JP6627485B2 - ゲル組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スクラルファートを含有するゲル組成物に関するものである。
スクラルファートは胃で潰瘍部に特異的に付着し、保護膜(ペースト)を形成することで潰瘍を物理的に保護する。近年、スクラルファートの特徴を食道炎や食道潰瘍、小腸や大腸潰瘍、口内炎等の胃以外の患部に適用させる試みがなされている。例えば、特開平8−268895号公報(特許文献1)では、分子中にカルボキシル基を2つ以上有するか又は水酸基を1つ以上有する有機カルボン酸とスクラルファートとを併用することにより、食道炎や潰瘍、小腸・大腸潰瘍、口内炎等への付着性を高める技術が公開されている。また、特開2000−119186号公報(特許文献2)では、スクラルファートとクエン酸ナトリウム等のpH調整剤とを併用することにより、肛門直腸部等の中性粘膜上層部に対するスクラルファートの付着力を向上させる手法が開示されているが、薬剤の適用部位の関係から味等の服用性に関する知見はなされていない。特公平5−76927号公報(特許文献3)では、粉末状のスクラルファートを塩酸水溶液で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液で処理して得たゲルを炭水化物溶液に分散させた薬剤組成物が公開されているが、当該ゲルのpHは4.0〜4.5程度であり、Alイオンが溶解状態にあるため不快味(収れん味、渋味、熱感等)が残る。
このように、スクラルファートを含有する薬剤の服用性に関しては未だ改善の余地があり、スクラルファートの粘膜に対する付着性を向上させつつ、収れん味、渋味(塩味、ヒリヒリ感)、熱感等の不快味を改善する方策が求められている。
特開平8−268895号公報 特開2000−119186号公報 特公平5−76927号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、スクラルファートを含有する組成物において、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対する良好な付着性を有すると共に、収れん味や渋味(塩味、ヒリヒリ感)、熱感等の不快な味を可及的に抑制し得、服用性にも優れたゲル組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、先にスクラルファート、有機酸及び水の混合比を最適化することで、製造性や経時分散安定性に優れると共に、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対して、組成物中のスクラルファートを十分に付着させることができる液状組成物が得られることを知見した(特願2014−219119号)。しかし、上記で得られる液状組成物は、食道等の粘膜に対する付着性が高い(ムチン相互作用の高さを表すΔη値が高い)ものの、液中でAlイオンが高濃度に溶解した状態となることがあり、このような場合には、口中において収れん作用により収れん味、渋味(塩味、ヒリヒリ感)、熱感を呈することがあった。
そこで、本発明者らは更なる検討を行い、上述したスクラルファート、有機酸及び水を含有する液状組成物に対して、中和増粘剤を配合してpHを特定の範囲に調整してゲル化させることによって、収れん味等の不快な味の原因となっているAlイオンの溶解度を低下させることができ、食道等の粘膜に対する良好な付着性を有しつつ、服用時の収れん味、渋味(塩味、ヒリヒリ感)、熱感等の不快味を大幅に改善し得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記のゲル組成物及びその製造方法を提供する。
](A)スクラルファート18〜70質量%、(B)有機酸7〜30質量%、(C)水、及び(D)中和増粘剤を配合してなるゲル組成物であって、分散媒と分散質から構成され、分散質中のショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比が質量比で0.3〜1.4であり、かつpHが5.0〜8.0であることを特徴とするゲル組成物。
](B)/(A)で表される配合質量比が0.1〜1.2である[1]記載のゲル組成物。
](D)中和増粘剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上である[1]又は[2]記載のゲル組成物。
]更に、(E)水不溶性無機粒子として、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する[1]〜[]のいずれか1項記載のゲル組成物。
][1]〜[]のいずれか1項記載のゲル組成物を含有する内服剤。
]ゲル組成物の含有量が20〜90質量%である[]記載の内服剤。
](A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を配合して、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6、(B)有機酸の配合量が7.5〜40質量%である液状組成物を調製した後、該液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合してpHを5.0〜8.0に調整することを特徴とするゲル組成物の製造方法。
](A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を配合して、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6、(B)有機酸の配合量が7.5〜40質量%である液状組成物を調製した後、該液状組成物の温度を5〜50℃に維持しながら、該液状組成物に対して(D)中和増粘剤を10〜180分かけて配合し、pHを5.0〜8.0に調整する[]記載のゲル組成物の製造方法。
本発明によれば、口腔や食道のような通過時間の短い器官の粘膜に対して良好な付着性を有すると共に、収れん味、渋み及び熱感等の不快味が可及的に抑制され、服用性に優れるゲル組成物を提供することができる。
液状組成物の配合範囲を表す相図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のゲル組成物は、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を所定の比率で配合してなる液状組成物に対して、(D)中和増粘剤を配合してpH5.0〜8.0に調整することによって得られるものである。なお、以下の説明において、「液状組成物」とは上記(A)〜(C)成分を配合した段階の液状の組成物を意味し、「ゲル組成物」とは上記液状組成物に対して(D)成分を配合してpHを調整し、更に必要に応じて他の成分を配合して得た上記(A)〜(D)成分の相互作用物であり、ゲル状の組成物を意味する。また、(A)スクラルファート18〜70質量%、(B)有機酸7〜30質量%、(C)水、及び(D)中和増粘剤を配合してなるゲル組成物であって、分散媒と分散質から構成され、分散質中のショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比が質量比で0.3〜1.4であり、かつpHが5.0〜8.0であることを特徴とするゲル組成物となる。
(A)スクラルファート
(A)スクラルファート(ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩)は、粘膜炎症部のタンパク質と結合して炎症部を被覆・保護しながら修復する作用を有し、「胃の絆創膏」とも呼ばれる薬物である。本発明では、胃の炎症部への効果の他、口腔内崩壊錠とすることによって、胸焼けの原因である食道の炎症部にも優れた効果を発揮することができる。
(A)スクラルファートの液状組成物中の配合量は、特に限定されないが、20〜80質量%が好ましい。また、(A)成分のゲル組成物中の配合量は、18〜70質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。(A)成分の配合量を上記範囲内とすることで、分散安定性や製造適性が良好となる。
(B)有機酸
(B)有機酸としては特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、風味、分散安定性の点から、アルギン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酪酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上が好ましく、特にクエン酸、リンゴ酸及び乳酸が好ましい。
(B)成分の液状組成物中の配合量は、7.5〜40質量%であり、8〜23質量%が好ましい。また、(B)成分のゲル組成物中の配合量は、7〜30質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましい。(B)成分の割合が大きくなりすぎると、粘膜付着性が小さくなり、歯面の付着性や収れん性が悪くなる場合がある。本発明において、(B)/(A)で表される配合質量比は、0.1〜1.2が好ましく、0.2〜0.4がより好ましい。特に、この比率を0.2〜0.4とすることで、粘膜付着効果をより高めることができる(ムチン相互作用の高さを表すΔη値が高くなる)。また、上記の比率が1.2を上回るとゲル組成物の服用性に問題が生じる場合がある。
(C)水
(C)水の液状組成物中の配合量は、5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。一方、(C)水のゲル組成物中の配合量は4〜55質量%が好ましく、9〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。なお、液状組成物中では、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6であり、0.8〜4が好ましい。
この比率が、0.8未満又は6を超えると分散安定性が得られず、次工程(後述する(D)成分等を配合する工程)へ進むのが困難になる場合がある。
(D)中和増粘剤
(D)中和増粘剤としては特に限定されず、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩から選ばれる1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本発明では、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩のほか、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化アルミナマグネシウム等の制酸剤を使用することができる。本発明では、製造性の観点から、特に炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムを好適に用いることができる。なお、上記(D)成分の中には、後述する(E)水不溶性無機粒子を兼ねる成分も含まれる。また、(D)成分として水溶性の成分を配合した場合、当該成分は水に溶解して消費される(金属イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン等が系中に残る)。
(D)成分の配合量は、上記(A)〜(C)成分を含有する液状組成物のpHを所定の範囲に調整し得る量であり、特に制限されるものではない。本発明では、上記(D)成分により上記液状組成物のpHを5.0〜8.0、好ましくは5.5〜7.4、より好ましくは5.5〜7.0に調整してゲル化させることで、良好な付着性を有し、かつ服用性にも優れるゲル組成物が得られる。
本発明のゲル組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、下記任意成分を配合することができる。
(E)水不溶性無機粒子
(E)水不溶性無機粒子としては、マグネシウム系無機粒子を好適に用いることができる。具体例としては、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウム等の制酸剤粒子、スメクタイト、ベントナイト及びモンモリロナイト等の無機粘土鉱物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、(E)成分の中には合成ヒドロタルサイトのような(D)成分としても機能する成分も含まれる。そのため、上記(D)成分として、(E)成分としても機能する成分が配合された場合は、当該(E)成分は配合しなくてもよい。一方、上記(D)成分として、水溶性の成分が配合された場合は、上記(E)成分を更に配合することで、ゲル組成物の分散安定性や粘膜付着性を一層高めることができる。なお、上記(E)成分の粒子は、例えば顔料等のように水に溶解せず懸濁状態で系中に存在し、生成したゲルと水素結合等の相互作用によりネットワークを形成していると考えられ、ムチンとの相互作用向上にも重要な役割を果たしていると推測される。
上記(E)成分の含有量は、スクラルファート500mg相当のゲル組成物に対し、マグネシウム換算で35mg以上が好ましく、100mg以上がより好ましい。また、(E)成分の含有量の上限は特に制限されないが、マグネシウム由来の不快味を抑える観点から、スクラルファート500mg相当のゲル組成物に対し、マグネシウム換算で300mg以下が好ましい。
[液状組成物]
本発明の「液状」とは、粘度(25℃)が100〜50,000mPa・sである流動体を意味する。粘度は、製造適性の点から、100〜10,000mPa・sが好ましい。また、この範囲とすることで、服用性(飲み込みやすさ)も良好となる。なお、粘度の測定方法は、B型粘度計(例えば、東機産業社製,RB−80)、3又は4番ローター(粘度に応じて変更)を用い、回転速度12rpm/20℃で測定する。本発明において、製造適性とは、スクラルファート液状組成物の包装容器への充填時、スクラルファート液状組成物にさらなる製剤化処理(ミクロゲル化等)を加えるために次製造プロセスに移行する際に、高粘度では攪拌、ライン輸送等が困難で、製造適性上望ましくないため、液状組成物粘度は一定の値以下であることをいう。また、液状組成物のpH(25℃)は、粘膜付着性の点から、3.0〜4.5の範囲が好ましい。
[ゲル組成物]
本発明の「ゲル組成物」とは、分散媒と分散質(粒子)から構成され、分散質は主にショ糖オクタ硫酸エステルと水酸化アルミニウムと有機酸の複合体、分散媒の主成分は水からなり、分散媒と分散粒子の相互作用によって分散粒子が全体に均一分散することで長期間分散が安定化されており、全体としては流体物であり、チキソトロピー性を有する組成物を意味する。チキソトロピー性を有するとは、せん断速度として0.1s-1、および10s-1で測定したときの粘度の比(ρ0.1s-1/ρ10s-1)が1〜20となるものを指す。前記粘度は、E型粘度計タイプのレオメーターで測定することができる。
スクラルファート自体の1回服用量は、好ましくは250〜3,600mg、より好ましくは300〜1,300mgである。これに別途制酸剤を加えたり、ソフトチュアブルカプセルに内包させたりすることにより、服用する。
本発明のゲル組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を適宜配合することができる。任意成分としては、その他の有効成分、ポリオール、高分子化合物、賦型剤、結合剤、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素等が挙げられる。
本発明のゲル組成物が適用される剤型としては、ゲル組成物をそのままゲル剤としてもよく、更に増粘剤、懸濁剤、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、乳化剤、基剤等の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することで、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠含む)、散剤、顆粒剤、ゼリー剤、グミ剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤とすることができる。本発明においては、特に内服剤が好適であり、液剤、ハードカプセル、ソフトチュアブルカプセル剤がより好ましい。
その他の有効成分としては、ラニチジン又はラニチジン塩酸塩、ファモチジン、シメチジン、塩酸ロキサチジンアセタート、ニザチジン、ラフチジン、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール等の胃酸分泌抑制剤、ピレンゼピン、アトロピン、及びスコポラミン等のムスカリン受容体拮抗薬、アルジオキサ、アズレン、L−グルタミン、及びレバミピド等の防御因子促進剤のほか、コウボク流エキス及びソウジュツ流エキス、ウコン流エキス、カンゾウ抽出エキス、ニンジン流エキス、オウレンチンキ、チョウジチンキ、ゲンチアナチンキ、ケイヒチンキ等の健胃生薬成分を配合してもよい。
ポリオールとしては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチニット、ラクチトール等の糖アルコール、単糖、オリゴ糖及び多糖類のほか、PEG及びグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを配合できる。また、エタノール等の低級アルコールも配合できる。
高分子化合物としては、医薬品や化粧料で用いられる成分を任意で配合することができるが、本発明では(F)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を配合することが好ましい。
(F)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物とは、分子中にアニオン基を有する水溶性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物の希薄水溶液(およそ1質量%以下)にカルシウムイオンや鉄(II)イオンといった2価の金属イオンを添加した際、部分的あるいは全体的なゲル化が起こらない高分子化合物である。具体的にはキサンタンガム、アルギン酸エステル、HMペクチン、及びカラギーナン等が該当する。これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。その中でも特にキサンタンガム、アルギン酸エステル及びHMペクチンより選ばれる2種以上を組み合わせることにより、より高い滞留性及び嚥下性の向上効果及び分散安定効果が期待される。
(F)成分のゲル組成物中の配合量は、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.2〜1.0質量%、更に好ましくは0.3〜0.6質量%、最も好ましくは0.4〜0.6質量%である。(F)成分の配合量を上記範囲とすることにより、更なる滞留性の向上が期待される。
また、上記高分子化合物の組み合わせに関しては、特にキサンタンガムとアルギン酸エステルとを含むことが好ましい。この場合、アルギン酸エステルに対するキサンタンガムの配合質量比(キサンタンガム/アルギン酸エステル)は、好ましくは0.5〜2、より好ましくは1〜2である。配合質量比を上記の範囲とすることにより、ゲル組成物の滞留性、服用性及び分散安定効果の更なる向上が期待される。
上記(F)成分以外の高分子化合物としては、アルギン酸及びアルギン酸塩、グアガム、ジェランガム、タマリンドガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン、寒天等水溶性多糖類、ゼラチン、及びカゼイン等水溶性タンパク質等を配合してもよい。これらの高分子化合物を配合することで製剤を増粘させ、ゲル組成物の嚥下性等の服用性が向上すると共に、口腔粘膜や食道粘膜等の疾患部への滞留性が増し、治療効果が高められると期待できる。
賦型剤としては、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース、バレイショデンプン等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、アルファー化デンプン、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツ等が挙げられる。崩壊剤としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。甘味剤としては、ショ糖、果糖、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ソルビトール、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチン等が挙げられる。防腐剤としては、アルキルパラベン等のパラベン類や、安息香酸、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、公知の精油類、例えば、リモネン、オレンジフレーバー、ライチフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ミントフレーバー、グレープフルーツフレーバー等が挙げられる。嬌味剤としては、メントール等が挙げられる。色素としては、カラメル、カルミン、カロチン液、β−カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
[製造方法]
まず、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を所定の比率で混合して液状組成物を得る。次に、上記で得た液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合して所定のpHに調整することにより本発明のゲル組成物を得ることができる。また、(D)成分を配合してpHを調整した後、必要に応じて更に(E)水不溶性無機粒子や(F)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物等の各成分を配合することにより、粘膜付着性や服用性を更に向上させることができる。
上記各工程の混合条件については通常の条件を採用し得るが、上記液状組成物のpH調整時(中和時)においては、液状組成物の温度を5〜50℃に維持することが好ましく、5〜30℃に維持することがより好ましい。液状組成物の温度を50℃以下にすることで、歯面への付着・収れん性、粘膜付着性をより向上させることができる。液状組成物の温度を5℃以上とすることで、水が凍結しないため製造性が良くなる。
また、上記液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合する際には、10〜180分かけて配合するのが好ましく、15〜180分かけて配合するのがより好ましく、30〜180分かけて配合するのが更に好ましい。液状組成物に(D)成分を10分以上かけて混合することで、分散質(ショ糖オクタ硫酸エステルと水酸化アルミニウムと有機酸の複合体)が均一に微粒化するため歯面への付着性等の服用性が良好になる傾向にあり、粘膜付着性も向上する。一方、混合時間を180分以下にすることで、製造効率が良くなる。上記液状組成物と(D)成分とを混合するプロセスにおいては、より攪拌しやすくするために(D)成分を適量の精製水で溶解又は分散した後に液状組成物と混合することが粘膜付着性の観点で好ましい。なお、上記(D)成分は粉体のままホッパー等を利用してそのまま添加してもよいし、事前に適量の精製水にて水溶液を調製して、定量送液ポンプ等を用いて添加してもよい。また、(D)成分の供給速度については特に制限されるものではないが、例えば1kgのゲル組成物を得る場合、純分換算で概ね1〜50g/分、特に5〜40g/分の範囲とすることが好ましい。
なお、上記の液状組成物及びゲル組成物を調製する各工程においては、特別な攪拌・混合を行う必要なく、公知の攪拌・混合法を採用することができる。攪拌装置としては、スターラー攪拌、プロペラ攪拌、ホモジナイザー、ホモミキサー及び乳化機等が挙げられる。更に、上記で得られたゲル組成物は、後述する製造方法によりソフトカプセル剤やハードカプセル剤とすることができる。
(A)スクラルファートは、ショ糖オクタ硫酸エステル1モルに対し水酸化アルミニウム(Al2(OH)5)約8モルが配位結合した粒子状で存在する。本発明では、まず上述した配合比率で(A)スクラルファートと(B)有機酸と(C)水とを混合することで、酸性条件下でスクラルファート粒子中の一部又は全部の水酸化アルミニウムが解離する。続いて上記(A)〜(C)成分の混合物(即ち、液状組成物)を(D)中和増粘剤で中和することで、ショ糖オクタ硫酸エステルと水酸化アルミニウムと有機酸の複合体となる。なお、本発明で得られるゲル組成物は、上記製造方法により得られるものであり、例えば上記の(A)〜(D)成分を同時に混合しても得られない。この場合、得られる組成物は、ゲル状にはなるものの、本発明の効果を奏するものとはならない。また、有機酸のかわりに塩酸、リン酸等の無機酸を加えても、液状組成物が得られないか、ゲル組成物が得られたとしても本発明の効果が得られない。
また、上記で得られるゲル組成物の分散質中のショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比は、質量比で0.3〜1.4の範囲内である。なお、このショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比は、後述する実施例の測定方法により得られるものである。ショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比が、上記の範囲を満足することにより、食道等の粘膜に対する良好な付着性を有しつつ、服用時の収れん味、渋味(塩味、ヒリヒリ感)、熱感等の不快味を大幅に改善することができる。なお、上記ゲル組成物を後述する処方例のように希釈しても、ゲル組成物中に含まれるスクラルファート粒子の構造が変化しないため、上記のショ糖オクタ硫酸エステル及びアルミニウムの比率は変わらないまま維持される。そのため、上記ゲル組成物は水等で希釈して服用しても、付着性、不快味抑制及び治療効果等の効果を十分に得ることができる。本発明のゲル組成物を希釈する際は、例えば後述するゲル組成物配合内服剤で示すように、全量を服用しやすい5〜10mLの量まで精製水でメスアップすればよい。なお、希釈する際にはゲル組成物の含有量を製剤中20〜90質量%とすることが好ましい。また、製剤のpHは、5.0〜9.0が好ましく、5.0〜8.0がより好ましい。希釈することにより得られるゲル組成物配合内服剤としては、液剤、シロップ剤、ゼリー剤、等があげられ、これらの中でも、使用性、服用性の点から液剤、シロップ剤が好ましく、液剤がより好ましい。また後述するように、ゲル組成物を内包したソフトカプセル剤やハードカプセル剤とすることもできる。
[ソフトカプセル]
ゼラチン基剤の外皮膜中に本発明のゲル組成物を内包して製する。一般的なソフトカプセルの製造方法(打ち抜き法等)で得られる。外皮には、ゼラチン、デンプン、グリセリン等の水溶性成分、カラギーナン等の植物性基剤を配合することもできる。内用物のゲル組成物には、スクラルファート、酸、水の他に、水分活性を下げる目的で無機塩(ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物等)、糖アルコール(マンニトール、エリスリトール、ショ糖等)を更に添加してもよい。特に、ソフトチュアブルカプセルとする場合は、矯味剤として甘味成分(糖類等の天然甘味料、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ソーマチン等の人工甘味料)、香料を内用液に溶かし込んで添加してもよい。
[ハードカプセル]
ゼラチン、プルラン、セルロース等の可食性基剤からなる外皮に本発明のゲル組成物を内包して製する。カプセル自体は、一般的な方法(浸漬法等)で得られる剤を用いることができる。内用物の充填は、粉末充填で一般的に用いられる方法(オーガー式、ダイコンプレス式、ファンネル式等が知られている)ではなく、ポンプ式等の液剤充填に用いられる方法が好ましい。ソフトカプセルの場合と同様の目的で、無機塩や糖アルコールを液状組成物に溶かし込んで添加してもよい。
なお、本発明のゲル組成物をカプセル剤とする場合、ゲル組成物と皮膜との質量比は、ゲル組成物/皮膜=8.0〜0.5とすることが好ましい。ソフトカプセル剤やハードカプセル剤とした場合は、口腔内で咀嚼又は舐めて皮膜を溶かして内容物(ゲル組成物)を口内で暴露させることにより口腔粘膜に滞留させたり、暴露した内容物を嚥下して食道粘膜を通過させることで食道粘膜に直接作用させたりする。本発明のように1回服用量を小容量(1回の服用量として多くとも10g、好ましくは0.5〜4g程度、より好ましくは1〜3g程度)とすることで、特に嚥下直後はその大半が食道に滞留するため、すぐに胃に流れてしまうことがない。これらによって、高い治療効果が期待できる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。なお、以下の実施例で用いたスクラルファート(富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」)には12質量%の水分が含まれる。そのため、例えば実施例1における「スクラルファート水和物」の配合量は45.5質量%(40÷(1−0.12))であり、精製水の配合量はスクラルファート水和物から持ち込まれる水分を差し引いた34.5質量%(40−5.5)である。
[実施例1〜30、比較例1〜10]
下記表の組成に従い、以下の通り組成物を調製した。
(1)液状組成物の調製
(B)有機酸を(C)水(精製水)に溶解した。続いて(A)スクラルファート粉末を添加し、10時間攪拌して液状組成物1〜10(液1〜10)を得た(スクラルファート液状組成物:粘度100〜48,000mPa・s)。上記液状物の詳細については表1に示した。
(2)ゲル組成物の調製
上記(1)で得た液状組成物を温調ジャケット付きの混合機(みづほ工業(株)製真空乳化機「PVQ−3UN」)に投入し、下記の各表に示した温度に維持して、プロペラ攪拌しながら(D)中和増粘剤の粉体を所定時間かけて定量速度で添加してpHを所定の範囲に調整してゲル組成物を得た。また、必要に応じて更に(E)水不溶性無機粒子を添加した。なお、(E)成分を添加する場合、上記で得たゲル組成物と(E)成分とをホモミキサーを用いて更に30分プロペラ攪拌して混合した。
なお、比較例10は、特公平5−76927号公報に記載された方法に準じて調製したゲル組成物であり、以下の手順により調製した。
スクラルファート10gを200mLビーカーに計り取り、1N塩酸160mLを添加して室温で1時間攪拌した。続いて1N水酸化ナトリウム溶液160mLを徐々に添加し、pHを4.0に調整した後、更に1時間攪拌した。続いて遠心分離管に移し、2,000rpmで5分間遠心分離して沈殿物を回収した。得られた沈殿物を精製水で2回洗浄(遠心分離、同条件)し、ゲル組成物とした。
上記で得られたスクラルファートを含有するゲル組成物について、下記評価を行った。結果を表2〜6に示す。
[粘膜付着性]
ゲル組成物(スクラルファート500mg相当)に所定量のムチン溶液(ブタ胃由来ムチン75mg相当、和光純薬工業(株)製)を添加したときの粘度ηM+FをE型粘度計タイプのレオメーター(AR2000,TAインストルメンツ製、測定せん断速度=0.1〜10s-1)で測定した。別途、ゲル組成物自体の粘度ηF、ムチン溶液自体の粘度ηMを測定し、下記式によりムチン相互作用性Δηを算出した。
Δη=ηM+F/(ηM+ηF
粘膜付着性の判定基準は、Δη値が1.5以上を合格とした。3以上のものがより好ましく、5以上のものが更に好ましい。Δη値の上限は特に限定されないが、服用性の面から20以下が好ましい。
なお、粘膜付着性をムチンとの相互作用性Δη値で評価する手法は、例えば論文「Carbohydrate Polymers 71(2008)170−179」でも示されているように、一般的な方法として用いられている。
[服用性]
4人のパネラー(健常な成人男女)が、上記で作製したゲル組成物(スクラルファートは全て約500mgを含有)を水等を使用せずにそのまま服用し、該ゲル組成物の「歯への付着性」、「収れん味」及び「熱感」等を以下の基準で官能評価した。
〈判定基準〉
「歯への付着性」、「収れん味」
4:付着・収れん味をほとんど感じない
3:付着・収れん味がやや感じられるが、許容できる
2:付着・収れん味があり服用しづらい
1:付着・収れん味が非常に強く服用に耐えない
「熱感」、「塩味」、「ヒリヒリ感」
4:ほとんど感じない
3:やや感じるが許容できる
2:強く感じ、服用しづらい
1:非常に強く感じ、服用に耐えない
いずれの評価項目もパネラー4人の評価の平均値が3.0点以上を合格とした。3点と2点と1点では服用性に大きな差異があり、1点は服用することが極めて困難(吐き出してしまう)なほど味が悪い。
[分散質中のショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比]
作製したゲル組成物を遠心分離管にとり、2,000rpm、30分(室温)で遠心分離して上澄みを除去した。沈殿物に精製水を添加、洗浄して遠心分離で上澄みを除去した。同操作を2回繰り返した。得られた沈殿物のショ糖オクタ硫酸エステル含量とアルミウム含量を各々求め、ショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比(質量比)を求めた。
ショ糖オクタ硫酸エステル含量は「日局・スクラルファート」定量法(HPLC法)に準じて実施した。アルミニウム含量は、「日局・乾燥水酸化アルミニウムゲル」定量法(逆滴定法)に準じて酸化アルミニウム量を求め、アルミニウム量に換算した。実施例9、13、14及び17、比較例5、8及び10について測定した。
Figure 0006627485
Figure 0006627485
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Figure 0006627485
Figure 0006627485
図1に液状組成物の配合範囲を表す相図を示した。図中のプロットは実施例のゲル組成物を調製する際に得た液状組成物の配合を示す。その結果、本発明で規定する配合質量比(A)/(C)、及び(B)成分の配合量の範囲を満足する液状組成物を(D)成分で中和することにより優れた効果を有するゲル組成物が得られることが確認された。
また、比較例の結果から以下のことが確認できた。
比較例1は、(A)/(C)で表される配合質量比が低すぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、ゲル組成物を調製することができなかった。
比較例2は、(A)/(C)で表される配合質量比が高すぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、ゲル組成物を調製することができなかった。
比較例3は、(B)有機酸の配合量が少なすぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、ゲル組成物を調製することができなかった。
比較例4は、(B)有機酸の配合量が多く、(B)/(A)で表される配合質量比が高すぎるため、粘膜付着性が低い上、強い不快味を呈するものとなった。
比較例5は、(B)有機酸が配合量されていないため、粘膜付着性の劣るものとなった。
比較例6及び7は、(B)有機酸を使用せずに、リン酸や塩酸等の無機酸を使用したものであり、液状組成物が作製できないか、作製できたとしても粘膜付着性は劣るものしかできなかった。
比較例8は、ゲル組成物のpHが低すぎるため、強い不快味を呈するものとなった。
比較例9は、ゲル組成物のpHが高すぎるため、粘膜付着性に劣るものとなった。
比較例10は、特公平5−76927号公報に記載された方法に準じて調製したゲル組成物(スクラルファート500mg相当)であるが、実施例のゲル組成物に比較して粘膜付着性が劣るものであった。
[スクラルファート含有ゲル組成物配合内服剤]
上記の製造方法に従って表7に示した配合のゲル組成物を調製した。次いで、該ゲル組成物に対してキサンタンガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル及び精製水を下記表に示す割合で配合し、所定量のスクラルファートを含むスクラルファート含有ゲル組成物配合内服剤を得た。得られた製剤については、上記の手順に従って粘膜付着性及び服用性を評価すると共に、下記の条件及び手順に従ってモデル動物に投与し、その食道炎抑制効果を比較評価した。
[食道炎抑制効果]
(1)動物
7週齢のSD系雄性ラットを1週間予備飼育後、試験に供した。
(2)処置
(2−1)絶食
処置前日より絶食を行った。
(2−2)検体投与
下記の群構成に従い、結紮処置の120分前に検体を投与した。
a.コントロール群
2.5%ヒドロキシプロピルスターチ、n=12
b.比較群
比較製剤1:アルサルミン内服液10%、0.60mL/kg、n=13
比較製剤2:実施製剤1から「その他」2成分を除し、(D)成分を比較例9と同量にしてpHを8.1とした製剤、0.60mL/kg、n=7
比較製剤3:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム10%と合成ヒドロタルサイト5%のみ含有した製剤、0.60mL/kg、n=5
c.実施製剤群
実施製剤1:(a)0.30mL/kg、n=7;(b)0.60mL/kg、n=7
(2−3)食道炎発生処置
検体投与120分後に幽門部及び前胃・腺胃境界部を縫合糸にて結紮し、食道炎を発生させた。
結紮4時間後に開腹し、食道におけるびらん・潰瘍の有無、病変面積を測定した。
(3)評価方法
食道炎の発生状況を下記の基準に従ってスコア化し、各群の平均スコアを算出し、下記の式から食道炎抑制率を算出した。
スコア0:食道炎の発生なし
スコア1:粘膜のびらん
スコア2:病変面積30mm2未満
スコア3:病変面積30mm2以上
スコア4:食道穿孔
食道炎のスコアは、薬剤非投与群でスコア3以上の食道全体に及ぶ重篤な食道炎を生じる。スコア1以下では、ほとんど出血等を認めない著明に改善された状態を示す。
食道炎の抑制効果を、モデル動物を用いてスコア化し評価する手法は、例えば論文「Therapeutic Research vol.18 No.12, 3943−50(1997)」でも示されているように、一般的な方法として用いられている。

食道炎抑制率(%)=(1−(各群の食道炎スコア/コントロール群の食道炎スコア))×100
Figure 0006627485
表7の結果より、以下の結果が確認できた。
実施製剤1では、本発明の要件を満足するゲル組成物を使用することにより、極めて優れた粘膜付着性及び服用性を示すと共に、生物試験においても極めて優れた食道炎抑制効果が得られることが確認された。
比較製剤1は、実施製剤1と同量の(A)スクラルファートを単独で使用した例であるが、粘膜付着性が実施製剤1に比べて劣り、食道炎抑制効果も低いことが確認された。
比較製剤2は、実施製剤1と同量の(A)成分を配合したゲル組成物であるが、(D)成分添加後のpHが本発明で規定する範囲を超えているため、粘膜付着性が実施製剤1に比べて劣るものとなり、食道炎抑制効果も低いものとなった。
比較製剤3は、(A)成分を使用せず、(E)成分のみを使用した場合の例であるが、粘膜付着性は全くなく、本発明の効果を全く奏さないことが確認された。
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
スクラルファート:富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」
乳酸:DSP五協フード&ケミカル(株)製、90%DL−乳酸
リン酸:和光純薬工業(株)製、「リン酸」
塩酸:関東化学(株)製、塩酸(試薬)
精製水:共栄製薬(株)製、「精製水(蒸留)」
炭酸水素ナトリウム:旭硝子(株)製、「重炭酸ナトリウムKP」
炭酸カルシウム:純正化学(株)製、「炭酸カルシウム」
水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製、水酸化ナトリウム(試薬)
炭酸マグネシウム:和光純薬工業(株)製、炭酸マグネシウム(試薬)
水酸化マグネシウム:和光純薬工業(株)製、水酸化マグネシウム(試薬)
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業(株)製、「ノイシリン(UFL2又はNFL2N)」
合成ヒドロタルサイト:協和化学工業(株)製、「アルカマックVF」
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製、「酸化マグネシウム」
キサンタンガム:DSP五協フード&ケミカル(株)製、「エコーガム」
アルギン酸プロピレングリコールエステル:(株)キミカ製、「キミロイド」

Claims (8)

  1. (A)スクラルファート18〜70質量%、(B)有機酸7〜30質量%、(C)水、及び(D)中和増粘剤を配合してなるゲル組成物であって、分散媒と分散質から構成され、分散質中のショ糖オクタ硫酸エステル/アルミニウム比が質量比で0.3〜1.4であり、かつpHが5.0〜8.0であることを特徴とするゲル組成物。
  2. (B)/(A)で表される配合質量比が0.1〜1.2である請求項1記載のゲル組成物。
  3. (D)中和増粘剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載のゲル組成物。
  4. 更に、(E)水不溶性無機粒子として、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜のいずれか1項記載のゲル組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載のゲル組成物を含有する内服剤。
  6. ゲル組成物の含有量が20〜90質量%である請求項記載の内服剤。
  7. (A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を配合して、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6、(B)有機酸の配合量が7.5〜40質量%である液状組成物を調製した後、該液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合してpHを5.0〜8.0に調整することを特徴とするゲル組成物の製造方法。
  8. (A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を配合して、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6、(B)有機酸の配合量が7.5〜40質量%である液状組成物を調製した後、該液状組成物の温度を5〜50℃に維持しながら、該液状組成物に対して(D)中和増粘剤を10〜180分かけて配合し、pHを5.0〜8.0に調整する請求項記載のゲル組成物の製造方法。
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