JP2013142097A - 撥水撥油性被膜、及び当該被膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を提供する。
【解決手段】メチレン鎖、エーテル結合(酸素原子)、カルボニル基等、表面エネルギーを発現する官能基のみならず、ジフルオロメチレン(−CF−)基をも排除した分子構造を有する過フルオロアリール−トリシラノール(但し、過フルオロアリール基の少なくとも1つの弗素原子がトリフルオロメチル基によって置換されていてもよい)の脱水縮合により、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、撥水撥油性被膜、及び当該被膜の形成方法に関する。より詳しくは、本発明は、高い耐熱性を有する撥水撥油性被膜、及び当該被膜の形成方法に関する。
昨今の生活レベルの向上や衛生意識の高揚に伴い、身の周りの様々な物品において高い防汚性が求められるようになってきている。更に、各種工業製品における品質向上や耐久性向上の観点からも、様々な用途及び様々な環境において使用される物品において極めて高い防汚性が求められるようになってきている。
そこで、当該技術分野においては、多種多様な素材から構成される様々な物品の表面に撥水撥油性被膜を形成して、当該物品の表面に撥水性及び撥油性を付与することにより、当該製品の防汚性を高めようとする試みが盛んに研究されている。例えば、従来技術に係る撥水性被膜としては、低い表面エネルギーを有するトリフルオロメチル(CF)基を含有する化合物からなる被膜が知られている。かかるCF基を含有する化合物の原料としては、フルオロアルキルシラン(FAS)系化合物が従来より広範に使用されており、中でも、比較的長いフルオロアルキル基を有するC8FAS(CF−(CF−(CH−Si)やC6FAS(CF−(CF−(CH−Si)が特に広く使用されてきた。
しかしながら、比較的長いフルオロアルキル基を有するC8FASやC6FASは環境負荷が高いことから、近年の環境保護意識の高揚を受け、環境負荷が低い比較的短いフルオロアルキル基を有するFASを原料とする撥水性被膜が開発されている。これらの中でも、C4FAS(CF−(CF−(CH−Si)は、環境負荷と表面エネルギーとを同時に達成し得るFASとして注目されてきた。
具体的には、特許文献1においては、金属アルコキシド、コロイダルシリカ、フルオロアルキル基を有するシラン化合物(例えば、C4FAS)又はフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物、及び水を含有する硬化性組成物を透明基材フィルム上で硬化させて硬化被膜を形成させ、撥水性フィルムを製造することが開示されている。
また、特許文献2においては、炭化水素基中の水素原子の一部又は全部が弗素原子及び弗化炭素基の何れか一方又は双方で置換された含弗素官能基を有する物質で基材の表面を覆うことにより、撥水撥油性部材を製造することが開示されている。
しかしながら、これらの従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質は、メチレン基、エーテル結合(酸素原子)、カルボニル基等を分子構造中に含む場合があり、これらの官能基によって発現する高い表面エネルギーに起因して、十分な撥水性及び撥油性を達成することが困難である。また、特許文献2において開示されている撥水撥油性部材の製造方法においては、炭化水素基を有する物質で上記基材の表面を予め覆っておき、更に弗化炭素基を含む化合物のガス雰囲気中で低圧プラズマ処理することにより、上記含弗素官能基を導入する。従って、撥水撥油性部材の製造工程が複雑となり、製造コストの増大に繋がる虞がある。
一方、特許文献3においては、一般式(FC)(CF3−nSiX4−n又は(FC)SiX4−n(式中、m及びnは1乃至3の整数を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数5以下のアルコキシ基を表す)によって表される過フルオロアルキルシラン系化合物の加水分解物を基材の表面に塗布し、加熱乾燥することにより、高撥水性材料を製造することが開示されている。
当該従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質は、メチレン鎖、エーテル結合(酸素原子)、カルボニル基等を分子構造中に含まないので、十分な撥水性及び撥油性を達成することができる。しかしながら、上記一般式によって表される複雑な分子構造を有する過フルオロアルキルシラン系化合物の合成は容易ではないことから、かかる化合物は入手が困難であったり、極めて高価であったりする場合が多い。その結果、かかる化合物から構成される撥水撥油性被膜を設けることは、対象となる物品の製造コストを増大させることに繋がる虞がある。
また、前述のように、当該技術分野においては、各種工業製品における品質向上や耐久性向上の観点からも、様々な用途及び様々な環境において使用される物品において極めて高い防汚性が求められるようになってきている。具体的には、例えば、パワーデバイスの放熱用に使用されるヒートシンク等、極めて高い温度に曝される部材においても、汚れの付着等に起因する冷却性能の低下を防止すること等を目的として、極めて高い防汚性が求められるようになってきている。
上述のような従来技術に係る過フルオロアルキルシラン系化合物は、優れた撥水性能を呈する被膜を形成することができ、化学的にも比較的安定ではあるものの、上記のような極めて高い温度においては、過フルオロアルキル基に含まれるジフルオロメチレン(−CF−)基における炭素−弗素間の結合(C−F結合)が熱分解し、結果として撥水性能が低下する虞がある。
以上のように、当該技術分野においては、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜に対する継続的な要求が存在する。また、当該技術分野においては、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、高温への暴露後においても高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜に対する継続的な要求が存在する。
特開2009−154480号公報 特開2010−247333号公報 特開平07−8900号公報
前述のように、当該技術分野においては、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜に対する継続的な要求が存在する。また、当該技術分野においては、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、高温への暴露後においても高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜に対する継続的な要求が存在する。
本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を提供することを1つの目的とする。
上記目的は、
基材の表面に形成される撥水撥油性被膜であって、
シロキサン骨格を有し、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
撥水撥油性被膜によって達成される。
また、上記目的は、
シロキサン骨格を有し、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
撥水撥油性被膜の形成方法であって、
過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質の少なくとも何れか一方又は両方を加水分解し、
前記前駆物質の前記加水分解によって得られる過フルオロアルキルアリール−トリシラノール及び過フルオロアリール−トリシラノールの少なくとも何れか一方又は両方を含む溶液を、前記基材の表面に塗布し、
前記シラノールの脱水縮合反応により前記シロキサン骨格を形成させると共に、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子を、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合させる、
撥水撥油性被膜の形成方法によっても達成される。
本発明によれば、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を提供することができる。
本発明の1つの実施態様に係る実施例1の撥水撥油性被膜の形成方法を表す合成スキームである。 本発明の1つの実施態様に係る実施例1の撥水撥油性被膜並びに従来技術に係る比較例1及び2の撥水撥油性被膜の表面についてのX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
前述のように、本発明の1つの目的は、入手が容易な原料を用いる簡潔な方法によって形成され、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、例えば、メチレン鎖、エーテル結合(酸素原子)、カルボニル基等、表面エネルギーを発現する官能基のみならず、ジフルオロメチレン(−CF−)基をも排除した分子構造を有する過フルオロアリール−トリシラノール(但し、過フルオロアリール基の少なくとも1つの弗素原子がトリフルオロメチル基によって置換されていてもよい)の脱水縮合により、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を形成することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1の実施態様は、
基材の表面に形成される撥水撥油性被膜であって、
シロキサン骨格を有し、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
撥水撥油性被膜である。
上記のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜はシロキサン骨格を有する。シロキサン骨格とは、当業者に周知であるように、シロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返しによって構成される主鎖である。また、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、上記のように、シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合している。
換言すれば、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、例えば、メチレン基やエチレン基、又はジフルオロメチレン基やテトラフルオロエチレン基等を介すること無く、過フルオロアルキルアリール基及び/又は過フルオロアリール基を構成するアリール基に含まれる芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が、シロキサン骨格を構成する珪素原子に直接結合している。従って、前述のFAS系化合物等の従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質のようにメチレン基によって発現する高い表面エネルギーに起因して十分な撥水性及び撥油性を達成することが困難となる虞が無い。
ここで、トリフルオロメチル末端、ジフルオロメチル末端、ジフルオロメチレン鎖、及びメチレン鎖が表面に露出している物品の表面における表面エネルギーの一覧を以下の表1に示す。表1に示すように、トリフルオロメチル末端は物品の表面において非常に低い表面エネルギーを発現する。ジフルオロメチル末端は、トリフルオロメチル末端が有する3つの弗素原子のうちの1個が水素原子に置き換えられたものであるが、表面エネルギーは大幅に上昇する。また、ジフルオロメチレン鎖は、末端基ではなく、トリフルオロメチル末端が有する3つの弗素原子のうちの1個が例えば隣接する炭素原子に置き換えられたものであるが、ジフルオロメチル末端よりも更に高い表面エネルギーを発現する。更に、メチレン鎖に至っては、トリフルオロメチル末端の数倍もの非常に高い表面エネルギーを発現する。このように、1つの炭素原子に結合する弗素原子の数や、当該炭素原子が末端基を構成するものであるか否かによって、当該炭素原子が構成する官能基によって発現される表面エネルギーは大きく変化する。その結果、かかる官能基が露出している表面の撥水性及び撥油性もまた大幅に変動する。
Figure 2013142097
尚、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合するアリール基が過フルオロアルキルアリール基においては、上述のように、当該過フルオロアルキルアリール基を構成する過フルオロアルキル基は全てトリフルオロメチル基である。トリフルオロメチル基は、前述のFAS系化合物等の従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質において撥水撥油性を発現する主たる構造であるジフルオロメチレン基と比較して、より低い表面エネルギーを発現する。この点からも、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、従来技術に勝る、より高い撥水性及び撥油性を達成することができる。
更に、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、アリール基に含まれる芳香族炭素原子のうち、シロキサン骨格を構成する珪素原子に直接結合している炭素原子以外の炭素原子には、(上記のようにトリフルオロメチル基が結合している炭素原子を除き)何れも弗素原子が結合している。かかる芳香族炭素と弗素原子との結合においては、前述のFAS系化合物等の従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質において撥水撥油性を発現する主たる構造であるジフルオロメチレン基における脂肪族炭素と弗素原子との結合と比較して、炭素原子と弗素原子との結合(C−F結合)における電子雲の偏りがより小さい。従って、本実施態様に係る撥水撥油性被膜における芳香族炭素と弗素原子との結合は、従来技術に係る撥水撥油性被膜における脂肪族炭素と弗素原子との結合と比較して、化学的により安定である。その結果、本実施態様に係る撥水撥油性被膜における芳香族炭素と弗素原子との結合は、前述のような極めて高い温度への暴露を伴う用途(例えば、パワーデバイスの放熱用に使用されるヒートシンク等の部材の防汚コーティング等)においても、炭素−弗素間の結合(C−F結合)が熱分解して、撥水撥油性能が低下する虞が低い。即ち、本実施態様に係る撥水撥油性被膜は、ジフルオロメチレン基を含む従来技術に係る撥水撥油性被膜と比較して、より高い耐熱性を発揮することができる。
上記に加えて、本実施態様に係る撥水撥油性被膜を構成する上述の物質は、分子構造中に長鎖過フルオロアルキル基を有する過フルオロ化合物と比較して、環境負荷が小さい。従って、本実施態様に係る撥水撥油性被膜は、環境保護の観点からも、より望ましい撥水撥油性被膜であると言うことができる。
一方、シロキサン骨格を構成する珪素原子は、シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、基材の表面と結合している(−Si−O−結合)。当該結合は非常に安定であるので、本実施態様に係る撥水撥油性被膜は、基材の表面に確実に固定することができる。基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属、ガラス等を挙げることができる。
以上のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜によれば、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を提供することができる。
尚、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、前述のように、シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合している。上記過フルオロアルキルアリール基は、当該過フルオロアルキルアリール基を構成する過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である限り、如何なる過フルオロアルキルアリール基であってもよい。
上記過フルオロアルキルアリール基の具体例としては、例えば、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)−2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)−3,5−ジフルオロフェニル基等を挙げることができる。また、上記過フルオロアルキルアリール基を構成する過フルオロアリール基の基本骨格は、上記に例示した具体例のようにベンゼン環であってもよく、あるいはナフタレン環であってもよい。これらの中では、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基が、対応する過フルオロアルキル基を有する原料の入手が容易であり、特に望ましい。
また、上記過フルオロアリール基もまた、特定の化合物に限定されるものではなく、例えば、過フルオロフェニル基、過フルオロナフチル基等であってもよい。これらの中では、過フルオロフェニル基が、対応する過フルオロ基を有する原料の入手が容易であり、特に望ましい。
従って、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る撥水撥油性被膜であって、
前記過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、
前記過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である、
撥水撥油性被膜である。
上記のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜においては、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合する過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合する過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である。かかる分子構造を有する前駆物質(例えば、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリアルコキシシラン、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリハロゲン化シラン、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリアミノシラン等、並びに過フルオロフェニル−トリアルコキシシラン、過フルオロフェニル−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロフェニル−トリアミノシラン等)は、前述のように入手が比較的容易である。従って、本実施態様に係る撥水撥油性被膜は、比較的安価な製造コストにて撥水撥油性被膜を形成することができる。
ところで、前述のように、本発明は、撥水撥油性被膜のみならず、当該被膜の形成方法にも関する。即ち、上述の幾つかの実施態様を始めとする各種実施態様に係る撥水撥油性被膜を形成するための方法もまた、本発明の範囲に含まれる。従って、本発明に係る撥水撥油性被膜の形成方法の幾つかの実施態様について以下に説明するが、上述の幾つかの実施態様に係る撥水撥油性被膜についての説明と重複する内容については、以下に改めては説明せず、割愛する。
先ず、本発明の第3の実施態様は、
シロキサン骨格を有し、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
撥水撥油性被膜の形成方法であって、
過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質の少なくとも何れか一方又は両方を加水分解し、
前記前駆物質の前記加水分解によって得られる過フルオロアルキルアリール−トリシラノール及び過フルオロアリール−トリシラノールの少なくとも何れか一方又は両方を含む溶液を、前記基材の表面に塗布し、
前記シラノールの脱水縮合反応により前記シロキサン骨格を形成させると共に、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子を、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合させる、
撥水撥油性被膜の形成方法である。
本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法によって形成される撥水撥油性被膜は、上記のように、シロキサン骨格を有し、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、撥水撥油性被膜である。かかる撥水撥油性被膜の構成については、本発明の第1の実施態様に係る撥水撥油性被膜についての説明において既に述べたので、ここでは改めて説明しない。
本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、上記のように、
過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質の少なくとも何れか一方又は両方を加水分解し、
前記前駆物質の前記加水分解によって得られる過フルオロアルキルアリール−トリシラノール及び過フルオロアリール−トリシラノールの少なくとも何れか一方又は両方を含む溶液を、前記基材の表面に塗布し、
前記シラノールの脱水縮合反応により前記シロキサン骨格を形成させると共に、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子を、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合させる。
過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質の加水分解は、当該技術分野において、例えば、有機シラノールの加水分解に用いられる方法を適用して行うことができる。具体的には、上記前駆物質の加水分解は、例えば、酸を触媒とする加水分解、塩基を触媒とする加水分解等によって行うことができる。また、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質は、加水分解によって、それぞれに対応するトリシラノールを生成することができる限り、特に限定されるものではない。これらの前駆物質の具体例については後に詳述する。
次に、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、上記前駆物質の加水分解によって得られる過フルオロアルキルアリール−トリシラノール及び過フルオロアリール−トリシラノールの少なくとも何れか一方又は両方を含む溶液を、基材の表面に塗布する。上記溶液の溶媒は、上記シラノールを良好に溶解することができるものである限り、特に限定されるものではない。尚、塗布後に上記シラノールに被膜を形成させることを考慮すると、上記溶液の溶媒は上記溶液から容易に除去することができるものであることが、より望ましい。更に、上記溶媒は環境負荷が低いものであることが、より一層望ましい。かかる観点から、上記溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール類を選択することができる。
また、基材の材質としては、前述のように、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属、ガラス等を挙げることができる。更に、上記溶液を基材の表面に塗布する方法もまた、特定の方法に限定されるものではなく、上記溶液や基材の性状、塗布工程において用いられる加工設備の設計仕様や周囲環境等に応じて、当該技術分野において周知の種々の塗布方法から適宜選択することができる。具体的には、上記溶液の塗布方法としては、例えば、ディップコーティング法(ディッピング法)、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等を挙げることができる。
次いで、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、シラノールの脱水縮合反応によりシロキサン骨格を形成させると共に、シロキサン骨格を構成する珪素原子を、シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、基材の表面と結合させる。シラノールの脱水縮合反応は、当該技術分野において、例えば、有機シラノールの脱水縮合に用いられる方法を適用して行うことができる。具体的には、上記シラノールの脱水縮合は、例えば、酸を触媒とする脱水縮合、塩基を触媒とする脱水縮合、熱によって進行する脱水縮合等によって行うことができる。
上記シラノールの脱水縮合反応により、シロキサン骨格が形成される。その結果、ポリシロキサンを主骨格とし、当該シロキサン骨格を構成する珪素原子に芳香族炭素原子を介して結合する過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方からなる側鎖を有する強固な被膜が形成される。同時に、シロキサン骨格を構成する珪素原子は、シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、基材の表面と強固に結合する。
以上のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法によれば、
シロキサン骨格を有し、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
撥水撥油性被膜を形成することができる。
上記撥水撥油性被膜においては、例えば、メチレン基やエチレン基、又はジフルオロメチレン基やテトラフルオロエチレン基等を介すること無く、過フルオロアルキルアリール基及び/又は過フルオロアリール基を構成するアリール基に含まれる芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が、シロキサン骨格を構成する珪素原子に直接結合している。従って、上記撥水撥油性被膜は、前述のFAS系化合物等の従来技術に係る撥水撥油性被膜と比較して、より高い撥水性及び撥油性を発揮することができる。
また、前述のように、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合するアリール基が過フルオロアルキルアリール基が有する過フルオロアルキル基は全てトリフルオロメチル基である。トリフルオロメチル基は、前述のFAS系化合物等の従来技術に係る撥水撥油性被膜を構成する物質において撥水撥油性を発現する主たる構造であるジフルオロメチレン基と比較して、より低い表面エネルギーを発現する。この点からも、上記撥水撥油性被膜においては、従来技術に勝る、より高い撥水性及び撥油性を達成することができる。
更に、上記撥水撥油性被膜においては、アリール基に含まれる芳香族炭素原子のうち、シロキサン骨格を構成する珪素原子に直接結合している炭素原子以外の炭素原子には、(上記のようにトリフルオロメチル基が結合している炭素原子を除き)何れも弗素原子が結合している。前述のように、かかる芳香族炭素と弗素原子との結合は、脂肪族炭素と弗素原子との結合と比較して、炭素原子と弗素原子との結合(C−F結合)における電子雲の偏りがより小さく、化学的により安定である。その結果、上記撥水撥油性被膜における芳香族炭素と弗素原子との結合は、前述のような極めて高い温度への暴露を伴う用途(例えば、パワーデバイスの放熱用に使用されるヒートシンク等の部材の防汚コーティング等)においても、熱分解による撥水撥油性能の低下を生じ難い。即ち、上記撥水撥油性被膜は、ジフルオロメチレン基を含む従来技術に係る撥水撥油性被膜と比較して、より高い耐熱性を発揮することができる。
加えて、上記撥水撥油性被膜を構成する上述の物質は、分子構造中に長鎖過フルオロアルキル基を有する過フルオロ化合物と比較して、環境負荷が小さい。従って、上記撥水撥油性被膜は、環境保護の観点からも、より望ましい撥水撥油性被膜であると言うことができる。
以上のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法によれば、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を形成することができる。
ところで、前述のように、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質は、加水分解によって、それぞれに対応するトリシラノールを生成することができる限り、特に限定されるものではない。かかる前駆物質としては、対応する過フルオロアルキルアリール基を有するトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシラン、並びに対応する過フルオロアリール基を有するトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシランを挙げることができる。
即ち、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第3の実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法であって、
前記過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなり、
前記過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなる、
撥水撥油性被膜の形成方法である。
上記のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなる。即ち、上記過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質としては、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアミノシランの何れか1種を選択することができる。あるいは、上記過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質は、これらのトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシランのうちの何れか2種以上の組み合わせであってもよい。
一方、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなる。即ち、上記過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質としては、過フルオロアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種を選択することができる。あるいは、上記過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質は、これらのトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシランのうちの何れか2種以上の組み合わせであってもよい。
尚、上記前駆物質としてのトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシランの中では、トリアルコキシシランが特に望ましい。これは、トリアルコキシシランは、上記加水分解反応の結果として生ずる副生成物としてアルコールを生ずるのに対し、トリハロゲン化シラン及びトリアミノシランは、上記副生成物として、それぞれハロゲン化水素及びアミンを生じ、その一方で、アルコールは、一般に、ハロゲン化水素及びアミンと比較して、環境負荷が低く、処理も容易であるためである。
ところで、前述のように、本発明に係る撥水撥油性被膜の形成方法によって形成される撥水撥油性被膜においては、シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合している。上記過フルオロアルキルアリール基は、当該過フルオロアルキルアリール基を構成する過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である限り、如何なる過フルオロアルキルアリール基であってもよい。
上記過フルオロアルキルアリール基の具体例としては、例えば、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)−2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)−3,5−ジフルオロフェニル基等を挙げることができる。また、上記過フルオロアルキルアリール基を構成する過フルオロアリール基の基本骨格は、上記に例示した具体例のようにベンゼン環であってもよく、あるいはナフタレン環であってもよい。これらの中では、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基が、対応する過フルオロアルキル基を有する原料の入手が容易であり、特に望ましい。
また、上記過フルオロアリール基もまた、特定の化合物に限定されるものではなく、例えば、過フルオロフェニル基、過フルオロナフチル基等であってもよい。これらの中では、過フルオロフェニル基が、対応する過フルオロ基を有する原料の入手が容易であり、特に望ましい。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第3又は前記第4の実施態様の何れか1つに係る撥水撥油性被膜の形成方法であって、
前記過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、
前記過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である、
撥水撥油性被膜の形成方法である。
上記のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法によって形成される撥水撥油性被膜においては、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合する過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、シロキサン骨格を構成する珪素原子に結合する過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である。かかる分子構造を有する前駆物質(例えば、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリアルコキシシラン、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリハロゲン化シラン、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリアミノシラン等、並びに過フルオロフェニル−トリアルコキシシラン、過フルオロフェニル−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロフェニル−トリアミノシラン等)は、前述のように入手が比較的容易である。従って、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法によれば、比較的安価な製造コストにて撥水撥油性被膜を形成することができる。
尚、前述のように、上記前駆物質としてのトリアルコキシシラン、トリハロゲン化シラン、及びトリアミノシランの中では、トリアルコキシシランが特に望ましい。即ち、上記前駆物質としては、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリアルコキシシラン及び過フルオロフェニル−トリアルコキシシランが特に望ましい。具体的には、上記先駆物質としては、4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリエトキシシラン及び過フルオロフェニル−トリエトキシシランを使用することができる。
ところで、前述のように、上記シラノールの脱水縮合は、例えば、酸を触媒とする脱水縮合、塩基を触媒とする脱水縮合、熱によって進行する脱水縮合等によって行うことができる。これらの中で、熱によって進行する脱水縮合は、酸又は塩基を触媒とする脱水縮合とは異なり、更なる物質の添加を必要としないことから、例えば、省資源、製造工程の簡素化、及び製造コスト削減等の観点からも、より望ましい。
従って、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第3乃至前記第5の実施態様の何れか1つに係る撥水撥油性被膜の形成方法であって、
前記シラノールの脱水縮合反応を加熱によって起こす、
撥水撥油性被膜の形成方法である。
上記のように、本実施態様に係る撥水撥油性被膜の形成方法においては、前記シラノールの脱水縮合反応を、酸触媒又は塩基触媒を添加すること無く、触媒加熱によって起こすことから、例えば、省資源、製造工程の簡素化、及び製造コスト削減等の観点からも、より望ましい。
本発明の幾つかの実施態様に関して、添付図面等を参照しつつ以下に説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
1.本発明の1つの実施態様に係る撥水撥油性被膜の撥水性及び撥油性の評価
本実験例においては、本発明の1つの実施態様に係る撥水撥油性被膜の撥水性及び撥油性につき、従来技術に係る比較例と比較しながら評価した。本実施例の詳細については以下に述べる。
(1)評価用サンプルの調製
基材としては、ステンレス鋼板、アルミニウム板、及びガラス板を採用し、撥水撥油性被膜を形成する前に、予め超音波洗浄によって洗浄した。かかる基材の表面上に、本発明の1つの実施態様に係る実施例1並びに従来技術に係る比較例1及び2の各種撥水撥油性被膜をそれぞれ形成して、各種評価用サンプルを調製した。個々の評価用サンプルの調製につき、以下に詳細に説明する。尚、本実験例においては、ディップコーティング法(ディッピング法)により塗膜を形成した。
先ず、実施例1に係る評価用サンプルの調製について説明する。24gの4−過フルオロトリル−トリエトキシシラン(4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリエトキシシラン)、17gの0.05Nの塩酸水溶液、及び39gのエタノールを混合し、撹拌して、4−過フルオロトリル−トリシラノール(4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリシラノール)を含む溶液を得た。当該溶液に、上記各種基材を浸漬し、引き上げて、各種基材の表面上に当該溶液からなる塗膜を形成し、200℃において30分間に亘って加熱処理して、実施例1に係る被膜を形成した。
尚、上記4−過フルオロトリル−トリエトキシシラン(4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリエトキシシラン)の加水分解による4−過フルオロトリル−トリシラノール(4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリシラノール)の合成、及び4−過フルオロトリル−トリシラノール(4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル−トリシラノール)の脱水縮合による塗膜の形成の流れを図1に示す。図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る実施例1の撥水撥油性被膜の形成方法を表す合成スキームである。
次に、比較例1に係る評価用サンプルの調製について説明する。102gのノナフルオロヘキシル−トリメトキシシラン(2−(過フルオロブチル)−エチル−トリメトキシシラン)、96.1gのテトラエトキシシラン、及び18.5gの0.1Nの塩酸水溶液を混合し、撹拌して、ノナフルオロヘキシルトリシラノール(2−(過フルオロブチル)−エチル−トリシラノール)を含む溶液を得た。当該溶液に、上記各種基材を浸漬し、引き上げて、各種基材の表面上に当該溶液からなる塗膜を形成し、80℃において5分間に亘って加熱処理して、比較例1に係る被膜を形成した。即ち、比較例1に係る被膜を構成する物質は、従来技術に係るフルオロアルキルシラン(FAS)系化合物であるC4FASに由来するものである。
更に、比較例2に係る評価用サンプルの調製について説明する。2gのヘプタデカフルオロデシル−トリエトキシシラン(2−(過フルオロオクチル)−エチル−トリエトキシシラン)、50gのイソプロピルアルコール、及び2gの60%硝酸を混合し、撹拌して、ヘプタデカフルオロデシル−トリシラノール(2−(過フルオロオクチル)−エチル−トリシラノール)を含む溶液を得た。当該溶液に、上記各種基材を浸漬し、引き上げて、各種基材の表面上に当該溶液からなる塗膜を形成し、140℃において30分間に亘って加熱処理して、比較例2に係る被膜を形成した。比較例2に係る被膜を形成した。即ち、比較例1に係る被膜を構成する物質は、従来技術に係るフルオロアルキルシラン(FAS)系化合物であるC8FASに由来するものである。
(2)評価用サンプルの撥水性及び撥油性の評価
上述のようにして調製した実施例1並びに比較例1及び2に係る各種評価用サンプルの各種基材の表面上に形成された被膜の撥水性及び撥油性を評価した。具体的には、各種評価用サンプルの各種基材の表面上に形成された被膜の表面上における水及び油の接触角を測定した。尚、本実験例においては、ヘキサデカンを油として採用した。
実施例1並びに比較例1及び2に係る全ての評価用サンプルにおいても、基材の材質(即ち、ステンレス鋼板、アルミニウム板、及びガラス板)による接触角の相違は認められなかった。このことから、実施例1並びに比較例1及び2に係る全ての評価用サンプルにおいて、均一な連続被膜が形成されたものと判断される。実施例1並びに比較例1及び2に係る各種評価用サンプルについての接触角の測定結果を、以下の表2に列挙する。
Figure 2013142097
表2に示す評価結果からも明らかであるように、本発明の1つの実施態様に係る実施例1においては、水及び油の何れに対しても、従来技術に係る比較例1及び2と比較して、より大きい接触角を示した。即ち、本発明の1つの実施態様に係る実施例1の被膜は、従来技術に係る比較例1及び2の被膜と比較して、より高い撥水性及び撥油性を有することが確認された。
本発明の1つの実施態様に係る実施例1の被膜が上記のように従来技術に係る比較例1及び2の被膜よりも高い撥水性及び撥油性を示した原因としては、前述のように、比較例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となるメチレン(−CH−)基及びジフルオロメチレン(−CF−)基を含むのに対し、実施例1に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、かかる相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となる基を含んでおらず、相対的に低い表面エネルギーを発現する要因となるトリフルオロメチル(−CF−)基及び芳香族炭素と結合した弗素原子(CF)しか含んでいないことが挙げられる。
(3)評価用サンプルの塗膜表面の分析
そこで、実施例1並びに比較例1及び2に係る各種被膜の表面に存在する官能基の違いを分析すべく、各種被膜の表面について、X線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)を行った。各種被膜の表面についてのXPS分析の結果を図2に示す。図2は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る実施例1の撥水撥油性被膜並びに従来技術に係る比較例1及び2の撥水撥油性被膜の表面についてのX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
図2に示すXPSスペクトルからも明らかであるように、比較例1(破線)及び比較例2(点線)の撥水撥油性被膜の表面についてのXPSスペクトルにおいては、メチレン(−CH−)基、ジフルオロメチレン(−CF−)基、トリフルオロメチル(−CF−)基に対応するピークがそれぞれ観察された。これに対し、実施例1(実線)の撥水撥油性被膜の表面についてのXPSスペクトルにおいては、メチレン(−CH−)基及びジフルオロメチレン(−CF−)基に対応するピークは観察されず、トリフルオロメチル(−CF−)基及び芳香族炭素と結合した弗素原子(CF)に対応するピークのみが観察された。
上記のように、XPSによる分析の結果から、比較例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となるメチレン(−CH−)基及びジフルオロメチレン(−CF−)基を含むのに対し、実施例1に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、かかる相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となる基を含んでおらず、相対的に低い表面エネルギーを発現する要因となるトリフルオロメチル(−CF−)基、及び芳香族炭素と結合した弗素原子(CF)しか含んでいないことが確認された。
2.本発明の実施態様に係る撥水撥油性被膜の耐熱性の評価
本実験例においては、本発明の実施態様に係る撥水撥油性被膜の耐熱性につき、従来技術に係る比較例と比較しながら評価した。本実施例の詳細については以下に述べる。
(1)評価用サンプルの調製
本実験例においても、前述の実験例と同様に、基材としては、ステンレス鋼板、アルミニウム板、及びガラス板を採用し、撥水撥油性被膜を形成する前に、予め超音波洗浄によって洗浄した。かかる基材の表面上に、前述の実験例と同様に、本発明の1つの実施態様に係る実施例1並びに従来技術に係る比較例1及び2の各種撥水撥油性被膜をそれぞれ形成して、各種評価用サンプルを調製した。尚、本実験例においては、本発明のもう1つの実施態様に係る実施例2の撥水撥油性被膜が基材の表面上に形成された評価用サンプルも調製した。従って、本実験例についての説明においては、実施例2に係る評価用サンプルの調製についてのみ、以下に詳細に説明する。尚、本実験例においても、前述の実験例と同様に、ディップコーティング法(ディッピング法)により塗膜を形成した。
実施例2に係る評価用サンプルの調製について説明する。23gのペンタフルオロフェニル−トリエトキシシラン(過フルオロフェニル−トリエトキシシラン)、17gの0.05Nの塩酸水溶液、及び39gのエタノールを混合し、撹拌して、ペンタフルオロフェニル−トリシラノール(過フルオロフェニル−トリシラノール)を含む溶液を得た。当該溶液に、上記各種基材を浸漬し、引き上げて、各種基材の表面上に当該溶液からなる塗膜を形成し、200℃において30分間に亘って加熱処理して、実施例2に係る被膜を形成した。
(2)評価用サンプルの撥水性及び撥油性並びに耐熱性の評価
上述のようにして調製した実施例1及び2並びに比較例1及び2に係る各種評価用サンプルの各種基材の表面上に形成された被膜の撥水性及び撥油性を評価した。具体的には、前述の実験例と同様に、各種評価用サンプルの各種基材の表面上に形成された被膜の表面上における水及び油の接触角を測定した。尚、本実験例においても、前述の実験例と同様に、ヘキサデカンを油として採用した。
前述の実験例と同様に、実施例1及び2並びに比較例1及び2に係る全ての評価用サンプルにおいても、基材の材質(即ち、ステンレス鋼板、アルミニウム板、及びガラス板)による接触角の相違は認められなかった。このことから、実施例1及び2並びに比較例1及び2に係る全ての評価用サンプルにおいて、均一な連続被膜が形成されたものと判断される。更に、本実験例においては、全ての評価用サンプルを、400℃において1時間に亘って、大気中に保持した後の、各被膜の表面上における水及び油の接触角も測定した。実施例1及び2並びに比較例1及び2に係る各種評価用サンプルについての上記加熱処理の前後における接触角の測定結果を、以下の表3に列挙する。
Figure 2013142097
表3に示す加熱前の水及び油の接触角についての評価結果からも明らかであるように、本発明の1つの実施態様に係る実施例1においては、水及び油の何れに対しても、従来技術に係る比較例1及び2と比較して、より大きい接触角を示した。即ち、本発明の1つの実施態様に係る実施例1の被膜は、従来技術に係る比較例1及び2の被膜と比較して、より高い撥水性及び撥油性を有することが改めて確認された。一方、本発明のもう1つの実施態様に係る実施例2においては、水及び油の何れに対しても、従来技術に係る比較例1及び2と比較して、より小さい接触角を示した。即ち、本発明のもう1つの実施態様に係る実施例2の被膜は、従来技術に係る比較例1及び2の被膜と比較して、より低い撥水性及び撥油性を有することが確認された。但し、実施例2の被膜の撥水性及び撥油性は上記のように比較例1及び2の被膜の撥水性及び撥油性よりも若干小さいものの、実用上問題の無いレベルである。
上記のように本発明の1つの実施態様に係る実施例1の被膜が従来技術に係る比較例1及び2の被膜よりも高い撥水性及び撥油性を示した原因としては、前述のように、比較例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となるメチレン(−CH−)基及びジフルオロメチレン(−CF−)基を含むのに対し、実施例1に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、かかる相対的に高い表面エネルギーを発現する要因となる基を含んでおらず、相対的に低い表面エネルギーを発現する要因となるトリフルオロメチル(−CF−)基及び芳香族炭素と結合した弗素原子(CF)しか含んでいないことが挙げられる。尚、実施例2に係る被膜については、前述のように低い表面エネルギーの発現に寄与するトリフルオロメチル(−CF−)基を含んでおらず、芳香族炭素と結合した弗素原子(CF)しか含んでいないことから、上述のように比較例1及び2の被膜の撥水性及び撥油性よりも若干小さい撥水性及び撥油性を有するものと考えられる。
更に、表3に示す加熱後の水及び油の接触角についての評価結果からも明らかであるように、従来技術に係る比較例1及び2においては、上述の加熱処理に伴い、水及び油の両方に対する接触角が大幅に減少した。これに対し、本発明の実施態様に係る実施例1及び2においては、水及び油の両方に対して、上述の加熱処理に伴う接触角が減少は小さく、上述の加熱処理の後においては、本発明の実施態様に係る実施例1及び2は何れも、従来技術に係る比較例1及び2と比較して、より大きい接触角を維持した。即ち、本発明の実施態様に係る実施例1及び2の被膜は、従来技術に係る比較例1及び2の被膜と比較して、より高い耐熱性を有することが確認された。
本発明の実施態様に係る実施例1及び2の被膜が上記のように従来技術に係る比較例1及び2の被膜よりも高い耐熱性を示した原因としては、前述のように、比較例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、相対的に熱分解を受け易いメチレン(−CH−)基を含むのに対し、実施例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖が、かかる相対的に熱分解を受け易い基を含んでいないことが挙げられる。加えて、比較例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖において弗素原子と結合している全ての炭素原子が脂肪族炭素原子であるのに対し、実施例1及び2に係る被膜においては、シロキサン骨格の側鎖において弗素原子と結合している炭素原子は、実施例1に係る被膜が有するトリフルオロメチル(−CF−)基に含まれる炭素原子を除き、全て芳香族炭素原子である。前述のように、芳香族炭素と弗素原子との結合においては、脂肪族炭素と弗素原子との結合と比較して、炭素原子と弗素原子との結合(C−F結合)における電子雲の偏りがより小さい。従って、実施例1及び2に係る被膜における芳香族炭素と弗素原子との結合は、比較例1及び2に係る被膜における脂肪族炭素と弗素原子との結合と比較して、化学的により安定である。その結果、実施例1及び2に係る被膜における芳香族炭素と弗素原子との結合は、上述の加熱処理においても、炭素−弗素間の結合(C−F結合)が熱分解し難く、撥水撥油性能が低下し難いものと考えられる。
以上のように、本発明に係る撥水撥油性被膜及び本発明に係る撥水撥油性被膜の形成方法によれば、常温時のみならず、高温への暴露後においても、高い撥水性及び撥油性を発揮し且つ環境負荷が低い撥水撥油性被膜を形成することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。

Claims (6)

  1. 基材の表面に形成される撥水撥油性被膜であって、
    シロキサン骨格を有し、
    前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
    前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
    撥水撥油性被膜。
  2. 請求項1に記載の撥水撥油性被膜であって、
    前記過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、
    前記過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である、
    撥水撥油性被膜。
  3. シロキサン骨格を有し、
    前記シロキサン骨格を構成する珪素原子に、芳香族炭素原子を介して、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール基及び過フルオロアリール基の少なくとも何れか一方又は両方が結合しており、
    前記シロキサン骨格を構成する珪素原子が、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合している、
    撥水撥油性被膜の形成方法であって、
    過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質及び過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質の少なくとも何れか一方又は両方を加水分解し、
    前記前駆物質の前記加水分解によって得られる過フルオロアルキルアリール−トリシラノール及び過フルオロアリール−トリシラノールの少なくとも何れか一方又は両方を含む溶液を、前記基材の表面に塗布し、
    前記シラノールの脱水縮合反応により前記シロキサン骨格を形成させると共に、前記シロキサン骨格を構成する珪素原子を、前記シロキサン骨格を構成しない酸素原子を介して、前記基材の表面と結合させる、
    撥水撥油性被膜の形成方法。
  4. 請求項3に記載の撥水撥油性被膜の形成方法であって、
    前記過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアルキル基が全てトリフルオロメチル基である過フルオロアルキルアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなり、
    前記過フルオロアリール−トリシラノールの前駆物質が、過フルオロアリール−トリアルコキシシラン、過フルオロアリール−トリハロゲン化シラン、及び過フルオロアリール−トリアミノシランの少なくとも何れか1種以上を含んでなる、
    撥水撥油性被膜の形成方法。
  5. 請求項3又は4の何れか1項に記載の撥水撥油性被膜の形成方法であって、
    前記過フルオロアルキルアリール基が4−トリフルオロメチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基であり、
    前記過フルオロアリール基が過フルオロフェニル基である、
    撥水撥油性被膜の形成方法。
  6. 請求項3乃至5の何れか1項に記載の撥水撥油性被膜の形成方法であって、
    前記シラノールの脱水縮合反応を加熱によって起こす、
    撥水撥油性被膜の形成方法。
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