特許文献1及び2に開示されているようなサービス側を基準にしてヘルパーを選択する方式によると、ヘルパー側の事情や希望が考慮されなくなるため、一日の移動距離が長くなる、次の訪問先までの待ち時間が長くなるなど、ヘルパーの労働条件が厳しいものとなってしまう可能性がある。特に近年は恒常的なヘルパーの不足から、ヘルパーの待遇や労働条件の改善が社会的な課題となっており、ヘルパー側の事情や希望が反映されるマッチングの仕組みが求められるところである。
これに対して、特許文献3に記載された発明は、営業担当者の訪問先のルートを最適化するものであり、ヘルパーに対応する訪問者の側の事情を考慮した訪問先の巡回ルートの特定に資するものであるが、訪問先があらかじめ決定されていることを前提とするものであり、訪問者と訪問先のマッチングに用いることができるものではない。
一方、特許文献4に記載された発明は、時間の経過に沿って順に訪問先を選択していくものであるが、訪問を行う時間帯を設定し、時間帯毎に訪問先をグループ化して、時間帯毎に一の訪問先を選択していくものであり(特許文献4の段落0021、0029、0030等)、サービスを受ける側が訪問を希望する時間を、あらかじめ定められた時間帯の中から選択しなければならないことが前提となっている。つまり、訪問によってサービスを受ける開始時間や終了時間について、任意の時間を指定することができないため、同一の管理者の下で管理されている、すなわち訪問介護サービスであれば同一の訪問介護事業所(以下「事業所」とする。)によってサービスが提供される訪問先に、マッチングの対象となる訪問先が限定されてしまうことになると考えられる。
マッチングの対象となるのが、一の事業所によってサービスが提供される訪問先に限定されるとすれば、例えば、図1に示したように、事業所Aがサービスを提供する訪問先1−4と事業所Bがサービスを提供する訪問先1−4がヘルパーの訪問を求めているという場合(いずれも時間的には訪問先1−4の順に巡回が可能なものとする)であっても、ヘルパーが事業所Aの訪問先しか巡回できないとすると、事業所Aの訪問先1−4の順に巡回するほかないことになってしまう。
ところが、同じヘルパーが事業所Bの訪問先も巡回できるとすると、図2に示したように、事業所Aの訪問先1、事業所Bの訪問先2、事業所Aの訪問先3、事業所Bの訪問先4の順に巡回することによって、移動距離を短縮してヘルパーの負担を軽減することが可能になる。このように、ヘルパーが複数の事業所によってサービスが提供される訪問先を横断的に巡回することが可能になると、ヘルパーの負担軽減に加えて、事業所にとっても多くのヘルパーに仕事を依頼することが可能になり、マッチングの効率化が促進されることになる。
本発明は、このような課題に対応するためになされたものであり、訪問介護のヘルパーが複数の事業所によって提供される訪問介護サービスを横断的に巡回する際のルートの選定に好適な、訪問先を巡回するルートの特定等に用いることができる、巡回ルート特定サーバ、巡回ルート特定装置及び巡回ルートの特定方法を提供することを目的とするものである。
このような課題を解決する本発明は、訪問先の位置情報及び前記訪問先で提供されるサービスの終了時間を含む訪問先情報を記憶する訪問先情報記憶手段と、複数の訪問先を巡回するルートの選定を希望するユーザが操作する端末から、巡回開始の基準となる位置情報及び巡回の開始時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付けるルート選定依頼受付手段と、前記ルート選定依頼に含まれる位置情報及び巡回の開始時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から最初の訪問先を選択するとともに、前記最初の訪問先の訪問先情報に含まれる訪問先の位置情報及びサービスの終了時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択して、前記最初の訪問先と前記次の訪問先を含む前記ユーザが巡回可能なルートを特定するルート特定手段と、前記ルート特定手段が特定した少なくとも一のルートに関する情報を、前記端末に送信するルート情報送信手段と、を備えることを特徴とする巡回ルート特定サーバである。
また、本発明は、前記ルート特定手段は、前記次の訪問先を選択した後に、さらに選択された前記次の訪問先の訪問先情報に含まれる訪問先の位置情報及びサービスの終了時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択する処理を、次の訪問先の選択が不可となるまで繰り返し、前記最初の訪問先から最後に選択された訪問先までのルートを、前記ユーザが巡回可能なルートとして特定することを特徴とすることもできる。
本発明では、訪問介護等のサービスを提供する訪問先毎に、位置情報とサービスの終了時間に関する情報を保持し、一の訪問先を選択すると選択した訪問先の位置とサービスの終了時間を起点に、次に訪問が可能な訪問先を順に選択して巡回可能なルートを特定するよう構成することによって、訪問先毎にサービスの開始時間や終了時間に任意の時間を設定したとしても、訪問先を巡回するルートを特定することが可能となっている。
また、本発明は、前記訪問先情報記憶手段に記憶された各々の訪問先情報には、訪問先でサービスを提供したユーザに報酬を支払う事業者を特定する事業者情報が含まれ、訪問先でサービスを提供したユーザに報酬を支払う事業者毎に定められた、報酬の支払ルールに関する情報を記憶する支払ルール記憶手段と、前記ルート特定手段が特定したルートに含まれる訪問先について、各々の訪問先の訪問先情報に含まれる前記事業者情報から特定される事業者の前記支払ルール記憶手段に記憶された支払ルールに基づいて、各々の訪問先でサービスを提供することにより発生する報酬額を算出する報酬額算出手段と、を備えていて、前記ルート情報送信手段が送信する情報には、前記報酬額算出手段が算出した報酬額が含まれることを特徴とすることもできる。
このように構成すると、複数の訪問介護事業所等の事業者によってサービスが提供される訪問先を横断して巡回するルートを特定した場合に、事業者によって異なる給与等の報酬の支払ルールに則った報酬額を算出することが可能になり、複数事業所を対象にした訪問介護サービスの訪問先とヘルパーのマッチングに好適な構成となる。
本発明は、前記ルート選定依頼受付手段は、巡回可能な複数のルートから一のルートを選定する判断に用いられる複数の項目のうち、前記ユーザが優先することを選択した優先項目を含むルート選定依頼を受け付け、前記ルート特定手段は、前記ユーザが巡回可能な複数のルートを特定するとともに、各々のルートについて前記優先項目に関する優先順位の決定に用いられる前記優先項目の項目値を計算して、前記ルート特定手段が特定した複数のルートのうち、前記項目値から前記優先項目に関する優先順位が高いと判断されるルートを優先して、前記ユーザに提示するルートを選定するルート選定手段を備えることを特徴としてもよい。
本発明は、前記ルート選定依頼受付手段は、巡回可能な複数のルートから一のルートを選定する判断に用いられる複数の項目のうち、前記ユーザが優先することを選択した優先項目を含むルート選定依頼を受け付け、前記ルート特定手段は、前記優先項目に関する優先順位が反映された前記所定の条件に基づいて、前記次の訪問先を選択することを特徴としてもよい。
訪問先を巡回する複数のルートの中からいずれのルートを希望するかは、ヘルパー等のユーザが報酬額、移動距離、待ち時間等のいずれの項目を優先するかによって異なるが、これらのように構成すると、各々のヘルパー等のユーザが優先する項目に応じて、ルートを選定することが可能になる。尚、前者では、特定した各々のルート毎に報酬額や移動距離等の優先項目の項目値を算出して選定するルートを決定し、後者では、訪問先を選択する処理毎に、報酬額や移動距離等の優先項目における優先順位から訪問先を決定して、ルートを選定する。
さらに、本発明は、前記ルート選定依頼受付手段は、巡回の終了時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付け、前記ルート特定手段は、所定の条件に該当するいずれの訪問先を次の訪問先として選択した場合にも、次の訪問先の訪問先情報に含まれるサービスの終了時間が、前記ルート選定依頼に含まれる巡回の終了時間までに巡回を終了できない時間となる場合に、次の訪問先の選択が不可と判断することを特徴としてもよい。
巡回する訪問先の選択をどの時点で終了するかは、このように構成することによって適切に判断することが可能になる。
さらに、本発明は、訪問先でサービスを提供したユーザに報酬を支払う事業者毎に、サービスへの応募に関する情報を送信するための事業者の宛先情報を記憶する宛先情報記憶手段と、前記ルート情報送信手段が情報を送信したルートへの前記ユーザの応募依頼を受け付けると、前記ルートに含まれる訪問先について、各々の訪問先に対応する事業者の宛先情報を前記宛先情報記憶手段から読み出して、前記宛先情報に指定された宛先に前記ユーザの前記訪問先で提供するサービスへの応募に関する情報を送信する応募情報送信手段と、を備えることを特徴としてもよい。
このように構成すると、複数の訪問介護事業所等の事業者によってサービスが提供される訪問先を横断して巡回するルートを特定した場合に、各々の事業者に対するヘルパー等のユーザのサービスへの応募を効率的に行うことが可能になる。
さらに、本発明は、前記ルート特定手段が特定したルートの最後の訪問先の訪問先情報に含まれる前記訪問先の位置情報と関連付けられた付帯情報を選択して、所定の記憶手段から読み出す付帯情報読出手段を備えていて、前記ルート送信手段が送信する情報には、前記付帯情報読出手段が読み出した付帯情報が含まれることを特徴としてもよい。
このように構成すると、ヘルパー等のユーザが訪問先の巡回を終える位置と時間が特定されるため、特定されたルートともに、終了地点や終了時間に応じた広告等の付帯情報をあわせて提示することとすれば、お買い得情報等のヘルパー等のユーザに対する有益な情報の提供や、広告収入の確保による本発明を用いたマッチングサービスの運営コストの低減などに資する構成となる。
本発明は、本発明に係る巡回ルート特定サーバによって実行される、巡回ルートの特定方法として特定することもできる。
本発明に係る巡回ルートの特定方法は、訪問先の位置情報及び前記訪問先で提供されるサービスの終了時間を含む訪問先情報を記憶する訪問先情報記憶手段を備えた巡回ルート特定サーバが、複数の訪問先を巡回するルートの選定を希望するユーザが操作する端末から、巡回開始の基準となる位置情報及び巡回の開始時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付けるルート選定依頼受付ステップと、前記巡回ルート特定サーバが、前記ルート選定依頼に含まれる位置情報及び巡回の開始時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から、最初の訪問先を選択するとともに、前記最初の訪問先の訪問先情報に含まれる訪問先の位置情報及びサービスの終了時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択して、前記最初の訪問先と前記次の訪問先を含む前記ユーザが巡回可能なルートを特定するルート特定ステップと、前記巡回ルート特定サーバが、前記ルート特定ステップで特定した少なくとも一のルートに関する情報を、前記端末に送信するルート情報送信ステップと、を有することを特徴とする巡回ルートの特定方法である。
また、本発明に係る巡回ルートの特定方法は、本発明に係る巡回ルート特定サーバの各々の構成に対応する、巡回ルートの特定方法として特定することもできる。
本発明は、本発明に係る巡回ルート特定サーバに相当する機能を備えた、巡回ルート特定装置として特定することもできる。
本発明に係る巡回ルート特定装置は、訪問先の位置情報及び前記訪問先で提供されるサービスの終了時間を含む訪問先情報を記憶する訪問先情報記憶手段と、複数の訪問先を巡回するルートの選定を希望するユーザについて入力された、巡回開始の基準となる位置情報及び巡回の開始時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付けるルート選定依頼受付手段と、前記ルート選定依頼に含まれる位置情報及び巡回の開始時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から最初の訪問先を選択するとともに、前記最初の訪問先の訪問先情報に含まれる訪問先の位置情報及びサービスの終了時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択して、前記最初の訪問先と前記次の訪問先を含む前記ユーザが巡回可能なルートを特定するルート特定手段と、前記ルート特定手段が特定した少なくとも一のルートに関する情報を出力するルート情報出力手段と、を備えることを特徴とする巡回ルート特定装置である。
また、本発明に係る巡回ルート特定装置は、本発明に係る巡回ルート特定サーバの各々の構成に対応する、巡回ルート特定装置として特定することもできる。
本発明は、本発明に係る巡回ルート特定装置によって実行される、巡回ルートの特定方法として特定することもできる。
本発明に係る巡回ルートの特定方法は、訪問先の位置情報及び前記訪問先で提供されるサービスの終了時間を含む訪問先情報を記憶する訪問先情報記憶手段を備えた巡回ルート特定装置が、複数の訪問先を巡回するルートの選定を希望するユーザについて入力された、巡回開始の基準となる位置情報及び巡回の開始時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付けるルート選定依頼受付ステップと、前記巡回ルート特定装置が、前記ルート選定依頼に含まれる位置情報及び巡回の開始時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から、最初の訪問先を選択するとともに、前記最初の訪問先の訪問先情報に含まれる訪問先の位置情報及びサービスの終了時間を起点に設定し、前記訪問先情報記憶手段に訪問先情報が記憶された訪問先の中から所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択して、前記最初の訪問先と前記次の訪問先を含む前記ユーザが巡回可能なルートを特定するルート特定ステップと、前記巡回ルート特定装置が、前記ルート特定ステップで特定した少なくとも一のルートに関する情報を出力するルート情報出力ステップと、を有することを特徴とする巡回ルートの特定方法である。
また、本発明に係る巡回ルートの特定方法は、本発明に係る巡回ルート特定装置の各々の構成に対応する、巡回ルートの特定方法として特定することもできる。
本発明によると、訪問先毎にサービスの開始時間や終了時間に任意の時間を設定したとしても、訪問者が訪問先を巡回するルートを特定することができるため、複数の訪問介護事業所が提供する訪問介護サービスを横断的に巡回するケースのように、サービスの開始時間や終了時間が統一されていない訪問先が対象となる場合であっても、ヘルパー等の訪問者側の希望に応じた効率的な訪問先を巡回するルートの作成が可能になる。
本発明は、複数の事業所が提供する訪問介護サービスを対象にしたヘルパーと訪問先のマッチングに特に好適であり、ヘルパーの待遇や労働条件の改善、ヘルパーの効率的な配置等に資するものであるため、訪問介護におけるヘルパーの不足という喫緊の社会問題に対する格段の効果を期待することができるものである。
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、以下の説明では、本発明を複数の事業所が提供する訪問介護サービスのヘルパーと訪問先のマッチングに用いる例について説明するが、この説明は本発明の実施形態の一例を示したものであって、本発明は、訪問看護、リハビリ、理美容のための訪問先を巡回するルートの特定、さらには一般的な営業活動で訪問先を巡回するルートの特定に適用することも可能であり、本発明の目的が訪問介護サービスにおける訪問先を巡回するルートの特定に限定されるものではないことをはじめ、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
図3は、本発明の実施形態の概要を示している。本発明に係る巡回ルート特定サーバに対応する機能は、訪問介護サービスのホームヘルパーであるユーザが操作するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等のユーザ端末から、インターネットを介してアクセスすることができる訪問介護サービスマッチングサーバに備えられている。訪問介護サービスマッチングサーバは、訪問介護事業所の端末やサーバ等から構成される複数の訪問介護事業所システムとインターネットを介して接続され、訪問介護サービスを提供する訪問先に関する情報の登録の受付や、ユーザからの応募情報の送信等が行われている。
各々の事業所は、自らがサービスを提供する各々の訪問先に関する情報(例えば、訪問先の住所、サービスの開始時間及び終了時間、サービスの内容、事業所名等)を、訪問介護事業所システムから訪問介護サービスマッチングサーバの訪問先データベースに登録する。これによって、訪問介護サービスマッチングサーバの訪問先データベースには、複数の事業所が提供するサービスの訪問先に関する情報が蓄積されることになる。なお、訪問先データベースへの訪問先に関する情報の登録は、各々の事業者から電話・メール・書面等の手段により情報の提供を受けたマッチングサービスの提供者が、自ら管理する端末を用いて、訪問介護サービスマッチングサーバに情報を入力することにより行うこともできる。この場合、図3の訪問介護事業所システムは、マッチングサービスの提供者が管理する端末に置き換えられることになる。
訪問介護サービスマッチングサーバのユーザ(ヘルパー)は、ユーザ端末から訪問介護サービスマッチングサーバにアクセスして、自らが訪問を希望する訪問先に関する条件や、巡回を希望するエリアの位置情報、訪問先の巡回の開始時間と終了時間等を指定して、訪問先を巡回するルートの選定依頼を送信する。これを受信した訪問介護サービスマッチングサーバでは、ユーザが指定した条件に従って、指定された開始時間から終了時間の間に巡回が可能な訪問先のルートを選定して、選定したルートをユーザ端末に提示する。
ユーザが提示されたルートで訪問先を巡回することを希望する場合は、ユーザ端末において提示されたルートに含まれる訪問先への応募を行うための操作を実行し、これを受け付けた訪問介護サービスマッチングサーバでは、ユーザの応募情報を該当する事業所の訪問介護事業所システムに送信する。
以上のマッチングの処理において、本発明では、一の事業所のみでなく、複数の事業所がサービスを提供する訪問先を対象にして訪問先を巡回するルートを特定することが必要になるが、一の事業所であれば訪問する時間帯をいくつかのグループに分けて、早い時間から順に時間帯のグループ毎に訪問先を選定していけばよいところ、複数の事業所が対象になると、そうしたサービスを提供する時間帯の統一やグループ化が困難となるため、各々の事業所によって訪問先毎に指定される開始時間と終了時間の設定基準が統一されていないことを前提にしながら、効率的に巡回可能なルートを選定することが必要になる。こうした課題に対して、本発明では以下のアルゴリズムによって、開始時間と終了時間に任意の時間が指定されているケースにも対応できるものとなっている。
図4と図5は、そのアルゴリズムの基本的な考え方を示したものであるが、訪問先の巡回を開始するスタート地点の位置と開始時間(図4では11:00)を起点に設定すると、訪問先データベースを検索して、全ての訪問先、あるいはユーザが訪問先の条件を指定している場合はその条件に該当する訪問先の中から、開始時間にスタート地点にいる状態から訪問が可能な訪問先を、最初に訪問する訪問先の候補として抽出する。
図4では、A01、B02、C01、D01の4つが訪問可能な訪問先に該当するが、各々の訪問先におけるサービスの開始時間と終了時間は統一されていないものの、スタート地点から各々の訪問先までの距離を用いて所要時間を概算し、巡回の開始時間(11:00)に加算して、各々の訪問先のサービスの開始時間と対比することによって、サービスの開始時間までに訪問が可能な訪問先かを判断することが可能になる。尚、上記の所要時間の算出にあたっては、想定される複数の移動手段(徒歩、自転車、バス、電車等)に応じた、複数の所要時間を予め算出しておき、ユーザが指定した移動手段に対応する所要時間を使用することとしてもよい。
尚、ここで選択される訪問先の数が膨大なものとなることを回避するためには、例えば、巡回の開始時間に訪問先までの所要時間を加算した時間と訪問先のサービスの開始時間の差(すなわちサービスを開始するまでの待ち時間)が一定の閾値を超えないことや、移動距離が一定の閾値を超えないこと等を条件にして、最初の訪問先の候補となる訪問先を絞り込むこととすればよい。
抽出された最初の訪問先の候補の中から、最も移動距離が短いもの、最も待ち時間が短いもの、最も給与の条件がよいものなど、何らかの優先項目に従って最初の訪問先を選択する。どの優先項目に従って訪問先を選択するかは、共通のルールを定めておくこととしてもよいし、ユーザに指定させることとしてもよい。
図4の例では、最も待ち時間が短いものを優先して、最初の訪問先としてA01が選択されているが、一の優先項目で訪問先を決定できない場合には、次に優先する項目を設定しておくこととすればよい。また、単純に待ち時間等の値のみにおいて項目毎の優先順位を決定するのではなく、複数の項目の値に重み付けを行って、優先順位を決定する(例えば、「待ち時間優先」の場合には、待ち時間の値に0.6、移動距離と給与の値にそれぞれ0.2の係数を乗じることで重み付けして算出したスコアで、待ち時間を優先する場合の優先順位を決定する等)こととしてもよい。
このようにして最初の訪問先が選択されると、続いて最初の訪問先の位置と最初の訪問先におけるサービスの終了時間(図5では11:45)を起点に設定し、訪問先データベースを検索して、全ての訪問先、あるいはユーザが訪問先の条件を指定している場合はその条件に該当する訪問先の中から、最初の訪問先におけるサービスの終了時間に最初の訪問先の位置にいる状態から訪問が可能な訪問先を、次に訪問する訪問先の候補として抽出する。
図5では、B03、C02、D02の3つが訪問可能な訪問先に該当するが、最初の訪問先の位置から各々の訪問先までの距離を用いて所要時間を概算し、最初の訪問先におけるサービスの終了時間(11:45)に加算して、各々の訪問先のサービスの開始時間と対比することによって、サービスの開始時間までに訪問が可能な訪問先かを判断することができる。
図5の例では、最も待ち時間が短いものを優先して、次の訪問先としC02が選択されているが、待ち時間が一定の閾値を超えないこと等を条件に候補を絞り込んでもよいこと、複数の候補から次の訪問先を選択する際の優先項目は共通のものでもユーザに指定させたものでもよいこと、優先順位を項目毎に重み付けをしたスコアで決定してもよいことは、最初の訪問先を選択する場合と同様である。
このようにして次の訪問先を選択する処理を、ユーザが指定した巡回の終了時間を超過して次の訪問先を選択できなくなるまで繰り返すことによって、訪問先を巡回するルートを選定することができるが、本発明では位置のみでなく、時間(サービスの終了時間)の要素も加えた起点を設定して、対象となる訪問先を絞り込むことによって、各々の訪問先でサービスを提供する開始時間と終了時間の設定基準が統一されていなくても、所定の優先項目に従って好適なルートを選定することが可能となっている。
図6は、本発明に係る巡回ルート特定サーバに対応する機能を備えた、訪問介護サービスマッチングサーバの構成を示している。すなわち、本発明に係る巡回ルート特定サーバは、図6の訪問介護サービスマッチングサーバ10の一部の機能に対応するものである。
訪問介護サービスマッチングサーバ10は、インターネットに接続されたサーバコンピュータであるが、その物理的な構成は特に限定されるものではない。訪問介護サービスマッチングサーバ10は、一台のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、他の機能を備えた一台のコンピュータに備えられるものであってもよい。
訪問介護サービスマッチングサーバ10には、インデックス化処理部15、ルート選定要求受付部16、ルート選定処理部17、給与計算部18、応募処理部19が設けられるが、いずれも機能的に特定されるものであって、各々の機能を実現するためのプログラムが訪問介護サービスマッチングサーバ10の補助記憶装置からメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、各々のプログラムに対応する機能が実現される。
また、訪問介護サービスマッチングサーバ10には、ユーザ情報記憶部11、訪問先情報記憶部12、給与支払ルール記憶部13、事業所情報記憶部14が設けられるが、これらの各部には、訪問介護サービスマッチングサーバ10の補助記憶装置の所定の記憶領域が割り当てられる。これらの記憶領域は、物理的には分散したコンピュータに備えられるものであってもよい。
ユーザ情報記憶部11には、ユーザの認証処理に用いられるIDやパスワード、応募の際に用いられるユーザの住所、氏名等に関する情報が記憶されている。訪問先情報記憶部12には、訪問介護サービスを提供するために訪問する訪問先毎に、訪問先の位置情報及び訪問先で提供されるサービスの終了時間を含む訪問先情報が記憶されている。訪問先情報には、訪問先でサービスを提供したユーザに報酬を支払う事業者(介護事業所)を特定する事業者情報も含むことができる。給与支払ルール記憶部13は、事業者毎に定められた、報酬の支払ルールに関する情報が記憶されている。事業所情報記憶部14は、事業者毎に、サービスへの応募に関する情報を送信するための事業者の宛先情報が記憶されている。
インデックス化処理部15は所定のタイミングで起動されて、訪問先情報記憶部12に記憶された各々の訪問先が最初の訪問先に選択された場合に巡回するルートをインデックス化して、訪問先情報記憶部12の各々の訪問先に関する情報に記憶させる。ルート選定要求受付部16は、ユーザ端末20から、巡回開始の基準となる位置情報及び巡回の開始時間に関する情報を含むルート選定依頼を受け付ける。ルート選定処理部17は、ルート選定依頼に含まれる位置情報及び巡回の開始時間を起点に設定し、訪問先情報記憶部12に訪問先情報が記憶された訪問先の中から最初の訪問先を選択すると共に、所定の条件に基づき訪問が可能な次の訪問先を選択する処理を、次の訪問先の選択が不可となるまで繰り返し、最初の訪問先から最後に選択された訪問先までのルートを、ユーザが巡回可能なルートとして特定する。
また、ルート選定処理部17は、特定した複数のルートのうち、所定の優先項目に関する優先順位が高いと判断されるルートを優先して、ユーザに提示するルートを選定する。給与計算部18は、ルート選定処理部17が特定したルートに含まれる訪問先について、給与支払ルール記憶部13に記憶された事業者毎の報酬の支払いルールに基づいて、各々の訪問先でサービスを提供することにより発生する報酬額を算出する。応募処理部19は、ルート選定処理部17が特定したルートと給与計算部18で計算した報酬額等の情報を、データベースから選択して読み出した広告等の付帯情報を加えてユーザ端末20に送信し、ユーザ端末20からの応募依頼を受け付けると、当該ルートに含まれる訪問先について、各々の訪問先に対応する事業者の宛先情報を事業所情報記憶部14から読み出して、宛先情報に指定された宛先にユーザの応募に関する情報を送信する。
ユーザ端末20には、インターネットに接続して訪問介護サービスマッチングサーバ10と情報の送受信をすることが可能な、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルコンピュータ等のネットワーク端末が用いられる。訪問介護事業所システム30−50には、こうしたネットワーク端末の他、各々の事業所のサーバコンピュータ等を用いることとすればよい。
尚、本発明は、ユーザがユーザ端末20から訪問介護サービスマッチングサーバ10にアクセスして、希望条件の送信や選定されたルートの受信を行う、図6に示した実施形態の他に、ユーザから電話等で希望条件を受け付けたオペレータが、訪問介護サービスマッチングサーバ10に対応する機能を備えたコンピュータに必要な情報を入力し、出力されたルート等をユーザに電子メールやファックス等で通知する実施形態とすることも可能である。こうした実施形態では、ユーザ端末20は、オペレータが情報の入出力を行う端末装置に置換されることになる。
以上の構成を前提として、図7−11のフローチャートに沿って、本発明に係る巡回ルート特定サーバに対応する機能を備えた、訪問介護サービスマッチングサーバ10における処理の流れについて説明する。尚、図7−9のフローチャートは、訪問先を巡回するルートをあらかじめインデックス化しておく第1の実施形態における処理フローを、図10−11のフローチャートは、訪問先を逐次検索して巡回するルートを選定する第2の実施形態における処理フローを示している。
図7−9のフローチャートに示した第1の実施形態は、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された各々の訪問先が、最初の訪問先に選択された場合に巡回するルートをあらかじめインデックス化して記憶させておいて、ユーザ端末20から訪問先を巡回するルートの選定依頼を受け付けた場合には、インデックス化されたルートからユーザが指定した優先項目等に応じて優先度の高いルートを選定するものである。図7のフローチャートは所定のタイミングで実施するインデックス化処理の、図8のフローチャートはインデックス化処理の一部である巡回ルートの特定処理の、図9のフローチャートはユーザからの依頼に応じて巡回ルートを選定する処理の、それぞれ処理フローを示している。
図7のフローチャートに示したインデックス化処理については、所定のタイミング、例えば毎日所定の時刻になると、訪問介護サービスマッチングサーバ10のインデックス化処理部15が起動されて、訪問先情報記憶部12に記憶された各々の訪問先に関する情報を検索しながら、各々の訪問先が最初の訪問先に選択された場合に巡回するルートをインデックス化して、訪問先情報記憶部12の各々の訪問先に関する情報に記憶させる。
まず、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された一の訪問先(1件の訪問介護サービスに対応)を選択する(S01)。その訪問先が最初の訪問先に選択された場合に、その後に巡回するルートは、ユーザが巡回の終了を希望する時間によって異なることになるため、想定される終了希望時間の中から一の終了希望時間を設定する(S02)。また、ユーザが希望する様々な条件(障害者や身体介護、生活支援等への対応の可否や、タバコやペットの有無、介護の難易度、基本給与の最低水準等が該当し、以下「こだわり条件」とする。)の中から、一の組み合わせを選択して設定する(S03)。
図12は、訪問先情報記憶部12に記憶される訪問先に関する情報と、インデックス化されたルートの優先順位の一例を示したものであるが、サービスIDによって識別される訪問介護サービスの訪問先について、ヘルパーとして訪問介護に従事するユーザによる絞り込みが可能なこだわり条件に、それぞれその訪問先で提供するサービスが該当するか否かが記憶されている。この例では、「1」のフラグは該当する、「0」のフラグは該当しないことを示しているが、サービスID「A01」のサービスは、障害者対応が必要になるが、身体介護や生活支援への対応は不要なサービスであり、こうしたこだわり条件をキーに検索することによって、ユーザが希望する条件に合致する訪問先のみを訪問先情報記憶部12から抽出することが可能になっている。
そして、サービスID「A01」のサービスが最初の訪問先に選択された場合に、ユーザが巡回し得るルートは、ユーザが巡回の終了を希望する時間と、ユーザが希望する訪問先の条件であるこだわり条件の組合せによって異なることになるので、図12に示しているように、一の訪問先について、終了希望時間とこだわり条件の組合せの組合せ毎に巡回するルートをインデックス化して記憶させておくことが必要になる。そのため、S02とS03の工程に示した、ルートを特定する前提として、終了希望時間とこだわり条件の組合せを設定する処理が必要になる。
次に、設定されたこだわり条件の組合せによって絞り込まれる訪問先を対象にして、終了希望時間までに巡回が可能な全てのルートをコーディネートする処理を実行する(S04)。この処理の詳細を示したものが、図8のフローチャートである。
まず、S01で選択された訪問先に関する情報に含まれるサービスの終了時間と訪問先の位置を起点に設定して、図5を用いて説明した方法(サービスの開始時間までに到着が可能であり、終了希望時間までにサービスを終了することができる訪問先を選択)によって、対応可能な次の訪問先(訪問介護サービス)を、訪問先情報記憶部12に情報が記憶され、こだわり条件によって絞り込まれた訪問先を対象にして検索する(S11)。
該当する訪問先があれば(S12がYes)、そのうちの一の訪問先を次の訪問先に選択して(S13)、さらに選択された次の訪問先に関する情報に含まれるサービスの終了時間と訪問先の位置を起点に設定して、同様の処理を実行する。この処理を該当する訪問先がなくなるまで(S12がNoとなるまで)繰り返すことによって、巡回可能な一のルートを特定することができる。こうした巡回可能なルートの特定を、検索により該当した全ての訪問先を対象に繰り返すことによって、終了希望時間までに巡回が可能な全てのルートをコーディネートすることができる。
図7のフローチャートに戻ると、コーディネートされた全ての巡回可能なルートについて、各々の訪問先を巡回して得られる給与の総額と、全行程における移動距離(移動時間としてもよい)の合計値、全行程で発生する待ち時間の合計値を計算する(S05)。このうち、移動距離と待ち時間の合計値については、図5を用いて説明した方法によって、移動毎に発生する移動距離と待ち時間を計算できるので、その合計値を算出することとすればよいが、給与の総額については以下の方法によって算出することができる。
本発明は、複数の事業所によって提供される訪問介護サービスの訪問先を横断的にコーディネートすることを前提としているため、訪問先毎に発生する給与の支払ルールが異なることになるのが通常である。各々の訪問先でのサービスに従事することにより発生する基本給は、各々の訪問先に関する情報に含めることとすればよいが、事業所毎に休日手当や資格手当、一日に複数の訪問先を回った場合に加算される手当等が定められている場合があるため、これらを反映して給与の総額を算出できるように、給与支払ルール記憶部13に、図13に例示したような、事業所毎に異なる給与の支払ルールを登録しておく。特定された各々のルートに含まれる訪問先の基本給を合計するとともに、事業所毎に定められた手当を適用することによって、給与の総額を算出することができる。なお,給与計算の方法としては,上記のように基本給を予め計算して,各々の訪問先に関する情報に含めることとしてもよいが,予め基本給を計算せずに,ルートの特定後に,基本給と加算手当を含めた給与の総額をまとめて計算することとしてもよい。これにより,各ルートについて,給与計算のステップを1回で済ませることができる。
尚、資格手当のように、ユーザによって加算の有無が異なる項目については、この段階では加算ありか加算なしかいずれかに統一して計算しておいて、ユーザの依頼に応じてルートを選定する際に、そのユーザの手当の多少となる資格の有無に応じて、給与の総額を再計算することとすればよい。休日手当についても同様に、加算ありか加算なしかいずれかに統一して計算しておいて、ユーザの依頼に応じてルートを選定する際に、巡回する日が休日であるか否かに応じて、給与の総額を再計算することとすればよい。
全ての巡回可能なルートについて、給与の総額と、移動距離の合計値、待ち時間の合計値が算出されると、給与、移動距離、待ち時間の各々の項目毎の値を基準に、項目毎の優先順位が上位となるルートから順にソートしてランク付けを行い、訪問先情報記憶部12の訪問先に関する情報に登録する(S06)。これらはそれぞれ、ユーザが給与優先、移動距離優先、待ち時間優先のように、どの項目を優先項目とするかを指定するかによって、優先的に選定するルートを決定するために用いられるものであり、図12の例にも、給与優先、移動距離優先、待ち時間優先の各々の優先項目が選択された場合に選定するルートの優先順位が、インデックス化して設定されている。
このようにして、一の終了希望時間とこだわり条件の組合せの組合せに対して、給与優先、移動距離優先、待ち時間優先の選択に応じて選定するルートの優先順位がインデックス化されると、一の終了希望時間について、全てのこだわり条件の組合せを対象にインデックス化の処理を繰り返し(S07がNo)、全てのこだわり条件の組合せに対するインデックス化の処理が終了すると(S07がYes)、一の終了希望時間に対するインデックス化の処理が終了する。同様に、想定される全ての終了希望時間を対象にインデックス化の処理を繰り返し(S08がNo)、想定される全ての終了希望時間に対するインデックス化の処理が終了すると(S08がYes)、S01で選択した訪問先に関するインデックス化の処理が終了する。訪問先情報記憶部12に情報が記憶された全ての訪問先についてこの処理を終了するまで(S09がYes)、各々の訪問先を対象に同様の処理を繰り返して(S09がNo)、この時点で実行すべきインデックス化の処理を終了する。
尚、ここでは、ユーザが選択可能な優先項目として、給与優先、移動距離優先、待ち時間優先の3つの項目を採用する例について説明したが、採用する優先項目はこれらの例に限定されるものではなく、他の優先項目を採用することとしてもよいし、一部の優先項目を採用しないこととしてもよい。
また、各々の優先項目が選択された場合に選定されるルートとして、優先順位を定めた複数のルートが設定される例を説明したが、優先順位が最上位のルートのみを設定することも可能である。但し、後にこの情報を用いてルートを選定した際に、そのルートに含まれるいずれかの訪問先については、他のユーザが従事することが決定済みで応募の受付が終了してしまっていることもあり得るので、そうした場合には速やかに次順位のルートを選定することができるように、優先順位を付けて複数のルートを設定しておくことが好ましい。
次に、図9のフローチャートを用いて、ユーザからの依頼に応じて巡回ルートを選定する処理について説明する。ここでは、図7と図8のフローチャートを用いて説明したインデックス化処理が、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された全ての訪問先を対象に、あらかじめ行われていることが前提となる。
ユーザ端末20から、一日に巡回可能なルートの選定依頼として、巡回のスタート地点、曜日(具体的な年月日でもよい)、巡回の開始時間と終了時間、巡回可能なエリア、先に説明したこだわり条件等の希望条件と、ルートの選定に給与、移動距離、待ち時間等のいずれの項目を優先するかという優先項目に関する情報を、訪問介護サービスマッチングサーバ10のルート選定要求受付部16で受け付ける(S21)。ここでユーザ情報記憶部11に記憶されたユーザのIDやパスワードを照合して、ユーザの認証処理を実行することとしてもよい。
ルート選定処理部17では、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された訪問先のうち、受け付けた選定依頼に含まれる曜日や巡回可能なエリア、こだわり条件等から対象となる訪問先を絞り込み、巡回のスタート地点と巡回の開始時間を起点に設定して、図4を用いて説明した方法により、受け付けた選定依頼に含まれる優先項目に従って、最初の訪問先(訪問介護サービス)を選択する(S22)。
訪問先情報記憶部12に記憶された最初の訪問先に関する情報には、先に説明したとおり、終了希望時間とこだわり条件の組合せの組合せに対応して、優先項目毎に選定されるルートの優先順位がインデックス化して設定されているので、受け付けた選定依頼に含まれる巡回の終了時間とこだわり条件の組合せの組合せに対して、選択された優先項目のランクが最上位に設定されているルートを選択して(S23)、そのルートに含まれる全ての訪問先のステータスが応募待ちのステータスであるかを確認する(S24)。
いずれかの訪問先について、他のユーザによる応募が既に受け付けられた等の理由(例えば、訪問介護サービスの利用者が入院して訪問が不要になった場合や、ユーザ本人が過去に応募したものの採用不可となり応募の対象とはならない場合等を含む)で、応募待ちのステータスとなっていない場合には(S25がNo)、そのルートを選定することはできないので、そのルートを除いて最上位となる次順位のルートを選択して(S23)、そのルートに含まれる全ての訪問先のステータスが応募待ちのステータスであるかを確認する(S24)。ルートに含まれる全ての訪問先のステータスが応募待ちとなっていれば(S25がYes)、そのルートをユーザに提示するルートに選定することを決定する。
選定されるルートが決定されると、巡回の最後の訪問先も確定するため、最後の訪問先の位置に関連のある付帯情報、具体的にはその位置の近くにある商業施設に関する広告等を、広告情報を記憶するデータベース等から読み出して(S26)、広告をあわせて表示した選定されたルートを提示する画面を生成して、ユーザ端末20に送信する(S27)。このように、最後の訪問先に近い商業施設に関する広告を表示すれば、仕事の終了後に買い物をして帰りたいユーザに有益な情報となる他、広告収入が本発明を用いたマッチングサービスの運営コストの低減に資することにもなり、好適な構成となる。
図14は、ユーザ端末20に表示される画面の一例を示したものであるが、訪問先を巡回するルート、最後の訪問先付近と関連する広告の他に、給与の総額や移動距離や待ち時間の合計値を表示することとしてもよい。ルート上に表示された一の訪問先を選択すると、その訪問先における訪問介護サービスの内容が表示されることとしてもよい。
ここでユーザ端末20から再検索のボタンが押下されたことを受け付けた場合には、(S28がYes)、改めてユーザ端末20から希望条件等を送信させて、S21からの処理を実行する。応募ボタンが押下された場合には(S29がYes)、応募処理部19が起動されて、各々の訪問先の訪問介護サービスに応募するユーザの氏名や保有資格等の応募に必要なユーザ情報をユーザ情報記憶部11から読み出し、又は、ユーザ情報が登録されていない場合はユーザ端末20に入力された応募に必要なユーザ情報を受け付ける(S30)。
続いて、応募する各々の訪問先の事業所毎に、電子メールアドレスやURL等の事業所に情報を送信する宛先を事業所情報記憶部14から読み出して(S31)、S30で読み出された、又は受け付けたユーザ情報を含む応募に必要な情報を、各々の事業所の宛先に対して送信する(S32)。送信された情報は、訪問介護事業所システム30−50で受け付けられることになるが、その後の各々の事業所で進められる応募の受け付けや面接等に関する流れについては、特に限定されるものではない。
以上に説明した第1の実施形態において、ユーザは巡回の開始時間と終了時間を指定して、終了時間までに巡回が可能な訪問先のルートを選定する例について説明したが、仕事を終了するタイミングを時間ではなく件数や給与によって決めたいユーザにも対応できるようにするためには、次の訪問先の選択が不可となる条件、すなわち、次の訪問先の選択の終了(図8のS12がNo)を判断する条件を、ユーザが希望する終了時間を基準にするのではなく、選択した訪問先の件数や、そこまでのルートを巡回して得られる給与の総額から、決定することとしてもよい。
後者の場合、第1の実施形態では、特定したルートを巡回して得られる給与の総額をルートの特定後に算出することとしているが(図7のS05)、次の訪問先を選択する都度、そこまでのルートを巡回して得られる給与の総額を算出して、希望する給与額に達したかを確認することが必要になる。また、各々の訪問先についてインデックス化される優先順位は、こだわり条件の組合せと、一日の訪問件数や給与総額の組合せ毎に設定されることになる。
図10−11のフローチャートに示した第2の実施形態は、ユーザ端末20からの訪問先を巡回するルートの選定依頼に対して、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された条件に該当する訪問先を逐次検索することによって、ユーザの希望する条件に合ったルートを選定するものである。
まず、図10のフローチャートに示したように、ユーザ端末20から、一日に巡回可能なルートの選定依頼として、巡回のスタート地点、曜日(具体的な年月日でもよい)、巡回の開始時間と終了時間、巡回可能なエリア、先に説明したこだわり条件等の希望条件と、ルートの選定に給与、移動距離、待ち時間等のいずれの項目を優先するかという優先項目に関する情報を、訪問介護サービスマッチングサーバ10のルート選定要求受付部16で受け付ける(S41)。ここでユーザ情報記憶部11に記憶されたユーザのIDやパスワードを照合して、ユーザの認証処理を実行することとしてもよい。
ルート選定処理部17では、訪問先情報記憶部12に情報が記憶された訪問先のうち、受け付けた選定依頼に含まれる曜日や巡回可能なエリア、こだわり条件等から対象となる訪問先を絞り込み、巡回のスタート地点と巡回の開始時間を起点に設定して、図4を用いて説明した方法により、受け付けた選定依頼に含まれる優先項目に従って、最初の訪問先(訪問介護サービス)を選択する(S42)。
続いて、選択された最初の訪問先に関する情報に含まれるサービスの終了時間と訪問先の位置を起点に設定して、図5を用いて説明した方法(サービスの開始時間までに到着が可能であり、終了希望時間までにサービスを終了することができる訪問先を選択)によって、対応可能な次の訪問先(訪問介護サービス)を、訪問先情報記憶部12に情報が記憶され、こだわり条件によって絞り込まれた訪問先を対象にして検索する(S43)。
該当する訪問先があれば(S44がYes)、該当する各々の訪問先の中から、受け付けた選定依頼に含まれる優先項目に関するランクが最も上位(基本給が最も高い、移動距離が最も短い、待ち時間が最も短い等)の訪問先を次の訪問先として選択する(S45)。さらに選択された次の訪問先に関する情報に含まれるサービスの終了時間と訪問先の位置を起点に設定して、同様の処理を実行する。この処理を該当する訪問先がなくなるまで(S44がNoとなるまで)繰り返すことによって、ユーザが希望する条件に適合した、巡回可能なルートを選定することができる。
尚、第2の実施形態においては、各々の訪問先に関する最新の情報を対象にして検索を行うため、ステータスが応募待ちとなっているもののみを対象にして検索を行って巡回するルートを選定すれば、第1の実施形態のように、改めて選定されたルートに含まれる各々の訪問先のステータスを確認する処理は不要となる。
また、第1の実施形態について説明したのと同様に、次の訪問先の選択が不可となる条件、すなわち、次の訪問先の選択の終了(図10のS44がNo)を判断する条件を、ユーザが希望する終了時間を基準にするのではなく、選択した訪問先の件数や、そこまでのルートを巡回して得られる給与の総額から、決定することとしてもよい。
続いて、給与計算部18が起動され、図11のフローチャートに示したように、選定されたルートを巡回することによって受け取ることができる給与の総額を計算する(S46)。給与の総額は、選定されたルートの各々の訪問先に関する情報に含まれる基本給を合計するとともに、事業所によって異なる休日手当や資格手当、一日に複数の訪問先を回った場合に加算される手当等を、図13に例示したような、給与支払ルール記憶部13にあらかじめ登録されている事業所毎に異なる給与の支払ルールを適用して、算出することとすればよい。
さらに、選定されたルートの最後の訪問先の位置に関連のある付帯情報、具体的にはその位置の近くにある商業施設に関する広告等を、広告情報を記憶するデータベース等から読み出して(S47)、広告をあわせて表示した選定されたルートを提示する画面を生成して、ユーザ端末20に送信する(S48)。第1の実施形態と同様に、ユーザ端末20には、図14に例示したような画面が表示される。
ここでユーザ端末20から再検索のボタンが押下されたことを受け付けた場合には、(S49がYes)、改めてユーザ端末20から希望条件等を送信させて、S41からの処理を実行する。応募ボタンが押下された場合には(S50がYes)、応募処理部19が起動されて、各々の訪問先の訪問介護サービスに応募するユーザの氏名や保有資格等の応募に必要なユーザ情報をユーザ情報記憶部11から読み出し、又は、ユーザ情報が登録されていない場合はユーザ端末20に入力された応募に必要なユーザ情報を受け付ける(S51)。
続いて、応募する各々の訪問先の事業所毎に、電子メールアドレスやURL等の事業所に情報を送信する宛先を事業所情報記憶部14から読み出して(S52)、S51で読み出された、又は受け付けたユーザ情報を含む応募に必要な情報を、各々の事業所の宛先に対して送信する(S53)。送信された情報は、訪問介護事業所システム30−50で受け付けられることになるが、その後の各々の事業所で進められる応募の受け付けや面接等に関する流れについては、特に限定されるものではない。
以上、第2の実施形態について説明したが、第2の実施形態の逐次検索を、訪問介護サービスマッチングサーバ10側で連続して自動的に実行するのではなく、一の訪問先の指定毎にユーザ端末20にその訪問先を選択してよいかを問い合わせて確認してながら、段階的に実行することとしてもよい。この場合も各々の訪問先が選択された後に次の訪問先としてユーザに提示する訪問先を選択する処理には、図5を用いて説明した方法を採用することとすればよい。
以上の第1又は第2の実施形態で選定された訪問先を巡回するルートについて、ユーザが各々の事業所の面接等を経て採用が決定し、そのルートを巡回することが確定すると、例えば「毎週月曜日」、「毎月10日と25日」のように、同じルートを決められたタイミングで巡回することになる場合には、そのユーザが巡回するルートをユーザ情報記憶部11に登録しておくことによって、2回目以降はルート選定のための同じ処理を繰り返さなくても、ユーザ情報記憶部11に登録されたルートを読み出すことによって、巡回するルートを直ちに確認することが可能になる。
しかしながら、登録されたルートのいずれかの訪問先について、入院等により訪問介護サービスが不要になる事態が生じると、登録されたルートを見直すことが必要になる。こうした場合にも、ルートの選定を一からやり直すことにすると、新たに選定されたルートにおいて欠落した訪問先以外にも訪問先に変更が生じることとなった場合には、応募や面接等のプロセスをやり直す必要が生じてしまうため、欠落することとなった訪問先のみを他の訪問先に置き換えてルートを再設定することが好ましい。
そのためには、欠落することとなった訪問先の1件前の訪問先の位置情報とサービスの終了時間を起点に設定するとともに、欠落することとなった訪問先の次の訪問先の開始時間までにその訪問先に到着できることを条件に加え、図5等を用いて説明した方法によって、優先順位の高い訪問先を補填する訪問先として選択し、欠落することとなった訪問先と置き換えて新たなルートを選定することとすればよい。
こうしたルート見直しの処理は、ユーザの訪問時に訪問介護サービスが不要であることが明らかになってしまうといった事態が生じないようにするためには、訪問先情報記憶部12に記憶された各々の訪問先のステータスに関する情報を更新するタイミングで実行することが好ましい。新たに選定されたルートについては、次の巡回の前のいずれかのタイミングで、改めてユーザに確認を求めて、ユーザ端末20で応募のための操作が行われると、補填する訪問先についてのみ応募情報を送信することとすればよい。