以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機と2台の室内機を有する空気調和システムを例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)および図2に示すように、本実施例における空気調和システム1は、屋外に設置される室外機2と、屋外に設置される水冷媒熱交換ユニット5と、空調空間である部屋300に設置される第1室内機3および第2室内機4を有する。第1室内機3は、部屋300の床面に設置されている。第2室内機4は、部屋300の壁面上部に設置されている。第1室内機3は、水冷媒熱交換ユニット5と水配管9で接続されている。第2室内機4は、室外機2と液管7で接続されるとともに、水冷媒熱交換ユニット5を介して室外機2とガス管8で接続されている。以上により、空気調和システム1の冷媒−水回路10が構成されている。
まず、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、第1膨張弁24と、バイパス開閉弁25と、逆止弁26と、液管7の一端が接続された閉鎖弁27と、ガス管8の一端が接続された閉鎖弁28と、室外ファン29を備えている。そして、室外ファン29を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒−水回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、図示しないインバータにより回転数が制御されることで、運転容量を可変できる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、四方弁22のポートaに吐出管61で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、四方弁22のポートcに吸入管65で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管61で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62で接続されている。ポートcは、上述したように圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管65で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁28と室外機ガス管64で接続されている。
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外ファン29の回転により室外機2内部に取り込まれた外気を熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbに冷媒配管62で接続され、他方の冷媒出入口は室外機液管63で閉鎖弁27に接続されている。
第1膨張弁24は、例えば電子膨張弁である。第1膨張弁24は、その開度が調整されることで、室外熱交換器23を流れる冷媒量を調節する。バイパス開閉弁25と逆止弁26は、室外機液管63における第1膨張弁24と閉鎖弁27の間と吸入管65を接続するバイパス管66に設けられている。バイパス開閉弁25を開くとバイパス管66に冷媒が流れ、バイパス開閉弁25を閉じるとバイパス管66における冷媒の流れが遮断される。逆止弁26は、バイパス管66における冷媒の流れ方向を、吸入管65に向かう方向のみに制限するように配置される。
室外ファン29は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン29は、図示しないファンモータによって回転することで室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を室外機2の図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ101と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度検出手段である吐出温度センサ111が設けられている。吸入管65には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ102と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ112とが設けられている。
室外機液管63における室外熱交換器23と第1膨張弁24の間には、室外熱交換器23から流出、または、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度を検知するための熱交温度センサ113が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ114が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納されている制御基板に搭載されている。図1(B)に示すように、室外機制御手段200は、CPU201と、記憶部202と、通信部203と、センサ入力部204を備えている。
記憶部202は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン29の制御状態等を記憶している。通信部203は、第1室内機3、第2室内機4、および水冷媒熱交換ユニット5と通信を行うためのインターフェイスである。センサ入力部204は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU201に出力する。
CPU201は、前述した室外機2の各センサでの検出結果をセンサ入力部204を介して取り込む。また、CPU201は、第1室内機3および第2室内機4から送信される制御に関わる信号を通信部203を介して取り込む。CPU201は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン29の駆動制御、四方弁22の切り換え制御や第1膨張弁24の開度制御、およびバイパス開閉弁25の開閉制御を行う。また、CPU201は、通信部203を介して後述する水冷媒熱交換ユニット5に備えられている往き温度センサ115や戻り温度センサ116の検出値を取り込むと共に、循環ポンプ53の駆動制御や第2膨張弁55の開度制御を行う。
次に、水冷媒熱交換ユニット5について説明する。水冷媒熱交換ユニット5は、水冷媒熱交換器51と、第2膨張弁52と、循環ポンプ53と、第1ガス管接続部54と、第2ガス管接続部55と、第1水配管接続部56と、第2水配管接続部57を備えている。そして、これら各装置が以下で詳述する冷媒配管や水配管で相互に接続されて、冷媒−水回路10の一部をなす水冷媒熱交換ユニット回路50を構成している。
水冷媒熱交換器51は、例えば二重管熱交換器であり、冷媒側流路51aと水側流路51bを有している。冷媒側流路51aは、水冷媒熱交換ユニット冷媒配管58に設けられている。水冷媒熱交換ユニット冷媒配管58は、一端が第1ガス管接続部54を介して室外機2側のガス管8に接続され、他端が第2ガス管接続部55を介して第2室内機4側のガス管8に接続されている。また、水側流路51bは、水冷媒熱交換ユニット水配管59に設けられている。水冷媒熱交換ユニット水配管59は、一端が第1水配管接続部56を介して、また、他端が第2水配管接続部57を介して水配管9に接続されている。水冷媒熱交換器51では、冷媒側流路51aを流れる冷媒と水側流路51bを流れる水とが熱交換する。
第2膨張弁52は、例えば電子膨張弁である。第2膨張弁52は、その開度が調整されることで、水冷媒熱交換器51の冷媒側流路51aを流れる冷媒量を調節する。循環ポンプ53は、能力可変型のポンプである。循環ポンプ53が駆動することにより、第2水配管接続部57を介して水冷媒熱交換ユニット5から水配管9に水が流出し、第1室内機3から第1水配管接続部56を介して水冷媒熱交換ユニット5に水が流入するように、水が循環する。
以上説明した構成の他に、水冷媒熱交換ユニット5には2つの水温センサが設けられている。図1(A)に示すように、水冷媒熱交換ユニット水配管59における水冷媒熱交換器51と第1水配管接続部56の間には、水冷媒熱交換器51の水側流路51bに流入する水温を検出する戻り温度センサ116が設けられている。また、水冷媒熱交換ユニット水配管59における水冷媒熱交換器51と第2水配管接続部57の間には、水冷媒熱交換器51の水側流路51bから流出する水温を検出する往き温度センサ115が設けられている。
次に、第1室内機3について説明する。第1室内機3は、第1室内熱交換器31と、入水側接続部32と、出水側接続部33と、第1室内ファン34を備えている。そして、第1室内ファン34を除くこれら各装置が第1室内機水配管35で接続されて、冷媒−水回路10の一部をなす第1室内機回路30を構成している。
第1室内熱交換器31は、第1室内機水配管35に設けられている。第1室内機水配管35は、一端が入水側接続部32を介して、また、他端が出水側接続部33を介して水配管9に接続されている。第1室内熱交換器31は、入水側接続部32および第1室内機水配管35を介して水配管9から第1室内熱交換器31に流入する水と、後述する第1室内ファン34の回転により第1室内機3内部に取り込まれた部屋300の空気を熱交換させる。
第1室内ファン34は樹脂材で形成されており、第1室内熱交換器31の近傍に配置されている。第1室内ファン34は、図示しないファンモータによって回転することで、第1室内機3の図示しない吸込口から第1室内機3の内部に部屋300の空気を取り込み、第1室内熱交換器31において水と熱交換した空気を第1室内機3の図示しない吹出口から部屋300へ吹き出す。
以上説明した構成の他に、第1室内機3の図示しない吸込口付近には、第1室内機3に流入する部屋300の後述する室内下部300aの空気の温度を検出する第1吸込温度センサ117が備えられている。
次に、第2室内機4について説明する。第2室内機4は、第2室内熱交換器41と、ガス側接続部42と、液側接続部43と、第2室内ファン44を備えている。そして、第2室内ファン44を除くこれら各装置が第2室内機冷媒配管45で接続されて、冷媒−水回路10の一部をなす第2室内機冷媒回路40を構成している。
第2室内熱交換器41は、第2室内機冷媒配管45に設けられている。第2室内機冷媒配管45は、一端がガス側接続部42を介してガス管8に接続され、また、他端が液側接続部43を介して液管7に接続されている。第2室内熱交換器41は、冷媒と、後述する第2室内ファン44の回転により第2室内機4の内部に取り込まれた部屋300の空気を熱交換させる。
第2室内ファン44は樹脂材で形成されており、第2室内熱交換器41の近傍に配置されている。第2室内ファン44は、図示しないファンモータによって回転することで、第2室内機4の図示しない吸込口から第2室内機4の内部に部屋300の空気を取り込み、第2室内熱交換器41において冷媒と熱交換した空気を第2室内機4の図示しない吹出口から部屋300へ吹き出す。
以上説明した構成の他に、第2室内機4には、各種センサが備えられている。第2室内機冷媒配管45におけるガス側接続部42と第2室内熱交換器41の間には、第2室内熱交換器41に流入あるいは第2室内熱交換器41から流出する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ118が設けられている。また、第2室内機冷媒配管45における液側接続部43と第2室内熱交換器41の間には、第2室内熱交換器41から流出あるいは第2室内熱交換器41に流入する冷媒の温度を検出する液側温度センサ119が設けられている。さらには、第2室内機4の図示しない吸込口付近には、第2室内機4に流入する部屋300の後述する室内上部300bの空気の温度を検出する第2吸込温度センサ120が備えられている。
次に、本実施形態の空気調和システム1の運転時における冷媒−水回路10での冷媒および水の流れや各部の動作について、図1および図2を用いて説明する。尚、以下の説明では、使用者が図2に示すリモコン400を操作して、第1室内機3および第2室内機4で暖房運転を行うよう指示した場合について説明する。
第1室内機3および第2室内機4で暖房運転を行う場合、図1(A)に示すように、四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、ポートbとポートcとが連通するよう切り換えられる。また、バイパス開閉弁25が閉とされる。また、水冷媒熱交換ユニット5の第2膨張弁52が全開とされるとともに、循環ポンプ53が起動される。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、第2室内熱交換器41および水冷媒熱交換器51が凝縮器として機能し、冷媒−水回路10において矢印で示す方向に冷媒および水が循環する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管64へと流れて閉鎖弁28を介してガス管8に流入する。ガス管8を流れる冷媒は、第1ガス管接続部54を介して水冷媒熱交換ユニット5に流入する。水冷媒熱交換ユニット5に流入した冷媒は、水冷媒熱交換ユニット冷媒配管58を流れて水冷媒熱交換器51の冷媒側流路51aに流入して水側流路51bを流れる水を加熱する。
水側流路51bを流れる際に加熱されて水冷媒熱交換器51から水冷媒熱交換ユニット水配管59に流出し、第2水配管接続部57を介して水配管9に流出した水は、入水側接続部32を介して第1室内機3に流入する。第1室内機3に流入した水は、第1室内機水配管35を介して第1室内熱交換器31に流入し、第1室内ファン34の回転によって第1室内機3内部に流入した部屋300の空気を加熱する。そして、第1室内熱交換器31で加熱された部屋300の空気が図示しない第1室内機3の吹出口から部屋300に吹き出される。第1室内熱交換器31から第1室内機水配管35に流出した水は、出水側接続部33を介して第1室内機3から水配管9に流出し、第1水配管接続部56を介して水冷媒熱交換ユニット5に流入し、水冷媒熱交換ユニット水配管59を流れて再び水冷媒熱交換器51に流入する。
一方、水冷媒熱交換器51の冷媒側流路51aから水冷媒熱交換ユニット冷媒配管58に流出した冷媒は、全開とされている第2膨張弁52を通過し、第2ガス側接続部55を介してガス管8に流出する。ガス管8からガス側接続部42を介して第2室内機4に流入した冷媒は、第2室内機冷媒配管45を流れて第2室内熱交換器41に流入する。
第2室内熱交換器41に流入した冷媒は、第2室内ファン44の回転によって第2室内機4内部に流入した部屋300の空気と熱交換して凝縮する。第2室内熱交換器41で加熱された部屋300の空気は、図示しない第2室内機4の吹出口から部屋300に吹き出される。このように、第1室内機3と第2室内機4の各々から加熱された空気が吹き出されることによって、部屋300の暖房が行われる。
第2室内熱交換器41から第2室内機冷媒配管45に流出した冷媒は、液側接続部43を介して液管7に流出し、液管7を流れて閉鎖弁27を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れる際に第1膨張弁24によって減圧されて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン29の回転により室外機2内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、四方弁22、吸入管65を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
次に、図1および図2を用いて、空気調和システム1が上述した暖房運転を行っているときに起こる問題と、この問題を解決する本発明の動作について説明する。第1室内機3と第2室内機4を駆動して暖房運転を行うとき、暖房運転開始直後は、部屋300の温度(以下、室温と記載)と使用者が定める設定温度(暖房運転時に目標となる室温)の温度差が大きい。この場合、2台の室内機で暖房運転を行う方が、いずれか1台の室内機のみ暖房運転を行う場合より室温が早く設定温度に到達するため、第1室内機3と第2室内機4を駆動して暖房運転を行うことが好ましい。
しかし、暖房運転開始から時間が経過して室温が設定温度に到達した後も、第1室内機3と第2室内機4で暖房運転を継続すれば、部屋300の上方空間に暖気が溜まり、使用者の頭部付近の温度が部屋300の下方空間(使用者の足元付近)の温度より高くなって使用者に不快感を与える恐れがある。また、室温が設定温度に達している状態で部屋300の上方空間に暖気が溜まることによって部屋300の上方空間の温度が設定温度以上となるような暖房運転では、省エネルギー性が低下している恐れがある。
そこで、本発明では、部屋300を上下領域に区分するとともに、下の領域(以下、室内下部と記載)に第1室内機3が、上の領域(以下、室内上部と記載)に第2室内機4が各々配置されるよう、仮想の境界線BLを設定する。また、各室内機で別個に設定温度が設定できるようにするとともに、第2室内機4の設定温度が第1室内機3の設定温度より所定温度(例えば3℃)以上低くなるように設定されるようにする。そして、室内上部の温度と第2室内機4の設定温度との温度差が所定の閾温度(例えば2℃)以上高いときは、第2膨張弁52の開度を絞ることで、第2室内機4の第2室内熱交換器41が蒸発器として機能するようにして、室内上部に溜まった暖気から熱を回収する熱回収運転を行う。
本実施形態の空気調和システム1では、図2に示すように、境界線BLを使用者が椅子に座った状態での頭部の高さ付近に設定し、部屋300における境界線BLより上の領域を室内上部300bとし、境界線BLより下の領域を室内下部300aとしている。また、以下の説明では、第1室内機3の第1吸込温度センサ117で検出した温度つまり室内下部300aの温度を第1室内機吸込温度Ts1、第2室内機4の第2吸込温度センサ120で検出した温度つまり室内上部300bの温度を第2室内機吸込温度Ts2、第1設定温度である室内下部300aの設定温度を室内下部設定温度Tpd、第2設定温度である室内上部300bの設定温度を室内上部設定温度Tpu、室内上部設定温度Tpuと第2室内機吸込温度Ts2の温度差をΔT、上述した閾温度差をTtとしている。
尚、境界線BLは上記の高さに限らず、使用者が床面に座った状態での頭部の高さや、使用者が立った状態での頭部の高さとしてもよい。また、使用者がリモコン400を操作して境界線BLを任意の高さに設定できるようにしてもよい。また、室内上部設定温度Tpuと室内下部設定温度Tpdは、使用者がリモコン400を操作して各々の設定温度を設定できるようにするが、室内上部設定温度Tpuは室内下部設定温度Tpdから所定温度低い温度以上の温度に設定できないように制限をかけてもよく、また、室内下部設定温度Tpdを設定すれば自動的に室内上部設定温度Tpuが室内下部設定温度Tpdから所定温度低い温度に設定されるようにしてもよい。
空気調和システム1が第1室内機3と第2室内機4を駆動して暖房運転を行っているとき、室外機制御部200のCPU201は、使用者が設定した室内上部設定温度Tpuと室内下部設定温度Tpdを第1室内機3と第2室内機4から通信部203を介して取り込んで記憶部202に記憶する。また、CPU201は、第1室内機3の第1吸込温度センサ117で検出した第1室内機吸込温度Ts1と、第2室内機4の第2吸込温度センサ120で検出した第2室内機吸込温度Ts2を通信部203を介して定期的に取り込んで時系列で記憶部202に記憶する。
CPU201は、第1室内機吸込温度Ts1や第2室内機吸込温度Ts2を取り込む度に、室内下部設定温度Tpdと第1室内機吸込温度Ts1の温度差、および、室内上部設定温度Tpuと第2室内機吸込温度Ts2の温度差をそれぞれ算出し、各温度差に応じて圧縮機21の回転数制御を行う。そして、第2室内機吸込温度Ts2から室内上部設定温度Tpuを減じた温度差ΔTが閾温度差Tt以上となれば、第2室内機4の第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させることで、室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収する熱回収運転を実行する。
具体的には、CPU201は熱回収運転を実行するとき、図3に示す温度差−パルス相関図800を用いて第2膨張弁52の開度を調整することで、第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させる。この温度差−パルス相関図800は、第2膨張弁52の弁口径や開口面積特性を考慮し、試験等を行って予め求められて記憶部202に記憶されているものである。ここで、第2膨張弁52の開口面積特性とは、第2膨張弁52に加えるパルス数(以下、パルス数Paと記載)を1パルス増減したときの第2膨張弁52の流路断面積の変化の割合を示すものであり、弁口径と合せて第2膨張弁52に固有の値である。
温度差−パルス相関図800は、縦軸が第2膨張弁52の図示しないステッピングモータに加えるパルス数Pa(単位:P)、横軸が温度差ΔT(単位:℃)となっている。この温度差−パルス相関図800において、温度差ΔTが閾温度差Tt未満の場合は、パルス数Paが第2膨張弁52の全開時に対応する最大パルス数Pmaxと定められており、温度差ΔTが閾温度差Tt以上の場合は、温度差ΔTが大きくなるにつれて、上述した第2膨張弁52の弁口径及び開口面積特性で決まる傾きαで、パルス数Paが減少するように定められている。そして、パルス数Paが減少して下限パルス数PLLとなれば、温度差ΔTに関わらずパルス数Paは下限パルス数PLLと定められている。
温度差ΔTが閾温度差Tt未満の場合は、第2室内機吸込温度Ts2が室内上部設定温度Tpuより高いもののその差が小さい、あるいは、第2室内機吸込温度Ts2が室内上部設定温度Tpuより低い。つまり、室内上部300bの温度が過剰に高くなっていないため、室内上部300bに滞留する暖気から熱回収を行う必要がない。従って、第2膨張弁52に最大パルス数Pmaxを加えて第2膨張弁52の開度を全開に維持して第2室内機4の第2室内熱交換器41を凝縮器として機能させることで、第1室内機3とともに第2室内機4も暖房運転を行わせる。
これに対し、温度差ΔTが閾温度差Tt以上の場合は、第2室内機吸込温度Ts2が室内上部設定温度Tpuより高く、室内上部300bの温度が過剰に高くなっている。このとき、図3の示す温度差−パルス相関図800を参照し温度差ΔTに応じたパルス数Paを第2膨張弁52に加えてこのパルス数Paに応じた第2膨張弁52の開度とすることで、第2室内機4の第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させて第2室内機4で室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収する。ここで、温度差ΔTが大きくなるにつれて第2膨張弁52に加えるパルス数を減少させているのは、温度差ΔTが大きいつまり室内上部300bに滞留する暖気から回収できる熱量が多い程、第2膨張弁52の開度を小さくして冷媒を減圧することで第2室内熱交換器41における蒸発温度を下げて、第2室内熱交換器41での吸熱量を上げるためである。
尚、下限パルス数PLLは次のように定められる。暖房運転時の設定温度には上限値と下限値が定められており、一般的には下限値16℃から上限値30℃の間で設定温度が定められるようになっている。本発明の空気調和システム1において第2室内機4で熱回収運転を行っているときに、室内上部設定温度Tpuが下限値(16℃)に定められているとき、蒸発器として機能する第2熱交換器41の蒸発温度は設定温度の下限値より低い温度、例えば、設定温度の下限値より2℃低い温度であればよく、これ以上蒸発温度を下げる必要がない。下限パルス数PLLは、第2熱交換器41の蒸発温度が上述した設定温度の下限値より低い温度とするときの第2膨張弁52の開度に対応するパルス数Paである。
次に、本実施形態の空気調和システム1に関わる処理について、図4および図5を用いて説明する。図4は、空気調和システム1の室外機制御部200のCPU201が行うメインルーチンに関する処理の流れを示し、図5は、空気調和システム1のサブルーチンでありCPU201が熱回収運転を行う際の処理の流れを示している。各図において、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、図4および図5では、本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、設定温度と室温の差に応じた圧縮機の回転数制御、冷媒温度に応じた膨張弁の開度制御等といった、空気調和システム1に関わる一般的な処理については、説明を省略する。
まず、図4を用いて空気調和システム1のメインルーチンに関する処理の流れについて説明する。空気調和システム1が運転を開始すると、CPU201は、使用者によって暖房運転が指示されたか否かを判断する(ST1)。暖房運転指示であれば(ST1−Yes)、CPU201は、暖房運転開始処理を実行する、あるいは、暖房運転制御を継続する(ST2)。ここで、暖房運転開始処理とは、空気調和システム1が起動して最初に暖房運転を行うときに、CPU201が行う処理である。具体的には、CPU201は、四方弁22を操作して冷媒−水回路10を図1(A)に示す状態つまり暖房サイクルとするとともに、圧縮機21や室外ファン29を起動し、また、通信部203を介して循環ポンプ53を起動するとともに第2膨張弁52の開度を全開として暖房運転制御を開始する。また、ST2において既に暖房運転を行っている場合は、冷媒−水回路10は暖房サイクルとなっているので、暖房運転制御を継続する。
次に、CPU201は、記憶部202に記憶している室内上部設定温度Tpuと最新の第2室内機吸込温度Ts2を読み出し、温度差ΔT=Ts2−Tpuを算出する(ST3)。前述したように、CPU201は、室内上部設定温度Tpuを暖房運転起動時に取り込んで記憶部201に記憶しており、これ以降使用者の指示により室内上部設定温度Tpuが変更される度に新たな室内上部設定温度Tpuを取り込んで記憶部201に上書き記憶する。
次に、CPU201は、算出した温度差ΔTが閾温度差Tt以上であるか否かを判断する(ST4)。算出した温度差ΔTが閾温度差Tt以上であれば(ST4−Yes)、CPU201は、後述するサブルーチンである熱回収運転制御を実行してST7に処理を進める。算出した温度差ΔTが閾温度差Tt以上でなければ(ST4−No)、CPU201は、通信部203を介して第2膨張弁52の開度を全開とする、あるいは、既に全開となっている場合はその状態を維持し(ST6)、ST7に処理を進める。前述したように、第2膨張弁52の開度を全開とした場合は、第1室内機3と第2室内機4とがともに暖房運転となる。
ST7において、CPU201は、使用者による運転切替指示があるか否かを判断する。ここで、運転切替指示とは、暖房運転から冷房運転または除湿運転へ切り替える、あるいは、冷房運転または除湿運転から暖房運転へ切り替えることである。運転切替指示があれば(ST7−Yes)、CPU201は、ST1に処理を戻す。運転切替指示がなければ(ST7−No)、CPU201は、使用者による運転停止指示があるか否かを判断する(ST8)。
運転停止指示があれば(ST8−Yes)、CPU201は、運転停止処理を行い(ST9)、処理を終了する。ここで、運転停止処理とは、圧縮機21と室外ファン29を停止するとともに第1膨張弁を全閉とし、通信部203を介して循環ポンプ53を停止するとともに第2膨張弁52を全閉として、空気調和システム1を停止させる処理である。運転停止指示がなければ(ST8−No)、CPU201は、現在の運転が暖房運転であるか否かを判断する(ST10)。現在の運転が暖房運転であれば(ST10−Yes)、CPU201は、ST2に処理を戻し、現在の運転が暖房運転でなければ(ST10−No)、CPU201は、ST12に処理を戻す。
尚、ST1において、暖房運転指示でなければ(ST1−No)、つまり、冷房運転指示あるいは除霜運転指示である場合は、CPU201は、冷房/除湿運転開始処理を実行する(ST11)。ここで、冷房/除湿運転開始処理とは、空気調和システム1が起動して最初に冷房運転あるいは除湿運転を行うときに、CPU201が行う処理である。具体的には、CPU201は、四方弁22を操作して図1(A)に示す破線の状態に切り換えて、冷媒−水回路10を冷房サイクルとする。そして、CPU201は、圧縮機21や室外ファン29を起動するとともに、通信部203を介して循環ポンプ53を起動し第2膨張弁52の開度を全開として冷房/除湿運転制御を開始し(ST12)、ST7に処理を進める。
次に、図5を用いて、空気調和システム1のサブルーチンである熱回収運転制御を行う際の処理の流れについて説明する。尚、以下の説明では、第1室内機3で使用者が要求した設定温度を実現するのに必要な熱量である暖房必要熱量をQ1、第2室内機4で回収できる熱量である回収可能熱量をQ2、室内下部300aの空気の比熱である室内下部空気比熱をCp1、室内上部300bの空気の比熱である室内上部空気比熱をCp2、室内下部300aの空気の密度である室内下部空気密度をρ1、室内上部300bの空気の密度である室内上部空気密度をρ2、使用者の風量指示に応じた第1室内ファン34の回転数をN1、使用者の設定した室内上部設定温度Tpuに応じた第2室内ファン44の回転数をN2、第1室内ファン34が回転数N1で回転しているときの室内下部300aの空気の体積流量である室内下部体積流量をV1、第2室内ファン44が回転数N2で回転しているときの室内上部300bの空気の体積流量である室内上部体積流量をV2、吐出温度センサ111で検出する圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度をTd、室内上部設定温度Tpuおよび室内下部設定温度Tpdに応じて定められる目標吐出温度をTdt、目標吐出温度Tdtに対し所定値(例えば、1℃)高い目標上限値をTdtU、目標吐出温度Tdtに対し所定値(例えば、1℃)低い目標下限値をTdtL、としている。
上記各値のうち、室内下部空気比熱Cp1と室内下部空気密度ρ1は、室内下部300aの温度によって変化する値であり、これら各値は、例えば、予め試験等を行って室内下部300aの温度と関連付けられて記憶部202に記憶されている。これら各値が必要なときは、CPU201は、第1吸込温度センサ117で検出した第1室内機吸込温度Ts1をセンサ入力部204を介して取り込んで室内下部300aの温度とし、これに対応する室内下部空気比熱Cp1と室内下部空気密度ρ1を記憶部202から読み出す。尚、室内下部空気比熱Cp1と室内下部空気密度ρ1は、上述した室内下部300aの温度に加えて、室内下部300aの湿度や気圧も考慮に入れて決定することで、より正確な値を得ることができる。
室内上部空気比熱Cp2と室内上部空気密度ρ2は、室内上部300bの温度によって変化する値であり、これら各値は、例えば、予め試験等を行って室内上部300bの温度と関連付けられて記憶部202に記憶されている。これら各値が必要なときは、CPU201は、第2吸込温度センサ120で検出した第2室内機吸込温度Ts2をセンサ入力部204を介して取り込んで室内上部300bの温度とし、これに対応する室内上部空気比熱Cp2と室内上部空気密度ρ2を記憶部202から読み出す。尚、室内上部空気比熱Cp2と室内上部空気密度ρ2は、上述した室内上部300bの温度に加えて、室内上部300bの湿度や気圧も考慮に入れて決定することで、より正確な値を得ることができる。
第1室内ファン34の回転数N1は、CPU201が第1室内ファン34の回転数N1を暖房運転起動時に第1室内機3から取り込んで記憶部201に記憶しているものであり、使用者の指示により回転数N1が変更される度に新たな回転数N1を取り込んで記憶部201に上書き記憶する。第2室内ファン44の回転数N2は、例えば、予め試験等を行って記憶部202に記憶されているPMV(Predicted Mean Vote、温冷感指標)を参照し、第2室内ファン44の回転によって生ずる風速と第2室内機吸込温度Ts2を用いて、使用者が不快と感じない風速となるように決定される。
室内下部体積流量V1と室内上部体積流量V2は、予め試験等を行って各室内ファンの回転数と関連付けられて記憶部202に記憶されている。吐出温度Tdは、吐出温度センサ111で検出しセンサ入力部204を介して定期的に取り込んで記憶部202に時系列で記憶されている。目標吐出温度Tdtは、例えば、予め試験等を行って室内上部設定温度Tpuと関連付けられて、目標上限値TdtUおよび目標下限値TdtLとともに記憶部202に記憶されている。
そして、暖房必要熱量Q1と回収可能熱量Q2は、上述した各値を用いて記憶部202に記憶された以下に示す式により算出される。
Q1=K1×Cp1×ρ1×V1×(Tpd−Ts1)・・・(数式1)
Q2=K2×Cp2×ρ2×V2×(Tpu−Ts2)・・・(数式2)
ここで、数式1におけるK1、および、数式2におけるK2は、各々が試験等を行って求められた補正係数である。また、暖房必要熱量Q1と回収可能熱量Q2の単位は、ワット(以降、[W]と記載)である。
CPU201は、熱回収運転制御を開始すると、メインルーチンのST3において算出した温度差ΔTに応じた第2膨張弁52に加えるパルス数Paを温度差−パルス相関図800から抽出し、通信部203を介して第2膨張弁52に抽出したパルス数Paを加えることで、第2膨張弁52を温度差ΔTに応じた開度とする(ST21)。
次に、CPU201は、記憶部202に記憶している室内下部設定温度Tpdと最新の第1室内機吸込温度Ts1を読み出す(ST22)。次に、CPU201は、メインルーチンのST3において読み出した室内上部設定温度Tpuに応じた回転数N2で第2室内ファン44を回転する(ST23)。具体的には、CPU201は、室内上部設定温度Tpuと関連付けられて記憶部202に記憶されている回転数N2を読み出し、通信部203を介して第2室内機4に回転数N2を送信することで、回転数N2で第2室内ファン44を回転するよう第2室内機4に指示する。
次に、CPU201は、記憶部202に記憶している室内下部空気密度ρ1と室内上部空気密度ρ2と室内下部空気比熱Cp1と室内上部空気比熱Cp2と第1室内ファン34の回転数N1を読み出す(ST24)。
次に、CPU201は、ST24で読み出した回転数N1に応じた室内下部体積流量V1と、ST23で読み出した回転数N2に応じた室内上部体積流量V2を、記憶部202から読み出す(ST25)。
次に、CPU201は、暖房必要熱量Q1と回収可能熱量Q2を算出する(ST26)。具体的には、CPU201は、図4に示すメインルーチンのST3で読み出した室内上部設定温度Tpuと第2室内機吸込温度Ts2、および、ST22で読み出した室内下部設定温度Tpdと第1室内機吸込温度Ts1、および、ST23で読み出した室内下部空気密度ρ1と室内上部空気密度ρ2と室内下部空気比熱Cp1と室内上部空気比熱Cp2、および、ST25で読み出した室内下部体積流量V1と室内上部体積流量V2を、前述した数式1と数式2に代入して、暖房必要熱量Q1と回収可能熱量Q2を算出する。
次に、CPU201は、算出した回収可能熱量Q2から算出した暖房必要熱量Q1を減じた値である熱量差ΔQが所定の閾熱量差Qt(例えば、Qt=0)以上であるか否かを判断する(ST27)。ここで、閾熱量差Qtは、予め試験等を行って求められて記憶部202に記憶されているものであり、後述するように、第2室内熱交換器41で冷媒が十分に蒸発可能か否か、つまり、第2室内熱交換器41で熱回収が十分に行えるか否かを判断するために用いられる値である。
熱量差ΔQが閾熱量差Qt未満であれば(ST27−No)、CPU201は、バイパス開閉弁25を閉じる(ST32)。バイパス開閉弁25を閉じることによって室外熱交換器23に冷媒が流れるので、室外熱交換器23が蒸発器として機能する。ST32の処理を終えたCPU201は、熱回収運転制御を終了する。熱量差ΔQが閾熱量差Qt以上であれば(ST27−Yes)、CPU201は、記憶部202に記憶している最新の吐出温度Tdを読み出し(ST28)、読み出した吐出温度Tdが目標下限値TdtL以上目標下限値TdtU以下であるか否かを判断する(ST29)。
吐出温度Tdが目標下限値TdtL以上目標下限値TdtU以下でなければ(ST29−No)、CPU201は、第2膨張弁52の開度を調整し(ST30)、ST31に処理を進める。具体的には、CPU201は、ST28で読み出した吐出温度Tdが目標下限値TdtUより低ければ第2膨張弁52の開度を小さくし、ST28で読み出した吐出温度Tdが目標上限値TdtLより高ければ第2膨張弁52の開度を大きくする。
吐出温度Tdが目標下限値TdtL以上目標下限値TdtU以下であれば(ST29−Yes)、CPU201は、ST31に処理を進める。
ST31において、CPU201は、バイパス開閉弁25を開くとともに室外膨張弁24を全閉とすることで室外熱交換器23に冷媒が流れないようにして、熱回収運転制御を終了する。
ここで、ST27〜ST32の処理を行う理由について説明する。まず、熱量差ΔQが閾熱量差Qt以上である場合は、回収可能熱量Q2の方が暖房必要熱量Q1より大きい、あるいは、回収可能熱量Q2と暖房必要熱量Q1が同じ値であるため、第2室内熱交換器41で冷媒が十分に蒸発している、つまり、第2室内熱交換器41で熱回収が十分に行えていることを意味する。この場合は、室外熱交換器23を蒸発器として機能させる必要がないため、バイパス開閉弁25を開くとともに室外膨張弁24を全閉とすることで、室外熱交換器23に冷媒が流れないようにしている。これにより、室外熱交換器23において低い温度である外気で冷媒を蒸発させる場合と比べて大幅に蒸発温度を高くすることができるので、圧縮機21における圧縮比を大幅に小さくすることができて空気調和システム1の省エネルギー性が向上する。
一方、熱量差ΔQが閾熱量差Qt未満である場合は、回収可能熱量Q2の方が暖房必要熱量Q1より小さく、第2室内熱交換器41で冷媒が蒸発し切らない、つまり、第2室内熱交換器41で回収できる熱量が不十分であることを意味する。この場合は、バイパス開閉弁25を閉じて室外熱交換器23に冷媒が流れるようにすることで、室外熱交換器23を蒸発器として機能させる。これにより、蒸発能力が不足して液冷媒が圧縮機21に吸入される、ということを防止できる。
また、ST27で熱量差ΔQが閾熱量差Qt以上である場合に、吐出温度Tdが目標吐出温度Tdt付近の温度、すなわち、目標下限値TdtL以上目標上限値TdtUの温度となるように、第2膨張弁52の開度を調整する理由は次の通りである。
回収可能熱量Q2の方が暖房必要熱量Q1より大幅に大きくて熱量差ΔQが大きい(例えば、ΔQ=300[W]、室内上部300bの温度が30℃前後といった、温度の高い空気が滞留している状態に相当する)場合は、第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させて第2室内熱交換器41で室内上部300bの熱を回収しているときの、第2室内熱交換器41から流出する冷媒の過熱度を適正値に維持でき、圧縮機21の吐出温度Tdも適正値に維持できる。
これに対し、回収可能熱量Q2の方が暖房必要熱量Q1よりわずかに大きくて熱量差ΔQが小さい(例えば、ΔQ=30[W])場合や、回収可能熱量Q2と暖房必要熱量Q1が同じ値で熱量差ΔQが0である場合は、第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させて第2室内熱交換器41で室内上部300bの熱を回収しているときの、第2室内熱交換器41から流出する冷媒の過熱度が0となることがある。この場合は、第2室内熱交換器41から流出し、バイパス配管66を介して圧縮機21に吸入された冷媒が気液二相状態となっているが、このとき、圧縮機21の吐出温度Tdが目標下限値TdtL以上となるように第2膨張弁52の開度を制御することによって、圧縮機21に吸入される冷媒の乾き度が適正な範囲(例えば、0.9〜1.0)とできるので、液バックによる圧縮機21の信頼性低下を防止できる。
上記のように室外熱交換器23を蒸発器として機能させずに熱回収運転を行っているときに吐出温度Tdが目標吐出温度Tdt付近の温度となるように、第2膨張弁52の開度を調整することで、圧縮機21の信頼性を確保しつつ、熱回収運転時の効率を高めることができる。
以上説明したように、空気調和システム1が暖房運転を行っているとき、部屋300の室内下部300aと室内上部300bで別々に設定温度を定め、室内上部設定温度Tpuと第2室内機4で検出した室内上部300bの温度である第2室内機吸込温度Ts2との温度差ΔTに応じて、第1室内機3および第2室内機4でともに暖房運転を行うか、第2室内機4で室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収する熱回収運転を行うかを選択している。これにより、より効果的な「頭寒足熱」状態となって、使用者の快適性を高めることができる。また、室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収して冷媒を蒸発させているので、圧縮機21の回転数を必要以上に上昇させる必要がなく圧縮比が大幅に小さくなるため、省エネルギー性が向上する。
尚、熱回収運転を行う際に、前述したように室内上部設定温度Tpuを室内下部設定温度Tpdより所定温度低い温度とし、第2室内機4から吹き出される空気の温度を第1室内機3から吹き出される空気の温度より低くすれば、第2室内機4から吹き出される空気の方が第1室内機3から吹き出される空気より重くなる(密度が高くなる)。これにより、第1室内機3から吹き出されて部屋300の上方(室内上部300b)に上昇しようとする温度の高い空気の一部と、第2室内機4から吹き出される温度の低い空気の一部が自然対流的に混ざりながら、図2に示す境界線BL近傍で室内上部設定温度Tpuと室内下部設定温度Tpdの中間温度層を形成する。また、第2室内機4から吹き出される温度の低い空気で、第1室内機3から吹出される温度の高い空気の上昇を効果的に押さえ込むことができる。これらにより、部屋300の「頭寒足熱」状態をより安定して継続させることができる。
次に、本発明の空気調和システムの第2の実施形態について、図6および図2を用いて説明する。本発明の第2の実施形態における空気調和システム1aの構成のうち、室外機2と第2室内機4については図1を用いて説明した第1実施形態における空気調和システム1と同じであるため、その構成や動作について詳細な説明を省略する。また、暖房運転時に第2室内機4で室内上部300bの熱を回収する熱回収運転を行う際の、室外機制御手段200のCPU201で行う処理についても、第1実施形態における空気調和システム1と同じであるため、詳細な説明を省略する。第1の実施形態と異なるのは、第1の実施形態の空気調和システム1における水冷媒熱交換ユニット5が第2の実施形態における空気調和システム1aには設けられていないこと、第1室内機3aも第2室内機4と同様に冷媒と部屋300の空気を熱交換する第1室内熱交換器31aを有すること、および、水冷媒熱交換ユニット5に設けられていた第2膨張弁52が第1室内機3aに設けられて室内膨張弁36aとされていることである。
図6(A)に示すように、本発明の第2の実施形態における空気調和システム1aは、屋外に設置される室外機2と、部屋300に設置される第1室内機3aおよび第2室内機4を有する。第1室内機3aは、部屋300の床面に設置されることで室内下部300aに配置される。第2室内機4は、部屋300の壁面上部に設置されて室内上部300bに配置される。第1室内機3aは、室外機2と第1ガス管8aで接続されるとともに、第2室内機4と第2ガス管8bで接続されている。第2室内機4は、室外機2と液管7で接続されるとともに、上述したように第1室内機3aと第2ガス管8bで接続されている。以上により、空気調和システム1aの冷媒回路10aが構成されている。
第1室内機3aは、第1室内熱交換器31aと、室外機側接続部32aと、第2室内機側接続部33aと、第1室内ファン34aと、第2膨張弁である室内膨張弁36aを備えている。そして、第2室内ファン34aを除くこれら各装置が第1室内機冷媒配管35aで接続されて、冷媒回路10aの一部をなす第1室内機冷媒回路30aを構成している。
第1室内熱交換器31aは、第1室内機冷媒配管35aに設けられている。第1室内機冷媒配管35aは、一端が室外機側接続部32aを介して第1ガス管8aに接続され、また、他端が第2室内機側接続部33aを介して第2ガス管8bに接続されている。第1室内熱交換器31aは、冷媒と、後述する第1室内ファン34aの回転により第1室内機3a内部に取り込まれた室内下部300aの空気を熱交換させる。
室内膨張弁36aは、例えば電子膨張弁である。室内膨張弁36aは、図示しないステッピングモータにパルスが加えられて開度が調整されることで、第1室内熱交換器31aを流れる冷媒量を調節する。
第1室内ファン34aは樹脂材で形成されており、第1室内熱交換器31aの近傍に配置されている。第1室内ファン34aは、図示しないファンモータによって回転することで、第1室内機3aの図示しない吸込口から第1室内機3aの内部に室内下部300aの空気を取り込み、第1室内熱交換器31aにおいて冷媒と熱交換した室内下部300aの空気を第1室内機3aの図示しない吹出口から室内下部300aへ吹き出す。
以上説明した構成の他に、第1室内機3aには、各種センサが備えられている。第1室内機冷媒配管35aにおける室外機側接続部32aと第1室内熱交換器31aの間には、第1室内熱交換器31aに流入あるいは第1室内熱交換器31aから流出する冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ115aが設けられている。また、第1室内機冷媒配管35aにおける室内膨張弁36aと第1室内熱交換器31aの間には、第1室内熱交換器31aから流出あるいは第1室内熱交換器31aに流入する冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ116aが設けられている。さらには、第1室内機3aの図示しない吸込口付近には、第1室内機3aに流入する室内空気の温度、すなわち室温を検出する第1吸込温度センサ117aが備えられている。
次に、本実施形態の空気調和システム1aにおける空調運転時の冷媒回路10aの冷媒の流れや各部の動作について、図6および図2を用いて説明する。尚、以下の説明では、使用者が図2に示すリモコン400を操作して、第1室内機3aおよび第2室内機4で暖房運転を行うよう指示した場合について説明する。
第1室内機3aおよび第2室内機4で暖房運転を行う場合、図6(A)に示すように、室外機制御部200のCPU201は、四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう切り換える。また、CPU201は、バイパス開閉弁25を閉とする。また、CPU201は、第1室内機3aの室内膨張弁36aを全開にするように第1室内機3aに指示する。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、第1室内熱交換器31aおよび第2室内熱交換器41が凝縮器として機能し、冷媒回路10aにおいて矢印で示す方向に冷媒が循環する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管64へと流れて閉鎖弁28を介して第1ガス管8aに流入する。第1ガス管8aを流れる冷媒は、室外機側接続部32aを介して第1室内機3aに流入する。第1室内機3aに流入した冷媒は、第1室内機冷媒配管35aを流れて第1室内熱交換器31aに流入する。
第1室内熱交換器31aに流入した冷媒は、第1室内ファン34aの回転によって第1室内機3a内部に流入した室内下部300aの空気と熱交換する。第1室内熱交換器31aで加熱された空気は、図示しない第1室内機3aの吹出口から室内下部300aに吹き出される。
第1室内熱交換器31aから第1室内機冷媒配管35aに流出した冷媒は、全開とされている室内膨張弁36aを通過し、第1室内機側接続部33aを介して第2ガス管8bに流出する。第2ガス管8bからガス側接続部42を介して第2室内機4に流入した冷媒は、第2室内機冷媒配管45を流れて第2室内熱交換器41に流入する。
第2室内熱交換器41に流入した冷媒は、第2室内ファン44の回転によって第2室内機4内部に流入した室内上部300bの空気と熱交換して凝縮する。第2室内熱交換器41で加熱された空気は、図示しない第2室内機4の吹出口から室内上部300bに吹き出される。このように、第1室内機3aと第2室内機4の各々から加熱された空気が吹き出されることによって、部屋300の暖房が行われる。
第2室内熱交換器41から第2室内機冷媒配管45に流出した冷媒は、液側接続部43を介して液管7に流出し、閉鎖弁27を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れる際に第1膨張弁24によって減圧されて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン29の回転により室外機2内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、四方弁22、吸入管65を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
以上説明した空気調和システム1aが第1室内機3aと第2室内機4を駆動して暖房運転を行っているとき、室外機制御部200のCPU201は、使用者が設定した室内上部設定温度Tpuと室内下部設定温度Tpdを第1室内機3aと第2室内機4から通信部203を介して取り込んで記憶部202に記憶する。また、CPU201は、第1室内機3aの第1吸込温度センサ117aで検出した第1室内機吸込温度Ts1と、第2室内機4の第2吸込温度センサ120で検出した第2室内機吸込温度Ts2を通信部203を介して定期的に取り込んで記憶部202に記憶する。
CPU201は、第1室内機吸込温度Ts1や第2室内機吸込温度Ts2を取り込む度に、室内下部設定温度Tpdと第1室内機吸込温度Ts1の温度差、および、室内上部設定温度Tpuと第2室内機吸込温度Ts2の温度差をそれぞれ算出し、各温度差に応じて圧縮機21の回転数制御を行う。そして、室内上部設定温度Tpuと第2室内機吸込温度Ts2との温度差ΔTに応じて、第1室内機3aおよび第2室内機4で共に暖房運転を行うか、室内膨張弁36aの開度を第2室内機吸込温度Ts2から室内上部設定温度Tpuを減じた温度差に応じた開度として第2室内機4の第2室内熱交換器41を蒸発器として機能させることで、第2室内機4で室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収する熱回収運転を行うかを選択している。これにより、より効果的な「頭寒足熱」状態となって、使用者の快適性を高めることができる。また、室内上部300bに滞留する暖気から熱を回収して冷媒を蒸発させているので、圧縮機21の回転数を必要以上に上昇させる必要がなく、省エネルギー性が向上する。
以上説明した第1の実施形態および第2の実施形態では、室外機2にバイパス開閉弁25を備えたバイパス配管66を設け、熱回収運転を行う際に第2室内熱交換器41で冷媒が十分に蒸発可能な場合は、バイパス開閉弁25を開くとともに室外膨張弁24を全閉として、室外熱交換器23が蒸発器として機能しないようにしている場合を説明した。これに対し、室外機2にバイパス配管66を設けない場合は、室外膨張弁23を全開とするとともに、室外ファン29を停止することで、室外熱交換器23が蒸発器として機能しないようにしてもよい。