以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態として、ティルト機構およびシフト機構を備えたレンズ装置を撮像装置に装着したカメラレンズシステムを例に挙げて説明を行う。ティルト機構は撮像面に対してレンズを傾けるための機構であり、シフト機構は撮像面に対して光学レンズを平行に移動するための機構である。
図1は、本発明の実施形態に係る、レンズ装置および撮像装置からなるカメラレンズシステムの概略ブロック構成図である。図1に示すように、撮像装置100には、レンズ装置と接する部分であるレンズマウント部154を介して、アオリ機能を備えたレンズ装置150が着脱可能に装着されている。
まず、撮像装置100内の構成について説明する。
撮像素子102は、例えばCCDセンサーやCMOSセンサーなどが用いられ、レンズ装置150によって結像された被写体像を電気信号に変換する。撮像素子102は、例えば、ベイヤー配列のRGB(赤緑青)のカラーフィルターを有する画素を行列状に配列した単板式のイメージエリアセンサである。撮像素子102は、ベイヤー配列に限らない。RGB(赤緑青)のカラーフィルターではなく、補色フィルタを配列したイメージセンサーを用いても良い。
画像生成回路103は撮像素子102のアナログ出力信号をデジタル信号に変換して画像を生成する。生成された画像は、メモリ制御回路105、画像処理回路140へ入力される。
タイミング発生回路104は、撮像素子102、画像生成回路103、メモリ制御回路105、システム制御回路130および画像処理回路140にクロック信号および同期信号を供給する。
メモリ制御回路105は、画像生成回路103、タイミング発生回路104、画像表示装置106、メモリ107、記録媒体108および画像処理回路140を制御する。画像生成回路103からの出力データは、画像処理回路140およびメモリ制御回路105を介して、メモリ107および記録媒体108に書き込まれる。
画像表示装置106は、LCDや有機ELディスプレイなどを用いて構成される。画像表示装置106は、撮像素子102を用いて撮像した画像データを逐次表示し、電子ビューファインダー(EVF)機能を実現する。画像表示装置106は、画像再生時は、メモリ107および記録媒体108に記録された画像を表示する。また、画像表示装置106は、ユーザへ操作情報や撮影情報の表示などを行う。
メモリ107は、撮影した静止画像や動画像を格納し、かつ、システム制御回路130の作業領域として使用される。また、メモリ107は、レンズ装置150から通信された、光学収差補正に関するデータを保存する。メモリ107は、レンズ装置150からではなく、不図示の外部通信用インターフェースを介して、外部から光学収差補正に関するデータを取得しても良い。あるいは、メモリ107に、予め光学収差補正に関するデータを記憶させておいても良い。
記録媒体108は、撮像装置100の内部もしくは撮像装置100より取り外しが可能な不揮発性メモリで構成され、撮影した静止画像や動画像を格納する。
シャッター制御回路110は、システム制御回路130からの制御信号に基づいて、ミラー制御回路111と連携しながら、シャッター101の駆動を制御する。
ミラー制御回路111は、システム制御回路130からの制御信号に基づいて、主ミラー112の駆動を制御する。
主ミラー112は、レンズ装置150を介して入射した光束の到達先を、光学ファインダー114と撮像素子102との間で切替える。主ミラー112は、撮影が行われる場合には、撮像素子102へと光束を導くために撮像光路から待避し、それ以外の場合には、光学ファインダー114へと光束を導くために撮像光路内に配置される。また主ミラー112はその中央部が光の一部を透過できるようにハーフミラーとなっており、光束の一部を、焦点検出を行うための不図示の焦点検出センサーに入射するように透過してもよい。
ペンタプリズム113は、主ミラー112で反射された光束を光学ファインダー114へ導く。なお、撮像装置100としてミラーレスカメラを用いた場合には、ミラー制御回路111、主ミラー123、ペンタプリズム113、および光学ファインダー114は不要である。
SW1(スイッチ1)115は、ユーザの操作に応じて、AF処理、AE処理、AWB処理などの動作開始をシステム制御回路130へ指示する信号を発生する。
SW2(スイッチ2)116は、ユーザの操作に応じて、露光開始をシステム制御回路130へ指示する信号を発生する。露光開始の指示を受けたシステム制御回路130は、撮像素子102、メモリ制御回路105、シャッター制御回路110、ミラー制御回路111およびI/F120を介してレンズ装置150を制御して、記録媒体108に画像データを記録する処理を実施する。
カメラ操作部材117は、各種ボタンやタッチパネル、電源オンオフボタンなどから構成され、ユーザ操作により受け付けた指示をシステム制御回路130に出力する。カメラ操作部材117でのユーザ操作に従い、システム制御回路130は撮像装置100に搭載された各種機能、例えばAFモード、AEモードといった動作モードの切り替えなどを実施する。
ジャイロセンサ118は、撮像装置100の姿勢情報を生成し、システム制御回路130に送信する。
I/F(インターフェース)120は、コネクタ190を介して、撮像装置100内のシステム制御回路130とレンズ装置150内のレンズ制御回路160との間で電気信号を用いた通信を実施する。これにより、撮像装置100は、レンズ装置150の情報や制御命令などを送受信する。
システム制御回路130は、カメラ本体の種々の制御を司るカメラ内CPUである。システム制御回路130は、SW1、SW2、メモリ制御回路105およびカメラ操作部材117などからの入力に従い、レンズ装置150および撮像装置100からなるシステム全体を制御する。
AF制御回路131は、システム制御回路130内に搭載されており、撮像装置100のAF処理を司る。AF処理では、I/F120を介してレンズ装置150から得られるフォーカス位置や焦点距離などのレンズ情報と、AF評価値から、フォーカスレンズ駆動量を演算する。フォーカスレンズ駆動量は、レンズ通信制御回路133およびI/F120を介して、レンズ装置150に入力される。
AE制御回路132は、システム制御回路130内に搭載されており、撮像装置100のAE処理を司る。AE処理では、I/F120を介してレンズ装置150から得られる開放F値や焦点距離などのレンズ情報、AE評価値などから、露出制御量(絞り制御量、シャッター制御量、露光感度など)を演算する。絞り制御量は、レンズ通信制御回路133およびI/F120を介してレンズ装置150に入力される。シャッター制御量は、シャッター制御回路110に入力され、露光感度は、撮像素子102に入力される。
レンズ通信制御回路133は、システム制御回路130内に搭載されており、撮像装置100とレンズ装置150との通信処理を司る。I/F120を介してレンズ装置150が装着されたことを検知すると、撮像装置100とレンズ装置150は通信を開始する。
例えば、撮像装置100が情報要求信号を送信すると、レンズ装置150は後述する図2のフローに従いレンズに関する情報を撮像装置100に送信する。
撮像装置100とレンズ装置150は、任意のタイミングで通信を行うが、任意のタイミング以外にも、タイミング発生回路104より出力された撮像同期信号に基づいたタイミングで通信してもよい。この、撮像同期信号通信モードでは、レンズ装置150は、タイミング発生回路104から撮像同期信号が入力されると、撮像同期信号通信モードで必要なレンズ情報(フォーカスレンズ位置、フォーカスレンズ状態、絞り状態、焦点距離など)をまとめて送信するようにしても良い。
光学補正制御回路134は、受信したレンズ情報に応じて、光学収差補正情報をメモリ107から読み出し、読み出した光学収差補正情報から光学収差の補正データを算出する。算出した光学収差の補正データを画像処理回路140に設定し、歪曲収差補正、倍率色収差補正、周辺光量補正、および、画像回復処理等の光学収差補正に関する制御を行う。
画像処理回路140は、画像生成回路103からの画像データあるいはメモリ制御回路105からの画像データに対して、画像処理を行う。画像処理後の画像データは、メモリ制御回路105を介して、メモリ107や記録媒体108に記憶される。
歪曲収差補正回路143は、光学補正制御回路134が算出した歪曲収差の補正データを受け取り、画像データに対して歪曲収差の補正処理を行う。倍率色収差補正回路144は、光学補正制御回路134が算出した倍率色収差の補正データを受け取り、画像データに対して倍率色収差の補正処理を行う。周辺光量補正回路145は、光学補正制御回路134が算出した周辺光量の補正データを受け取り、画像データに対して周辺光量の補正処理を行う。画像回復回路146は、光学補正制御回路134が算出した画像回復処理の補正データを受け取り、画像データに対して画像回復処理を行う。
画像処理回路140は、さらに所定の画素補完処理や色変換処理を行い、画像データの生成を行う。また画像処理回路140は、デジタル画像データを用いて所定の演算処理等を行う。
次にレンズ装置150内の構成について説明する。
フォーカスレンズ151は、光軸方向に移動して撮像光学系のピントを変化させる。ズームレンズ152は、光軸方向に移動して撮像光学系の焦点距離を変化させる。絞り153は、その開口径(絞り値)が可変であり、開口径に応じて光量を変化させる。なお、図1では撮像光学系が2枚のレンズで図示されているが、防振のためのレンズを含む3枚以上のレンズから構成されるレンズ群でもよい。撮影光学系を介して入射した光線が撮像素子102に導かれ、撮像素子102に光学像として結像する。
フォーカス制御回路155は、レンズ制御回路160もしくはレンズ操作部材161より制御され、フォーカスレンズ151を駆動させる。またフォーカスレンズ151の位置などのフォーカス情報をレンズ制御回路160へ出力する。
ズーム制御回路156は、レンズ制御回路160もしくはレンズ操作部材161より制御され、ズームレンズ152を駆動させる。また焦点距離などのズーム情報をレンズ制御回路160へ出力する。
絞り制御回路157は、レンズ制御回路160もしくはレンズ操作部材161から制御され、絞り153を駆動させる。また、絞り値などの絞り情報をレンズ制御回路160へ出力する。
レンズ情報記憶回路158は、レンズの光学収差に関する情報等レンズ情報を記憶している。TS情報検出回路159は、TS情報(ティルト量およびシフト量に関する情報)を検出し、検出した情報をレンズ制御回路160へ出力する。
レンズ制御回路160は、レンズ操作部材161もしくはI/F170からの入力に従い、フォーカス制御回路155、ズーム制御回路156、絞り制御回路157、レンズ情報記憶回路158などを制御する。また各制御回路や検出部などから入力された情報を、I/F170で受信したレンズ情報取得命令に従って、I/F170を介して撮像装置100へ送信する。
レンズ操作部材161は、フォーカス操作リング、ズーム操作リング、AF/MFスイッチ、ISオンオフスイッチ、ティルトシフト操作レバーなどからなり、ユーザ操作により受け付けた指示をレンズ制御回路160に出力する。
レンズ制御回路160は、レンズ操作部材161より入力された指示に基づき、I/F170を介してユーザ操作内容を撮像装置100へ送信する。撮像装置100内にあるシステム制御回路130は、I/F120を介してユーザ操作内容を受信し、レンズ装置150に搭載された各種機能についての動作モードの切り替えを実施する。
エンコーダー162は、例えば磁気センサーや赤外線を用いた光学センサーなどの位置検出センサーである。エンコーダー162により、フォーカスレンズ151の位置を検出し、レンズ制御回路160へ出力する。
I/F170は、コネクタ190を介して、撮像装置100内のシステム制御回路130とレンズ装置150内のレンズ制御回路160との間で、電気通信を用いた通信を実施することで、レンズ装置150の情報や制御命令などを送受信する。
ティルトシフト機構180は、ティルト動作の回転中心軸181を基準として、撮像面に対し光学系全体を傾けるティルト機構と、光学系の光軸を撮像面に対し平行に移動するシフト機構を含む。
図2は、レンズ装置150の光軸と、撮像装置100の撮像素子102の撮像面の中心位置の関係を説明するための図である。
図2(a)は、ティルト動作およびシフト動作をしない状態での撮像装置100とレンズ装置150の模式図であり、図2(b)はシフト動作時の模式図であり、図2(c)はティルト動作時の模式図である。
図2には、ティルト回転中心距離200、光軸201、撮像素子102の撮像面の中心を通過する垂線202、光軸移動量203と204、および、ティルト角205が記載されている。ティルト回転中心距離200は、ティルト機構の回転中心軸181と撮像素子102の撮像面までの距離である。光軸移動量203はティルトシフト機構180のシフト機構を駆動したときの光軸の移動量であり、光軸移動量204はティルト機構を駆動したときの光軸の移動量である。
図2(a)は、レンズ装置150の光学系がティルト動作もシフト動作もしていない状態であり、光軸201と垂線202が一致している。図2(b)は、シフト機構により、光軸201が、光軸移動量203だけ撮像面の中心に対して平行移動した状態である。図2(c)では、ティルト機構により、光軸201が、ティルト角205だけ撮像面に対して傾いた状態である。このときの光軸201と垂線202との距離である光軸移動量204は、ティルト角205とティルト回転中心距離200から算出することができる。
レンズ装置150は、ティルト回転中心距離200に関する情報をレンズ情報記憶回路158に記憶しており、レンズ制御回路160はこの情報を撮像装置100へ送信する。ティルト回転中心距離200の代わりに、関連する別の情報を用いることもできる。例えば、ティルト回転中心軸とレンズマウントまでの距離や、所定の基準距離(固定値)に対するティルト回転中心距離200の割合を示す係数を示す情報としても良い。あるいは、メモリ107が予め複数のティルト回転中心距離の情報を記憶しておいて、システム制御回路130が、レンズ装置150の識別情報に応じて、対応するティルト回転中心距離を選択するようにしてもよい。
図3は、レンズ装置と撮像装置のレンズデータ通信フロー図を示す。
レンズ装置150は、撮像装置100の指示によりレンズ通信を開始する。
ステップS301にて、レンズ制御回路160は、レンズ情報記憶回路158が記憶しているレンズに関する情報(例えば、TS情報の有無など)を撮像装置100へ送信する。撮像装置100のシステム制御回路130からは、機種情報をレンズ装置150へ送信するなどの基本情報の送受信を行う。
ステップS302にて、レンズ制御回路160は、撮像装置100からの要求が光学収差情報であるかを判別し、光学収差情報要求である場合は、S303に進む。
ステップS303にて、レンズ制御回路160は、光学収差情報を撮像装置100へ送信する。レンズ制御回路160は、レンズ情報記憶回路158に記憶された歪曲収差補正、倍率色収差補正、周辺光量補正、画像回復処理に関する光学収差情報を一括して送信する。システム制御回路130の要求に応じて、それぞれの光学収差情報を個別に送信するようにしても良い。
ステップS304にて、レンズ制御回路160は、撮像装置100からの要求がTS情報であるかを判別し、TS情報要求である場合は、S305へ進む。
ステップS305にて、レンズ制御回路160は、レンズ情報記憶回路158に記憶されたTS情報を撮像装置100へ送信する。
ステップS306にて、レンズ制御回路160は、撮像装置100からの要求が撮影情報であるかを判別し、撮影情報要求である場合は、ステップS307へ進む。
ステップS307にて、レンズ制御回路160は、撮影情報を撮像装置100へ送信する。
ステップS308にて、システム制御回路130から通信停止指示が出ているか判断する。レンズ制御回路160は、通信停止指示が出ていた場合は、通信を停止する。停止指示が無い場合は、ステップS302へ戻る。
次に、図4を用いて、光学収差の補正処理について説明する。図4は、本実施形態の光学収差の補正処理の動作フロー図である。本フローにより、撮像装置100は、光学収差の補正処理(歪曲収差補正処理、倍率色収差補正処理、周辺光量補正処理、および、画像回復処理)を行う。
ステップS401にて、システム制御回路130は、レンズ装置150のレンズ制御回路160との間で通信を開始し、光学収差情報を取得し、メモリ107に記憶する。また、システム制御回路130はライブビュー表示のための動画の撮像を開始する。
ステップS402にて、システム制御回路130は、ユーザがSW1(115)を操作したことを検知すると、撮影のための操作が開始されたと判定する。
ステップS403にて、システム制御回路130は、露出制御(AE)および、自動焦点検出制御(AF)等を行う。
ステップS404にて、システム制御回路130は、ユーザがSW2(116)を操作したことを検知すると、記録用の画像の撮像を開始し、画像を取得する。システム制御回路130は、SW2(116)を操作したことが検知されなければ、SW2(116)を操作したことを検知するまで、ステップS403の処理を繰り返す。
ステップS405にて、システム制御回路130は、ステップS404で記録用の画像を撮像した際のレンズ装置150の撮影情報を取得する。撮影情報は、光学収差補正に必要な絞り値、焦点距離、撮影距離情報などである。
ステップS406にて、システム制御回路130は、ステップS404で記録用の画像を撮像した際のレンズ装置150のTS情報を取得する。システム制御回路130は、TS情報の取得に成功した場合には、ティルトシフト動作が可能なレンズ装置であると判断し、その旨を画像表示装置106に表示して、ユーザに通知する。
ステップS407にて、システム制御回路130は、ステップS406で取得したTS情報から、光学収差補正の補正中心位置の移動が必要かを判断し、移動が必要と判断した場合はステップS408に進む。TSレンズの場合は、ティルトまたはシフト動作を行った状態、例えば、図3(b)、図3(c)等に示す状態では、光軸と撮像面の中心が一致しないため、光学収差補正の補正中心位置の移動が必要となる。ティルトシフト機構を備えていないレンズ装置が装着されていた場合や、光学収差補正の補正中心位置の算出に必要なTS情報の取得に失敗した場合は、ステップS408を経由せずにステップS409へ進む。
ステップS408にて、システム制御回路130は、光学収差補正の補正中心位置を算出する。本実施形態においては、ティルト動作による補正中心位置の移動量を、シフト動作による移動量に換算する。シフト動作による補正中心位置の移動量と、換算したティルト動作による補正中心位置の移動量をそれぞれ求めて加算することにより、全体の光軸移動量を算出する。この補正中心位置の算出方法についての詳細は、後述する。
ステップS409にて、システム制御回路130は、画像データに対し、光学収差補正を含む画像処理を行う。光学収差補正を実行しない場合は、画像処理回路140は、画素補完処理や色変換処理など、光学収差補正に関係しない処理のみを実行しても良い。光学収差の補正処理についての詳細は、後述する。
ステップS410にて、システム制御回路130は、光学収差補正後の画像データをメモリ制御回路105へ出力する。メモリ制御回路105へ出力された画像データは、メモリ107や記録媒体108に記録される。
次に、図5を用いて、光学収差補正の補正中心位置の算出方法と光学収差補正方法の動作に関する説明を行う。ここでは、倍率色収差補正を例にあげて説明を行うが、同様の方法で、周辺光量補正、歪曲収差補正、および、画像回復処理を行うことも可能である。
図5(a)は、倍率色収差補正を行うための補正データの一例を示す。補正データは、像高を複数に分割した、離散的なデータで構成される。システム制御回路130内の光学補正制御回路134は、メモリ107から離散的なデータを読み出し、補間計算により補正データを算出する。図5において、絞りは開放絞りであって、かつ、焦点距離は最大焦点距離であるものとする。
横軸は、補正を行う画素の像高を表し、縦軸は補正量を表す。本実施形態では、補正対象である画素の像高に応じた補正データを用いて、倍率色収差補正を行う。この横軸は、光軸の中心位置を像高0割とし、補正を行う際に取り得る像高の最大値を像高10割として表している。
曲線504は、後述する図5(c)に示す合焦時の被写体から撮像面までの距離が矢印514である場合の、赤の倍率色収差の補正データである。曲線505は、後述する図5(b)に示す合焦時の被写体から撮像面までの距離が矢印513である場合の、赤の倍率色収差の補正データである。曲線506は、図5(b)に示す合焦時の被写体から撮像面までの距離が矢印513である場合の、青の倍率色収差の補正データである。曲線507は、図5(c)に示す合焦時の被被写体から撮像面までの距離が矢印514である場合の、青の倍率色収差の補正データである。
倍率色収差とは、赤色成分、青色成分毎に画像が歪む現象である。これらの色成分の信号の重心位置を、補正データの分だけ内側または外側の画素をずらして、緑成分の信号の重心位置と一致させることにより補正を行う。倍率色収差の補正データは、撮影距離、絞り値、焦点距離に応じて用意されており、撮像条件に応じた補正データが選択される。
本実施形態では、補正データは光軸に対して点対称となる。光軸に対して点対称であれば、撮影距離、絞り値、焦点距離に応じた補正データを、座標別ではなく像高別に用意すれば良いため、補正データを記憶するために必要な容量を抑えることができる。
図5(b)は、レンズがティルト動作していない状態で、被写体像が撮像面に合焦するときの光線を説明するための図である。レンズがティルト動作していない状態では、撮像面の中心位置に結像する光線と、撮像面の像高の高い位置に結像する光線において、合焦時の被写体から撮像面までの距離が、同じ矢印513で示される。図5(c)は、レンズをティルト動作した状態で、像高の高い位置に合焦する光線を説明するための図である。シャインプルーフの法則により、レンズをティルト動作した場合は、被写体が合焦する面も傾く。従って、図5(c)に示すように、像高の高い位置では、合焦時の被写体から撮像面までの距離が、矢印513よりも短い矢印514となる。これに対し画像の中心位置では、被写体が合焦する面が傾いていても撮影距離は変化しないため、合焦時の被写体から撮像面までの距離が矢印513となる。従って、倍率色収差の補正データは、撮影距離情報とティルト量に応じて変化させる必要がある。
図5(d)〜(f)は、撮像素子102を光軸の物体側方向から見た模式図である。線分500は、図5(a)の像高0割から10割までの横軸に相当する線分である。図5(a)に示すように、光軸の中心から同じ像高となる複数の画素に対して、同じ補正データが適用される。
図5(d)の撮像面518は、ティルト動作もシフト動作もせず、光軸と撮像面の中心が一致している場合の撮像素子102の撮像面を示す。光軸と光学収差の補正中心位置が一致しているので、図5(a)の矢印501が示す範囲に含まれる像高の補正データのみを用いて倍率色収差補正を行う。
図5(e)の撮像面519は、ティルト動作はせずに、シフト機構を最大まで駆動したときの撮像素子102の撮像面を示す。シフト機構を駆動することにより光軸が移動するため、撮像面の中心位置ではなく光軸の位置を補正中心位置として光学収差補正を行う。この場合、図5(a)の矢印501よりも長い矢印502が示す範囲に含まれる像高の補正データを用いて倍率色収差補正を行う。
図5(f)の撮像面520は、シフト機構を最大まで駆動し、かつ、ティルト機構も最大まで駆動したときの撮像素子102の撮像面を示す。この場合、図5(a)の矢印502よりもさらに長い矢印503が示す範囲に含まれる像高の補正データを用いて倍率色収差補正を行う。
図5(a)のうち矢印512で示す像高の区間は、シフト動作もティルト動作もなく、補正中心位置が移動しない場合に用いられる補正データを含む。矢印511で示す像高の区間は、ティルト動作を行わずに、シフト動作を最大まで行った場合に用いられる補正データを含む。矢印510で示す像高の区間は、シフト動作に加えティルト動作を最大まで行った場合に用いられる補正データを含む。
なお、上述したようにティルト動作を行った場合には、撮像素子の位置に応じて合焦時の被写体から撮像面までの距離が変化するため、これに応じて補正データを変更する必要がある。これを、図6を用いて説明する。
図6は、図5(a)の一部を拡大した図である。図5(c)では、ティルト動作を行うことで、撮像面のうち像高の高い位置においては、合焦時の被写体から撮像面までの距離が矢印513から矢印514に向かって変化する。そのため、ティルト動作に応じて、補正データも曲線505の値から曲線504の値へと、順に変化し、曲線606に示す値を取ることになる。なお、図5および図6では、説明をわかりやすくするため、シフト機構を最大まで動作させてからティルト機構を動作させる例で説明を行ったが、シフト機構を動作させずにティルト機構を動作させるようにしてもよい。シフト動作による補正中心位置の移動を、ティルト動作による補正中心位置の移動に置き換えて、それぞれの像高に対応する補正データを選択すればよい。
また、ここでは倍率色収差補正を例にあげて説明を行ったが、周辺光量補正、歪曲収差補正、および、画像回復処も像高に応じた補正データを用いて補正を行う処理であり、倍率色収差の補正方法と同様に行うことができる。図7にこれらの補正データの一例を示す。
図7(a)は、歪曲収差補正の補正データを示す。歪曲収差補正は、歪曲収差補正データに応じて内側または、外側に信号の重心位置を移動することにより行われる。曲線700は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(b)の矢印513であるときの補正データであり、曲線701は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(c)の矢印514であるときの補正データである。
図7(b)は、周辺光量補正の補正データを示す。周辺光量補正は、信号にゲインを掛けることで行われる。曲線702は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(b)の矢印513であるときの補正データであり、曲線703は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(c)の矢印514であるときの補正データである。
図7(c)は、画像回復処理の補正係数のゲインを示す。画像回復処理は、補正係数に応じた複数の多タップフィルタ処理を行い、各フィルタに対して撮影条件に応じたゲインを適用することで行われる。曲線704は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(b)の矢印513であるときの補正係数のゲインであり、曲線705は、合焦時の被写体から撮像面までの距離が図5(c)の矢印514であるときの補正係数のゲインである。
次に、図8を用いて、補正中心位置の移動量の算出方法を説明する。
図2(c)に示すように、ティルト動作によって光軸は撮像面に対して傾きを持つ。このため、光学収差補正を従来の補正方法で実施するためには、撮像面上の光軸の移動量を算出し、シフトによる光軸の移動と同様に扱えるように、撮像面に垂直な光軸の移動量に換算する。そして、移動後の光軸の位置を補正中心位置とする。
図8に示すように、ティルトシフト機構180は、ティルトの回転中心軸181を中心とし光学系全体を傾けるティルト機構と、光学系の光軸をシフトするシフト機構811を含む。さらに、ティルトシフト機構180は、ティルト方向およびシフト方向を同時に変化する全体レボルビング機構810と、ティルト方向およびシフト方向を別の方向へ変化させるTSレボルビング機構812を含む。
全体レボルビング機構810は、ティルトシフト機構180の光学系全体を光軸に垂直な面で回転させる。TSレボルビング機構812は、シフト機構に対して、垂直な面でティルト機構を回転させる。
光学収差補正の補正中心位置の移動量は、シフト動作量とティルト動作量に応じた移動量をそれぞれ求め、求めた移動量を加算することで求められる。
シフト動作に応じた補正中心位置の移動量はシフト動作量から算出する。
ティルト動作に応じた補正中心位置の移動量は、図2に示す、ティルト機構の回転中心軸181と撮像素子102の撮像面までの距離であるティルト回転中心距離200と、ティルト角205から算出する。ティルト回転中心距離200を示す情報をレンズ装置150の機種毎に予め撮像装置100に記憶しておいても良いし、撮像装置100がレンズ装置150からこの情報を受信するようにしてもよい。また、ティルト回転中心距離200の情報を取得できない場合は、光学収差補正を行わない動作フローとしても良い。
図8(b)は、光学補正の補正中心位置を説明するための図であり、ティルト動作もシフト動作もしない状態の撮像面の中心を原点とした撮像面上の平面を、光軸の物体側から見たXY平面図である。
図8(b)では、全体レボルビング機構810を角度(全体レボルビング回転角度)801だけ回転し、且つ、TSレボルビング機構812を用いて、ティルト回転機構のみを更に角度(TSレボルビング回転角度)802だけ回転した様子を示す。矢印803はシフト動作による光軸の座標の移動を示し、矢印804はティルト動作による光軸の座標の移動を示す。光学収差補正は、撮像面の中心ではなく、光軸を中心として行われるため、移動後の光軸の座標(x、y)を補正中心位置とすることで、像高に応じた光学収差補正を行うことができる。
移動後の光軸の座標(x、y)は以下の方法で求める。矢印803で示すシフト動作量をS、ティルト角205をTとする。また、全体レボルビング回転角度801をRa、TSレボルビング回転角度802をRts、ティルト回転中心距離200をCとする。これらの情報は、全て図5のステップS506でシステム制御回路130が取得するTS情報に含まれている。πは、円周率である。
矢印803は、全体レボルビング回転角度801によりその方向がXY平面内で変化するため、シフト動作量に応じた光軸の移動後の座標を、X軸方向とY軸方向へ分解して算出する必要がある。シフト動作量に応じた光軸のX軸方向の移動量をxs、Y軸方向の移動量をysとすると、次式で求めることができる。
xs=S×cos((90−Ra)/360×2π) ・・・ (1)
ys=S×sin((90−Ra)/360×2π) ・・・ (2)
ティルト動作による光軸の移動量rtは、次式で求めることができる。
rt=tan(T/360×2π)×C ・・・(3)
この移動量rtを、全体レボルビング回転角度801とTSレボルビング回転角度802に基づいて、X軸方向とY軸方向へ分解して算出する必要がある。ティルト動作量に応じた光軸のX軸方向の移動量をxt、Y軸方向の移動量をytとすると、次式で求めることができる。
xt=rt×cos((90−(Ra+Rts))/360×2π)・・・(4)
yt=rt×sin((90−(Ra+Rts))/360×2π)・・・(5)
最終的な補正中心位置の移動量は、シフト動作による移動量とティルト動作による移動量の和となるため、補正中心位置のX軸方向の移動量をxa、Y軸方向の移動量をyaとすると、次式で求めることができる。
xa=xs+xt ・・・(6)
ya=ys+yt ・・・(7)
この(xa、ya)をXY平面上の座標に変換することで補正中心位置(x、y)を得ることができる。この補正中心位置は、像高の算出に用いるための数値であるため、必ずしも撮像素子102の撮像面上にある必要はなく、場合によっては撮像面より外側に位置していてもよい。
ここで、補正データを用意しておくべき像高は、補正中心位置の移動量の最大値に基づいて決定することが望ましい。レンズ装置150のシフト動作量の最大値SmaxとしてSに代入し、ティルト角の最大値TmaxをTに代入し、式(1)〜(7)を用いて補正中心位置の移動量の最大値を算出すればよい。全体レボルビング回転とTSレボルビング回転は任意の方向で良い。すなわち、補正中心位置の移動量の最大値rmaxは次式で求められる。
rmax=Smax+tan(Tmax/360×2π)×C ・・・(8)
このように、光学収差補正データは、シフト動作量の最大値Smax、ティルト角の最大値Tmax、および、ティルト回転中心距離Cに応じた像高分の補正データを持つ必要がある。但し、−90°<Tmax<+90°である。
光軸の最大移動量は、レンズ装置150の機種により異なり、撮像素子102の撮像面の大きさは、撮像装置100の機種毎に異なる。よって、これらの組み合わせに応じて、必要とされる補正データの範囲は異なる。
なお、本実施形態では、説明を容易にするために、ティルト動作もシフト動作も行わないときは、光軸201が撮像面の中心を通過するものとして説明したが、これに限られるものではない。光軸201が撮像面の中心を通過しない場合は、予め撮像面の中心と光軸の位置をオフセットしておけばよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、ティルト動作による光学収差特性の変化を、シフト動作による光学収差特性の変化と同様に、補正中心位置が移動したものとみなして処理している。そのため、シフト動作とは別に、ティルト動作に対応するための補正データを用意する必要が無い。そのため、補正データを大幅に増やすことなく、シフト量だけでなくティルト量にも対応した適切な光学特性の補正を行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、レンズ装置150を装着した撮像装置100の内部で光学収差補正を行う構成を例にあげて説明を行ったが、これに限られるものではない。撮像装置やネットワークから、ティルトシフト機構を備えたレンズ装置を用いて撮像された画像データを受け取り、この画像データに対して光学収差補正を行うPCやタブレット端末などの外部の画像処理装置においても、本発明を適用することが可能である。この際、TS情報に含まれる情報を画像データに付随するタグデータに記載しておけば、画像処理装置とレンズ装置との間で直接通信をせずとも、補正中心位置の移動量の算出に必要な情報を得ることができるようになる。
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。