JP5843038B2 - リチウムイオン二次電池用電極材料 - Google Patents
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Description
このリチウムイオン電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極および負極と、非水系の電解質とにより構成されている。
リチウムイオン電池の負極材料としては、負極活物質として、一般に炭素系材料またはチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するリチウム含有金属酸化物が用いられている。
一方、リチウムイオン電池の正極材料としては、正極活物質として、鉄リン酸リチウム(LiFePO4)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するリチウム含有金属酸化物や、バインダー等を含む電極材料合剤が用いられている。そして、この電極材料合剤を集電体と称される金属箔の表面に塗布することにより、リチウムイオン電池の正極が形成されている。
また、近年、リチウムイオン電池は、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動工具等の高出力電源としても検討されており、これらの高出力電源として用いられる電池には、高速の充放電特性が求められている。
しかしながら、この炭素材料をリチウムリン酸塩化合物粒子表面に均一に被覆するためには高分子材料等を溶解させた溶液を炭素源に用いる場合が多いが、この溶液は粘度が高いため粒子間の隙間等には炭素質被膜が残りにくいため、得られた粒子を用いて電極を作製した場合、内部抵抗が増加し、出力特性が悪化するので好ましくない。
さらに、特許文献1ないし5に記載された電極活物質粒子表面に被覆された炭素質被膜については、透過型電子顕微鏡(TEM)、あるいは、走査型電子顕微鏡(SEM)で任意に10箇所程度観察し、炭素質被膜の被覆状態や被覆率を測定しているが、観察を行う箇所の選定により炭素質被覆率が大きく変動するおそれがあり、特に、表面に炭素質被膜が形成された電極活物質粒子を凝集してなる凝集体については、凝集体内部の被覆状況やその炭素質被覆率を測定することは困難であった。
電極活物質表面と炭素質被膜の結合状態や、炭素質被膜の厚み、凹凸等被膜の状態等にも影響され、透過型電子顕微鏡(TEM)、あるいは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察だけでは電極活物質の電子伝導性の改善について確認することが困難であった。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の電極材料は、電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなる電極材料であって、炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上である。
また、電極活物質粒子の表面と炭素質材料との間を、電極活物質粒子および炭素質材料以外の物質が架橋する構造を有することが好ましい。
また、「電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する」とは、電極活物質粒子の表面を炭素質材料からなる被膜(炭素質被膜)にて覆っている状態の他、電極活物質の表面に炭素単体からなる粒子または炭素を主成分とする炭素材料からなる粒子が複数個付着または結合している状態、電極活物質粒子の表面に炭素単体からなる粒子または炭素を主成分とする炭素材料からなる粒子が複数個凝集してなる凝集体が複数個付着または結合している状態、のいずれか1種以上の状態を有するということである。
これらの状態には、炭素質電極活物質複合粒子間に、炭素単体からなる粒子、炭素を主成分とする炭素材料からなる粒子、これらの粒子が複数個凝集してなる凝集体、のいずれか1種または2種以上が存在する状態も含む。
このフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上、より好ましくは1×10−4cm/s以上であれば、電極活物質粒子の表面と炭素質被膜との結合状態や、炭素質被膜の厚み、凹凸等、炭素質被膜の状態等にかかわらず、炭素質電極活物質複合粒子の電子伝導性を改善されていることが判断でき、リチウムイオン電池を組み上げて電池特性を実測しなくても、充放電容量に優れたリチウムイオン電池を製造できることが分る。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
この電極活物質粒子では、リチウムイオン電池の電極材料として用いる際にリチウムイオンの脱挿入に関わる反応を電極活物質粒子の表面全体で均一に行うために、その表面の60%以上、より好ましくは80%以上を炭素質にて被覆されていることが好ましい。
ここで、電極活物質粒子の表面における炭素質材料の被覆率を60%以上とした理由は、被覆率が60%未満では、電極活物質粒子の電子伝導性が悪化するからである。これにより、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかる。その結果、炭素質電極活物質複合粒子を電極材料として用いた電極の内部抵抗が増加し、その電極を用いたリチウムイオン電池の出力特性が悪化するので好ましくない。
ここで、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積を1m2/g以上かつ80m2/g以下と限定した理由は、比表面積が1m2/g未満では、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかり、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、電極の高速充放電特性が悪化するので好ましくない。一方、比表面積が80m2/gを超えると、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加し、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の充放電容量が低減するので好ましくない。
この内部抵抗の評価方法としては、例えば、電流休止法等が用いられる。この電流休止法では、内部抵抗は、配線抵抗、接触抵抗、電荷移動抵抗、リチウムイオン移動抵抗、正負電極におけるリチウム反応抵抗、正負極間距離によって定まる極間抵抗、リチウムイオンの溶媒和、脱溶媒和に関わる抵抗およびリチウムイオンのSEI(Solid Electrolyte Interface)移動抵抗の総和として測定される。
ここで、炭素質電極活物質複合粒子の炭素の含有率を0.3質量%以上かつ8.0質量%以下とした理由は、含有率が0.3質量%未満では、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるので好ましくない。一方、含有率が8.0質量%を超えると、炭素質電極活物質複合粒子中をリチウムイオンが移動する距離が増加し、リチウムイオンが炭素質材料中を拡散する際にリチウムイオンの拡散速度の遅い炭素質被膜中を移動する距離が長くなり、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の高速充放電レートにおける電圧低下が無視できなくなるので好ましくないからである。
ここで、炭素質被膜の膜厚を0.1nm以上かつ10nm以下とした理由は、炭素質被膜の膜厚が0.1nm未満では、均一な炭素質被膜を作製することが困難であり、電極活物質粒子の表面を炭素質被膜で均一に被覆することができなくなり、電極活物質粒子の表面における電子伝導性が不足するため、特に、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、電池を高速充放電した際に電圧が著しく低下するからである。一方、炭素質被膜の膜厚が10nmを超えると、リチウムイオンが低速で移動する炭素質膜中の移動距離が長くなるため、特に、その炭素質電極活物質複合粒子を用いて電極を形成した場合、電池を高速充放電した際に電圧が著しく低下するからである。
特に、炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であって、炭素質電極活物質複合粒子の炭素の含有量は、0.3質量%以上かつ8.0質量%以下である電極材料が、電極活物質粒子の表面に効率よく、均一かつ強固に被覆された炭素質材料の被膜を有しており、電子伝導性が改善され、電池の充放電容量を改善することが可能であるので好ましい。
本実施形態の電極材料の製造方法は、電極活物質またはその前駆体と、有機化合物と、水とを含み、かつ、この電極活物質またはその前駆体の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が5以上かつ30以下のスラリーを乾燥し、次いで、得られた乾燥物を500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて焼成する方法である。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
この化合物(LixAyDzPO4粉体)としては、例えば、酢酸リチウム(LiCH3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、あるいは水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選択されたLi源と、塩化鉄(II)(FeCl2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)等の2価の鉄塩と、リン酸(H3PO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)等のリン酸化合物と、水とを混合して得られるスラリー状の混合物を、耐圧密閉容器を用いて水熱合成し、得られた沈殿物を水洗してケーキ状の前駆体物質を生成し、このケーキ状の前駆体物質を焼成して得られた化合物(LixAyDzPO4粒子)を好適に用いることができる。
ここで、電極活物質粒子の表面を改質する理由は、電極活物質粒子の表面を改質し、炭素質材料である高分子材料との親和性を高めることにより、この後の工程にて、電極活物質粒子と、有機化合物と、水とを混合したスラリーを大気中にて噴霧・乾燥する際に、有機化合物が電極活物質粒子の表面から離散することを防ぐことができ、また、焼結後の電極活物質粒子と炭素質材料の密着性も向上するからである。
これらの表面改質剤の中でも、電極活物質または電極活物質前駆体の表面と有機化合物との間を架橋する物質を用いることが、製造工程および焼結後の密着性を向上するために好ましい。このような物質としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、リン酸系カップリング剤、カルボン酸系カップリング剤等が挙げられる。また、このような電極活物質または電極活物質前駆体の表面と有機化合物との間を架橋する物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの表面改質剤の中でも、焼結後の電極活物質粒子の表面と炭素質材料の間に存在するSi、Ti、Al、P等の元素が、電極活物質粒子の表面と炭素質材料との間の密着性の向上に寄与する点から、特に、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、リン酸系カップリング剤が好ましい。
ここで、表面改質剤の添加量を電極活物質粒子の表面積1平方メートルに対して、0.5mg以上かつ5mg以下とした理由は、添加量が0.5mg未満では、電極活物質粒子の表面を十分に改質できないからであり、一方、添加量が5mgを超えると、後工程である焼成工程後に残留する表面改質剤の割合が増大し、その電極活物質粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の単位質量当たり充放電容量が低減するからである。
ここで、電極活物質粒子の1次粒子の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、1次粒子の平均粒子径が0.01μm未満では、1次粒子の表面を炭素質材料で充分に被覆することが困難となり、その電極活物質粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるので、好ましくないからであり、一方、1次粒子の平均粒子径が2μmを超えると、1次粒子の内部抵抗が大きくなり、したがって、その電極活物質粒子を用いて電極を形成した場合、その電極を用いた電池の高速充放電レートにおける放電容量が不充分となるので、好ましくないからである。
ここで、電極活物質粒子の形状が球状であることが好ましい理由は、電極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができると共に、この正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となるからである。
さらに、電極活物質粒子が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができ、その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
電極活物質またはその前駆体と有機化合物とを、水に溶解あるいは分散させる方法としては、電極活物質またはその前駆体が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であれば、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の媒体粒子を高速で攪拌する媒体攪拌型分散装置を用いることが好ましい。
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃以上かつ1000℃以下、好ましくは600℃以上かつ900℃以下の範囲内の温度にて、0.1時間以上かつ40時間以下、焼成する。この非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましい。
これにより、電極活物質粒子の表面を炭素質材料にて被覆した炭素質電極活物質複合粒子が得られる。
この凝集体が、本実施形態における電極材料となる。
本実施形態の電極は、本実施形態の電極材料を含有してなる電極である。
本実施形態の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料または電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
上記の結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
上記の電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対して、バインダー樹脂を1質量部以上かつ30質量部以下、好ましくは3質量部以上かつ20質量部以下とする。
次いで、この塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、本実施形態の酸素含有率を低減した電極を作製することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態の電極からなる正極を備えている。
このリチウムイオン電池は、本実施形態の電極材料を用いて電極を作製することにより、その電極を用いた電池の充放電容量を低減させることなく、充放電中の電池内部のガス発生量のみならず電池構成部材の劣化をも抑制することができる。したがって、充放電特性および長期信頼性に優れた電極を提供することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、2molの硫酸マンガン(II)(MnSO4)、2molのリン酸(H3PO4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
次いで、このスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、得られた焼成物を700℃の水素雰囲気下にて1時間、2次焼成し、実施例1の電極材料を得た。
この電極材料に含まれる炭素質電極活物質複合粒子中の炭素量、炭素質電極活物質複合粒子の表面における炭素質材料からなる炭素質被膜の膜厚、炭素質電極活物質複合粒子の表面における炭素質材料の被覆率の評価を行った。評価方法は下記の通りである。
炭素質電極活物質複合粒子中の炭素量を、炭素・硫黄測定装置を用いて測定した。
(2)炭素質被膜の膜厚
炭素質電極活物質複合粒子の表面における炭素質材料からなる炭素質被膜の膜厚を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。
(3)炭素質材料の被覆率
炭素質電極活物質複合粒子の表面における炭素質材料の被覆率を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。
これらの評価結果を表1に示す。
上記の電極材料と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを調製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm2の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF6溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液を作製した。
次いで、上記の電池用部材を上記の電解質溶液に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の充放電時の充放電容量の評価を行った。評価方法は下記の通りである。
この評価結果を表1に示す。
標準速度定数の評価には、リチウムリン酸塩化合物の薄膜を作製し、その薄膜表面を改質し、フェロセン/フェロセニウムの酸化還元反応における標準速度係数を評価した。
6mol/Lのクエン酸水溶液中に、1molの酢酸リチウム、1molのリン酸二水素アンモニウム、1molの酢酸マンガンを溶解させた。この溶液3g中に、ポリビニルピロリドン20質量%メタノール溶液を1g滴下、撹拌した。この混合液を、表面を研磨した白金板上に滴下し、スピンコーターで薄膜化し、大気中、500℃にて加熱し、リチウムリン酸マンガン薄膜を得た。
このリチウムリン酸マンガン薄膜の表面に、3−アミノプロピルトリメトキシシランの0.001質量%溶液を、リチウムリン酸マンガン薄膜1平方メートルに対して2mg滴下し、次いで、80℃にて5時間加熱し、電極活物質の前駆体の表面改質を行った。その後、リチウムリン酸マンガン薄膜の表面に、炭素源として、20質量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコーターにより塗布し、次いで、700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、白金板上に薄膜電極を形成した。
炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合しフェロセンを溶解し、フェロセンの100mmol/L溶液を調製した。この溶液を電解液とし、作用極として、上記の石英板上に形成した薄膜電極を用い、対極と参照極として、リチウム金属を用いた3極セルを作製した。ここで、作用極である薄膜電極の集電は、炭素質被膜に集電端子が直接接触するようにした。この3極セルについて、3.7VvsLi+/Liと2.9VvsLi+/Liの範囲で0.01V/sの走査速度でサイクリックボルタンメトリー測定を行い、サイクリックボルタンモグラムを得た。このサイクリックボルタンモグラムから酸化電流のピーク電位と還元電流のピーク電位から、標準速度定数を算出した。
この評価結果を表1に示す。
表面改質剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシランを、電極活物質の前駆体の表面積1平方メートルに対して、2mg添加した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電極材料およびリチウムイオン電池を作製した。
得られた電極材料およびリチウムイオン電池について、実施例1と同様にして、評価を行った。この評価結果を表1に示す。
表面改質剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシランを、電極活物質の前駆体の表面積1平方メートルに対して、1mg添加した以外は実施例1と同様にして、実施例3の電極材料およびリチウムイオン電池を作製した。
得られた電極材料およびリチウムイオン電池について、実施例1と同様にして、評価を行った。この評価結果を表1に示す。
表面改質剤として、ビニルトリメトキシシランを、電極活物質の前駆体の表面積1平方メートルに対して1.5mg添加した以外は実施例1と同様にして、実施例4の電極材料およびリチウムイオン電池を作製した。
得られた電極材料およびリチウムイオン電池について、実施例1と同様にして、評価を行った。この評価結果を表1に示す。
電極活物質の前駆体の表面改質を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の電極材料およびリチウムイオン電池を作製した。
得られた電極材料およびリチウムイオン電池について、実施例1と同様にして、評価を行った。この評価結果を表1に示す。
スラリーの焼成温度を400℃とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の電極材料およびリチウムイオン電池を作製した。
得られた電極材料およびリチウムイオン電池について、実施例1と同様にして、評価を行った。この評価結果を表1に示す。
一方、比較例1および2の電極材料は、フェロセン/フェロセニウムの酸化還元反応の標準速度定数、電極活物質粒子の表面における炭素質材料の被覆率、炭素質電極活物質複合粒子中の炭素量のいずれかが実施例1〜4の電極材料より劣っており、リチウムイオン電池の充放電容量が実施例1〜4のリチウムイオン電池より劣っていることが確認された。
Claims (5)
- リチウムリン酸化合物からなる電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなるリチウムイオン二次電池用電極材料であって、
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記電極活物質粒子の表面が炭素質被膜により被覆されてなり、
前記電極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率が60%以上であり、
前記炭素質被膜の膜厚は、0.1nm以上かつ10nm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であり、
前記電極活物質粒子の1次粒子の平均粒子径が0.01μm以上かつ2μm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が1m 2 /g以上かつ80m 2 /g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。 - リチウムリン酸化合物からなる電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなるリチウムイオン二次電池用電極材料であって、
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記電極活物質粒子の表面が炭素粒子による被膜とは異なる炭素質被膜により被覆されてなり、
前記電極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率が60%以上であり、
前記炭素質被膜の膜厚は、0.1nm以上かつ10nm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。 - リチウムリン酸化合物からなる電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなるリチウムイオン二次電池用電極材料であって、
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記電極活物質粒子の表面が前記炭素質材料からなる炭素質被膜により被覆されてなり、
前記炭素質被膜は、前記電極活物質粒子に面接触しており、
前記電極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率が60%以上であり、
前記炭素質被膜の膜厚は、0.1nm以上かつ10nm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であり、
前記電極活物質粒子の1次粒子の平均粒子径が0.01μm以上かつ2μm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が1m 2 /g以上かつ80m 2 /g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。 - リチウムリン酸化合物からなる電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなるリチウムイオン二次電池用電極材料であって、
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記電極活物質粒子の表面が前記炭素質材料からなる均一に堆積した炭素質被膜により被覆されてなり、
前記電極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率が60%以上であり、
前記炭素質被膜の膜厚は、0.1nm以上かつ10nm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であり、
前記電極活物質粒子の1次粒子の平均粒子径が0.01μm以上かつ2μm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が1m 2 /g以上かつ80m 2 /g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。 - リチウムリン酸化合物からなる電極活物質粒子の表面に炭素質材料が存在する炭素質電極活物質複合粒子を含有してなるリチウムイオン二次電池用電極材料であって、
前記炭素質電極活物質複合粒子は、前記電極活物質粒子の表面が有機化合物の炭素化物である前記炭素質材料からなる炭素質被膜により被覆されてなり、
前記電極活物質粒子の表面における前記炭素質被膜の被覆率が60%以上であり、
前記炭素質被膜の膜厚は、0.1nm以上かつ10nm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の表面で起こるフェロセンの酸化還元反応の標準速度定数が1×10−5cm/s以上であり、
前記電極活物質粒子の1次粒子の平均粒子径が0.01μm以上かつ2μm以下であり、
前記炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が1m 2 /g以上かつ80m 2 /g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。
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JP2015154435A JP5843038B2 (ja) | 2015-08-04 | 2015-08-04 | リチウムイオン二次電池用電極材料 |
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