JP6387289B2 - 薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにそれを有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサ - Google Patents

薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにそれを有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサ Download PDF

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Description

本発明は、薄膜状の圧電体および電極を有する薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにその薄膜圧電体素子を有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサに関する。
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。その薄膜磁気ヘッドが形成されている部品がヘッドスライダと呼ばれ、ヘッドスライダが先端部に装着されている部品がヘッドジンバルアセンブリ(HGAともいう)である。
そして、ハードディスク装置では、記録媒体を回転させながらヘッドスライダをその記録媒体の表面から浮上させることによって、記録媒体に対するデータの記録や再生が行われる。
一方、ハードディスク装置の大容量化に伴う記録媒体の高記録密度化が進展してきたことにより、ボイスコイルモータ(以下「VCM」ともいう)のみの制御では、薄膜磁気ヘッドの正確な位置制御が困難になった。そのため、従来、VCMによる主アクチュエータに加えて、補助的なアクチュエータ(補助アクチュエータ)をHGAに搭載し、その補助アクチュエータによって、VCMでは制御できない微小な位置制御を行う技術が知られている。
主アクチュエータおよび補助アクチュエータによって、薄膜磁気ヘッドの位置制御を行う技術は、2段アクチュエータシステム(デュアルステージシステム)とも呼ばれている。
2段アクチュエータシステムでは、主アクチュエータが駆動アームを回転させて、ヘッドスライダを記録媒体の特定のトラック上に位置決めする。また、補助アクチュエータが薄膜磁気ヘッドの位置が最適となるようにヘッドスライダの位置を微調整する。
従来、補助アクチュエータとして、薄膜圧電体素子を用いたマイクロアクチュエータが知られている。薄膜圧電体素子は、圧電体とこれを挟むように形成された一対の電極膜とを有し、そのそれぞれが薄膜状に形成されている。
そして、従来、薄膜圧電体素子として、例えば、特許文献1に開示されているように、圧電体を含む圧電積層体を2つ重ね合わせた2層構造の薄膜圧電体素子が知られていた。
圧電積層体は、圧電体と電極膜とが基板上に形成された構造を有し、意図しない方向への変位(屈曲変位ともいう)を引き起こすことがある。また、圧電積層体を構成している各膜の応力が均一でないことや、厚さ方向に沿って対称になっていないことのため、電圧を加えていない状態でも圧電積層体が反ってしまうという課題があった。そのため、圧電積層体をHGAの所望の位置に搭載することができなくなったり、搭載する際に圧電積層体が破損するといった課題があった。ところが、特許文献1の薄膜圧電体素子のように、一対の電極膜のうち、外部につながる電極膜が対向するように、各圧電積層体を積層すると、それぞれが引き起こす屈曲変位が相殺される。そのため、薄膜圧電体素子全体の屈曲変位を抑制する効果が得られ、その上、各圧電積層体の反りが打ち消されることによって、薄膜圧電体素子が破損することなくHGAに搭載されやすくなる効果が得られた。
しかしその一方、2層構造の薄膜圧電体素子は、圧電積層体を接着することによって積層することが必要になる。そのため、2層構造の薄膜圧電体素子には、量産性を高めることと、製造コストを低減することとがいずれも困難であるという課題があった。
そこで、従来、薄膜圧電体素子の製造方法として、圧電体と基板との間に生じる応力が製造段階で開放されるようにすることで、単層の圧電積層体でも、屈曲変位や反りを抑制できるようにする方法が提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
一方、単層の圧電積層体は、複数の薄膜を積層しなければならないため、圧電積層体の内部に応力が発生することを避けることができない。そのため、従来、特許文献3、4に開示されている圧電体素子が知られていた。特許文献3には、一方の電極を2層構造とし、その外側を内側よりも圧縮応力の小さい材料で形成して、一方の電極全体の応力を緩和している圧電体素子が開示されている。また、特許文献4には、緩和層を介在させて2つの圧電体を重ね、その両側に2つの電極を配置した構造の圧電体素子が開示されている。
特開2003−101095号公報 特許第4897767号公報 特開2012−76387号公報 特開平11−87791号公報
上記特許文献2〜4に記載されているように、従来、単層の圧電積層体において、その応力を抑制しようとする提案があった。
しかし、特許文献2に記載されている製造方法では、複数の薄膜を形成した基板を2枚用意しなければならないため、材料にかかるコストが増大するという課題があった。また、基板を貼り合わせる際に特殊な器具や装置を必要とするため、そのためのコストもかかる。そのうえ、貼り合わせの工程を経ることで歩留まりが低下したり、2枚の基板が剥がれるおそれもあった。したがって、特許文献2の製造方法では、量産性を高めることと、製造コストを低減することとがいずれも困難であった。しかも、接着層同士が剥がれて、圧電積層体に隙間やクラックが形成されるおそれもあった。
一方、特許文献3,4に記載されている圧電積層体(薄膜圧電素子)は、応力を緩和する層(応力緩和層)を有している。
しかし、特許文献3に記載されている圧電積層体の場合は、電極の応力が軽減されることに起因して、圧電積層体の応力が軽減できるに過ぎなかった。また、特許文献4に記載されている圧電積層体の場合は、一方の圧電体から他方の圧電体に伝達され得る応力が軽減されることに起因して、圧電積層体の応力が軽減できるに過ぎなかった。そのため、これらの従来技術では、圧電積層体の反りを十分に抑制することはできなかった。また、ハードディスク装置に用いられる補助アクチュエータでは、屈曲変位を要しないところ、これらの従来技術では、その屈曲変位を抑制することもできなかった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにそれを有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサにおいて、単層の圧電積層体でも、反りと屈曲変位を十分に抑制できるようにし、しかも、薄膜同士の密着性を高めた薄膜圧電体素子を量産性とコスト低減効果とを損なうことなく製造できるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子であって、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されている薄膜圧電体素子を特徴とする。
上記薄膜圧電体素子の場合、応力均衡化膜が、素子応力を打ち消し得る内部応力を備え、これが上部電極膜上に形成されていることで、素子応力とその内部応力との均衡が確保されている。また、圧電体膜が凹凸面を有し、その上に上部電極膜が形成されているから、圧電体膜と上部電極膜との接触面積が拡大されている。
また、上記薄膜圧電体素子は、凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、その上部密着膜は、凹凸面側の下面から応力均衡化膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込む程度の膜厚を有し、その上部密着膜の上部電極膜側の上面が圧電体膜の凹凸面に応じた凹凸面であり、その上部密着膜の上面に上部電極膜が形成されていることが好ましい。
この薄膜圧電体素子の場合、上部密着膜を介して上部電極膜が形成されているから、圧電体膜と上部電極膜との密着性が高い。
さらに、上記薄膜圧電体素子の場合、上部電極膜は、凹凸面側の下面から応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が凹部に入り込む程度の膜厚を有し、上部電極膜の応力均衡化膜側の上面が圧電体膜の凹凸面に応じた凹凸面であり、上部電極膜の上面に応力均衡化膜が形成されていることが好ましい。
上部電極膜の上面が圧電体膜に応じた凹凸面であるから、応力均衡化膜との接触面積が平面の場合よりも拡大されている。しかも、その上に形成されている応力均衡化膜が材料に起因した応力と、結晶粒の成長に起因した圧縮応力との双方による応力を有している。
そして、応力均衡化膜は、鉄を主成分とする合金材料を用いて形成され、かつ成膜の際に形成される結晶粒であって、上部電極膜上に形成される複数の結晶粒のうちの隣接する結晶粒が成長に伴い接触することで粒界近傍に発生する圧縮応力を有し、その圧縮応力を含む内部応力を有することが好ましい。
また、下部電極膜は、貴金属を主成分とする面心立方構造の(100)配向膜として形成され、上部電極膜は、凹凸面上に形成されている第1の金属層と、その第1の金属層上に形成されている第2の金属層とを有し、その第1の金属層が貴金属を主成分として形成され、その第2の金属層が第1の金属層よりもヤング率が大きく、かつ貴金属を含まない合金材料を用いて形成されていることが好ましい。
この薄膜圧電体素子の場合、下部電極膜を構成する貴金属と、第1の金属層を構成する貴金属とが同じ元素で構成されているようにすることができる。
また、第2の金属層の厚さが第1の金属層の厚さよりも大きいことが好ましい。
上部電極膜は、第1の金属層の凹凸面側の下面から第2の金属層の応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が凹部に入り込む程度の膜厚を有し、第2の金属層の応力均衡化膜側の上面が圧電体膜の凹凸面に応じた凹凸面であり、第2の金属層の上面に応力均衡化膜が形成されていることが好ましい。
応力均衡化膜は、隣接する結晶粒の間に結晶粒同士が接しないことで得られる中空部を有するようにすることができる。
さらにまた、下部電極膜における圧電体膜側の上面に形成された下部密着膜を更に有し、その下部密着膜上に圧電体膜が形成されていることが好ましい。
この薄膜圧電体素子の場合、応力均衡化膜、上部電極膜の順にそれぞれの膜厚が小さいことが好ましい。
そして、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子の製造方法であって、以下の(1)〜(4)の各工程を有する薄膜圧電体素子の製造方法を提供する。
(1) 基板上に下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程
(2) 下部電極膜上にスパッタリングによって圧電体膜を形成するにあたり、圧電体の成膜に係る成膜速度、基板温度、ガス圧およびガス組成を含む成膜パラメータを制御することにより、圧電体膜の基板から離れた側の上面を、凸部および凹部を有し、その凸部が高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面である凹凸面とする圧電体膜形成工程
(3) 凹凸面上に上部電極膜を形成する上部電極膜形成工程
(4) 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が基板に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を上部電極膜上に形成する応力均衡化膜形成工程
また、本発明は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子の製造方法であって、以下の(5)〜(8)の各工程を有する薄膜圧電体素子の製造方法を提供する。
(5) 基板上に下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程
(6) 下部電極膜上にゾルゲル法によって圧電体膜を形成するにあたり、圧電体の成膜に係るスピンコート回転数、乾燥温度、プリベーク温度および加圧アニールの酸素圧力と温度を含む成膜パラメータを制御することにより、圧電体膜の基板から離れた側の上面を、凸部および凹部を有し、その凸部が高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面である凹凸面とする圧電体膜形成工程
(7) 凹凸面上に上部電極膜を形成する上部電極膜形成工程
(8) 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が基板に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を上部電極膜上に形成する応力均衡化膜形成工程
また、上記製造方法の場合、以下の(9)、(10)の各工程を更に有し、応力均衡化膜、上部電極膜および上部密着膜の順にそれぞれの膜厚が小さくなり、かつ上部密着膜の凹凸面側の下面から応力均衡化膜側の上面までの少なくとも半分の部分が凹部に入り込むように、上部密着膜形成工程、上部電極膜形成工程および応力均衡化膜形成工程を実行することが好ましい。
(9) 下部電極膜における基板から離れた側の上面に下部密着膜を形成する下部密着膜形成工程
(10) 凹凸面に上部密着膜を形成する上部密着膜形成工程
そして、本発明は、薄膜磁気ヘッドが形成されているヘッドスライダと、そのヘッドスライダを支持するサスペンションと、ヘッドスライダをサスペンションに対して相対的に変位させる薄膜圧電体素子とを有するヘッドジンバルアセンブリであって、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されているヘッドジンバルアセンブリを提供する。
また、本発明は、薄膜磁気ヘッドが形成されているヘッドスライダと、そのヘッドスライダを支持するサスペンションと、ヘッドスライダをサスペンションに対して相対的に変位させる薄膜圧電体素子とを有するヘッドジンバルアセンブリと、記録媒体とを備えたハードディスク装置であって、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されているハードディスク装置を提供する。
さらに、本発明は、複数のノズルおよびその各ノズルに連通する複数のインク室を備えたヘッド本体部と、そのヘッド本体部の各インク室に対応して形成され、各インク室に納められているインクを記録信号にしたがい各ノズルから押し出すように変形する薄膜圧電体素子とを有するインクジェットヘッドであって、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されているインクジェットヘッドを提供する。
また、本発明は、透明基板を備えたレンズ本体部の内側に透明樹脂が納められ、そのレンズ本体部に透明樹脂を変形させる薄膜圧電体素子が固着されている可変焦点レンズであって、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されている可変焦点レンズを提供する。
さらに、本発明は、凹部が形成されているセンサ本体部と、その凹部を覆うようにそのセンサ本体部に装着されている可撓性部材と、その可撓性部材を変形させるようにその可撓性部材に固着されている薄膜圧電体素子とを有するセンサであって、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、圧電体膜における上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、その凸部がその凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつその凹部がその中心面よりも凹状に窪んだその凸部に続く湾曲面であり、その凹凸面上に上部電極膜が形成され、薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が上部電極膜から下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、その応力均衡化膜が、その素子応力とその内部応力との均衡が確保されるように、上部電極膜上に形成されているセンサを提供する。
以上詳述したように、本発明によれば、薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにそれを有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサにおいて、単層の圧電積層体でも、反りと屈曲変位を十分に抑制できるようにし、しかも、薄膜同士の密着性を高めた薄膜圧電体素子を量産性とコスト低減効果とを損なうことなく製造できるようになる。
本発明の実施の形態に係るHGAの全体を表側からみた斜視図である。 図1のHGAの要部を表側からみた斜視図である。 図1のHGAを構成するサスペンションの要部を表側からみた斜視図である。 フレクシャの薄膜圧電体素子が固着されている部分を拡大して示した斜視図である。 図4の5−5線断面図である。 薄膜圧電体素子のうちの圧電体膜から応力均衡化膜までの部分を拡大した断面図である。 同じく圧電体膜を拡大した断面図である。 圧電体膜の上面を模式的に示した平面図である。 (a)は、圧電体膜上に上部電極膜が形成される状態を模式的に示した断面図、(b)は(a)の後続の工程を示す断面図である。 (a)は、図9(b)の後続の工程を示す断面図、(b)は(a)の後続の工程を示す断面図である。 (a)は、応力均衡化膜の要部を拡大して模式的に示した側面図、(b)は同じく平面図である。 本発明の実施の形態に係る薄膜圧電体素子の製造工程を示す断面図である。 図12の後続の製造工程を示す断面図である。 図13の後続の製造工程を示す断面図である。 本発明者が製造した薄膜圧電体素子における圧電体膜から上部電極膜までの部分のSEM画像である。 図15の要部を拡大したSEM画像である。 図16の要部を拡大したSEM画像である。 応力均衡化膜のTEM画像である。 図18のSADパターンを示すTEM画像である。 図6の要部を拡大した断面図である。 (a)は、変形例にかかる圧電体膜を模式的に示した平面図、(b)は別の変形例にかかる圧電体膜を模式的に示した平面図である。 フレクシャの本発明の変形例に係る薄膜圧電体素子が固着されている部分の図5と同様の断面図である。 変形例に係る薄膜圧電体素子のうちの圧電体膜から応力均衡化膜までの部分を拡大した断面図である。 (a)は、図23の要部を拡大した図6と同様の断面図、(b)は、(a)の要部を拡大した断面図である。 本発明の実施の形態に係るHGAを備えたハードディスク装置を示す斜視図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッドの概略の構成を示した断面図である。 本発明の実施の形態に係る可変焦点レンズの概略の構成を示した平面図である。 図27の28−28線断面図である。 変形例にかかる可変焦点レンズの概略の構成を示した断面図である。 本発明の実施の形態に係る脈波センサの概略の構成を示した断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
(HGAの構造)
まず、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態に係るHGAの構造について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るHGA1の全体を表側からみた斜視図、図2はHGA1の要部を表側からみた斜視図である。図3はHGA1を構成するサスペンション50の要部を表側からみた斜視図である。また、図4はフレクシャ6の薄膜圧電体素子12bが固着されている部分を拡大して示した斜視図、図5は図4の5−5線断面図である。
そして、HGA1は図1に示したように、サスペンション50と、ヘッドスライダ60とを有している。サスペンション50は、ベースプレート2と、ロードビーム3と、フレクシャ6と、図示しないダンパーとを有し、これらが溶接等により接合一体化された構造を有している。
ベースプレート2はサスペンション50を後述するハードディスク装置201の駆動アーム209に固定するための部品であって、ステンレス等の金属を用いて形成されている。
ロードビーム(Load beam)3はベースプレート2に固定されている。ロードビーム3はベースプレート2から離れるにしたがい幅が漸次狭まる形状を有している。ロードビーム3はヘッドスライダ60をハードディスク装置201の後述するハードディスク202に押し付ける力を発生する荷重曲げ部を有している。
そして、フレクシャ6は、図1〜図5に示したように、フレクシャ基板4と、ベース絶縁層5と、接続配線11と、薄膜圧電体素子12a,12bとを有し、さらに後述する保護絶縁層25を有している。フレクシャ6は、フレクシャ基板4上にベース絶縁層5が形成され、その上に接続配線11および薄膜圧電体素子12a,12bが固着された構造を有している。さらに、接続配線11および薄膜圧電体素子12a,12bを被覆するように、保護絶縁層25が形成されている。
フレクシャ6は、ベース絶縁層5の表面に接続配線11に加えて薄膜圧電体素子12a,12bが固着されたことによって圧電素子付きになった圧電素子付き構造を有している。
また、フレクシャ6は、先端側(ロードビーム3側)にジンバル部10を有している。ジンバル部10には、ヘッドスライダ60が搭載される舌部19が確保され、その舌部19よりも先端側に複数の接続パッド20が形成されている。接続パッド20はヘッドスライダ60の図示しない電極パッドに電気的に接続されている。
このフレクシャ6は、薄膜圧電体素子12a,12bを伸縮させ、これに伴い、舌部19の外側に張り出したステンレス部分(アウトリガー部分ともいう)を伸縮させる。これにより、ヘッドスライダ60の位置が、図示しないディンプルを中心にしてごく僅かに動くことで、ヘッドスライダ60の微小な位置制御が行われる。
フレクシャ基板4は、フレクシャ6の全体を支える基板であって、ステンレスを用いて形成されている。その裏面がベースプレート2と、ロードビーム3に溶接によって固定されている。フレクシャ基板4は図1に示したように、ロードビーム3およびベースプレート2の表面に固定されるセンター部4aと、ベースプレート2から外側に延びる配線部4bとを有している。
ベース絶縁層5は、フレクシャ基板4の表面を被覆している。ベース絶縁層5は例えばポリイミドを用いて形成され、5μm〜10μm程度の厚さを有している。また、ベース絶縁層5は、図3に詳しく示したように、ロードビーム3上に配置される部分が二股に分かれて、その一方が第1の配線部5a、他方が第2の配線部5bとなっている。そのそれぞれの表面に薄膜圧電体素子12aと、薄膜圧電体素子12bとが固着されている。
接続配線11は、第1の配線部5a,第2の配線部5bのそれぞれの表面に複数本ずつ形成されている。各接続配線11は、銅などの導体を用いて形成されている。各接続配線11は、それぞれの一端側が薄膜圧電体素子12a,12bまたは各接続パッド20に接続されている。
保護絶縁層25は例えばポリイミドを用いて形成されている。保護絶縁層25は例えば1μm〜2μm程度の厚さを有している。
そして、ヘッドスライダ60には、データの記録再生を行う図示しない薄膜磁気ヘッドが形成されている。また、ヘッドスライダ60には、図示しない複数の電極パッドが形成され、その各電極パッドが接続パッド20に接続されている。
(薄膜圧電体素子の構造)
続いて、薄膜圧電体素子の構造について、前述した図5とともに図6〜図8、図20を参照して説明する。ここで、図6は、薄膜圧電体素子12bのうちの後述する圧電体膜13から応力均衡化膜14までの部分を拡大した断面図、図7は、同じく圧電体膜13を拡大した断面図、図8は圧電体膜13の上面を模式的に示した平面図、図20は図6の要部を拡大した断面図である。なお、図6、図7、図20は、図示の都合上、各膜の凹凸が強調して記載されている。
薄膜圧電体素子12b(薄膜圧電体素子12aも同様)は、図5に示すように、下地膜15と、下部電極膜17と、下部密着膜16aと、圧電体膜13と、上部密着膜16bと、上部電極膜27および応力均衡化膜14とを有し、これらが順に積層されている積層構造を有している。薄膜圧電体素子12bは、後述する素子応力F12と内部応力F14との均衡が確保されるように、応力均衡化膜14が上部電極膜27上に形成されている。薄膜圧電体素子12b、12aは図示しないエポキシ樹脂を用いてベース絶縁層5の表面に固着されている。
なお、本願発明における「上部」および「下部」は、必ずしも薄膜圧電体素子がベース絶縁層5上に固着されている状態の上側、下側を示すものではない。これらは、圧電体膜13を挟んで対向する2つの電極膜などを区別するために用いた便宜上の用語である。実際の製品では、上部電極膜27および上部密着膜16bが下側に配置され、下部電極膜17および下部密着膜16aが上側に配置されていることもある。
圧電体膜13は、チタン酸ジルコン酸鉛((Pb(Zr,Ti)O)、以下「PZT」ともいう)等の圧電材料を用いて薄膜状に形成されている。圧電体膜13は、エピタキシャル成長によって形成され、厚さが2μm〜5μm程度に形成されている。圧電体膜13は、PZTを用いる代わりに、チタン酸バリウム、チタン酸鉛といった圧電セラミックス(その多くは強誘電体)や、チタンや鉛を含まない非鉛系の圧電セラミックスを用いることもできる。
そして、本実施の形態において、圧電体膜13は、図6、図7に示すように、上部電極膜27側の表面(上面ともいう)が凹凸面13Aである。凹凸面13Aは、ともに湾曲している複数の凸部13aおよび凹部13bを有している。凹凸面13Aは各凸部13aと凹部13bが凹凸面13Aに沿って交互に配置され、断面形状が波形になっている。各凸部13aと凹部13bとは、緩やかに傾斜した湾曲面であるが、本実施の形態において、凹凸面13Aの高さ方向の中心面13Lよりも外側の凸状に張り出す部分が凸部13a、中心面13Lよりも凹状に窪んだ凸部13aに続く内側の部分が凹部13bである。
また、図8に示すように、例えば、各凸部13aが尾根部13cを有し、各凹部13bが谷底部13dを有していてもよい。尾根部13cは、複数の頂部分がつながり帯状に形成された峰筋部分、谷底部13dは、複数の底部がつながり凸部13aに沿って帯状に形成された溝状部分である。そして、各尾根部13cと谷底部13dは、それぞれ蛇行構造を有し、左右方向(薄膜圧電体素子12bの厚さ方向に交差する方向)に屈曲しながら長さ方向に延びている。なお、図示はしないが、圧電体膜13の上面が図8のように帯状に形成された凸部13aと凹部13bとが交互に配置されているのではなく、大きさや形状の異なる凸部と凹部とが交互に配置されていてもよい。
さらに、図20に示すように、凹凸面13Aは、凸部13aと凹部13bとの高さの差(表面粗さともいう)がt13になっている。そして、この表面粗さt13よりも、後述する上部密着膜16bの膜厚t16b(35nm程度)が同程度か幾分大きい。上部密着膜16bの下面から上面までの少なくとも半分の部分が凹部13bの中に入り込めばよく、図6に示すように、ほぼ全体が入り込んでもよい。これにより、図6、図8に示すように、上部密着膜16bが圧電体膜13の凹凸面13Aに応じた凹凸構造を備え、上部密着膜16bの上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面になる。この場合、上部密着膜16bの上面は、凹凸面13Aに対応した凸部と凹部とを有している。
そして、後述する上部電極膜27の膜厚t27は、少なくとも、上部電極膜27の下面(凹凸面13A側の面)から上面(応力均衡化膜14側の面)までの一部が凹部13bの中に入り込む程度の大きさになっている。膜厚t27がこのような大きさであるため、上部電極膜27も、圧電体膜13の凹凸面13Aに応じた凹凸構造を有し、その上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面になっている。さらに、膜厚t27よりも、後述する応力均衡化膜14の膜厚t14(100nm程度)が大きい(t27<t14)。
下地膜15は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、希土類元素酸化物、窒化チタンなどの窒化物を用いて形成されている。図5に示した下地膜15は、第1の下地膜15aと、第2の下地膜15bとを有し、第1の下地膜15a上に第2の下地膜15bが積層された2層構造を有しているが、2層構造を有していなくてもよい。
下部電極膜17は、例えば、Ptを主成分とする金属材料(Ptのほかに、Au,Ag,Pd,Ir,Ru,Cuを含んでもよい)からなる薄膜(膜厚は100nm程度)であって、下地膜15上に形成されている。下部電極膜17の結晶構造は面心立方構造である。下部密着膜16aは、例えば、SrRuO(SROともいう)等のエピタキシャル成長した導電性材料からなる薄膜(膜厚は20nm程度)であって、下部電極膜17の圧電体膜13側の上面に形成されている。この下部密着膜16a上に圧電体膜13が形成されている。
上部密着膜16bは、例えば、SrRuO等のアモルファス導電性材料からなる薄膜(膜厚は35nm程度)であって、圧電体膜13の凹凸面13A上に形成されている。前述したように、上部密着膜16bの上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面となっている。
上部電極膜27は、例えば、Ptを主成分とする金属材料(Ptのほかに、Au,Ag,Pd,Ir,Rh,Ni,Pb,Ru,Cuを含んでもよい)を用いた多結晶の薄膜(膜厚は50nm程度)であって、上部密着膜16b上に形成されている。前述したように、上部電極膜27の上面も、凹凸面13Aに応じた凹凸面である。また、結晶構造は面心立方構造である。
応力均衡化膜14は、上部電極膜27上に形成されている。応力均衡化膜14は、合金材料を用いた多結晶の薄膜(膜厚は100nm程度)であって、後述する素子応力F12を打ち消し得る(相殺し得る)内部応力F14を有している。
応力均衡化膜14は、例えば、鉄(Fe)を主成分とする合金材料を用いて形成されている。応力均衡化膜14の結晶構造は体心立方構造であることが好ましい。応力均衡化膜14は、例えば、Feと、Co,Mo,Au,Pt,Al,Cu,Ag,Ta,Cr,Ti,Ni,Ir,Nb,Rb,Cs,Ba,V,W,Ruのうちのいずれか少なくとも1つを含む合金材料を用いることが好ましい。また、応力均衡化膜14は、Feと、CoおよびMoを含む合金材料を用いることがよりいっそう好ましい。
ここで、素子応力F12とは、薄膜圧電体素子12bにおいて、下部電極膜17、圧電体膜13および上部電極膜27が、上部電極膜27から下部電極膜17に向かう方向(図5において下向き)の凸状に反る応力のことである。内部応力F14は、応力均衡化膜14が有する応力であって、応力均衡化膜14を外側に広げ、これを上向き凸状に反らせるように作用する。
この圧縮応力を有する応力均衡化膜14が上部電極膜27に形成されると、応力均衡化膜14が上部電極膜27を上向きに引っ張り、内部応力F14が素子応力F12を相殺するように作用して、応力の均衡が確保される。なお、内部応力F14は、応力均衡化膜14を形成する材料に起因した応力F14aと、応力均衡化膜14の後述する結晶粒の成長に起因した応力F14bの双方が加わった応力であるが、詳しくは後述する。
また、応力均衡化膜14は、図11(a)に示すように、複数の中空部14a,14b,14c,14d,14eを有していてもよい。各中空部は、成膜の際に形成される結晶粒のうちの隣接する結晶粒同士が接しないことで得られる微小空隙部分(または点欠陥)である。これらの中空部が存在していることにより、応力均衡化膜14の内部応力が制御しやすくなり、応力の均衡化が容易に行えるようになる。
ここで、図15〜図17は本発明者が製造した薄膜圧電体素子12bにおける圧電体膜13から上部電極膜27までの部分のSEM(Scanning Electron Microscope)画像を示している。これらの図に示すように、圧電体膜13の上面が凹凸構造を有している。図18は、応力均衡化膜14の部分のTEM(Transmission Electron Microscope)画像を示し、図19は、そのSAD(Selected Area Diffraction)パターンを示すTEM画像である。
上部電極膜27、下部電極膜17には、図示しない配線が形成されている。これらの配線は、電極パッド18a,18bを介して接続配線11に接続されている。
保護絶縁層25は、接続配線11および薄膜圧電体素子12a、薄膜圧電体素子12bの表面全体を覆うように、ベース絶縁層5の表面を被覆している。保護絶縁層25は例えばポリイミドを用いて形成され、5μm〜10μm程度の厚さを有している。この保護絶縁層25は、フレクシャ6の図示しないカバー層と共用にして一体に製造されることが望ましい。ただし、薄膜圧電体素子12a、12bが予め保護絶縁層を有しているときは、保護絶縁層25によって薄膜圧電体素子12a、12bを覆わなくてもよい。
そして、フレクシャ6は、この保護絶縁層25が表面に形成されていることによって、接続配線11とともに薄膜圧電体素子12a、薄膜圧電体素子12bが内部に組み入れられた構造(圧電素子組み入れ構造)を有している。
なお、図2〜図4では、図示の都合上、接続配線11および薄膜圧電体素子12a、薄膜圧電体素子12bが示されているが、これらは、保護絶縁層25によって覆われているので、フレクシャ6の表面には露出していない。
(薄膜圧電体素子の製造方法)
続いて、図9,10、図12〜図14を参照して、薄膜圧電体素子12bの製造方法について説明する。薄膜圧電体素子12b(薄膜圧電体素子12aも同様)は次のようにして製造する。
まず、図12に示すように、Siからなる基板51(基板の厚み100〜3000μm程度)を準備し、その上面にZrO等の金属酸化物薄膜をエピタキシャル成長させて下地膜15を形成する。下地膜15は、単一の層でもよいし、図12に示すように、複数の層を重ねて形成しても良い。下地膜15は、好ましくは、ZrO膜、イットリウムを含む希土類元素と酸素との希土類元素酸化物膜、またはそれらの混合物や積層膜を使用することができる。
続いて、下部電極膜形成工程を実行する。この工程では、スパッタリングによってPtを主成分とする金属材料を下地膜15上にエピタキシャル成長させる。このエピタキシャル成長によって下部電極膜17を形成する。次いで、下部密着膜形成工程を実行する。この工程では、例えばSROを用いてスパッタリングによって、下部電極膜17の上面に下部密着膜16aを形成する。
その後、圧電体膜形成工程を実行する。この工程では、図13に示すように、スパッタリングによって、PZT等の圧電材料を下部密着膜16a上にエピタキシャル成長させる。その際、第1の成膜パラメータを制御することにより、圧電材料の表面に粗さを持たせ、上面が前述の凹凸面13Aとなるようにして圧電体膜13を形成する。
ここで、第1の成膜パラメータとは、スパッタリングによって、圧電体膜13の成膜を行う際に調節される各種のパラメータであって、少なくとも、成膜速度、基板温度、ガス圧およびガス組成が含まれている。凹凸面13Aが形成されるときの第1の成膜パラメータの数値を第1の圧電体成膜条件とすることができる。
本願発明者は、種々の実験の結果、シリコン基板上で上記下地膜と下部電極膜および下部密着膜を積層したエピタキシャル膜上にPZT膜をスパッタリングによってエピタキシャル成長させる場合において、以下の第1の圧電体成膜条件から適切に選択された数値の組み合わせでPZT膜を形成することにより、上面に所望の粗さが出現し、凹凸面13Aが形成されることを見出した。
第1の圧電体成膜条件
成膜速度は0.1〜3μm/h程度、基板温度は350〜750℃程度、ガス圧は0.01〜10Pa程度、ガス組成は、酸素分圧を1〜10%程度としたアルゴンと酸素の混合ガスとする。
そのため、圧電体膜形成工程では、第1の圧電体成膜条件を満たすように第1の成膜パラメータを制御することによって、凹凸面13Aを有する圧電体膜13を形成することができる。一般に、基板温度を高くすると、表面が荒れて凸部と凹部の大きさが大きくなりやすく、基板温度を低くすると凸部と凹部の大きさが小さくなり平坦になりやすい。本願発明者は、この点を考慮したうえで種々の実験を行った結果、前述の第1の圧電体成膜条件が見出された。
また、圧電体膜形成工程は、次のようにして実行することもできる。この場合、ゾルゲル法によって、PZT等の圧電材料を下部密着膜16a上にエピタキシャル成長させる。その際、第2の成膜パラメータを制御することにより、凹凸面13Aを有する圧電体膜13が形成される。
第2の成膜パラメータとは、ゾルゲル法によって、圧電体膜13の成膜を行う際に調節される各種のパラメータであって、少なくとも、スピンコート回転数、乾燥温度、プリベーク温度および加圧アニールの酸素圧力と温度が含まれている。凹凸面13Aが形成されるときの第2の成膜パラメータの数値を第2の圧電体成膜条件とすることができる。
本願発明者は、種々の実験の結果、シリコン基板上で上記下地膜と下部電極膜および下部密着膜を積層したエピタキシャル膜上にPZT膜をゾルゲル法によってエピタキシャル成長させる場合において、以下の第2の圧電体成膜条件から適切に選択された条件の組み合わせでPZT膜を形成することにより、上面に所望の粗さが出現し、凹凸面13Aが形成されることを見出した。
第2の圧電体成膜条件
スピンコート回転数は3000〜5000rpm程度、乾燥温度は200〜300℃程度(酸素中)、プリベーク温度は400〜500℃程度(酸素中)、加圧アニールの酸素圧力と温度は、3〜10気圧程度、600〜800℃程度とする。
続いて、上部密着膜形成工程を実行する。この工程では、図14に示すように、例えばSROを用いてスパッタリングによって圧電体膜13の凹凸面13A上に上部密着膜16bを形成する。
後述するように、後の工程で上部電極膜27と、応力均衡化膜14とが順に上部密着膜16b上に形成される。本実施の形態では、上部密着膜16bが凹凸面13Aと同様の凹凸構造を有し、上部電極膜27も凹凸面13Aと同様の凹凸構造を有するようにするため、上部密着膜形成工程、上部電極膜形成工程および応力均衡化膜形成工程を次のようにして実行する。すなわち、上部密着膜16b、上部電極膜27および応力均衡化膜14の膜厚を圧電体膜13の膜厚の数%程度(1〜3%程度)とし、しかも、圧電体膜13に近い順に、すなわち、応力均衡化膜14、上部電極膜27および上部密着膜16bの順にそれぞれの膜厚が小さくなるようにする。
この場合、上部電極膜27および上部密着膜16bの膜厚が圧電体膜13に比べて極めて小さい極微小な厚さとなる。すると、上部密着膜16bの下面から上面までの少なくとも半分の部分が凹部13bの中に入り込むため、上部密着膜16bを形成した後もその上面に凹凸面13Aの凹凸構造が残り、上面が平坦にならない。さらに、上部電極膜27の形成後もその上面に凹凸面13Aの凹凸構造が残る。
応力均衡化膜14よりも先に形成される上部密着膜16bおよび上部電極膜27という2つの層が応力均衡化膜14よりも小さい膜厚で形成されている。そのため、凹凸面13A上にこれら2つの層が形成された後も、上面(上部電極膜27の上面)に明確な凹凸構造が出現する。したがって、後述するように、応力均衡化膜14に結晶粒の成長に起因した圧縮応力が発生する。
そして、上部電極膜形成工程では、スパッタリングによってPtを主成分とする金属材料を上部密着膜16b上に成長させ、上部電極膜27を形成する。上部電極膜はエピタキシャル成長膜ではなく、多結晶の無配向膜、または(110)面や(111)面の優先配向膜である。
以上のように、下部密着膜形成工程と、上部密着膜形成工程とが実行されることにより、圧電体膜13と、上部電極膜27とがそれぞれ下部密着膜16a、上部密着膜16bを介して、下部電極膜17、圧電体膜13上に積層される。
その後、応力均衡化膜形成工程を実行する。この工程では、スパッタリングによって、鉄(Fe)を主成分とする合金材料(例えば、Fe、CoおよびMoを含む合金材料)を用いて応力均衡化膜14を形成する。すると、薄膜圧電体素子12bが得られる。
なお、薄膜圧電体素子12bは基板51を用いて製造しているが、下地膜15とともにその基板51を研磨やエッチング等によって除去する。それから、必要に応じてポリイミド等の保護膜を形成し、端子を形成した後、薄膜圧電体素子12a、12bが、エポキシ樹脂を用いて後に舌部19となる部分に固着される。
ここで、図9,10を参照して、上部電極膜形成工程において、圧電体膜13上に上部電極膜27が形成される状態について説明すると、次のとおりである。なお、図9,10では、上部密着膜16bの図示を省略している。
図9(a)に示すように、まず、上部電極膜27を成膜するための複数の結晶粒27a,27b,27c,27d,27eが凹凸面13A上に形成される。その後、これらの結晶粒27a,27b,27c,27d,27eが成長する。この場合、凹凸面13が凹凸構造を有しているため、各27a,27b,27c,27d,27eの成長方向が同じ方向とはならない。そのため、図9(b)に示すように、成長するに伴い、隣接する結晶粒の一部が接触を始める。例えば、図9(b)に示すように、結晶粒27bと27c、27cと27dがそれぞれc1、c2部分で接触する。
さらに各27a,27b,27c,27d,27eが成長を続けると、図10(a)に示すように、接触している結晶粒同士の間(粒界近傍で)に互いを遠ざけようとする反発力が作用する。すると、反発力は図10(b)に示すように、上部電極膜27を外側に広げるようにして作用する。そのため、この反発力は、上部電極膜27の全体では、圧縮応力f1、f2となって現れる。上部電極膜27はこのような圧縮応力f1、f2を有している。その圧縮応力f1、f2は、上部電極膜27を上向きに反り返そうとする方向に作用する。
そして、前述したように、こうして形成される上部電極膜27も凹凸面13Aと同様に凹凸構造を有していることから、応力均衡化膜14にも、圧縮応力f1、f2と同様の圧縮応力F14bが発生している。この圧縮応力F14bが応力均衡化膜14の結晶粒の成長に起因した応力である。
(薄膜圧電体素子の作用効果)
以上のように、薄膜圧電体素子12aは、圧電体膜13と、応力均衡化膜14とを有するため、次のような作用効果を有する。すなわち、圧電体膜13の凹凸面13Aには、上部密着膜16bが形成されているが、その膜厚が微小であり、その上面が凹凸面13Aと同様の凹凸面になっている。そのため、上部密着膜16b上に形成されている上部電極膜27が、圧縮応力となる内部応力を有している。
また、上部電極膜27の上面も、凹凸面13Aと同様の凹凸面になっているから、応力均衡化膜14も、圧縮応力となる応力F14bを有している。応力均衡化膜14は、凹凸構造を有する膜上での結晶粒の成長に起因した応力F14bと、材料に起因した応力F14aとを含む内部応力を有し、材料に起因した応力F14aだけを有する薄膜よりも、強い応力を発生する。これが上部電極膜27上に形成されていることで、素子応力F12と内部応力F14との均衡が確保されているから、薄膜圧電体素子12bは、従来よりも応力均衡化作用が高い。これにより、薄膜圧電体素子12bでは、素子内部の厚み方向に沿った応力のバランスがより確実に確保されている。
素子応力F12だけが作用している状態では、薄膜圧電体素子12bが素子応力F12の作用する方向に反ってしまう。ところが、薄膜圧電体素子12bでは、これに加えて内部応力F14が作用し、両応力のバランスが確実に確保されている。そのため、薄膜圧電体素子12bの反りが十分に抑制されている。このように、薄膜圧電体素子12bは、単層の圧電積層体でありながら、電圧が加えられていなくてもその反りが十分に抑制されるとともに、屈曲変位も抑制することができる。したがって、薄膜圧電体素子12bは、HGAに適したものとなっている。
応力均衡化膜14の結晶構造が体心立方構造なので、応力均衡化膜14は、小さい膜厚ながら大きな圧縮応力を発生する。上部電極膜27の結晶構造が面心立方構造なので、応力均衡化膜14との界面近傍に圧縮応力を発生する。また、これらの結晶構造が異なっているため、外力によるクラック等が発生し難く、したがって、薄膜圧電体素子12bの信頼性が高くなっている。
また、薄膜圧電体素子12bは、下部密着膜16aと、上部密着膜16bとを有しているから、下部電極膜17、圧電体膜13および上部電極膜27の密着性が高められている。しかも、圧電体膜13の凹凸面13Aが凹凸構造を有し、上部密着膜16bおよび上部電極膜27もこれと同様の凹凸構造を有している。すると、各膜が平坦である場合よりも、他の膜との接触面積が拡大されているため、膜同士の密着性がより高められている。
また、薄膜圧電体素子12bは、製造過程で基板上に積層した複数の構造体を貼り合わせる必要がないため、製造過程で構造体の位置合わせのためのステップは不要である。したがって、薄膜圧電体素子12bは、従来に比べて製造工程の簡略化が可能であり、その分、製造コストを低減することもできる。よって、薄膜圧電体素子12bは、量産性とコスト低減効果とを損なうことなく製造することができる。
しかも、接着層同士の貼り合わせも不要なので、接着層同士が剥がれるおそれがなく、圧電積層体の間に隙間やクラックが形成されるおそれもない。薄膜圧電体素子12bは、その分、素子の信頼性が高められている。
そのほか、凹凸面13Aの凸部13a,凹部13bが蛇行構造を有しているときは、上部密着層16bと凹凸面13Aとの接触面積が拡大される。そうすると、圧電体膜13と上部密着層16bの密着性がよりいっそう高められ、よりいっそう信頼性が高くなる。また、圧電体膜13がエピタキシャル成長によって形成されているので、粒界のない均質な膜であり、圧電特性が良好である。
(変形例1)
前述した圧電体膜13の場合、図8に示したように、凸部13aおよび凹部13bが蛇行構造を有していたが、さらに、図21(a)に示すように、凸部13aおよび凹部13bが概ね直線上に形成されていてもよい。
また、圧電体膜13は、図21(b)に示すように、長さ方向に沿って凸部と、凹部とが交互に配置されて蛇行している複数の帯状部13v1,13v2,13v3,13v4を有していてもよい。
(変形例2)
続いて、変形例に係る薄膜圧電体素子112bについて、図22〜図24を参照して説明する。図22は、フレクシャ6の変形例に係る薄膜圧電体素子112bが固着されている部分の図5と同様の断面図である。図23は薄膜圧電体素子112bのうちの圧電体膜13から応力均衡化膜14までの部分を拡大した断面図である。図24の(a)は、図23の要部を拡大した図6と同様の断面図、(b)は、(a)の要部を拡大した断面図である。
薄膜圧電体素子112bは、前述の薄膜圧電体素子12bと比較して、上部電極膜27の代わりに上部電極膜127を有する点で相違している。上部電極膜127は、上部電極膜27と比較して、第1の金属層127aと、第2の金属層127bとを備え、第1の金属層127a上に第2の金属層127bが形成された2層構造を有する点で相違している。
第1の金属層127aは、貴金属(例えばPt)を主成分として形成されている。第2の金属層127bは第1の金属層127aよりもヤング率が大きく、かつ貴金属を含まない合金材料(例えばFeを主成分とする合金材料)を用いて形成されている。図24(b)に示すように、第2の金属層127bの厚さtbが、第1の金属層127aの厚さtaよりも大きい大きさに形成されている。
また、薄膜圧電体素子112bでは、下部電極膜17を構成する貴金属と、第1の金属層127aを構成する貴金属とが同じ元素で構成されている。例えば双方ともPtを主成分として構成することができる。薄膜圧電体素子112bでは、下部電極膜17がPt等の貴金属を主成分とする面心立方構造の(100)配向膜として形成されている。
そして、図24(a)に示すように、上部電極膜127は、上部電極膜27と同様に、第1の金属層127aの下面(凹凸面13A側の面)から第2の金属層127bの上面(応力均衡化膜14側の面)までの一部が凹部13bに入り込む程度の膜厚を有している。さらに、第2の金属層127bの上面が凹凸面13Aに応じた凹凸面であり、その上面に応力均衡化膜14が形成されている。
以上のように、薄膜圧電体素子112bでは、上部電極膜127が第1、第2の金属層127a、127bを含む2層構造を有し、第2の金属層127bを構成する金属材料のヤング率が第1の金属層127aを構成する金属材料のヤング率よりも大きいため、上部電極膜127の反りが効果的に抑制されている。上部電極膜127のように、上側(応力均衡化膜14側)が下側よりもヤング率の高い材料で形成された2層構造の場合、上部電極膜27のような一層構造よりも圧縮応力となる内部応力が強まる。そのうえ、第1の金属層127aの厚さtaよりも第2の金属層127bの厚さtbが大きいから、内部応力がより強まる。そのため、上部電極膜127は、薄膜圧電体素子112bの反りを強力に抑制する。したがって、薄膜圧電体素子112bの応力均衡化作用は、上部電極膜127を有することによって、薄膜圧電体素子12bよりも良好になっている。
また、上部電極膜127の上面が上部電極膜27と同様の凹凸面になっているから、薄膜圧電体素子12bと同様、応力均衡化膜14は、材料に起因した応力F14aに加えて結晶粒の成長に起因した応力F14bを有し、強い応力を発生する。よって、薄膜圧電体素子112bは、薄膜圧電体素子12bよりも、素子内部の厚み方向に沿った応力のバランスがより確実に確保されている。
上部電極膜127の結晶構造が面心立方構造であり、応力均衡化膜14の結晶構造と異なっている。そのため、外力を受けたときに応力均衡化膜14から上部電極膜127にクラックが貫通し難くなり、薄膜圧電体素子112bの信頼性が向上する。
さらに、下部電極膜17がPt等の貴金属を主成分とする面心立方構造の(100)配向膜として形成されているから、圧電体膜13側の上面で、効果的に圧縮応力が発生する。
(実施例)
本願発明者は、前述の圧電体成膜条件にしたがい圧電体膜13を形成し、その後、Fe、CoおよびMoを含む合金材料を用いた応力均衡化膜14を形成して薄膜圧電体素子12bを形成した。その結果、素子の反りが大幅に低減され、厚み方向への屈曲変位も抑えることができた。さらに、応力均衡化膜14を有しない薄膜圧電体素子を形成し、両者の長手方向への単位電圧あたりの変位(stroke sensitivity)を比較したところ、前者(応力均衡化膜14を有する薄膜圧電体素子12b)のstroke sensitivityが、後者のstroke sensitivityよりも約40%以上改善されていることが確認された。
また、X-ray Diffraction(XRD)測定の結果、Ptを主成分とする下部電極膜、SRO等からなる下部密着膜およびPZT等からなる圧電体膜がともにエピタキシャル成長していることが確認された。下部電極膜は面心立方構造の(100)面が膜面の法線方向に向いた(100)配向エピタキシャル膜であった。FeCoMoからなる応力均衡化膜は体心立方構造の(110)面が膜面の法線方向に向いた(110)配向の多結晶膜であった。
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図25を参照して説明する。
図25は、上述のHGA1を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、HGA1とを有している。ハードディスク装置201は、HGA1を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面がヘッドスライダ60に対向している。
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、ヘッドスライダ60をトラック上に位置決めする。このヘッドスライダ60に図示しない薄膜磁気ヘッドが形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アーム209は、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アーム209の先端にHGA1が取りつけられている。
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
ハードディスク装置201は、HGA1を回転させると、ヘッドスライダ60がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
このようなHGA1およびハードディスク装置201を前述した薄膜圧電体素子12a,12bを用いて製造した場合、薄膜圧電体素子12a,12bの反りが抑制されているため、その搭載(ベース絶縁層5への固着)が容易に行える。そのうえ、薄膜圧電体素子12a,12bを搭載する際のそれらの破損が抑制されるため、HGA1およびハードディスク装置201を製造するときの歩留まりが改善する。
また、薄膜圧電体素子12a,12bが単層でありながらstroke sensitivityが高いため、従来の薄膜圧電体素子を用いた場合に比べ、長手方向の変位を効率良く発生させることができ、薄膜磁気ヘッドの位置を効果的に調整できる。さらに、薄膜圧電体素子12a,12bが単層でありながら屈曲変位を確実に抑制できる程度に応力均衡化作用が高い。しかも、薄膜同士の密着性が高いため、HGA1およびハードディスク装置201を量産性とコスト低減効果とを損なうことなく製造できる。
(インクジェットヘッドの実施の形態)
次に、インクジェットヘッドの実施の形態について、図26を参照して説明する。
図26は、インクジェットヘッド301の概略の構成を示した断面図である。インクジェットヘッド301は、薄膜圧電体素子312a、312b、312cを用いて製造されている。インクジェットヘッド301は、ヘッド本体部302と、薄膜圧電体素子312a、312b、312cとを有している。
ヘッド本体部302は、インク流路構造体303と、振動部材305とを有している。
インク流路構造体303は、複数(図26では3個)のノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cが形成された基板303Aを備え、各ノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cに対応するようにして、複数のインク室306a,306b,306cが形成されている。各インク室306a,306b,306cは、側壁部307によって仕切られ、そのそれぞれがインク流路304a,304b,304cを介してノズル303a,303b,303cに連通している。各インク室306a,306b,306cには図示しないインクが納められる。インク流路構造体303は、樹脂、金属、シリコン(Si)基板、ガラス基板、セラミックスなどの様々な材料を用いて製造することができる。
振動部材305は、複数のインク室306a,306b,306cを覆うようにインク流路構造体303に固着されている。振動部材305は、例えば酸化シリコン(SiO)などからなり、3.5μm程度の厚さを有している。そして、振動部材305の外側に、各インク室306a,306b,306cに対応するようにして、薄膜圧電体素子312a、312b、312cが固着されている。薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、接着剤313を用いて振動部材305に固着されている。
各薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、各薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、図示しない電極端子を有している。各電極端子には図示しない配線が接続されている。
ヘッド本体部302およびインクジェットヘッド301は、次のようにして製造することができる。まず、基板303Aに機械加工によってノズル303a,303b,303cおよびインク流路304a,304b,304cを形成する。次に、インク室306a,306b,306cが機械加工またはエッチングによって形成された側壁部307を基板303Aに固着する。または側壁部307がめっきによって基板303Aに形成される。すると、インク流路構造体303が製造される。その後、振動部材305をインク流路構造体303に固着すると、ヘッド本体部302が製造される。
そして、前述した下地膜15とともに基板51を研磨やエッチング等によって除去して、薄膜圧電体素子312a,312b,312cを製造し、これらをエポキシ樹脂等の接着剤313を用いて振動部材305に固着する。すると、インクジェットヘッド301が製造される。
こうして製造されるインクジェットヘッド301について、図示しない電源から配線および電極端子を通じて薄膜圧電体素子312a、312b、312cに電力を供給すると、図26に示すように、例えば、薄膜圧電体素子312bの変形によって、振動部材305に湾曲部305dが形成される。すると、各インク室306a,306b,306cに納められているインクが押し出され、そのインクがインク流路304a,304b,304cおよびノズル303a,303b,303cを介して吐出される。
薄膜圧電体素子312a、312b、312cは、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、振動部材305への固着が容易に行える。さらに、ヘッド本体部302とは別の基板上に製造した薄膜圧電体素子が振動部材305に固着されているため、薄膜圧電体素子312a、312b、312cが効率よく配置されている。そのうえ、基板303Aの材料に対する制約が少なくなるため、インクジェットヘッド301は、従来よりも製造コストを低減することができる。
また、インクジェットヘッド301は、従来のように、シリコン基板上に下部電極膜、圧電体膜、上部電極膜を形成し、そのシリコン基板上に反応性イオンエッチング等によってインク流路およびノズルを形成する場合に比べて、ヘッド本体部302における材料の制約が少なくなり、ヘッド本体部302に種々の材料を用いることができる。そのため、ヘッド本体部302を製造する際に反応性イオンエッチング等による加工よりもコストの低い方法を使用することができ、インクジェットヘッド301を容易に製造することができる。また、図示はしないが、ノズルとインク流路を別の基板を用いて製造した上で接合し、その後、薄膜圧電体素子を固着することによって、インクジェットヘッドを製造することもできる。この場合、例えば、ノズルは機械加工で製造し、インク流路はめっきで形成することもできる。
(可変焦点レンズの実施の形態)
次に、可変焦点レンズの実施の形態について、図27、図28を参照して説明する。
図27は、実施の形態にかかる可変焦点レンズ401の概略の構成を示した平面図、図28は同じく図27の28−28線断面図である。可変焦点レンズ401は、レンズ本体部410と、2つの薄膜圧電体素子412,412とを有している。
レンズ本体部410は、透明基板402と、金属性筐体403と、透明弾性体404と、透明ジェル状樹脂405と、金属リング部材406とを有している。
透明基板402は、ガラス等の透明な部材からなり、矩形状に形成されている。金属性筐体403は、透明基板402に沿った大きさを有する平面視矩形状の筒状体であって、内側が筒状空隙部403aになっている。金属性筐体403は、例えばステンレスを用いて形成されている。透明弾性体404は、透明ポリマー等の透明で弾性を有し、容易に変形する材料からなり、金属性筐体403の筒状空隙部403aに隙間なく嵌合している。また、透明弾性体404は、内側が円筒状空隙部404aになっている。透明ジェル状樹脂405は、シリコーン樹脂等からなり、透明弾性体404の円筒状空隙部404aに納められている。透明ジェル状樹脂405は、円筒状空隙部404aの内壁に隙間なく嵌合することで円柱状を呈している。金属リング部材406は、適度な厚さを備えた円環状の部材であって、円筒状空隙部404a内において、透明ジェル状樹脂405の表面に載置されている。
そして、薄膜圧電体素子412,412は、透明弾性体404を跨いで金属リング部材406と金属性筐体403とに架け渡され、その両者に図示しない接着剤を用いて固着されている。各薄膜圧電体素子412,412は、透明ジェル状樹脂405の中心を通る直線上に、その中心を挟んで対向するように並べられている。
薄膜圧電体素子412、412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、各薄膜圧電体素子412、412は、図示しない電極端子を有している。各電極端子には図示しない配線が接続されている。
以上の構成を有する可変焦点レンズ401は、次のようにして製造される。まず、前述した下地膜15とともに基板51を研磨やエッチング等によって除去して、薄膜圧電体素子412,412を製造する。そして、その薄膜圧電体素子412,412を図示しない接着剤によってレンズ本体部410に固着すると、可変焦点レンズ401が製造される。
このような可変焦点レンズ401について、各薄膜圧電体素子412、412に配線を通して電力を供給すると、各薄膜圧電体素子412、412が変形する。その変形に応じて金属リング部材406が押され、これによって、透明ジェル状樹脂405が変形する。こうして、可変焦点レンズ401では、焦点距離を変化させることができる。薄膜圧電体素子412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、レンズ本体部410への固着が容易に行える。
(可変焦点レンズの変形例)
次に、可変焦点レンズの変形例について、図29を参照して説明する。図29は、変形例に係る可変焦点レンズ451の概略の構成を示した断面図である。可変焦点レンズ451は、レンズ本体部452と、薄膜圧電体素子412,412とを有している。
レンズ本体部452は、透明ガラス基板453,453と、封止樹脂部材451,454と、透明ジェル状樹脂455とを有している。
透明ガラス基板453,453は、厚さの薄い板状に形成され、適度に湾曲し得る程度の適度な弾性を有している。透明ガラス基板453,453は所定間隔を隔てて対向するように配置されている。透明ガラス基板453,453の間の周囲全体に封止樹脂部材451,454が固着されている。このような透明ガラス基板453,453、封止樹脂部材451,454によって密閉空間456が形成され、そこに透明ジェル状樹脂405と同様の透明ジェル状樹脂455が納められている。
そして、薄膜圧電体素子412,412は、一方の透明ガラス基板453の外側に図示しない接着剤を用いて固着されている。これらの薄膜圧電体素子412も、前述の可変焦点レンズ401と同様に図示しない電極端子を有している。電極端子には図示しない配線が接続されている。この配線を通して薄膜圧電体素子412,412に電力を供給すると、薄膜圧電体素子412,412が変形する。その変形に応じて透明ガラス基板453が歪み(または撓み)、これによって、透明ジェル状樹脂455が変形する。こうして、可変焦点レンズ451では、焦点距離を変化させることができる。可変焦点レンズ451においても、薄膜圧電体素子412,412は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、レンズ本体部452への固着が容易に行える。
(脈波センサの実施の形態)
次に、脈波センサの実施の形態ついて、図30を参照して説明する。図30は、実施の形態にかかる脈波センサ501の概略の構成を示した断面図である。脈波センサ501は、センサ本体部502と、薄膜圧電体素子512とを有している。
センサ本体部502は、金属性筐体504と、封止部材505と、可撓性部材からなる振動板503と、金属パッド507と、配線部材509と、リード線510とを有している。
金属性筐体504はアルミニウムやステンレス等の金属で形成されている。金属性筐体504は中央に凹部501aが形成され、その周囲を取り囲むように壁部501bが形成された有底円筒状の部材である。封止部材505は、シリコーンゴム等の弾性を有する部材からなり、金属性筐体504の壁部501bと、振動板503との間に固着されている。振動板503は、直径が約10mm程度で、厚さが0.1mm程度の円板状に形成されている。振動板503は、例えばステンレス等の金属を用いて変形可能に形成されている。
金属パッド507は、Au,Cr,Cu等からなり、エポキシ樹脂等の接着剤506bを用いて振動板503の内側(凹部501a側)に固着されている。金属パッド507は、Au等からなる配線部材509によって、薄膜圧電体素子512に接続されている。また、金属パッド507は、はんだ508によって、リード線510にも接続されている。リード線510は図示しない電源に接続されている。
そして、薄膜圧電体素子512は、エポキシ樹脂等の接着剤506aを用いて振動板503の内側(凹部501a側)に固着されている。薄膜圧電体素子512は、前述した薄膜圧電体素子12bと同じ構成を有している。また、薄膜圧電体素子512は、配線部材509が接続されている。
このような脈波センサ501は、次のようにして使用する。振動板503を図示しない人の腕などの人体に接触させる。すると、その人体の脈動が振動板503に伝わり、振動板503が変形する。振動板503が変形すると、それに応じて薄膜圧電体素子512が変形し、その変形に応じた微弱な電気信号(脈波信号)が薄膜圧電体素子512から出力される。その電気信号は、配線部材509、金属パッド507およびリード線510を介して外部に出力される。これを図示しないアンプで増幅すると、脈波信号の波形を観測することができる。こうして、脈波センサ501によって、脈波信号を検出することができる。薄膜圧電体素子512は、前述した薄膜圧電体素子12bと同様に反りが抑制されているため、振動部材503への固着が容易に行える。
なお、上記の実施の形態では、センサとして、脈波センサを例にとって説明しているが、本発明は、圧力センサ、振動センサ、加速度センサ、荷重センサなど様々なセンサに適用可能である。
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
本発明を適用することにより、単層の圧電積層体でも、反りと屈曲変位を十分に抑制できるようになり、しかも、薄膜同士の密着性を高めた薄膜圧電体素子を量産性とコスト低減効果とを損なうことなく製造することができる。本発明は、薄膜圧電体素子およびその製造方法並びにそれを有するヘッドジンバルアセンブリ、ハードディスク装置、インクジェットヘッド、可変焦点レンズおよびセンサに利用することができる。
1…HGA、2…ベースプレート、3…ロードビーム、4…フレクシャ基板、5…ベース絶縁層、6…フレクシャ、11…接続配線、12a,12b,112b,312a、312b、312c,412,512…薄膜圧電体素子、13…圧電体膜、13A…凹凸面、13a…凸部、13b…凹部、13c…尾根部、13d…谷底部、13L…中心面、14…応力均衡化膜、14a,14b,14c…中空部、17…下部電極膜、25…保護絶縁層、27,127…上部電極膜、50…サスペンション、60…ヘッドスライダ、127a…第1の金属層、127b…第2の金属層、201…ハードディスク装置、301…インクジェットヘッド、302…ヘッド本体部、303a,303b,303c…ノズル、304a,304b,304c…インク流路、306a,306b,306c…インク室、401…可変焦点レンズ、410,452…レンズ本体部、405,455…透明ジェル状樹脂、501…脈波センサ、502…センサ本体部、503…振動板。

Claims (19)

  1. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子であって、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されている薄膜圧電体素子。
  2. 前記凹凸面に形成されている上部密着膜を更に有し、該上部密着膜は、前記凹凸面側の下面から前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有し、
    該上部密着膜の前記上部電極膜側の上面が前記圧電体膜の前記凹凸面に応じた凹凸面であり、該上部密着膜の前記上面に前記上部電極膜が形成されている請求項1記載の薄膜圧電体素子。
  3. 前記上部電極膜は、前記凹凸面側の下面から前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有し、
    前記上部電極膜の前記応力均衡化膜側の上面が前記圧電体膜の前記凹凸面に応じた凹凸面であり、前記上部電極膜の前記上面に前記応力均衡化膜が形成されている請求項1または2記載の薄膜圧電体素子。
  4. 前記応力均衡化膜は、鉄を主成分とする合金材料を用いて形成され、かつ成膜の際に形成される結晶粒であって、前記上部電極膜上に形成される複数の結晶粒のうちの隣接する結晶粒が成長に伴い接触することで粒界近傍に発生する圧縮応力を有し、該圧縮応力を含む前記内部応力を有する請求項1〜3のいずれか一項記載の薄膜圧電体素子。
  5. 前記下部電極膜は、貴金属を主成分とする面心立方構造の(100)配向膜として形成され、
    前記上部電極膜は、前記凹凸面上に形成されている第1の金属層と、該第1の金属層上に形成されている第2の金属層とを有し、該第1の金属層が貴金属を主成分として形成され、該第2の金属層が前記第1の金属層よりもヤング率が大きく、かつ貴金属を含まない合金材料を用いて形成されている請求項1〜4のいずれか一記載の薄膜圧電体素子。
  6. 前記下部電極膜を構成する前記貴金属と、前記第1の金属層を構成する前記貴金属とが同じ元素で構成されている請求項5記載の薄膜圧電体素子。
  7. 前記第2の金属層の厚さが前記第1の金属層の厚さよりも大きい請求項5または6記載の薄膜圧電体素子。
  8. 前記上部電極膜は、前記第1の金属層の前記凹凸面側の下面から前記第2の金属層の前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも一部が前記凹部に入り込む程度の膜厚を有し、
    前記第2の金属層の前記応力均衡化膜側の上面が前記圧電体膜の前記凹凸面に応じた凹凸面であり、前記第2の金属層の前記上面に前記応力均衡化膜が形成されている請求項5〜7のいずれか一項記載の薄膜圧電体素子。
  9. 前記応力均衡化膜は、隣接する前記結晶粒の間に前記結晶粒同士が接しないことで得られる中空部を有する請求項4記載の薄膜圧電体素子。
  10. 前記下部電極膜における前記圧電体膜側の上面に形成された下部密着膜を更に有し、該下部密着膜上に前記圧電体膜が形成されている請求項1〜9のいずれか一項記載の薄膜圧電体素子。
  11. 前記応力均衡化膜、上部電極膜の順にそれぞれの膜厚が小さい請求項1〜10のいずれか一項記載の薄膜圧電体素子。
  12. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子の製造方法であって、
    基板上に前記下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程と、
    前記下部電極膜上にスパッタリングによって前記圧電体膜を形成するにあたり、圧電体の成膜に係る成膜速度、基板温度、ガス圧およびガス組成を含む成膜パラメータを制御することにより、前記圧電体膜の前記基板から離れた側の上面を、凸部および凹部を有し、該凸部が高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面である凹凸面とする圧電体膜形成工程と、
    前記凹凸面上に前記上部電極膜を形成する上部電極膜形成工程と、
    前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記基板に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を前記上部電極膜上に形成する応力均衡化膜形成工程とを有する薄膜圧電体素子の製造方法。
  13. 下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有する薄膜圧電体素子の製造方法であって、
    基板上に前記下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程と、
    前記下部電極膜上にゾルゲル法によって前記圧電体膜を形成するにあたり、圧電体の成膜に係るスピンコート回転数、乾燥温度、プリベーク温度および加圧アニールの酸素圧力と温度を含む成膜パラメータを制御することにより、前記圧電体膜の前記基板から離れた側の上面を、凸部および凹部を有し、該凸部が高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面である凹凸面とする圧電体膜形成工程と、
    前記凹凸面上に前記上部電極膜を形成する上部電極膜形成工程と、
    前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記基板に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を前記上部電極膜上に形成する応力均衡化膜形成工程とを有する薄膜圧電体素子の製造方法。
  14. 前記下部電極膜における前記基板から離れた側の上面に下部密着膜を形成する下部密着膜形成工程と、
    前記凹凸面に上部密着膜を形成する上部密着膜形成工程とを更に有し、
    前記応力均衡化膜、上部電極膜および上部密着膜の順にそれぞれの膜厚が小さくなり、かつ前記上部密着膜の前記凹凸面側の下面から前記応力均衡化膜側の上面までの少なくとも半分の部分が前記凹部に入り込むように、前記上部密着膜形成工程、前記上部電極膜形成工程および前記応力均衡化膜形成工程を実行する請求項12または13記載の薄膜圧電体素子の製造方法。
  15. 薄膜磁気ヘッドが形成されているヘッドスライダと、該ヘッドスライダを支持するサスペンションと、前記ヘッドスライダを前記サスペンションに対して相対的に変位させる薄膜圧電体素子とを有するヘッドジンバルアセンブリであって、
    前記薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されているヘッドジンバルアセンブリ。
  16. 薄膜磁気ヘッドが形成されているヘッドスライダと、該ヘッドスライダを支持するサスペンションと、前記ヘッドスライダを前記サスペンションに対して相対的に変位させる薄膜圧電体素子とを有するヘッドジンバルアセンブリと、記録媒体とを備えたハードディスク装置であって、
    前記薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されているハードディスク装置。
  17. 複数のノズルおよび該各ノズルに連通する複数のインク室を備えたヘッド本体部と、該ヘッド本体部の各前記インク室に対応して形成され、各前記インク室に納められているインクを記録信号にしたがい前記各ノズルから押し出すように変形する薄膜圧電体素子とを有するインクジェットヘッドであって、
    前記薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されているインクジェットヘッド。
  18. 透明基板を備えたレンズ本体部の内側に透明樹脂が納められ、該レンズ本体部に前記透明樹脂を変形させる薄膜圧電体素子が固着されている可変焦点レンズであって、
    前記薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されている可変焦点レンズ。
  19. 凹部が形成されているセンサ本体部と、該凹部を覆うように該センサ本体部に装着されている可撓性部材と、該可撓性部材を変形させるように該可撓性部材に固着されている薄膜圧電体素子とを有するセンサであって、
    前記薄膜圧電体素子は、下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が順に積層されている積層構造を有し、
    前記圧電体膜における前記上部電極膜側の上面が凸部と凹部を有する凹凸面であって、該凸部が該凹凸面の高さ方向の中心面よりも凸状に張り出す湾曲面であり、かつ該凹部が該中心面よりも凹状に窪んだ該凸部に続く湾曲面であり、
    該凹凸面上に前記上部電極膜が形成され、
    前記薄膜圧電体素子は、前記下部電極膜、圧電体膜および上部電極膜が前記上部電極膜から前記下部電極膜に向かう方向に凸状に反る素子応力を打ち消し得る内部応力を備えた応力均衡化膜を有し、該応力均衡化膜が、該素子応力と該内部応力との均衡が確保されるように、前記上部電極膜上に形成されているセンサ。
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