以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、数量、材質などは、説明のための例示であって、搬送装置を適用するエレベータの仕様により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、実施形態のカウンタウェイトの搬送装置を適用するエレベータ10において、搬送装置30を設置し、かつ、揚重装置12をカウンタウェイト13に接続した状態を示す断面図である。
エレベータ10は、昇降路11内で主ロープ16によって乗りかご17に連結されたカウンタウェイト13を備える。主ロープ16は、建物の上部の機械室18に配置される巻き上げ機19によって駆動され、乗りかご17及びカウンタウェイト13が昇降移動する。乗りかご17は、かごガイドレール20によって上下方向に案内される。カウンタウェイト13は、カウンタレール21によって上下方向に案内される。
図2は、図1に示すカウンタウェイト13において、カウンタレール21(図1)から取り外された構成と、搬送装置30及び乗場搬送台60とを示す斜視図である。図1、図2では、エレベータ10の昇降路11から乗場22(図1)を見た場合の横方向である左右方向をXで示し、奥行方向をYで示し、X、Yに対し直交する上下方向をZで示す。昇降路11の底部であるピット11aには、左右方向Xに離れて2本のカウンタレール21(図1)が立設される。カウンタレール21は、カウンタウェイト13のガイドレールに相当する。
カウンタウェイト13は、略矩形状の枠体14と、複数の錘15とを含み、枠体14と複数の錘15とが一体化されている。錘15は、直方体状であり、枠体14の内部に上下に積層される。枠体14は、鉄等の金属により形成される。錘15は、鉄等の金属、またはコンクリートにより形成される。
エレベータの使用状態において、カウンタウェイト13は2本のカウンタレール21(図1)の間に配置され、上下方向Z両端部で左右方向X両端部に取り付けられたガイドシュー(図示せず)によって、各カウンタレール21に昇降可能に支持される。
具体的には、枠体14の上端面の左右方向X両端部と、下端面の左右方向X両端部とには、ガイドシューが固定される。ガイドシューは、左右方向Xの外側に向く面に上下方向の溝(図示せず)が形成され、その溝内にカウンタレール21の上下方向の板部が挿入される。これによって、カウンタウェイト13の昇降移動が案内される。カウンタウェイト13の上端部には複数の主ロープ16が、ロッドを有するロープソケット13aを介して接続される。図1では、複数の主ロープ16を、1本の主ロープ16で簡略化して示している。
また、カウンタウェイト13の枠体14において、下側面の左右方向X中央部には、スペーサ13bがネジ結合によって固定される。ピット11a上には、カウンタウェイト13の落下の際の衝撃を緩和する緩衝器(図示せず)が設けられる。スペーサ13bは、カウンタウェイト13が最下降した際に、この緩衝器とのクリアランスを調整するために設けられる。
このようなカウンタウェイト13を有する構成では、既設のカウンタウェイト13を新規のカウンタウェイトに交換する場合に、既設のカウンタウェイト13を昇降路11内から乗場22側に搬出する必要がある。このとき、実施形態では、次に説明する搬送装置30を用いる。
また、後述する図5で示すように、カウンタウェイト13の使用状態での左右方向Xにおける長さX1は、一般的に、乗場出入り口24の左右方向Xにおける長さX2より大きい(X1>X2)。例えば、カウンタウェイト13の左右方向長さX1が900mmである場合に、乗場出入り口24の左右方向長さX2は800mmである。カウンタウェイト13の左右方向長さX1が1200mmである場合に、乗場出入り口24の左右方向長さX2は1000mmである。これにより、既設のカウンタウェイト13を乗場出入り口24から搬出するときには、カウンタウェイト13を水平方向である左右方向Xに対し斜めに傾けて乗場出入り口24を通過させる必要がある。搬送装置30は、搬送作業性を高めるために、カウンタウェイト13を乗場出入り口24において斜めに傾けて通過させる。
図1は、カウンタウェイト13の乗場22への搬出時の準備ステップにおける状態を示している。図2から図4を用いて搬送装置30を説明する。
図3Aは、図2の矢印A方向に見た図である。図3Bは、乗場22へのカウンタウェイト13の搬出時において、搬送装置30を用いてカウンタウェイト13を引き上げる場合における引上げ初期時を示している図3Aに対応する図である。図3Cは、図3Bの状態からカウンタウェイト13を引き上げた場合における引上げ中間時を示している図3Aに対応する図である。図4は、(a)が図2のB−B断面図であり、(b)が(a)のC部拡大図であり、(c)が(a)のD部拡大図である。
図2、図3A、図3B、図3Cを参照して、搬送装置30は、枠体14と錘15とが一体化されたカウンタウェイト13を昇降路11内と、ピット11aより上側の乗場22との間で搬送するために用いられる。搬送装置30は、基台31と、基台31の上側に支持された2つの搬送レール34a、34bと、2つの油圧ジャッキ40とを備える。
基台31は、矩形状で上下方向の厚みが比較的大きい枠部32と、枠部32の下側面の四隅に連結された脚部33とを含む。基台31は、ピット11a上に配置される。基台31は鉄などの金属、またはベニヤ板の合板により形成することができる。ベニヤ板の合板は、コンパネと呼ばれる。基台31をコンパネにより形成した場合には、基台31を鉄により形成する場合に比べて多い位置に脚部33を形成する。具体的には、枠部32の下側四隅に脚部33を設ける他、枠部32の左右方向X及び奥行方向Yのそれぞれ中央部の下側と、油圧ジャッキ40の下部との連結部の下側とを含む数ヶ所位置に脚部33を追加で形成する。この構成では、基台31を鉄で形成する場合に比べて軽量にできるので、ピット11aに搬送装置30を搬送する作業を容易に行える。このとき、ピット11aには、搬送装置30が分解した状態で配置されてもよい。
2つの搬送レール34a、34bは、基台31の上側において、左右方向Xに離れて配置される。各搬送レール34a、34bは、基台31の上側において、奥行方向Yに対し傾いた状態で、左右方向Xに沿う軸線を中心に揺動可能に支持される。具体的には、搬送レール34a、34bは、一直線方向に伸びる長尺な底板35と、底板35の上側に連結されたガイド壁36とをそれぞれ有する。そして、2つの搬送レール34a、34bの底板35の下側面において、長手方向複数位置に支持板37が連結されることにより、2つの搬送レール34a、34bが結合される。このとき、2つの搬送レール34a、34bの底板35の上面は、仮想平面上に位置する。各搬送レール34a、34bは、例えば鉄等の金属板により形成される。
また、各搬送レール34a、34bは、長手方向一方側(図2の左斜め上側)が他方側(図2の右斜め下側)より上側になるように傾斜している。そして、2つの搬送レール34a、34bの底板35は、一方の(図2の紙面の表側の)搬送レール34aの底板35が、他方の(図2の紙面の裏側の)搬送レール34bの底板35より、上側に位置するように、左右方向Xに対して傾斜している。以下では、一方の搬送レール34aを上側搬送レール34a、他方の搬送レール34bを下側搬送レール34bと記載する場合がある。また、各搬送レール34a、34bは総称して搬送レール34と記載する場合がある。
そして、基台31の枠部32の上面と、各搬送レール34の下側面との間にはそれぞれ油圧ジャッキ40が配置される。各油圧ジャッキ40は、シリンダ及びロッドを含むシリンダ機構(図示せず)と、シリンダへの圧油の導入とシリンダからの圧油の排出とを切り替える切替部(図示せず)と、切替部の切替状態を指示する操作部(図示せず)とを含む。操作部は基台31に取り付けられる。そして、作業者が操作部を操作することによって、各油圧ジャッキ40が連動して伸び縮みするように構成される。これにより、作業者が操作部を操作することにより、各搬送レール34の水平方向である奥行方向に対する傾斜角度が変更される。このように、油圧ジャッキ40は、水平方向に対して各搬送レールの傾斜角度を変更する。2つの搬送レール34の奥行方向Yに対する傾斜角度が変化した場合でも、左右方向Xに対する傾斜角度は一定になるように、各油圧ジャッキ40は連動する。これにより、後述のようにカウンタウェイト13を揚重装置12(図1)で吊り下げた状態でそのカウンタウェイト13を搬送装置30に配置する際に、カウンタウェイト13が搬送装置30上に強く打ち付けられることを防止できる。
図5は、乗場搬送台60を乗場22側から昇降路11側に見た図である。乗場搬送台60は、乗場22の乗場出入り口24付近に設置される。乗場搬送台60は、カウンタウェイト13を昇降路11内から乗場22に搬出する際に、搬送装置30に連続させてカウンタウェイト13を乗場22で搬送するために用いられる。乗場搬送台60の上面は、図2に示す搬送装置30を構成する各搬送レール34の底板35の上面と同様に、左右方向Xに対し傾斜する。そして、乗場搬送台60の上面と各搬送レール34の底板35の上面とは一致する。また、乗場搬送台60の上面の上端と上側搬送レール34aの底板35の上面の上端とは一致し、乗場搬送台60の上面の下端と下側搬送レール34bの底板35の上面の下端とは一致する。乗場搬送台60の詳細な構成は後で説明する。次に、この乗場搬送台60の上面の傾斜を示す図5を用いて、各搬送レール34の傾斜角度の具体例を説明する。
乗場出入り口24にカウンタウェイト13を通過させるためには、乗場出入り口24の左右方向寸法X2より、乗場出入り口24でのカウンタウェイト13の左右方向長さD1が小さくなるようにする必要がある。このために、2つの搬送レール34a、34bのうち、上側搬送レール34aの底板35の上端を下側搬送レール34bの底板35の下端より、所定の高さH1以上に高くする。例えば、乗場出入り口24の左右方向寸法X2が800mmであり、搬送装置30のガイド壁の外側面の間隔L1が900mmである場合には、高さH1を幾何学的に算出される値以上の413mm以上とすることが好ましい。また、搬送装置30上のカウンタウェイト13の形状によっては、乗場出入り口24において、図5のカウンタウェイト13の下端部において、左右方向端部の上端U1が、下側搬送レールのガイド壁の外側面の上端位置U2より外側にはみ出す可能性がある。この場合には、その上端U1が上端位置U2に対して外側へはみ出る量を考慮して、ガイド壁36が乗場出入り口24に干渉しないように、搬送装置30の左右方向Xに対する傾きを大きくする。なお、図5の乗場搬送台60の上面の左右方向に対する傾きに対して、図4の各搬送レール34の左右方向に対する傾きが緩やかとなっているが、実際には、互いの傾きは一致させる。
また、図2から図4に戻って、搬送装置30は、一方側ローラ42、他方側第1ローラ44及び他方側第2ローラ46を、それぞれ複数ずつ含む。これらの各ローラ42,44,46によって、後述するように2つの搬送レール34の上側に配置されたカウンタウェイト13を、比較的小さい力で上側の乗場22まで引っ張り上げることが可能である。
具体的には、上側搬送レール34aの底板35の長手方向複数位置には矩形状の貫通孔35a(図4)が形成され、各貫通孔35aの内側に、対応する一方側ローラ42が配置される。一方側ローラ42は、中心部に軸部42aが固定され、その軸部42aの両端が底板35の貫通孔35aの周辺部に回転可能に支持される。これによって、複数の一方側ローラ42が上側搬送レール34aの底板35の長手方向複数位置に回転可能に支持される。このとき、各搬送レール34の上側にカウンタウェイト13が配置された状態で、複数の一方側ローラ42の一部または全部がカウンタウェイト13の幅方向一端部(図3Bの左端部)の下側面と面する。そして、カウンタウェイト13が、複数の一方側ローラ42の上で各一方側ローラ42を回転させながら、搬送レール34の長手方向に沿って移動可能に構成される。なお、一方側ローラ42は、軸部42aの両端が玉軸受またはころ軸受を介して底板35に対し回転可能に支持される構成としてもよい。
複数の他方側第1ローラ44も一方側ローラ42と同様に、下側搬送レール34bの底板35の長手方向複数位置に回転可能に支持される。このとき、他方側第1ローラ44の軸部44aは、この底板35の貫通孔35aの周辺部に回転可能に支持される。また、各搬送レール34の上側にカウンタウェイト13が配置された状態で、複数の他方側第1ローラ44の一部または全部がカウンタウェイト13の幅方向他端部(図3Bの右端部)の下側面と面する。
また、下側搬送レール34bのガイド壁36において、他方側第1ローラ44と長手方向の同位置である長手方向複数位置には、矩形状の貫通孔が形成され、各貫通孔の内側には、対応する他方側第2ローラ46が配置される。他方側第2ローラ46は、中心部に軸部46aが固定され、その軸部46aの両端がガイド壁36の貫通孔の周辺部に回転可能に支持される。これによって、複数の他方側第2ローラ46が下側搬送レール34bのガイド壁36の長手方向複数位置に回転可能に支持される。このとき、各搬送レール34の上側にカウンタウェイト13が配置された状態で、複数の他方側第2ローラ46の一部または全部がカウンタウェイト13の幅方向他端部(図3Bの右端部)の右側面と面する。そして、カウンタウェイト13が、複数の他方側第2ローラ46の側方で各他方側第2ローラ46を回転させながら、搬送レール34の長手方向に沿って移動可能に構成される。
カウンタウェイト13の搬送時において、カウンタウェイト13の下側面は、一方側ローラ42と他方側第1ローラ44とに押し付けられ、カウンタウェイト13が移動することによって、一方側ローラ42及び他方側第1ローラ44が回転する。このとき、下側搬送レール34bが上側搬送レール34aより下側に位置するように各搬送レール34a、34bが傾斜しているので、カウンタウェイト13は、下側搬送レール34bのガイド壁36に向かって滑り落ちる可能性がある。上記の構成では、この場合でも、カウンタウェイト13の枠体の右側面が他方側第2ローラ46に押し付けられ、カウンタウェイト13の移動によって他方側第2ローラ46が回転する。これにより、カウンタウェイト13の枠体の右端部が直接にガイド壁36に当たってカウンタウェイト13の搬送時の摩擦抵抗が大きくなることを防止できる。
さらに、搬送装置30は、2つの搬送レール34の上側に配置されたカウンタウェイト13を各搬送レール34に沿って移動させる移動手段50を備える。移動手段50は、2つの搬送レール34の間に配置された2つの上側引っ張り機構51と、左右方向Xにおいて2つの上側引っ張り機構51の間に設けられた下側引っ張り機構55とを備える。各上側引っ張り機構51は、2つの搬送レール34の上側に配置されたカウンタウェイト13を上側に引っ張る。一方、下側引っ張り機構は、2つの搬送レール34の上側に配置されたカウンタウェイト13を下側に引っ張る。
具体的には、各上側引っ張り機構51は、長尺で一直線状に伸びるフックレール52と、フックレール52に摺動可能に支持されたリフトフック53と、上側電動チェーンブロック54とを含む。フックレール52は、2つの搬送レール34の間で、各搬送レール34と平行に並ぶように、複数の支持板37に掛け渡されて固定される。
図6は、(a)が、上側電動チェーンブロック54(図2)が接続されたリフトフック53とフックレール52との係合状態を示す斜視図であり、(b)が(a)のE−E断面図である。図6に示すように、フックレール52は、長尺な一直線状に伸びる板部52aと、板部52aの両端に連結された一対のレール部52bとを有する。各レール部52bは断面L字形であり、板部52aの全長にわたって伸びる。一対のレール部52bの先端部は、内向き、すなわち一対のレール部52bで向き合う方向に曲げられる。
リフトフック53は、矩形の平板状のベース部53aと、ベース部53aの長手方向他端部(図6(a)の紙面の表側端部)から立設する平板状の押圧部53bとを有する。押圧部53bにおいて、ベース部53aとの連結部には幅が小さくなった首部が形成されることにより、押圧部53bの下端部の左右方向両側面には、溝部53cがそれぞれ形成される。各溝部53cには、フックレール52のレール部52bの先端部が挿入されて係合する。これによって、リフトフック53は、フックレール52において、長手方向に摺動可能に構成される。
一方、上側電動チェーンブロック54のうち、巻き上げモータを含む本体部54aは、フックレール52の上端部の下側面に固定される。そして、本体部54aからこの下側面を貫通して上側にチェーン54bが引き出され、そのチェーン54bの先端部がリフトフック53の先端部に接続されている。
フックレール52の長手方向他端部(図2の右下端部)には、リフトフック53の下方への移動を制限するための図示しないストッパが設けられる。
このような上側引っ張り機構51では、リフトフック53の厚み方向一方面(図2の左側面)に対し、各搬送レール34の上側に配置されたカウンタウェイト13の長手方向他側面(図3Bの下側面)の左右方向Xに離れた2個所位置が押し付けられて係合する。この状態で、各上側電動チェーンブロック54を駆動させて各リフトフック53を引き上げることにより、カウンタウェイト13が各搬送レール34の長手方向に沿って斜め上側に引き上げられる。
また、下側引っ張り機構55は、下側電動チェーンブロック56と、下側電動チェーンブロック56のチェーン57の先端に接続されたブラケット58とを含む。下側電動チェーンブロック56のうち、巻き上げモータを含む本体部56aは、基台31の枠部32の奥行方向Y一方面(図2の右側面)に固定される。ブラケット58は、矩形の鉄板であり、複数の貫通孔が形成される。そして、このブラケット58は、カウンタウェイト13の長手方向他端面に固定される。
具体的には、上記のようにカウンタウェイト13の使用状態で、枠体14の下側面にはスペーサ13b(図2)がネジ結合で固定されている。カウンタウェイト13の搬送時において、そのスペーサ13bを枠体14から取り外した状態では、スペーサ結合用のネジ孔が枠体14の下側面の幅方向中央部に露出する。このとき、そのネジ孔にブラケット58の貫通孔を一致させて、ボルト(図示せず)によって、枠体14にブラケット58が結合固定される。この構成によれば、ブラケット結合用のネジ孔をカウンタウェイト13に新たに形成する必要がない。
そして、カウンタウェイト13の搬送時には、各搬送レール34の上側にカウンタウェイト13を配置した状態で、下側電動チェーンブロック56を駆動させてブラケット58を下側に引っ張る。これにより、カウンタウェイト13に各搬送レール34に沿って下側に向かう方向に引っ張り力が付与される。
そして、各上側引っ張り機構51によりカウンタウェイト13が搬送レール34に沿って上側に引っ張られ、下側引っ張り機構55によりカウンタウェイト13が搬送レール34に沿って下側に引っ張られる。上側引っ張り機構51及び下側引っ張り機構55の引っ張り力を調整することにより、カウンタウェイト13に下側に引っ張り力を付与しながら、カウンタウェイト13が2つの搬送レール34の長手方向に沿って斜め上側に、適切な移動速度で搬送される。これによって乗場22の乗場出入り口24(図5)付近に後述する乗場搬送台60が設置された状態で、搬送装置30から乗場搬送台60にカウンタウェイト13を移動させる場合に、カウンタウェイト13が乗場搬送台60に強く打ち付けられることを防止できる。
次に、図2と図5を用いて乗場搬送台60を説明する。乗場搬送台60は、乗場22上に配置される。乗場搬送台60は、乗場22から昇降路11側に見た形状が略三角形であり、奥行方向Yに伸びている。乗場搬送台60の上面は、搬送装置30の各搬送レール34の底板35の上面と同様に傾斜する。また、乗場搬送台60の左右方向X両端部には、ガイド壁61が形成される。そして、乗場出入り口24において、乗場搬送台60を搬送装置30に隣接配置した状態で、乗場搬送台60の上面が搬送装置30の各搬送レール34の底板35の上面と一致するようにしている。また、この状態で、乗場搬送台60のガイド壁61は、搬送装置30の各搬送レール34のガイド壁36の上端部と一致する。乗場搬送台60は、奥行方向Yについての長さが1.5m程度であり、カウンタウェイト13の長さに合わせて複数台が連結されて形成されてもよい。
さらに、乗場搬送台60の上面の左右方向X両端部の奥行方向Y複数位置には、一方側ローラ62及び他方側第1ローラ63がそれぞれ回転可能に支持される。また、乗場搬送台60の2つのガイド壁61のうち、下側に位置するガイド壁61の奥行方向Y複数位置には、他方側第2ローラ64が回転可能に支持される。乗場搬送台60の一方側ローラ62、他方側第1ローラ63、及び他方側第2ローラ64は、搬送装置30の一方側ローラ42、他方側第1ローラ44、及び他方側第2ローラ46と同様である。また、乗場搬送台60の下側部分は、コンパネにより形成してもよい。このとき、乗場搬送台60の上端部分である、ガイド壁61、ローラ62,63,64を含む部分は、鉄製の板などの金属材料により形成されてもよい。そして、上端部分及び下側部分を組み合わせて乗場搬送台60を形成することにより、軽量化を図れる。例えば図5に示す乗場搬送台60において、ガイド壁61より下側部分である、奥行方向Yに見た形状が略三角形の基台部分をコンパネにより形成する。また、両端の2つのガイド壁61と、2つのガイド壁61の下端を連結する底板部とを金属板により一体に形成し、ローラ62,63,64を金属製とする。そして、基台部分、ガイド壁61、底板部及びローラ62,63,64を一体に組み合わせる。
図1、図2、図3Aから図3Cを用いて、カウンタウェイト13を昇降路11内と乗場22との間で搬送する搬送方法を説明する。まず、既設のカウンタウェイト13を昇降路11内から乗場22に搬出する搬出方法を説明する。
この搬出方法は、準備ステップと、搬送ステップである搬出ステップとを有する。「準備ステップ」では、図1に示すように、エレベータ10の乗りかご17を最上階の近くの適当な位置で停止させる。そして、作業者が、乗りかご17の下側に取り付けられている非常停止装置(図示せず)を手動で作動状態に設定し、乗りかご17を少しだけ下側に運転することでその非常停止装置を作動させる。非常停止装置は、その作動によって、かごガイドレール20を挟んで乗りかご17の上下方向の移動を阻止する。
そして、エレベータ10の機械室18に配置されている既設のマシンビーム等の基台25上にH鋼等の揚重用鋼材26を設置する。その後、揚重用鋼材26を固定部分として用いて、揚重用鋼材26に電動チェーンブロック等の揚重装置12を吊り下げてもよい。また、昇降路11内のカウンタレール21の固定部分に相当する固定ブラケット(図示せず)に揚重装置12を吊り下げてもよい。そして、カウンタウェイト13の上端部を揚重装置12で固定部分に対し吊り下げることで、カウンタウェイト13を揚重装置12で固定部分に接続する。このとき、昇降路11内において、機械室18の下側で機械室18の近くに作業ステージSを組んで揚重装置12の取付作業を行ってもよい。なお、この作業ステージSは省略してもよい。また、揚重装置12でカウンタウェイト13を吊り下げる場合に、昇降路11内に足場を組んで、足場に乗った作業者がカウンタウェイト13と揚重装置12との接続作業を行ってもよい。この足場は、カウンタウェイト13の錘を運ぶためには用いないので、簡易な足場とすることができる。
そして、主ロープ16が撓むようになるまで、揚重装置12でカウンタウェイト13を少しだけ引き上げて、その状態で主ロープ16をカウンタウェイト13の上端部から取り外す。その後、カウンタウェイト13に取り付けられているガイドシュー(図示せず)と、カウンタウェイト13の下側面に取り付けられているスペーサ13b(図2)とを取り外す。
次いで、搬送装置30を昇降路11のピット11a上に配置する。このとき、搬送装置30は、例えば基台31とそれ以外の部分とが分離可能な構成とし、ピット11a上で作業者が組み立ててもよい。そして、この状態で、各搬送レール34の奥行方向Yに対する傾斜角度が、90度近くに、例えば約80度等に大きくなるように、油圧ジャッキ40を伸長させる。そして、揚重装置12で吊り下げたカウンタウェイト13を徐々に下ろして、搬送装置30の各搬送レール34上に載せる。また、カウンタウェイト13の下側面の左右方向X両側部分を各上側引っ張り機構51のリフトフック53上に載せる。その後、カウンタウェイト13から揚重装置12を取り外す。
そして、各搬送レール34の奥行方向Yに対する傾斜角度が小さくなるように、油圧ジャッキ40を短縮させる。次いで、乗場22に配置した乗場搬送台60の上面の昇降路11側端部と、搬送装置30の各搬送レール34の上端部とが連続するように、乗場搬送台60に搬送装置30を隣接させる。この際、搬送装置30の各搬送レール34と乗場搬送台60とが少し離れていてもよい。このときにカウンタウェイト13から揚重装置12を取り外してもよい。
そして、図3Bに示すように、搬送装置30の下側引っ張り機構55のブラケット58をカウンタウェイト13の長手方向他側面(図3Bの下側面)に固定することにより、ブラケット58をカウンタウェイト13に接続する。また、搬送装置30の上側引っ張り機構51のリフトフック53にカウンタウェイト13が係合される。
次いで、搬出ステップでは、図3Cに示すように、移動手段50の駆動によって、カウンタウェイト13を2つの搬送レール34に沿って斜め上方向に搬送する。具体的には、各上側引っ張り機構51の上側電動チェーンブロック54(図2)と、下側引っ張り機構55の下側電動チェーンブロック56とを駆動する。また、上側引っ張り機構51及び下側引っ張り機構55の引っ張り力を調整する。これにより、下側電動チェーンブロック56でカウンタウェイト13に下側に引っ張り力を付与しながら、上側引っ張り機構51の上側電動チェーンブロック54でカウンタウェイト13を上側に引っ張り上げる。そして、カウンタウェイト13を2つの搬送レール34に沿って斜め上方向に乗場22に搬出する。このとき、乗場22に配置された乗場搬送台60と搬送装置30との連続部の角部において、カウンタウェイト13が乗場搬送台60側に落下する可能性があるが、下側引っ張り機構55によってカウンタウェイト13の移動速度を緩やかにできる。これにより、カウンタウェイト13を乗場搬送台60上にゆっくり下ろすことができ、カウンタウェイト13及び乗場搬送台60に大きな衝撃が加わることを防止できる。
乗場搬送台60にカウンタウェイト13が搬送された後では、作業者が、足場が安定した状態で、単独で、または複数人でカウンタウェイト13の枠体14から錘15を1つずつ取り出す。そして、すべての錘15を枠体14から取り外した後に、枠体14を搬送する。このとき、枠体14を解体してから搬送してもよい。乗場搬送台60にカウンタウェイト13が搬送された後で、カウンタウェイト13から揚重装置12を取り外してもよい。
上記の搬送装置30及びカウンタウェイト搬送方法は、カウンタウェイト13を昇降路11内と乗場22との間で搬送するときに、昇降路11内でカウンタウェイト13の枠体14から錘15を取り外した状態で搬送する必要がない。これにより、昇降路11内で枠体14が吊り下げられた状態で、枠体14から錘15を取り外したり、枠体14に錘15を組み込む必要がない。また、枠体14を乗場出入り口24に通すときに、枠体14は搬送装置30に沿って左右方向Xに対し傾くので、作業者が手作業で枠体14を傾ける必要がない。このため、カウンタウェイト13の搬送作業時の安全性及び作業効率を向上させることができる。
なお、上記では、カウンタウェイト搬送方法として、搬送装置30を用いて既存のカウンタウェイト13を昇降路11内から乗場22に搬出する搬出方法を説明した。一方、カウンタウェイト搬送方法として、新規のカウンタウェイト13を乗場22から昇降路11内に搬入する搬入方法において、搬送装置30を用いることもできる。具体的には、搬入方法は、準備ステップと、搬送ステップである搬入ステップとを含む。「準備ステップ」では、乗場22において、枠体14にすべての必要な錘15を一体化したカウンタウェイト13を用意する。そして、昇降路11のピット11a上に搬送装置30を配置し、その状態で、各搬送レール34の奥行方向Yに対する傾斜角度を調整した後、乗場22に配置した乗場搬送台60と搬送装置30とを連続させる。そして、乗場搬送台60にカウンタウェイト13を載せて、かつ、揚重装置12(図1)にカウンタウェイト13を接続する。
次いで、「搬入ステップ」では、乗場搬送台60上のカウンタウェイト13を押して搬送装置30の各搬送レール34上に移動させる。また、カウンタウェイト13において、使用状態で下側面となる長手方向他側面の左右方向X両側部分を各上側引っ張り機構51のリフトフック53上に載せて係合させる。また、カウンタウェイト13において使用状態で下側面となる長手方向他側面に下側引っ張り機構55のブラケット58を固定して接続する。
そして、各上側引っ張り機構51の上側電動チェーンブロック54と、下側引っ張り機構55の下側電動チェーンブロック56とを駆動する。また、上側引っ張り機構51及び下側引っ張り機構55の引っ張り力を調整する。これにより、各上側電動チェーンブロック54でカウンタウェイト13に上側に引っ張り力を付与しながら、下側引っ張り機構55の下側電動チェーンブロック56でカウンタウェイト13を下側に引き下げる。そして、カウンタウェイト13を2つの搬送レール34に沿って斜め下方向に搬送して、昇降路11の下側に搬入する。
昇降路11の下側にカウンタウェイト13が下ろされた後では、搬送装置30の各搬送レール34の奥行方向Yに対する傾斜角度を大きくするように油圧ジャッキ40を駆動させる。揚重装置12とカウンタウェイト13との接続は、搬送レール34の傾斜角度を大きくした後、またはその直前に行ってもよい。また、カウンタウェイト13にガイドシューを取り付ける。そして、各搬送レール34の傾斜角度が大きくなった状態で、揚重装置12でカウンタウェイト13を引っ張り上げて、2本のカウンタレール21にカウンタウェイト13をガイドシューで昇降可能に支持する。その後、一端に乗りかご17が接続された主ロープ16の他端を、カウンタウェイト13の上部に接続した後に、揚重装置12とカウンタウェイト13との接続を切り離す。これにより、カウンタウェイト13が主ロープ16で乗りかご17に接続される。
上記の搬入方法でも、搬出方法と同様に、カウンタウェイト13を昇降路11内と乗場22との間で搬送するときに、昇降路11内でカウンタウェイト13の枠体14から錘15を取り外した状態で搬送する必要がない。このため、カウンタウェイト13の搬送作業時の安全性及び作業効率を向上させることができる。
上記では、上側引っ張り機構51が2つの上側電動チェーンブロック54を含む場合を説明した。一方、上側引っ張り機構51は、搬送装置において、2つの搬送レール34の間の中央部に電動チェーンブロックの本体部が1つのみ固定される構成としてもよい。そして、電動チェーンブロックの本体部に接続された第1チェーンの先端部に2つの第2チェーンを分岐するように接続し、各第2チェーンを上記の図2の構成と同様に、2つのフックレール52のそれぞれの長手方向に沿うように配置する。この構成では、各第2チェーンの先端部にリフトフック53が接続される。
また、図1〜図6に示した搬送装置30を装置本体とし、その装置本体と、乗場搬送台60とから搬送装置を構成してもよい。このとき、上側引っ張り機構は、装置本体ではなく、乗場搬送台60の側に設けてもよい。例えば、乗場搬送台60の昇降路11と反対側の端部に電動チェーンブロックの本体部を取り付け、その本体部から引き出されたチェーンをカウンタウェイト13の長手方向一端部(図2の上端部)に接続してもよい。このとき、カウンタウェイト13は、昇降路11から乗場22への搬出時に、この電動チェーンブロックから構成される上側引っ張り機構によって乗場22側に引き上げられる。
また、上記では、移動手段50が上側引っ張り機構51及び下側引っ張り機構55を含む場合を説明したが、移動手段は、上側引っ張り機構51及び下側引っ張り機構55の一方のみを含む構成としてもよい。また、移動手段は、各搬送レール34に沿ってカウンタウェイト13を油圧シリンダロッド機構のロッドの伸長で押し上げる押し上げ機構としてもよい。
また、上記では、搬送装置30において、左側の搬送レール34aが右側の搬送レール34bよりも上側に位置するように左右方向Xに対し2つの搬送レール34が傾斜した場合を説明した。一方、左右方向Xに対し2つの搬送レールが傾斜する方向は、図1から図6に示した構成とは逆にしてもよい。