が視認でき、第二の有意情報と第三の有意情報は視認できない。これは拡散反射光下においては、物質の立体構造や材質の違いではなく、色彩の違いが強調されるため、第二の画像(5)の特定の色彩を有するインキを用いて画線面積率の違いによって表現された第一の有意情報が可視化される。第二の有意情報と第三の有意情報は透明又は半透明に構成されており、目視可能な色差は生じないためこの観察角度では不可視である。
一方、図8(b)に示すように、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で担持体(1)を観察した場合、第一の画像(4)が表す第二の有意情報のみが視認でき、第一の有意情報及び第三の有意情報は視認できない。これは第二の画像(5)から正反射光が生じて第二の画像(5)の画線表面が淡く変化して濃淡(反射濃度の差異)が目視上圧縮されて第一の有意情報が消失する。一方で、第一の画像(4)を構成する盛り上がりを有する蒲鉾状画線(6)の画線方向の違いに応じた反射光量の大小が生まれ、結果として画線方向の違いで表現して成る第二の有意情報が反射光量の違いによって出現する。
第一の画像(4)の第三の有意情報は、面積率の差異に基づく反射光量の違い自体は生じるものの、第二の有意情報のコントラストの強さによって目視上隠蔽される。また、入射する光と平行に近い角度を成した画線がより強く光を反射するため、入射する光の方向の変化によって、異なる画線方向を有する蒲鉾状画線(6)で構成された第二の有意情報がネガポジ反転する効果が生じる。
また、図8(c)のように、正反射光が支配的な観察角度では第三の有意情報のみが視認できる。拡散反射光下での観察や拡散反射光と正反射光が混在する観察と異なり、この領域では色彩の違いや画線方向の違いは目立たず、画像を構成する色材の材質の反射率の違いや面積率の差異が強調される。このため、蒲鉾状画線(6)の画線面積率の差異によって構成された第三の有意情報が可視化される。その一方で、この領域での反射光量は他の二つの領域における反射光量と比較して著しく大きく、色彩の違いで構成された第一の有意情報や立体構造の違いで構成された第二の有意情報は、印刷画像(3)から生じる極めて強い反射光量によって打ち消され、不可視となる。このように、正反射光が支配的な観察角度では第三の有意情報のみが視認できる。以上が本発明の画像のチェンジ効果が生じる原理である。
本発明の印刷画像(3)においては、インキ樹脂で形成された蒲鉾状画線(6)上に第二の画像(5)が重なる構成のため、第二の画像(5)から生じる反射光が大きく嵩上げされる。この反射光量の増大は、従来のような蒲鉾状画線(6)から直接反射光を生じさせる技術において得られる常識的な反射光量や、第二の画像(5)を直接基材(2)上に形成した場合に得られる反射光量をはるかに凌ぐ量であり、この膨大な反射光量を利用する本技術のチェンジ効果は、他の従来技術のチェンジ効果と比べても、その視認性や鮮明さが大きく異なる。
例えば、反射光量が増大したことで、正反射光が生じる角度領域において出現する第二の有意情報や第三の有意情報の視認性が高まるだけでなく、正反射光が生じる角度領域において消失させ得る反射濃度の差異も従来の技術と比較して拡大しており、第一の有意情報の反射濃度の差異を格段に広く設計することが可能となった。これにより、拡散反射光下で視認される第一の有意情報の視認性をも高く保つことができる。
また、本発明において印刷画像(3)から生じる反射光は、蒲鉾状画線(6)の画線表面由来の光のみであるため、正反射光が存在する領域において画線方向の違いによって生じる反射光量の違いがより顕著になり、結果として第二の有意情報の視認性や鮮明さが向上した。
以上のように、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で生じる第一の有意情報の消失と、第二の有意情報の出現を同時に実現することによって生じる画像のチェンジ効果は、従来技術のチェンジ効果と比較しても極めて鮮明で劇的な効果であり、これは、他の従来技術のチェンジ効果とは一線を画す、本発明の担持体(1)の大きな特徴となっている。加えて、正反射光が支配的な角度で観察した場合に生じる第二の有意情報の消失効果と、第三の有意情報の出現についても判別が容易な大きなチェンジ効果であり、本発明の担持体(1)の特徴の一つである。
なお、本明細書中でいう「正反射」とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度(α)とほぼ等しい角度(α)に強い反射光が生じる現象を指し、「拡散反射」とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。例えば、虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射の状態では無色透明に見えるが、正反射した状態では特定の干渉色の強い光を発する。
また、「正反射光下で観察する」とは、印刷物に入射した光の角度(α)とほぼ等しい反射角度(α)に視点をおいて観察する状態を指し、「拡散反射光下で観察する」とは、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指す。「拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で観察する」とは、正反射光は生じているものの、印刷物に入射した光の角度(α)とほぼ等しい反射角度からわずかに角度がずれた角度(β)から印刷画像を観察している状態であって、最も正反射光が強く生じる正反射光下と比較して正反射光がやや弱く、正反射光と拡散反射光とがそれぞれ混在している角度で観察する状態を指す。「正反射光が支配的な観察角度」とは、印刷物に入射した光の角度(α)とほぼ等しい反射角度(α)から印刷画像を観察している状態であって、最も正反射光が強く生じる角度で観察する状態を指す。
なお、拡散反射光下では、それぞれの画像の色彩の違いが強調され、正反射光下ではそれぞれの画像を構成する材料の光の反射率の違いや面積率の違いが相対的に強調され、拡散反射光と正反射光が混在する角度領域では、画像の立体構造の違いが相対的に強調される傾向にある。
また、本発明の担持体(1)の第三の有意情報は、正反射光が支配的な観察角度だけでなく、正反射光と拡散反射光とがそれぞれ混在している角度で観察した場合でも出現する場合がある。それは、第一の画像(4)を構成する蒲鉾状画線(6)の二つの画線方向、すなわち第一の方向(S1)と第二の方向(S2)のちょうど中間の方向から光が入射した場合である。具体的には45度の方向から光が入射した場合、正反射光と拡散反射光とがそれぞれ混在している観察角度でも第一の画線方向の二つの蒲鉾状画線(6A、6B)と、第二の画線方向の二つの蒲鉾状画線(6C、6D)の四つの画線から生じる反射光量がほぼ等しくなって第二の有意情報が消失する。そして、これまで第二の有意情報の強いコントラストによって目視上隠蔽されていた第三の有意情報が視認できる。
蒲鉾状画線(6)の画線の盛り上がりの高さは、特に制限するものではないが流通適性を考えると1mm以上の高さを有することは好ましくない。また、蒲鉾状画線(6)をインキによって形成する場合であって、皮膜の厚さが2μm以下の場合は、画像のチェンジ効果が低くなる場合がある。よって、蒲鉾状画線(6)をインキ皮膜によって形成する場合には、2μm以上1mm以下であることが好ましい。
蒲鉾状画線群(7)のピッチは、0.01mm以上5.0mm以下で形成することが好ましい。0.01mm未満のピッチで、蒲鉾状画線(6)に2μm以上の盛り上がりを形成する場合には、一般的な印刷で再現できる蒲鉾状画線(6)のピッチとしては、ほぼ限界のピッチであり、印刷物品質の安定性に欠ける上に、たとえ0.01mm未満のピッチで要素を形成できた場合でも、ほとんどの場合、出現する潜像の視認性が極端に低くなるため、適当ではない。また、逆に、5.0mmより広いピッチで形成した場合には、潜像として再現できる画像の解像度が極端に低くなってしまうため、適切ではない。
第二の画像(5)を印刷で形成する場合には、比較的高解像度な印刷が可能なオフセット印刷方式やフレキソ印刷方式等が適している他、インクジェットプリンタやレーザプリンタ等のデジタル印刷機を用いて形成することも可能である。これらのデジタル印刷機を用いる場合には、一枚一枚異なる情報を与える可変情報を容易に付与できるという特徴がある。
また、本発明における「画線」とは、印刷で画像を形成する最小単位の小さな点である網点を特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線、破線等を指す。また、「画素」とは画像を形成する最小単位の小さな点である網点を一塊とした構成を指し、単純な円や多角形だけでなく、記号や文字、マーク等で表してもよい。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作成した担持体(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
実施例については、実施の形態で説明した担持体(1)の例で説明する。具体的には、実施の形態と同様に図1から図8を用いて説明する。図1に、実施例の担持体(1)を示す。担持体(1)は、基材(2)上に銀色の印刷画像(3)を有して成る。基材(2)には、一般的な微塗工紙(レイナR 日本製紙製)を用いた。
図2に印刷画像(3)の概要を示す。印刷画像(3)は、第一の画像(4)の上に第二の画像(5)が重ね合わさって成る。第一の画像(4)は、第二の有意情報として「桜の花びら」の画像を表し、第三の有意情報としてアルファベットの「JPN」の文字を表すよう構成した。第二の画像(5)は、第一の有意情報として「桜花流水」の画像を表して構成した。
図3及び図4に、基材(2)上に形成した第一の画像(4)を示す。第一の蒲鉾状画線群(7A)は、第一の方向(S1)を有する画線幅(W1)0.23mmの直線を成す第一の蒲鉾状画線(6A)を、第二の方向(S2)にピッチ(P1)0.4mmで万線状に配置して構成した。第二の蒲鉾状画線群(7B)は、第一の方向(S1)の画線幅(W2)0.28mmの直線を成す第二の蒲鉾状画線(6B)を、第二の方向(S2方向)にピッチ(P1)0.4mmで万線状に配置して構成した。第三の蒲鉾状画線群(7C)は、第二の方向(S2)の画線幅(W1)0.23mmの直線を成す第三の蒲鉾状画線(6C)を、第一の方向(S1)にピッチ(P1)0.4mmで万線状に配置して構成した。第四の蒲鉾状画線群(7D)は、第二の方向(S2)の画線幅(W2)0.28mmの直線を成す第四の蒲鉾状画線(6D)を、第一の方向(S1)にピッチ(P1)0.4mmで万線状に配置して構成した。第一の画線面積率は、約58%であり、第二の画線面積率は、70%であって、アルファベットの「JPN」の文字は、背景領域と12%の面積率の差異を有して構成した。
このような画線構成の第一の画像(4)をUV乾燥方式のスクリーン印刷で、高粘度で透明なスクリーンインキ(UV POT 点字用クリアー 帝国インキ製造株式会社製)を用いて基材(2)上に印刷した。蒲鉾状画線群(5)の高さは、約15μmであった。
図5に示す第二の画像(5)は、ムカレを防止することを目的に最大面積率を90%とし、最小面積率を60%とすることで、面積率の差異を30%の範囲として、第一の有意情報である「桜花流水」を構成した。ウェットオフセット印刷で銀インキ(ニューチャンピオン シルバー DIC製)を用いて蒲鉾状画線群(7)上に印刷した。第二の画像(5)の主色成分である黒色の最大反射濃度は0.6、最小反射濃度は0.3であり、第二の画像(5)の階調表現域、すなわち反射濃度の範囲は、0.3とした。
この第二の画像(5)は、拡散反射光下では暗い灰色で、正反射光下では白色となる、優れた明暗フリップフロップ性を有する。第二の画像(5)の印刷皮膜は、約1μmであった。
実施例の担持体(1)の効果について、図8を用いて説明する。図8(a)のように、拡散反射光下で本発明の担持体(1)の印刷画像(3)を観察した場合、観察者の視点(9)からは、第一の有意情報である「桜花流水」の画像が灰色で視認された。一方、図8(b)のように、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度で本発明の担持体(1)の印刷画像(3)を観察した場合、観察者の視点(9)からは、第一の有意情報である「桜花流水」の画像が消失して、淡い灰色の背景の中に第二の有意情報である「桜の花びら」の画像が背景部の色彩と比較して明るい色か、より暗い色で視認された。また、正反射光が支配的な観察角度で観察した場合、観察者の視点(9)からは、第一の有意情報である「桜花流水」及び第二の有意情報である「桜の花びら」の画像が消失して、第三の有意情報であるアルファベットの「JPN」の文字が視認された。以上のように、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される画像が鮮明にチェンジする効果を有することが確認できた。
1 真偽判別可能な情報担持体
2 基材
3 印刷画像
4 第一の画像
5 第二の画像
6、6A、6B、6C、6D 蒲鉾状画線
7、7A、7B、7C、7D 蒲鉾状画線群
8 光源
9 観察者の視点
a インキ樹脂
b 鱗ペン状の機能性材料
c 表面反射光
d 内面反射光
W 画線幅
S 方向

Claims (3)

  1. 基材上の少なくとも一部に、透明又は前記基材と同じ色彩を有する樹脂系の第1のインキにより、盛り上がりを有するように印刷された万線状の画線から成る第一の画像と、
    前記第一の画像上に、前記基材及び前記第一の画像と異なる色彩を有し、かつ、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を備えた第2のインキにより印刷された第二の画像が形成され、
    前記第一の画像は、互いに重ならないように隣接して配置された四つの画線群から成り、
    前記四つの画線群は、第一の蒲鉾状画線が第2の方向に第一の画線面積率で万線状に配置された第一の蒲鉾状画線群と、第二の蒲鉾状画線が前記第2の方向に、前記第一の画線面積率とは異なる第二の画線面積率で万線状に配置された第二の蒲鉾状画線群と、第三の蒲鉾状画線が前記第2の方向とは異なる第1の方向に前記第一の画線面積率で万線状に配置された第三の蒲鉾状画線群と、第四の蒲鉾状画線が前記第1の方向に第二の画線面積率で万線状に配置された第四の蒲鉾状画線群から成り、
    前記第1の方向に配置された蒲鉾状画線群と前記第2の方向に配置された蒲鉾状画線群により、第二の有意情報が形成され、
    前記第一の画線面積率を有する蒲鉾状画線群と、前記第二の画線面積率を有する蒲鉾状画線群により、第三の有意情報が形成され、
    前記第二の画像は、所定の階調表現域の範囲で構成された第一の有意情報を有して成り、
    前記基材に対して、拡散反射光下では前記第一の有意情報のみが観察でき、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度では前記第二の有意情報のみが視認され、正反射光が支配的な観察角度では、前記第三の有意情報のみが観察できることを特徴とする真偽判別可能な情報担持体。
  2. 前記第一の画線面積率と前記第二の画線面積率の差異が、5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な情報担持体。
  3. 前記第二の画像における最大反射濃度と最小反射濃度の差異が0.05以上1.0以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別可能な情報担持体。
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