実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る圧縮機1の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態1に係る圧縮機1の一例を概略的に示す縦断面図である。なお、圧縮機1は、空気調和装置等の冷凍サイクル装置に用いられるものであり、冷凍サイクル装置の冷媒回路を構成する要素となる。
なお、図1を含む以下の図面では、冷媒回路、並びに、例えば、放熱器、蒸発器、減圧装置、及び油分離器等の冷媒回路を構成する他の構成要素については図示していない。また、以下の図面では各構成部材の寸法の関係及び形状が、実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面では、同一又は類似の部材又は部分には、同一の符号を付すか、又は、符号を付すことを省略している。また、以下の説明における圧縮機1の各々の構成部材同士の位置関係、例えば上下関係等の位置関係は、原則として、圧縮機1を使用可能な状態に設置したときの位置関係とする。
圧縮機1は、ローリングピストン型のロータリ圧縮機であり、圧縮機1の内部に吸入した低圧のガス冷媒を、高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機1の筐体は、シリンダ形状の圧力密閉容器2として構成されている。圧力密閉容器2は、中空円筒形状の胴体部2aと、縦断面がU字形状の底部2bと、縦断面が逆U字形状の蓋部2cとにより構成され、底部2b及び蓋部2cの開口部の外側面は、胴体部2aの開口部の内側面に固定されている。底部2bとの固定部分、及び胴体部2aの蓋部2cとの固定部分は、例えばアーク溶接又は抵抗溶接等によって接合されている。
圧力密閉容器2の胴体部2aの外側には、サクションマフラ3の筐体3aが配置されている。図1を含む以下の図面では図示しないが、サクションマフラ3の筐体3aは、圧力密閉容器2の外側面に配置された支持部材を介して圧力密閉容器2の胴体部2aに固定されている。サクションマフラ3の筐体3aの頂部には、流入管3bが筐体3aを貫通して固定されている。流入管3bは、低圧のガス冷媒又は乾き度の高い二相冷媒をサクションマフラ3の筐体3aの内部に流入させる冷媒配管である。また、サクションマフラ3の筐体3aの底部には、吸入管4の一端が貫通して固定されており、吸入管4の他の一端は、圧力密閉容器2の胴体部2aの側面部を貫通して固定されている。
サクションマフラ3は、流入管3bから流入する冷媒により発生する騒音を低減又は除去する消音器である。また、サクションマフラ3は、アキュムレータ機能も有しており、余剰冷媒を貯留する冷媒貯留機能と、運転状態が変化する際に一時的に発生する液冷媒を滞留させることによる気液分離機能とを有している。サクションマフラ3の気液分離機能により、圧力密閉容器2の内部に大量の液冷媒が流入し、圧縮機1で液圧縮が行われるのを防ぐことができる。
吸入管4は、低圧のガス冷媒をサクションマフラ3から圧力密閉容器2の内部に吸入させる冷媒配管である。圧力密閉容器2の胴体部2aに設けられた吸入穴5には、固定部材6が配置されており、吸入管4は、吸入穴5に配置された固定部材6を介して、圧力密閉容器2の胴体部2aに固定されている。なお、図1を含む以下の図面では図示しないが、吸入管4は、側面部に油戻し穴を設けて、冷凍サイクル装置の油分離器において分離された高圧のガス冷媒に含まれる潤滑油成分を吸入管4を介して内部に戻すように構成してもよい。
固定部材6は、例えば、延長管6aと、接続管6bと、リング6cとを有する構成にできる。延長管6aは吸入穴5に挿入されており、圧力密閉容器2の内部と連通している。吸入管4は、延長管6aに挿入されており。接続管6bは、延長管6aの外側面に接合され、吸入管4の外側面と延長管6aの内側面との間の隙間を密封している。リング6cは、吸入穴5に接合されており、延長管6a及び接続管6bの外側面並びに圧力密閉容器2に接合され、吸入管4と吸入穴5との間の隙間を密封している。固定部材6によって、圧力密閉容器2の内部の気密性が確保されている。
圧力密閉容器2の蓋部2cの上面には、吐出管7が貫通して固定されている。吐出管7は、高圧のガス冷媒を圧力密閉容器2の外部に吐出させる冷媒配管である。吐出管7と蓋部2cとの固定部分は、例えばろう付け又は抵抗溶接等によって接合されている。
更に、圧力密閉容器2の蓋部2cの上面には、ガラス端子8が配置されている。ガラス端子8は、外部電源を接続するインタフェースを提供している。外部電源は、圧縮機1に電力を供給する電源装置であり、交流周波数が50Hz又は60Hzの一般商用交流電源、又は交流周波数を変化させることが可能なインバータ電源が用いられる。周波数可変のインバータ電源を用いた場合、圧縮機1の回転数を変化させることができるため、圧縮機1では高圧のガス冷媒の吐出管7からの吐出量を制御することができる。なお、以降の説明において、図1を含む以下の図面では、ガラス端子8に接続される外部電源は図示していない。
圧力密閉容器2の内部には、電動機部10と、クランクシャフト20と、圧縮機構部30が収容されている。電動機部10は、圧力密閉容器2における固定部材6の配置位置より上方に配置されている。クランクシャフト20は、圧力密閉容器2の中心部において、電動機部10と圧縮機構部30との間に配置され、電動機部10と圧縮機構部30との間を上下方向に延在している。圧縮機構部30は、圧縮機構部30の内部が吸入管4と連通するように配置されている。すなわち、圧力密閉容器2の内部においては、圧縮機構部30の上方に電動機部10が配置されている。また、圧力密閉容器2の内部の中空空間は、圧縮機構部30で圧縮された高圧のガス冷媒で満たされている。
電動機部10は、外部電源から供給された電力を用いてクランクシャフト20に回転駆動力を発生させ、クランクシャフト20を介して圧縮機構部30に回転駆動力を伝達するモータとして構成される。電動機部10は、上面視において中空円筒形状の外観を有する固定子12と、固定子12の内側面の内側に回転可能に配置された円筒状の回転子14とを備えている。固定子12は、焼きばめ等により圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に固定され、導線16を介してガラス端子8に接続されている。電動機部10は、外部電源からの電力を導線16を介して固定子12に巻回されたコイルに供給することにより、固定子12の内側面の内側で回転子14を回転させることができる。圧縮機1においては、例えばDCブラシレスモータ等が電動機部10として用いられる。
回転子14の中心部には、クランクシャフト20が回転子14を貫通して固定されている。クランクシャフト20は、クランクシャフト20の外側面の一部である固定面20aにて回転子14を固定し、圧縮機構部30に回転子14の回転駆動力を伝達する回転軸である。クランクシャフト20は、固定面20aから上下方向、すなわち、圧力密閉容器2の蓋部2cの方向と圧力密閉容器2の底部2bの方向とに延在している。
また、クランクシャフト20は、固定面20aの下方に位置し、圧縮機構部30の内部に配置される円筒形状の偏心部24を有している。偏心部24の外側面には、偏心部24の外側面に沿って回転自在に取り付けられたピストン26が配置されている。
また、図1を含む以下の図面には図示していないが、クランクシャフト20の中心部には、クランクシャフト20の下端から上方に延在し、クランクシャフト20の下端から吸い上げられた冷凍機油40である潤滑油が流動する油穴が設けられている。また、クランクシャフト20の外側面には上述の油穴と連通し、圧縮機構部30に潤滑油を供給する複数の給油口が設けられている。
また、図1を含む以下の図面には図示していないが、クランクシャフト20の油穴の下端部には遠心ポンプが配置された構成にできる。上述の遠心ポンプは、圧力密閉容器2の底部2bの底部に貯留された冷凍機油40を吸い上げることができるように、例えば螺旋状の遠心ポンプとして構成されている。なお、冷凍機油40としては、例えば、鉱油系、アルキルベンゼン系、ポリアルキレングリコール系、ポリビニルエーテル系、ポリオールエステル系の潤滑油等が用いられる。
次に、圧縮機1の圧縮機構部30の構造について、図1とともに図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態1に係る圧縮機1の圧縮機構部30の内部構造の一例を示す図1のA−A断面における概略図である。
圧縮機構部30は、電動機部10から供給された回転駆動力により、吸入管4から圧力密閉容器2の低圧空間に吸入された低圧のガス冷媒を高圧のガス冷媒に圧縮し、圧縮した高圧のガス冷媒を圧縮機構部30の上方に吐出するものである。
圧縮機構部30は、一対の中空円板面31aと、一対の中空円板面31aの内縁部の間を延在する内側面31bと、一対の中空円板面31aの外縁部の間を延在する外側面31cとを有する中空円筒形状のシリンダ31を備えている。シリンダ31の外側面31cは圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に、アークスポット溶接等のアーク溶接又は焼きばめによって固定されている。シリンダ31の中空部分310は、シリンダ31の内側面31bに取り囲まれた空間に構成され、クランクシャフト20の偏心部24及びピストン26が収容されている。すなわち、シリンダ31は、シリンダ31の中空部分310において、クランクシャフト20の回転により、クランクシャフト20の偏心部24及びピストン26が偏心回転できるように構成されている。
シリンダ31には、吸入管4とシリンダ31の中空部分310との間を接続管6bを介して連通し、低圧のガス冷媒を吸入管4からシリンダ31の中空部分310に流入させる吸入通路312が設けられている。また、シリンダ31の内側面には、上下方向に延在する半円形状の吐出通路314が設けられている。また、シリンダ31には、上面視において、シリンダ31の内側面31bからシリンダ31の外側面31cに向けて、半径方向に延在するベーン溝316が設けられている。
シリンダ31のベーン溝316には、ベーン32が収容されている。ベーン32は、ピストン26の偏心運動によってベーン溝316の内部を半径方向に往復運動するように構成された摺動部材である。シリンダ31の中空部分310に配置されたベーン32の先端部32aは、ベーン溝316の内部に設けられたバネ等の弾性体33の復元力又は圧縮機構部30の上方の高圧部分からの圧力によって、ピストン26の外側面に押しつけられている。図2に示すように、ピストン26の回転駆動中に、シリンダ31の中空部分310は、ベーン32とピストン26によって、吸入通路312と連通する低圧空間部310aと、吐出通路314と連通する高圧空間部310bとに区画される。低圧空間部310a及び高圧空間部310bは、後述する圧縮機構部30の圧縮室を構成する空間となる。なお、圧縮機構部30の圧縮室においては、低圧空間部310aは低圧室とも称され、高圧空間部310bは高圧室とも称される。
また、シリンダ31には、ベーン溝316と連通し、シリンダ31の一対の中空円板面31aを貫通するベーン溝開口部318が設けられている。圧縮機構部30では、ベーン溝開口部318を介して、圧縮機構部30の上方の高圧部分からの圧力が、ベーン32の末端部32bに印加できる。また、ベーン溝開口部318によって、シリンダ31の外側面方向へのベーン32の移動を制限することができる。また、ベーン溝開口部318によって、高圧のガス冷媒から分離された潤滑油は、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスに供給され、ベーン32を円滑に往復運動させることができる。
図1を含む以下の図面では図示しないが、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスは、ベーン溝316とベーン32との間で摩擦が生じないように構成されている。一方、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスが大きくなると、シリンダ31の中空部分310で圧縮された冷媒ガスが、クリアランスとベーン溝開口部318とを介して、圧縮機構部30の外部に漏洩し、圧縮効率が低下する可能性がある。したがって、圧縮機構部30では、ベーン溝316とベーン32との間で摩擦が生じない程度にクリアランスを小さくすることにより、圧縮された冷媒ガスの漏れを抑制し、漏洩損失を低減し、圧縮効率の向上を図ることができる。
また、シリンダ31には、シリンダ31の外側面31cの側に位置し、一対の中空円板面31aを貫通する複数の開口部319が設けられている。開口部319によって、高圧のガス冷媒から分離されて重力作用によりシリンダ31の上側の中空円板面31aに移動した潤滑油は、圧力密閉容器2の底部2bに戻すことが可能となるため、冷凍機油40の枯渇を防ぐことができる。
シリンダ31の上側の中空円板面31a、すなわち圧力密閉容器2の蓋部2cの側の中空円板面31aには、上軸受34が配置されている。シリンダ31の下側の中空円板面31a、すなわち圧力密閉容器2の底部2bの側の中空円板面31aには、下軸受35が配置されている。上軸受34及び下軸受35は、クランクシャフト20を摺動可能に支持するすべり軸受けである。
上軸受34は、上面視において中空円板状の形状を有している。上軸受34は、シリンダ31の上側の中空円板面31aに固定される固定部34aと、クランクシャフト20の外側面を摺動可能に支持する軸受部34bとを有している。なお、上軸受34は、図1の縦断面図においては、2つのL字形状の部材として表示されている。また、上軸受34は、例えば、ボルト等によりシリンダ31の上側の中空円板面31aに固定されている。
下軸受35は、下面視において中空円板状の形状を有している。下軸受35は、シリンダ31の下側の中空円板面31aに固定される固定部35aと、クランクシャフト20の外側面を摺動可能に支持する軸受部35bとを有している。なお、下軸受35は、図1の縦断面図においては、2つのL字形状の部材として表示されている。また、下軸受35は、例えば、ボルト等によりシリンダ31の下側の中空円板面31aに固定されている。
圧縮機構部30においては、ピストン26、シリンダ31、ベーン32、上軸受34の固定部34a、及び下軸受35の固定部35aに囲まれた密閉自在な空間は、吸入管4から吸入された低圧のガス冷媒を圧縮する圧縮室を構成する。圧縮室で圧縮された高圧のガス冷媒は、上軸受34に設けられた吐出口から吐出される。なお、上軸受34に設けられた吐出口は、図1を含む以下の図面では図示していない。
なお、本実施の形態1では、圧縮機1を縦置型の圧縮機として構成しているが、横置型の圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態1では、圧縮機1をローリングピストン型のロータリ圧縮機として構成しているが、スイングベーン方式のスイング圧縮機として構成しても、スクリュ圧縮機又はスクロール圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態1では、シングルロータリ式のロータリ圧縮機として構成しているが、ツインロータリ式のロータリ圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態1では、圧縮機1を単段圧縮機とし、圧縮機構部30を1つのみ有する構成としているが、圧縮機1を多段圧縮機とし、複数の圧縮機構部30によって冷媒を順次圧縮する構成としてもよい。
また、圧力密閉容器2の蓋部2cの上面には、チャージパイプを貫通して固定することができる。チャージパイプは、圧力密閉容器2の内部を真空引きし、ガス冷媒を圧力密閉容器2の内部に封入できるように構成しても、圧力密閉容器2の内部に潤滑油を封入できるように構成してもよい。
また、クランクシャフト20の固定面20aの上方には、クランクシャフト20の回転による遠心力により、圧縮機構部30から吐出された高圧のガス冷媒に含まれる潤滑油を分離する油分離板を設けることができる。
また、上軸受34の固定部34aの上面側には、圧縮機構部30における冷媒の圧縮時に発生する騒音を除去又は低減する消音器を配置することができる。消音器には、上軸受34に設けられた吐出口から流入する高圧のガス冷媒を圧力密閉容器2の内部に吐出させる複数の開口部を設けることができる。
次に、本実施の形態1の圧縮機1の動作について説明する。
電動機部10の駆動によりクランクシャフト20が回転すると、クランクシャフト20とともに、シリンダ31の内部に収容された偏心部24及びピストン26が偏心回転する。偏心部24及びピストン26の偏心回転により、ピストン26の外周面は、シリンダ31の中空部分310において、シリンダ31の内側面31bに接触して移動する。シリンダ31のピストン26の偏心回転と連動し、シリンダ31のベーン溝316の内部に設けられたベーン32がピストン運動する。吸入管4から吸入通路312を介して圧縮機構部30に流入した低圧のガス冷媒は、ピストン26、シリンダ31、ベーン32、上軸受34の固定部34a、及び下軸受35の固定部35aに囲まれた密閉空間である圧縮室に流入する。圧縮室の内部に流入した低圧のガス冷媒は、ピストン26の偏心回転による圧縮室の容積の減少に伴い、高圧のガス冷媒に圧縮される。高圧のガス冷媒は、上軸受34に設けられた吐出口を介して、圧縮機構部30の外部の圧力密閉容器2の内部の中空空間に吐出される。圧力密閉容器2の内部の中空空間に吐出された高圧のガス冷媒は、例えば、電動機部10の固定子12と回転子14との間の隙間等を通過し、吐出管7を介して圧力密閉容器2の外へと吐出される。
次に、本実施の形態1の圧縮機1に係る製造方法及び製造装置について説明する。
図3は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程において、圧力密閉容器2の胴体部2aの製造工程で用いられる成形前の鋼板50の外観を概略的に示す斜視図である。図3に示すように、胴体部2aの製造には、矩形形状の一対の板状面部52である第1板状面部52a及び第2板状面部52bを有する矩形状の鋼板50が用いられる。鋼板50の材料としては、例えばステンレス鋼又は炭素鋼等の鉄鋼材料が用いられる。
圧力密閉容器2の胴体部2aは、鋼板50を成形加工することによって製造される。例えば、圧力密閉容器2の胴体部2aは、鋼板50の一方の一対の辺縁部である第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bが溶接等により接合されることにより製造される。また、圧力密閉容器2の胴体部2aは、鋼板50の板状面部52は円筒形に成形され、鋼板50の他方の一対の辺縁部である第3辺縁部56a及び第4辺縁部56bは円周形に成形されることにより製造される。
図4は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、巻き成形前の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。
図4に示すように、鋼板50の巻き成形では、例えば、第1ローラ100aと第2ローラ100bと第3ローラ100cとを有するロール装置100が用いられる。第1ローラ100aは、鋼板50の一方の板状面部52、例えば第2板状面部52bに接触するように配置される。また、ロール装置100においては、第1ローラ100aの直径は、第2ローラ100b及び第3ローラ100cの直径よりも大きく構成できる。
図5は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、巻き成形の開始時の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。図5では、巻き成形開始時における第2ローラ100b及び第3ローラ100cの押圧方向を矢印で示している。
図5に示すように、巻き成形の開始時においては、ロール装置100では、第2ローラ100b及び第3ローラ100cを鋼板50の第1板状面部52aに対して垂直に押圧させ、第1板状面部52aを第1ローラ100aに向けて押圧させる動作が行われる。ロール装置100においては、第2ローラ100b及び第3ローラ100cの押圧動作により、第1ローラ100aとの間に鋼板50を挟むことができる。
図6は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、巻き成形中の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。図6では、巻き成形中における第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転方向を矢印で示している。
図6に示すように、巻き成形中においては、第1ローラ100aでは、第2ローラ100b及び第3ローラ100cと逆方向の回転動作が行われる。例えば、図6に示すように、ロール装置100においては、第1ローラ100aでは反時計回りの回転動作が行われ、第2ローラ100b及び第3ローラ100cでは時計回りの回転動作が行われる。ロール装置100においては、第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転動作により、鋼板50を第1ローラ100aの回転方向に第1ローラ100aに沿って移動させ、巻き成形を行わせることができる。
図7は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、巻き成形終了時の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。
図7に示すように、ロール装置100における第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転動作により、鋼板50は巻き成形され、鋼板50の第3辺縁部56aはC字形状に巻き成形される。巻き成形終了後、ロール装置100においては、第2ローラ100b及び第3ローラ100cを鋼板50から離れる方向に移動させる動作が行われる。第2ローラ100b及び第3ローラ100cの移動後、ロール装置100においては、鋼板50が第1ローラ100aから取り外される。
以上、図4〜図7に説明したように、巻き成形によって、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、矩形状の鋼板50は、C字形状の鋼板50に巻き成形される。
図8は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、縮管成形の開始時の鋼板50及び縮管装置110の一部の構造を示す概略図である。
図8に示すように、C字形状の鋼板50の縮管成形では、例えば、半円形状の第1溝部112aを有する第1縮管金型112と、半円形状の第2溝部114aを有する第2縮管金型114とを有する縮管装置110が用いられる。縮管装置110においては、第1縮管金型112の第1溝部112aは第2縮管金型114の第2溝部114aと向き合って配置される。縮管成形の開始時においては、C字形状に巻き成形された鋼板50が、縮管装置110の第1溝部112aと第2溝部114aとの間に挟まれる。
図9は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、縮管成形中の鋼板50及び縮管装置110の構造を示す概略図である。図9では、縮管成形中における第2縮管金型114の押圧方向を矢印で示している。
図9に示すように、縮管成形中においては、縮管装置110では、第2縮管金型114を第1縮管金型112に向けて押圧させる動作が行われる。縮管装置110においては、第2縮管金型114の押圧動作により、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとを接触させることができる。また、第2縮管金型114の押圧動作により、第1溝部112aと第2溝部114aとの間に挟まれた鋼板50が円筒形状に成形される。縮管成形の終了後、縮管装置110においては、第2縮管金型114を鋼板50から離れる方向に移動させる動作が行われる。第2縮管金型114の移動後、縮管装置110においては、鋼板50が第1縮管金型112から取り外される。
以上、図8及び図9に説明したように、縮管成形によって、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、C字形状の鋼板50は、円筒形状の鋼板50に縮管成形される。
図10は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、突合せ溶接時の鋼板50及び突合せ溶接装置120の一部の構造を示す概略図である。図10では、突合せ溶接における突合せ溶接装置120の移動方向を矢印で示している。図10に示すように、縮管成形により円筒形状に成形された鋼板50の第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bは、突合せ溶接装置120によって接合される。本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、鋼板50の突合せ溶接により、円筒形状の圧力密閉容器2の胴体部2aが形成される。
突合せ溶接装置120は、例えば、シーム溶接等の抵抗溶接用溶接装置、又はTIG溶接等のアーク溶接用溶接装置として構成できる。突合せ溶接装置120は、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとの溶接を行う第1溶接トーチ122を備えている。また、図10では図示しないが、突合せ溶接装置120は、例えば商用の交流電源から供給される交流電力を、溶接で用いられる電力に変換する溶接電源と、溶接電源から流れる電流を溶接用に増幅して第1溶接トーチ122に流す溶接変圧器とを備えている。第1溶接トーチ122の先端部122aには、第1の溶接電極124が取り付けられている。第1の溶接電極124は、例えば、純タングステン電極若しくは純モリブデン電極等の純金属電極、又は銅クロム合金電極又は銅アルミナ合金電極等の合金電極として構成できる。
なお、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとの接合は溶接により行うものとしたが、ろう付け等により接合してもよい。
次に、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程において、鋼板50の巻き成形、縮管成形、及び突合せ溶接により製造された圧力密閉容器2の胴体部2aを拡管成形する工程で用いられる装置について説明する。圧力密閉容器2の胴体部2aを拡管成形する工程は、鋼板50の巻き成形、縮管成形、及び突合せ溶接により製造された圧力密閉容器2の胴体部2aの歪みを低減させるものであり、以降の説明では「第1拡管成形」と称する。
図11は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程において、第1拡管成形で用いられる第1拡管装置200aの第1拡管器具130の外観構造の一例を示す概略図である。
第1拡管器具130は、第1拡管装置200aの一部を構成する治具として構成されている。図11に示すように、第1拡管器具130は、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1拡管成形を行う第1拡管金型部140と、第1拡管金型部140を支持する第1ケーシング部150とを備えている。また、第1拡管器具130は、第1拡管金型部140及び第1ケーシング部150の内部に往復自在に配置される第1ロッド部155を備えている。
第1拡管金型部140の外側面部141は、円周面形状の第1外側面部142と、第1外側面部142より円周面の半径が小さい第2外側面部143と、第1外側面部142と第2外側面部143との間を延在する第3外側面部144とを有している。すなわち、第1拡管金型部140の外側面部141は、半径が異なる2つの円周面を有している。図11においては、第1拡管金型部140の第1外側面部142は、第1ケーシング部150の側に配置されている。
また、第1拡管金型部140は、第1拡管金型部140の外側面部141の円周方向に隣接して配置された複数の第1分割金型140aを備えている。第1分割金型140aの形状は全て同一とすることができる。
第1分割金型140aの外側面141aは、第1外側面部142の一部である円弧面形状の第1湾曲面部142aと、第2外側面部143の一部である円弧面形状の第2湾曲面部143aとを有している。また、第1分割金型140aの外側面141aは、第3外側面部144の一部であり、第1湾曲面部142aと第2湾曲面部143aとの間を延在する連結面部144aを有している。
図12は、図11の第1拡管金型部140の断面構造の一部を示す概略図である。図12では、第1外側面部142の中心と第2外側面部143の中心とを結ぶ第1拡管金型部140の中心線Aが一点鎖線で図示されている。また、図12では、第1外側面部142及び第2外側面部143の半径の長さが、実線の矢印で示されている。
図12に示すように、第1分割金型140aの第1湾曲面部142aの半径R1は、第1分割金型140aの第2湾曲面部143aの半径R2よりも大きくなるように構成される。また、第1拡管成形時においては、第1湾曲面部142aの半径R1は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法まで拡大されるが、第2湾曲面部143aの半径R1は、第2外側面部143の半径R2よりも大きくなるように構成されている。
また、第1拡管金型部140において、第1外側面部142と第2外側面部143との間を延在する第3外側面部144は、例えばテーパ形状となるように構成できる。例えば、図12に示すように、中心線Aに沿った第3外側面部144の断面部144bは、第1外側面部142の直線形状の断面部142bから第2外側面部143の直線形状の断面部143bに向けて斜方に延在する直線形状となるように構成できる。
なお、図12では、第3外側面部144はテーパ形状となるように構成し、中心線Aに沿った第3外側面部144の断面部144bを直線形状となるように構成したが、他の形状となるように構成してもよい。以下では、第1拡管金型部140の第3外側面部144の断面形状の変形例を図13〜図16を用いて説明するが、図13〜16においては、図12と異なる部分の構造、すなわち、第1拡管金型部140の第3外側面部144の断面形状についてのみ説明する。
図13は、本実施の形態1の第1拡管器具130における、第3外側面部144の断面部144bの形状の変形例を示す概略図である。図13では、図12と同様に、第1外側面部142の中心と第2外側面部143の中心とを結ぶ第1拡管金型部140の中心線Aが一点鎖線で図示されている。また、図13では、図12と同様に、第1外側面部142及び第2外側面部143の半径の長さが実線の矢印で示されている。図13に示すように、第1拡管金型部140の第3外側面部144の断面部144bは、第1外側面部142の直線形状の断面部142b及び第2外側面部143の直線形状の断面部143bと直交する直線形状となるように構成できる。
図14は、本実施の形態1の第1拡管器具130における、第3外側面部144の断面部144bの別の変形例を示す概略図である。図14では、図12及び図13と同様に、第1外側面部142の中心と第2外側面部143の中心とを結ぶ第1拡管金型部140の中心線Aが一点鎖線で図示されている。また、図14では、図12及び図13と同様に、第1外側面部142及び第2外側面部143の半径の長さが実線の矢印で示されている。図14に示すように、第1拡管金型部140において、第3外側面部144は凸形状となり、第3外側面部144の断面部144bは四半分円形状となるように構成できる。
図15は、本実施の形態1の第1拡管器具130における、第3外側面部144の断面部144bの別の変形例を示す概略図である。図15では、図12〜図14と同様に、第1外側面部142の中心と第2外側面部143の中心とを結ぶ第1拡管金型部140の中心線Aが一点鎖線で図示されている。また、図15では、図12〜図14と同様に、第1外側面部142及び第2外側面部143の半径の長さが実線の矢印で示されている。図15に示すように、第1拡管金型部140において、第3外側面部144は凹形状となり、第3外側面部144の断面部144bは四半分円形状となるように構成できる。
図16は、本実施の形態1の第1拡管器具130における、第3外側面部144の断面部144bの別の変形例を示す概略図である。図16では、図12〜図15と同様に、第1外側面部142の中心と第2外側面部143の中心とを結ぶ第1拡管金型部140の中心線Aが一点鎖線で図示されている。また、図16では、図12〜図15と同様に、第1外側面部142及び第2外側面部143の半径の長さが実線の矢印で示されている。図16に示すように、第1拡管金型部140において、第3外側面部144は複数の凸形状部分と凹形状とを有する構成にでき、第3外側面部144の断面部144bは複数の四半分円形状を有するように構成できる。
図17は、図11の第1拡管器具130の内部構造を示す概略図である。図17に示すように、第1拡管金型部140の内部には、第1拡管金型部140の内側面部145によって取り囲まれた多角錘台形状の第1中空空間部146が設けられている。第1拡管金型部140の内側面部145は、第1分割金型140aの内側面となる複数の台形形状の平面部145aを有している。第1中空空間部146は、第1分割金型140aの平面部145aで取り囲まれることにより、多角錘台形状の空間として構成される。図17では、第1中空空間部146は、第1中空空間部146の開口面積が第1ケーシング部150から離れるに従って小さくなる多角錘台形状の空間として構成される。
第1ケーシング部150は、第1ケーシング部150の外部空間と第1中空空間部146とを連通する第2中空空間部150aを有している。例えば、第2中空空間部150aは、例えば、第1中空空間部146よりも開口面積が大きい円柱形状の空間にできる。
また、図11〜図17では図示しないが、第1ケーシング部150は、第1拡管成形時の安定性及び第1拡管成形における信頼性を確保するために第1拡管装置200aの支持台に固定されている。第1ケーシング部150の形状は、支持台に固定可能な形状であればよく、例えば立方体形状、円筒形状等の外観を有するように構成できる。
第1ロッド部155は、図11に示すように複数の台形形状の外側面部158aを有する多角錘台形状の挿入部158を有している。多角錘台形状の挿入部158における、台形形状の外側面部158aの数量は、第1分割金型140aの数量と同一となる。図11及び図17においては、第1ロッド部155の挿入部158は、第1ケーシング部150の第2中空空間部150aを介して、第1拡管金型部140の第1中空空間部146に収容されている。図11及び図17の第1拡管器具130においては、第1ロッド部155の挿入部158を第1拡管金型部140の方向に押し出すことによって、第1外側面部142は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法まで拡大される。
なお、第1拡管器具130の構造は種々の変形が可能である。以下では、第1拡管器具130の構造の変形例を図18〜図20を用いて説明するが、図18〜図20においては、図11又は図17と異なる部分の構造についてのみ説明する。
図18は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程において、第1拡管成形で用いられる第1拡管装置200aの第1拡管器具130の外観構造の別の変形例を示す概略図である。図11及び図17の第1拡管器具130においては、第1拡管金型部140の第1外側面部142は、第1ケーシング部150の側に配置されている。一方、第1拡管金型部140の第1外側面部142は、図18に示すように、第1ケーシング部150の逆側に位置するように配置できる。
図19は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程において、第1拡管成形で用いられる第1拡管装置200aの第1拡管器具130の外観構造の別の変形例を示す概略図である。図20は、図19の第1拡管器具130の内部構造を示す概略図である。図19及び図20の第1拡管器具130においては、第1中空空間部146は、第1中空空間部146の開口面積が第1ケーシング部150から離れるに従って小さくなる多角錘台形状の空間として構成される。
図11及び図17の第1拡管器具130においては、第1ロッド部155の挿入部158は、第1ケーシング部150の第2中空空間部150aを介して、第1拡管金型部140の第1中空空間部146に収容されている。一方、図19及び図20に示すように、第1ロッド部155の挿入部158は、第1拡管金型部140の第1中空空間部146を介して、第1ケーシング部150の第2中空空間部150aに収容されるように構成できる。図19及び図20の第1拡管器具130においては、第1ロッド部155の挿入部158を第1ケーシング部150の方向に引き込むことによって、第1外側面部142は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法まで拡大される。
図21は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第1拡管成形を行う前の圧力密閉容器2の胴体部2aの断面構造及び第1拡管装置200aの一部の断面構造を示す概略図である。図22は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第1拡管成形時の圧力密閉容器2の胴体部2aの断面構造及び第1拡管装置200aの一部の断面構造を示す概略図である。図22では、第1拡管成形中の第1ロッド部155の移動方向がハッチング線付きのブロック矢印で示されており、第1ロッド部155の移動に伴う第1拡管金型部140の第1分割金型140aの移動方向が白抜きのブロック矢印で示されている。
なお、図21及び図22に示す第1拡管器具130は、図11、図12、及び図17に示した第1拡管装置200aと同一の構造とする。すなわち、図21及び図22の第1拡管金型部140においては、第1外側面部142と第2外側面部143との間を延在する第3外側面部144は、テーパ形状となるように構成されている。また、図21及び図22の第3外側面部144の断面部144bは、第1外側面部142の直線形状の断面部142bから第2外側面部143の直線形状の断面部143bに向けて斜方に延在する直線形状となるように構成できる。また、図21及び図22の第1拡管器具130においては、第1拡管金型部140の第1外側面部142は、第1ケーシング部150の側に配置されている。また、図21及び図22の第1拡管器具130においては、第1中空空間部146は、第1中空空間部146の開口面積が第1ケーシング部150から離れるに従って小さくなる多角錘台形状の空間として構成されている。また、図21及び図22の第1拡管器具130においては、第1ロッド部155の挿入部158は、第1ケーシング部150の第2中空空間部150aを介して、第1拡管金型部140の第1中空空間部146に収容されている。
図21に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面は、第1拡管金型部140の第1外側面部142と接触するように配置される。第1拡管成形時においては、図22に示すように、第1ロッド部155の挿入部158が、第1ロッド部155の押圧等により、第2中空空間部150aから第1中空空間部146に向けて直線移動する。第1ロッド部155の挿入部158の直線移動により、挿入部158の外側面部158aが、第1拡管金型部140の内側面部145に沿って摺動する。挿入部158の外側面部158aが、第1拡管金型部140の内側面部145に沿って摺動することにより、第1拡管金型部140の第1分割金型140aは、第1分割金型140aの外側面141aの方向に移動する。
第1分割金型140aが、第1分割金型140aの外側面141aの方向へ移動することにより、圧力密閉容器2の胴体部2aは拡管される。具体的には、第1分割金型140aの第1湾曲面部142aと接触する胴体部2aの第1内側面2a1の内径は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法と同一となるまで拡管成形される。また、第1拡管金型部140の第2湾曲面部143aと接触する胴体部2aの第2内側面2a2の内径は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法より小さくなるように拡管成形される。また、第1内側面2a1と第2内側面2a2との間を延在する第3内側面2a3は、テーパ形状に拡管成形される。
なお、第1分割金型140aの数量は、奇数個とすることによって、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径の歪みが大きくなるのを回避することができる。隣接する第1分割金型140aが圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に接触するとき、隣接する第1分割金型140aの間に隙間が形成され、胴体部2aの内側面に第1分割金型140aが接触しない部分が生じる。図示しないが、隣接する第1分割金型140aが接触しない胴体部2aの内側面には、凸形状の突起部が形成され、胴体部2aの内径に歪みが発生する。第1分割金型140aの数量を偶数個とした場合、凸形状の突起部が胴体部2aの内側面の対向する位置に形成されるため、胴体部2aの内径の歪みが大きくなる。これに対して、第1分割金型140aの数量を奇数個とした場合、凸形状の突起部が胴体部2aの内側面の対向する位置に形成されるのを回避できるため、胴体部2aの内径の歪みが大きくなるのを回避することができる。
図23は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、端面加工時の圧力密閉容器2の胴体部2aの構造を示す概略図である。図23に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの端面加工では、第1周縁部2a4及び第2周縁部2a5が、旋盤等の端面加工装置により切削される。なお、図23では、第1周縁部2a4は、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1の側の末端部とする。また、第2周縁部2a5は、圧力密閉容器2の胴体部2aの第2内側面2a2の側の末端部とする。
圧力密閉容器2の胴体部2aの端面加工により、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1周縁部2a4と第2周縁部2a5との間の幅は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの幅と同一となるように加工される。
図24は、本発明の実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、円周溶接時の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2b、並びに円周溶接装置160の一部の構造を示す概略図である。圧力密閉容器2の底部2bは、例えばステンレス鋼又は炭素鋼等の鋼製の板状部材を塑性成形することによって製造される。図24に示すように、端面加工後の圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1は、円周溶接装置160によって、圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1と接合される。
円周溶接装置160は、例えば、プロジェクション溶接若しくはシーム溶接等の抵抗溶接用溶接装置、又はTIG溶接等のアーク溶接用溶接装置として構成できる。円周溶接装置160は、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1と圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1との溶接を行う第2溶接トーチ162を備えている。また、図24では図示しないが、円周溶接装置160は、例えば商用の交流電源から供給される交流電力を、溶接で用いられる電力に変換する溶接電源と、溶接電源から流れる電流を溶接用に増幅して第2溶接トーチ162に流す溶接変圧器とを備えている。第2溶接トーチ162の先端部162aには、第2の溶接電極164が取り付けられている。第2の溶接電極164は、例えば、純タングステン電極若しくは純モリブデン電極等の純金属電極、又は銅クロム合金電極又は銅アルミナ合金電極等の合金電極として構成できる。円周溶接装置160によって、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1と、圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1との間の隙間が溶接により密封される。
なお、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1と圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1との接合は溶接により行うものとしたが、ろう付け等により接合してもよい。
円周溶接後、圧力密閉容器2の胴体部2aには、ドリル等の穿孔装置により吸入穴5が形成される。更に、胴体部2aの吸入穴5には、接続管6b及びリング6cが溶接又はろう付け等により接合される。
圧力密閉容器2の胴体部2aにおいては、上述の吸入穴5の穿孔、更に接続管6b及びリング6cの溶接又はろう付け等による接合により胴体部2aの内径に歪みが発生する。また、前述したように、第1拡管成形においては、隣接する第1分割金型140aが接触しない胴体部2aの内側面に凸形状の突起部が形成されるため、胴体部2aの内径に歪みが発生している。
本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、上述の歪みを低減し、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径を均一にするために第2拡管装置200bによる拡管成形が行われる。なお、以降の説明では、第2拡管装置200bによる拡管成形を「第2拡管成形」と称する。
図25は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形により拡管成形される圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの構造を概略的に示す断面図である。図25に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1内側面2a1と、圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1との間には、溶接等による熱硬化部60が形成されている。熱硬化部60の硬度は、胴体部2aの他の部分よりも高くなっている。また、図25においては、圧力密閉容器2の胴体部2aの第3内側面2a3は、圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2に隣接して配置されている。
図26は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形で用いられる第2拡管装置200bの第2拡管器具170の一部の外観構造の一例を示す概略図である。図27は、図26の第2拡管器具170の内部構造を示す概略図である。
第2拡管器具170は、第2拡管装置200bの一部を構成する治具として構成されている。図26に示すように、第2拡管器具170は、圧力密閉容器2の胴体部2aの第2拡管成形を行う第2拡管金型部180と、第2拡管金型部180を支持する第2ケーシング部190とを備えている。また、第2拡管器具170は、第2拡管金型部180及び第2ケーシング部190の内部に往復自在に配置される第2ロッド部195を備えている。
第2拡管金型部180は、円周形状の外側面部182を有している。また、第2拡管金型部180は、第2拡管金型部180の外側面部182の円周方向に隣接して配置された複数の第2分割金型180aを備えている。第2分割金型180aは、円弧面形状の湾曲面部182aを有している。なお、第1拡管金型部140の第1分割金型140aと同様に、第2分割金型180aの形状は全て同一とすることができる。また、第1拡管金型部140の第1分割金型140aと同様に、第2分割金型180aの数量は、奇数個とすることによって、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径の歪みが大きくなるのを回避することができる。
図27に示すように、第2拡管金型部180の内部には、第2拡管金型部180の内側面部184によって取り囲まれた多角錘台形状の第1中空空間部186が設けられている。第2拡管金型部180の内側面部184は、第2分割金型180aの内側面となる複数の台形形状の平面部184aを有している。第1中空空間部186は、第2分割金型180aの平面部184aで取り囲まれることにより、多角錘台形状の空間として構成される。図27では、第1中空空間部186は、第1中空空間部186の開口面積が第2ケーシング部190から離れるに従って小さくなる多角錘台形状の空間として構成される。
第2ケーシング部190は、第2ケーシング部190の外部空間と第1中空空間部186とを連通する第2中空空間部190aを有している。例えば、第2中空空間部190aは、例えば、第1中空空間部186よりも開口面積が大きい円柱形状の空間にできる。
また、図26及び図27では図示しないが、第2ケーシング部190は、第1拡管成形時の安定性及び第1拡管成形における信頼性を確保するために第2拡管装置200bの支持台に固定されている。第2ケーシング部190の形状は、支持台に固定可能な形状であればよく、例えば立方体形状、円筒形状等の外観を有するように構成できる。
図26に示すように、第2ロッド部195は、複数の台形形状の外側面部198aを有する多角錘台形状の挿入部198を有している。多角錘台形状の挿入部198における、台形形状の外側面部198aの数量は、第2分割金型180aの数量と同一となる。図26においては、第2ロッド部195の挿入部198は、第2ケーシング部190の第2中空空間部190aを介して、第2拡管金型部180の第1中空空間部186に収容されている。図26及び図27の第2拡管器具170においては、第2ロッド部195の挿入部198を第2拡管金型部180の方向に押し出すことによって、外側面部182は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法まで拡大される。
図28は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形を行う前の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造及び第2拡管装置200bの一部の断面構造の一例を示す概略図である。図29は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形時の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造及び第2拡管装置200bの一部の断面構造の一例を示す概略図である。図29では、第2拡管成形中の第2ロッド部195の移動方向がハッチング線付きのブロック矢印で示されており、第2ロッド部195の移動に伴う第2拡管金型部180の第2分割金型180aの移動方向が白抜きのブロック矢印で示されている。
図28に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの第2内側面2a2及び第3内側面2a3は、第2拡管金型部180の外側面部182と接触するように配置される。第2拡管成形時においては、図29に示すように、第2ロッド部195の挿入部198が、第2ロッド部195の押圧等により、第2中空空間部190aから第1中空空間部186に向けて直線移動する。第2ロッド部195の挿入部198の直線移動により、挿入部198の外側面部198aが、第2拡管金型部180の内側面部184に沿って摺動する。挿入部198の外側面部198aが、第2拡管金型部180の内側面部184に沿って摺動することにより、第2拡管金型部180の第2分割金型180aは、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向に移動する。
第2分割金型180aが、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向へ移動することにより、圧力密閉容器2の胴体部2aは拡管される。第2分割金型180aの湾曲面部182aと接触する胴体部2aの第2内側面2a2及び第3内側面2a3の内径は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法と同一となるまで拡管成形され、内径が均一となる。
なお、圧力密閉容器2の胴体部2aの第3内側面2a3は、電動機部10及び圧縮機構部30の配置位置と同一の位置でなければ、第1拡管成形において、圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2に隣接する位置以外に形成してもよい。図30は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形を行う前の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造の他の一例を示す概略図である。図31は、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形を行った後の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造の他の一例を示す概略図である。図30及び図31においては、圧力密閉容器2の胴体部2aの第3内側面2a3の配置位置を点線の線分Bで図示している。また、図31においては、圧力密閉容器2の胴体部2aにおいて、電動機部10を固定する電動機部固定位置70と圧縮機構部30を固定する圧縮機構部固定位置80とを概略的に示すために、電動機部10及び圧縮機構部30が破線で示されている。
図30及び図31に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの第3内側面2a3は、圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2に隣接する位置以外に形成した場合であっても、第2拡管金型部180によって、圧力密閉容器2の内径が均一となるように拡管成形できる。しかしながら、図30及び図31には図示しないが、第3内側面2a3の拡管成形後にも圧力密閉容器2の内側面に歪みが残存する可能性もある。したがって、第3内側面2a3は、電動機部固定位置70及び圧縮機構部固定位置80から離間して形成することにより、圧縮機1の性能の低下をより確実に回避し、圧縮機1の信頼性を向上させることができる。
本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、第2拡管装置200bの後に、電動機部10、クランクシャフト20、及び圧縮機構部30が圧力密閉容器2の胴体部2aに収容される。圧縮機構部30は、圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に、アークスポット溶接等のアーク溶接又は焼きばめによって接合される。次いで、電動機部10は、圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に焼きばめ等により接合される。
本実施の形態1の圧縮機1の製造工程においては、圧縮機構部30及び電動機部10の接合後に、圧力密閉容器2の蓋部2cが、円周溶接等により圧力密閉容器2の胴体部2aの第2周縁部2a5の側の内側面に接合される。圧力密閉容器2の蓋部2cは、例えばステンレス鋼又は炭素鋼等の鋼製の板状部材を塑性成形することによって製造される。なお、圧力密閉容器2の蓋部2cにおいては、圧力密閉容器2の胴体部2aに接合される前に、吐出管7及びガラス端子8が、抵抗溶接等の溶接又はろう付け等により接合されている。また、圧力密閉容器2の胴体部2aに接合される前に、ガラス端子8と固定子12に巻回されたコイルとの間が導線16によって電気的に接続される。
圧力密閉容器2の蓋部2cの胴体部2aへの接合後、サクションマフラ3が圧力密閉容器2の外側面に取り付けられる。更に、延長管6aがろう付け又は抵抗溶接等の溶接により接続管6bに接合され、吸入管4が延長管6aにろう付け又は抵抗溶接等の溶接により接続管6bに接合される。以上をもって、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程が完了する。
次に、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における第1拡管成形で成形された圧力密閉容器2の胴体部2aと、従来の第1拡管成形で製造された圧力密閉容器2の胴体部2aとを図32〜図37を用いて比較検討する。
図32は、従来の圧縮機1の製造工程における、第1拡管成形を行う前の圧力密閉容器2の胴体部2aの断面構造及び第1拡管装置200aの一部の断面構造の一例を示す概略図である。
従来の第1拡管成形では、第1拡管装置200aの拡管器具としては、第2拡管器具170と同様の円周形状の外側面部182を有する拡管金型部を有するものが用いられる。以降の従来の第1拡管成形の説明では、第1拡管装置200aの拡管器具の一例として、第2拡管器具170を用いた場合について説明する。なお、第2拡管器具170の構造及び動作等は、上述したものと同一であるため説明を省略する。
図33は、従来の圧縮機1の製造工程における、第1拡管成形時の圧力密閉容器2の胴体部2aの断面構造及び第1拡管装置200aの一部の断面構造の一例を示す概略図である。図33では、第1拡管成形中の第2ロッド部195の移動方向がハッチング線付きのブロック矢印で示されており、第2ロッド部195の移動に伴う第2拡管金型部180の第2分割金型180aの移動方向が白抜きのブロック矢印で示されている。
図32及び図33に示すように、従来の第1拡管成形では、第2ロッド部195の移動に伴い、第2拡管金型部180の第2分割金型180aが、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向へ移動する。第2分割金型180aが、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向へ移動することにより、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法と同一となるまで拡管成形される。
従来の圧縮機1の製造工程では、第1拡管成形の後に、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程と同様の圧力密閉容器2の胴体部2aの端面加工及び圧力密閉容器2の底部2bの胴体部2aへの円周溶接が行われる。圧力密閉容器2の底部2bの胴体部2aへの円周溶接後、従来の圧縮機1の製造工程においては、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程と同様の第1拡管成形が行われる。
図34は、従来の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形を行う前の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造並びに第2拡管装置200bの一部の断面構造の一例を示す概略図である。図35は、従来の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形時の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの断面構造並びに第2拡管装置200bの一部の断面構造の一例を示す概略図である。図35では、第2拡管成形中の第2ロッド部195の移動方向がハッチング線付きのブロック矢印で示されており、第2ロッド部195の移動に伴う第2拡管金型部180の第2分割金型180aの移動方向が白抜きのブロック矢印で示されている。
図34及び図35に示すように、従来の第2拡管成形では、第2ロッド部195の移動に伴い、第2拡管金型部180の第2分割金型180aが、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向へ移動する。第2分割金型180aが、第2分割金型180aの湾曲面部182aの方向へ移動することにより、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径は、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの内径寸法と同一となるまで拡管成形される。
図36は、従来の圧縮機1の製造工程における、第2拡管成形後の圧力密閉容器2の胴体部2a及び底部2bの構造を概略的に示す断面図である。図36に示すように、圧力密閉容器2の胴体部2aの第1周縁部2a4の側の内側面と、圧力密閉容器2の底部2bの外側面2b1との間には、溶接等による熱硬化部60aが形成されている。熱硬化部60aの硬度は、胴体部2aの他の部分よりも高くなるため、第2拡管成形により、圧力密閉容器2の胴体部2aには熱硬化部60aから第2周縁部2a5の方向に向けてテーパ形状の歪み部90が生じることとなる。例えば、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径を100mmとした場合、従来の圧縮機1の製造工程では、歪み部90の胴体部2aの内径方向の幅が20〜30μmとなる場合がある。歪み部90の胴体部2aの内径方向の幅が20μm以上となると、圧縮機構部30が歪んだ状態で圧力密閉容器2に固定されるため、圧縮機の性能が低下し、圧縮機の信頼性が低下する原因となる。
図37は、従来の圧縮機1の製造工程における第2拡管成形後の圧力密閉容器2の胴体部2aの歪みの幅と、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における第2拡管成形後の圧力密閉容器2の胴体部2aの幅とを相対的に比較したグラフである。図37においては、従来の圧縮機1の製造工程における第2拡管成形後の歪みの幅は、完成品の圧力密閉容器2の胴体部2aの内径を基準とした、図36の圧力密閉容器2の胴体部2aにおける歪みの幅とし、三角形のブロットで示している。また、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における第2拡管成形後の歪みの幅は、完成品の圧力密閉容器2の胴体部2aの内径を基準とした、図25の圧力密閉容器2の胴体部2aの第2内側面2a2及び第3内側面2a3における歪みの幅とし、円形のブロットで示している。
また、図37では、太い縦線で完成品の圧力密閉容器2の胴体部2aの内径の位置を示している。また、太い横線で圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2の位置を示している。すなわち、図37のグラフの太い縦線より右側のブロットが径方向の歪みの幅を示し、太い横線の下側のブロットが中心軸方向の歪みの幅を示すこととなる。
図37に示すように、圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2の位置においては、本実施の形態1の第2拡管成形後の径方向の歪みの幅は、従来の第2拡管成形後の歪みの幅の半分以下に低減することができる。したがって、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における圧力密閉容器2の胴体部2aでは、第2拡管成形後の圧力密閉容器2の胴体部2aにおける歪みを低減できるため、圧縮機構部30が歪んだ状態で圧力密閉容器2に固定されることによる圧縮機1の性能の低下を回避することができる。
また、図37に示すように、本実施の形態1の第2拡管成形後の径方向の歪みの幅は、従来の第2拡管成形後の歪みの幅の60%以下に低減することができる。したがって、本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における圧力密閉容器2の胴体部2aでは、第2拡管成形後の圧力密閉容器2の胴体部2aにおける歪みの発生部分を低減できる。本実施の形態1の圧縮機1の製造工程における圧力密閉容器2の胴体部2aでは、歪みの発生部分を低減することにより、圧縮機構部30を圧力密閉容器2の底部2bに隣接する位置に収容できるため、圧縮機1の小型化を図ることができる。
以上に説明したように、本実施の形態1の圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機構部30と、圧縮機構部30に回転駆動力を伝達するクランクシャフト20と、クランクシャフト20に回転駆動力を発生させる電動機部10と、円筒形状の胴体部2aと、胴体部2aの一端、例えば第1周縁部2a4の側に接合される底部2bと、胴体部2aの他の一端、例えば第2周縁部2a5の側に接合される蓋部2cとを有し、圧縮機構部30、クランクシャフト20、及び電動機部10を収容し、胴体部2aに圧縮機構部30及び電動機部10が固定された圧力密閉容器2とを備え、胴体部2aに底部2bが接合される前に行われる第1拡管成形により、胴体部2aに、第1内側面2a1と、第1内側面2a1よりも内径の小さい第2内側面2a2と、第1内側面2a1と第2内側面2a2との間を延在する第3内側面2a3とが形成され、胴体部2aに底部2bが接合された後に行われる第2拡管成形により、第2内側面2a2及び第3内側面2a3が、第1内側面2a1の内径まで拡管成形される。
また、本実施の形態1の圧縮機1の製造方法は、円筒形状の胴体部2aと、胴体部2aの一端、例えば第1周縁部2a4の側に接合される底部2bと、胴体部2aの他の一端、例えば第2周縁部2a5の側に接合される蓋部2cとを有する圧力密閉容器2を備える圧縮機1の製造方法であって、胴体部2aに底部2bが接合される前に、第1内側面2a1と、第1内側面2a1よりも内径の小さい第2内側面2a2と、第1内側面2a1と第2内側面2a2との間を延在する第3内側面2a3とを胴体部2aに形成する第1拡管成形工程と、胴体部2aに底部2bが接合された後に、第2内側面2a2と第3内側面2a3とを、第1内側面2a1の内径まで拡管成形する第2拡管成形工程とを有する。
また、本実施の形態1の拡管器具である第1拡管器具130は、圧縮機1の圧力密閉容器2を製造するための第1拡管器具130であって、円筒形状の第1外側面部142と、第1外側面部142より円周面の半径が小さい第2外側面部143と、第1外側面部142と第2外側面部143との間を延在する第3外側面部144とを有する拡管金型部である第1拡管金型部140と、第1拡管金型部140を支持するケーシング部である第1ケーシング部150と、第1拡管金型部140及び第1ケーシング部150の内部に往復自在に配置されたロッド部である第1ロッド部155とを備え、第1拡管金型部140は、第1拡管金型部140の円周方向に隣接して配置され、第1ロッド部155の移動に伴い第1拡管金型部140の円周面方向に移動する複数の第1分割金型140aを備えており、第1分割金型140aの各々は、第1外側面部142を構成する円弧面形状の第1湾曲面部142aと、第2外側面部143を構成する円弧面形状の第2湾曲面部143aと、第3外側面部144を構成し、第1湾曲面部142aと第2湾曲面部143aとの間を延在する連結面部144aとを有する。
本実施の形態1の構成によれば、第1拡管成形において、胴体部2aに、第1内側面2a1と、第1内側面2a1よりも内径の小さい第2内側面2a2と、第1内側面2a1と第2内側面2a2との間を延在する第3内側面2a3とを形成できる。その後、第2拡管成形を行うことにより、胴体部2aの歪みを低減できるため、圧縮機構部30が歪んだ状態で圧力密閉容器2に固定されるのを回避できる。したがって、本発明によれば、圧縮機構部30が歪んだ状態で圧力密閉容器2に固定されることによる性能の低下の回避及び信頼性の確保が可能な圧縮機1と、圧縮機1の製造方法と、圧力密閉容器2を製造する第1拡管器具130とを提供することができる。
また、本実施の形態1の圧縮機1及び圧縮機1の製造方法においては、第3内側面2a3は、胴体部2aにおける圧縮機構部30との固定位置である圧縮機構部固定位置80及び電動機部10との固定位置である電動機部固定位置70から離間した位置に形成できる。上述の構成によれば、圧縮機1の性能の低下をより確実に回避し、圧縮機1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態1の圧縮機1及び圧縮機1の製造方法においては、第3内側面2a3は、胴体部2aにおける底部2bとの接合位置に隣接する位置、すなわち圧力密閉容器2の底部2bの周縁端2b2に隣接する位置に形成される。上述の構成によれば、圧縮機構部30を圧力密閉容器2の底部2bに隣接する位置に収容できるため、圧縮機1の小型化を図ることができる。
また、本実施の形態1の第1拡管器具130においては、拡管金型部は、奇数個の分割金型を備える構成にできる。上述の構成によれば、胴体部2aの拡管時に発生する凸形状の突起部が胴体部2aの内側面の対向する位置に形成されるのを回避できるため、胴体部2aの内径の歪みが大きくなるのを回避することができる。
その他の実施の形態.
本発明は、上述の実施の形態1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、突合せ溶接を行う第1溶接トーチ122は、円周溶接を行う第2溶接トーチ162と同一の構造のものであってもよいし、異なる構造のものであってもよい。
また、第1拡管器具130の第1ケーシング部150及び第1ロッド部155は、第2拡管器具170の第2ケーシング部190及び第2ロッド部195と同一の構造のものであってもよいし、異なる構造のものであってもよい。
また、上述の実施の形態1の圧縮機1は、例えば、空気調和機給湯機、冷凍機、自動販売機、加湿器、除湿器、乾燥機、ショーケース、洗濯乾燥機等の冷凍サイクル装置で使用可能である。