JP6630216B2 - セラミックスグリーンシートの乾燥方法及びセンサ素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックスグリーンシートの乾燥方法及びセンサ素子の製造方法に関する。
従来、被測定ガス中の所定のガス濃度を検出するセンサ素子及びその製造方法が知られている(例えば、特許文献1,2)。具体的には、まず、複数のグリーンシートを用意し、用意したグリーンシートに対して電極などの所定のパターンを印刷し、パターンを乾燥する。続いて、パターンが印刷されたグリーンシートを所定の順序で重ね合わせ、加圧して積層体とする。そして、積層体をセンサ素子個々の単位にカットした後に焼成して、センサ素子を得る。
特開2011−225434号公報 特開2015−180867号公報
このようにセンサ素子を製造する場合において、パターンの印刷前にグリーンシートを乾燥させる工程(アニール処理とも言う)を行うことが検討されている。しかし、このような乾燥工程において、例えば従来の熱風による乾燥を行うと、乾燥後のグリーンシートの強度が不十分な場合があった。強度が不十分であることで、例えばその後の工程でグリーンシートが破損するなどにより、製品の歩留まりが低下する場合があった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミックスグリーンシートの乾燥後の強度を向上させることを主目的とする。
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のセラミックスグリーンシートの乾燥方法は、
セラミックスグリーンシートに対して、1μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して該セラミックスグリーンシートを乾燥させる乾燥工程、
を含むものである。
本発明のセンサ素子の製造方法は、
複数のセラミックスグリーンシートを用意する準備工程と、
前記準備工程の後、前記複数のセラミックスグリーンシートに対して、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して該複数のセラミックスグリーンシートを乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程後の複数のセラミックスグリーンシートにペーストからなる所定のパターンを形成して乾燥させるパターン形成工程と、
前記パターン形成工程後のセラミックスグリーンシートを積層して積層体とする積層工程と、
前記積層体から未焼成センサ素子を切り出す切り出し工程と、
前記未焼成センサ素子を焼成する焼成工程と、
を含むものである。
本発明のセラミックスグリーンシートの乾燥方法及びセンサ素子の製造方法における乾燥工程では、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して、セラミックスグリーンシートを乾燥させる。この波長領域の赤外線(近赤外線)は、セラミックスグリーンシート中の可塑剤や溶剤などの蒸発に適している。また、熱風乾燥を行う場合、セラミックスグリーンシートの内側の可塑剤などが蒸発しにくいことで乾燥後の強度が不十分になる場合があるが、赤外線は熱風と比べてセラミックスグリーンシートの内側まで作用しやすいため、内側の可塑剤などをより適切に蒸発させて乾燥後の強度を向上させることができる。また、本発明のセンサ素子の製造方法では、乾燥工程後のセラミックスグリーンシートの強度が向上することで、センサ素子の歩留まりが向上する。
センサ素子を製造する際の処理の流れを示すフローチャート。 乾燥炉10の縦断面図。 比較例の乾燥工程を行う乾燥炉110の縦断面図。 実施例及び比較例の重量減少率と弾性強度との関係を示すグラフ。 実施例1〜9のシート最大温度と耐力点の伸びばらつきとの関係を示すグラフ。
次に、本発明の実施形態について説明する。ここでは、本発明のセラミックスグリーンシートの乾燥方法を含む工程を行ってセンサ素子を製造する場合を例として説明する。図1は、センサ素子を製造する際の処理の流れを示すフローチャートである。この製造方法で製造されるセンサ素子は、被測定ガス中の特定ガス(例えばNOx,O2など)の濃度を検出するものであり、長尺な直方体形状をしている。センサ素子は、例えばジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質からなる複数の層を積層した構造を有する。センサ素子は、外部から導入された被測定ガスが流通するガス流通部が内部に設けられている。センサ素子は、例えば、ガス流通部内やセンサ素子の外表面などに配設された電極と、電圧又は電流を印加したり各電極の電圧や電流を測定したりするコネクタパッドと、電極とコネクタパッドとを導通させるリード線と、センサ素子を形成する固体電解質の加熱と保温を行うヒータと、を備えている。なお、このようなセンサ素子の構造は例えば上述した特許文献1,2などに記載されており公知であるため、図視及び詳細な説明は省略する。
本実施形態のセンサ素子の製造方法は、
複数のセラミックスグリーンシートを用意する準備工程と、
準備工程の後、複数のセラミックスグリーンシートに対して、1μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して複数のセラミックスグリーンシートを乾燥させる乾燥工程と、
乾燥工程後の複数のセラミックスグリーンシートにペーストからなる所定のパターンを形成して乾燥させるパターン形成工程と、
パターン形成工程後のセラミックスグリーンシートを積層して積層体とする積層工程と、
積層体から未焼成センサ素子を切り出す切り出し工程と、
未焼成センサ素子を焼成する焼成工程と、
を含む。
[準備工程]
まず、準備工程(ステップS10)について説明する。準備工程では、酸素イオン伝導性固体電解質であるセラミックス(本実施形態ではジルコニア)を主成分として含む複数の未焼成のセラミックスグリーンシート(以下、単にグリーンシートとも表記する)を用意する。グリーンシートは、焼成後にセンサ素子の固体電解質層となるものであり、1つのセンサ素子を構成する固体電解質層の数(例えば6枚)に応じて、各層に対応させたグリーンシートを用意する。準備工程では、予め作製されたグリーンシートを用意してもよいし、グリーンシートを作製することで用意してもよい。グリーンシートを作製する場合、例えば、セラミック粒子と、有機バインダーと、可塑剤と、有機溶剤とを混合してペーストとし、このペーストを用いてドクターブレード法などにより作製する。用意するグリーンシートは、厚みが100μm以上としてもよいし、厚みが300μm以下としてもよい。
セラミック粒子としては、例えばZrO2などの粒子が挙げられ、特にYを添加した安定化ZrO2などが好ましい。セラミック粒子がZrO2である場合、平均粒径は例えば0.40μm以上0.80μm以下としてもよく、0.5μm以上0.7μm以下が好ましい。ここで、「平均粒径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定により測定したメディアン径(D50)とする。
有機バインダーとしては、例えば、ブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂などが挙げられ、このうちブチラール樹脂が好ましい。
可塑剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(フタル酸ジオクチル(DOP)とも言う)、又はフタル酸ジイソノニルなどが挙げられる。これらのうち、フタル酸ジオクチルが好ましい。なお、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。本実施形態では、可塑剤はフタル酸ジオクチルとした。
有機溶剤としては、一般的な有機溶剤を用いることができ、例えば、トルエン、炭素数6〜12の一価アルコールや、セロソルブ系の溶剤、エステル結合を有する化合物、ターピネオール構造を有する化合物などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。この有機溶剤としては、例えば、2−エチルヘキサン酸、2−エチルヘキサノール、酢酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。また、ターピネオール化合物としては、例えば、α−ターピネオール、β−ターピネオール、γ−ターピネオールや、ジヒドロターピネオールなどが挙げられる。
なお、グリーンシート用のペースト全体(100質量%)に対して、セラミック粒子は例えば40質量%以上70質量%以下としてもよく、有機バインダーは例えば3質量%以上20質量%以下としてもよく、可塑剤は例えば1質量%以上5質量%以下としてもよく、有機溶剤は例えば22質量%以上50質量%以下としてもよい。グリーンシート用のペーストの粘度は、例えば500〜20000mPa・sとしてもよく、2000〜10000mPa・sであることが好ましい。
[乾燥工程]
乾燥工程では、準備工程の後、複数のグリーンシートに対して、1μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して複数のグリーンシートを乾燥させる(ステップS20)。この工程により、例えばグリーンシート中の可塑剤や溶剤の少なくとも一部を蒸発させる。この工程は、例えば後の工程であるパターン形成工程での乾燥時にグリーンシートが収縮しすぎてしまうことによる不具合(パターンの位置ずれなど)を抑制するために行われ、アニール処理とも言う。なお、1μm〜4μmの波長領域の赤外線(近赤外線)は、グリーンシート中の可塑剤や溶剤などの蒸発に適している。また、例えば赤外線の代わりに熱風で乾燥を行う場合、グリーンシートの表面からは可塑剤などが蒸発するが、グリーンシートの内側からは可塑剤などが蒸発しにくいことで乾燥後の強度が不十分になる場合がある。一方、熱風と比べて赤外線はグリーンシート70を透過して内側まで作用しやすいため、内側の可塑剤などをより適切に蒸発させて乾燥後のグリーンシートの強度を向上させることができる。乾燥工程では、赤外線の照射に加えてグリーンシート又はその周辺の処理空間への送風を併用してもよい。乾燥工程では、1.5μm〜2.0μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線をグリーンシート70に照射してもよい。
乾燥工程では、赤外線が照射されている間のグリーンシートの温度を200℃以下に保つようにすることが好ましい。グリーンシートの温度が200℃を超えると、例えばバインダーの変性が生じる場合があることなどにより、複数のグリーンシートの乾燥後の耐力点の伸びばらつきが大きくなりやすい。グリーンシートの温度を200℃以下に保つことで、複数のグリーンシートの乾燥後の耐力点の伸びばらつきを小さくできる。また、グリーンシートに赤外線が照射されている間のグリーンシートの温度は、150℃以上に保つことが好ましく、180℃以下に保つことが好ましい。なお、グリーンシートの温度は、表面の温度とする。
乾燥工程では、乾燥によるグリーンシートの重量減少率が0.2wt%以上となるようにすることが好ましい。重量減少率が0.2wt%以上では、グリーンシートの乾燥が十分なものとなりやすく、乾燥後のグリーンシートに対して行う処理(例えば、パターン形成工程での乾燥処理)においてグリーンシートが収縮し過ぎることをより抑制できる。また、乾燥工程では、乾燥によるグリーンシートの重量減少率が0.9wt%以下となるようにすることが好ましい。重量減少率が0.9wt%以下では、グリーンシートが乾燥しすぎることによる不具合(反りや変色など)をより抑制できる。なお、グリーンシート70の重量減少率は、乾燥工程前のグリーンシートの重量に対する、乾燥工程後のグリーンシートの重量減少量の割合である。また、乾燥工程では、乾燥後のグリーンシートが必要な強度になるようにすればよく、可塑剤及び溶剤を全て蒸発させる必要はない。例えば、乾燥工程前のグリーンシート中の可塑剤の重量に対する乾燥工程後のグリーンシート中の可塑剤の重量減少率が2wt%以上となるようにしてもよいし、35wt%以下となるようにしてもよい。同様に、乾燥前後の溶剤の重量減少率が10wt%以上となるようにしてもよいし、15wt%以下となるようにしてもよい。
なお、乾燥工程におけるグリーンシートの温度や重量減少率は、例えば、グリーンシートへの赤外線の放射強度,赤外線の照射時間などによって制御することができる。また、乾燥工程で送風を併用する場合には、送風の温度や風量などによってもグリーンシートの温度や重量減少率を制御することができる。
[パターン形成工程]
パターン形成工程では、乾燥工程後の複数のグリーンシートにペーストからなる所定のパターンを形成して乾燥させる(ステップS30)。パターンとは、具体的には、センサ素子の各電極のパターンや、コネクタパッド,リード線,及びヒータなどを形成するためのパターンである。各々のパターンの形成は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、形成対象を形成すべき固体電解質層に対応するグリーンシートに塗布することにより行われる。パターンの形成は、例えばスクリーン印刷により行ってもよい。印刷後の乾燥処理については、公知の乾燥技術を利用可能であり、例えば75〜90℃の温度で大気雰囲気にて行うのが一般的である。必要に応じて、1つのグリーンシートに対してパターンの形成と乾燥とを複数回繰り返してもよい。また、パターン形成工程では、後述する切り出し工程において積層体を切断するときに切断位置の基準とされるカットマークも印刷しておくことが好ましい。
なお、乾燥工程後且つパターン形成工程前に、複数のグリーンシートの各々には、例えばプレス機のパンチを用いた打ち抜き加工を行って、四隅を円弧状に切り落としたり、複数のシート孔を形成したりしておくことが好ましい。これらは、パターン形成工程時や後述する積層工程での位置決めに用いられる。また、複数のグリーンシートのうち、ガス流通部などの内部空間を有する固体電解質層に対応するグリーンシートに対しては、打ち抜き加工により内部空間に相当する空間(孔)を設けておく。グリーンシートに内部空間を形成する処理は、例えば乾燥工程後且つパターン形成工程前に行ってもよいし、パターン形成工程中に行ってもよい。
[積層工程]
積層工程では、パターン形成工程後のグリーンシートを積層して積層体とする(ステップS40)。積層工程では、まず、パターン形成工程後のグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストのパターン形成処理及び乾燥処理を行う。接着用ペーストのパターン形成には、パターン形成工程と同様に公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、その後の乾燥処理についても、公知の乾燥技術を利用可能である。続いて、接着用ペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて所定の温度で所定の圧力を加えることで圧着させ、1つの積層体とする。具体的には、例えば、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート孔などを用いて位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって積層体を得る。加熱・加圧を行う圧力、温度、時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう適宜の条件を設定すればよい。こうして得られた積層体は、未焼成センサ素子を包含したものである。なお、パターン形成工程において各グリーンシートに複数のセンサ素子に対応するパターンを形成しておくことで、複数の未焼成センサ素子を包含する積層体を得てもよい。
[切り出し工程]
切り出し工程では、積層体から未焼成センサ素子を切り出す(ステップS50)。この工程では、例えば、グリーンシートのシート孔やカットマークなどを参考にして積層体を切断し、未焼成センサ素子を切り出す。積層体が複数の未焼成センサ素子を包含する場合には、積層体から複数の未焼成センサ素子を切り出す。
[焼成工程]
焼成工程では、切り出し工程で得られた1以上の未焼成センサ素子を焼成する(ステップS60)。焼成は、例えば、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら、1350〜1400℃の焼成温度で行う。この焼成工程により、センサ素子が得られる。
次に、上述した乾燥工程の具体例について詳細に説明する。図2は、乾燥工程を行う乾燥炉10の縦断面図である。乾燥炉10は、準備工程で用意されたグリーンシート70の乾燥を赤外線を用いて行うものであり、炉体14と、送風装置20と、排気装置30と、赤外線ヒーター40と、搬送装置50と、制御装置60と、を備えている。乾燥炉10は、複数のグリーンシート70を搬送装置50により搬送方向(図の右方向)に順次搬送しながら処理(乾燥)を行う、連続炉として構成されている。
炉体14は、略直方体に形成された断熱構造体であり、前端面15及び後端面16にそれぞれ開口17,18を有している。この炉体14は、前端面15から後端面16までの長さが例えば1〜10mである。炉体14は、内部に仕切り板19が配設されている。この仕切り板19は、水平方向に配置されて炉体14内の空間を上部空間14aと下部空間(処理空間14b)とに上下に分離している。仕切り板19は、赤外線ヒーター40からの波長1μm〜4μmの赤外線を透過する赤外線透過材料で構成されている。本実施形態では、仕切り板19の材質は石英ガラスとした。仕切り板19は、赤外線ヒーター40が存在する上部空間14aとグリーンシート70が通過する処理空間14bとを分離することで、グリーンシート70の過熱を抑制する役割を果たす。開口17,18は処理空間14bに開口している。グリーンシート70は、搬送装置50によって開口17から搬入され、処理空間14bを水平方向に進行し、開口18から搬出される。
送風装置20は、処理空間14b内に風を供給してグリーンシート70から蒸発した可塑剤や溶剤などの成分を除去しやすくするための装置である。送風装置20は、風を発生させる送風機22と、風を処理空間14b内に導くパイプ構造体24と、パイプ構造体24から処理空間14bへの風の出口となる給気口26とを備えている。給気口26は、炉体14のうちグリーンシート70の搬出側である開口18側の端部に設けられ、搬入側である開口17側に向けて水平に開口している。これにより、送風装置20は、グリーンシート70の搬出側から搬入側に(図2の左方向に)向けて風を供給する。この風は、図2の炉体14内の矢印に示すように、グリーンシート70の上面に沿って流れていき、グリーンシート70から蒸発した成分を排気装置30側に運ぶ。送風装置20が供給する風は、本実施形態では120℃の大気とした。ただし、これに限らず送風装置20は気体を処理空間14bに供給できればよく、供給する風の温度は常温(20℃)未満の冷風としたり常温より高温の熱風としてもよい。送風装置20が供給する気体も、大気に限らず不活性ガス(例えば窒素)などとしてもよい。送風装置20が供給する風(気体)の温度は例えば15℃〜200℃としてもよい。送風装置20は、処理空間14b内でのグリーンシート70の温度未満の温度の風を供給してグリーンシート70を冷却してもよいし、処理空間14b内でのグリーンシート70の温度を超える温度の風を供給してグリーンシート70を加熱してもよい。
排気装置30は、処理空間14b内の雰囲気ガスを排出する装置である。排気装置30は、パイプ構造体34内の雰囲気ガスを排気する送風機32と、雰囲気ガスを送風機32に導くパイプ構造体34と、処理空間14bからパイプ構造体34への雰囲気ガスの出口となる排気口36とを備えている。排気口36は、炉体14のうちグリーンシート70の搬入側である開口17側の端部に設けられ、搬出側である開口18側に向けて水平に開口している。排気装置30は、この排気口36を介して、グリーンシート70から蒸発した成分を含む処理空間14b内の雰囲気ガスを炉体14の外部へ排気する。なお、送風機32は、例えば図示しない排気用の配管に接続されており、処理空間14b内の雰囲気ガスに含まれるグリーンシート70から蒸発した可塑剤や有機溶剤などの成分を除去するなど、適切な処理を行ってから乾燥炉10外に雰囲気ガスを排気してもよい。なお、送風機32は、パイプ構造体34内の雰囲気ガスを乾燥炉10外に排気せず、送風機22の吸気として循環させてもよい。
なお、送風機22の給気量と送風機32の排気量とを調整することで、処理空間14b内を流れる風の風量を調整することができる。風量は、例えば0.05Nm3/min〜2Nm3/minとしてもよい。また、送風装置20が送風機22を備えないものとし送風機32の排気(吸気)のみによって処理空間14b内に風を供給してもよいし、排気装置30が送風機32を備えないものとし送風機22の給気のみによって処理空間14b内に風を供給してもよい。
赤外線ヒーター40は、処理空間14b内を通過するグリーンシート70に対して、1μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射する装置であり、上部空間14a内に複数取り付けられている。本実施形態では、赤外線ヒーター40は搬送方向に沿って略均等な間隔で5本配置されている。これらの各赤外線ヒーター40は、同様の構成を有しており、いずれも長手方向が搬送方向と直交するように取り付けられている。すなわち、赤外線ヒーター40は長手方向がグリーンシート70の幅方向(図2の上下方向及び前後方向に直交する方向であり、左右方向とも称する)と平行に配置されている。
赤外線ヒーター40は、図2の拡大図に示すように、発熱体であるフィラメント41を内管42が囲むように形成されたヒーター本体43と、このヒーター本体43の外側に設けられ内管42を囲むように形成された外管44と、外管44の内表面に配設された反射層45と、内管42と外管44との間の空間である冷媒流路46と、を備えている。赤外線ヒーター40は、フィラメント41の長手方向が左右方向と略平行に配置され、フィラメント41の下方を通過するグリーンシート70に対して赤外線を放射する。
ヒーター本体43は、本実施形態ではハロゲンヒーターとして構成されている。フィラメント41は、加熱すると赤外線を放射する発熱体であり、本実施形態ではW(タングステン)製とした。なおフィラメント41の材料としては、他にNi−Cr合金,Mo,Ta,及びFe−Cr−Al合金などを挙げることができる。フィラメント41の両端には、図示しない電力供給源から電力が供給される。フィラメント41の発熱領域の長さは、グリーンシート70の左右方向の幅以上であることが好ましい。内管42及び外管44は、円筒状の管であり、波長1μm〜4μmの赤外線を透過する赤外線透過材料で構成されている。本実施形態では、内管42及び外管44の材質は仕切り板19と同じ石英ガラスとした。内管42の内部は、アルゴンガスにハロゲンガスを添加した雰囲気となっている。なお、石英ガラスは波長4μmを超える波長の赤外線を吸収するため、内管42及び外管44を透過した赤外線は波長1〜4μmの赤外線の割合が多くなる。
反射層45は、フィラメント41から上方に放射された赤外線を下方(グリーンシート70側)に反射する部材である。反射層45は、外管44の内周面のうち、フィラメント41からみてグリーンシート70とは反対側(上側)を含む領域に形成され、フィラメント41の周囲の一部のみを覆うように設けられている。本実施形態では、反射層45は、外管44の内周面の上側半分を全て覆っているものとした。この反射層45は、フィラメント41から放射される電磁波のうち赤外線の少なくとも一部を反射する赤外線反射材料で形成されている。赤外線反射材料としては、例えば金,白金,アルミニウムなどが挙げられる。本実施形態では、反射層45は金(Au)とし、外管44の内周面を金でコーティングすることにより形成されている。反射層45がフィラメント41からの赤外線を反射することで、グリーンシート70に効率よく赤外線が照射される。
冷媒流路46は、内管42と外管44との間の空間であり、例えば炉体14を左右に貫通する図示しない流体出入口などを介して冷媒が流通可能となっている。冷媒は、例えば空気などの流体である。冷媒流路46を流通する冷媒は、内管42及び外管44の温度を下げることで、これらが赤外線の二次放射体となり不要な波長の赤外線を放射することを抑制する役割を果たす。なお、冷媒流路46を通過したあとの加熱された冷媒の熱を回収して、送風機22の吸気の加熱に利用してもよい。
搬送装置50は、グリーンシート70を搬送する機構であり、ベルト51と、ローラー52と、ローラー53とを備えたベルトコンベアとして構成されている。ローラー52は炉体14の前方に配置され、ローラー53は炉体14の後方に配置されている。ベルト51は、ローラー52,53に回転可能にリング状に掛け渡されている。ベルト51は、ローラー52,53の上側に掛けられた部分が処理空間14b内を通過するように配置されている。ベルト51の材質は、耐熱性及び耐溶剤性の高いものが好ましく、フッ素系材料(例えばテフロン(登録商標、以下同じ))などが挙げられる。また、ベルト51はメッシュ状の部材としてもよい。本実施形態では、ベルト51はテフロンメッシュとした。このベルト51上にグリーンシート70が載置された状態でローラー52,53が回転すると、それに伴ってベルト51が回転して、グリーンシート70が搬送方向に搬送される。
制御装置60は、CPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。この制御装置60は、送風機22,32に制御信号を出力して、処理空間14b内を流れる風の温度や風量を制御する。制御装置60は、フィラメント41の電力供給源に制御信号を出力して、フィラメント41のヒーター出力(消費電力)を制御し、これによりグリーンシート70に照射される赤外線の放射強度を制御する。制御装置60は、ローラー52,53の図示しない駆動モーターに制御信号を出力して、ローラー52,53の回転を制御する。制御装置60は、ローラー52,53の回転速度を制御することで、炉体14内のグリーンシート70の通過時間(乾燥時間)を調整することができる。また、制御装置60は、図示しないタッチパネルなどの表示操作部を備えており、作業者からの指示を入力したり作業者に情報を出力したりする。
次に、こうして構成された乾燥炉10を用いて乾燥工程を行う様子について説明する。まず、制御装置60は、例えば作業者からの処理開始指示を入力すると、フィラメント41に通電して赤外線を放射させると共に、送風機22,32を制御して処理空間14b内に送風を行い、処理空間14b内の温度や風量を所定の状態になるよう調整する。また、制御装置60は搬送装置50を駆動させてベルト51を回転させる。準備工程で用意されたグリーンシート70は、例えば作業者又は搬送方向上流の別の搬送装置により運ばれて、開口17よりも前方でベルト51上に載置される。そして、載置されたグリーンシート70はベルト51の回転に伴って搬送され、炉体14の開口17を通って処理空間14b内へ搬入される。続いて、グリーンシート70は、処理空間14b内を通過し、その間に乾燥工程が行われる。より具体的には、赤外線ヒーター40からの赤外線が照射されることによりグリーンシート70から可塑剤や溶剤などの成分が蒸発してグリーンシート70が乾燥する。蒸発した成分は排気口36から送風機32によって排気される。乾燥後のグリーンシート70は、炉体14の開口18から搬出される。
なお、乾燥工程において、制御装置60は、フィラメント41から放射される赤外線のピーク波長が1μm〜4μmの波長領域になるように、赤外線ヒーター40のヒーター出力を制御する。なお、フィラメント41から放射される赤外線のピーク波長は、例えばフィラメント41の温度によって調整することができる。制御装置60は、フィラメント41の温度が所定の値になるように予め定められたヒーター出力になるようフィラメント41に供給される電力を調整してもよい。あるいは、温度センサなどを用いてフィラメント41の温度を直接的又は間接的に測定し、測定した温度に基づいてフィラメント41の温度が所定の温度になるようにヒーター出力を制御してもよい。
なお、乾燥炉10において、内管42,外管44及び仕切り板19は、波長4μmを超える波長の赤外線を吸収するため、乾燥工程でグリーンシート70に照射される赤外線は波長1〜4μmの赤外線の割合が多くなる。そのため、グリーンシート70中の可塑剤や溶剤などをより効率よく蒸発させることができる。なお、グリーンシート70に照射させる赤外線、すなわち内管42,外管44及び仕切り板19を透過した後の赤外線が、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有するようにすればよい。そのため、フィラメント41から放射される赤外線のピーク波長は必ずしも1μm〜4μmの波長領域になくてもよい。
なお、乾燥炉10においては、例えば、赤外線ヒーター40の本数、フィラメント41のヒーター出力,複数の赤外線ヒーター40の前後のピッチ,ヒーター高さ,処理空間14b内の風の風量,風の温度,及び赤外線の照射時間のうち1以上を調整することで、処理空間14b内のグリーンシート70の温度や乾燥工程での重量減少率を制御することができる。例えば、赤外線ヒーター40のピッチ(フィラメント41の中心軸同士の間隔)は、130mm〜240mmとしてもよい。ヒーター高さ(グリーンシート70とフィラメント41との距離)は、100mm〜180mmとしてもよい。グリーンシート70への赤外線の照射時間(フィラメント41からグリーンシート70に直線的に赤外線が到達可能な位置にグリーンシート70が存在する間の時間とする)は、300秒〜1000秒としてもよい。なお、照射時間は、フィラメント41の配置や本数によって調整するほか、例えば搬送装置50によるグリーンシート70の搬送速度によっても調整することができる。グリーンシート70の搬送速度は、0.1〜50mm/sとしてもよい。
なお、フィラメント41のヒーター出力が大きいほどグリーンシート70は高温になりやすく、重量減少率も大きくなりやすい。また、処理空間14b内の風の温度がグリーンシート70の温度未満である場合、風量が大きいほどグリーンシート70を低温に保つことができる。この場合、ヒーター出力と風量とを併せて調整することで、グリーンシート70の重量減少率が0.2wt%以上になるようにしつつ処理空間14b内のグリーンシート70の温度を200℃以下に保つことができる。また、グリーンシート70の温度は変化させずに乾燥後のグリーンシート70の重量減少率が異なる値になるように調整することもできる。特にこれに限定するものではないが、フィラメント41のヒーター出力の合計は4.5kW〜6.5kWとしてもよい。処理空間14b内の風量は0.05〜1.5Nm3/minとしてもよい。
以上詳述した本実施形態の乾燥方法では、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線をグリーンシート70に照射して、グリーンシート70を乾燥させる乾燥工程を行う。そのため、例えば赤外線の代わりに熱風を用いて乾燥を行う場合と比べて、グリーンシート70の内側の可塑剤などをより適切に蒸発させて乾燥後のグリーンシート70の強度を向上させることができる。例えば、乾燥後にグリーンシート70の内側に集中的に可塑剤が残るなど、乾燥後にグリーンシート70中に残った可塑剤の分布が不均一である場合には、グリーンシート70の強度が低下する場合があるが、このようなことを抑制できる。これにより、例えばその後の工程でグリーンシート70が破損することなどを抑制でき、製品の歩留まりが向上する。また、本実施形態では、連続炉である乾燥炉10を用いて複数のグリーンシート70を順次乾燥させることで、複数のグリーンシート70を比較的同じ処理条件(例えば照射される赤外線の強度や照射時間など)で乾燥させることができる。そのため、例えば熱風により処理空間内に配置された複数のグリーンシート70をまとめて乾燥させる場合と比較して、乾燥後のグリーンシート70の状態(例えばグリーンシート70の重量減少率)のばらつきを抑制でき、これによっても製品の歩留まりを向上させることができる。
また、グリーンシート70を乾燥する場合、グリーンシート70中の有機物(有機バインダー)が酸化することによっても、グリーンシート70の強度が向上(硬化)する。そして、本実施形態の乾燥方法では、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線をグリーンシート70に照射するため、例えば赤外線の代わりに熱風を用いる場合と比べて、グリーンシート70の内側でも有機物の酸化をより多く生じさせることができ、乾燥後のグリーンシート70の強度をより向上させることができる。例えば、グリーンシート70の表面付近で集中的に有機物の酸化が生じるなど、グリーンシート中の有機物の酸化が不均一に生じる場合には、グリーンシート70の強度が十分向上しない場合があるが、このようなことを抑制できる。
また、乾燥工程では、グリーンシート70の温度を200℃以下に保つようにするため、複数のグリーンシート70の乾燥後の耐力点の伸びばらつきを小さくできる。さらに、乾燥工程では、可塑剤を含有するグリーンシート70を乾燥させる。波長1μm〜4μの波長領域の赤外線は、可塑剤の蒸発に適しているため、効率よくグリーンシート70を乾燥させることができる。また、可塑剤は、フタル酸ジオクチルとした。さらにまた、乾燥工程では、厚みが100μm以上300μm以下のグリーンシート70を乾燥させる。厚みが100μm以上と比較的厚いグリーンシート70を乾燥する場合、赤外線の代わりに熱風を用いた乾燥では内部の可塑剤がより蒸発しにくい、本発明を適用する意義が高い。そしてまた、乾燥工程では、乾燥によるグリーンシート70の重量減少率が0.2wt%以上となるようにすることで、グリーンシート70の乾燥が十分なものとなりやすく、パターン形成後の乾燥処理時にグリーンシート70が収縮し過ぎてしまうことをより抑制できる。そしてまた、乾燥工程では、乾燥によるグリーンシート70の重量減少率が0.9wt%以下となるようにすることで、グリーンシート70が乾燥しすぎることによる不具合(反りや変色など)をより抑制できる。
また、本実施形態のセンサ素子の製造方法では、乾燥工程後のグリーンシート70の強度が向上することで、その後の工程でグリーンシート70が破損することなどを抑制でき、センサ素子の歩留まりが向上する。また、例えば準備工程後に乾燥工程を行わずにパターン形成工程や積層工程を行うと、パターン形成後の乾燥処理時にグリーンシート70が収縮し過ぎてしまい、パターンの位置ずれなどの不具合が生じる場合がある。本実施形態では、乾燥工程を行ってから後のパターン形成工程などを行うことで、そのような不具合を抑制できる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、乾燥炉10を用いて乾燥工程を行ったが、特にこれに限らず、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射してグリーンシートを乾燥させればよい。例えば、乾燥炉10の赤外線ヒーター40の配置,本数などを変更してもよいし、乾燥炉10において送風装置20及び排気装置30を省略してもよい。また、赤外線ヒーター40はいわゆる線状ヒーターとしたが、これに限らず例えば面状ヒーターとしてもよい。また、乾燥炉10は連続炉として構成されているが、これに限らずバッチ炉で乾燥工程を行ってもよい。なお、バッチ炉で複数のグリーンシートをまとめて乾燥させる場合、複数のグリーンシートが比較的同じ処理条件で乾燥できるように、赤外線ヒーターや複数のグリーンシートの配置を定めることが好ましい。こうすれば、乾燥後のグリーンシート70の状態(例えばグリーンシート70の重量減少率)のばらつきを抑制しやすい。
上述した実施形態では、本発明の乾燥方法をセンサ素子の製造方法におけるパターン形成工程前に行う乾燥工程に適用した場合について説明したが、特にこれに限られない。例えば、パターン形成工程におけるパターン形成後の乾燥処理において、本発明の乾燥方法を用いてもよい。また、センサ素子の製造に用いられるグリーンシートの乾燥に限らず、例えば他のセラミックス部品の製造に用いられるグリーンシートの乾燥に、本発明の乾燥方法を適用してもよい。この場合、グリーンシートの作製に用いられるセラミック粒子は、上述した実施形態の例に限らず、例えば、金属酸化物や金属炭化物、金属窒化物、金属複合化合物を用いてもよいし、これらの混合物としてもよい。
以下には、本発明の乾燥方法を具体的に実施した例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜9]
上述した実施形態の乾燥炉10を用いて本発明の乾燥方法を行い、実施例1〜9とした。実施例1〜9では、グリーンシート70を乾燥する際の1本あたりの赤外線ヒーター40のヒーター出力[kW/本]、照射時間[sec]、及び処理空間14b内の送風の風量[Nm3/min]を表1に示すように種々変更した。なお、実施例1〜9の各々において、5本の赤外線ヒーター40の出力は互いに同じとした。乾燥炉10において、フィラメント41の発熱長は350mmとし、赤外線ヒーター40の前後のピッチは240mmとし、ヒーター高さは100mmとした。また、炉体14の処理空間14bの前後の長さは1200mmとした。送風機22が供給する風は、120℃の大気とした。赤外線ヒーター40の冷媒流路46には常温の大気を流通させ、赤外線ヒーター40の1本あたりの風量は1.0Nm3/minとした。また、冷媒流路46を通過したあとの冷媒は、送風機22が供給する風の加熱に利用した。実施例1〜9の照射時間の調整は、搬送装置50によるグリーンシート70の搬送速度を調整することで行った。実施例1〜9におけるフィラメント41からの赤外線のピーク波長は約1.7μmであった。
乾燥対象のグリーンシート70は、以下のように作製した。まず、セラミックス粒子として安定化剤のイットリアを4mol%添加したジルコニア粒子(平均粒径0.6μm)、有機バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジオクチル、有機溶剤としてトルエン及びIPA(イソプロピルアルコール)、を使用し、これらを混合してグリーンシート用のペーストを作製した。各原料の使用量は、ペースト全体に対して、セラミックス粒子は47質量%、有機バインダーは3.0質量%、可塑剤は2.0質量%、有機溶剤は48質量%とした。ペーストの粘度は1500mPa・sとした。次に、作製したペーストを用いてドクターブレード法によりグリーンシート70を作製した。グリーンシート70は、乾燥炉10の処理空間14b内を通過する際の向きで、前後方向の長さが160mm、左右方向の幅が215mm、厚みが250μmとした。
実施例1〜9の各々について、乾燥工程前後のグリーンシート70の状態を調べた。具体的には、グリーンシート70の処理空間14b内での最大温度(シート最大温度とも称する)[℃]、乾燥後のグリーンシート70の重量減少率[wt%]、乾燥後のグリーンシート70の弾性強度[kgf/mm2]、及び乾燥後のグリーンシート70の耐力点の伸びばらつき[mm]を測定した。弾性強度は、グリーンシート70に対して前後方向に引っ張り荷重を加えていき、グリーンシート70に塑性変形が生じた際の荷重に基づいて測定した。なお、各実施例のシート最大温度、重量減少率、及び弾性強度は、それぞれ3枚のグリーンシート70の乾燥を行った場合の平均値として導出した。また、弾性強度の測定時の塑性変形が生じた際のグリーンシート70の伸び量[mm]を測定し、各実施例において3枚のグリーンシート70の伸び量の最大値と最小値との差を、耐力点の伸びばらつきとして導出した。実施例1〜9のヒーター出力、照射時間、風量、シート最大温度、重量減少率、弾性強度、及び耐力点の伸びばらつきを、表1にまとめて示す。
[比較例1〜17]
乾燥炉10の代わりに図3に示す乾燥炉110を用い、赤外線ヒーターを用いず熱風によりグリーンシート70を乾燥して、比較例1〜17とした。乾燥炉110は、複数のグリーンシート70をまとめて乾燥するバッチ炉として構成されている。乾燥炉110は、図3に示すように、内部に処理空間114aを有する炉体114と、処理空間114a内に熱風を供給するファン120と、処理空間114aからの雰囲気の出口となる排気口130と、グリーンシート70(図示省略)を支持する支持体150と、を備えている。支持体150は、上下5段の載置部を有するSUS製の棚151と、棚151の載置部上に載置される樹脂製のトレイ152と、を備えている。トレイ152は、図3では棚151の各段に2個ずつ図示しているが、実際には棚151の各段に6個ずつ配置した。また、トレイ152は、図示は省略するが、グリーンシート70を上面に載置する平板状のセッターを上下に5段有し、さらにその上段に蓋を有している。また、トレイ152は、セッター及び蓋の4隅を支持して上下のセッター間や蓋とセッターとの間を離間しつつ支持する図示しないスペーサを有している。1個のトレイ152は、5段のセッターの各々の上面に、グリーンシート70が一枚ずつ載置可能である(計5枚)。なお、1つのトレイ152内の上下に隣接するセッターの距離は5mmとした。また、上下に隣接するトレイ152間の距離は80mmとした。この複数のトレイ152のセッターの各々の上面に、グリーンシート70を載置した状態で乾燥を行った。グリーンシート70は、計140枚載置した。ファン120から供給される熱風は、130℃の大気とし、風量は0.6Nm3/minとした。乾燥時間は180minとした。この条件で、140枚のグリーンシート70の乾燥を行い、その中から互いに異なるトレイ152に載置されたグリーンシート70を抽出して比較例1〜17とした。比較例1〜17の各々について、実施例1〜9と同様に乾燥工程前後のグリーンシート70の状態を調べた。比較例1〜17のシート最大温度、重量減少率、及び弾性強度を、表2にまとめて示す。なお、各比較例のシート最大温度、重量減少率、及び弾性強度は、それぞれ同じトレイ152内の3枚のグリーンシート70の乾燥を行った場合の平均値として導出した。なお、比較例1〜17の乾燥対象のグリーンシート70は、実施例1〜9と同じ方法で作製したものを用いた。
図4は、実施例及び比較例の重量減少率と弾性強度との関係を示すグラフである。図4に示すように、実施例1〜9は、いずれも比較例1〜17と比較してグリーンシート70の弾性強度が向上しており、比較例1〜17と比べて乾燥後の強度を向上させることができることが確認できた。また、実施例1〜9では重量減少率が大きいほど弾性強度も大きくなる傾向が見られたが、比較例1〜17ではそのような傾向は見られず、重量減少率にかかわらず同程度の弾性強度であった。これは、熱風乾燥を行う比較例1〜17では、重量減少率を大きくしてもグリーンシート70の内部の可塑剤などを十分蒸発させることができず、これにより弾性強度が向上していないためと考えられる。これに対し実施例1〜9では、赤外線により内部の可塑剤などをより適切に蒸発させることができていることから、重量減少率に比例して弾性強度が向上していると考えられる。
なお、同じ実施例で複数のグリーンシート70を乾燥したときのグリーンシート70の重量減少率のばらつき(最大値と最小値との差)は、実施例1〜9のいずれも0.2wt%以下であった。これに対し、比較例1〜17における複数のグリーンシート70(17×3枚)の重量減少率のばらつきは、約0.7wt%であった。このことから、実施例1〜9のように連続炉である乾燥炉10を用いて乾燥させることで、比較例1〜17のようにバッチ炉である乾燥炉110により複数のグリーンシートをまとめて乾燥を行う場合と比べてグリーンシート70の重量減少率のばらつきを抑制できることが確認できた。
図5は、実施例1〜9のシート最大温度と耐力点の伸びばらつきとの関係を示すグラフである。図5及び表1に示すように、実施例1〜9のうちシート最大温度が200℃以下であった実施例4〜9は、シート最大温度が200℃を超えていた実施例1〜3と比べて耐力点の伸びばらつきが小さくなっていた。また、シート最大温度が低いほど耐力点の伸びばらつきが小さくなる傾向が見られた。
10 乾燥炉、14 炉体、14a 上部空間、14b 処理空間、15 前端面、16 後端面、17,18 開口、19 仕切り板、20 送風装置、22 送風機、24 パイプ構造体、26 給気口、30 排気装置、32 送風機、34 パイプ構造体、36 排気口、40 赤外線ヒーター、41 フィラメント、42 内管、43 ヒーター本体、44 外管、45 反射層、46 冷媒流路、50 搬送装置、51 ベルト、52,53 ローラー、60 制御装置、70 グリーンシート、110 乾燥炉、114 炉体、114a 処理空間、120 ファン、130 排気口、150 支持体、151 棚、152 トレイ。

Claims (8)

  1. セラミックスグリーンシートに対して、1μm以上4μm以下の波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して該セラミックスグリーンシートを乾燥させる乾燥工程、
    を含み、
    前記乾燥工程では、前記セラミックスグリーンシートの温度を200℃以下に保つようにする、
    セラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  2. 前記乾燥工程では、可塑剤を含有する前記セラミックスグリーンシートを乾燥させる、
    請求項に記載のセラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  3. 前記可塑剤は、フタル酸ジオクチルである、
    請求項に記載のセラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  4. 前記乾燥工程では、厚みが100μm以上300μm以下の前記セラミックスグリーンシートを乾燥させる、
    請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  5. 前記乾燥工程では、乾燥による前記セラミックスグリーンシートの重量減少率が0.2wt%以上0.9wt%以下となるようにする、
    請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  6. 前記乾燥工程では、前記セラミックスグリーンシートが存在する処理空間に0.05〜1.5Nm 3 /minの風量の送風を行う、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックスグリーンシートの乾燥方法。
  7. 複数のセラミックスグリーンシートを用意する準備工程と、
    前記準備工程の後、前記複数のセラミックスグリーンシートに対して、1μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して該複数のセラミックスグリーンシートを乾燥させる乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の複数のセラミックスグリーンシートにペーストからなる所定のパターンを形成して乾燥させるパターン形成工程と、
    前記パターン形成工程後のセラミックスグリーンシートを積層して積層体とする積層工程と、
    前記積層体から未焼成センサ素子を切り出す切り出し工程と、
    前記未焼成センサ素子を焼成する焼成工程と、
    を含み、
    前記乾燥工程では、前記セラミックスグリーンシートの温度を200℃以下に保つようにする、
    センサ素子の製造方法。
  8. 前記乾燥工程では、前記セラミックスグリーンシートが存在する処理空間に0.05〜1.5Nm 3 /minの風量の送風を行う、
    請求項7に記載のセンサ素子の製造方法。
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