以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1)本実施例の蒸発燃料処理装置では、連通路は、キャニスタと内燃機関の吸気経路とを連通するパージ経路と異なっていてもよい。連通路の下流端は、キャニスタに連通していてもよい。この構成によれば、パージ経路上に、昇圧部を配置せずに済む。この結果、パージガスを吸気経路に供給するパージ処理を実行する際に、パージガスの流れが、昇圧部によって妨げられることを防止することができる。また、パージ処理を実行していない状況、例えばパージ処理の実行前に、パージ濃度を特定することができる。
(特徴2)本実施例の蒸発燃料処理装置では、昇圧部は、連通路のポンプよりも下流側に連通路の開閉を切り替える制御弁を含んでいてもよい。連通路の下流端は、内燃機関の吸気経路に連通していてもよい。この構成によれば、連通路を、キャニスタと内燃機関の吸気経路とを連通するパージ経路として利用することができる。
(特徴3)本実施例の蒸発燃料処理装置では、昇圧部は、連通路のポンプよりも下流側に連通路の開閉を切り替える制御弁を含んでいてもよい。連通路は、ポンプと制御弁との間に分岐経路を有していてもよい。分岐経路の下流端は、キャニスタに連通していてもよい。昇圧部は、さらに分岐経路上にも配置されていてもよい。この構成によれば、連通路を、キャニスタと内燃機関の吸気経路とを連通するパージ経路として利用することができる。また、パージガスを、連通路を通過させて吸気経路に供給するパージ処理を実行する際に、分岐経路上に配置された昇圧部が、パージガスの流れを妨げることを防止することができる。
(特徴4)本実施例の蒸発燃料処理装置では、分岐経路の下流端は、燃料タンクとキャニスタとを接続するタンク経路に連通していてもよい。この構成によれば、キャニスタに、分岐経路に連通するための新たなポートを配置せずに済む。
(特徴5)本実施例の蒸発燃料処理装置では、昇圧部は、連通路の流路面積を縮小する電磁弁、絞り、及び、可変絞り弁のいずれかを含んでいてもよい。この構成によれば、ポンプから送出されるパージガスの流れを妨げることによって、ポンプの下流側に圧力を上昇させることができる。
(特徴6)本実施例の蒸発燃料処理装置では、デューティ制御によって制御弁の開閉が切り替えられることによって、パージガスが吸気経路に供給されてもよい。検出部は、デューティ制御中に制御弁が閉弁している間に、ポンプの上流側と下流側との圧力差を検出してもよい。この構成によれば、デューティ制御によって制御弁の開閉が切り替えられることによって、パージガスが吸気経路に供給されるパージ処理中に、圧力差を検出することができる。この結果、パージ処理中にパージガスの濃度を特定することができる。
(特徴7)本実施例の蒸発燃料処理装置では、連通路は、ポンプよりも上流に、連通路内と大気とを連通する大気連通部を備えていてもよい。大気連通部は、連通路内と大気とが連通する状態と、連通路内と大気とを遮断する遮断状態と、に切り替え可能であってもよい。検出部は、大気連通部が連通路内と大気とが連通する状態に維持されており、ポンプが動作している場合の上流側と下流側とのパージガスの圧力差を、さらに検出してもよい。この構成によれば、検出済みの大気の圧力差とパージガスの圧力差とを用いて、パージガスの密度(あるいはパージ濃度)を算出することができる。
(第1実施例)
図1を参照し、蒸発燃料処理装置20を備える燃料供給システム6について説明する。燃料供給システム6は、燃料タンク14内に貯留されている燃料をエンジン2に供給するためのメイン供給経路10と、燃料タンク14内で発生した蒸発燃料をエンジン2に供給するためのパージ供給経路22を備えている。
メイン供給経路10には、燃料ポンプユニット16と、供給経路12と、インジェクタ4が設けられている。燃料ポンプユニット16は、燃料ポンプ、プレッシャレギュレータ、制御回路等を備えている。燃料ポンプユニット16は、ECU100から供給される信号に応じて燃料ポンプを制御する。燃料ポンプは、燃料タンク14内の燃料を昇圧して吐出する。燃料ポンプから吐出される燃料は、プレッシャレギュレータで調圧され、燃料ポンプユニット16から供給経路12に供給される。供給経路12は、燃料ポンプユニット16とインジェクタ4に接続されている。供給経路12に供給された燃料は、供給経路12を通過してインジェクタ4に達する。インジェクタ4は、ECU100によって開度がコントロールされる弁(図示省略)を有している。インジェクタ4の弁が開かれると、供給経路12内の燃料が、エンジン2に接続されている吸気経路34に供給される。
吸気経路34は、エアクリーナ30に接続されている。エアクリーナ30は、吸気経路34に流入する空気の異物を除去するフィルタを備えている。エンジン2とエアクリーナ30との間には、吸気経路34内に、スロットルバルブ32が設けられている。スロットルバルブ32が開くと、図1の矢印に示すように、エアクリーナ30からエンジン2に向けて吸気が行われる。スロットルバルブ32は、吸気経路34の開度を調整し、エンジン2に流入する空気量を調整する。スロットルバルブ32は、インジェクタ4より上流側(エアクリーナ30側)に設けられている。
メイン供給経路10に並んで、パージ供給経路22が配置されている。パージ供給経路22は、キャニスタ19からの蒸発燃料と空気との混合気体(以下では「パージガス」と呼ぶ)がキャニスタ19から吸気経路34に移動するときに通過する経路である。パージ供給経路22には、蒸発燃料処理装置20が設けられている。図2に示すように、蒸発燃料処理装置20は、キャニスタ19と、パージ経路24と、制御弁26と、エアフィルタ42と、差圧検出部50と、を備える。
燃料タンク14とキャニスタ19は、連通経路18によって接続されている。キャニスタ19は、パージ経路24を介して、吸気経路34に接続されている。パージ経路24は、連通経路28を介して、インジェクタ4とスロットルバルブ32の間で、吸気経路34に接続されている。パージ経路24と連通経路28との間には、制御弁26が配置されている。制御弁26は、ECU100によって制御される電磁弁であり、開弁された連通状態と閉弁された遮断状態の切替えがECU100によってデューティ制御される弁である。制御弁26は、キャニスタ19と吸気経路34とを連通する連通状態と、キャニスタ19と吸気経路34とをパージ経路上で遮断する遮断状態と、に切り替わる。制御弁26は、開閉時間を制御(即ち連通状態と遮断状態の切替えタイミングを制御)することにより、蒸発燃料を含む気体(即ちパージガス)の流量を調整する。なお、制御弁26は、開度が調整可能なステッピングモータ式制御弁であってもよい。
キャニスタ19は、大気ポート19a、パージポート19b、タンクポート19c、送出ポート19g及びリターンポート19hを備えている。大気ポート19aは、連通経路17を介して、エアフィルタ42に接続されている。大気は、エアフィルタ42を通過した後、連通経路17を介して大気ポート19aからキャニスタ19内に流入する場合がある。このとき、エアフィルタ42によって、大気中の異物がキャニスタ19内に侵入することを防止する。パージポート19bは、パージ経路24に接続されている。タンクポート19cは、連通経路18を介して、燃料タンク14に接続されている。送出ポート19g及びリターンポート19hは、差圧検出部50に接続されている。
キャニスタ19内に、活性炭19dが収容されている。活性炭19dに面するキャニスタ19の壁面のうちの、1つの壁面にポート19a,19b,19c,19g,19hが設けられている。活性炭19dと、ポート19a,19b,19c,19g,19hが設けられているキャニスタ19の内壁との間には、空間が存在する。ポート19a,19b,19c,19g,19hが設けられている側のキャニスタ19の内壁に、第1仕切板19eと第2仕切板19fが固定されている。第1仕切板19eは、大気ポート19aとパージポート19bの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。第1仕切板19eは、ポート19a,19b,19c,19g,19hが設けられている側と反対側の空間まで伸びている。第2仕切板19fは、リターンポート19hとタンクポート19cの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。
活性炭19dは、燃料タンク14から連通経路18、タンクポート19cを通じてキャニスタ19の内部に流入する気体から蒸発燃料を吸着する。蒸発燃料が吸着された後の気体は、大気ポート19a、連通経路17及びエアフィルタ42を通過して大気に放出される。キャニスタ19は、燃料タンク14内の蒸発燃料が大気に放出されることを防止することができる。活性炭19dで吸着された蒸発燃料は、パージポート19bよりパージ経路24に供給される。第1仕切板19eは、大気ポート19aが接続されている空間と、パージポート19bが接続されている空間を分離している。第1仕切板19eは、蒸発燃料を含んだ気体が大気に放出されることを防止している。第2仕切板19fは、パージポート19bが接続されている空間と、タンクポート19cが接続されている空間を分離している。第2仕切板19fは、タンクポート19cからキャニスタ19に流入する気体が直接パージ経路24に移動することを防止している。
エンジン2が駆動している場合、吸気経路34内は負圧である。そのため、キャニスタ19に吸着された蒸発燃料は、吸気経路34とキャニスタ19の圧力差によって、キャニスタ19からパージ経路24を通じて吸気経路34に導入される。
キャニスタ19は、さらに、ポート19g,19hを介して、差圧検出部50に接続されている。差圧検出部50は、還流経路52と、ポンプ54と、差圧センサ56と、昇圧部58と、を備える。還流経路52では、一端が送出ポート19gに接続され、他端がリターンポート19hに接続されている。還流経路52の中間位置には、ポンプ54が配置されている。ポンプ54は、例えば渦流ポンプである。ポンプ54は、還流経路52のポンプ54よりも送出ポート19g側の還流経路52a内のパージガスを吸入し、還流経路52のポンプ54よりもリターンポート19h側の還流経路52b内に送出する。ポンプ54が動作することによって、キャニスタ19内のパージガスは、送出ポート19gから還流経路52に吐出され、還流経路52を通じて、リターンポート19hからキャニスタ19内に戻される。
差圧センサ56は、ポンプ54を挟んで配置されている。差圧センサ56は、還流経路52aと還流経路52bとの圧力差(即ち「差圧」)を検出する。還流経路52bの差圧センサ56よりもリターンポート19h側、即ちポンプ54の下流側に、昇圧部58が配置されている。昇圧部58は、ECU100によって開閉が制御される電磁弁である。昇圧部58が閉弁すると還流経路52bが閉塞され、昇圧部58が開弁すると還流経路52bが連通される。
次いで、蒸発燃料処理装置20の動作について説明する。エンジン2が駆動中であってパージ条件が成立すると、ECU100は、制御弁26をデューティ制御することによってパージ処理を実行する。パージ処理が実行されると、図1の矢印に示す方向にパージガスが供給される。パージ条件とは、パージガスをエンジン2に供給するパージ処理を実行すべき場合に成立する条件であり、エンジン2の冷却水温やパージガスの濃度によって、予め製造者によってECU100に設定される条件である。ECU100は、エンジン2の駆動中に、パージ条件が成立するか否かを常時監視している。ECU100は、パージガスの濃度及び吸気経路34に配置されるエアフロメータ(図示省略)に基づいて、制御弁26のデューティ比を制御する。なお、エアフロメータは、吸気経路34を通過してエンジン2に供給される空気量を測定する。これにより、キャニスタ19に吸着されていたパージガスが、エンジン2に導入される。
なお、ECU100は、スロットルバルブ32の開度を制御する。また、ECU100は、インジェクタ4による噴射燃料量も制御する。具体的には、インジェクタ4の開弁時間を制御することによって、噴射燃料量を制御する。エンジン2が駆動されると、ECU100は、インジェクタ4からエンジン2に噴射される単位時間当たりの燃料噴射時間(即ちインジェクタ4の開弁時間)を算出する。燃料噴射時間は、空燃比を目標空燃比(例えば理想空燃比)に維持するために、実験によって予め特定された基準噴射時間を、フィードバック補正係数を用いて補正することによって算出する。なお、空燃比センサは、エンジン2の排気経路内に配置されている。
パージ条件が成立するか否かの判断、制御弁26のデューティ制御、噴射燃料量制御を実行する際、パージガスの濃度を用いる。蒸発燃料処理装置20は、パージ処理が実行される前、及びパージ処理の実行中に、差圧検出部50を利用して、差圧を検出し、検出済みの差圧から濃度を特定する。
図3を参照して、濃度特定処理を説明する。濃度特定処理は、エンジン2が始動されると開始される。なお、ハイブリッド車、アイドリングストップ等、走行中あるいは走行途中にエンジン2が一旦停止され、再始動されるタイミングでも、濃度特定処理が実行される。変形例では、濃度特定処理は、車両のイグニションスイッチがオンからオフに切り替えられることによってエンジンが始動された後で実行され、エンジンが再始動されるタイミングでは実行されなくてもよい。なお、濃度特定処理が開始されるタイミングでは、制御弁26及び昇圧部58(即ち電磁弁)は閉弁している。
エンジン2が始動されると、S12において、ECU100は、ポンプ54を所定の回転数(例えば10000rpm)で動作させる。次いで、S14において、ECU100は、濃度を測定すべき条件が成立しているか否かを判断する。具体的には、ポンプ54を動作させてから所定期間(例えば5秒間)が経過したか否かを判断する。所定期間が経過している場合に、濃度を測定すべき条件が成立している(S14でYES)と判断し、S18に進む。所定期間が経過していない場合に、濃度を測定すべき条件が成立していない(S14でNO)と判断し、S16に進む。ポンプ54が動作された直後では、還流経路52内に前回ポンプ54を動作させたときのパージガスが残留している可能性がある。そこで、還流経路52内のパージガスがキャニスタ19から送出されるパージガスと均一になるように、所定期間に亘って還流経路52内のパージガスを入れ替える。
S16では、昇圧部58を閉弁から開弁に切り替えて、S14に戻る。これにより、パージガスがキャニスタ19の送出ポート19gから送出され、還流経路52に流入して、還流経路52内のパージガスが入れ替わる。なお、昇圧部58が既に開弁されている場合、S16をスキップして、S14に戻る。
S18では、ECU100は、昇圧部58を開弁から閉弁に切り替える。なお、昇圧部58が既に閉弁されている場合、S18をスキップして、S20に進む。ポンプ54が動作している状態で、昇圧部58を閉弁して、還流経路52bが閉塞されると、ポンプ54の下流側で圧力が上昇する。ポンプ54が所定回転数で動作している状態では、ポンプ54によって送出されるパージガスの流量は、パージガスの密度によって変化する。昇圧部58が閉弁されている場合では、パージガスは流れないが、ポンプ54がパージガスに与える力、即ちポンプ54の下流側の圧力がパージガスの密度によって変化する。パージガスの密度は、パージガスの蒸発燃料の濃度(以下では「パージ濃度」と呼ぶ)に相関して変化する。図4に示すように、仮に、パージガスに蒸発燃料が含まれていない状態、即ち空気では、差圧P3が検出される一方、パージ濃度が上昇すると、差圧P4で示されるように、圧力が上昇する。S20では、ECU100は、差圧センサ56を用いて、ポンプ54の上流と下流との差圧P4を検出する。
次いで、S22では、ECU100は、S20で検出済みの差圧P4を用いてパージ濃度を特定する。具体的には、ECU100には、差圧とパージ濃度との対応関係を示すデータマップが予め格納されている。データマップは、予め実験によって作成され、ECU100に格納される。この結果、パージ処理が実行されていない場合には、ECU100は、S22で特定済みのパージ濃度を用いて、パージ条件が成立したか否かを判断する。パージ処理が実行中である場合、ECU100は、S22で特定済みのパージ濃度を用いて、制御弁26のデューティ比を調整する。なお、上述したように、ECU100は、S22で特定済みのパージ濃度以外の指標(例えばエンジン2の冷却水温)を用いて、パージ条件が成立したか否かを判断してもよい。パージ条件が成立した場合、ECU100は、パージ処理を実行する。具体的には、ECU100は、制御弁26をデューティ制御して、パージガスを吸気経路34に供給する。
続くS24では、ECU100は、エンジン2が停止されたか否かを判断する。エンジン2が停止されていない場合(S24でNO)と、S14に戻って、パージ濃度を再度特定し、パージ濃度を更新する。これにより、ECU100は、パージ処理中に特定されたパージ濃度を用いて、制御弁26のデューティ比を調整することができる。この結果、パージ濃度が変化しても、空燃比が乱れることを抑制することができる。
エンジン2が停止されている場合(S24でYES)と、S26で、ECU100は、ポンプ54を停止して濃度特定処理を終了する。
本実施例では、ポンプ54の上下流の差圧を検出することによって、パージ濃度を特定することができる。このため、パージ供給経路22上に絞りを配置し、その絞りの上流側と下流側の圧力差を検出せずに、パージ濃度を特定することができる。
本実施例では、パージ経路24と差圧検出部50の還流経路52が個別に配置されている。このため、パージ経路24上に差圧を検出するための各部54,58を配置せずに済む。この結果、パージ処理でパージ経路24上を流れるパージガスが、差圧検出部50の各部によって妨げられることを回避することができる。
(第2実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。第2実施例では、昇圧部58が、電磁弁に替えて、絞りである。絞りは、例えばオリフィスプレート、ベンチュリ管である。一般的には、絞りは、還流経路52bの流路面積よりも小さい開口を有していればよい。
本実施例では、図5に示す濃度特定処理が実行される。濃度特定処理は、エンジンの駆動中、定期的に実行される。即ち、S12においてポンプ54が動作されると、S20において、ECU100は、差圧センサ56を用いて、ポンプ54の上下流の差圧を検出する。S12においてポンプ54が動作されると、パージガスが、還流経路52を流れる。このとき、昇圧部58によってポンプ54の下流側の還流経路52bが絞られているために、圧力が上昇する。図4に示すように、仮に、パージガスに蒸発燃料が含まれていない状態、即ち空気では、差圧P0が検出される一方、パージ濃度が上昇すると、差圧P1で示されるように、圧力が上昇する。
次いで、S122では、ECU100は、S20で検出済みの差圧P1を用いてパージ濃度を特定する。具体的には、ECU100には、差圧P0が予め格納されている。差圧P0は、予め実験によって特定され、ECU100に格納されている。また、ECU100には、差圧P1が変化した場合の差圧P1/差圧P0の算出結果とパージ濃度の関係を示すデータマップが格納されている。データマップは、予め実験によって作成され、ECU100に格納される。ECU100は、S20で検出された差圧P1をECU100に格納済みの差圧P0で除算し、P1/P0を算出する。ECU100は、P1/P0に対応するパージ濃度をデータマップから特定する。次いで、S26でポンプ54が停止され、濃度特定処理が終了する。
この構成によれば、昇圧部58を制御せずに、パージ濃度を検出することができる。
(第3実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。第3実施例では、昇圧部58が、電磁弁に替えて、可変絞り弁である。可変絞り弁は、ECU100によって制御され、全開状態と全閉状態との間でその開度が調整される。可変絞り弁が全閉状態では、還流経路52は閉塞されており、パージガスは流れない。可変絞り弁が全閉状態から開度が大きくなると、可変絞り弁の流路面積が大きくなり、全開状態では還流経路52の流路面積と等しくなる。
本実施例では、図6に示す濃度特定処理が実行される。濃度特定処理は、エンジン2が始動されると開始される。濃度特定処理が開始されるタイミングでは、可変絞り弁は、全閉状態である。
昇圧部58(即ち可変絞り弁)によってポンプ54の下流側が閉塞されているために、S12においてポンプ54が動作されると、ポンプ54の下流側の圧力が上昇する。次いで、S220において、ECU100は、差圧センサ56を用いて、ポンプ54の上下流の差圧を検出することができたか否かを判断する。なお、変形例では、S12でポンプ54を駆動させると、所定期間だけ可変絞り弁を開弁して還流経路52内の気体を入れ替えてもよい。図4には、空気(即ちパージ濃度0%)の流量による圧力の変化C1と、パージガス(即ちパージ濃度が0%よりも大きい)の流量による圧力の変化C2と、が示されている。変化C1,C2のそれぞれに示されるように、ポンプ54の上下流の差圧は、可変絞り弁の開度(即ち流量の変化)が小さいほど高く、開度によって変化する。また、変化C1,C2を比較すると、パージガスの圧力は、パージ濃度が高いほど高く、パージ濃度によって変化する。
パージ濃度が高い場合、可変絞り弁が全閉状態あるいは開度が小さいと、差圧が大きくなる。この結果、差圧センサ56の検出可能範囲を超えて差圧が大きくなる場合がある。S220では、差圧センサ56の検出可能範囲よりも差圧が大きい場合に、検出することができないと判断され(S220でNO)、S222において、ECU100は、可変絞り弁の開度が大きくなるように調整する。具体的には、ECU100は、可変絞り弁の開度を予め決められた値(例えば全開状態の流路面積の5%)だけ大きくして、S220に戻る。一方、S220では、差圧センサ56で差圧を検出することができた場合(S220でYES)、S224では、ECU100は、S220で検出済みの差圧を用いてパージ濃度を特定して、S24に進む。具体的には、ECU100には、可変絞り弁の開度と差圧とパージ濃度との関係を示すデータマップが予め格納されている。データマップは、実験によって予め特定され、ECU100に格納されている。ECU100は、S24,S26の処理を実行して、濃度特定処理を終了する。これにより、パージ条件の成否、パージ処理時の制御弁26のデューティ比等を調整することができる。
この構成によれば、差圧が差圧センサ56の検出可能範囲を超えるために、差圧を検出することができない事態を回避することができる。言い換えると、差圧検出可能範囲が比較的に小さい差圧センサ56、廉価な差圧センサ56を利用することができる。
(第4実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。図7に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、還流経路52a上に昇圧部58と同様の電磁弁である切替弁59を備える。切替弁59は、ECU100によって開閉制御される。ECU100は、切替弁59を制御することによって、開弁されることによって還流経路52aが連通する状態と、閉弁されることによって還流経路52aが遮断される状態と、に切り替える。
さらに、蒸発燃料処理装置20は、切替弁59とポンプ54との間の還流経路52aに接続される大気連通経路51と、大気連通経路51上に配置される空気導入弁53と、を備える。大気連通経路51の一端は、大気に開放されており、他端は、還流経路52aに連通している。空気導入弁53は、ECU100によって開閉制御される。ECU100は、空気導入弁53を制御することによって、開弁されることによって還流経路52aが大気連通経路51を介して大気に連通する状態と、閉弁されることによって還流経路52aと大気とを遮断する状態と、に切り替える。
本実施例では、図8に示す濃度特定処理が実行される。濃度特定処理は、エンジン2が始動されると開始される。濃度特定処理が開始されるタイミングでは、空気導入弁53、昇圧部58の電磁弁及び切替弁59は、閉弁されている。
S12においてポンプ54が動作されると、次いで、S314において、ECU100は、空気導入弁53を閉弁から開弁に切り替える。次いで、S316で、ECU100は、昇圧部58を閉弁から開弁に切り替える。この結果、大気連通経路51が連通して、大気連通経路51から還流経路52aに空気が流入する。S318では、ECU100は、S316から所定期間が経過した後、昇圧部58を開弁から閉弁に切り替える。S318での所定期間は、空気が還流経路52aに流入し、ポンプ54の上下流の還流経路52に空気が充填される期間である。
S318で昇圧部58を閉弁すると、ポンプ54の下流側の圧力が上昇する。次いで、S320において、ECU100は、差圧センサ56を用いて、ポンプ54の上下流の差圧を検出する。S320では、空気の差圧(図4のP3)が検出される。次いで、S324において、ECU100は、空気導入弁53を開弁から閉弁に切り替える。そして、S326において、昇圧部58を閉弁から開弁に切り替え、S328において、切替弁59を閉弁から開弁に切り替える。この結果、キャニスタ19から還流経路52aにパージガスが流入する。切替弁59を閉弁することによって、意図せずに、差圧検出部50にパージガスが流れることを防止することができる。
次いで、S330では、ECU100は、S328から所定期間が経過した後、昇圧部58を開弁から閉弁に切り替える。S330での所定期間は、パージガスが還流経路52に流入し、還流経路52にパージガスが充填される期間である。
S330で昇圧部58を閉弁すると、ポンプ54の下流側の圧力が上昇する。次いで、S20において、ECU100は、差圧センサ56を用いて、ポンプ54の上下流の差圧を検出する。次いで、S332において、S320で検出済みの差圧P3とS20で検出済みの差圧P4とを用いて、図3のS22と同様の手法で、パージ濃度を特定して、S24,S26に進む。なお、S24でNO(即ちエンジン2が停止されていない)場合、S20に戻る。
上記の濃度特定処理では、ECU100は、実機で差圧P3を検出することができるため、差圧P3を予め格納しなくて済む。
なお、本実施例の昇圧部58は、第2実施例と同様に絞りであってもよいし、第3実施例と同様に可変絞りであってもよい。
(第5実施例)
第1実施例と異なる点を説明する。図9に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、差圧検出部50を備えていない。キャニスタ19は、ポート19a,19b,19cを有する一方、ポート19g,19hを有していない。ポンプ154及び差圧センサ156aは、パージ経路24に配置されている。差圧センサ156aは、ポンプ154の上下流の差圧を検出する。
本実施例では、図10に示す濃度特定処理が実行される。濃度特定処理は、エンジン2が始動されると開始される。濃度特定処理が開始されるタイミングでは、制御弁26は閉弁されている。本処理では、まず、S412において、ECU100は、S12と同様に、ポンプ154を所定の回転数で動作させる。この結果、ポンプ154の下流側で圧力が上昇する。即ち、本実施例では、制御弁26が「昇圧部」の一例である。次いで、S414において、ECU100は、差圧センサ156aを用いて、ポンプ154の上下流の差圧P4を検出する。次いで、S416では、ECU100は、S22と同様の手法で、パージ濃度を特定する。
次いで、S418では、ECU100は、S416で特定済みのパージ濃度を用いて、パージ条件が成立しているか否かを判断する。パージ条件が成立していない場合(S418でNO)、S414に戻る。一方、パージ条件が成立している場合(S418でYES)、S420では、ECU100は、S416で特定済みのパージ濃度を用いて、制御弁26のデューティ比を決定し、制御弁26を制御する。次いで、S422では、ECU100は、デューティ制御されている制御弁26が、閉弁状態になるまで待機する。制御弁26が閉弁状態では、ポンプ154の動作によって、ポンプ154の下流側の圧力が上昇する。S424では、ECU100は、差圧センサ156aを用いて、差圧を検出する。次いで、S426では、ECU100は、S424で検出済みの差圧を用いて、S414と同様に、パージ濃度を特定する。次いで、S428では、図5のS24と同様に、エンジン2が停止されているか否かを判断する。エンジン2が停止されていない場合(S428でNO)、S418に戻る。一方、エンジン2が停止されている場合(S428でYES)、S430において、ECU100は、ポンプ154を停止して、濃度特定処理を終了する。
この構成によれば、パージ経路24とは別に、差圧検出部50を配置しなくてもよい。また、ポンプ154は、パージ処理において、パージガスを吸気経路34に送出する役割を果たす。これにより、吸気経路34内に十分な負圧が発生していない状況においても、ポンプ154を用いて、パージガスを吸気経路34に供給することができる。
また、本実施例では、パージ処理中に、制御弁26が閉弁状態のタイミングで、パージ濃度が検出されている。この構成によれば、パージ処理中に検出されたパージ濃度を用いて、制御弁26をデューティ制御することができる。
本実施例の変形例として、図11に示すように、差圧センサ156aに替えて、圧力センサ156bを備えていてもよい。この場合、濃度特定処理のS416及びS426では、ポンプ154の下流側の圧力を検出してもよい。ポンプ154の上流側は大気圧である。ECU100には、予め大気圧が格納されている。なお、ECU100は、大気圧センサを備えていてもよい。ECU100は、圧力センサ156bと大気圧との差を差圧として算出してもよい。
あるいは、別の変形例として、図12に示すように、蒸発燃料処理装置20は、循環経路157と絞り158と、を備えていてもよい。循環経路157では、一端がポンプ154の下流側のパージ経路24に接続されており、他端がポンプ154の上流側のパージ経路24に接続されている。この構成では、濃度特定処理のS412において、ポンプ154が動作されると、パージガスは、循環経路157の一端から他端側に向けてパージガスが流れる。この結果、パージガスがポンプ154の上下流と循環経路157とを循環する。循環経路157には、絞り158が配置されているために、ポンプ154の上下流で差圧が発生する。この構成によれば、パージガスを循環させることによって、ポンプ154周辺でパージ濃度を均一化することができる。本変形例では、制御弁26と絞り158が「昇圧部」の一例である。
(第6実施例)
第5実施例と異なる点を説明する。図13に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、ポンプ154の下流側のパージ経路24に接続される分岐経路254を備える。分岐経路254には、開閉弁252が配置されている。開閉弁252は、ECU100によって開閉制御される電磁弁である。ECU100は、開閉弁252を開弁することによって分岐経路254を連通する状態と、閉弁することによって分岐経路254を閉塞する状態と、に切り替える。
分岐経路254の開閉弁252よりも下流側には、連通経路18が接続されている。即ち、分岐経路254は、連通経路18を介して、タンクポート19cに連通している。ポンプ154が動作している状態で、制御弁26を閉弁し、開閉弁252を開弁することによって、パージガスは、パージ経路24から分岐経路254に流入し、分岐経路254からキャニスタ19に戻る。本実施例では、図3と同様の濃度特定処理を実行することによって、パージ濃度を特定することができる。なお、S16、S18では、昇圧部58の電磁弁に替えて、開閉弁252が開閉される。本実施例では、制御弁26と開閉弁252が「昇圧部」の一例である。
あるいは、本実施例では、図10と同様の濃度特定処理を実行することによって、パージ濃度を特定することができる。なお、S414,S424では、開閉弁252は開弁される。その他の処理では、開閉弁252は閉弁される。
本実施例の変形例として、図14に示すように、開閉弁252に替えて、絞り256と逆止弁258とを、備えていてもよい。逆止弁258は、絞り256からキャニスタ19に向かって気体が流れることを許容する一方、キャニスタ19から絞り256に向かって気体が流れることを禁止してもよい。本変形例では、図10と同様の濃度特定処理を実行してもよい。本変形例では、制御弁26と絞り256とが「昇圧部」の一例である。
(第7実施例)
第6実施例と異なる点を説明する。図15に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、分岐経路254がキャニスタ19のリターンポート19iに接続されている。リターンポート19iは、パージポート19bとタンクポート19cとの間に配置されている。パージポート19bとリターンポート19iとの間には、第3仕切板19jが配置されている。第3仕切板19jは、パージポート19bとリターンポート19iの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。
(第8実施例)
第6実施例と異なる点を説明する。図16に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置20は、ポンプ154の下流側のパージ経路24に接続される分岐経路354を備える。分岐経路354は、三方弁352を介して、大気ポート19aに接続されている。三方弁352は、分岐経路354の中間位置に配置されている。三方弁352は、ECU100によって制御されることによって、分岐経路354を、大気ポート19aを介してキャニスタ19に連通するとともに、大気連通路356をキャニスタ19から遮断する循環状態と、大気連通路356を、大気ポート19aを介してキャニスタ19に連通するとともに、分岐経路354をキャニスタ19から遮断する大気連通状態とに、選択的に切り替わる。
ポンプ154が動作している状態で、制御弁26を閉弁し、三方弁352を循環状態にすることによって、パージガスは、パージ経路24から分岐経路354に流入し、分岐経路354からキャニスタ19に戻る。本実施例では、図3と同様の濃度特定処理を実行することによって、パージ濃度を特定することができる。なお、三方弁352は、濃度特定処理が開始されるタイミングでは、大気連通状態とされている。また、S16では、昇圧部58の電磁弁に替えて、三方弁352が循環状態にされ、S18では、昇圧部58の電磁弁に替えて、三方弁352が大気連通状態にされる。本実施例では、制御弁26と三方弁352が「昇圧部」の一例である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
(1)第5実施例では、蒸発燃料処理装置20は、図10の濃度特定処理において、S422〜S426の処理を実行しなくてもよい。即ち、パージ処理中に制御弁26が閉弁されるタイミングで、差圧を検出しなくてもよい。
(2)上記の各実施例では、差圧センサ56等に替えて、圧力センサをポンプ54等の上流側と下流側のそれぞれに配置してもよい。この場合、ECU100は、2個の圧力センサによって検出される圧力の差を算出することによって、差圧を検出してもよい。
(3)上記の各実施例では、ECU100には、予め実験で特定されたデータマップが格納されている。これとともに、あるいは、これに替えて、ECU100には、予め実験又はシミュレーションによって特定されたパージ濃度を算出するための数式が格納されていていてもよい。
(4)上記の各実施例では、ECU100が、濃度特定処理を実行している。しかしながら、蒸発燃料処理装置20は、エンジン2等を制御するECU100とは別に、濃度特定処理を実行するための処理装置(例えばCPU及びメモリ)を備えていてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。