JP2016012446A - 電極材料、電極、及びリチウムイオン電池 - Google Patents

電極材料、電極、及びリチウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆しており、電解液との濡れ性に優れる電極材料を提供する。
【解決手段】例えばLiFePO4である電極活物質粒子2と、電極活物質粒子2表面に配される、例えばAl23、ZrO2、ダイヤモンド、SiO2、及びTiO2からなる群より選択される少なくとも1種からなるスペーサー粒子3と、電極活物質粒子2及びスペーサー粒子3を被覆する炭素質被膜4と、を有する電極材料1。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極材料、電極、及びリチウムイオン電池に関する。
近年、小型化、軽量化、高容量化が期待される電池として、リチウムイオン電池等の非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。リチウムイオン電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極及び負極と、非水系の電解質と、により構成されている。
リチウムイオン電池の負極材料としては、負極活物質として、一般に炭素系材料またはチタン酸リチウム(Li4Ti512)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物が用いられている。
一方、リチウムイオン電池の正極材料としては、正極活物質として、鉄リン酸リチウム(LiFePO4)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物や、バインダー等を含む電極材料合剤が用いられている。そして、この電極材料合剤を集電体と称される金属箔の表面に塗布することにより、リチウムイオン電池の正極が形成されている。
このようなリチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の二次電池と比べて、軽量かつ小型であるとともに、高エネルギーを有している。そのため、リチウムイオン電池は、携帯用電話機、ノート型パーソナルコンピューター等の携帯用電子機器に用いられる小型電源のみならず、定置式の非常用大型電源としても用いられている。
また、近年、リチウムイオン電池は、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動工具等の高出力電源としても検討されている。これらの高出力電源として用いられる電池には、高速の充放電特性が求められている。
このような要求に対して、種々の検討がなされており、例えば、出入力特性の優れた非水電解液二次電池用電極板を得るために、集電体と、集電体の表面の少なくとも一部に形成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板において、電極活物質層に、活物質粒子およびリチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物粒子を結着物質粒子として含有させ、且つ、活物質粒子の平均粒径よりも、金属酸化物の平均粒径が小さくなるよう構成することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、炭素質被膜で表面が被覆された電極活物質粒子に更にジルコニア層を被覆することが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
特開2012−094361号公報 H. Liu et al., Electrochemistry Comm., 10, 165-169 (2008).
ところで、リチウムリン酸塩化合物を含む電極活物質を高出力電源に用いられるリチウムイオン電池の電極材料として利用するためには、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜を形成して電子伝導性を高めることが求められる。
しかしながら、これまで、電極材料の製造の過程により、電極活物質粒子が凝集するために、表面の一部が炭素質被膜で被覆されていない電極活物質粒子が発生し、電極材料の出力特性にムラが生じることがあった。
かかる問題は、特許文献1及び非特許文献1に示される手法では解決することができなかった。特許文献1に示される手法では、無機物質粒子は、活物質粒子を集電体に結着させるために添加されるものであり、したがって、活物質同士を結着するに足る量の添加が必要なことから、電池の容量を低下させてしまう。また、活物質を準備後に結着の為に添加することから、炭素質被覆の形成には何ら影響を与えないことから、上記問題を解決することができなかった。非特許文献1に示される電極材料は、電極活物質粒子に炭素質被膜を形成した後、ジルコニアで被覆しており、導電性炭素質被膜及び活物質粒子間隙の制御には何ら効果を示さない。
本発明は、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆しており、電解液との濡れ性に優れる電極材料、並びに、出力特性に優れる電極及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、電極活物質粒子の表面にスペーサー粒子が配されていることで、電極活物質粒子間に空隙が生じ、炭素質被膜が均一に被覆された電極材料を得ることができ、また、電解液との接触面積を大きくすることができるために電解液との濡れ性を向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の電極材料、電極、及びリチウムイオン電池を提供する。
<1> 電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面に配されるスペーサー粒子と、前記電極活物質粒子及び前記スペーサー粒子を被覆する炭素質被膜と、を有する電極材料。
<2> <1>に記載の電極材料を含有する電極。
<3> <2>に記載の電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池。
本発明によれば、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆しており、電解液との濡れ性に優れる電極材料、並びに、出力特性に優れる電極及びリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明の電極材料の一形態を示す断面図である。 本発明の電極材料の他の形態を示す断面図である。 実施例2及び比較例1で得られたリチウムイオン電池の放電曲線である。
<電極材料>
本発明の電極材料は、電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面に配されるスペーサー粒子と、前記電極活物質粒子及び前記スペーサー粒子を被覆する炭素質被膜と、を有する。
電極材料は、上記構成であることで、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆し、電解液との濡れ性に優れる。かかる理由は定かではないが、次の理由によると推察される。
電極活物質粒子は、電極材料の製造過程において、凝集し易く、凝集した電極活物質粒子に炭素質被膜を被覆させてしまうと、凝集体が解れたときに、炭素質被膜が被覆していない面が露出することがある。そのため、電極活物質粒子表面に、リチウムイオンが伝導し易い面と、伝導しにくい面とが共存することとなり、電極材料の出力特性にムラが生じた。
それに対し、本発明の電極材料は、電極活物質粒子の表面にスペーサー粒子が配されているために、電極活物質粒子間に空隙が生じ、液体が入り込み易い。そのため、電極活物質粒子の表面が、炭素質被膜の原料となる液状の有機化合物によって満遍なく被覆されることとなり、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆した電極材料が得られると考えられる。なお、炭素質被膜が表面に被覆した電極活物質粒子を炭素質被覆電極活物質粒子と称することがある。
更には、スペーサー粒子が電極活物質粒子表面に配されていることで、電極活物質粒子表面に炭素質被膜が被覆していても、炭素質被覆電極活物質粒子間に空隙が生じ易くなるため、炭素質被覆電極活物質粒子間に電解液が入り易くなる。そのため、炭素質被覆電極活物質粒子と電解液と接触し易くなるため、炭素質被覆電極活物質粒子と電解液との反応面積も広がり、電解液に対する濡れ性に優れると考えられる。
また、本発明の電極材料を電極に用い、かかる電極を正極として備えたリチウムイオン電池は、出力特性に優れる。
電極材料が電極活物質粒子表面に炭素質被膜が均一に被覆しているために、リチウムイオンが脱挿入し易く、かつ、電極材料が電解液との濡れ性に優れるためにリチウムイオンが脱挿入する面積が大きくなり易い。その結果、電極及びリチウムイオン電池は優れた出力特性を有すると考えられる。
以下、電極材料を構成する各要素及び電極材料の形態について詳細に説明する。
〔電極活物質粒子〕
本発明の電極材料は、電極活物質粒子を有する。
電極活物質粒子を構成する電極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、LixAyDzPO4(ただし、Aは、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される1種または2種以上、Dは、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)等が挙げられる。
電極活物質粒子は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、及びLixAyDzPO4からなる群より選択される少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、主成分とは、電極活物質粒子全質量中の含有量が50質量%を超えることをいう。
Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、高い放電電位が得られ易いため好ましい。Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。
また、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
以上の中でも、電極活物質としては、LixFeyDzPO4(AがFe)であることが好ましく、LixFeyPO4(AがFe、かつzが0)であることがより好ましく、更にLiFePO4であることがより好ましい。
LixAyDzPO4にて表される化合物は、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。LixAyDzPO4は、例えば、粒子状のもの(LixAyDzPO4粒子と称することがある)を用いることができる。
LixAyDzPO4は、例えば、Li源と、A源と、P源と、水と、必要に応じてD源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成し、得られた沈殿物を水洗して、電極活物質の前駆体物質を生成し、さらに前駆体物質を焼成することで得られる。水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCH3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩及び水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられ、酢酸リチウム、塩化リチウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
A源としては、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、AがFeである場合、Fe源としては、塩化鉄(II)(FeCl2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)等の2価の鉄塩が挙げられ、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、及び硫酸鉄(II)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
D源としては、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
P源としては、リン酸(H3PO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH42HPO4)等のリン酸化合物が挙げられ、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
LixAyDzPO4粒子は、結晶性粒子であっても非晶質粒子であってもよく、結晶質粒子と非晶質粒子が共存した混晶粒子であってもよい。ここで、LixAyDzPO4粒子が非晶質粒子でも良いとする理由は、非晶質のLixAyDzPO4粒子は、500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて熱処理すると、結晶化するからである。
電極活物質粒子の大きさは、特に制限されず、1次粒子の平均粒径φ1は10nm〜20,000nmであることが好ましく、より好ましくは20nm〜5,000nmである。
なお、本発明において、平均粒径とは、粒度分布における累積体積百分率が50%のときの粒径D50を意味する。後述するスペーサー粒子の平均粒径φ2も同様である。
電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が10nm以上であることで、1次粒子の表面を炭素質被膜で充分に被覆することができ、高速充放電レートにおける放電容量の低下を抑制し、充分な充放電レート性能を実現することができる。また、電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が20,000nm以下であることで、1次粒子の内部抵抗が大きくなりにくく、高速充放電レートにおける放電容量を損ねにくい。
電極活物質粒子の一次粒子の平均粒径φ1は、株式会社堀場製作所製、LB−550を用いて分散体を測定したり、電子顕微鏡により観察し、計数することにより測定することができる。
電極活物質粒子の形状は、特に制限されないが、球状、特に真球状であることが好ましい。電極活物質粒子が球状であることで、本発明の電極材料用いて正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となる。なお、正電極用ペーストは、例えば、本発明の電極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して調製することができる。
また、電極活物質粒子の形状が球状であることで、電極活物質粒子の表面積が最小となり、電極材料に添加するバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができ、得られる正電極の内部抵抗を小さくすることができるので、好ましい。
さらに、電極活物質粒子の形状が球状であれば、電極活物質が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができる。その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
〔スペーサー粒子〕
本発明の電極材料は、スペーサー粒子を有する。
スペーサー粒子は、電極活物質粒子表面に配されているが、電極活物質粒子間に空隙をもたらす程度に配されていればよく、電極活物質粒子表面に固定されていないことが好ましい。スペーサー粒子が電極活物質粒子表面を移動し得ることで、スペーサー粒子が配されている位置にも炭素質被膜を形成し易い。
また、スペーサー粒子は、電極活物質粒子のリチウムイオン伝導性に悪影響を及ぼさない粒子であることが好ましい。具体的には、スペーサー粒子のリチウムイオン導電率は、好ましくは10-8S/cm未満であり、より好ましくは10-10S/cm未満である。スペーサー粒子に用いる材料の導電性は、公知の方法により測定することができ、例えば、スペーサー材料の焼結体をAu又はPt等のブロッキング電極で挟み、交流インピーダンス法で測定することができる。
また、スペーサー粒子は、加圧等の外的負荷が加わっても潰れ難い強度を有するものであることが好ましい。スペーサー粒子が潰れにくい強度を有することで、リチウム電池に作製時のプレス処理で、スペーサー粒子が壊れることによるリチウムイオンの脱挿入の阻害を抑制することができる。
かかる観点から、本発明におけるスペーサー粒子には、Al23、ZrO2、ダイヤモンド、SiO2、及びTiO2等が用いられ、1種のみで構成されていてもよいし、2種以上により構成されていてもよい。
すなわち、スペーサー粒子は、電極活物質粒子表面に配され、Al23、ZrO2、ダイヤモンド、SiO2、及びTiO2からなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
スペーサー粒子は、電極活物質粒子の表面全体に均一に存在していてもよいし、電極活物質粒子の表面の一部に偏在していてもよい。
スペーサー粒子の平均粒径φ2は、電極活物質粒子の平均粒径φ1よりも小さく、両者の比(φ2/φ1)は1未満であるが、次の関係を有することが好ましい。
すなわち、電極活物質粒子の平均粒径φ1と、スペーサー粒子の平均粒径φ2との比(φ2/φ1)は、0.001〜0.5であることが好ましく、0.005〜0.2であることがより好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。
φ2/φ1が0.001以上であることで、電極活物質粒子間の空隙を確保し易く、炭素質被膜の原料となる有機化合物が電極活物質粒子間に侵入し易くなるため、炭素質被膜の均一性を高めることができる。また、φ2/φ1が0.5以下であることで、リチウムイオンの伝導性を阻害しにくい。
スペーサー粒子の大きさは、同様の観点から、一次粒子の平均粒径φ2が、1nm〜500nmであることが好ましく、1nm〜100nmであることがより好ましく、3nm〜30nmであることが更に好ましい。
スペーサー粒子の一次粒子の平均粒径φ2は、株式会社堀場製作所製、SZ−100を用いて分散体を測定したり、電子顕微鏡により観察し、計数することにより求めることができる。また、スペーサー粒子が、結晶性の材料であれば、X線回折測定により、シェラーの式から求めることができる。
本発明の電極材料中における電極活物質粒子100質量部に対するスペーサー粒子の量は、0.1質量部〜1質量部であることが好ましい。電極活物質粒子100質量部に対するスペーサー粒子の量を0.1質量部以上とすることで電極活物質粒子間の空隙を確保し易く、1質量部以下とすることでリチウムイオンの伝導性を阻害しにくい。
同様の観点から、電極活物質粒子100質量部に対するスペーサー粒子の量は、0.1質量部〜1質量部であることがより好ましく、0.3質量部〜0.6質量部であることが更に好ましい。
なお、電極材料中における電極活物質粒子100質量部に対するスペーサー粒子の量は、電極材料を作製するときの、電極活物質粒子100質量部に対するスペーサー粒子の配合量に近似する。
〔炭素質被膜〕
本発明の電極材料において、炭素質被膜は、電極活物質粒子及びスペーサー粒子を被覆する。
炭素質被膜は、炭素質被膜の原料となる有機化合物を炭化することにより得られる。炭素質被膜の原料となる有機化合物の詳細は、後述する。
本発明においては、電極活物質粒子表面にスペーサー粒子を配して炭素質被膜の被覆を均一にするものであるため、電極活物質粒子の表面全面に炭素質被膜が被覆されていることが好ましいが、スペーサー粒子は表面全面に炭素質被膜が被覆されていなくてもよい。
本発明の電極材料は、電極活物質粒子表面にスペーサー粒子が配されているため、電極活物質粒子表面に炭素質被膜が形成された炭素質被覆電極活物質粒子同士が凝集しても、炭素質被覆電極活物質粒子間に空隙が生じ易い。その結果、電極材料を電解液に接触させたときに、炭素質被覆電極活物質粒子表面に電解液が、より行き渡り易く、電極材料の電解液に対する濡れ性をより向上することができる。
本発明の電極材料における炭素質被膜の被覆形態例を、図1及び図2を用いて説明する。なお、以下の各図面においては各構成要素を見易くするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1には、電極材料1が示されている。電極材料1は、電極活物質粒子2と、電極活物質粒子2表面に配されたスペーサー粒子3と、電極活物質粒子2及びスペーサー粒子3を被覆する炭素質被膜4とを有する。
図2には、電極材料11が示されている。電極材料11も、電極活物質粒子2と、電極活物質粒子2表面に配されたスペーサー粒子3と、電極活物質粒子2及びスペーサー粒子3を被覆する炭素質被膜4とを有する。
電極材料1において、炭素質被膜4は、電極活物質粒子2の全面を被覆しているが、スペーサー粒子3はその一部が被覆されている。一方、電極材料11においては、炭素質被膜4は、電極活物質粒子2及びスペーサー粒子3の両方の全面を被覆している。
本発明において、炭素質被膜4の被覆形態は特に制限されず、図1に示される電極材料1のように、炭素質被膜4がスペーサー粒子3の表面の全面を被覆していても、図2に示される電極材料11のように、炭素質被膜4がスペーサー粒子3の表面の全面を被覆していなくても、何れでもかまわない。
炭素質被覆電極活物質粒子間に空隙をより大きなものとし、電極材料の電解液に対する濡れ性能を向上する観点から、スペーサー粒子3の平均粒径φ2は、炭素質被膜4の膜厚dよりも大きいことが好ましい。より具体的には、スペーサー粒子3の平均粒径φ2と、炭素質被膜4の膜厚dとの差△d(φ2−d)が、0nm<△d≦φ2−1nmであることが好ましい。
ここで、炭素質被膜4の膜厚dは、電極活物質粒子2の表面と炭素質被膜4の表面との間にスペーサー粒子3を有さないときの電極活物質粒子2の表面と炭素質被膜4の表面と最短距離を指す。図2に示される電極材料11のように、電極活物質粒子2の表面にも、スペーサー粒子3の表面にも炭素質被膜4を有する場合は、図2における膜厚t1が、膜厚dに当たる。従って、電極材料11は、膜厚t1が、スペーサー粒子3の平均粒径φ2よりも小さく、φ2とt1との差△t1(φ2−t1)が、0nm<△t≦φ2−1nmであることが好ましい。
スペーサー粒子3の平均粒径φ2にもよるが、△d及び△t1は、共に、1nm〜5nmであることがより好ましい。
なお、図2に示す電極材料11のように、スペーサー粒子3の表面にも炭素質被膜4を形成する場合は、リチウムイオンの拡散の阻害を抑制する観点から、炭素質被膜4の形状がスペーサー粒子3の外形を反映しなくなるほど炭素質被膜4の膜厚t2を厚く形成しないことが好ましい。したがって、スペーサー粒子3の表面を被覆する炭素質被膜4の膜厚t2は薄い方が好ましい。
ここで、炭素質被膜4の膜厚d、膜厚t1及び膜厚t2は、透過型電子顕微鏡を用いて、測定することができる。
炭素質被膜4の膜厚d(電極材料11にあってはt1を指す。以下同じ)は、1.0nm〜10.0nmであって、平均膜厚が2.0nm〜7.0nmであることが好ましい。
炭素質被膜4の平均膜厚が2.0nm以上であることで、炭素質被膜4中の電子の移動抵抗の総和が高くなりにくく、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。炭素質被膜4の平均膜厚が7.0nm以下であることで、リチウムイオンが炭素質被膜4中を拡散する際の立体障害が抑制され、リチウムイオンの移動抵抗が低くなる結果、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。
また、炭素質被膜4の膜厚dが1.0以上であることで、炭素質被膜4の平均膜厚を2.0nm以上に保ち易く、膜厚dが10.0nm以下であることで、平均膜厚を7.0nm以下に抑え易い。
なお、ここで言う「内部抵抗」とは、主として電子の移動抵抗とリチウムイオン移動抵抗とを合算したものである。
内部抵抗の評価方法としては、例えば、電流休止法等が用いられる。電流休止法では、内部抵抗は、配線抵抗、接触抵抗、電子の移動抵抗、リチウムイオン移動抵抗、正負電極におけるリチウム反応抵抗、正負極間距離によって定まる極間抵抗、リチウムイオンの溶媒和、脱溶媒和に関わる抵抗およびリチウムイオンのSEI(Solid Electrolyte Interface)移動抵抗の総和として測定される。
以下、図面の符号を省略して、更に説明する。
電極材料は、電極活物質粒子の表面にスペーサー粒子が配されているため、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆し、従来に比べ、電極材料中の炭素量を大きくすることができる。電極材料中の炭素量は、炭素分析計を用いることにより測定される。
電極材料中の炭素量は、リチウムイオン伝導性の観点から、0.2質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜6質量%であることがより好ましく、0.8質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
また、電極活物質粒子の表面への炭素質被膜の被覆の均一性は、パルス核磁気共鳴装置(パルスNMR)を用いて測定されるスピン−スピン緩和時間(横緩和時間)に基づき評価することができる。
電極材料に含まれる炭素質被覆電極活物質粒子は、表面が炭素質被膜で覆われているため、有機溶媒との親和性は炭素被覆のない電極材料表面とは大きく異なる。
パルスNMRの測定に用いる溶媒は、炭素質被覆電極活物質粒子を分散し得る溶媒であって、かつ金属イオンを含まない媒体であることが好ましい。炭素質被覆は特に水に対する親和性が低く、粒子の形状、大きさによっては水に対して分散が困難である場合が多い。したがって、パルスNMR測定に用いる溶媒は有機溶媒が好ましい。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(N-methylpyrrolidone;NMP)、炭酸ジエチル、トルエン、キシレン、炭酸エチルメチル等が挙げられる。中でも、揮発性の低さ、安定性、炭素表面との親和性等の観点から、パルスNMRの測定に用いる有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
また、活物質粒子と電解液との親和性を判断する目的で、炭酸ジエチルや炭酸エチルメチルといった、電解液の溶媒としてよく知られている有機溶媒も好適に用いることができる。
電極材料の分散液を調製し、パルスNMR測定を行うと、溶媒分子(水素原子核)の緩和時間を観測することができる。緩和時間は、溶媒中に炭素質被覆電極活物質粒子が存在することで変化し、また、炭素質被覆電極活物質粒子の種類及び状態によっても変化する。
電極材料の分散液は、炭素質被覆電極活物質粒子1質量部に対し、有機溶媒を10質量部〜10,000質量部添加し、混合することにより得ることができる。炭素質被覆電極活物質粒子1質量部に対する、有機溶媒の量は、100質量部〜1,000質量部であることがより好ましい。
上記条件により測定される緩和時間を、粒子を含まない溶媒単体の緩和時間と比較することにより、炭素質被覆電極活物質粒子の有機溶媒に対する親和性が求められ、また、炭素のみからなる粒子及び炭素を含まない活物質粒子(未被覆)の緩和時間を測定し、それらから検量線を作成、試料の緩和時間と比較することにより炭素質被膜の被覆率を算出することができる。
炭素質被膜に被覆された電極活物質粒子(炭素質被覆電極活物質粒子)は凝集体を形成していてもよい。
本発明によれば、炭素質被覆電極活物質粒子はスペーサー粒子の存在により、炭素質被覆電極活物質粒子間に空隙が生じ易い。そのため、炭素質被覆電極活物質粒子が凝集体を形成していても、電解液は、炭素質被膜で被覆された電極活物質粒子表面と接触し易く、リチウムイオンとの反応面積が大きい。
炭素質被覆電極活物質粒子の凝集体は、炭素質被覆電極活物質粒子同士が接触した状態で凝集している。炭素質被覆電極活物質粒子の接触状態は特に限定されないが、粒子同士の接触面積が小さく、接触部分が断面積の小さい頸部状となって強固に接続された状態の凝集体であることが好ましい。このように、これら炭素質被覆電極活物質粒子の電極活物質粒子同士の接触部分が断面積の小さい頸部状となることで、凝集体内部にチャネル状(網目状)の空隙が三次元に広がった構造となる。
ここで、炭素質被覆電極活物質粒子の凝集体中の炭素質被膜の被覆率は80%以上であることが好ましい。凝集体中の炭素質被膜の被覆率が80%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
本発明の電極材料は、既述の構成が得られる任意の方法により製造することができるが、電極材料が、既述の好ましい態様を備える観点から、次に示す本発明の電極材料の製造方法により製造することが好ましい。
<電極材料の製造方法>
本発明の電極材料の製造方法は、
電極活物質及び電極活物質の前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の電極活物質粒子原料、スペーサー粒子、有機化合物、及び水を混合し、電極活物質粒子原料の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が、5〜30であるスラリーを調製するスラリー調製工程と、
スラリーを乾燥し、得られた乾燥物を500℃〜1,000℃の非酸化性雰囲気下にて焼成する焼成工程と、
を有する。
スラリー調製工程により、電極活物質粒子間にスペーサー粒子が介在し、電極活物質粒子間に空隙をもたらすことができるため、電極活物質粒子表面に有機化合物をムラ無く被覆することができる。さらに、焼成工程により、電極活物質粒子表面を被覆した有機化合物が炭化し、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆した電極活物質粒子を含む電極材料が得られる。
とりわけ、スラリーのpHを調整することで、活物質粒子とスペーサー粒子の表面電荷 (ゼータ電位) を正負逆となるように調整することで、活物質粒子表面にスペーサー粒子を効率良く配置することができる。
本発明の電極材料の製造方法で用いる電極活物質は、本発明の電極材料が含む電極活物質粒子を構成する電極活物質として説明した物質が挙げられ、好ましい態様も同様である。電極活物質の前駆体の前駆体も、電極材料の説明において挙げた前駆体が挙げられる。
本発明の電極材料の製造方法で用いるスペーサー粒子は、本発明の電極材料が含むスペーサー粒子として挙げた成分が挙げられ、好ましい態様も同様である。
本発明の電極材料の製造方法で用いる有機化合物としては、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール等が挙げられる。
電極活物質粒子原料と有機化合物との配合比は、有機化合物の全量を炭素量に換算したとき、電極活物質粒子原料100質量部に対して0.6質量部〜4.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.1質量部〜1.7質量部である。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部以上であることで、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなりにくく、充分な充放電レート性能を実現することができる。有機化合物の炭素量換算の配合比が4.0質量部以下であることで、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に立体障害が少なく、リチウムイオン移動抵抗が低くなる。その結果、電池を形成した場合に電池の内部抵抗が上昇しにくく、高速充放電レートにおける電圧低下を抑制することができる。
電極活物質粒子原料とスペーサー粒子と有機化合物とを、水に溶解又は分散させて、均一なスラリーを調製する。溶解あるいは分散の際には、分散剤を加えるとなお良い。電極活物質粒子原料とスペーサー粒子と有機化合物とを水に溶解又は分散させる方法としては、電極活物質粒子原料が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であればよく、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の分散装置を用いることが好ましい。
電極活物質粒子原料とスペーサー粒子と有機化合物とを水に溶解又は分散する際には、電極活物質粒子原料を1次粒子として分散し、その後、スペーサー粒子と有機化合物を添加して溶解するように攪拌することが好ましい。このようにすれば、電極活物質粒子の1次粒子の表面が有機化合物で被覆され易い。その結果として、電極活物質粒子の1次粒子表面にスペーサー粒子が配され、電極活物質粒子表面が均一に有機化合物由来の炭素によって被覆される。
このスラリーを調製する際には、電極活物質粒子原料の比(D90/D10)を5〜30とするように、スラリーの分散条件、例えば、スラリー中の電極活物質粒子原料及び有機化合物の濃度、撹拌時間等を適宜調整する。これにより、得られた凝集体の体積密度を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%〜80体積%とすることができる。
次いで、このスラリーを高温雰囲気中、例えば70℃〜250℃の大気中に噴霧し、乾燥させる。
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃〜1,000℃、好ましくは600℃〜900℃の範囲内の温度にて、0.1時間〜40時間焼成する。
非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
ここで、焼成温度を500℃以上とすると、乾燥物に含まれる有機化合物の分解及び反応が充分に進行し易く、有機化合物の炭化を充分に行い易い。その結果、得られた凝集体中に高抵抗の有機化合物の分解物が生成することを防止し易い。焼成温度を1000℃以下とすることで、電極活物質中のLiが蒸発しにくく、また、電極活物質の粒成長が抑制される。その結果、高速充放電レートにおける放電容量が低くなることを防止することができ、充分な充放電レート性能を実現することができる。
この焼成過程では、乾燥物を焼成する際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、得られる凝集体の粒度分布を制御することが可能である。
以上により、乾燥物中の有機化合物が熱分解して生成した炭素により電極活物質の1次粒子の表面が被覆される。
<電極>
本発明の電極は、本発明の電極材料を含有する。
本発明の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜20質量部とする。
電極形成用塗料又は電極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次いで、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを、金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記の電極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、出力特性に優れた電極を作製することができる。
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の電極からなる正極を備える。
このリチウムイオン電池は、本発明の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下する虞もなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti512等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本発明のリチウムイオン電池によれば、本発明の電極からなる正極を備えたので、出力特性に優れる。
以下、実施例1〜4及び比較例1により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
〔電極材料の作製〕
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)、2molのリン酸(H3PO4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)とスペーサー粒子としてジルコニア(ZrO2)粒子0.15gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)5.4gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである実施例1の電極材料1を得た。
<実施例2>
実施例1において、ジルコニア粒子0.15gを、ジルコニア粒子0.75gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例2の電極材料2を作製した。
〔電極の作製〕
得られた電極材料2と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比(電極材料2:PVdF:AB)が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm2の圧力にて加圧し、実施例2のリチウムイオン電池の正極1を作製した。
〔リチウムイオン電池の作製〕
このリチウムイオン電池の正極1に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極1と負極の間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材1とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF6溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液1を作製した。
次いで、電池用部材1を電解質溶液1に浸漬し、実施例2のリチウムイオン電池1を作製した。
<実施例3>
実施例1において、ジルコニア粒子0.15gを、ジルコニア粒子1.5gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例3の電極材料3を作製した。
<実施例4>
実施例1において、ジルコニア粒子0.15gを、チタニア(TiO2)粒子0.15gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例4の電極材料4を作製した。
<比較例1>
実施例1において、ジルコニア粒子0.15gを用いなかった他は、実施例1と同様にして比較例1の電極材料101を作製した。
実施例2の電極1及びリチウムイオン電池の作製において、電極材料2に代えて電極材料101を用いた他は同様にして、比較例1の電極101及びリチウムイオン電池101を作製した。
<評価方法>
以上のようにして作製した電極材料、電極及びリチウムイオン電池は、下記評価方法により評価した。なお、電極の性能は、リチウムイオン電池の評価をもって判断することができる。
〔電極材料の評価〕
この電極材料が含む各成分及び電極材料について、物性及び性能を評価した。評価方法は下記の通りである。
(1)電極活物質粒子の平均粒径φ1及びスペーサー粒子の平均粒径φ2
電極活物質粒子及びスペーサー粒子の平均粒径(D50)は、株式会社堀場製作所製、LB−550、及び株式会社堀場製作所製、SZ−100を用いて測定した。
(2)炭素質被膜の膜厚d
炭素質被膜の膜厚dは、透過型電子顕微鏡を用いて、測定した。
(3)電極材料の炭素量
炭素分析計〔株式会社堀場製作所社製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W〕を用いて、電極材料の炭素量〔質量%〕を測定した。
(4)炭素質被膜の被覆率、及び電極材料における電解液の濡れ性評価
炭素質被膜の被覆率パルスNMRを用いて粒子を含まない溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)単体の緩和時間(被覆率0%のときの緩和時間)と、炭素のみからなる粒子及び炭素を含まない活物質粒子(未被覆)の緩和時間(被覆率100%のときの緩和時間)を測定し、それらから検量線を作成し、試料の緩和時間と比較することにより炭素質被膜の被覆率を算出した。
同様に、炭酸ジエチルを溶媒として用いてパルスNMRの緩和時間を測定することにより、電極材料における電解液の濡れ性を評価した。同じ総表面積を持つ粒子分散液において、溶媒との濡れが高いほど、励起された溶媒分子中の水素原子のエネルギーが、より早く粒子へ散逸するため、緩和時間が短くなる。即ち、粒子の比表面積と固形分濃度から、分散液中の総表面積が求まり、単位面積当たりの緩和時間への寄与、即ち親和性を求めることができる。表1には、実施例1〜4及び比較例1で測定された各緩和時間から下記式で親和性の値を求めた。
親和性=[{(t-1)−(t0 -1)}/t0 -1]/SSA
t:サンプルの緩和時間
0:ブランクの緩和時間
SSA:サンプルの比表面積
即ち、縦軸に緩和時間の逆数の差をブランクの緩和時間の逆数で割ったもの、横軸に比表面積をプロットしたときの傾きが電解液に対する親和性の値として求められる。得られた数値の最大値を相対値100として示した。すなわち、最大の親和性を示したサンプルが相対値100として示され、相対値が小さいほど電解液に対する濡れ性が小さいことを表す。
〔電極及びリチウムイオン電池の評価〕
実施例2及び比較例1で製造したリチウムイオン電池について、2C放電を行い、得られた放電曲線を図3に示す。図3中、上側の曲線Aが、実施例2で製造したリチウムイオン電池の放電曲線であり、下側の曲線Bが、比較例1で製造したリチウムイオン電池の放電曲線である。
表1中、スペーサー粒子の添加量は、電極活物質粒子を100質量%としたときの量である。
以上の結果によれば、実施例1〜4の電極材料は、比較例1の電極材料に比べ、炭素質被膜の被覆率が高く、電極材料の緩和時間測定から、均一に被膜が被覆していることがわかる。また、スペーサー粒子を含まない比較例1の電極材料に比べ、実施例1〜4の電極材料における電解液の濡れ性が優れた。これは、実施例では、電極活物質粒子間にスペーサー粒子が介在することで、電極活物質粒子表面を満遍なくPVAが付着したのに対し、比較例では、凝集した電極活物質粒子同士の界面には、PVAが入り込み難かったためと推察される。
さらに、図3の放電曲線からわかるように、実施例2の電極材料を用いて作製されたリチウムイオン電池は、比較例1の電極材料を用いて作製されたリチウムイオン電池に比べ、放電しにくく、放電容量も大きいことがわかる。
本発明は、電池用の正極材料、さらにはリチウムイオン電池用の正極材料として用いる電極材料、及びこの電極材料を含有した電極、並びにこの電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池に利用可能である。
1 電極材料
2 電極活物質粒子
3 スペーサー粒子
4 炭素質被膜

Claims (11)

  1. 電極活物質粒子と、
    前記電極活物質粒子表面に配されるスペーサー粒子と、
    前記電極活物質粒子及び前記スペーサー粒子を被覆する炭素質被膜と、
    を有する電極材料。
  2. 前記スペーサー粒子が、Al23、ZrO2、ダイヤモンド、SiO2、及びTiO2からなる群より選択される少なくとも1種からなる請求項1に記載の電極材料。
  3. 前記スペーサー粒子の平均粒径が、前記炭素質被膜の膜厚よりも大きい請求項1及び2に記載の電極材料。
  4. 前記電極活物質粒子の平均粒径φ1と、前記スペーサー粒子の平均粒径φ2との比(φ2/φ1)が、0.001〜0.5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料。
  5. 前記電極活物質粒子100質量部に対する前記スペーサー粒子の量が、0.1質量部〜1質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料。
  6. 前記スペーサー粒子の平均粒径φ2が1nm〜500nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極材料。
  7. 炭素量が、0.2質量%〜10質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極材料。
  8. 前記電極活物質粒子が、LiFePO4粒子である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極材料。
  9. 前記スペーサー粒子の平均粒径φ2と、前記炭素質被膜の膜厚dとの差△d(φ2−d)が、0nm<△d≦φ2−1nmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の電極材料。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極材料を含有する電極。
  11. 請求項10に記載の電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池。
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