JP6629658B2 - 腎症への進行リスクの診断を補助する方法及び診断用試薬キット - Google Patents

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Description

本発明は、腎症前期の糖尿病患者における腎症への進行リスクの診断を補助する方法に関する。また、本発明は、腎症への進行リスクの診断用試薬キットに関する。
糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症の一つであり、段階を経て進行する腎臓病である。糖尿病性腎症の病期は、腎症前期(第1期)から透析療法期(第5期)までの5つに分類されている。腎症前期(第1期)及び早期腎症期(第2期)の段階では、患者に自覚症状はほとんどない。しかし、腎症が進行するとやがて腎不全になり、透析治療が必要になる。透析治療は患者にとって大きな負担である。近年、透析治療を必要とする患者数は増加しており、それに伴う医療費の増加が問題となっている。
糖尿病性腎症では、初期の段階で適切な治療を開始できれば、腎機能を回復することができる。しかし、より進んだ段階では、治療によって病気の進行を遅らせることはできても、腎機能を維持し回復させることは難しい。したがって、糖尿病性腎症が進行するリスクのある患者を、腎機能の回復が望める初期の段階で発見して積極的に治療を行うことは、患者の将来の負担を軽減する。また、医療費の削減にも大きく貢献する。
現在、糖尿病性腎症の検査では、糸球体ろ過量(GFR)及び尿アルブミン値などの測定が行われている。また、種々のバイオマーカーも腎症の診断に利用されている。例えば、特許文献1には、尿中のアポリポプロテインA1(ApoA1)に基づいて、腎障害を検査することが記載されている。また、非特許文献1には、尿中のApoA1濃度が、健常者と腎機能障害のある患者との間で1000倍以上の差があったことが記載されている。この結果より、非特許文献1では、尿中ApoA1を測定することによって、健常者と無症状の腎症患者とを区別することも可能になると展望を述べている。非特許文献2には、血清中のアポリポプロテインB(ApoB)とApoA1との濃度比(血清ApoB/ApoA1比)が糖尿病性腎症の初期指標となる可能性について示唆されている。
米国特許出願公開第2003/0017523号明細書
Gomo ZA.ら, High-Density Lipoprotein Apolipoproteins in Urine: II. Enzyme-Linked Immunoassay of Apolipoprotein A-I, Clinical Chemistry, Vol.34, No.9, 1781-1786 (1988) Patel ML.ら, Clinical Correlation between ApoB/Apo-A1 Ratio in Type 2 Diabetic Nephrophathy-A Tertiary Centre Experience, Int. J. Sci. Res. Pub, Vol.2, Issue 9, 1-8 (2012)
非特許文献1には、被検者が現在において健常であるか又は腎機能障害を発症しているかを、尿中ApoA1濃度によって判別できることが記載されている。しかし、この文献には、腎症前期の糖尿病患者が将来においてより進行した腎症になるリスクを、尿中ApoA1濃度に基づいて診断することについては何ら記載も示唆もされていない。上述のとおり、腎症が進行するリスクのある糖尿病患者を初期の段階で発見して治療を開始することが重要である。よって、そのようなリスクの診断を可能にする手段の開発が望まれる。
本発明は、腎症前期の糖尿病患者の尿中ApoA1濃度を測定する工程と、尿中ApoA1濃度の値が所定の閾値以上の場合に、上記の患者は腎症に進行するリスクが高いと判定し、尿中ApoA1濃度の値が所定の閾値より低い場合に、上記の患者は腎症に進行するリスクが低いと判定する工程とを含む、腎症への進行リスクの診断を補助する方法を提供する。
また、本発明は、ApoA1を捕捉するためのApoA1と特異的に結合する第1の捕捉体と、ApoA1を検出するためのApoA1と特異的に結合する第2の捕捉体と、標識物質とを含む、腎症前期の糖尿病患者における腎症への進行リスクの診断用試薬キットを提供する。
本発明によれば、腎症前期の糖尿病患者について腎症が進行するリスクを診断することが可能になる。
腎症前期の糖尿病患者における、試料採取の6ヶ月後に糖尿病性腎症が進行した群及び進行しなかった群の試料(尿)中のApoA1及びApoB濃度を示すグラフである。 腎症前期の糖尿病患者における、試料採取の6ヶ月後に糖尿病性腎症が進行した群及び進行しなかった群の試料(血清)中のApoA1及びApoB濃度を示すグラフである。 腎症前期の糖尿病患者について尿中ApoA1濃度で腎症の進行リスクを判定した場合の判定精度を示すROC(Receiver Operating Characteristic)曲線である。 早期腎症期の糖尿病患者について尿中ApoA1濃度で腎症の進行リスクを判定した場合の判定精度を示すROC曲線である。 顕性腎症期の糖尿病患者について尿中ApoA1濃度で腎症の進行リスクを判定した場合の判定精度を示すROC曲線である。 腎症前期、早期腎症期及び顕性腎症期の糖尿病患者における、試料採取の6ヶ月後に糖尿病性腎症が進行した群及び進行しなかった群の試料(尿)中のApoA1及びApoB濃度を示すグラフである。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。 本実施形態に係る試薬キットの外観の一例を示す図である。
本実施形態の腎症への進行リスクを診断する方法(以下、「診断方法」ともいう)では、まず、腎症前期の糖尿病患者の尿中アポリポプロテインA1(ApoA1)濃度を測定する。
本実施形態の診断方法では、腎症前期の糖尿病患者(以下、「被検者」ともいう)を診断の対象とする。腎症前期は、糖尿病性腎症の病期の一つであり、第1期とも呼ばれる。現在、糖尿病性腎症の病期分類は、慢性腎臓病(CKD)の重症度分類を参照しており、下記の表1に示すとおりである。
本明細書において、腎症前期及び第1期とは、KDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcoms) 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Diseaseに記載のCKD重症度分類におけるアルブミン尿区分がA1であり、且つGFR区分がG1、G2、G3a又はG3bである病期をいう(表1参照)。本実施形態では、腎症前期の糖尿病患者は、糖尿病と診断された患者であって、尿アルブミン/クレアチニン(Cr)比が30 mg/gCrより低く、且つ推算GFRが30 mL/min/1.73 m2以上の患者であってもよい。糖尿病の診断法は特に限定されず、公知の方法で診断すればよい。尿アルブミン及びクレアチニンの測定法と推算GFRの算出法は、当該技術において公知である。
本実施形態では、試料として、被検者から採取した尿を用いる。被験者から採取される尿は、被験者の体調、食事及び服薬の有無などによって特に限定されない。また、尿の採取時期も特に限定されず、早朝尿、随時尿及び蓄尿のいずれを用いてもよい。本実施形態の方法では、尿の量は100〜500μL程度あれば十分である。
必要に応じて、ApoA1濃度の測定に適するように、被検者から採取した尿に前処理を行ってもよい。そのような前処理としては、希釈、pHの調整、不溶性固形成分の除去などが挙げられる。例えば、尿と所定のpHの緩衝液とを混合することにより、尿の希釈とpHの調整を行うことができる。また、遠心分離により不溶性固形成分を尿から除去できる。緩衝液は、ApoA1濃度の測定に適するpH範囲にて緩衝作用を有するかぎり、特に限定されない。例えば、Tris、MES、PIPES、TES、HEPESなどのグッドの緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。尿に無晶性塩類が存在する場合は、これを除去するためにEDTA塩などのキレート剤を尿に添加してもよい。以下、被検者から採取した尿及び前処理した尿を「尿試料」ともいう。
ApoA1は、高比重リポタンパク質(HDL)の構成成分として血液中に存在することが知られているが、腎機能の異常によりApoA1は排泄されて尿中にも存在する。尿中でApoA1は、マクロファージなどの貪食細胞に取り込まれた状態で存在する場合がある。あるいは、マクロファージ自身がアポ蛋白を産生しているとの報告もある。本実施形態では、尿の前処理として、ApoA1を取り込んだ貪食細胞からApoA1を尿中に遊離させてもよい。細胞からApoA1を遊離させる方法は特に限定されず、例えば、界面活性剤による可溶化、超音波破砕などが挙げられる。界面活性剤による細胞の可溶化は、例えば、被検者から採取した尿と、界面活性剤を含む緩衝液とを混合することにより行うことができる。界面活性剤を含む緩衝液の添加量は適宜設定できるが、例えば、尿量の1倍以上50倍以下の量、好ましくは尿量の1倍以上10倍以下の量を添加してもよい。界面活性剤の種類は、ApoA1の測定を妨げないかぎり特に限定されない。例えば、Triton X-100、Tween 20、オクチルグルコシドなどが挙げられる。尿試料中の界面活性剤の終濃度は、界面活性剤の種類に応じて適宜設定できる。例えば、Triton X-100を用いる場合、尿試料中の終濃度は0.001%(v/v)以上10%(v/v)以下、好ましくは0.01%(v/v)以上1%(v/v)以下である。
尿中ApoA1濃度は、尿試料に含まれるApoA1の濃度又は量を反映する値(以下、「ApoA1の測定値」ともいう)を取得できる方法によって測定できる。そのような方法としては、ApoA1と特異的に結合する捕捉体を用いて、ApoA1を捕捉する方法が好ましい。捕捉体により捕捉されたApoA1を公知の方法で検出することにより、ApoA1の測定値を取得できる。ApoA1と特異的に結合する捕捉体としては、例えば、抗体、アプタマーなどが挙げられる。それらの中でも抗体が特に好ましい。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びそれらの断片(例えば、Fab、F(ab')2など)のいずれであってもよい。ApoA1と特異的に結合する抗体(以下、「抗ApoA1抗体」ともいう)自体は当該技術において公知であり、一般に入手可能である。
本実施形態では、抗ApoA1抗体を用いる免疫学的測定法により、尿中ApoA1濃度を測定することが好ましい。免疫学的測定法としては、例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA法)、免疫複合体転移測定方法(特開平1-254868号公報参照)、免疫比濁法、イムノクロマト法、ラテックス凝集法などが挙げられる。ELISAキットなどの市販の測定用キットを用いてもよい。測定工程の一例として、サンドイッチELISA法により尿中ApoA1濃度を測定する場合について、以下に説明する。
まず、尿中のApoA1と、ApoA1を捕捉するための抗体(以下、「捕捉用抗体」ともいう)と、ApoA1を検出するための抗体(以下、「検出用抗体」ともいう)とを含む複合体を固相上に形成させる。この複合体は、尿試料と、捕捉用抗体と、検出用抗体とを混合することにより形成できる。そして、複合体を含む溶液を、捕捉用抗体を捕捉できる固相と接触させることにより、上記の複合体を固相上に形成させることができる。あるいは、捕捉用抗体をあらかじめ固定した固相を用いてもよい。すなわち、捕捉用抗体を固定した固相と、尿試料と、検出用抗体とを接触させることにより、上記の複合体を固相上に形成させることができる。ここで、捕捉用抗体及び検出用抗体がいずれもモノクローナル抗体の場合は、互いのエピトープが異なっていることが好ましい。
捕捉用抗体の固相への固定の態様は特に限定されない。例えば、捕捉用抗体と固相とを直接結合させてもよいし、捕捉用抗体と固相とを別の物質を介して間接的に結合させてもよい。直接の結合としては、例えば、物理的吸着などが挙げられる。間接的な結合としては、例えば、ビオチンと、アビジン又はストレプトアビジン(以下、「アビジン類」ともいう)との組み合わせを介した結合が挙げられる。この場合、捕捉用抗体をあらかじめビオチンで修飾し、固相にアビジン類をあらかじめ結合させておくことにより、ビオチンとアビジン類との結合を介して、捕捉用抗体と固相とを間接的に結合させることができる。
固相の素材は特に限定されず、例えば、有機高分子化合物、無機化合物、生体高分子などから選択できる。有機高分子化合物としては、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。無機化合物としては、磁性体(酸化鉄、酸化クロム及びフェライトなど)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。生体高分子としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、ゼラチン、セルロースなどが挙げられる。これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。固相の形状は特に限定されず、例えば、粒子、膜、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管などが挙げられる。
固相上に形成された複合体を、当該技術において公知の方法で検出することにより、尿におけるApoA1の測定値を取得できる。例えば、検出用抗体として、標識物質で標識した抗体を用いた場合は、その標識物質により生じるシグナルを検出することにより、ApoA1の測定値を取得できる。あるいは、検出用抗体に対する標識二次抗体を用いた場合も、同様にしてApoA1の測定値を取得できる。
本実施形態では、複合体の形成工程と複合体の検出工程との間に、複合体を形成していない未反応の遊離成分を除去するB/F(Bound/Free)分離を行ってもよい。未反応の遊離成分とは、複合体を構成しない成分をいう。例えば、ApoA1と結合しなかった捕捉用抗体及び検出用抗体などが挙げられる。B/F分離の手段は特に限定されないが、固相が粒子であれば、遠心分離により、複合体を捕捉した固相だけを回収することによりB/F分離ができる。固相がマイクロプレートやマイクロチューブなどの容器であれば、未反応の遊離成分を含む液を除去することによりB/F分離ができる。また、固相が磁性粒子の場合は、磁石で磁性粒子を磁気的に拘束した状態でノズルによって未反応の遊離成分を含む液を吸引除去することによりB/F分離ができる。未反応の遊離成分を除去した後、複合体を捕捉した固相をPBSなどの適切な水性媒体で洗浄してもよい。
本明細書において、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、及び、シグナルの強度を半定量的に検出することを含む。半定量的な検出とは、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「中」、「強」などのように段階的に示すことをいう。本実施形態では、シグナルの強度を定量的又は半定量的に検出することが好ましい。
標識物質は、検出可能なシグナルが生じるかぎり特に限定されない。例えば、それ自体がシグナルを発生する物質(以下、「シグナル発生物質」ともいう)であってもよいし、他の物質の反応を触媒してシグナルを発生させる物質であってもよい。シグナル発生物質としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素などが挙げられる。他の物質の反応を触媒して検出可能なシグナルを発生させる物質としては、例えば、酵素などが挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)などの蛍光色素、GFPなどの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。それらの中でも、標識物質として、酵素が好ましく、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが特に好ましい。
シグナルを検出する方法自体は、当該技術において公知である。本実施形態では、上記の標識物質に由来するシグナルの種類に応じた測定方法を適宜選択すればよい。例えば、標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を反応させることによって発生する光、色などのシグナルを、分光光度計などの公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。
酵素の基質は、該酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択できる。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質として、CDP-Star(登録商標)(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2'-(5'-クロロ)トリクシロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3-(4-メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2-(5'-クロロ)トリシクロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリン酸などの発色基質が挙げられる。また、酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合、基質としては、ルミノール及びその誘導体などの化学発光基質、2, 2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸アンモニウム)(ABTS)、1, 2-フェニレンジアミン(OPD)、3, 3', 5, 5'-テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色基質が挙げられる。
標識物質が放射性同位体である場合は、シグナルとしての放射線を、シンチレーションカウンターなどの公知の装置を用いて測定できる。また、標識物質が蛍光物質である場合は、シグナルとしての蛍光を、蛍光マイクロプレートリーダーなどの公知の装置を用いて測定できる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
シグナルの検出結果は、ApoA1の測定値として用いてもよい。例えば、シグナルの強度を定量的に検出する場合は、シグナル強度の測定値自体又は該測定値から取得される値を、ApoA1の測定値として用いることができる。シグナル強度の測定値から取得される値としては、例えば、ApoA1の測定値から陰性対照試料の測定値又はバックグラウンドの値を差し引いた値などが挙げられる。陰性対照試料は適宜選択できるが、例えば、健常者から得た尿などが挙げられる。
本実施形態では、ApoA1濃度が既知の複数の標準試料についてApoA1の測定値を取得し、ApoA1濃度とApoA1の測定値との関係を示す検量線を作成してもよい。尿試料から取得したApoA1の測定値をこの検量線に当てはめて、尿中ApoA1濃度の値を取得することができる。また、尿量による誤差を回避するために、取得した尿中ApoA1濃度の値を、被検者の尿中クレアチニン濃度の値によって補正することが好ましい。具体的には、尿中ApoA1濃度の値を、クレアチニン1g当たりのApoA1濃度(μg/gCr)に換算することが好ましい。これにより、検体間で尿中ApoA1濃度の値を比較することができる。
本実施形態では、磁性粒子に固定された捕捉用抗体と、標識物質で標識された検出用抗体とを用いるサンドイッチELISA法により、尿中ApoA1濃度を測定してもよい。この場合、測定は、HISCLシリーズ(シスメックス株式会社製)などの市販の全自動免疫測定装置を用いて行ってもよい。
次いで、本実施形態の方法では、尿中ApoA1濃度の値に基づいて、被検者である腎症前期の糖尿病患者が腎症に進行するリスクが高いか又は低いかを判定する。具体的には、尿中ApoA1濃度の値が所定の閾値以上の場合は、被検者は腎症に進行するリスクが高いと判定できる。また、尿中ApoA1濃度の値が所定の閾値より低い場合は、被検者は腎症に進行するリスクが低いと判定できる。
本実施形態の方法によって糖尿病性腎症の進行リスクが高いと判定された場合は、被検者が治療を受けなければ、所定の期間内に病期が早期腎症期(第2期)以降に進行する、と予測してもよい。また、糖尿病性腎症の進行リスクが低いと判定された場合は、被検者が治療を受けなくとも、所定の期間内に病期が早期腎症期(第2期)以降に進行することはない、と予測してもよい。所定の期間としては、例えば12ヶ月、好ましくは6ヶ月の期間が挙げられる。このように、本実施形態の方法は、医師などに対して、糖尿病性腎症の進行リスクの診断を補助する情報の提供を可能にする。なお、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」(日本糖尿病学会)では、腎症の発症予防として厳格な血糖管理と血圧管理を指導している。微量アルブミン尿を示す早期腎症期に移行すれば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬による治療投薬することを指導している。本発明によって腎症前期の段階で進行リスクが高いと診断された糖尿病患者には、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬を早期に投薬して、腎症の進行を予防することができる。
上記の所定の閾値は特に限定されず、適宜設定できる。例えば、腎症前期の糖尿病患者について尿中ApoA1濃度の値を含む腎機能に関するデータを蓄積することにより、所定の閾値を経験的に設定してもよい。あるいは、次のようにして所定の閾値を設定してもよい。まず、複数の腎症前期の糖尿病患者から尿を採取し、尿中ApoA1濃度を測定する。尿の採取から所定の期間の経過後、これらの患者について腎機能に関する検査を行い、糖尿病性腎症の病期を確認する。測定した尿中ApoA1濃度のデータを、糖尿病性腎症が早期腎症期(第2期)以降に進行した患者群のデータと、糖尿病性腎症が進行しなかった患者群のデータとに分類する。そして、糖尿病性腎症が進行した患者群の尿中ApoA1濃度と、糖尿病性腎症が進行しなかった患者群の尿中ApoA1濃度とを最も精度よく区別可能な値を求め、その値を所定の閾値として設定する。閾値の設定においては、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮することが好ましい。
本発明の範囲には、上記の腎症の進行リスクの診断方法に用いられる試薬キットも含まれる。すなわち、本発明は、ApoA1を捕捉するためのApoA1と特異的に結合する第1の捕捉体と、ApoA1を検出するためのApoA1と特異的に結合する第2の捕捉体と、標識物質とを含む、腎症前期の糖尿病患者における腎症への進行リスクの診断用試薬キット(以下、「試薬キット」ともいう)を提供する。標識物質が酵素である場合、本実施形態の試薬キットは、該酵素に対する基質をさらに含んでいてもよい。
本実施形態において、第1の捕捉体、第2の捕捉体、標識物質及び基質の形態は特に限定されず、固体(例えば、粉末、結晶、凍結乾燥品など)であってもよいし、液体(例えば、溶液、懸濁液、乳濁液など)であってもよい。本実施形態では、第1の捕捉体、第2の捕捉体、標識物質及び基質は、それぞれ別の容器に保存されているか又は個別に包装されていることが好ましい。なお、尿試料、第1の捕捉体、第2の捕捉体、標識物質及び基質についての詳細は、上記の診断方法の説明で述べたことと同様である。本実施形態では、第1の捕捉体及び第2の捕捉体はいずれも抗ApoA1抗体であることが好ましい。第1の捕捉体及び第2の捕捉体がいずれもモノクローナル抗体の場合は、互いのエピトープが異なっていることが好ましい。
本実施形態では、上記の各種試薬を収容した容器を箱に梱包して、ユーザに提供してもよい。この箱には、試薬キットの添付文書を同梱していてもよい。この添付文書には、たとえば、試薬キットの構成、尿中ApoA1濃度の測定プロトコールなどが記載されることが好ましい。図5Aに、本実施形態の試薬キットの外観の一例を示す。図中、10は、試薬キットを示し、11は、第1の捕捉体を収容した第1容器を示し、12は、第2の捕捉体を収容した第2容器を示し、13は、標識物質としての酵素を収容した第3容器を示し、14は、酵素の基質を収容した第4容器を示し、15は、添付文書を示し、16は、梱包箱を示す。
本実施形態の試薬キットは、被検者から採取した尿を前処理するための前処理液をさらに含んでいてもよい。前処理液としては上述の緩衝液が好ましい。前処理液は、ApoA1を取り込んだ細胞を可溶化するための界面活性剤を含んでいてもよい。緩衝液及び界面活性剤についての詳細は、上記の診断方法の説明で述べたことと同様である。本実施形態では、第1の捕捉体、第2の捕捉体、標識物質、基質及び前処理液は、それぞれ別の容器に保管されているか又は個別に包装されていることが好ましい。図5Bに、前処理液をさらに含む試薬キットの外観の一例を示した。なお、固相についての詳細は、上記の診断方法の説明で述べたことと同様である。図中、20は、試薬キットを示し、21は、第1の捕捉体を収容した第1容器を示し、22は、第2の捕捉体を収容した第2容器を示し、23は、標識物質としての酵素を収容した第3容器を示し、24は、酵素の基質を収容した第4容器を示し、25は、前処理液を収容した第5容器を示し、26は、添付文書を示し、27は、梱包箱を示す。
本実施形態の試薬キットは、第1の捕捉体を固定化するための固相をさらに含んでいてもよい。この場合、第1の捕捉体、第2の捕捉体、標識物質、基質及び固相は、それぞれ別の容器に保管されているか又は個別に包装されていることが好ましい。図5Cに、固相をさらに含む試薬キットの外観の一例を示した。固相についての詳細は、上記の診断方法の説明で述べたことと同様である。図中、30は、試薬キットを示し、31は、第1の捕捉体を収容した第1容器を示し、32は、第2の捕捉体を収容した第2容器を示し、33は、標識物質としての酵素を収容した第3容器を示し、34は、酵素の基質を収容した第4容器を示し、35は、固相(96ウェルマイクロプレート)を示し、36は、添付文書を示し、37は、梱包箱を示す。図5Dに、前処理液をさらに含む試薬キットの外観の一例を示した。図中、40は、試薬キットを示し、41は、第1の捕捉体を収容した第1容器を示し、42は、第2の捕捉体を収容した第2容器を示し、43は、標識物質としての酵素を収容した第3容器を示し、44は、酵素の基質を収容した第4容器を示し、45は、前処理液を収容した第5容器を示し、46は、固相(96ウェルマイクロプレート)を示し、47は、添付文書を示し、48は、梱包箱を示す。
さらなる実施形態では、第1の捕捉体はあらかじめ固相に固定化されていてもよい。さらに、標識物質はあらかじめ第2の捕捉体に結合されていてもよい。この場合、試薬キットは、第1の捕捉体を固定化した固相、標識物質を結合させた第2の捕捉体、及び基質を含む。図5Eに、当該試薬キットの外観の一例を示した。図中、50は、試薬キットを示し、51は、標識物質としての酵素を結合させた第2の捕捉体を収容した第1容器を示し、52は、酵素の基質を収容した第2容器を示し、53は、第1の捕捉体を固定化した固相(96ウェルマイクロプレート)を示し、54は、添付文書を示し、55は、梱包箱を示す。図5Fに、前処理液をさらに含む試薬キットの外観の一例を示した。図中、60は、試薬キットを示し、61は、標識物質としての酵素を結合させた第2の捕捉体を収容した第1容器を示し、62は、酵素の基質を収容した第2容器を示し、63は、前処理液を収容した第3容器を示し、64は、第1の捕捉体を固定化した固相(96ウェルマイクロプレート)を示し、65は、添付文書を示し、66は、梱包箱を示す。
本実施形態の試薬キットは、上述の各種試薬の他、固相の洗浄液、酵素反応の停止剤、キャリブレーターなどを適宜含んでいてもよい。
本発明の範囲には、上記の試薬を、腎症の進行リスクの診断用試薬キットの製造のために使用することも含まれる。すなわち、本発明は、腎症の進行リスクの診断用試薬キットの製造のための、ApoA1を捕捉するためのApoA1と特異的に結合する第1の捕捉体、ApoA1を検出するためのApoA1と特異的に結合する第2の捕捉体、及び標識物質の使用にも関する。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
腎症前期(第1期)の糖尿病患者である被検者から血液及び尿を採取し、6ヶ月後にこれらの被検者を、腎症が進行した群と進行しなかった群とに分けた。各群の被検者の血中及び尿中のApoA1及びApoB濃度を比較した。なお、ApoBは腎臓病のバイオマーカーとして知られている。
(1) 被検者からの試料の採取
尿アルブミン/Cr比が30 mg/gCrより低く、且つGFR区分が30 mL/min/1.73 m2以上である糖尿病患者(n=14)から、試料として血液及び尿を採取した。
(2) バイオマーカーの測定
(2.1) 血清中のApoA1、ApoB及びクレアチニンの濃度の測定
アポA-Iオート・N「第一」及びアポBオート・N「第一」(いずれも積水メディカル株式会社)を用いて、上記(1)で得た各被検者の血液から、血清中のApoA1及びApoBの濃度を測定した。具体的な操作はキットの添付文書に従った。エルシステム・CRE(シスメックス株式会社)及びCRE標準液(シスメックス株式会社)を用いて、被検者の血液から血清クレアチニン(sCR)の濃度を測定した。具体的な操作は試薬の添付文書に従った。
(2.2) 尿中のApoA1、ApoB及びクレアチニンの濃度の測定
上記(1)で得た各被検者の尿と、後述のキットに添付のTriton-X100/PBSとを等量混合した後、検体希釈液で25倍に希釈した。Human Apolipoprotein A1 ELISA Pro Kit (MABTECH AB社)及びHuman Apolipoprotein B ELISA Pro Kit (MABTECH AB社)を用いて、希釈した尿から尿中のApoA1及びApoBの濃度を測定した。具体的な操作は、血清に代えて希釈した尿を用いたことを除いて、キットの添付文書に従った。エルシステム・CRE(シスメックス株式会社)及びCRE標準液(シスメックス株式会社)を用いて、被検者の尿から尿中クレアチニンの濃度を測定した。具体的な操作は試薬の添付文書に従った。尿量による誤差を補正するため、尿中クレアチニンの濃度を用いて、測定した尿中ApoA1及びApoB濃度をクレアチニン1g当たりの濃度(μg/gCr)に換算した。
(3) 被検者の分類
上記(1)の試料採取から6ヶ月後、被検者から血液を採取した。得られた血液から、エルシステム・CRE(シスメックス株式会社)及びCRE標準液(シスメックス株式会社)を用いてsCR濃度を測定した。試料採取時のsCRの測定値と6ヶ月後のsCRの測定値のそれぞれから、下記の式に従って推算糸球体ろ過量(eGFR)を算出した。式中、「Age」は被検者の年齢である。
eGFR (mL/min/1.73 m2) = 194×sCr-1.094×Age-0.287
(被検者が女性の場合は、eGFR = 194×sCr-0.739×Age-0.287)
試料採取時のeGFRと6ヶ月後のeGFRから、下記の式に従って1年間当たりのeGFRの変化率(%)を算出した。得られた変化率の値を腎症の進行性指標(%)とした。進行性指標が0以上である被検者を、腎症が進行しなかった群(以下、「非進行群」ともいう。n=7)に分類し、進行性指標が0より低い被検者を、腎症が進行した群(以下、「進行群」ともいう。n=7)に分類した。
変化率(%) = [(6ヶ月後のeGFR−試料採取時のeGFR)/(試料採取時のeGFR)]×測定日間インターバル(日)×100/365
(4) 結果
非進行群及び進行群における尿中のApoA1及びApoB濃度を、図1に示す。図1に示されるように、進行群の尿中ApoA1濃度は、非進行群の尿中ApoA1濃度よりも有意に高かった。一方、尿中ApoB濃度については、進行群と非進行群との間に統計学的有意差が認められなかった。非進行群及び進行群における血清中のApoA1及びApoB濃度を、図2に示す。図2に示されるように、血清中のApoA1及びApoB濃度については、進行群と非進行群との間に統計学的有意差が認められなかった。また、血清ApoB/ApoA1比についても、進行群と非進行群との間に統計学的有意差が認められなかった。ここで、Patel ML.ら(Clinical Correlation between ApoB/Apo-A1 Ratio in Type 2 Diabetic Nephrophathy-A Tertiary Centre Experience, Int. J. Sci. Res. Pub, Vol2, Issue 9, 1-8 (2012):非特許文献2)は、血清ApoA1/ApoB比が糖尿病性腎症の初期指標となるかもしれないと記載している。しかし、本実施例の結果より、血清ApoB/ApoA1比は、腎症前期(第1期)の糖尿病患者の腎症への進行リスクの判定には利用できないことが示された。
以上より、尿中ApoA1濃度に基づいて、腎症前期(第1期)の糖尿病患者の腎症への進行リスクを予測できることが示唆された。
実施例2
早期腎症期(第2期)及び顕性腎症期(第3期)の糖尿病患者である被検者についても、尿中ApoA1濃度により腎症の進行リスクを予測できるか検討した。
(1) 被検者からの試料の採取
尿アルブミン/Cr比が30 mg/gCr以上300 mg/gCrより低く、且つGFR区分が30 mL/min/1.73 m2以上である糖尿病患者(第2期。n=6)及び尿アルブミン/Cr比が300 mg/gCr以上、且つGFR区分が30 mL/min/1.73 m2以上である糖尿病患者(第3期。n=8)から、試料として血液及び尿を採取した。
(2) バイオマーカーの測定
実施例1と同様にして、尿中ApoA1濃度、血清及び尿中クレアチニン濃度を測定した。また、尿中ApoA1濃度及び尿中クレアチニン濃度から、クレアチニン1g当たりの尿中ApoA1濃度を算出した。
(3) 被検者の分類及びROC解析
上記(1)の試料採取から6ヶ月後、被検者から血液を採取し、sCR濃度を測定した。実施例1と同様にして、試料採取時及び6ヶ月後のsCR濃度から腎症の進行性指標(%)を算出し、被検者を腎症の進行群と非進行群とに分類した。第2期及び第3期の被検者について尿中ApoA1濃度で腎症の進行リスクを判定した場合の判定精度を、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線解析により調べた。比較のため、実施例1の腎症前期の被検者についても同様にROC解析を行った。
(4) 結果
ROC解析の結果はAUC (Area Under the Curve)の値により評価した。各病期の被検者についてのROC曲線を、図3A(第1期)、図3B(第2期)及び図3C(第3期)に示す。各ROC曲線のAUCを表2に示す。また、各病期の被検者の進行群及び非進行群の尿中ApoA1濃度を図4に示す。
図3B、図3C及び図4に示されるように、早期腎症期(第2期)及び顕性腎症期(第3期)の糖尿病患者に対しては、尿中ApoA1濃度に基づく腎症の進行リスクの判定結果には有意差がなかった。一方、図3A及び図4に示されるように、腎症前期(第1期)の糖尿病患者に対して尿中ApoA1濃度に基づいて腎症への進行リスクを判定した場合、その判定結果には有意差があった。
上述のように、Gomo ZA.ら(High-Density Lipoprotein Apolipoproteins in Urine: II. Enzyme-Linked Immunoassay of Apolipoprotein A-I, Clinical Chemistry, Vol.34, No.9, 1781-1786 (1988):非特許文献1)は、腎機能障害のある患者と健康な被検者との間で尿中ApoA1濃度に1000倍以上の差があったと報告している。この結果より、Gomo ZA.らは、尿中ApoA1の測定により無症状の腎症患者と健康な被検者とを区別できる可能性を示唆している。Gomo ZA.らの議論に基づけば、通常は、第2期以降の腎症患者と健常者との判別に用いられるバイオマーカーである尿中ApoA1が、腎症前期の患者と健常者とを判別するためのマーカーとしても利用できるものと考えられる。しかし、本実施例では、このようなGomo ZA.らの教示に反する結果が得られた。本発明者らは、驚くべきことに、第2期以降の腎症である糖尿病患者の進行リスク判定には利用できないバイオマーカーである尿中ApoA1が、腎症前期の糖尿病患者の進行リスク判定にはきわめて有用なマーカーであることを見出した。
実施例3
尿中ApoA1以外の腎臓病のバイオマーカーの尿中濃度によっても腎症前期(第1期)の糖尿病患者の腎症への進行リスクを判定できるかを検討した。
(1) 被検者からの試料の採取
尿アルブミン/Cr比が30 mg/gCrより低く、且つGFR区分が30 mL/min/1.73 m2以上である糖尿病患者(n=14)から、試料として血液及び尿を採取した。
(2) バイオマーカーの測定
尿中バイオマーカーとして、α1-マイクログロブリン(α1M)、Kidney injury molecule-1(KIM-1)、N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)、IV型コラーゲン、尿アルブミン(uALB)、尿蛋白(uTP)、リポカリン-2 (NGAL)及びL型脂肪酸結合蛋白(LFABP)の尿中濃度を測定した。α1M濃度は、LZテスト‘栄研'α-1M(栄研化学株式会社)及び尿中α-1M測定用LZ-α1-M標準‘栄研'(栄研化学株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。KIM-1濃度は、KIM-1 (human) Elisa Kit (Enzo life sciences Inc.)を添付文書に従って用いて測定した。NAG濃度は、Lタイプワコー NAG(和光純薬株式会社)及びNAGキャリブレーター(和光純薬株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。IV型コラーゲンは、パナウリア(登録商標)uIV・C「プレート」(協和ファーマケミカル株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。uALB濃度は、LZテスト‘栄研'U-ALB(栄研化学株式会社)及びLZ-U-ALBキャリブレーター‘栄研'(栄研化学株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。uTPは、マイクロTP-AR(和光純薬株式会社)及び蛋白標準液(蛋白100 mg/dL、和光純薬株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。NGAL濃度は、尿をキットに添付の検体希釈液で50倍に希釈したこと以外は、NGAL (human) Elisa Kit (Enzo life sciences Inc.)を添付文書に従って用いて測定した。LFABP濃度は、ノルディア(登録商標)L-FABP (積水メディカル株式会社)及びL-FABPキャリブレーター(積水メディカル株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。比較のため、尿中ApoA1及び血清中ApoBの濃度も実施例1と同様にして測定した。尿中クレアチニン濃度は、エルシステム・CRE(シスメックス株式会社)及びCRE標準液(シスメックス株式会社)を添付文書に従って用いて測定した。尿量による誤差を補正するため、尿中クレアチニンの濃度を用いて、測定した各バイオマーカーの濃度をクレアチニン1g当たりの濃度(μg/gCr)に換算した。また、実施例1と同様にして、被検者の血液からsCr濃度を測定した。
(3) 被検者の分類
上記(1)の試料採取から6ヶ月後、被検者から血液を採取し、sCR濃度を測定した。実施例1と同様にして、試料採取時及び6ヶ月後のsCR濃度から腎症の進行性指標(%)を算出し、被検者を腎症の進行群と非進行群とに分類した。
(4) 統計学的解析
各バイオマーカーの濃度について、進行群と非進行群との間に統計学的有意差があるか否かを調べた。具体的には、各バイオマーカーについて、データの正規性を確認し、進行群及び非進行群における分散が等しいかどうか確認した。その上で、進行群と非進行群の平均値の差が等しいかどうか検定した。各バイオマーカーについて進行するか否かを判定した場合の判定精度をROC曲線解析により調べ、AUCの値で評価した。また、尿中バイオマーカーの測定値から6ヶ月後の進行指標の値(血清クレアチニン値又はeGFR値)を予測できるか否かを単回帰分析で評価した。
(5) 結果
解析結果を表3に示す。表3において、危険率P値は0.05よりも低い場合に有意差があるといえる。また、AUCの値は1に近いほど判定精度が高いといえる。なお、L-FABPについては、腎症前期の全ての試料において測定値がゼロ(検出限界以下)であったので、評価できなかった。
表3に示されるように、尿中ApoA1の濃度の平均値は、進行群と非進行群との間で8倍以上変化しており、両群の間に統計学的有意差があることがわかった。また、AUCも0.9を超えており、尿中ApoA1の濃度から6ヵ月後のeGFRの変化量を予測できた。これに対して、ApoA1以外のバイオマーカーはいずれも、進行群と非進行群との間に統計学的有意差は認められなかった。これらのバイオマーカーは腎症の尿中マーカーとして知られているが、これらの中に、腎症前期(第1期)の糖尿病患者の腎症への進行リスクを判定可能なマーカーはなかった。
10、20、30、40、50、60 試薬キット
11、21、31、41、51、61 第1容器
12、22、32、42、52、62 第2容器
13、23、33、43、63 第3容器
14、24、34、44 第4容器
25、45 第5容器
15、26、36、47、54、65 添付文書
16、27、37、48、55、66 梱包箱
35、46、53、64 固相

Claims (6)

  1. 腎症前期の糖尿病患者の尿中アポリポプロテインA1(ApoA1)濃度を測定する工程と、
    前記尿中ApoA1濃度の値が所定の閾値以上の場合に、前記患者は腎症に進行するリスクが高いと判定し、前記尿中ApoA1濃度の値が前記所定の閾値より低い場合に、前記患者は腎症に進行するリスクが低いと判定する工程と
    を含む、腎症への進行リスクの診断を補助する方法。
  2. 尿中ApoA1濃度が、ApoA1と特異的に結合する捕捉体を用いて測定される請求項1に記載の方法。
  3. ApoA1と特異的に結合する捕捉体が、抗ApoA1抗体である請求項2に記載の方法。
  4. 腎症前期の糖尿病患者が、尿アルブミン/クレアチニン比が30 mg/gCrより低く、且つ推算GFRが30 mL/min/1.73 m2以上の糖尿病患者である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 尿中ApoA1濃度の値が、前記患者の尿中クレアチニン濃度の値により補正された値である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ApoA1を捕捉するためのApoA1と特異的に結合する第1の捕捉体と、ApoA1を検出するためのApoA1と特異的に結合する第2の捕捉体と、標識物質とを含み、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法に用いられる、腎症への進行リスクの診断用試薬キット。
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