以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1〜図3は、本実施例に係る歩行補助装置10の概略図である。図1(a)は背面図、図1(b)は側面図、図2(a)は正面図、図2(b)は平面図を示す。なお、図1(b)は図1(a)の左側から見た場合の側面図であるが、図1(a)の右側から見た場合の側面図も図1(b)と同様の形状が左右対称に現れる。従って、以下の説明において、図1(b)の各構成の符号を適宜変更することで装置を右側から見た場合についても説明することとする。以下の他の側面図についても同様である。
また、歩行補助装置10の標準的な使用では、図1(a)における紙面に垂直な奥側を前方とし、紙面に垂直な手前側を後方とする。図1(a)に示すように、歩行補助装置10は、上肢支持フレーム1、右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5の5本のフレームを有する。また、上肢支持フレーム1の両端、及び右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5の一端は、保持部6に保持されている。なお、ここで右前フレーム2及び左前フレーム3は、前側フレームに相当する。また、右後フレーム4、左後フレーム5は後側フレームに相当する。この前側フレーム及び後側フレームの少なくとも一は、管状部材を曲げ加工することにより形成されている。
図1(b)から分かるように、左前フレーム3は、保持部6から装置左前へ屈曲されて、装置左前へ延設され、装置前端で装置下方へ屈曲され、下端に車輪13が設けられている。図1(b)には表れていないが、右前フレーム2も左前フレーム3と左右対称の形状を有し、装置右前へ延設され、下端に車輪12が設けられている。左後フレーム5は、保持部6から装置下方に延設され屈曲部5aにおいて装置後方に屈曲して装置後方に延設されている。図1(b)には表れていないが、右後フレーム4も左後フレーム5と左右対称の形状を有し、装置後方へ延設されている。右後フレーム4及び左後フレーム5の後端付近には、車輪14が設けられている。車輪14は、車軸(不図示)で連結された二つのホイール14aにタイヤ14bを装着し、二つのタイヤ14b及びホイール14aで一つの車輪14を構成している。車輪14は、後側フレーム4,5に固定された軸受け機構16に軸支されており、軸受け機構16は、車軸の回転を制動するブレーキ(制動装置)を有している。
上肢支持フレーム1は、一端部が保持部6から外側に向けて斜め上方に延設され、屈曲部1a(図1(b))で装置前方に屈曲され、屈曲部1aから平面視(図2(b))がほぼ楕円形となるように水平に巻回され、前記一端部と左右対称に反対側端部が保持部6に保持されている。上肢支持フレーム1の前方右側には、車輪14のブレーキを動作させるブレーキレバー19が設けられている。なお、上肢支持フレーム1は、管状部材を曲げ加工することにより形成されている。
保持部6に対し、フレーム1〜5を挟んで反対側の面には、前面支持部7が設けられている。前面支持部7は、使用者の胴体の前面を直接支持する部材であり、使用者の胸部、腹部または下腹部に当接する前面支持手段の一例である。
また、後側フレーム4,5の保持部6と車輪12との中間部に、下側支持部9を備えている。下側支持部9は、使用者の体重を下側から支持する下側支持手段の一例であり、支柱91、サドル92、回動機構93を有している。回動機構93は、後側フレーム4,5上に固設され、支柱91が後方へ回動可能となるように支柱91を保持している。支柱91の上端には使用者が着座するサドル92が設けられている。
上記構成の歩行補助装置10を使用者は図3に示すような姿勢で使用する。すなわち、サドル92に着座し、腹部や胸部を前面支持部7に当接させ、腕を上肢支持フレーム1に乗せて、右手で上肢支持フレーム1のブレーキレバー19装着位置付近を把持する。そして、使用者は前面支持部7にもたれ、上肢支持フレーム1につかまりながら、所望の方向に歩行する。なお、右前の車輪12、左前の車輪13は、鉛直に延びた回転軸の回りに回転が可能になっている。従って、使用者がどのような方向に歩いたとしても容易に方向転換が可能となっている。
また、本実施例の歩行補助装置10では、前記前面支持部7及び下側支持部9より前方に設けられた2個の車輪12,13の間隔(トレッド幅)は44cmであり、該2個の車輪12,13を結んだ直線の中点と、前記前面支持手段及び前記下側支持手段より後側に設けられた車輪14との間隔(ホイルベース)は85cmである。なお、トレッド幅及びホイルベースはこれに限らず、例えばトレッド幅を30cm〜60cm、ホイルベースを40cm〜150cmとしても良い。
前面支持部7、下側支持部9、上肢支持フレーム1は、歩行補助装置10の前後方向において、前方に設けられた車輪12,13と後方に設けられた車輪14との間に設けられ、歩行補助装置10の左右方向において、左右に設けられた車輪12,13の間に設けられている。また、前面支持部7、下側支持部9、上肢支持フレーム1は、例えば平面内において、前方に設けられた車輪12,13と後方に設けられた車輪14を頂点とする三角形の範囲内に配置されるのが望ましい。
また、本実施例では、床面又は地面(以下、これらを単に接地面とも称す)から上肢支持フレーム1までの高さを100cmとし、接地面からサドル92までの高さを30〜60cmの間で調整可能としている。
更に、歩行補助装置10の前後方向において、前面支持部7の下部からサドル92の中央までの距離を23cmとしている。なお、この前面支持部7とサドル92との距離は、これに限らず、12〜40cmとしても良い。
なお、これらの具体的寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。また、使用者の体格等に合わせて調整可能としたり、複数のサイズを用意したりしても良い。
図4は、保持部6の概略構成を示している。保持部6は、上記フレーム1〜5の端部を保持する板状の部材であり、図4(a)に示すように取付面に上記フレーム1〜5の端部における外周面の一部が嵌合する位置決め用の溝6aを有している。本実施例では、上記フレーム1〜5の端部が、各溝6aに嵌合され、図4(b)に示すようにネジ6bで固定される。即ち、前側フレーム2,3及び後側フレーム4,5の端部が平行に束ねられて、
保持部6に保持される。また、上記フレーム1〜5の端部は、同一平面上に配置され、こ
れらフレーム1〜5の端部が平面状の保持部6の取付面に保持される。このように、保持部6に位置決め用の溝6aを設けたことにより、上記フレーム1〜5を保持部6に取り付ける際の位置決めが容易になると共に、各フレーム1〜5をネジ6bで締結した際のがたつきを抑えることができる。
なお、本例では、溝6aの形状を各フレーム1〜5の外周面と合致する断面弓形としたが、これに限らず、締結時のがたつきが抑えられるように、各フレーム1〜5の外周面の一部が嵌る形状であれば良い。例えば、溝6aが、断面V形の溝であっても良い。保持部6の材質は、金属、木材、プラスチック等、各フレーム1〜5を保持する剛性を有していれば、特に限定されるものではないが、耐久性等の面から金属が望ましい。本例では、保持部6に各フレーム1〜5を固定したが、各フレーム1〜5の端部同士をネジ等で締結して保持部を構成しても良い。
図5は、前面支持部7の構成を示す図である。本例の前面支持部7は、図5(a)に示すように使用者の腹部や下腹部に当接する腹部支持部7aと、使用者の胸部に当接する胸部支持部7bから構成されている。腹部支持部7a及び胸部支持部7bは、それぞれ金属製のプレート71a,71bの後面、即ち使用者側の面に弾性を有するパッド72a,72b,72cが貼付されている。パッド72a,72b,72cは、ウレタンフォームを皮革で覆った構成としたが、これに限らず、使用者の身体を当接した際のクッション性を確保できるものであれば良い。
前面支持部7は、保持部6に対して上記フレーム1〜5の端部を挟みネジ等で固定される。図5(b)は、プレート71a,71bの前面、即ち保持部6に対して取り付けられる際に各フレーム1〜5の端部と当接する面を示している。図5(b)に示すように前面支持部7のプレート71a,71bの前面には、各フレーム1〜5の外周面の一部が嵌る位置決め用の溝73が設けられている。このように、プレート71a,71bに位置決め用の溝73を設けたことにより、上記プレート71a,71bを保持部6に取り付けた際、前面支持部7のがたつきを抑えることができる。なお、本例では、溝73の形状を各フレーム1〜5の外周面と合致する断面弓形としたが、これに限らず、締結時のがたつきが抑えられるように、各フレーム1〜5の外周面の一部が嵌る形状であれば良い。
前面支持部7の腹部支持部7aは、使用者との当接面がほぼ垂直となるように取り付けられる。胸部支持部7bは、下端のパッド72bにおける使用者との当接面がほぼ垂直であり、上部に向かうにつれて前方へ湾曲している。この胸部支持部7bの湾曲は、歩行補助装置10の前後方向に沿う鉛直面において、曲率が上部に向かうにつれて大きくなっている。なお、胸部支持部7bは、湾曲した形状に限らず、平板状で前方へ傾斜した形状であっても良い。
本実施例の胸部支持部7bは、使用者が歩行に際して前傾した状態で腹部及び胸部に沿う形状となっており、下方の腹部支持部7aは、垂直か僅かに前傾した状態で使用者の腹部又は下腹部を支持し、上方の胸部支持部7bは、前方へ湾曲し、前方斜め下側から使用者の胸部を支持する。具体的には、腹部支持部7aのパッド72aの下端が接地面から50cm、この下端からパッド72bの上部までの33cmがほぼ垂直であり、パッド72bの上部までが前方へ湾曲している。前面支持部7の上端は、接地面から104〜114cmの高さとなっており、前方への湾曲により下端より15cm前方へせり出している。これらの具体的寸法は、使用者の体格等に合わせて調整可能としたり、複数のサイズを用意したりしても良い。
図6は、下側支持部9の構成を示す図である。支柱91の下部には、後方に向けて板状に突出させた支持片91aが設けられており、回動機構93の枠体93R,93Lが支持
片91aを左右から挟み、枠体93Lから枠体93Rにかけて挿通した回動軸93cにより支持片91aを回動可能に支持している。回動軸93cは、歩行補助装置10の左右方向へ水平に伸びる軸であり、回動軸93cを中心に支持片91aが回動することで、支柱91が前後方向に傾動する。また、回動軸93cには、ねじりコイルバネ93bのコイル部分が外嵌され、ねじりコイルバネ93bの一端が枠体93に固定され、他端が支持片91aに固定されて、支持片91aを回動軸93c周りに前方へ付勢している。
図7は、下側支持部9の回動状態の説明図である。サドル92及び支柱91に外力が加わっていない状態では、支持片91aがねじりコイルバネ93bに付勢され、支持片91aの底部が枠体93の底部93fに突き当たって静止する。このとき支柱91は、実線で示すように垂直か僅かに前方に傾斜した状態に支持されている。そして、使用者が歩行補助装置10を使用するため、身体をサドル92の前方に入れる際、サドル92を後方へ押し退けると、支持片91aが回動軸93c周りに回動することで、サドル92及び支柱91が点線で示すように後方へ傾動する。
また、サドル92は、支柱91の長手方向に延びる回動軸を中心として回動可能に保持されている。図8は、サドル92の回動状態を示す平面図である。図8に示すように、サドル92は、左右へ回動可能であるため、使用者の歩行に伴って回動する。例えば、使用者が右足を前に出し、相対的に左足が後ろに位置した場合、この身体の動きに従動して、サドル92も右側部分が前、左側部分が後ろとなって、図8において、反時計回りに回転する。また、使用者が左足を前に出し、相対的に右足が後ろに位置した場合、この身体の動きに従動して、サドル92も左側部分が前、右側部分が後ろとなって、図8において、時計回りに回転する。
サドル92は、後方の幅が広く、前方の幅が狭い形状としたが、これに限らず、サドル92の平面形状が、円形、楕円形、多角形等であっても良い。また、本実施例の歩行補助装置では、使用者が前傾姿勢となるため、着座位置が前方にずれないように、図9(a)に示すようにサドル92の座面が前方で高くなるように形成されても良い。また、サドル92の座面は、図9(b)に示すように、前方と後方が、その間と比べて高くなるように鞍状に形成されても良い。
上記のように、本実施例の歩行補助装置10は、歩行時および静止時において、使用者の胴体前面を直接支持可能とし、当該使用者の前面を支持した状態で使用者の歩行と共に移動可能としている。より具体的には、前記歩行補助装置10が、使用者の胴体の前面を直接支持する前面支持部7と、床面または地面に対して該歩行補助装置を水平方向に移動可能とする移動補助部12,13,14とを備えている。
これによれば、使用者が前傾姿勢をとった場合でも、使用者の胴体前面が直接支持されるため、安定して補助でき、使用者に不安感を与えることが少なくなる。また、前面支持部7が使用者の上体を支持するので、使用者が、従来のように歩行補助装置10につかまって上体のバランスをとらなくても良く、上体の筋力、特に手や腕の力を使わなくても安定して歩行できる。即ち、腕の一部を失った人や、麻痺や老化によって上肢支持フレーム1を把持できない人の場合でも、歩行補助装置10を支障なく利用できる。更に、前面支持部7や下側支持部9にベルトを備え、使用者の身体を前面支持部7や下側支持部9に固定することで、乗車位置がずれたり、使用者がサドル92から落ちたりすることが防止できる。
前記前面支持部7は、使用者の胸部、腹部または下腹部に当接する前部当接部材である。これにより使用者が使用時に前傾した状態で使用者の胸部、腹部または下腹部が前面支持部7に接し、使用者の前方へ押し出す力と上方から抑える力とが前面支持部7を介して
歩行補助装置10に伝わり、歩行者が無理なく歩行補助装置10と共に移動でき、且つ歩行補助装置10の制御が容易となる。換言すると、歩行時の脚部の力を、使用者の胸部や、腹部、下腹部を介して前面支持部7へ伝えることができ、身体全体で歩行補助装置10を押すようにすることができる。
前記歩行補助装置10は、使用者の体重を下側から支持する下側支持部9を備えている。また、前記下側支持部9は、使用者が着座可能なサドル92を有している。これによれば、使用者の体重が下側支持部9のサドル92にかかるため、足で自分の体重を支える必要がなく、足の力のほとんどを移動に使うことができるので、楽に歩行できる。このため、例えば、老化等により足の筋力が衰えた人でも自分の力で無理なく歩行可能になる。特に、本実施例の歩行補助装置10は、前面支持部7と下側支持部9とを備えるため、下側支持部9により移動に使うことができるようになった足の力を前面支持部7により、容易に伝達し、制御することができるため、無理なく安定した歩行が可能となる。また、歩行補助装置10は、前面支持部7と下側支持部9とで使用者の体重を分散して支持するため、下側支持部9による臀部への圧迫が少なく、良好な使用感が得られ、長時間の使用にも適している。更に、歩行補助装置10は、前面支持部7と下側支持部9とによって使用者の前面を広い範囲で安定して支持するため、使用者がリラックスでき、テレビの視聴や読書等にも好適に利用できる。
また、本実施例の歩行補助装置10は、単なる歩行の補助に限らず、ショッピングや農作業といった作業の補助に用いることもできる。例えば、保持部6の前面にバスケット(不図示)を取り付け、店舗で購入する商品をバスケットへ入れてレジへ運び、購入後の商品をバスケットに入れて持ち帰るといった利用ができる。更に、ショッピングが長引いた場合にもサドル92に着座し、前面支持部7にもたれた状態で休むことができ、無理なくショッピングをすることができる。また、使用者が前面支持部7にもたれた状態で農作物の収穫を行い、収穫物をバスケットに入れて運搬する、或は、肥料をバスケットに収容し、散布しながら移動する、といった農作業にも利用できる。特に農作業は、中腰で前かがみになって行う作業が多く、本実施例の歩行補助装置10を用い、前面支持部7で使用者の前面を保持した状態で作業が行えるようにすることで、当該農作業を軽減することができる。また、ハウス栽培では、栽培する植物が棚や台に載置される等、空間を有効に利用するように配置され、これら植物に対する作業を行うための通路も予め設定されているため、これら植物の配置や通路の幅等に応じたサイズの歩行補助装置を用いることで、ハウス内での栽培の作業を効率良く行うことができる。
更に、本実施例の歩行補助装置10は、ベッドや便器への移乗に用いることもできる。図10は、歩行補助装置10から便器へ移乗する例を示す図である。使用者は、歩行補助装置10で後退しながらトイレの便器61に近づき、歩行補助装置10の後端が便器61の前面に達した位置でブレーキレバー19を握り、ブレーキをかけた状態でロックする。そして、使用者は、上肢支持フレーム1を把持して、立ち位置を後ろへ移し、臀部を便器61上に突き出し、臀部を下して便器61に着座する。このとき臀部を便器61(移乗先)へ移しやすいように、サドル92の高さを便器61の座面とほぼ同じ高さに調整する調整機構を設けても良い。また、臀部を便器61(移乗先)へ移しやすいように、サドル92を後方へスライドさせる調整機構を設けても良い。なお、この調整機構は、使用者が調整するものであっても、電動で調整するものであっても良い。そして、用足し後、使用者は、上体を前へ倒し、下側支持部9や前面支持部7を伝って上肢支持フレーム1を把持し、立ち位置を前へ移し、下側支持部9のサドル92に座り、ブレーキレバー19のロックを解除して前へ進む。
このように、本実施例の歩行補助装置10を用いると、使用者が便器61へ容易に移乗できる。同様に、歩行補助装置10は、椅子やベットへの移乗も容易に行うことができる
。従って、ベットから歩行補助装置10、歩行補助装置10からトイレの便器61、トイレの便器61から歩行補助装置10、歩行補助装置10からリビングのソファなど、歩行補助装置10を介して種々のものに移乗でき、使用者の行動の幅が広がる。
また、支柱91が回動機構93に回動可能に支持され、支柱91及びサドル92が、後方へ回動可能となっており、これにより、使用者が歩行補助装置10を使用するため、身体をサドル92の前方に入れる際、サドル92を後方へ退動させることができるので、使用者がサドル92をまたぐような動作をする必要がなく、容易に歩行補助装置10を使用できる。また、本実施例では、図8に示すように、サドル92が支柱91の長手方向に延びる回動軸を中心として回動可能に保持されており、使用者の歩行時に、この身体の動きに従動して、サドル92が回転する。これにより歩行時の足運びが容易となり、無理なく歩行することができる。
前記歩行補助装置10は、移動補助部として、前面支持部7及び下側支持部9に連結された一以上の車輪を備えている。前記移動補助部は、前記前面支持部7及び前記下側支持部9より前方に設けられた2個の車輪12,13と、前記前面支持部7及び前記下側支持部9より後側に設けられた1個の車輪14であっても良い。また、前記前面支持部7及び前記下側支持部9より前方に設けられた2個の車輪12,13の間隔は30cm〜60cmであり、該2個の車輪を結んだ直線の中点と、前記前面支持部7及び前記下側支持部9より後側に設けられた1個の車輪との間隔は40cm〜150cmであっても良い。これによれば、使用者が前傾姿勢をとった際に力のかかる前方に二つの車輪を配置し、安定した歩行を可能にする。更に、この前方の車輪(前輪)の間隔、所謂トレッド幅と、前方の車輪と後方の車輪との間隔、所謂ホイルベースとを適切に設定したことで、安定した歩行を可能としている。また、後方の車輪14又は軸受け16に、ワンウェイクラッチを設け、車輪14が前方に進む方向にのみ回転し、後方へ戻る方向への回転を制限しても良い。これにより、前面支持部7のない後方への移動を防止し、坂道等で意図せず後退してしまうことを防ぐことができる。
また、前記歩行補助装置10は、前記前面支持部7及び前記下側支持部9が固定される保持部6と、前記保持部6と前記前面支持部7及び前記下側支持部9より前方に設けられた2個の車輪の各々とを連結する前側フレームと、前記保持部6と前記前面支持部7及び前記下側支持部9より後側に設けられた1個の車輪とを連結する後側フレームと、を備えている。これによれば、使用者が前傾姿勢をとった際に力のかかる前方に二つの車輪の各々を保持する前側フレームを配置し、従動する後方の車輪を一つ配置した構成とすることで、安定した歩行を可能にするとともに、後部をコンパクトに構成し、歩行補助装置10の取り回しを容易としている。また、歩行補助装置10は、図11に示すように、後側フレーム4,5の間に一つの車輪を備える構成であっても良い。なお、後方の車輪は、一つに限らず、複数設けても良い。例えば、図1において二つのタイヤ14bを装着したホイール14a及び車軸(不図示)を独立に設けて、二つの車輪としても良い。
前記歩行補助装置10は、前記保持部6に保持され、使用者が上肢で支持しまたは上肢を載せる上肢支持フレーム1を備えている。これによれば、使用者が上肢で上肢支持フレーム1をコントロールでき、移動方向を定めるといった操作が容易となる。また、使用者が上肢で上肢支持フレーム1を支持した状態または上肢を上肢支持フレーム1に載せた状態で歩行でき、より歩行時の安定性を向上させることができる。特に本実施例の上肢支持フレーム1は、一本の管状部材を前方へ券回してループ状とした構成であるため、把持する位置や上肢を載せる位置が限定されず、使用者が自由な体勢で上肢支持フレーム1を操作できる。なお、使用者が、前面支持部7や前側フレーム2,3を把持して、移動方向を定めるといった操作を行う場合、上肢支持フレーム1は省略しても良い。
前記前側フレーム2,3、前記後側フレーム及び前記上肢支持フレーム1は、管状部材を曲げ加工することにより形成されている。これによれば、装置の部品点数及び製造工程を低減することができ、装置のコストダウンを促進することが可能となる。
特に、本実施例では、前記前側フレーム2,3及び前記後側フレーム4,5の端部を平行に束ねて前記保持部6で保持している。また、上肢支持フレーム1、前記前側フレーム2,3及び前記後側フレーム4,5の端部を同一平面上に配置し、これらフレーム1〜5の端部を平面状の前記保持部6の取付面に保持させている。これによれば、装置の部品点数及び製造工程を低減することができるので、更に装置のコストダウンを促進することが可能となる。
また、保持部6は、接地面から所定の高さ、例えば、使用者の足よりも上の位置に設けられ、前記前側フレームが保持部6から装置前方へ屈曲されて、装置前方へ延設され、装置前端で装置下方へ屈曲され、下端に前記車輪が設けられている。これによれば、使用者の足元のスペース、特に使用者の立位置から足を踏み出す範囲に前側フレームが干渉せず、歩行の自由度が高くなる。本実施例では、サドル92より上に保持部6を設けることで、サドル92に着座する使用者の足よりも上に保持部6を位置させている。
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、後方の車輪を駆動する駆動装置としてのモータ及びバッテリを備えた例について説明する。
本実施例においては、下側支持部9の後方の後側フレーム4,5上にバッテリ(不図示)及び制御部(不図示)が備えられている。また、後方の車輪(後輪)14の車軸付近にはモータ(不図示)及び減速ギア列(不図示)が備えられている。前側フレーム2,3の下端には、前輪12,13を鉛直方向に伸びる回転軸回りに回転可能に軸支する操舵部(不図示)を備えている。操舵部は、前輪12,13を鉛直方向に伸びる回転軸回りに回転させるモータ(不図示)や、この前輪12,13の回転角(舵角)を検出するエンコーダ(不図示)を有している。操舵部は、制御部と電気的に接続し、エンコーダで検出した前輪12,13の舵角が、制御部によって指定される値となるように前輪12,13をモータで回転させる。
本実施例によれば、上り坂などでも、使用者の負担を増加させることなく、歩行補助装置10を移動させることができ、使用者の歩行を良好に補助することが可能となる。本実施例では、各モータ、減速ギア列は、右後フレーム、左後フレームの後輪14を駆動するように設けられた例について説明したが、各モータ、減速ギア列は、各フレームの前輪12,13を駆動するように設けられてもよい、また、操舵部を後輪14に設け、移動方向に応じて後輪14を操舵しても良い。
なお、本実施例の歩行補助装置10では、モータの駆動力によって使用者の歩行を補助(アシスト)する構成としたが、これに限らず、ユーザが歩行しなくてもモータの駆動力により、操作部の操作によって指定された速度で走行できる構成としても良い。また、操作部は、ジョイスティック型の操作部であってもよい。この場合、使用者の操作によってジョイスティックの操作桿が傾けられた方向(操作方向)と量(操作量)を操作信号に変換し、制御部へ伝達する。操作部は、この操作信号が示す操作方向と操作量に基づいてモータ及び操舵部を制御する。即ち、操作桿が前へ傾けられた場合には、歩行補助装置10が前進する方向にモータが回転され、傾けられた量(操作量)に応じた回転速度に制御される。一方、操作桿が後ろへ傾けられた場合には、歩行補助装置10が後退する方向にモータが回転され、傾けられた量(操作量)に応じた回転速度に制御される。また、操作桿が左右へ傾けられた場合には、歩行補助装置10が左右へ曲がる方向に前輪12,13が
回転され、傾けられた量(操作量)に応じて舵角が制御される。これにより、使用者が操作部で操作した方向や速度で移動することができる。
また、本実施例の歩行補助装置10では、後輪14が2つのホイールを備える例を示したが、これに限らず、1つのホイールで後輪を構成しても良い。この例では、後側フレーム4,5の間に車輪が設けられ、軸受機構(不図示)に軸支されている。また、後側フレーム4,5上にバッテリ及び制御部が備えられ、後方の車輪14の車軸付近にはモータ及び減速ギア列が備えられているようにしてもよい。これにより、モータの駆動力によって後輪を回転駆動し、使用者の歩行を補助(アシスト)する。また、ユーザが歩行しなくてもモータの駆動力により、操作部の操作によって指定した速度で走行できる構成としても良い。このように駆動輪を1つのホイールで構成することで、ディファレンシャル制御が不要になり、装置構成を簡素化できる。
また、制御装置(不図示)に、加速度センサを備え、歩行補助装置10を使用した際の3軸方向の加速度を不揮発性メモリにログとして記憶しても良い。これにより不揮発性メモリからログを読み出して、歩行補助装置10を使用した際の振動や傾き、急発進、急停止、衝撃等の状況を検証することで、異常な兆候が無いか、危険な使われ方をしていないかといったことを判定できる。
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例では、下側支持部9を省略した例について説明する。
図12には、本実施例における歩行補助装置30の使用状態を示す。図12(a)は背面図、図12(b)は側面図である。本実施例においては、使用者が立った状態で前面支持部7にもたれて歩行する。なお、本実施例では、使用者が着座せず、立ち姿勢となるので、前面支持部7や上肢支持フレーム1の高さは、使用者の立った状態に合わせて設定している。この他の構成については、前述の実施例1と同様である。また、前述の実施例2における下側支持部9を省略した構成としても良い。
〔変形例〕
実施例3の歩行補助装置30では、下側支持部9を省略した例を示したが、サドル状の下側支持部9に代えて、ベルトのように簡易な支持部を設けても良い。例えば、図12のようにサドル状の下側支持部9を省略し、上肢支持フレーム1や、保持部6、前面支持部7の左右にベルト(支持部)をループ状にかけわたした構成とする。図13は、上肢支持フレーム1の保持部6との接続部分にベルト901をループ状にかけわたした構成を示す図である。
ユーザが、この歩行補助装置30の使用時にベルト901によるループ内に位置し、ユーザの臀部の斜め下や腰の後など、所望のサポート位置にあたるようにベルトを装着する。図13では、ベルト901がユーザの臀部の斜め下にあたるようにベルトを装着した例を示す図である。これにより、ユーザが、歩行補助装置30の使用時に前面支持部7にもたれた状態で、腰が引ける或は臀部が下がるのをベルトで抑えることができ、体重が支えられてユーザの歩行を適切に補助できる。また、ユーザにとって、腰や臀部が適切にサポートされることで、安心感が増す、乗り心地が良い等、使用感が向上する。加えて、サドル状の下側支持部9が不要となり、装置全体をシンプルな構造とし、小型化、コンパクト化することが可能となる。なお、ベルト901は、上肢支持フレーム1や、保持部6、前面支持部7との接続部、或はベルトの一部にバックル等の留め具902を備えて、ベルト901の長さの調整やベルト901の着脱を可能としても良い。
〔実施例4〕
図14は、農作業用の歩行補助装置の一例を示す図であり、図14(a)は歩行補助装
置の正面図、図14(b)は歩行補助装置の左側面図、図14(c)は歩行補助装置の平面図である。図14に示す歩行補助装置40は、図1の歩行補助装置10と比べ、バスケットを設け、大きいサイズの車輪を装着した構成が主に異なっている。なお、図1の歩行補助装置10と同一の機能を有する要素には同符号を付す等して、再度の説明を省略している。
歩行補助装置40は、保持部6の前面に載置台62を備え、載置台62上にバスケット63を着脱可能に載置している。
上肢支持フレーム1Rは、一端部が保持部6に保持され、保持部6から外側に向けて斜め右上方に延設され、屈曲部1aで装置前方に屈曲され、前端付近にブレーキレバー19Lが設けられている。上肢支持フレーム1Lは、一端部が保持部6に保持され、保持部6から外側に向けて斜め右上方に延設され、屈曲部1bで装置前方に屈曲され、前端付近にブレーキレバー19Lが設けられている。なお、本実施例4では、右側の上肢支持フレーム1Rと左側の上肢支持フレーム1Lとを独立に設けたが、これに限らず図1に示すようにループ状に設けても良い。
右前フレーム2の下端には車輪12Aが設けられ、左前フレーム3の下端には車輪13Aが設けられている。本例の車輪12A,13Aは、図1の車輪12,13と比べ、直径が大きく、幅も広くなっている。また、右後フレーム4の後部と、左後フレーム5の後部との間には、車輪240が設けられている。本例の車輪240は、図1の車輪14と比べ、直径が大きく、幅も広くなっている。車輪12A,13Aは、前側フレーム2,3に固定された軸受け機構121,131に軸支されており、軸受け機構121,131は、車軸の回転を制動するブレーキ(制動装置)を有している。また、車輪240は、後側フレーム4,5に固定された軸受け機構16に軸支されており、軸受け機構16は、車軸の回転を制動するブレーキ(制動装置)を有している。ブレーキレバー19Lを握ることで、不図示のブレーキワイヤを介して軸受け機構131のブレーキが作動して車輪13Aが制動される。また、ブレーキレバー19Rを握ることで、不図示のブレーキワイヤを介して軸受け機構121のブレーキが作動して車輪12Aが制動される。
また、本例の前面支持部7Aは、図1の前面支持部7と比べて上部か短く、前面支持部7の上端が、上肢支持フレーム1R,1Lの上端より低い位置に形成されている。
このように本実施例4の歩行補助装置40は、バスケット63を備えたことにより、農作業時に収穫物や肥料、農具等を収容して移動できる。また、歩行補助装置40は、直径の大きい車輪240を採用したことにより凹凸の多い地面であっても走破でき、幅の広い車輪240を採用したことにより軟弱な地面であっても沈み込むことが抑えられるので、農地の移動に適している。また、前面支持部7Aの上部を低く形成したことにより、使用者が前面支持部7Aにもたれた状態でも腕や肩など、上半身の可動範囲が広く、農作業に適している。なお、図14の歩行補助装置40は、農作業時の使用に限定されるものではなく、他の用途に用いられても良い。例えば、ショッピングに用いても良く、特に倉庫型の店舗等で移動距離が長い場合や重い商品を運ぶ場合に適している。
〔実施例5〕
次に、本発明の実施例5について説明する。本実施例は、前述の実施例1と比べ、後側フレームの形状と後部の車輪の構成が主に異なっており、その他の構成は同じである。なお、本実施例では、前述の実施例1と比べて同一の機能を有する要素に同符号を付す等して、再度の説明を省略している。
図15は、本実施例5に係る歩行補助装置50を示す図であり、図15(a)は歩行補
助装置50の背面図、図15(b)は歩行補助装置の左側面図、図15(c)は歩行補助装置の平面図である。
歩行補助装置50の左後フレーム5Bは、前端が保持部6に保持され、保持部6から装置下方に延設され、屈曲部5aにおいて装置後方の左斜め上に屈曲され、後部5cで下向きに湾曲し、下端に車輪145が設けられている。右後フレーム4Bも左後フレーム5Bと左右対称の形状を有し、装置後方へ延設され、下端に車輪144が設けられている。後方の車輪144,145は、前方の車輪12,13と同様に鉛直に延びた回転軸の回りに回転が可能になっている。
このように本実施例5の歩行補助装置50は、後方の車輪144,145が、前方の車輪12,13と同じく鉛直に延びた回転軸の回りに回転可能になっているため、その場での方向転換が可能になるなど、高い移動の自由度が得られる。なお、本実施例のように、後方に車輪144、145の2個の車輪を有する場合には、後方の2個の車輪の間隔は、10cm〜25cmとしている。これにより、ユーザが歩行する際に、後方の2個の車輪の間隔が広すぎて、後方に延ばした脚が車輪144、145に接触してしまうことを抑制できる。また、後方の2個の車輪の間隔が狭すぎて、歩行補助装置50の移動が不安定になることを抑制できる。
〔実施例6〕
次に、本発明の実施例6について説明する。本実施例は、前述の実施例1と比べ、前側フレームを折り畳み可能とした構成が異なっており、その他の構成は同じである。なお、本実施例では、前述の実施例1と比べて同一の機能を有する要素に同符号を付す等して、再度の説明を省略している。
図16は、本実施例6に係る歩行補助装置60を示す図であり、図16(a)は折り畳み前の歩行補助装置の平面図、図16(b)は折り畳み後の歩行補助装置の平面図である。本実施例6の歩行補助装置60は、前側フレーム2,3の上端部が、保持部6と前面支持部7のプレート71aとによって、鉛直方向に延びる回転軸回りに回動可能に保持されている。即ち、前側フレーム2,3が、図16(a)の開いた状態と図16(b)の閉じた状態との間で回動可能となっている。
歩行時には、前側フレーム2,3を図16(a)に示すように回転軸を中心に左右へ回転させて開き、ネジ等の回り止め機構(不図示)で固定する。この前側フレーム2,3を開く角度は、特に限定されるものではないが、例えば回転軸から前方の車輪12,13とを結ぶ直線75と歩行補助装置60の前後方向との成す角度θを、20度〜60度、好ましくは30度〜45度とする。
一方、収納時には、回り止め機構を解除し、前側フレーム2,3を図16(b)に示すように回転軸を中心に前方へ回転させて閉じる。
このように本実施例6の歩行補助装置60は、前側フレーム2,3を回動可能に保持したことにより、収納時にコンパクトに折り畳むことができる。
また、本実施例6の歩行補助装置60は、通路の幅や周囲の環境に応じ、前側フレーム2,3の開く角度θを変えることで、歩行補助装置60の幅を調整することができる。即ち、狭い場所で用いる場合には歩行補助装置60の幅を狭くし、広い場所で用いる場合には歩行補助装置60の幅を広くすることができる。
〔実施例7〕
次に、本発明の実施例7について説明する。本実施例は、前述の実施例4と比べ、前側フレームを折り畳み可能とした構成が異なっており、その他の構成は同じである。なお、本実施例7では、前述の実施例4と比べて同一の機能を有する要素に同符号を付す等して、再度の説明を省略している。
図17は、本実施例7に係る歩行補助装置70を示す図であり、図17(a)は折り畳み前の歩行補助装置の平面図、図17(b)は折り畳み後の歩行補助装置の平面図である。本実施例7の歩行補助装置70は、前側フレーム2,3の上端部が、保持部6と前面支持部7のプレート71aとによって、鉛直方向に延びる回転軸回りに回動可能に保持されている。即ち、前側フレーム2,3が、図17(a)の開いた状態と図17(b)の閉じた状態との間で回動可能となっている。
歩行時には、前側フレーム2,3を図17(a)に示すように回転軸を中心に左右へ回転させて開き、ネジ等の回り止め機構(不図示)で固定する。この前側フレーム2,3を開く角度は、特に限定されるものではないが、例えば回転軸から前方の車輪12,13とを結ぶ直線75と歩行補助装置60の前後方向との成す角度θを、20度〜60度、好ましくは30度〜45度とする。
一方、収納時には、回り止め機構を解除し、前側フレーム2,3を図17(b)に示すように回転軸を中心に前方へ回転させて閉じる。
このように本実施例7の歩行補助装置70は、前側フレーム2,3を回動可能に保持したことにより、収納時にコンパクトに折り畳むことができる。
また、本実施例6の歩行補助装置60は、通路の幅や周囲の環境に応じ、前側フレーム2,3の開く角度θを変えることで、歩行補助装置60の幅を調整することができる。即ち、狭い場所で用いる場合には歩行補助装置60の幅を狭くし、広い場所で用いる場合には歩行補助装置60の幅を広くすることができる。
本実施例7のように左右の上肢支持フレーム1R,1Lを独立に設ける場合、右前フレーム2と上肢支持フレーム1Rとを一本の連続した管状部材で形成し、左前フレーム3と上肢支持フレーム1Lとを一本の連続した管状部材で形成しても良い。これにより図18に示すように、前側フレーム2,3と左右の上肢支持フレーム1R,1Lを折り畳むことができる。即ち、上肢支持フレーム1R,1Lを動かすことで前側フレーム2,3の角度θを変えることができ、上肢支持フレーム1R,1Lと連動して前側フレーム2,3の角度θ(歩行補助装置60の幅)を調整することができる。
〔その他〕
上肢支持フレーム1、右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5などの各々のフレームは、例えば、図19に示すような押し通し曲げ加工装置を用いて加工してもよい。図19は、押し通し曲げ加工装置の概略図である。図19において、固定部101には、開口を有した固定ダイス103が設けられている。可動部105には、開口を有した可動ダイス107が設けられている。また、固定部101側には、管状部材109を固定ダイス103から可動ダイス107へ向かって送り出す送り装置111が備えられている。
そして、固定部101と可動部105との間には、可動ダイス107を固定ダイス103に対して移動・傾斜させる移動装置113が設けられている。そして、送り装置111を用いて、管状部材109を固定ダイス103の開口から可動ダイス107の開口へ押し通しながら、移動装置113を用いて可動ダイス107を固定ダイス103に対して移動
・傾斜させ、管状部材109を三次元形状に曲げ加工する。なお、移動装置113により制御する、可動部105の位置(及び位置変化)は、図示しない制御装置によりプログラムに基づいて定められる。
上肢支持フレーム1、右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5などの各々のフレームを、このような押し通し曲げ加工装置を用いて加工することで、より簡単に使用者の身長、肩幅などに応じた歩行補助装置を適宜製作することが可能となる。
なお、上肢支持フレーム1、右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5などの各々のフレームの断面形状は一般的には円形であるが、必ずしも円形には限定されない。例えば、右前フレーム2、左前フレーム3、右後フレーム4、左後フレーム5の断面形状を上下が長径側となる楕円形状または長円形状としてもよい。さらには多角形の断面としてもよい。また、各々のフレームの素材は特に限定されない。上記の押し通し曲げ加工装置を用いる場合には、鉄、ステンレス鋼、アルミなどの金属が望ましい。その他に、樹脂、カーボンファイバー、木、竹等を用いることも可能である。
また、上記の実施例は、本発明に係る歩行補助装置の例を示したに過ぎず、本発明を上記の構成に限定する趣旨ではない。各々のフレームの形状、連結部材の形状などは、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更可能であることは当然である。