JP6618168B2 - 薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法 - Google Patents

薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、薄膜状の圧電体および電極が形成されている薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法に関する。
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。その薄膜磁気ヘッドが形成されている部品がヘッドスライダと呼ばれ、ヘッドスライダが先端部に装着されている部品がヘッドジンバルアセンブリ(HGAともいう)である。
そして、ハードディスク装置では、記録媒体を回転させながらヘッドスライダをその記録媒体の表面から浮上させることによって、記録媒体に対するデータの記録や再生が行われる。
一方、ハードディスク装置の大容量化に伴う記録媒体の高記録密度化が進展してきたことにより、ボイスコイルモータ(以下「VCM」ともいう)のみの制御では、薄膜磁気ヘッドの正確な位置制御が困難になった。そのため、従来、VCMによる主アクチュエータに加えて、補助的なアクチュエータ(補助アクチュエータ)をHGAに搭載し、その補助アクチュエータによって、VCMでは制御できない微小な位置制御を行う技術が知られている。
主アクチュエータおよび補助アクチュエータによって、薄膜磁気ヘッドの位置制御を行う技術は、2段アクチュエータシステム(デュアルステージシステム)とも呼ばれている。
2段アクチュエータシステムでは、主アクチュエータが駆動アームを回転させて、ヘッドスライダを記録媒体の特定のトラック上に位置決めする。また、補助アクチュエータが薄膜磁気ヘッドの位置が最適となるようにヘッドスライダの位置を微調整する。
従来、補助アクチュエータとして、薄膜圧電体素子を用いたマイクロアクチュエータが知られている。薄膜圧電体素子は、圧電体とこれを挟むように形成された一対の電極膜とを有し、そのそれぞれが薄膜状に形成されている。
そして、従来、薄膜圧電体素子として、チタン酸ジルコン酸鉛((Pb(Zr,Ti)O)、以下「PZT」ともいう)等の強誘電体からなる薄膜状の圧電体を用いた素子が知られている。
PZTは、ZrとTiの原子%比率が52:48の付近にモルフォトロピック境界(MPB)を有し、これよりもZrの比率が大きい組成になると菱面体晶、小さい組成では正方晶の結晶構造を有することが知られている。PZTは、通常、このMPBにあるときに最も高い圧電特性を示す。
従来の薄膜圧電体素子では、組成がMPBの近傍にあるPZTを用いたり、菱面体晶構造を有する圧電層と、正方晶構造を有する圧電層とを積層した構造にする(例えば、特許文献1参照)等がなされていた。
また、正方晶のPZTでは、分極軸であるc軸方向((001)方向)の圧電性が大きいため、(001)方向に配向させて圧電体を形成することが有効である。
しかし、シリコン基板上に正方晶のPZTからなる圧電体を形成すると、(001)方向に配向された結晶と、(100)方向に配向された結晶とが混在したドメイン構造が形成されやすいという課題があった。そこで、従来、この課題がシリコン基板による引っ張り応力に起因している点に着目し、PZTに近い熱膨張率を備えた酸化物層を含む下地層によって、圧電体に加わる引っ張り応力を吸収しようとする考え方があった(例えば、特許文献2参照)。
一方、菱面体晶のPZTでは、分極軸が(111)方向であるため、(111)方向に配向させて圧電体を形成することが有効である。この点に関し、基板上に形成された(111)配向のPt膜の上に(111)配向の菱面体晶のPZT薄膜を形成することで、基板との圧縮応力を抑えながらPZT薄膜のZ結晶面である(222)面の面間隔を本来の面間隔よりも大きくすることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらにまた、キュリー点以上の高温で結晶化させると、PZTの結晶が歪み、十分な圧電特性が得られないという課題があった。これを解決するため、周期表のIIA族元素を添加して焼成することで、菱面体晶でありながら格子定数a,cについて、c>aであり、圧電特性の優れたPZTが得られることも開示されていた(例えば、特許文献4参照)。
特開2013−258395号公報 特開2002−29894号公報 特開2004−260994号公報 特開2003−133604号公報
ところで、PZTからなる圧電体は、できるだけ広い範囲の印加電圧に対して圧電特性が安定し、できるだけ広い範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作を行うことが望ましい。
しかし、上記特許文献1〜4に開示されているように、従来、薄膜圧電体素子について、その圧電体の圧電特性が向上するように、様々な工夫が施されていたものの、従来技術では、安定した圧電特性が得られる印加電圧の範囲は改善されていなかった。そのため、PZTからなる圧電体について、安定した圧電特性が得られる印加電圧の範囲がより広くなるような改善が求められていた。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法において、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性が得られ、できるだけ広い範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作が行われるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板であって、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、圧電体膜は、一般式Pb(Zr,Ti(1−x))Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
圧電体膜が引っ張り応力を有し、積層膜は、上部電極膜上に積層された応力均衡化膜を更に有し、その応力均衡化膜は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備え、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成され、上部電極膜は、凹凸面側の下面から応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が凹部に入り込む程度の膜厚を有し、上部電極膜の応力均衡化膜側の上面が圧電体膜の凹凸面に応じた凹凸面であり、上部電極膜の上面に応力均衡化膜が形成されている薄膜圧電体基板を特徴とする。
dv>0.02x+0.398
また、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板であって、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、圧電体膜の凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、その上部密着膜は、凹凸面側の下面から上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込む程度の膜厚を有する薄膜圧電体基板を提供する。
dv>0.02x+0.398
さらに、上記薄膜圧電体基板の場合、圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、圧電体膜の凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、その上部密着膜は、凹凸面側の下面から上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込む程度の膜厚を有することが好ましい。
上記薄膜圧電体基板の場合、圧電体膜は、抗電界が20Vよりも大きいことが好ましい。
そして、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層され、かつ複数の素子部が形成されている積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板から成膜用基板が除去された後の各素子部を用いて製造されている薄膜圧電体素子であって、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、圧電体膜は、一般式Pb(Zr,Ti(1−x))Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、素子部が上部電極膜に接続されている上部端子電極と、下部電極膜に接続されている下部端子電極とを有し
圧電体膜が引っ張り応力を有し、積層膜は、上部電極膜上に積層された応力均衡化膜を更に有し、その応力均衡化膜は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備え、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成され、上部電極膜は、凹凸面側の下面から応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が凹部に入り込む程度の膜厚を有し、上部電極膜の応力均衡化膜側の上面が圧電体膜の凹凸面に応じた凹凸面であり、上部電極膜の上面に応力均衡化膜が形成されている薄膜圧電体素子を提供する。
dv>0.02x+0.398
また、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層され、かつ複数の素子部が形成されている積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板から成膜用基板が除去された後の各素子部を用いて製造されている薄膜圧電体素子であって、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、素子部が上部電極膜に接続されている上部端子電極と、下部電極膜に接続されている下部端子電極とを有し、
圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、圧電体膜の凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、その上部密着膜は、凹凸面側の下面から上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込む程度の膜厚を有する薄膜圧電体素子を提供する。
dv>0.02x+0.398
また、上記薄膜圧電体素子の場合、圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、圧電体膜の凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、その上部密着膜は、凹凸面側の下面から上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込む程度の膜厚を有することが好ましい。
上記薄膜圧電体素子の場合、圧電体膜は、抗電界が20Vよりも大きいことが好ましい。
そして、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が複数の成膜用基板の表面に形成される積層膜形成工程と、積層膜に対するエッチングを行うことによって、その積層膜に複数の素子部を形成する素子部形成工程と、その各素子部における下部電極膜、上部電極膜にそれぞれ下部端子電極、上部端子電極を形成する電極形成工程とを有し、積層膜形成工程は、複数の成膜用基板を対象として、X線回折法による(002)面の回折強度ピークの回折角を測定する測定工程を有し、複数の成膜用基板のうち、測定工程によって得られた回折角に基づき求められた表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合する格子定数条件適合基板を用いて薄膜圧電体素子を製造する薄膜圧電体素子の製造方法を提供する。
dv>0.02x+0.398
上記製造方法では、基板の表面に絶縁膜が形成されている絶縁基板を製造する絶縁基板製造工程と、絶縁膜と上部電極膜とが対向するように、成膜用基板と絶縁基板とを積層する基板積層工程と、その基板積層工程によって積層された積層基板のうちの絶縁基板または成膜用基板のいずれか一方を除去する基板除去工程とを更に有し、その基板除去工程の実行後に素子部形成工程を実行することが好ましい。
以上詳述したように、本発明によれば、薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法において、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性が得られ、できるだけ広い範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作を行うようにすることができる。
(a)は薄膜圧電体基板の全体を示す斜視図、(b)は素子部形成後の薄膜圧電体基板の表面を拡大した平面図である。 図1(b)の2−2線断面図である。 素子部が形成された後の第1の表面の要部を拡大した平面図である。 図3の4−4線断面図である。 図18の5−5線断面図である。 薄膜圧電体素子のうちの圧電体膜から応力均衡化膜までの部分を拡大した断面図である。 同じく圧電体膜を拡大した断面図である。 図6の要部を拡大した断面図である。 本発明の実施の形態に係る薄膜圧電体素子の製造工程を示す断面図である。 図9の後続の製造工程を示す断面図である。 図10の後続の製造工程を示す断面図である。 (a)は図11の後続の製造工程を示す断面図、(b)は(a)の後続の製造工程を示す断面図である。 (a)は図12(b)の後続の製造工程を示す断面図、(b)は(a)の後続の製造工程を示す断面図である。 (a)は8枚の薄膜圧電体基板に関してXRDによって求めた回折強度ピークの回折角と、抗電界(負側)との対応関係を示すグラフ、(b)は格子定数dvの抗電界が大きくなるときの閾値と、格子定数条件におけるxとの対応関係を示すグラフである。 本発明に関連するHGAの全体を表側からみた斜視図である。 図15のHGAの要部を表側からみた斜視図である。 図15のHGAを構成するサスペンションの要部を表側からみた斜視図である。 フレクシャの薄膜圧電体素子が固着されている部分を拡大して示した斜視図である。 本発明に関連するHGAを備えたハードディスク装置を示す斜視図である。 本発明に関連するインクジェットヘッドの概略の構成を示した断面図である。 本発明に関連する可変焦点レンズの概略の構成を示した平面図である。 図21の22−22線断面図である。 変形例にかかる可変焦点レンズの概略の構成を示した断面図である。 本発明に関連する脈波センサの概略の構成を示した断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
(薄膜圧電体基板の構造)
まず、図1〜図4を参照して本発明の実施の形態に係る薄膜圧電体基板1の構造について説明する。
ここで、図1の(a)は、薄膜圧電体基板1の全体を示す斜視図、(b)は、素子部10が形成された後の薄膜圧電体基板1の表面を拡大した平面図である。図2は図1(b)の2−2線断面図、図3は素子部10が形成された後の第1の表面1aの要部を拡大した平面図、図4は図3の4−4線断面図である。
薄膜圧電体基板1は本発明の実施の形態に係る薄膜圧電体基板であって、成膜用基板としてのシリコンウェハ2を用いて構成されている。薄膜圧電体基板1は、図1(a)に示すように、シリコンウェハ2の第1の表面1a(第1の表面1aの裏面側が第2の表面1b)に積層膜3が形成されている。本発明の実施の形態に係る薄膜圧電体基板1には、積層膜3に後述する複数の素子部10が形成されていない場合(図1(a))と、複数の素子部10が形成されている場合(図1(b))とが含まれている。
積層膜3は、図2に示すように、後述する下地膜15、下部電極膜17、下部密着膜16a、圧電体膜13、上部密着膜16b、上部電極膜27および応力均衡化膜14を含む複数の薄膜が積層された積層構造を有している。なお、図2に示す積層膜3は応力均衡化膜14を有しているが、積層膜3は応力均衡化膜14を有していなくてもよい。
積層膜3には、図1(b)に示すように、複数の素子部10を形成することができる。複数の素子部10は間隙部11を介して互いに隔てられていて、縦方向および横方向に規則正しく並べられている。各素子部10によって、後述する薄膜圧電体素子12bが形成される。
各素子部10は、図3に示すように平面視概ね矩形状に形成されている。各素子部10の長手方向一端側に下部端子電極19a、上部端子電極19bおよびコンタクトホール21が形成されている。コンタクトホール21は、図4に示すように、上部密着膜16b、圧電体膜13および下部密着膜16aを貫通して下部電極膜17の表面にまで達する穴部であって、その内側に下部端子電極19aが形成されている。下部端子電極19aの底部が下部電極膜17の表面上に直に接続されている。上部端子電極19bは、応力均衡化膜14の貫通穴14aの内側に配置されていて、上部電極膜27の表面上に直に形成されている。なお、図示はしないが、上部端子電極19bの上にはポリイミド等からなる絶縁膜が素子部10を覆うように形成されていてもよい。その場合、その絶縁膜に貫通孔を形成することで、下部電極膜17と下部端子電極19a、上部電極膜27と上部端子電極19bをそれぞれ接触させることができる。
(薄膜圧電体素子の構造)
続いて、薄膜圧電体素子の構造について、図5〜図8を参照して説明する。ここで、図5は、後述するフレクシャ106の薄膜圧電体素子12bが固着されている部分を拡大して示した図18の5−5線断面図である。図6は、フレクシャ106に固着されている薄膜圧電体素子12bのうちの後述する圧電体膜13から応力均衡化膜14までの部分を拡大した断面図、図7は、同じく圧電体膜13を拡大した断面図、図8は図6の要部を拡大した断面図である。なお、図6、図7、図8は、図示の都合上、各膜の凹凸が強調して記載されている。
薄膜圧電体素子12b(薄膜圧電体素子12aも同様)は、後述するHGA101のフレクシャ106に固着されている。薄膜圧電体素子12bは、前述した薄膜圧電体基板1(複数の素子部10が形成されている薄膜圧電体基板1)を用いて製造されている。薄膜圧電体基板1からシリコンウェハ2が除去された後の各素子部10を用いることによって、薄膜圧電体素子12b、12aが形成されている。
そして、図5に示すように、薄膜圧電体素子12b(薄膜圧電体素子12aも同様)は、下地膜15と、下部電極膜17と、下部密着膜16aと、圧電体膜13と、上部密着膜16bと、上部電極膜27および応力均衡化膜14とを有し、これらが順に積層されている積層構造を有している。薄膜圧電体素子12bは、後述する素子応力F12と内部応力F14との均衡が確保されるように、応力均衡化膜14が上部電極膜27上に形成されている。薄膜圧電体素子12b、12aは図示しないエポキシ樹脂を用いて後述するベース絶縁層5の表面に固着されている。なお、図5の薄膜圧電体素子12bでは、好ましい実施の形態として、応力均衡化膜14が形成されているが、薄膜圧電体素子12bは応力均衡化膜14が形成されていなくてもよい。
なお、本願発明における「上部」および「下部」は、必ずしも薄膜圧電体素子がベース絶縁層5上に固着されている状態の上側、下側を示すものではない。これらは、圧電体膜13を挟んで対向する2つの電極膜などを区別するために用いた便宜上の用語である。実際の製品では、上部電極膜27および上部密着膜16bが下側に配置され、下部電極膜17および下部密着膜16aが上側に配置されていることもある。
圧電体膜13は、一般式Pb(Zr,Ti(1−x))Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛(以下「PZT」ともいう)からなる圧電材料を用いて薄膜状に形成されている。圧電体膜13は、エピタキシャル成長によって形成され、厚さが1μm〜5μm程度に形成されている。圧電体膜13は3μmよりも大きい膜厚を有していることが好ましく、菱面体晶の結晶構造を有している。菱面体晶では、結晶格子のa軸,b軸,c軸それぞれの格子定数が等しい。本発明に係る圧電体膜13は、このような菱面体晶の結晶構造を有しながら、膜表面に垂直な方向の格子定数dvが後述する格子定数条件に適合している。また、圧電体膜13は5MPaから50MPa(好ましくは5MPaから20MPa)程度の引っ張り応力を有している。
本実施の形態にかかる圧電体膜13は、上記一般式の"x"(xはPZTにおけるZrの原子%比率で、本実施の形態において「Zr組成率」ともいう)について、0.53<x<0.70の条件に適合している。また、圧電体膜13は、その表面垂直方向に(100)面方向に配向することによって形成されている。さらに、圧電体膜13は、上記Zr組成率xが0.55の場合において、後述するピーク条件に適合し、上記Zr組成率xが0.55とは異なる場合において、後述する格子定数条件に適合している。
そして、本実施の形態において、圧電体膜13は、図6、図7に示すように、上部電極膜27側の表面(上面ともいう)が凹凸面13Aである。凹凸面13Aは、ともに湾曲している複数の凸部13aおよび凹部13bを有している。凹凸面13Aは各凸部13aと凹部13bが凹凸面13Aに沿って交互に配置され、断面形状が波形になっている。各凸部13aと凹部13bとは、緩やかに傾斜した湾曲面であるが、本実施の形態において、凹凸面13Aの高さ方向の中心面13Lよりも外側の凸状に張り出す部分が凸部13a、中心面13Lよりも凹状に窪んだ凸部13aに続く内側の部分が凹部13bである。
なお、図示されている圧電体膜13は、好ましい実施の形態として、凹凸面13Aを有している。
また、図8に示すように、凹凸面13Aは、凸部13aと凹部13bとの高さの差(表面粗さともいう)がt13になっている。そして、この表面粗さt13よりも、後述する上部密着膜16bの膜厚t16b(35nm程度)が同程度か幾分大きい。上部密着膜16bの下面から上面までの少なくとも半分の部分が凹部13bの中に入り込めばよく、図6に示すように、ほぼ全体が入り込んでもよい。これにより、図6に示すように、上部密着膜16bが圧電体膜13の凹凸面13Aに応じた凹凸構造を備え、上部密着膜16bの上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面になる。この場合、上部密着膜16bの上面は、凹凸面13Aに対応した凸部と凹部とを有している。
そして、後述する上部電極膜27の膜厚t27は、少なくとも、上部電極膜27の下面(凹凸面13A側の面)から上面(応力均衡化膜14側の面)までの一部が凹部13bの中に入り込む程度の大きさになっている。膜厚t27がこのような大きさであるため、上部電極膜27も、圧電体膜13の凹凸面13Aに応じた凹凸構造を有し、その上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面になっている。さらに、膜厚t27よりも、後述する応力均衡化膜14の膜厚t14(100nm程度)が大きい(t27<t14)。
下地膜15は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、希土類元素酸化物、窒化チタンなどの窒化物を用いて形成されている。図5に示した下地膜15は、第1の下地膜15aと、第2の下地膜15bとを有し、第1の下地膜15a上に第2の下地膜15bが積層された2層構造を有しているが、2層構造を有していなくてもよい。
下部電極膜17は、例えば、Ptを主成分とする金属材料(Ptのほかに、Au,Ag,Pd,Ir,Ru,Cuを含んでもよい)からなる薄膜(膜厚は100nm程度)であって、下地膜15上に形成されている。下部電極膜17の結晶構造は面心立方構造である。下部密着膜16aは、例えば、SrRuO(SROともいう)等のエピタキシャル成長した導電性材料からなる薄膜(膜厚は20nm程度)であって、下部電極膜17の圧電体膜13側の上面に形成されている。この下部密着膜16a上に圧電体膜13が形成されている。
上部密着膜16bは、例えば、SrRuO等のアモルファス導電性材料からなる薄膜(膜厚は35nm程度)であって、圧電体膜13の凹凸面13A上に形成されている。前述したように、上部密着膜16bの上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面となっている。
上部電極膜27は、例えば、Ptを主成分とする金属材料(Ptのほかに、Au,Ag,Pd,Ir,Rh,Ni,Pb,Ru,Cuを含んでもよい)を用いた多結晶の薄膜(膜厚は50nm程度)であって、上部密着膜16b上に形成されている。前述したように、上部電極膜27の上面も、凹凸面13Aに応じた凹凸面である。また、結晶構造は面心立方構造である。
応力均衡化膜14は、上部電極膜27上に形成されている。応力均衡化膜14は、合金材料を用いた多結晶の薄膜(膜厚は100nm程度)であって、後述する素子応力F12を打ち消し得る(相殺し得る)内部応力F14を有している。
応力均衡化膜14は、例えば、鉄(Fe)を主成分とする合金材料を用いて形成されている。応力均衡化膜14の結晶構造は体心立方構造であることが好ましい。応力均衡化膜14は、例えば、Feと、Co,Mo,Au,Pt,Al,Cu,Ag,Ta,Cr,Ti,Ni,Ir,Nb,Rb,Cs,Ba,V,W,Ruのうちのいずれか少なくとも1つを含む合金材料を用いることが好ましい。また、応力均衡化膜14は、Feと、CoおよびMoを含む合金材料を用いることがよりいっそう好ましい。
ここで、素子応力F12とは、薄膜圧電体素子12bにおいて、下部電極膜17、圧電体膜13および上部電極膜27を、上部電極膜27から下部電極膜17に向かう方向(図5において下向き)に凸状に反らせようとする応力のことである。内部応力F14は、応力均衡化膜14が有する応力であって、応力均衡化膜14を外側に広げ、これを上向き凸状に反らせるように作用する。
この圧縮応力を有する応力均衡化膜14が上部電極膜27に形成されると、内部応力F14が素子応力F12を相殺するように作用して、応力の均衡が確保される。なお、内部応力F14は、応力均衡化膜14を形成する材料に起因した応力F14aと、応力均衡化膜14の結晶粒の成長に起因した応力F14bの双方が加わった応力である。
上部電極膜27と下部電極膜17の表面にそれぞれ前述した上部端子電極19b、下部端子電極19aが直に形成されている。上部端子電極19b、下部端子電極19aは、後述する電極パッド118a,118bを介して後述する接続配線111に接続されている。
保護絶縁層25は、薄膜圧電体素子12a、薄膜圧電体素子12bの表面全体を覆うように形成されている。保護絶縁層25は例えばポリイミドを用いて形成され、1μm〜10μm程度の厚さを有している。薄膜圧電体素子12a、12bが予め保護絶縁層を有しているときは、保護絶縁層25によって薄膜圧電体素子12a、12bを覆わなくてもよい。
上部電極膜27と、下部電極膜17の結晶性は異なっていることが好ましい。下部電極膜17はエピタキシャル成長によって形成した導電体薄膜(このような薄膜を「エピタキシャル膜」ともいう)が好ましく、上部電極膜27はエピタキシャル成長していない導電体薄膜を用いることができる。より好ましくは、下部電極膜17はエピタキシャル成長によって形成されたPt薄膜、上部電極膜27は多結晶導電体薄膜を用いることができる。
それぞれの結晶性はX線回折法によるロッキングカーブの測定によって容易に調べることができる。下部電極膜17のエピタキシャル膜ではロッキングカーブの半値幅が1度より狭いことが好ましい。また、エピタキシャル膜は、θ−2θ測定において、配向面のピーク強度に対し、それ以外の面のピーク強度が1/10以下、より好ましくは配向面のピークのみが観測されることが好ましい。
これに対し、上部電極膜27に用いられる金属薄膜は、ロッキングカーブの半値幅は下部電極膜17のものよりも大きく、通常1度より大きい。また、θ−2θ測定でも、複数の面方位からのピークが観察される。また、上部電極膜27はアモルファス膜となっていても良い。アモルファス膜では、θ−2θ測定でもロッキングカーブ測定でも明確なピークは現れない。結晶性は透過電子顕微鏡で観察した際の回折像からも容易に判断することができる。エピタキシャル膜では、回折像は膜中の場所によらず同じスポット配列の明瞭なパターンが観測されるが、エピタキシャル膜でない多結晶膜では、場所によってスポット配列の向きや間隔が異なったり、リング状や複数のスポットパターンが重なった回折像が観察される。また、アモルファス膜では明確な回折パターンが得られない。
(薄膜圧電体基板および薄膜圧電体素子の製造方法)
続いて、図9〜図13を参照して、薄膜圧電体基板1および薄膜圧電体素子12bの製造方法について説明する。薄膜圧電体基板1および薄膜圧電体素子12b(薄膜圧電体素子12aも同様)は次のようにして製造する。
まず、基板製造工程を実行することによって、薄膜圧電体基板1を製造する。基板製造工程では、複数のシリコンウェハ2(厚みは400〜600μm程度、直径は100〜200mm程度)を準備し、その第1の表面1aに積層膜3を形成することによって、薄膜圧電体基板1が製造される。基板製造工程には、積層膜3を形成する積層膜形成工程が含まれている。積層膜形成工程には、後述する圧電体膜形成工程が含まれている。
そして、積層膜形成工程では、圧電体膜形成工程において、後述する第1の成膜パラメータが制御されることによって、圧電体膜13が形成される。
積層膜形成工程が開始されると、まず、ZrO等の金属酸化物薄膜をエピタキシャル成長させて下地膜15が形成される。下地膜15は、単一の層でもよいし、図9に示すように、複数の層を重ねて形成しても良い。下地膜15は、好ましくは、ZrO膜、イットリウムを含む希土類元素と酸素との希土類元素酸化物膜、またはそれらの混合物や積層膜を使用することができる。
続いて、下部電極膜形成工程が実行される。この工程では、スパッタリングによってPtを主成分とする金属材料を下地膜15上にエピタキシャル成長させる。このエピタキシャル成長によって下部電極膜17が形成される。次いで、下部密着膜形成工程が実行される。この工程では、例えばSROを用いてスパッタリングによって下部電極膜17の上面に下部密着膜16aが形成される。
その後、圧電体膜形成工程が実行される。この工程では、図10に示すように、スパッタリングによって、PZTからなる圧電材料を下部密着膜16a上にエピタキシャル成長させる。その際、第1の成膜パラメータを制御することにより、圧電体膜13が形成される。
この工程では、ZrおよびTiの比率と、圧電体膜13の表面に垂直な方向の面間隔とが異なった複数の圧電体膜13が形成される。なお、この点について後の実施例で詳述する。
ここで、第1の成膜パラメータとは、スパッタリングによって、圧電体膜13の成膜を行う際に調節される各種のパラメータであって、少なくとも、成膜速度、基板温度、ガス圧およびガス組成が含まれている。凹凸面13Aが形成されるときの第1の成膜パラメータの数値を第1の圧電体成膜条件とすることができる。
本願発明者は、種々の実験の結果、シリコンウェハ2上で上記下地膜と下部電極膜および下部密着膜を積層したエピタキシャル膜上にPZT膜をスパッタリングによってエピタキシャル成長させる場合において、以下の第1の圧電体成膜条件から適切に選択された数値の組み合わせでPZT膜を形成することにより、各ZrおよびTiの比率において、表面に垂直な方向の面間隔が異なる複数の圧電体膜13を形成した。
第1の圧電体成膜条件
成膜速度は0.1〜3μm/h程度、基板温度は350〜750℃程度、ガス圧は0.01〜10Pa程度、ガス組成は、酸素分圧を1〜10%程度としたアルゴンと酸素の混合ガスとする。
そのため、圧電体膜形成工程では、第1の圧電体成膜条件を満たすように第1の成膜パラメータを制御することによって、それぞれのZrおよびTiの比率において、表面に垂直な方向の面間隔が異なる複数の圧電体膜13を形成することができる。
また、圧電体膜形成工程は、次のようにして実行することもできる。この場合、ゾルゲル法によって、PZTからなる圧電材料を下部密着膜16a上にエピタキシャル成長させる。その際、第2の成膜パラメータを制御することにより、表面に垂直な方向の面間隔が異なる複数の圧電体膜13が形成される。
この場合も、複数の圧電体膜13が形成される。各圧電体膜13では、それぞれのZrおよびTiの比率において、表面に垂直な方向の面間隔が異なっている。
第2の成膜パラメータとは、ゾルゲル法によって、圧電体膜13の成膜を行う際に調節される各種のパラメータであって、少なくとも、スピンコート回転数、乾燥温度、プリベーク温度および加圧アニールの酸素圧力と温度が含まれている。
本願発明者は、種々の実験の結果、シリコンウェハ2上で上記下地膜と下部電極膜および下部密着膜を積層したエピタキシャル膜上にPZT膜をゾルゲル法によってエピタキシャル成長させる場合において、以下の第2の圧電体成膜条件から適切に選択された条件の組み合わせでPZT膜を形成することにより、表面に垂直な方向の面間隔が異なる複数の圧電体膜13が形成されることを見出した。
第2の圧電体成膜条件
スピンコート回転数は3000〜5000rpm程度、乾燥温度は200〜300℃程度(酸素中)、プリベーク温度は400〜500℃程度(酸素中)、加圧アニールの酸素圧力と温度は、3〜10気圧程度、600〜800℃程度とする。
続いて、上部密着膜形成工程が実行される。この工程では、図11に示すように、例えばSROを用いてスパッタリングによって圧電体膜13の凹凸面13A上に上部密着膜16bが形成される。
さらに続いて、上部電極膜形成工程が実行される。この工程では、スパッタリングによってPtを主成分とする金属材料を上部密着膜16b上に成長させ、上部電極膜27が形成される。上部電極膜は、エピタキシャル成長膜ではなく、多結晶の無配向膜、または(110)面や(111)面の優先配向膜である。
以上のように、下部密着膜形成工程と、上部密着膜形成工程とが実行されることにより、圧電体膜13と、上部電極膜27とがそれぞれ下部密着膜16a、上部密着膜16bを介して、下部電極膜17、圧電体膜13上に積層される。
その後、応力均衡化膜形成工程が実行されてもよい。この工程では、スパッタリングによって、鉄(Fe)を主成分とする合金材料(例えば、Fe、CoおよびMoを含む合金材料)を用いて応力均衡化膜14が形成される。
続いて、素子部形成工程が実行されるが、素子部形成工程に先立ち、絶縁基板製造工程、基板積層工程、基板除去工程が実行されてもよい。このようにすることで、圧電体膜13とシリコンウェハ2との間に生じる応力が製造段階で開放されるようにすることができる。
絶縁基板製造工程では、図12(a)に示すように、シリコンウェハ2と同様のシリコンウェハ22の表面に酸化シリコン(SiO)からなる絶縁膜23を形成して絶縁ウェハ26を製造する。
続いて、基板積層工程が実行される。この工程では、図12(b)に示すように、絶縁膜23と積層膜3とを対向させながらエポキシ樹脂等の絶縁樹脂を用いて薄膜圧電体基板1と絶縁ウェハ26とが貼り合わされる。こうして、薄膜圧電体基板1と絶縁ウェハ26とが絶縁樹脂層24を挟んで積層される。
その後、基板除去工程が実行される。この工程では、基板積層工程で積層された薄膜圧電体基板1および絶縁ウェハ26(これらが積層基板に相当する)のうち、シリコンウェハ2またはシリコンウェハ22のいずれか一方が除去される。本実施の形態では、図13(a)に示すように、シリコンウェハ2が残され、シリコンウェハ22がエッチング等によって除去される。
その後、素子部形成工程が実行される。この工程では、図13(a)に示すように、絶縁膜23の表面にフォトレジストを塗布した上で所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン28が形成される。その後、そのレジストパターン28をマスクに用いて絶縁膜23、絶縁樹脂層24および積層膜3を対象とするエッチングが行われ、それらの不要な部分が除去される。すると、積層膜3が間隙部11を介して複数の個別領域3aに分割される。各個別領域3aによって後に前述した素子部10が形成される。
さらに、残った積層膜3の表面から絶縁膜23、絶縁樹脂24が除去された後、後述する電極形成工程が実行される。その後、各個別領域3aの上にポリイミドからなる保護絶縁層25を形成して、図13(b)に示すように、シリコンウェハ2の表面に複数の素子部10が形成される。
そして、電極形成工程では、エッチングによって保護絶縁層25および応力均衡化膜14が除去されて貫通穴14aが形成され、圧電体膜13などが除去されてコンタクトホール21が形成される。また、めっきなどによって、下部電極膜17と上部電極膜27に、それぞれ下部端子電極19aと、上部端子電極19bとが形成される。こうして、図1、図2に示した薄膜圧電体基板1が製造される。
以上のようにして製造された薄膜圧電体基板1から、エッチング等によってシリコンウェハ2が除去されると、複数の薄膜圧電体素子12bが形成される。形成される薄膜圧電体素子12bは、例えば、HGA101におけるベース絶縁層5の表面に固着される。
(実施例)
前述したとおり、本実施の形態では、積層膜形成工程において、複数パターンで圧電体膜13が形成されている。本願発明者は、前述の圧電体成膜条件(第1の圧電体成膜条件または第2の圧電体成膜条件)を適宜調整することによって圧電体膜13を形成し、表面に垂直な方向の面間隔が異なっている圧電体膜13を備えた薄膜圧電体基板1を合計で8枚製造した。これらの薄膜圧電体基板1では、ZrとTiの比率(原子%)がいずれも55:45となるように圧電体膜13が形成されている。なお、各薄膜圧電体基板1において、蛍光X線分光法(XRF)にしたがいZrとTiの比率比が測定されている。その結果、ZrとTiの比率が55:45であることが確認されている。
製造した8枚の薄膜圧電体基板1に対し、PZT(002)面の回折強度ピークの回折角を、Cu−Kα線を用いたθ−2θ法によるX線回折法(X−ray Diffraction、"XRD"ともいう)によって測定した(この測定を行う工程を「測定工程」ともいう)。続いて、上部電極膜27、上部密着膜16b、圧電体膜13、下部密着膜16aおよび下部電極膜17をエッチングによってパターンニング加工し、さらに上部端子電極19b、下部端子電極19aを形成した後、分極−電圧曲線を測定することによって、圧電体膜13の抗電界を求めた。
図14(a)は、その調べられた回折角と、抗電界(負側の絶対値で、単位はV)との対応関係を示している。図14(a)の横軸が(002)面の回折強度ピークの回折角を示し、縦軸が分極−電圧曲線における抗電界(負側の絶対値で、単位はV)を示している。図14(a)には、8個の測定点が示されているが、各測定点が8パターンの積層膜3それぞれに対応している。
回折角と抗電界(負側)とは、一定の対応関係を示していない。しかしながら、図14(a)に示すように、回折角が44.25度よりも小さい場合(8パターンのうちの4パターン)は、その他の場合よりも、抗電界(Vc−)の絶対値が大きい。回折角が44.25度よりも小さい場合、抗電界(Vc−)の絶対値が"22"から"20"V程度であって、"20"Vよりも大きいのに対し、その他の場合は"18"から"17"V程度に過ぎないからである。
抗電界(Vc−)は、圧電体にその分極方向と反対方向の電界を加えたときに分極反転が起こる電圧である。圧電体は、印加電圧がこの電圧(抗電界)になるまでは印加電圧に応じて変形するが、抗電界を越えると変形量が急激に減少する。したがって、圧電体は、抗電界(Vc−)の絶対値が大きいほど、変形し得る印加電圧の範囲が広い。そのため、そのような圧電体は、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性を示し、広範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作を行う好ましい圧電体になる。
(002)面の回折強度ピークの回折角が44.25度よりも小さいことをピーク条件ともいい、そのピーク条件に適合している薄膜圧電体基板1をピーク条件適合基板ともいう。
ピーク条件適合基板を用いると、それ以外の薄膜圧電体基板1を用いた場合よりも、好ましい薄膜圧電体素子12bをより多く製造することができる。この場合の好ましいとは、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性を示し、より広範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作を行うことを意味している。
一方、本願発明者は、ZrとTiの比率が55:45の場合の他に、PZTが菱面体晶となるx>0.53の組成の積層膜3についても上記同様の測定を行い、測定した回折角に基づき、dv(圧電体膜13の表面垂直方向の格子定数で、単位はnm)の抗電界(Vc−)が大きくなるときの閾値を求めた。その結果は、図14(b)に示すとおりである。図14(b)において、横軸はx(xはZrとTiの原子数のうちZr原子の割合)、縦軸は抗電界が大きくなるときのdvの閾値である。
すると、dvが0.02x+0.398よりも大きいとき、すなわち、dv>0.02x+0.398であるとき(このときは、図14(b)の点線よりも上側に相当する)に、そうでない場合(dvが0.02x+0.398以下の場合)よりも、抗電界(Vc−)の絶対値が大きくなることが確認された。このような効果が得られたxの範囲は0.53<x<0.70であった。xが0.70を超えると、組成がMPBから遠くなっていることによる圧電性の低下が顕著になるため、dvの大きさに関わらず十分な抗電界が得られなかった。本実施の形態では、0.53<x<0.70の条件を満たす場合において、格子定数dvに関する以下の関係式を格子定数条件ともいう。
dv>0.02x+0.398
したがって、0.53<x<0.70において、xが0.55と異なる値であるときは、格子定数条件に適合する薄膜圧電体基板1(格子定数条件適合基板ともいう)を用いることによって、好ましい薄膜圧電体素子12bをより多く製造することができる。
xが0.55であるとき、上記格子定数条件の右辺の値は0.409(=0.02×0.55+0.398)であるが、これは、xが0.55であるときの格子定数(0.417)よりも小さい。そのため、xが0.55であるときも格子定数条件適合基板を用いることができる。
なお、上記いずれの場合も、Zr/Ti比の測定には、XRFのほか、EPMA、EDS、Auger分光法などの方法を利用することができる。面間隔の測定には、前述のCu−Kα線を用いたXRD法のほか、シンクロトロン放射光を用いたXRD法、透過電子線顕微鏡(TEM)などを利用することができる。
(薄膜圧電体基板および薄膜圧電体素子の作用効果)
以上のように、本実施の形態に係る薄膜圧電体基板1は、0.53<x<0.70において、格子定数条件に適合しているときは、格子定数条件に適合していないときよりも抗電界(Vc−)の絶対値が大きくなる。これには、xが0.55の場合も含まれている。
そのため、0.53<x<0.70において、格子定数条件適合基板を用いることによって、そうでない薄膜圧電体基板を用いる場合よりも、好ましい、すなわち、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性を示し、より広範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作を行う薄膜圧電体素子12bを多く製造することができる。また、格子定数条件適合基板を用いて製造される薄膜圧電体素子12bは好ましい素子となる。
また、薄膜圧電体基板1は、積層膜3に複数の素子部10を形成することができる。その場合、各素子部10が上部端子電極19a,下部端子電極19bを有しているから、シリコンウェハ2を除去することによって、好ましい薄膜圧電体素子12bを複数製造することができる。
さらに、圧電体膜13が引っ張り応力を有しているから、各薄膜圧電体素子12bの全体において、応力の均衡を確保することができる。圧電体膜13がエピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であるから、a軸、b軸、c軸の3方向すべての方向に結晶軸がそろっている。圧電体膜13が3μmよりも大きい膜厚を有しているから、薄膜圧電体素子12bの変位量を大きくすることができる。
圧電体膜13は、菱面体晶の結晶構造を有しているが、菱面体晶では、a軸、b軸、c軸すべての格子定数が等しいため、冷却の過程でもドメインの形成は起こらない。また、XRDでは、2つの極大値を持つピークは観測されない。そのような菱面体晶のPZTからなる圧電体膜13が分極軸である(111)方向ではなく、(100)方向(表面垂直方向)に配向され、さらに(100)方向の面間隔が上記のようにされることで、好ましい薄膜圧電体基板1が得られる。
一方、薄膜圧電体素子12bは、圧電体膜13と、応力均衡化膜14とを有するため、次のような作用効果を有する。すなわち、圧電体膜13の凹凸面13Aには、上部密着膜16bが形成されているが、その膜厚が微小であり、その上面が凹凸面13Aと同様の凹凸面になっている。そのため、上部密着膜16b上に形成されている上部電極膜27が、圧縮応力となる内部応力を有している。
また、上部電極膜27の上面も、凹凸面13Aと同様の凹凸面になっているから、応力均衡化膜14も、圧縮応力となる応力F14bを有している。応力均衡化膜14は、凹凸構造を有する膜上での結晶粒の成長に起因した応力F14bと、材料に起因した応力F14aとを含む内部応力を有し、材料に起因した応力F14aだけを有する薄膜よりも、強い応力を発生する。これが上部電極膜27上に形成されていることで、素子応力F12と内部応力F14との均衡が確保されているから、薄膜圧電体素子12bは、従来よりも応力均衡化作用が高い。これにより、薄膜圧電体素子12bでは、素子内部の厚み方向に沿った応力のバランスがより確実に確保されている。
素子応力F12だけが作用している状態では、薄膜圧電体素子12bが反ってしまう。ところが、薄膜圧電体素子12bでは、これに加えて内部応力F14が作用し、両応力のバランスが確実に確保されている。そのため、薄膜圧電体素子12bの反りが十分に抑制されている。このように、薄膜圧電体素子12bは、単層の圧電積層体でありながら、電圧が加えられていなくてもその反りが十分に抑制されるとともに、屈曲変位も抑制することができる。したがって、薄膜圧電体素子12bは、HGAに適したものとなっている。
また、薄膜圧電体素子12bは、下部密着膜16aと、上部密着膜16bとを有しているから、下部電極膜17、圧電体膜13および上部電極膜27の密着性が高められている。しかも、圧電体膜13の凹凸面13Aが凹凸構造を有し、上部密着膜16bおよび上部電極膜27もこれと同様の凹凸構造を有している。すると、各膜が平坦である場合よりも、他の膜との接触面積が拡大されているため、膜同士の密着性がより高められている。
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置)
まず、前述した図5とともに、図15〜図18を参照して本発明に関連するHGAの構造について説明する。ここで、図15は本発明に関連するHGA101の全体を表側からみた斜視図、図16はHGA101の要部を表側からみた斜視図である。図17はHGA101を構成するサスペンション50の要部を表側からみた斜視図である。また、図18はフレクシャ106の薄膜圧電体素子12bが固着されている部分を拡大して示した斜視図である。
そして、HGA101は図15に示したように、サスペンション50と、ヘッドスライダ60とを有している。サスペンション50は、ベースプレート102と、ロードビーム103と、フレクシャ106と、図示しないダンパーとを有し、これらが溶接等により接合一体化された構造を有している。
ベースプレート102はサスペンション50を後述するハードディスク装置201の駆動アーム209に固定するための部品であって、ステンレス等の金属を用いて形成されている。
ロードビーム(Load beam)103はベースプレート102に固定されている。ロードビーム103はベースプレート102から離れるにしたがい幅が漸次狭まる形状を有している。ロードビーム103はヘッドスライダ60をハードディスク装置201の後述するハードディスク202に押し付ける力を発生する荷重曲げ部を有している。
そして、フレクシャ106は、図15〜図18に示したように、フレクシャ基板104と、ベース絶縁層5と、接続配線111と、薄膜圧電体素子12a,12bとを有し、さらに後述する保護絶縁層25を有している。フレクシャ106は、フレクシャ基板104上にベース絶縁層5が形成され、その上に接続配線111および薄膜圧電体素子12a,12bが固着された構造を有している。さらに、接続配線111および薄膜圧電体素子12a,12bを被覆するように、保護絶縁層25が形成されている。
フレクシャ106は、ベース絶縁層5の表面に接続配線111に加えて薄膜圧電体素子12a,12bが固着されたことによって圧電素子付きになった圧電素子付き構造を有している。
また、フレクシャ106は、先端側(ロードビーム103側)にジンバル部110を有している。ジンバル部110には、ヘッドスライダ60が搭載される舌部119が確保され、その舌部119よりも先端側に複数の接続パッド120が形成されている。接続パッド120はヘッドスライダ60の図示しない電極パッドに電気的に接続されている。
このフレクシャ106は、薄膜圧電体素子12a,12bを伸縮させ、これに伴い、舌部119の外側に張り出したステンレス部分(アウトリガー部分ともいう)を伸縮させる。これにより、ヘッドスライダ60の位置が、図示しないディンプルを中心にしてごく僅かに動くことで、ヘッドスライダ60の微小な位置制御が行われる。
フレクシャ基板104は、フレクシャ106の全体を支える基板であって、ステンレスを用いて形成されている。その裏面がベースプレート102と、ロードビーム103に溶接によって固定されている。フレクシャ基板104は図15に示したように、ロードビーム103およびベースプレート102の表面に固定されるセンター部104aと、ベースプレート102から外側に延びる配線部104bとを有している。
ベース絶縁層5は、フレクシャ基板104の表面を被覆している。ベース絶縁層5は例えばポリイミドを用いて形成され、5μm〜10μm程度の厚さを有している。また、ベース絶縁層5は、図17に詳しく示したように、ロードビーム103上に配置される部分が二股に分かれて、その一方が第1の配線部5a、他方が第2の配線部5bとなっている。そのそれぞれの表面に薄膜圧電体素子12aと、薄膜圧電体素子12bとが固着されている。薄膜圧電体素子12a、12bにおける前述した上部端子電極19a,下部端子電極19bが電極パッド118,118bに接続されている。電極パッド118,118bは接続配線111に接続されている。
接続配線111は、第1の配線部5a,第2の配線部5bのそれぞれの表面に複数本ずつ形成されている。各接続配線111は、銅などの導体を用いて形成されている。各接続配線111は、それぞれの一端側が薄電極パッド118a,118bまたは各接続パッド120に接続されている。
そして、ヘッドスライダ60には、データの記録再生を行う図示しない薄膜磁気ヘッドが形成されている。また、ヘッドスライダ60には、図示しない複数の電極パッドが形成され、その各電極パッドが接続パッド120に接続されている。
次に、図19を参照してハードディスク装置について説明する。図19は、上述のHGA101を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、HGA101とを有している。ハードディスク装置201は、HGA101を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面がヘッドスライダ60に対向している。
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、ヘッドスライダ60をトラック上に位置決めする。このヘッドスライダ60に図示しない薄膜磁気ヘッドが形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アーム209は、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アーム209の先端にHGA101が取りつけられている。
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
ハードディスク装置201は、HGA101を回転させると、ヘッドスライダ60がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
このようなHGA101およびハードディスク装置201は、前述した薄膜圧電体素子12a,12bを用いて製造されているから、より広範囲の印加電圧に対して直線性の高い安定した位置制御が行える。また、薄膜圧電体素子12a,12bの反りが抑制されているため、その搭載(ベース絶縁層5への固着)が容易に行える。さらに、従来の薄膜圧電体素子を用いた場合に比べ、長手方向の変位を効率良く発生させることができ、薄膜磁気ヘッドの位置を効果的に調整できる。
(インクジェットヘッド)
次に、インクジェットヘッドについて、図20を参照して説明する。
図20は、インクジェットヘッド301の概略の構成を示した断面図である。インクジェットヘッド301は、薄膜圧電体素子312a、312b、312cを用いて製造されている。インクジェットヘッド301は、ヘッド本体部302と、薄膜圧電体素子312a、312b、312cとを有している。
ヘッド本体部302は、インク流路構造体303と、振動部材305とを有している。
インク流路構造体303は、複数(図20では3個)のノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cが形成された基板303Aを備え、各ノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cに対応するようにして、複数のインク室306a,306b,306cが形成されている。各インク室306a,306b,306cは、側壁部307によって仕切られ、そのそれぞれがインク流路304a,304b,304cを介してノズル303a,303b,303cに連通している。各インク室306a,306b,306cには図示しないインクが納められる。インク流路構造体303は、樹脂、金属、シリコン(Si)基板、ガラス基板、セラミックスなどの様々な材料を用いて製造することができる。
振動部材305は、複数のインク室306a,306b,306cを覆うようにインク流路構造体303に固着されている。振動部材305は、例えば酸化シリコン(SiO などからなり、3.5μm程度の厚さを有している。そして、振動部材305の外側に、各インク室306a,306b,306cに対応するようにして、薄膜圧電体素子312a、312b、312cが固着されている。薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、接着剤313を用いて振動部材305に固着されている。
各薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、各薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、図示しない電極端子を有している。各電極端子には図示しない配線が接続されている。
ヘッド本体部302およびインクジェットヘッド301は、次のようにして製造することができる。まず、基板303Aに機械加工によってノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cを形成する。次に、インク室306a,306b,306cが機械加工またはエッチングによって形成された側壁部307を基板303Aに固着する。または側壁部307がめっきによって基板303Aに形成される。すると、インク流路構造体303が製造される。その後、振動部材305をインク流路構造体303に固着すると、ヘッド本体部302が製造される。
そして、前述した下地膜15とともに基板を研磨やエッチング等によって除去して、薄膜圧電体素子312a,312b,312cを製造し、これらをエポキシ樹脂等の接着剤313を用いて振動部材305に固着する。すると、インクジェットヘッド301が製造される。
こうして製造されるインクジェットヘッド301について、図示しない電源から配線および電極端子を通じて薄膜圧電体素子312a、312b、312cに電力を供給すると、図20に示すように、例えば、薄膜圧電体素子312bの変形によって、振動部材305に湾曲部305dが形成される。すると、各インク室306a,306b,306cに納められているインクが押し出され、そのインクがインク流路304a,304b,304cおよびノズル303a,303b,303cを介して吐出される。
薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に抗電界が大きくなっているため、より広範囲の印加電圧に対して直線性の高い安定した動作を行う。また、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、振動部材305への固着が容易に行える。
また、インクジェットヘッド301は、従来のように、シリコン基板上に下部電極膜、圧電体膜、上部電極膜を形成し、そのシリコン基板上に反応性イオンエッチング等によってインク流路およびノズルを形成する場合に比べて、ヘッド本体部302における材料の制約が少なくなり、ヘッド本体部302に種々の材料を用いることができる。そのため、ヘッド本体部302を製造する際に反応性イオンエッチング等による加工よりもコストの低い方法を使用することができ、インクジェットヘッド301を容易に製造することができる。また、図示はしないが、ノズルとインク流路を別の基板を用いて製造した上で接合し、その後、薄膜圧電体素子を固着することによって、インクジェットヘッドを製造することもできる。この場合、例えば、ノズルは機械加工で製造し、インク流路はめっきで形成することもできる。
(可変焦点レンズ)
次に、可変焦点レンズについて、図21、図22を参照して説明する。
図21は、本発明に関連する可変焦点レンズ401の概略の構成を示した平面図、図22は同じく図21の22−22線断面図である。可変焦点レンズ401は、レンズ本体部410と、2つの薄膜圧電体素子412,412とを有している。
レンズ本体部410は、透明基板402と、金属性筐体403と、透明弾性体404と、透明ジェル状樹脂405と、金属リング部材406とを有している。
透明基板402は、ガラス等の透明な部材からなり、矩形状に形成されている。金属性筐体403は、透明基板402に沿った大きさを有する平面視矩形状の筒状体であって、内側が筒状空隙部403aになっている。金属性筐体403は、例えばステンレスを用いて形成されている。透明弾性体404は、透明ポリマー等の透明で弾性を有し、容易に変形する材料からなり、金属性筐体403の筒状空隙部403aに隙間なく嵌合している。また、透明弾性体404は、内側が円筒状空隙部404aになっている。透明ジェル状樹脂405は、シリコーン樹脂等からなり、透明弾性体404の円筒状空隙部404aに納められている。透明ジェル状樹脂405は、円筒状空隙部404aの内壁に隙間なく嵌合することで円柱状を呈している。金属リング部材406は、適度な厚さを備えた円環状の部材であって、円筒状空隙部404a内において、透明ジェル状樹脂405の表面に載置されている。
そして、薄膜圧電体素子412,412は、透明弾性体404を跨いで金属リング部材406と金属性筐体403とに架け渡され、その両者に図示しない接着剤を用いて固着されている。各薄膜圧電体素子412,412は、透明ジェル状樹脂405の中心を通る直線上に、その中心を挟んで対向するように並べられている。
薄膜圧電体素子412、412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、各薄膜圧電体素子412、412は、図示しない電極端子を有している。各電極端子には図示しない配線が接続されている。
以上の構成を有する可変焦点レンズ401は、次のようにして製造される。まず、前述した下地膜15とともにシリコンウェハ2を研磨やエッチング等によって除去して、薄膜圧電体素子412,412を製造する。そして、その薄膜圧電体素子412,412を図示しない接着剤によってレンズ本体部410に固着すると、可変焦点レンズ401が製造される。
このような可変焦点レンズ401について、各薄膜圧電体素子412、412に配線を通して電力を供給すると、各薄膜圧電体素子412、412が変形する。その変形に応じて金属リング部材406が押され、これによって、透明ジェル状樹脂405が変形する。こうして、可変焦点レンズ401では、焦点距離を変化させることができる。薄膜圧電体素子412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に抗電界が大きくなっているため、より広範囲の印加電圧に対して直線性の高い安定した動作を行う。また、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、レンズ本体部410への固着が容易に行える。
(可変焦点レンズの変形例)
次に、可変焦点レンズの変形例について、図23を参照して説明する。図23は、変形例に係る可変焦点レンズ451の概略の構成を示した断面図である。可変焦点レンズ451は、レンズ本体部452と、薄膜圧電体素子412,412とを有している。
レンズ本体部452は、透明ガラス基板453,453と、封止樹脂部材454と、透明ジェル状樹脂455とを有している。
透明ガラス基板453,453は、厚さの薄い板状に形成され、適度に湾曲し得る程度の適度な弾性を有している。透明ガラス基板453,453は所定間隔を隔てて対向するように配置されている。透明ガラス基板453,453の間の周囲全体に封止樹脂部材454が固着されている。このような透明ガラス基板453,453、封止樹脂部材454によって密閉空間456が形成され、そこに透明ジェル状樹脂405と同様の透明ジェル状樹脂455が納められている。
そして、薄膜圧電体素子412,412は、一方の透明ガラス基板453の外側に図示しない接着剤を用いて固着されている。これらの薄膜圧電体素子412も、前述の可変焦点レンズ401と同様に図示しない電極端子を有している。電極端子には図示しない配線が接続されている。この配線を通して薄膜圧電体素子412,412に電力を供給すると、薄膜圧電体素子412,412が変形する。その変形に応じて透明ガラス基板453が歪み(または撓み)、これによって、透明ジェル状樹脂455が変形する。こうして、可変焦点レンズ451では、焦点距離を変化させることができる。可変焦点レンズ451においても、薄膜圧電体素子412,412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に抗電界が大きくなっているため、より広範囲の印加電圧に対して直線性の高い安定した動作を行う。また、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、レンズ本体部452への固着が容易に行える。
(脈波センサ)
次に、本発明に関連する脈波センサについて、図24を参照して説明する。図24は、本発明に関連する脈波センサ501の概略の構成を示した断面図である。脈波センサ501は、センサ本体部502と、薄膜圧電体素子512とを有している。
センサ本体部502は、金属性筐体504と、封止部材505と、可撓性部材からなる振動板503と、金属パッド507と、配線部材509と、リード線510とを有している。
金属性筐体504はアルミニウムやステンレス等の金属で形成されている。金属性筐体504は中央に凹部501aが形成され、その周囲を取り囲むように壁部501bが形成された有底円筒状の部材である。封止部材505は、シリコーンゴム等の弾性を有する部材からなり、金属性筐体504の壁部501bと、振動板503との間に固着されている。振動板503は、直径が約10mm程度で、厚さが0.1mm程度の円板状に形成されている。振動板503は、例えばステンレス等の金属を用いて変形可能に形成されている。
金属パッド507は、Au,Cr,Cu等からなり、エポキシ樹脂等の接着剤506bを用いて振動板503の内側(凹部501a側)に固着されている。金属パッド507は、Au等からなる配線部材509によって、薄膜圧電体素子512に接続されている。また、金属パッド507は、はんだ508によって、リード線510にも接続されている。リード線510は図示しない電源に接続されている。
そして、薄膜圧電体素子512は、エポキシ樹脂等の接着剤506aを用いて振動板503の内側(凹部501a側)に固着されている。薄膜圧電体素子512は、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、薄膜圧電体素子512は、配線部材509が接続されている。
このような脈波センサ501は、次のようにして使用する。振動板503を図示しない人の腕などの人体に接触させる。すると、その人体の脈動が振動板503に伝わり、振動板503が変形する。振動板503が変形すると、それに応じて薄膜圧電体素子512が変形し、その変形に応じた微弱な電気信号(脈波信号)が薄膜圧電体素子512から出力される。その電気信号は、配線部材509、金属パッド507およびリード線510を介して外部に出力される。これを図示しないアンプで増幅すると、脈波信号の波形を観測することができる。こうして、脈波センサ501によって、脈波信号を検出することができる。薄膜圧電体素子512は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に抗電界が大きくなっているため、より広範囲の入力に対して直線性の高い電気出力が得られる。また、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、振動部材503への固着が容易に行える。
なお、上記の説明では、センサとして、脈波センサを例にとって説明しているが、本発明は、圧力センサ、振動センサ、加速度センサ、荷重センサなど様々なセンサに適用可能である。
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
本発明を適用することにより、より広範囲の印加電圧に対して安定した圧電特性が得られ、できるだけ広い範囲の印加電圧に対して直線性の優れた動作が行われるようにすることができる。本発明は、薄膜圧電体基板、薄膜圧電体素子およびその製造方法の分野で利用することができる。
1…薄膜圧電体基板、2…シリコンウェハ、3…積層膜、10…素子部、12a,12b,112b,312a、312b、312c,412,512…薄膜圧電体素子、13…圧電体膜、13A…凹凸面、14…応力均衡化膜、19a…下部端子電極、19b…上部端子電極、27,127…上部電極膜、50…サスペンション、60…ヘッドスライダ、101…HGA、201…ハードディスク装置、301…インクジェットヘッド、302…ヘッド本体部、303a,303b,303c…ノズル、304a,304b,304c…インク流路、306a,306b,306c…インク室、401…可変焦点レンズ、410,452…レンズ本体部、405,455…透明ジェル状樹脂、501…脈波センサ、502…センサ本体部、503…振動板。

Claims (10)

  1. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板であって、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、前記xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
    前記圧電体膜が引っ張り応力を有し、
    前記積層膜は、前記上部電極膜上に積層された応力均衡化膜を更に有し、該応力均衡化膜は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備え、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成され、
    前記上部電極膜は、前記凹凸面側の下面から前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有し、
    前記上部電極膜の前記応力均衡化膜側の上面が前記圧電体膜の前記凹凸面に応じた凹凸面であり、前記上部電極膜の前記上面に前記応力均衡化膜が形成されている薄膜圧電体基板。
    dv>0.02x+0.398
  2. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板であって、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、前記xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
    前記圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、
    前記圧電体膜の前記凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、該上部密着膜は、前記凹凸面側の下面から前記上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有する薄膜圧電体基板。
    dv>0.02x+0.398
  3. 前記圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、
    前記圧電体膜の前記凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、該上部密着膜は、前記凹凸面側の下面から前記上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有する請求項1記載の薄膜圧電体基板。
  4. 前記圧電体膜は、抗電界が20Vよりも大きい請求項1〜3のいずれか一項記載の薄膜圧電体基板。
  5. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層され、かつ複数の素子部が形成されている積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板から前記成膜用基板が除去された後の各前記素子部を用いて製造されている薄膜圧電体素子であって
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、前記xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
    前記素子部が前記上部電極膜に接続されている上部端子電極と、前記下部電極膜に接続されている下部端子電極とを有し、
    前記圧電体膜が引っ張り応力を有し、
    前記積層膜は、前記上部電極膜上に積層された応力均衡化膜を更に有し、該応力均衡化膜は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備え、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成され、
    前記上部電極膜は、前記凹凸面側の下面から前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有し、
    前記上部電極膜の前記応力均衡化膜側の上面が前記圧電体膜の前記凹凸面に応じた凹凸面であり、前記上部電極膜の前記上面に前記応力均衡化膜が形成されている薄膜圧電体素子。
    dv>0.02x+0.398
  6. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層され、かつ複数の素子部が形成されている積層膜が成膜用基板の表面に形成されている薄膜圧電体基板から前記成膜用基板が除去された後の各前記素子部を用いて製造されている薄膜圧電体素子であって、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記圧電体膜は、一般式Pb(Zr ,Ti (1−x) )O で表されるチタン酸ジルコン酸鉛からなり、前記xについて、0.53<x<0.70の条件を満たし、かつ表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合し、さらに表面垂直方向に(100)面配向することによって形成され、
    前記素子部が前記上部電極膜に接続されている上部端子電極と、前記下部電極膜に接続されている下部端子電極とを有し、
    前記圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、
    前記圧電体膜の前記凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、該上部密着膜は、前記凹凸面側の下面から前記上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有する薄膜圧電体素子。
    dv>0.02x+0.398
  7. 前記圧電体膜は、エピタキシャル成長によって形成されたエピタキシャル膜であり、かつ3μmよりも大きい膜厚を有し、さらに結晶構造が菱面体晶であり、
    前記圧電体膜の前記凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、該上部密着膜は、前記凹凸面側の下面から前記上部電極膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有する請求項5記載の薄膜圧電体素子。
  8. 前記圧電体膜は、抗電界が20Vよりも大きい請求項5〜7のいずれか一項記載の薄膜圧電体素子。
  9. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層された積層膜が複数の成膜用基板の表面に形成される積層膜形成工程と、
    前記積層膜に対するエッチングを行うことによって、該積層膜に複数の素子部を形成する素子部形成工程と、
    該各素子部における前記下部電極膜、前記上部電極膜にそれぞれ下部端子電極、上部端子電極を形成する電極形成工程とを有し、
    前記積層膜形成工程は、前記複数の成膜用基板を対象として、X線回折法による(002)面の回折強度ピークの回折角を測定する測定工程を有し、
    前記複数の成膜用基板のうち、前記測定工程によって得られた前記回折角に基づき求められた表面垂直方向の格子定数dv(単位はnm)に関する下記の格子定数条件に適合する格子定数条件適合基板を用いて薄膜圧電体素子を製造する薄膜圧電体素子の製造方法。
    dv>0.02x+0.398
  10. 基板の表面に絶縁膜が形成されている絶縁基板を製造する絶縁基板製造工程と、
    前記絶縁膜と前記上部電極膜とが対向するように、前記成膜用基板と前記絶縁基板とを積層する基板積層工程と、
    該基板積層工程によって積層された積層基板のうちの前記絶縁基板または前記成膜用基板のいずれか一方を除去する基板除去工程とを更に有し、
    該基板除去工程の実行後に前記素子部形成工程を実行する請求項9記載の薄膜圧電体素子の製造方法。
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