JP6616990B2 - 乗員保護装置 - Google Patents
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Description
このようなエアバッグ装置は、衝突によって乗員が移動する先にエアバッグを展開させて受け止めるという保護形態であった。
また、本発明によると、乗員は第1エアバッグ及び第2エアバッグに対して頭部のみで当接しないので、乗員が後側上方にせり上がろうとする慣性力を頭部及び頸部で受ける必要が無い。これにより、エアバッグを展開したにも関わらず、慣性力によって乗員の頭部及び頸部の傷害値が上昇してしまうことを防止可能な乗員保護装置を提供することができる。
まず、従来の車両が後方から衝突された場合について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
なお、図1〜図3は、従来の車両に対する後方からの一衝突形態を示す概略図である。
具体的には、バックレスト112に作用していた後方への荷重によって、座面部111とバックレスト112との接続部材の一部が破断する。該接続部材の破断によって、図1(a)及び図1(b)に示したバックレスト112の初期位置を維持することが困難となる。接続部材が破断しても、乗員Cはバックレスト112に対して更に押し付けられるように慣性力を受け続ける。これにより、図2(a)に示すように、乗員Cはバックレスト112と共に後方に倒れる。
具体的には、乗員Cが座席110に対して押し付けられた状態が続くと、バックレスト112とヘッドレスト113とを接続する軸体114の取付部が変形する。これにより、図2(b)に示すように、バックレスト112が後方に倒れつつ、ヘッドレスト113も後方に倒れ始める。ヘッドレスト113が後方に倒れると、ヘッドレスト113がリアゲート102に当接する。なお、ヘッドレスト113のリアゲート102への当接としては、リアゲート102に設けられる後方視認用のリアガラスに対してヘッドレスト当接する形態も含むこととする。ヘッドレスト113がリアゲート102に当接すると、バックレスト112及び乗員Cの後方に倒れる動作が停止する。
具体的には、ヘッドレスト113とリアゲート102との当接によって、バックレスト112、ヘッドレスト113及び乗員Cの後方への傾倒動作が停止しても、乗員Cは後方への慣性力を受け続ける。これにより、乗員Cは傾いたバックレスト112に沿って、後側上方にせり上がるように移動する。乗員Cが後側上方に移動すると、リアゲート102に対して乗員Cの頭部が当接する。
なお、車両100に衝突する衝突体の相対速度が大きい場合、衝突体が図3に示すリアゲート102を乗員室内に向かって前方に押し込む可能性がある。これにより、後側上方に移動した乗員Cの頭部が、衝突体に当接する可能性もある。結果として、乗員Cの頭部の傷害値が上昇してしまうだけでなく、乗員Cが受ける慣性力によって頭部がリアゲート102に押し付けられるので頭部を支持する頸部に対しても大きな負荷が生じ、乗員Cの頸部の傷害値も上昇してしまう。
続いて、図4を参照しつつ、本発明の一実施形態である乗員保護装置1について説明する。
なお、図4は、本発明の一実施形態である乗員保護装置1を示す概略図である。図4において、車両及び座席については、図1〜図3に示した車両及び座席と同一部材を用いているので、共通の参照符号を付すこととする。
なお、第1エアバッグ装置2及び第2エアバッグ装置3の駆動形態については、図5を参照しつつ後述する。
第1収容部22は、展開前の畳まれた状態の第1エアバッグ21が収容される筐体である。第1収容部22は、その一部が第1エアバッグ21の展開の際に破断するようになっている。第1エアバッグ装置2が駆動すると、第1収容部22の一部に形成される射出口が破断することによって、第1エアバッグ21が座席110から膨張可能になっている。
また、第1インフレータ23は、ガスを第1エアバッグ21の内部に注入可能な部材である。第1インフレータ23のガスの注入形態としては、従来のエアバッグ装置に採用される注入形態であれば良く、例えば火薬に着火することによりガスを発生させて注入する形態、及び、予め適宜のボンベ等に圧入されていた高圧ガスを注入する形態等を挙げることができる。
肩部115の破断形態としては、特に限定されず、例えばバックレスト112の表面部を形成する繊維状物又は皮革等が開裂して破断しても良く、予め第1エアバッグ21の射出口が露出可能な開口部を肩部115に形成しておき、該開口部を覆蓋しつつガス圧で脱離可能な蓋部を設けるようにしても良い。
なお、本実施形態においては、第1エアバッグ21の射出口がバックレスト112の後面部の上部に近接して配置されていても良い。この場合、バックレスト112の後面部の上部が第1インフレータ23で発生するガス圧によって内側から破断可能に形成するのが良い。
第2収容部32は、展開前の畳まれた状態の第2エアバッグ31が収容される筐体である。第2エアバッグ装置3が駆動すると、第2収容部32の一部に形成される射出口が破断することによって、第2エアバッグ31が乗員室側に膨張可能になっている。
また、第2インフレータ33は、第2エアバッグ装置3が駆動するとガスを第2エアバッグ31の内部に注入可能な部材である。第2インフレータ33のガスの注入形態としては、第1インフレータ23と同様の注入形態を採用することができる。
内装部材の破断可能な部位としては、本実施形態のように天井部101の後端縁部であってリアゲート102の上端縁部近傍に代えて、第2エアバッグ装置3が駆動して第1エアバッグ21の上部を第2エアバッグ31により支持可能である限り、車両100の前後方向において図4に示す衝突前の乗員Cの頭部位置、又は車輪104の中心位置程度まで前方に配置しても良い。
また、天井部101における内装部材の破断形態としては、特に限定されず、例えば内装部材を形成する合成樹脂、繊維状物、又は皮革等が開裂して破断しても良く、予め第2エアバッグ31の射出口が露出可能な開口部を内装部材に形成しておき、該開口部を覆蓋しつつガス圧で脱離可能な蓋部を設けるようにしても良い。
ここで、図5を参照しつつ、上述した乗員保護装置1の駆動について説明する。
なお、図5は、図4に示した乗員保護装置1の一駆動形態を示す概略図であり、図5(a)は乗員保護装置1の一駆動形態を示す側面図であり、図5(b)は乗員保護装置1の一駆動形態を示す一部拡大の平面図である。
具体的には、本実施形態に係る乗員保護装置1は、図2(a)に示した状態、つまり乗員C及び座席110のバックレスト112が後方に倒れつつある状態となったときに駆動するようになっている。つまり、座席110のヘッドレスト113がリアゲート102に当接する前に、第1エアバッグ装置2及び第2エアバッグ装置3を展開する。
なお、第1エアバッグ21が乗員Cの鎖骨部分を押さえ、更に第1エアバッグ21の上部を第2エアバッグ31が支持することによって乗員Cの体重に起因する慣性力の大部分は打ち消される。したがって、仮に乗員Cの頭部が第2エアバッグ31に当接したとしても、乗員Cの頭部及び頸部には慣性力がほとんど作用しない又は小さい慣性力が作用する程度に留まるので、乗員Cの頭部及び頸部に対する傷害値が大きくなることは無い。
なお、車載カメラ、レーダー又は赤外線センサ等による車外環境監視システムを用いることによって後方からの衝突が予見される場合、第2エアバッグ31の後方膨張部312がリアゲート102のリアガラスを覆うように展開するので、運転者のルームミラーを介した後方視界を衝突直前まで確保しておくために、衝突と同時又は上述したように衝突を検知した上で乗員保護装置1を駆動させるのが良い。
図6には、本発明における乗員保護装置における第1エアバッグの変形例を示した。
なお、図6は本発明に係る乗員保護装置の他の実施形態を示す概略図であり、図6(a)は第1エアバッグの一変形例を示す正面概略図であり、図6(b)は第1エアバッグの他の変形例を示す平面概略図である。図6(a)では第1エアバッグ201を透過した状態で内部の部材も示すと共に、図6(b)では第2エアバッグ31を透過した状態で示している。
図6に示す天井部、リアゲート及び第2エアバッグは、図4及び図5に示した部材と同様の部材を用いているので、共通の参照符号を付すこととする。
具体的には、第1エアバッグ201は乗員Cに当接する下方当接部Dと、第2エアバッグ31に当接する上方当接部Uとを有し、第1エアバッグ201の内部において下方当接部Dと上方当接部Uとの間にテザー202が配置されている。テザー202は、下方当接部Dと上方当接部Uとの間の距離を小さくするように接続する紐状部材である。テザー202は、第1エアバッグ201の展開の際に破断しない強度を有し、第1エアバッグ201の展開方向に沿って複数本設けられる。
図6(a)に示す黒色の点は、第1エアバッグ201と第2エアバッグ31との接点、及び、第1エアバッグ201と乗員Cとの接点を示す。
なお、紐状部材のテザー202に代えて、第1エアバッグ201の展開方向に沿って延在する布を上方当接部Uと下方当接部Dとの間で第1エアバッグ201に縫い付けても良い。
該接触部が図5に示した実施形態に比べて増加することによって、第2エアバッグ31による第1エアバッグ201の支持の安定性、及び、第1エアバッグ201及び第2エアバッグ31による乗員Cの支持の安定性が向上するので好ましい。また、第1エアバッグ201は、鎖骨部分だけでなく、上腕骨部分の外側から乗員Cを支持するように当接するようになり、図5に示した実施形態よりも広い範囲で乗員Cを支持可能となる。つまり、より一層乗員Cが後方にせり上がって何らかの部材に当接することが少なくなる。
具体的には、図5に示した実施形態では第1エアバッグ装置2をバックレスト112の内部に配置していたのに対して、図6(b)に示す第1エアバッグ装置210はヘッドレスト113の内部に配置されている。ヘッドレスト113内には、第1エアバッグ211を収容可能な第1収容部212と、第1エアバッグ211にガスを注入可能な第1インフレータ213とが一対配置されている。第1エアバッグ211は、第1収容部212の射出口が面しているヘッドレスト113の左右側面部からそれぞれ展開を開始することになる。なお、第1エアバッグ211は、ヘッドレスト113の後面部から展開を開始して、側面部を回り込んで乗員Cの支持をするように配置しても良い。
全ての座席に本発明に係る乗員保護装置を適用することにより、乗員の後方へのせり上がりを防止する又は小さくすることができるので、せり上がりに起因して乗員の頭部が何らかの部材に当接し、結果として頭部及び頸部の傷害値が上昇するという事態を防止することができる。
Claims (5)
- 車両に対して後方からの衝撃が作用したときに、座席に着座している乗員を保護可能な乗員保護装置であって、
前記座席の肩部より上方かつ前方において、前記座席から展開する第1エアバッグと、
前記第1エアバッグより上方及び後方において前記車両の天井部から展開し、前記第1エアバッグの上部を支持可能な第2エアバッグと、を備え、
展開した前記第1エアバッグは、前記座席の肩部より前方に延在し、更にその先端部が下方に向けて延在している、
乗員保護装置。 - 前記第1エアバッグは、前記座席の肩部の左右両側において展開する、
請求項1に記載の乗員保護装置。 - 前記第1エアバッグは、前記座席のヘッドレスト又はバックレストから展開する、
請求項1又は2に記載の乗員保護装置。 - 前記第1エアバッグは、前記乗員に当接する下方当接部と、前記第2エアバッグに当接する上方当接部とを有し、
前記下方当接部と前記上方当接部との間にテザーを配置する、
請求項1〜3のいずれかに記載の乗員保護装置。 - 前記座席は、リアゲート近傍に配置される後部座席であり、
前記第2エアバッグは、前記座席が後方からの衝撃によって回動する範囲において、前記第1エアバッグを上方及び後方から支持可能である、
請求項1〜4のいずれかに記載の乗員保護装置。
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