JP6625821B2 - 金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法 - Google Patents

金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法に関する。
金属化合物粒子を用いた電極は、正極及び負極にそれぞれ金属化合物粒子を用いたリチウムイオン二次電池や、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを可逆的に吸着/脱着可能な材料(グラフェンや金属化合物など)を用いたリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスに用いられる。これらの蓄電デバイスは、携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源として、また、車載等での回生エネルギー用途に利用されている。
このような蓄電デバイスとしては、特定のリチウム含有複合酸化物の表面に、カーボンナノチューブ、グラフェン及び平均分散粒子径が0.2μm以下のカーボンブラックから選択された一種の炭素材料を被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質(公知文献1)が知られている。
特開2012−169217号公報
ところで、蓄電デバイスの電解液としてカーボネート系を用いると、この電解液の分解生成物により、負極の表面にSEIと呼ばれる皮膜が形成される。この皮膜の生成が一定量進行すると、それ以降の電解液の分解が抑制されるものの、皮膜の厚みが増すことで、内部抵抗が増加する恐れがあった。
そこで、本発明の目的は、蓄電デバイスの内部抵抗の増加を抑制することができる金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明の金属化合物粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子が連なった三次元網目構造を有し、前記金属化合物粒子の表面には、リチウムイオン伝導皮膜が形成され、前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、10〜50nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.005cm /g以上の値を有すること、を特徴とする。
前記三次元網目構造には、空隙が存在し、前記空隙を画成する前記金属化合物粒子には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されていても良い。
前記リチウムイオン伝導皮膜は、酸化物系、硫化物系、リン酸系、ホウ酸系のリチウムイオン伝導皮膜のうち、少なくとも1つを含んでいても良い。
前記金属化合物粒子がチタン酸リチウムであっても良い。
上記の金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極とすることもできる。
また、本発明の金属化合物粒子群の製造方法は、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程と、前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程と、前記第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程と、前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程と、を有すること、を特徴とする。
前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程が、前記金属化合物粒子の前駆体と前記カーボン源に、前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程であっても良い。前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程が、前記第一の複合材料に、前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程であっても良い。
本発明によれば、蓄電デバイスの内部抵抗の増加を抑制可能とする金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法を提供することができる。
(a)は、本発明の第二の複合材料を示す概念図であり、(b)は、本発明の金属化合物粒子群を示す概念図である。 従来の金属化合物粒子群を示す概念図である。 従来のリチウムイオンキャパシタにおいて、内部抵抗が増加する原理を説明する説明図である。 従来のチタン酸化物粒子にフォーカスを当てたHRTEM像であり、倍率は40万倍である。 実施例に係るチタン酸化物粒子にフォーカスを当てたHRTEM像であり、倍率は40万倍である。 実施例に係るチタン酸化物粒子にフォーカスを当てたHRTEM像であり、倍率は40万倍である。 実施例に係るチタン酸化物粒子にフォーカスを当てたHRTEM像であり、倍率は40万倍である。 キャパシタについて加速試験を行った際の直流抵抗を測定した結果を示すグラフである。 キャパシタについて加速試験を行った際の直流抵抗を測定した結果を示すグラフである。 実施例に係るチタン酸化物粒子群の差分細孔容積を示した図である。 実施例に係るチタン酸化物粒子群の差分細孔容積を示した図である。 実施例に係るチタン酸化物粒子群の差分細孔容積を示した図である。
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
[1.構成]
本発明の金属化合物粒子群は、主に蓄電デバイスの電極に用いられるものであり、金属化合物粒子群を構成する金属化合物粒子としては、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの正極活物質又は負極活物質として動作可能な材料である。金属化合物粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子が連なった三次元網目構造を有し、金属化合物粒子の表面には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されている。金属化合物粒子の三次元網目構造には、空隙が存在し、空隙を画成する金属化合物粒子には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されている。
(金属化合物粒子)
金属化合物粒子は、リチウムを含む酸化物又は酸素酸塩であり、LiαMβYγで表される。金属酸化物の場合、例えば、M=Co,Ni,Mn,Ti,Si,Sn,Al,Zn,Mgの何れかであり、Y=Oである。金属酸素酸塩の場合、例えば、M=Fe,Mn,V,Co,Niの何れかであり、Y=PO,SiO,BO,Pの何れかである。Mβは、MδM’εの合金であってもよく、例えば、M=Sn,Sb,Siの何れかであり、M’=Fe,Co,Mn,V,Ti,Niの何れかである。例えば、酸化マンガン、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、コバルト酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸鉄マンガンリチウムが使用できる。
(リチウムイオン伝導皮膜)
リチウムイオン伝導皮膜は、リチウムイオン伝導性を有する皮膜である。リチウムイオン伝導皮膜は、酸化物系、硫化物系、リン酸系、ホウ酸系のリチウムイオン伝導体の少なくとも1つを含む。リン酸系のリチウムイオン伝導皮膜としては、リン酸リチウムを用いることができる。例えば、LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜は、前駆体である酢酸リチウムおよびリン酸エステルを、後述する混合工程にて混合することにより形成される。ホウ酸系のリチウムイオン伝導皮膜としては、ホウ酸リチウムを用いることができる。
酸化物系のリチウムイオン伝導皮膜としては、リチウムランタンチタン酸化物を用いることができる。例えば、Li0.5La0.5TiOのリチウムイオン伝導皮膜は、前駆体である酢酸リチウム、酢酸ランタン、チタンテトライソプロポキシドを、後述する混合工程にて混合することにより形成される。また、酸化物系のリチウムイオン伝導皮膜として、アルミン酸リチウムを用いても良い。例えば、LiAlOのリチウムイオン伝導皮膜は、前駆体である酢酸リチウムおよびトリイソプロポキシアルミニウムを、後述する混合工程にて混合することにより形成される。
他にも、酸化物系のリチウムイオン伝導皮膜としては、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、LiLaZr12、50LiSiO・50LiBO、Li0-Al-SiO、Li0-B、LiWO、LiMoO、Li0-V-SiO、Li2.9PO3.30.46、Li3.6Si0.60.4などを用いることができる。
また、硫化物系のリチウムイオン伝導皮膜としては、Li10GeP12、30LiS・26B・44LiI、63LiS・36SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSio、70LiS・30P、50LiS・50GeS、Li11、Li3.250.95などを用いることができる。
[2.製造方法]
本発明にかかる金属化合物粒子群の製造方法は、次の工程を有するものである。
(1)金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程
(2)第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程
(3)第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
(4)第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程
(1)第一の複合材料を得る工程
この第一の複合材料を得る工程では、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る。
金属化合物粒子の前駆体は、熱処理工程によって金属化合物粒子が生成される前の物質を言う。例えば、MβYγもしくはその構成化合物(MβYγのそれぞれの範囲は、金属化合物粒子と同様)であり、さらにこのMβYγもしくはその構成化合物にリチウム源を加えたものを含むものである。
金属化合物粒子の材料源としては、粉体であっても溶液に溶けた状態であってもよい。リン酸鉄リチウムの場合は、例えば、酢酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)等のFe源と、リン酸、リン酸ニ水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸源とクエン酸、リンゴ酸、マロン酸等のカルボン酸を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
チタン酸リチウムの場合は、例えば、チタンアルコキシド等のチタン源、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムなどのリチウム源を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
コバルト酸リチウムの場合は、例えば、水酸化リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどのリチウム源と、酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト源を材料源として、金属化合物粒子の前駆体を生成する。
本発明のカーボン源は、カーボン自体(粉体)もしくは熱処理によってカーボンとなりうる材料を意味する。カーボン(粉体)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定なく使用することができる。例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、気相法炭素繊維等を挙げることができる。なかでも粒子径がナノサイズの炭素材料が好ましい。
熱処理によってカーボンとなりうる材料としては、有機物で、金属化合物粒子の前駆体の表面に堆積するものであり、後の熱処理工程においてカーボンに転化するものである。有機物としては、多価アルコール(エチレングリコールなど)、ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなど)、糖類(グルコースなど)、アミノ酸(グルタミン酸など)などである。
これら金属化合物粒子の材料源とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得るものであり、複合材料は、金属化合物粒子の材料源として、溶解したものもしくは粉体のものを用い、カーボン源としては、カーボン(粉体)もしくは熱処理によってカーボンとなりうる物質を用いた複合材料である。
この金属化合物粒子の材料源とカーボン源との複合化の手法としては、次のものが挙げられる。
(a)メカノケミカル処理
(b)スプレードライ処理
(c)攪拌処理
(a)メカノケミカル処理
メカノケミカル処理としては、溶媒に、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体とを添加し、溶媒に材料源を溶解させることで溶液を得る。
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。
金属化合物粒子の前駆体反応が加水分解反応である場合には、その材料源は、金属アルコキシドM(OR)xが挙げられる。また、必要に応じて、溶液に反応抑制剤を添加することもできる。反応抑制剤として該金属アルコキシドと錯体を形成する所定の化合物を添加することにより、化学反応が促進しすぎるのを抑制することができる。金属アルコキシドに、これと錯体を形成する酢酸等の所定の化合物を該金属アルコキシド1モルに対して、1〜3モル添加して錯体を形成することにより、反応を抑制、制御する。金属アルコキシドと錯体を形成することができる物質としては、酢酸の他、クエン酸、蓚酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、プロピオン酸、レプリン酸等のカルボン酸、EDTA等のアミノポリカルボン酸、トリエタノールアミン等のアミノアルコールに代表される錯化剤が挙げられる。
この溶液にずり応力と遠心力を加えてメカノケミカル反応によりカーボン粉体の表面に金属化合物粒子の前駆体を結合させる。旋回する反応器内で溶液にずり応力と遠心力とを印加する処理をするもので、反応器としては、特開2007−160151号公報の図1に記載されている、外筒と内筒の同心円筒からなり、旋回可能な内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器が好適に使用される。上記反応器において、内筒外壁面と外筒内壁面との間隔は、5mm以下であるのが好ましく、2.5mm以下であるのがより好ましい。なお、薄膜を生成するために必要な遠心力は1500N(kgms−2)以上、好ましくは70000N(kgms−2)以上である。
このように前駆体形成工程を経て、金属化合物粒子の材料源が含有された溶液にずり応力と遠心力が加えられることで、金属化合物粒子の前駆体とカーボン粉体が複合化した第一の複合材料を生成することができる。
(b)スプレードライ処理
スプレードライ処理としては、溶媒に、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体とを含有する溶液を準備する。
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。また、金属化合物粒子の材料源としては、金属アルコキシドM(OR)xが好ましい。
溶媒には、金属化合物粒子の材料源及びカーボン粉体が添加され、必要に応じて攪拌して溶液が調整される。スプレードライ処理に際しては、まずは、溶媒にカーボン粉体を分散させ、その後に金属化合物粒子の材料源を分散させるとよい。分散手法としては、超遠心処理(溶液中で粉体にずり応力と遠心力を加える処理)、ビーズミル、ホモジナイザーなどによってカーボン粉体を溶媒中に高分散させるとよい。
このカーボン粉体が分散された溶媒に、金属化合物粒子の材料源として金属アルコキシドを溶解させて得た溶液を基板上にスプレードライ処理を行い、金属アルコキシドが酸化処理されて金属化合物粒子の前駆体が生成され、この前駆体とカーボン粉体とが複合化されて第一の複合材料が得られる。なお、必要に応じてこの複合材料に、さらに金属化合物粒子の材料源を添加して、第一の複合材料としても良い。スプレードライ処理は、0.1MPa程度の圧力でカーボン粉体が焼失しない温度で処理される。スプレードライ処理によって一次粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲の金属化合物粒子の前駆体が得られる。
(c)攪拌処理
攪拌処理としては、金属化合物粒子の材料源として少なくとも1種の粉体と、カーボン源である熱処理によってカーボンになりうる材料を溶媒に添加し、この溶液を攪拌し、金属化合物粒子の材料源の表面にカーボンになりうる材料を堆積させた第一の複合材料を得る。材料源となる粉体は、予め粉砕等を行いナノレベルの微小粒子とすることが好ましい。熱処理によってカーボンになりうる材料として、ポリマーを用いる場合は、予めポリマーを添加した溶媒に金属化合物粒子の材料源を添加し、この溶液を攪拌するとよい。ポリマーは、金属化合物粒子の材料源となる粉体の重量を1とした場合に、0.05〜5の範囲となるように調整するとよい。また、微小粒子の平均二次粒子径としては、500nm以下、好ましくは100nm以下とすることで、粒子径の小さな金属化合物粒子群を得ることができる。また、溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好適に使用できる。
(2)リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
このリチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程は、後述する第二の複合材料を得る工程の前に行われる工程である。リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程では、リチウムイオン伝導皮膜の原材料である前駆体を、金属化合物粒子群の材料源に混合する工程である。リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合するタイミングとしては、例えば以下の2つが考えられる。
(a)金属化合物粒子の前駆体とカーボン源に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
(b)第一の複合材料に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
ただし、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、後述する第二の複合材料を得る工程の前に行われていれば良く、上記2つのタイミングに限定されるものではない。
(a)金属化合物粒子の前駆体とカーボン源に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
例えば、上記スプレードライ処理において、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体とを含有する溶液を準備する際に、溶媒にリチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合することができる。溶媒にリチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合しスプレードライ処理を行うことで、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、他の材料源と混合される。
(b)第一の複合材料に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程
例えば、上記メカノケミカル処理において、金属化合物粒子の材料源の少なくとも1種とカーボン粉体を溶媒に添加し、この溶媒にずり応力と遠心力を加えて得た第一の複合材料に対して、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合することができる。第一の複合材料にリチウムイオン伝導皮膜の前駆体を添加した後に、エバポレーター等を用いて溶媒等を除去する処理を行うことで、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、他の材料源と混合される。
なお、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程は、後述する第二の複合材料を得る工程の前に行うことが好ましいが、これに限らず、例えば、酸素雰囲気下の熱処理により得られた金属化合物粒子群を、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を含む溶液に浸す、または塗布するなどしてから、再度熱処理を行うことでリチウムイオン伝導皮膜を形成することができる。
(3)第二の複合材料を得る工程
この第二の複合材料を得る工程では、前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る。非酸化雰囲気下とするのは、カーボン源の燃失を抑制するためであり、非酸化雰囲気としては不活性雰囲気と飽和水蒸気雰囲気が挙げられる。
この第二の複合材料を得る工程では、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とが複合化された第一の複合材料を真空中、窒素もしくはアルゴン雰囲気などの不活性雰囲気、または飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を施す。この熱処理によって金属化合物粒子の前駆体が成長し、カーボン源と複合化された状態で金属化合物粒子が生成される。また非酸化雰囲気下での熱処理のため、カーボン源は焼失されにくく金属化合物粒子と複合化した状態として存在し、金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料が得られる。図1(a)の概念図に示すように、第二の複合材料は、カーボン(カーボンナノファイバ:CNF)上に金属化合物粒子(チタン酸リチウム:LTO)が担持された複合材料であり、CNF上に、LTOがナノサイズの粒子となって分散して存在しているものと考えられる。
第一の複合材料に含まれるカーボン源としてカーボン粉体を用いた場合には、この非酸化雰囲気下での熱処理によって、カーボン粉体の表面の金属化合物粒子の前駆体が、非酸化雰囲気下での熱処理の際に反応し、カーボン粉体の表面上で成長して格子接合することとなり、カーボン粉体と金属化合物粒子が一体化する。また、第一の複合材料に含まれるカーボン源として熱処理によってカーボンとなりうる材料を用いた場合には、この非酸化雰囲気下での熱処理によって、金属化合物粒子の前駆体の表面上で該材料が炭化されてカーボンが生成され、このカーボンと熱処理によって成長した金属化合物粒子とが複合化された第二の複合材料が生成される。ここで第二の複合材料に含まれる「カーボン」は、カーボン粉体もしくは熱処理によって生成されたカーボンを示す。
この非酸化雰囲気下での熱処理として、不活性雰囲気下で熱処理を行う場合は、カーボン源の燃失を防止するためにその温度は、600〜950℃の範囲で、1分〜20分間保持される。この範囲であると良好な金属化合物粒子が得られ、良好な容量、レート特性が得られる。特に金属化合物粒子がチタン酸リチウムである場合は、熱処理温度が600℃未満であると、チタン酸リチウムの生成が十分でないため好ましくなく、熱処理温度が950℃を超えると、チタン酸リチウムが凝集し且つチタン酸リチウム自体が分解するため好ましくない。なお、不活性雰囲気下としては特には窒素雰囲気での熱処理が好ましく、金属化合物粒子に窒素がドープされて金属化合物粒子の導電性が高まり、この結果急速充放電特性が向上する。
また非酸化雰囲気下での熱処理として、飽和水蒸気雰囲気下で熱処理を行う場合は、カーボン源の焼失を防止するためにその温度は、110〜300℃の範囲で、1〜8時間保持される。この範囲であると良好な金属化合物粒子が得られ、良好な容量、レート特性が得られる。特に金属化合物粒子がコバルト酸リチウムである場合は、熱処理温度が110℃未満であると、コバルト酸リチウムの生成が十分でないため好ましくなく、熱処理温度が300℃を超えると、カーボン源が焼失するとともに、コバルト酸リチウムが凝集するため好ましくない。
この第二の複合材料を得る工程で得られた金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径は、5〜300nmの範囲に含まれることが好ましい。このようなナノサイズの微小粒子とすることで後述する金属化合物粒子群の空隙率を増加させることができると共に、金属化合物粒子群に存在する微細な孔の数を増やすことができる。また、得られた第二の複合材料は、金属化合物粒子とカーボンとの重量比で95:5〜30:70の範囲が好ましく、このような範囲とすることで、最終的に得られた金属化合物粒子群の空隙率を増加させることができる。なお、このような範囲にするには、予め金属化合物粒子の材料源とカーボン源の混合比を調整しておけばよい。
なお、この第二の複合材料を得る工程の前に、第一の複合材料を200〜500℃の温度範囲で、1〜300分間保持する予備加熱処理を施すとよい。この予備加熱処理によって得られる金属化合物粒子によっては、第一の複合材料に存在する不純物を除去することができ、また金属化合物粒子の前駆体がカーボン源に均一に付着された状態を得ることができる。また、第一の複合材料に含まれる金属化合物粒子の前駆体の生成を促進させる効果もある。
(4)金属化合物粒子群を得る工程
この金属化合物粒子群を得る工程では、前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る。
この金属化合物粒子群を得る工程では、ナノサイズの金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理を施す。この熱処理によってカーボンが焼失して除去され、加熱前に存在したカーボンの部位が空隙となる。またこの熱処理によって金属化合物粒子同士が反応して連なる。これによって、カーボン由来の空隙と、金属化合物粒子同士の連なりとが相まって、図1(b)の概念図に示すように金属化合物粒子の三次元網目構造を構成することになる。この金属化合物粒子群は、適度な空隙を有するため、蓄電デバイスを構成した際の電解液が含浸されて電極内での電解液中のイオンの移動が円滑となり、また金属化合物同士の連なりによって電子の移動が早くなり、両者の相乗作用により電極の抵抗が下がり、レート特性を向上するものと考えられる。なお、カーボン源を用いないで作製する金属化合物粒子群では、図2の概念図に示すように、粗大な金属化合物同士が凝集し且つ空隙も少ないものである。
この熱処理では、カーボンを除去するために、また金属化合物粒子同士を連ならせるためにその温度は、第二の複合材料を得る工程の熱処理温度よりも低い温度に設定することが好ましく、特には350〜800℃、さらには400〜600℃の範囲で、1〜24時間保持することが好ましい。特に、不活性雰囲気下の場合は、第二の複合材料を得る工程の熱処理温度よりも低い温度に設定することが好ましい。350℃未満の温度は、第二の複合材料に含まれるカーボンの除去が不十分となり、800℃を超える温度では、金属化合物粒子の凝集が進み金属化合物粒子群の空隙が減少する。また、400以上600℃以下の温度範囲であると、金属化合物粒子は、一次粒子の平均粒子径が5〜300nmに維持され、この熱処理前の金属化合物粒子の一次粒子の平均粒子径からの粒子成長が抑制される。
また、この熱処理温度は、予備加熱工程の温度以上で処理することが好ましい。酸素雰囲気下としては、窒素などとの混合雰囲気でもよく、大気中など酸素が15%以上存在する雰囲気下が好ましい。この酸素雰囲気下での熱処理においては、カーボンの焼失によって酸素量が減少するため、熱処理炉内に適宜酸素を供給してもよい。
次に、このようにして得られた金属化合物粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子同士が連なった三次元網目構造を構成しており、ナノサイズの細孔(空隙)が存在している。金属化合物粒子は、その一次粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲の粒子を有しており、このような範囲の微小粒子であるため、金属化合物粒子群のナノサイズの細孔が多く得られ、電解液との接する金属化合物粒子の面積を増やし、電解液中のイオンの移動が円滑となる。また、この金属化合物粒子群の細孔を測定したところ、微細な細孔が多く存在する。特に50nm以下の微細な細孔も多く含むものであり、例えば金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積においては、10〜50nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.005cm/g以上の値を有し、特には、0.01cm/g以上の値を有するものであり、電解液との接する金属化合物粒子の面積が増え、このよう電解液との接する金属化合物粒子との面積が多いほど、電極に用いた際のレート特性が向上する。
また、この得られた金属化合物粒子群に残存するカーボン量は、金属化合物粒子群に対しての5重量%未満とすることが好ましい。このカーボン量を除去するには、金属化合物粒子群を得る工程の熱処理温度及び処理時間を調整し、第二の複合材料に含まれるカーボンを除去し、カーボンを極めて少ない量にまで制限することで、電極内でのカーボンと電解液との反応が抑制され放置特性が向上し、特には、1重量%未満が好ましい。
上記(3)および(4)の熱処理により、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体が反応し、金属化合物粒子の表面に、リチウムイオン伝導皮膜が形成される。上記の通り、第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体が他の材料と混合される。そのため、焼成の際に金属化合物粒子群の三次元網目構造内部においても、リチウムイオン伝導皮膜が形成される。すなわち、三次元網目構造の空隙を画成する金属化合物粒子においても、リチウムイオン伝導皮膜が形成さる。
このようにして得られた金属化合物粒子群は、蓄電デバイスの電極に用いられる。金属化合物粒子群は、所定の溶媒とバインダ、必要に応じて導電助剤となるカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトなどの導電性カーボンを加えて混練して成型することで、電気エネルギーを貯蔵する電極となる。この電極には電解液が含浸され、所定の容器に収納されて蓄電デバイスとなる。
[3.作用効果]
本実施形態の作用効果を説明する前に、従来の金属化合物粒子を用いた場合に、電気化学キャパシタにおいて内部抵抗が増加する原理を説明する。ここでは図3に示すように、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを可逆的に吸着/脱着可能なチタン酸リチウムを用いたリチウムイオンキャパシタを例として説明する。
例えばカーボネート系の電解液を用いた場合、リチウムイオンキャパシタの駆動中に電解液中のカーボネート類(プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートやエチレンカーボネート)の還元生成物、もしくは加水分解反応による生成物が負極上に堆積する。堆積が生じると、チタン酸リチウムの表面にSEI皮膜が生成される。この皮膜の厚みが増加することにより、内部抵抗の増加が引き起こされていると考えられる。
一方、本実施形態の金属化合物粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子が連なった三次元網目構造を有し、金属化合物粒子の表面には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されている。リチウムイオン伝導皮膜により、金属化合物粒子の表面にSEI皮膜が生成されることを抑制することができる。これは、リチウムイオン伝導皮膜が、金属化合物粒子上に存在することで、電解液と金属化合物粒子界面で生じる、還元や加水分解等の反応が抑制されたためと考えられる。また、SEI皮膜が生成されたとしても、リチウムイオン伝導皮膜により金属化合物粒子のリチウムイオン伝導性が保たれると考えられる。従って、蓄電デバイスの内部抵抗の増加を抑制することができる金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法を提供することができる。
また、本実施形態の金属化合物粒子群は、三次元網目構造には、空隙が存在し、空隙を画成する前記金属化合物粒子には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されている。すなわち、三次元網目構造の内部に至るまで、リチウムイオン伝導皮膜が形成されている。そのため、金属化合物粒子の表面にSEI皮膜が生成されることをより確実に抑制することができる。
さらに、本実施形態の金属化合物粒子群の製造方法は、金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程と、記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程と、第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程と、第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程と、を有する。
第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程を有することにより、リチウムイオン伝導皮膜を他の材料と混合することが可能になる。リチウムイオン伝導皮膜が他の材料と混合された状態で、第二の複合材料を得る工程および金属化合物粒子群を得る工程の熱処理を行うことにより、焼成の際に金属化合物粒子群の三次元網目構造内部においても、リチウムイオン伝導皮膜が形成される。すなわち、三次元網目構造の空隙を画成する金属化合物粒子においても、リチウムイオン伝導皮膜が形成される。そのため、金属化合物粒子の表面にSEI皮膜が生成されることをより確実に抑制することができる。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、リチウムイオン伝導皮膜として、LiPO4を金属化合物粒子群に形成した。LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、酢酸リチウムおよびリン酸エステルである。
まず、カーボンナノファイバ20g、酢酸165g、酢酸リチウム50gと酢酸リチウム8gおよびリン酸トリメチル5.6g、を、イソプロピルアルコール145gと水150gとの混合溶媒に溶解した。得られた液を、撹拌機により撹拌して一次分散を行った。
次に、得られた溶液にテトライソプロポキシチタン245gを添加して、テトライソプロポキシチタンをイソプロピルアルコールに溶解させた。得られた液を、筒と内筒の同心円筒からなり、内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器の内筒内に導入し、35000kgms−2の遠心力が液に印加されるように内筒を300秒間旋回させて、外筒の内壁に溶液の薄膜を形成させると共に、溶液にずり応力と遠心力を加えてチタン酸リチウムの前駆体を高分散状態でカーボンナノファイバ上に担持させた。
上記反応器の内容物に対して、スプレードライ処理を行い、さらに100℃で17時間乾燥した。得られたチタン酸リチウムの前駆体を担持させたカーボンナノファイバを、窒素中、400℃で30分の予備加熱処理を行い、その後窒素中、900℃で3分間熱処理を行い、一次粒子の平均粒子径が5〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がケッチェンブラック上に高分散状態で担持された第二の複合材料を得た。
得られた第二の複合材料100gを、500℃で6時間の熱処理を施し、カーボンナノファイバを焼失して除去するとともに、チタン酸リチウム粒子を連なった三次元網目構造のチタン酸リチウム粒子群を得た。
(実施例2)
実施例2では、リチウムイオン伝導皮膜として、Li0.5La0.5TiOを金属化合物粒子群に形成した。Li0.5La0.5TiOのリチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、酢酸リチウム、酢酸ランタン、チタンテトライソプロポキシドである。
まず、ケッチェンブラック20g、酢酸165g、酢酸リチウム50gとを、イソプロピルアルコール145gと水150gとの混合溶媒に溶解した。得られた液を上記反応器反応器の内筒内に導入し、溶液を調製した。この溶液に35000kgms−2の遠心力が印加されるように内筒を300秒間旋回させて、外筒の内壁に溶液の薄膜を形成させると共に、溶液にずり応力と遠心力を加えて一次分散を行った。この一次分散により、ケッチェンブラックを液に高分散させた。
次に、得られた溶液にテトライソプロポキシチタン245gを添加して、テトライソプロポキシチタンをイソプロピルアルコールに溶解させた。得られた液を、上記反応器の内筒内に導入し、35000kgms−2の遠心力が液に印加されるように内筒を300秒間旋回させて、チタン酸リチウムの前駆体を高分散状態でケッチェンブラック上に担持させた。
上記反応器の内容物に対して、酢酸リチウム1g、酢酸ランタン5g、チタンテトライソプロポキシド8gを添加し、エバポレーターを用いて溶媒を蒸発させ、さらに100℃で17時間乾燥した。得られたチタン酸リチウムの前駆体を担持させたケッチェンブラックを、窒素中、400℃で30分の予備加熱処理を行い、その後窒素中、900℃で3分間熱処理を行い、一次粒子の平均粒子径が5〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がケッチェンブラック上に高分散状態で担持された第二の複合材料を得た。
得られた第二の複合材料100gを、500℃で6時間の熱処理を施し、ケッチェンブラックを焼失して除去するとともに、チタン酸リチウム粒子を連なった三次元網目構造のチタン酸リチウム粒子群を得た。
(実施例3)
実施例3では、リチウムイオン伝導皮膜として、LiAlOを金属化合物粒子群に形成した。LiAlOのリチウムイオン伝導皮膜の前駆体は、酢酸リチウムおよびトリイソプロポキシアルミニウムである。実施例2では、反応器の内容物に対して、酢酸リチウム5gおよびトリイソプロポキシアルミニウム16gを添加した以外は、実施例2と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
(比較例1)
比較例1では、リチウムイオン伝導皮膜を形成しなかった。比較例1では、反応器の内容物に対して、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
(比較例2)
比較例2では、リチウムイオン伝導皮膜を形成しなかった。比較例2では、反応器の内容物に対して、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を添加しなかった以外は、実施例2と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
(比較例3)
比較例3では、金属酸化物皮膜として、NBを金属化合物粒子群に形成した。NBの金属酸化物皮膜の前駆体は、塩化ニオブである。比較例3では、反応器の内容物に対して、塩化ニオブ8gを添加した以外は、実施例2と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
(比較例4)
比較例1では、金属酸化物皮膜として、ZrOを金属化合物粒子群に形成した。ZrOの金属酸化物皮膜の前駆体は、酢酸ジルコニウムである。比較例4では、反応器の内容物に対して、酢酸ジルコニウム13gを添加した以外は、実施例2と同様にしてチタン酸リチウム粒子群を得た。
(リチウムイオン伝導皮膜の形成について)
まず、得られたチタン酸リチウム粒子群について観察する。図4〜7は、比較例1、および実施例1〜3のチタン酸リチウム粒子群について、高分解能透過電子顕微鏡によりにフォーカスを当てたHRTEM像である。倍率は、それぞれ40万倍とした。
図4は、比較例1のチタン酸リチウム粒子群のHRTEM像である。図中黒色の矢印で示す長方形状の一次粒子は、チタン酸リチウム粒子群である。比較例1は、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合していない。このチタン酸リチウム粒子群の端部ははっきりとしており、エッジが立っている。
図5は、実施例1のチタン酸リチウム粒子群のHRTEM像である。図中黒色の矢印で示す長方形状の一次粒子は、チタン酸リチウム粒子群である。このチタン酸リチウム粒子群の端部ははっきりとしておらず、エッジが立っていない。このチタン酸リチウム粒子群の端部において白色の矢印で示す通り、ぼやけて見えにくくなっている部分にLiPO4のリチウムイオン伝導皮膜が形成されていることが分かる。2本の白い矢印のうち長い矢印が示す通り、チタン酸リチウム粒子群の三次元網目構造に存在する空隙において、この空隙を画成するチタン酸リチウム粒子にもリチウムイオン伝導皮膜が形成されていることが分かる。
図6は、実施例2のチタン酸リチウム粒子群のHRTEM像である。図中黒色の矢印で示す長方形状の一次粒子は、チタン酸リチウム粒子群である。このチタン酸リチウム粒子群の端部ははっきりとしておらず、エッジが立っていない。このチタン酸リチウム粒子群の端部において白色の矢印で示す通り、ぼやけて見えにくくなっている部分にLi0.5La0.5TiOのリチウムイオン伝導皮膜が形成されていることが分かる。白い矢印が示す通り、チタン酸リチウム粒子群の三次元網目構造に存在する空隙において、この空隙を画成するチタン酸リチウム粒子にもリチウムイオン伝導皮膜が形成されていることが分かる。
図7は、実施例3のチタン酸リチウム粒子群のHRTEM像である。図中黒色の矢印で示す長方形状の一次粒子は、チタン酸リチウム粒子群である。このチタン酸リチウム粒子群の端部ははっきりとしておらず、エッジが立っていない。このチタン酸リチウム粒子群の端部において白色の矢印で示す通り、ぼやけて見えにくくなっている部分にLiAlOのリチウムイオン伝導皮膜が形成されていることが分かる。図7では、空隙のリチウムイオン伝導皮膜については撮像されていないが、チタン酸リチウム粒子群の三次元網目構造に存在する空隙において、この空隙を画成するチタン酸リチウム粒子にもリチウムイオン伝導皮膜が形成されていた。
(内部抵抗について)
次に、得られた実施例1〜3、比較例1〜4のチタン酸リチウム粒子群とこの粒子群に対して5重量%のポリフッ化ビニリデンと適量のN−メチルピロリドンを加えて十分に混練してスラリーを形成し、アルミニウム箔上に塗布し、乾燥して、電極を得た。さらに、得られた電極を用いて、1MのLiBFのプロピレンカーボネート溶液を電解液とし、対極に活性炭電極を用いたラミネート封止のキャパシタを作成した。
このようにして作成した実施例1および比較例1のキャパシタについて、加速試験として、70度で3.0V定電圧負荷試験を行い、任意の時間において、直流抵抗(DCIR)を測定した。DCIRの測定結果を図8に示す。図8より、LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜が形成されている実施例1は、LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜が形成されていない比較例1に比べて、内部抵抗の増加が抑制されていることが分かった。これは、LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜が、チタン酸リチウム粒子上に存在することで、電解液とチタン酸リチウム粒子界面で生じる反応が抑制されたためと考えられた。また、LiPO4のリチウムイオン伝導皮膜は、高いリチウムイオン伝導性を有しているため、SEI皮膜が生成されたとしてもチタン酸リチウム粒子のリチウムイオン伝導性が保たれると考えられた。
また、作成した実施例2および3、および比較例2〜3のキャパシタについて、加速試験として、70度で3.0V定電圧負荷試験を行い、任意の時間において、直流抵抗(DCIR)を測定した。DCIRの測定結果を図9に示す。図9より、Li0.5La0.5TiOのリチウムイオン伝導皮膜が形成されている実施例2およびLiAlOのリチウムイオン伝導皮膜が形成されている実施例3は、これらのリチウムイオン伝導皮膜が形成されていない比較例2に比べて、内部抵抗の増加が抑制されていることが分かった。金属酸化物皮膜としてNBまたはZrOを形成した比較例3および4では、実施例2および3に加えて比較例2よりも内部抵抗が増加することがわかった。
以上の結果は、Li0.5La0.5TiOまたはLiAlOのリチウムイオン伝導皮膜が、チタン酸リチウム粒子上に存在することで、電解液とチタン酸リチウム粒子界面で生じる反応が抑制されたことにより得られると考えられた。また、これらのリチウムイオン伝導皮膜は、高いリチウムイオン伝導性を有しているため、SEI皮膜が生成されたとしてもチタン酸リチウム粒子のリチウムイオン伝導性が保たれると考えられた。
(差分細孔容積について)
また、得られた実施例1、2、3のチタン酸リチウム粒子群の細孔分布を測定した。測定方法としては、窒素ガス吸着測定法を用いた。具体的には、金属酸化物粒子表面及び、金属酸化物粒子表面と連通した内部に形成された細孔に窒素ガスを導入し、窒素ガスの吸着量を求める。次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温曲線を得る。この実施例では、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置 BELSORP-max-N (日本ベル株式会社製)を用いて測定した。図10〜12は、横軸に細孔径を取り、測定ポイント間の細孔容積の増加分を縦軸に取った差分細孔容積分布を示す。
図10〜12から分かるように、実施例1〜3のチタン酸リチウム粒子群は、差分細孔容積が大きいことが分かった。このような細孔径の小さい範囲(100nm)において差分細孔容積が大きいため、チタン酸リチウム粒子群の内部に電解液が侵入し、電解液と接するチタン酸リチウム粒子の面積が大きいことが分かった。特に10〜50nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.005cm/g以上の値を有し、さらには、0.01cm/g以上の値が得られていた。
以上からも明らかな通り、実施例1〜3のチタン酸リチウム粒子群は、ナノサイズの金属化合物粒子同士が連なって三次元網目構造を構成しており、ナノサイズの細孔(空隙)が存在していることがわかった。また、金属化合物粒子群には、微細な細孔が多く存在していた。特に、50nm以下の微細な細孔も多く含むことがわかった。従って、実施例1〜3のチタン酸リチウム粒子群は、電解液との接する金属化合物粒子の面積が増える。このように電解液との接する金属化合物粒子との面積が多いほど、電極に用いた際のレート特性が向上する。

Claims (8)

  1. 金属化合物粒子が連なった三次元網目構造を有し、
    前記金属化合物粒子の表面には、リチウムイオン伝導皮膜が形成され、
    前記金属化合物粒子群を窒素ガス吸着測定法にて測定した細孔分布から換算される差分細孔容積において、10〜50nmの範囲の細孔径における差分細孔容積が0.005cm /g以上の値を有すること、
    を特徴とする金属化合物粒子群。
  2. 前記三次元網目構造には、空隙が存在し、
    前記空隙を画成する前記金属化合物粒子には、リチウムイオン伝導皮膜が形成されていること、
    を特徴とする請求項1記載の金属化合物粒子群。
  3. 前記リチウムイオン伝導皮膜は、酸化物系、硫化物系、リン酸系、ホウ酸系のリチウムイオン伝導体のうち、少なくとも1つを含むこと、を特徴とする請求項1または2記載の金属化合物粒子群。
  4. 前記金属化合物粒子がチタン酸リチウムであること、
    を特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の金属化合物粒子群。
  5. 請求項1からいずれか一項に記載の金属化合物粒子群を含み構成されること、
    を特徴とする蓄電デバイス用電極。
  6. 金属化合物粒子の前駆体とカーボン源とを複合化して第一の複合材料を得る工程と、
    前記第一の複合材料を非酸化雰囲気下で熱処理することによって、金属化合物粒子を生成し、該金属化合物粒子とカーボンとが複合化された第二の複合材料を得る工程と、
    前記第二の複合材料を得る工程の前に、リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程と、
    前記第二の複合材料を酸素雰囲気下で熱処理することによって、カーボンを除去して金属化合物粒子群を得る工程と、を有すること、
    を特徴とする金属化合物粒子群の製造方法。
  7. 前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程が、前記金属化合物粒子の前駆体と前記カーボン源に、前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程であること、を特徴とする請求項に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
  8. 前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程が、前記第一の複合材料に、前記リチウムイオン伝導皮膜の前駆体を混合する工程であること、を特徴とする請求項に記載の金属化合物粒子群の製造方法。
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