以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図において、左右方向又は車幅方向をx方向で示し、前後方向又は走行方向をy方向で示し、上下方向をz方向で示している。
図1は本発明の一実施形態に係る乗り物の構成概要図であって、乗り物を側面視した図である。図2は本実施形態に係る乗り物の斜視概要図である。
本実施形態に係る乗り物1は、左右一対の車輪2、2を備えた乗り物であり、運転者Dが乗車して運転操作を行うことにより走行し、移動体、走行体又は走行車両として機能する。運転者Dは、乗り物1に乗車する乗員である。なお、図1では、一対の車輪2、2のうち右側の車輪2のみが図示されている。また、本実施形態では、乗員一人が乗車する乗り物に適用した場合について説明しているが、複数の乗員が乗車可能な乗り物に適用してもよい。
車輪2は、ロアアーム41およびアッパアーム42を介して、本体3に取り付けられている。車輪2は、本体3の右側と左側にそれぞれ一つずつ設けられており、例えば、乗り物1の側輪又は補助輪として機能する。本体3は、乗り物1の本体部分を構成する車体であり、例えば、乗り物1の前後方向に長い形状とされ、複数の棒状部材を接合したフレーム構造のものが用いられる。なお、この本体3は、乗車した運転者Dを支持できる剛性を有する構造のものであれば、フレーム構造以外の構造であってもよい。例えば、本体3は、棒状部材、板状部材、ブロック状部材などを組み合わせて構成してもよい。右側の車輪2は本体3から右側に突出して設けられるロアアーム41およびアッパアーム42を介して取り付けられている。ロアアーム41およびアッパアーム42は、本体3に対して前後方向の軸周りに回転可能に取り付けられ、本体3を左右に傾斜可能としている。また、図1には図示されていないが、左側の車輪2も、右側の車輪2と同様に、本体3から突出して設けられるロアアーム41およびアッパアーム42を介して取り付けられている。なお、ロアアーム41およびアッパアーム42の取付構造の詳細については、後述する。
本体3には、前輪23、後輪24が取り付けられている。すなわち、乗り物1は、前輪23、後輪24および左右一対の車輪2、2の四輪を備えている。前輪23は、着座部5より前方に設けられ、後輪24は着座部5より後方に設けられている。例えば、本体3の前部に前輪23が取り付けられ、本体3の後部に後輪24が取り付けられ、前輪23と後輪24の間の位置であって本体3の右側および左側にそれぞれ車輪2が取り付けられる。本実施形態において、車輪2は、前輪23および後輪24より外径の大きいものが用いられているが、前輪23および後輪24より外径の小さいものを用いてもよい。
前輪23は、本体3の前部に対し、操舵機構25およびサスペンション機構26を介して、取り付けられている。前輪23は、乗り物1の操舵輪または転舵輪として機能するものである。つまり、乗り物1は、前輪23に操舵力が伝達されることによって、前輪23の前方部分が正面から右側へ向くことで右旋回を行い、前輪23の前方部分が左側を向くことで左旋回を行う。
操舵機構25は、前輪23へ操舵力を伝達するための機構であって、例えば、ステアリングシャフト25aの下端に、左右方向へ向けた水平部材25bを取り付けて構成されている。ステアリングシャフト25aは、上下方向に向けて配置されるシャフト部材であって、本体3の前部に回動可能に取り付けられている。操舵機構25の下部には、サスペンション機構26が結合されている。サスペンション機構26は、前輪23を車輪として回転可能に支持しつつ緩衝機能を備えるものであり、スプリングおよびショックアブソーバ等を備えたものが用いられる。例えば、このサスペンション機構26は、テレスコピックフォーク式のものが用いられ、前輪23の右側と左側にそれぞれスプリングおよびショックアブソーバを備えた二つのシャフト状部材をそれぞれ配置して構成される。このフロントフォーク式のサスペンション機構26は、下方側が乗り物1を前方へ傾斜しており、プラスのキャスタ角をもって前輪23を取り付けている。なお、操舵機構25およびサスペンション機構26は、上述した形式のものに限られるものでなく、前輪23を車輪として回転可能に支持しつつ操舵力を伝達できるものであれば、他の形式のものを用いてもよい。
後輪24は、本体3の後部に対し、サスペンション機構29を介して、取り付けられている。後輪24は、乗り物1の駆動輪として機能するものである。つまり、乗り物1は、動力源から伝達される回転動力により後輪24を回転させて走行する。動力源としては、例えばモータが用いられる。また、動力源としては、後輪24を駆動できるものであれば、モータ以外のものであってもよく、例えばエンジンであってもよい。また、後輪24の内部に設けられたホイールインモータなどを採用してもよい。
サスペンション機構29は、後輪24を車輪として回転可能に支持しつつ緩衝機能を備えたものであって、例えば、スイングアーム29aおよびショックアブソーバ29bを備えたスイングアーム式のものが用いられる。スイングアーム29aは、本体3の後部の下部位置に回動可能に取り付けられ、その後端に後輪24を軸支している。ショックアブソーバ29bは、本体3の後部の上部位置に回動可能に取り付けられ、その下端がスイングアーム29aの後部に回動可能に取り付けられている。ショックアブソーバ29bは、スプリング等の支持ばね材を内蔵している。なお、サスペンション機構29としては、後輪24を車輪として回転可能に支持できるものであれば、他の形式のものを用いてもよい。
本体3には、着座部5が取り付けられている。着座部5は、運転者Dが着座するためのものであって、運転席又は運転座席として機能する。この着座部5は、本体3の前後方向の中央位置であって、ロアアーム41の上方位置に配置されている。なお、ここでいう本体3の中央位置とは、本体3のほぼ中央位置も含むものである。
この着座部5は、運転者Dが跨ることにより着座可能に構成されている。例えば、着座部5として、乗馬に用いる鞍のような形状又は態様のものが用いられ、運転者Dの着座を安定させる鞍部材又は鞍部として機能する。この着座部5は、運転者Dが跨って左右の脚を下方へ降ろせるような横幅で形成される座部51を有している。座部51は、例えば、着座部5の他の部位と比べて上表面を下方に凹ませて構成される。これにより、運転者Dの着座位置を座部51の形成位置に安定させることができる。また、このような凹みに代えて又は追加して、座部51の前後の一方又は双方に、上方に突出する部位を設けてもよい。この場合も、運転者Dの着座位置を座部51の位置からずれないように着座位置をより安定させることができる。
図1に示すように、乗り物1には、足載置部6が設けられている。足載置部6は、着座した運転者Dの足を載置するためのものである。この足載置部6は、着座部5より下側であって着座部5を挟んだ左右の位置にそれぞれに設けられている。言い換えれば、足載置部6は、着座部5の下方側であって、乗り物1の前後方向において着座部5と同一の位置に設けられている。ここで、着座部5と同一の位置とは、ほぼ同一の位置も含むものである。つまり、運転者Dが着座部5に跨って足載置部6に足を載置した際に、運転者Dの頭、腰および足が上下方向においてほぼ直線上に位置するように、足載置部6が前後方向において着座部5と同一又はほぼ同一の位置に設けられている。このとき、運転者Dの頭、腰および足が上下方向においてほぼ直線上に位置することにより、運転者Dの運転姿勢が乗馬姿勢となる。なお、図1では、左右一対の足載置部6、6のうち右側の足載置部6のみが図示されている。
足載置部6は、車輪2に接続されるロアアーム41に取り付けられている。例えば、足載置部6は、ロアアーム41上に直接支持され、又は、ロアアーム41の上方に他部材を介して間接的に支持される。足載置部6がロアアーム41に取り付けられることにより、運転者Dが足載置部6に載せた足を踏ん張り、または、蹴り出すことにより、本体3を反対側の側方へ容易に傾斜させることできる。このため、このような本体3の傾斜により、乗り物1の旋回操作が容易に行える。
乗り物1には、センタリング機構45が設けられている。センタリング機構45は、本体3を左右のいずれかに傾斜した傾斜状態から直立した直立状態となるように補助する機構である。ここで直立状態とは、本体3が乗り物1の走行路又はアッパアーム42などのアーム部材に対し垂直に向けられた状態であって、ほぼ垂直に向けられた状態を含むものである。また、傾斜状態とは、直立状態から左右に傾斜した状態を意味する。このセンタリング機構45は、着座部5の下方に配置されている。つまり、センタリング機構45は、着座部5の下方であって、左右の足載置部6、6より本体3の中心側に配置されている。このセンタリング機構45は、アッパアーム42に対する本体3の相対姿勢又は相対角度を調整することにより、本体3を直立した状態となるように補助するものである。例えば、本体3が直立した状態(図5参照)であっても、本体3が傾斜した状態(図6参照)であっても、アッパアーム42は水平方向を向いており、このアッパアーム42に対し本体3の相対的な姿勢又は角度を調整することにより、本体3を傾斜した状態から直立した状態とすることができる。つまり、アッパアーム42に対し本体3を相対的に回転させることにより、本体3を傾斜した状態から直立した状態とすることが可能となる。このセンタリング機構45の具体的構成については、後述する。
乗り物1には、操作部27が設けられている。操作部27は、乗り物1を運転操作するためのものであって、運転者Dの手で握られる把持部27aを備えている。把持部27aは、例えば、上下方向に向けた棒状の部材であって、運転者Dの左右の手でそれぞれに把持できるように二つの棒状の把持部分を備えたものが用いられる。この把持部27aは、運転者Dの運転姿勢が乗馬姿勢を維持した状態で握れる位置に配置されている。また、把持部27aは、例えば、乗り物1の動力源(図示なし)に駆動動作指令信号を与える操縦部として機能する。具体的には、把持部27aの下部を中心にその上部が前後方向に揺動可能に構成され、把持部27aを前方へ倒してその上部を前方へ移動させることにより、駆動制御部(図示なし)から動力源に作動制御信号が出力される。この作動制御信号に応じて動力源が作動して後輪24、前輪23又は車輪2が回転駆動し、乗り物1が前方へ走行する。このとき、把持部27aの前方への移動量又は傾斜角度を大きくするほど乗り物1の駆動力が大きくなるように駆動制御される。また、把持部27aを前方位置から元の位置、すなわちニュートラルポジションに戻すことにより、動力源による駆動力の付与が停止する。さらに、ニュートラルポジションより後方へ把持部27aを移動させ又は傾けることにより、後輪24、前輪23又は車輪2に制動力がかかり、乗り物1を停止させる。この停止状態からさらに把持部27aを後方に移動させ又は傾けることにより、乗り物1が後方へ走行又は後退するように駆動制御される。
なお、操作部27を本体3と一体に取り付けた場合には、操作部27および把持部27aにより乗り物1の操舵操作を行うことはできないが、操作部27を操舵機構25と一体に取り付けて、操作部27ないし把持部27aを左右に回転させることにより、前輪23の転舵による操舵操作も可能となる。また、本実施形態では、操作部27として、上下方向に向けた把持部27aを備えたものについて説明したが、把持部27aが自転車又は自動二輪車のハンドルのように水平方向に向けて設けられるものであってもよく、また自動車のハンドルのようにリング状のステアリングホイールのように設けられていてもよい。
図3は、足載置部6および前輪操舵力伝達機構62の説明図である。図4は、前輪操舵力伝達機構62を平面から見た図である。
足載置部6は、運転者Dの足の動きにより回転可能に設けられ、その回転により乗り物1の左右の操舵を可能とするものである。言い換えれば、足載置部6は、運転者Dの足の動きにより回転可能に設けられ、その回転により走行中の乗り物1の左右の旋回、すなわち左方向又は右方向の旋回を可能とするものである。つまり、足載置部6は、乗り物1の操舵操作部又は操舵ペダルとして機能する。この足載置部6は、例えば、運転者Dの足を載置するのに適した大きさとされ、乗り物1の前後方向を長くした形状とされる。足載置部6は、例えば、上下方向を回転中心として回転可能に設けられている。これにより、運転者Dが足を捻ることにより回転し、その回転動作により乗り物1の左右の操舵又は旋回を可能とする。
ここでは、運転者Dの足の捻りより、足載置部6が回転する場合について説明するが、足載置部6は、足の捻り以外の足の動きで回転するものであってもよく、また、回転動作は、円弧状に回転移動するようなものであってもよい。また、図3では、足載置部6の上面が平滑な面状態となっているが、その上面に上下方向の凹凸を設けてもよい。この場合、運転者Dの足が足載置部6上で滑り動くことを抑制することができる。また、足載置部6の外縁部分に上方へ突出する突起部又は突条部を設けてもよい。この場合、運転者Dの足が足載置部6上からずれることを抑制することができる。
足載置部6は、その下方に配置される軸支部61を介してロアアーム41に取り付けられ、ロアアーム41上で回転可能に設けられている。軸支部61は、ロアアーム41に設けられ、上下方向に向けた軸線を中心に足載置部6を回転可能に軸支している。
足載置部6には、前輪23側に操舵力を伝達させる前輪操舵力伝達機構62が接続されている。前輪操舵力伝達機構62は、足載置部6の回転に応じて前輪23に操舵力を伝達させる機構である。言い換えれば、前輪操舵力伝達機構62は、足載置部6の前方部分が右側又は左側を向くように回転させる操舵動作があったときに、その操舵動作に応じた操舵力を前輪23の操舵機構25に伝達させる操舵力伝達機構として機能する。
この前輪操舵力伝達機構62は、例えば、第一リンク部材62a、第二リンク部材62b、第三リンク部材62c、第四リンク部材62dおよび第五リンク部材62eを備えて構成される。第一リンク部材62aは、棒状の部材であって、右側の足載置部6に取り付けられ、右側の足載置部6から前方左側へ水平方向に向けて突出するように設けられている。この第一リンク部材62aは、足載置部6と一体に移動し、足載置部6の回転移動と共に回転移動する。第二リンク部材62bは、曲折した形状を呈する部材であって、その端部が第一リンク部材62aの先端部分に回動可能に取り付けられている。第二リンク部材62bの中間位置の曲折部分は、ロアアーム41に回動可能に軸支されている。これにより、足載置部6の回転移動により、第二リンク部材62bの他方の端部が乗り物1の前後方向に移動する構造となっている。第三リンク部材62cは、棒状の部材であって、その端部が第二リンク部材62bの後端と回動自在に取り付けられ、他方の端部が第四リンク部材62dの下端に回転可能に取り付けられている。第三リンク部材62cは、乗り物1の前後方向に向けて配置され、第二リンク部材62bの端部の前後方向への移動に応じて前後方向へ移動する。この第三リンク部材62cにおける第二リンク部材62bと接続される端部は、ボールジョイントが形成され、第二リンク部材62bの端部に対し回動自在となっている。例えば、第二リンク部材62bと第三リンク部材62cの回動結合部は後述するロアアーム41と本体3との回転取付の軸線C1の前後方向の軸上に位置する。このようなボールジョイント配置構造を用いることにより、旋回時に乗り物1が内傾した際、足載置部6側の機構と前輪23側の機構の間に捻じれを生じた場合に、その影響を吸収することができる。第四リンク部材62dは、曲折した形状を呈する部材であって、上下方向に向けて配置されている。第四リンク部材62dの中間位置の曲折部分は、本体3に対し回動可能に軸支されている。これにより、第三リンク部材62cの前後移動により、第四リンク部材62dの下端が乗り物1の前後方向に移動し、他方の上端が前輪23の操舵機構25に対して接近又は離間するように移動する。第四リンク部材62dの上端には、第五リンク部材62eの端部が回転可能に取り付けられている。第五リンク部材62eは、棒状の部材であり、他方の端部が操舵機構25の水平部材25bに回転可能に取り付けられている。これにより、第四リンク部材62dの移動に応じて、第五リンク部材62eが長手方向に移動し、操舵機構25および前輪23に操舵力が伝達される。
図3に示すように、右側の足載置部6と左側の足載置部6との間には、連動機構63が設けられている。連動機構63は、右側の足載置部6と左側の足載置部6の移動動作を連動させる機構であり、例えば、右側の足載置部6が右方向へ回転すれば、左側の足載置部6も右方向へ回転させる機構である。この連動機構63は、例えば、第一リンク部材63a、第二リンク部材63bおよび第三リンク部材63cを備えたものが用いられる。第一リンク部材63aは、棒状の部材であって、右側の足載置部6と左側の足載置部6にそれぞれ一つずつ取り付けられている。この第一リンク部材63aは、例えば、足載置部6から後方へ突出するように設けられ、足載置部6と一体に移動し、足載置部6の回転移動と共に回転する。第一リンク部材63aの後端には、第二リンク部材63bの端部が回転可能に取り付けられている。第二リンク部材63bは、棒状の部材であって、乗り物1の車幅方向に向けて配置されている。この第二リンク部材63bは、第一リンク部材63aの回転移動に応じて、車幅方向に移動する。第二リンク部材63bの他方の端部には、第三リンク部材63cが取り付けられている。
第三リンク部材63cは、ブロック状の部材であって、乗り物1の車幅方向において中央位置に設けられている。この第三リンク部材63cは、右側の第二リンク部材63bと左側の第二リンク部材63bを結合する結合部材として機能するものであり、右側の第二リンク部材63b側からの伝達力を左側の第二リンク部材63b側へ伝達し、左側の第二リンク部材63b側からの伝達力を第二リンク部材63b側へ伝達する。
このように連動機構63は、二つの第一リンク部材63a、二つの第二リンク部材63bおよび第三リンク部材63cにより平行クランク機構を構成しており、右側の足載置部6と左側の足載置部6の回転動作を連動させている。なお、右側の足載置部6と左側の足載置部6の移動動作を連動させる機構としては、上述の連動機構63以外の機構を用いてもよい。
図3に示すように、足載置部6の操舵力を車輪2側へ伝達させる車輪操舵力伝達機構64が設けられている。車輪操舵力伝達機構64は、足載置部6の回転に応じて車輪2、2に操舵力を伝達させる機構である。言い換えれば、車輪操舵力伝達機構64は、足載置部6の前方部分が右側又は左側を向くように回転させる操舵動作があったときに、その操舵動作に応じた操舵力を車輪2側へ伝達させる操舵力伝達機構又は側輪操舵力伝達機構として機能する。車輪2は、乗り物1の操舵輪又は転舵輪として機能するものである。つまり、車輪2は、車輪操舵力伝達機構64により操舵力が伝達されることにより転舵し、乗り物1の旋回を可能とする。
車輪操舵力伝達機構64は、例えば、第一リンク部材64aおよび第二リンク部材64bを備えて構成される。これらの第一リンク部材64aおよび第二リンク部材64bは、右側の車輪2に操舵力を伝達するものと左側の車輪2に操舵力を伝達するものがそれぞれ設けられている。第一リンク部材64aは、棒状の部材であって、その端部が連動機構63の第三リンク部材63cに取り付けられている。第一リンク部材64aの他方の端部は、第二リンク部材64bに回転可能に取り付けられている。第二リンク部材64bは、曲折した形状を呈し、アクスルハウジング65aに取り付けられている。アクスルハウジング65aは、車輪2の車軸となるアクスル65bを収容する収容部材である。アクスルハウジング65aの下部は、ロアアーム41に対し、前後方向の軸線を中心に回転可能であって、プラスキャスター角を有するステア軸線C0を中心に回転可能に取り付けられている。アクスルハウジング65aの上部は、アッパアーム42に対し、前後方向の軸線を中心に回転可能であって、プラスキャスター角を有するステア軸線C0を中心に回転可能に取り付けられている。
この車輪操舵力伝達機構64において、足載置部6の操舵動作に応じて第三リンク部材63cが移動すると、それと共に第一リンク部材63a、63aがそれぞれ車幅方向に移動する。この第一リンク部材63aの移動により、第二リンク部材63bを通じてアクスルハウジング65aおよびアクスル65bがステア軸線C0を中心に回転し、車輪2が転舵される。
図5、6に、乗り物1のロアアーム41およびアッパアーム42の概要説明図を示す。
図5は、乗り物1を背面から見た場合のロアアーム41およびアッパアーム42の取付構造を示す概要図である。図6は、乗り物1が旋回した際のロアアーム41およびアッパアーム42の状態を示した図である。
図5に示すように、右側のロアアーム41と左側のロアアーム41は、本体3に取り付けられており、乗り物1の前後方向に延びる同一の軸線C1を中心に回動可能に取り付けられている。例えば、右側のロアアーム41と左側のロアアーム41は、乗り物1の前後方向に向けた同一の回転軸43を中心に回動可能に取り付けられている。回転軸43は、乗り物1の前後方向に向けて設けられ、本体3の車幅方向の中央位置に取り付けられている。本体3から外側へ延びるロアアーム41の端部には、車輪2が、前後方向に延びる軸線を中心に回動可能に取り付けられている。例えば、ロアアーム41の外側端部には、アクスルハウジング65aが、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能であって、かつ、ステア軸線C0を中心に回転可能に取り付けられている。そして、アクセルハウジング65aには、アクスル65bが車幅方向に延びる軸線を中心に取り付けられており、そのアクスル65bに車輪2が取り付けられている。
アッパアーム42は、ロアアーム41の上方位置にロアアーム41と平行となるように配置されている。右側のアッパアーム42と左側のアッパアーム42は、本体3に取り付けられており、乗り物1の前後方向に向けた同一の軸線C2を中心に回動可能に取り付けられている。例えば、右側のアッパアーム42と左側のアッパアーム42は、乗り物1の前後方向に向けた同一の回転軸44を中心に回動可能に取り付けられている。回転軸44は、乗り物1の前後方向に向けて設けられ、本体3の車幅方向の中央位置に取り付けられている。本体3から外側へ延びるアッパアーム42の端部には、車輪2が、前後方向に延びる軸線を中心に回動可能に取り付けられている。例えば、アッパアーム42の外側端部には、アクセルハウジング65aが、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能であって、かつ、ステア軸線C0を中心に回転可能に取り付けられている。
図6に示すように、乗り物1が旋回した場合、本体3および車輪2、2が旋回内側へ内傾する。このとき、本体3と車輪2を接続する左右のロアアーム41、41がそれぞれ本体3の中心位置で同一の軸線C1を中心に回転可能に取り付けられることにより、左右のロアアーム41、41が互いに直線状を保ち、互いの高さ位置に変動を生じにくい。すなわち、足載置部6を取り付けているロアアーム41の位置変動が小さく、左右のロアアーム41、41の間の高さ位置の変動が小さいものとなる。このため、乗り物1の旋回時に、運転者Dの足元が上下に大きく変動することが抑制され、安定した運転操作が可能となる。例えば、仮に、本体3の右端に右側のロアアーム41を取り付け、本体3の左端に左側のロアアーム41を取り付けた場合、乗り物1が右側に旋回すると、その旋回で本体3が右側へ内傾することによって、右側のロアアーム41の位置が低くなり、左側のロアアーム41の位置が高くなる。このため、左右のロアアーム41、41の高さ位置が大きく異なり、左右の足載置部6、6の高さ位置も大きく異なるように変動する。従って、乗り物1の旋回時に、運転者Dの足元が上下に大きく変動することとなる。本実施形態に係る乗り物1では、上述したように、このような不具合を抑制することができるのである。なお、ロアアーム41およびアッパアーム42のアーム部材の取付構造によっては、アッパアーム42上に足載置部6を設ける場合もある。また、ロアアーム41とアッパアーム42のうち、アッパアーム42の設置を省略する場合もある。さらに、左右のロアアーム41、41が回転可能に取り付けられる同一の軸線は、ほぼ同一の軸線を含むものである。例えば、本体3および車輪2、2が旋回内側へ内傾したときに、足載置部6を取り付けているロアアーム41の位置変動が小さく、左右のロアアーム41、41の間の高さ位置の変動が小さくなる程度に、左右のロアアーム41、41の回転中心となる軸線がずれていてもよい。
図7にロアアーム41およびアッパアーム42の具体例を示す。
ロアアーム41は、水平方向に向けて設けられ、本体側の部分が分岐して二つの端部41a、41bを備えている。端部41aと端部41bは、同一の軸線C1を中心として回転可能に取り付けられている。また、右側のロアアーム41の端部41aと左側のロアアーム41の端部41aは、同一の回転軸43aにより軸支されており、この回転軸43aを中心に回転可能となっている。回転軸43aは本体3に取り付けられている。また、右側のロアアーム41の端部41bと左側のロアアーム41の端部41bは、同一の回転軸43bにより軸支されており、この回転軸43bを中心に回転可能となっている。回転軸43bは本体3に取り付けられている。このようにロアアーム41の本体側に二つの端部41a、41bを設けることにより、本体3に対するロアアーム41の取付強度を高めることができる。なお、回転軸43a、43bは、図5、6における回転軸43を構成するものである。また、ここでは、右側のロアアーム41と左側のロアアーム41を同一の回転軸43a、43bで回転可能に取り付ける場合について説明したが、右側のロアアーム41と左側のロアアーム41が同一の軸線を中心に回転可能に取り付けられていれば、それぞれ異なる回転軸部材によって取り付けられていてもよい。
アッパアーム42は、水平方向に向けて設けられ、本体側の部分が分岐して二つの端部42a、42bを備えている。端部42aと端部42bは、同一の軸線C2を中心として回転可能に取り付けられている。また、右側のアッパアーム42の端部42aと左側のアッパアーム42の端部42aは、同一の回転軸44aにより軸支されており、この回転軸44aを中心に回転可能となっている。回転軸44aは本体3に取り付けられている。また、右側のアッパアーム42の端部42bと左側のアッパアーム42の端部42bは、同一の回転軸44bにより軸支されており、この回転軸44bを中心に回転可能となっている。回転軸44bは本体3に取り付けられている。このようにアッパアーム42の本体側に二つの端部42a、42bを設けることにより、本体3に対するアッパアーム42の取付強度を高めることができる。なお、回転軸44a、44bは、図5、6における回転軸44を構成するものである。また、ここでは、右側のアッパアーム42と左側のアッパアーム42を同一の回転軸44a、44bで回転可能に取り付ける場合について説明したが、右側のアッパアーム42と左側のアッパアーム42が同一の軸線を中心に回転可能に取り付けられていれば、それぞれ異なる回転軸部材によって取り付けられていてもよい。
図8は、センタリング機構45の具体的構造を示した図である。図9はセンタリング機構45の傾斜面45fと押圧部材45bの説明図である。図10はセンタリング機構45におけるセンタリング解除動作の説明図である。
図8に示すように、センタリング機構45は、例えば、傾斜板45a、押圧部材45b、スプリング45c、リンク機構45dおよびモータ45eを主要部材として備えている。傾斜板45aは、アッパアーム42に取り付けられ、アッパアーム42と一体に移動し、アッパアーム42と共に軸線C(図5、6参照)を中心に回転移動する。この傾斜板45aは、アッパアーム42における前後方向に向けた表面、例えば後方側を向いた表面に取り付けられる。傾斜板45aは、表面側に傾斜面45fを形成している。傾斜面45fは、例えば、傾斜板45aから突出する突出部分の表面に傾斜して形成され、アッパアーム42の回動方向に沿って傾斜するように形成されている。
押圧部材45bは、傾斜面45fを押圧し、その押圧により傾斜面45fによって発生するアッパアーム42を回転させる分力成分により、本体3を直立方向に支持した状態とする部材である。例えば、押圧部材45bは、棒状の部材であって上下方向に向けて本体3に取り付けられている。押圧部材45bの上端部には、回転可能なローラ45gが設けられている。このローラ45gが傾斜面45fに押圧される際に回転することにより、押圧部材45bおよび本体3が傾斜面45fに沿って円滑に移動する。押圧部材45bは、その上端と下端の間に設けられる軸支部45hで軸支され、回転可能に支持されている。押圧部材45bの下端には、スプリング45cが取り付けられている。スプリング45cは、押圧部材45bの押圧力を与える付勢手段である。例えば、スプリング45cは、本体3の前後方向に向けて縮設され、押圧部材45bの下端を付勢している。このスプリング45cの付勢により、押圧部材45bの上端のローラ45gが傾斜面45fに押圧される。
モータ45eは、押圧部材45bを傾斜板45aに対する接近動作および離間動作させるための駆動手段として機能するものである。すなわち、リンク機構45dは、モータ45eの回転動作を直線動作に変換し、モータ45eの作動に応じて、押圧部材45bを傾斜板45aの傾斜面45fに押圧させ、または、押圧部材45bを傾斜面45fから離間させる。また、モータ45eの作動により、押圧部材45bを傾斜面45fに強く押圧させることにより、本体3とアッパアーム42を強く接合させ、本体3を傾斜しないようにロック状態としてもよい。
図9に示すように、傾斜面45fは、押圧部材45bの押圧方向に対し、本体3が直立した状態のとき押圧部材45bの押圧位置が傾斜面方向で低い位置となり、本体3が傾斜するほど押圧部材45bの押圧位置が傾斜面方向で高い位置になるように、形成されている。これにより、本体3が傾斜した状態にあるときには、押圧部材45bが傾斜面方向で高い位置で傾斜面45fに接触し押圧しており、その押圧により押圧部材45bが傾斜面45fの低い位置へ移動する。この移動により、傾斜面45f及びアッパアーム42に対し押圧部材45b及び本体3が回転移動し、本体3が傾斜した状態から直立した状態となる。このように押圧部材45bを押圧しておくことにより、乗り物1にセンタリング動作を行わせ、センタリング機能を発揮させることができる。つまり、押圧部材45bの押圧により、本体3が傾斜しても直立するように姿勢を戻すことができる。ここでセンタリング動作は自動でセンタリングを行うものであってセルフセンタリング動作といえるものであり、センタリング機能はセルフセンタリング機能といえるものである。
図10に示すように、モータ45eの作動により、押圧部材45bを傾斜板45a及び傾斜面45fから離間させることにより、センタリング動作およびセンタリング機能を解除することができる。例えば、モータ45eを作動させてリンク機構45dを介して押圧部材45bのローラ45gを傾斜面45fから離間させる。これにより、センタリング動作が解除され、本体3がアッパアーム42に対し自由に動ける状態、すなわち自由に傾斜できる状態となる。このようにセンタリング機能の解除ないしセンタリング動作の解除によって、乗り物1の走行旋回時に本体3を旋回内側に傾斜させやすくなり、安定した旋回走行が可能となる。
なお、上述したセンタリング機構45は、片側のアッパアーム42に対するものを説明したが、その反対側のアッパアーム42にも同様なセンタリング機構45が設けられる。例えば、反対側のアッパアーム42にも傾斜板45aを取り付け、押圧部材45bを押圧することによりセンタリング機構45を構成すればよい。この場合、モータ45eの作動力を共通化し、リンク機構45dを介して左右の反対側に設置される押圧部材45bに押圧力を付加するように構成すればよい。これにより、本体3が左右のどちら側に傾斜した場合であっても、センタリング機能を発揮することができる。また、本体3を左右の側方に傾斜した状態から直立した状態とするセンタリング機構としては、上述したセンタリング機構45以外のものを用いてもよい。
次に、本実施形態に係る乗り物1の乗車姿勢について説明する。
図1において、運転者Dは、乗り物1に乗車するにあたり、着座部5に跨って、その着座部5に着座する。このとき、運転者Dの脚は着座部5の下方へ降ろす状態となり、運転者Dの足は着座部5の下方に設けられる足載置部6に載せられる。運転者Dの乗車姿勢は、頭、腰、足が上下方向にほぼ一直線に位置するような姿勢となり、いわゆる乗馬姿勢又は乗馬姿勢に近い姿勢となる。このため、運転者Dの上体部分の重力を受ける力点(例えば、腰椎)と座面反力の力点(例えば、座骨付近)がほぼ一致し、脚部のハムストリングス筋による後傾モーメントも骨盤に発生しない。したがって、着座により運転者Dの骨盤が後傾したり、着座姿勢が猫背となったりすることが抑制され、猫背姿勢の及ぼす健康上の影響(例えば、肩こり、腰痛、鬱状態など)を抑えることができ、運転者Dの健康上において良好な運転姿勢をとることができる。
また、このような乗車姿勢をとることにより、運転者Dの背筋が伸びた状態とすることができるため、運転者Dの腰椎部分を後ろから支持するランバーサポートを設ける必要がない。したがって、乗り物1の低コスト化が図れ、乗り物1の軽量化が図れる。
また、この乗車姿勢においては、運転者Dの脚が腰部の下方に降ろされた状態となっている。これにより、脚部のハムストリングス筋による後傾モーメントも骨盤に発生せず、骨盤が後傾しにくいため、運転者Dの人体脊髄形状の状態が良好なものとなり、運転者Dの精神面および肉体面において理想的な状態とすることができる。また、この乗車姿勢においては、背筋の伸びた姿勢となり、血流が良好なものとなり、運転者Dの脳に血液が流入しやすい状態となる。このため、運転者Dの脳の働きの悪化を抑制でき、運転判断を適切なものとすることができる。
また、このような乗車姿勢においては、運転者Dの上体が上下方向へ伸びた状態となるため、乗り物1に生ずるピッチングやローリングなどの振動が運転者D自身に伝達されることを抑制することできる。例えば、乗り物1にピッチングやローリングなどの振動が生じた場合、運転者Dが腰などを動かすことにより、その振動が運転者Dの上半身や頭部へ伝達されることを抑制することができる。
次に、本実施形態に係る乗り物1の運転操作について説明する。
図1に示すように、運転者Dが乗り物1に乗車した状態において、手で把持部27aを握って運転操作が行われる。この把持部27aを前方に傾けて倒すことにより、車載された動力源(図示なし)が作動し、後輪24、前輪23又は車輪2が回転駆動して、乗り物1が前方へ走行する。このとき、運転者Dが腕を伸ばして手で握れる位置に把持部27aが設けられることにより、運転者Dが乗馬姿勢を維持したまま、運転操作が行える。運転者Dが把持部27aを元の位置、すなわちニュートラルポジションに戻すことにより、動力源による駆動力の付与が停止する。さらに、ニュートラルポジションより後方へ把持部27aを移動させ又は傾けることにより、後輪24、前輪23又は車輪2に制動力がかかり、乗り物1が停止する。
運転者Dが、乗り物1の停止状態から更に、把持部27aを後方に移動させ又は傾けて倒すことにより、車載された動力源、すなわち駆動部が作動し、後輪24、前輪23又は車輪2が逆回転して、乗り物1が後退する。このように、進行したい方向へ把持部27aを動かすことにより、乗り物1の前進および後退が行える。このため、運転者Dの直感に応じて乗り物1の前進および後退が行えるため、乗り物1の運転操作が容易に行える。また、乗り物1の誤操作を抑制することができる。
乗り物1の走行中において、乗り物1にピッチングやローリングなどの挙動に応じた振動が生じた場合、上述したように、運転者Dが腰など動かすことにより、その振動が運転者Dの上半身や頭部へ伝達されることを抑制することができる。
この乗り物1の旋回操作は、次のように行われる。図13に示すように、まず、運転者Dが足載置部6に載せた足を踏ん張り、または、蹴り出すことにより、本体3を旋回内側に向けて傾斜させる。このとき、足載置部6がロアアーム41に支持されているため、旋回外側の足の踏ん張り又は蹴り出しにより足載置部6に荷重をかけることによって、乗り物1の本体3を容易に傾斜させることができ、上下方向に対してプラスキャスター角を有するステア軸回りの接地荷重反力モーメントが変化し、前輪23および車輪2、2が旋回内向きに転舵するため、乗り物1の旋回が行える。仮に、足載置部6が本体3に支持されていた場合には、足載置部6に載せた足を蹴り出しても本体3に横方向の力が加わらず、本体3を容易に傾斜させることは困難である。これに対し、本実施形態に係る乗り物1では、ロアアーム41上に設けられる足載置部6に運転者Dの足が載せられているので、本体3を側方へ傾斜させることが容易であり、細かい傾斜調整も容易に行える。
そして、運転者Dが足を捻って足載置部6を回転させることにより、その回転動作に応じて前輪23および車輪2、2に操舵力が伝達される。これにより、前輪23および車輪2,2が転舵し、所望の方向へ旋回操作することができる。このような旋回操作において、本体3の内傾により、上下方向に対してプラスキャスター角を有するステア軸回りの接地荷重反力モーメントが変化し、前輪23および車輪2、2が転舵するため、ある程度の旋回操作が可能となるが、足載置部6の回転により、操舵調整を細かく行うことが可能となる。
この旋回操作は、運転者Dが旋回しようとする方向へ腰や足を向けることによって行うことができ、直感に応じた旋回操作となるため、誤操作を生じにくいものとなる。また、運転者Dが足を動かして操舵操作を行えることにより、普段の生活で使っている下肢の筋肉を活用して操舵操作を行うことが可能となる。このため、運転者Dの下肢筋肉の減退を抑制することができる。さらに、運転者Dの頭、腰、足が上下方向にほぼ一直線に位置するような運転姿勢においては、足に運転者Dの体重を乗せやすく、足の踏ん張り、蹴り出しおよび足の捻りによる操舵操作が行いやすいものとなり、運転者Dの下肢の筋肉を操舵操作又は旋回操作に有効活用することができる。
次に、本実施形態に係る乗り物1のセンタリング機能について説明する。
図11は、センタリング機構を制御する制御構成図である。図12は、センタリング制御処理を示すフローチャートである。
図11に示すように、乗り物1には、車速センサ81が設けられている。車速センサ81は、乗り物1の車速を検出する車速検出部として機能するものであり、例えば、車輪速センサが用いられる。この車速センサ81の出力信号は、ECU(Electronic Control Unit)70に入力される。乗り物1には、センタリングスイッチ27bが設けられている。センタリングスイッチ27bは、センタリング制御を手動でオンオフ切替を行うためのものであり、例えば、操作部27に取り付けられる。センタリングスイッチ27bの入力信号はECU70に入力される。なお、このセンタリングスイッチ27bの設置を省略する場合もある。
ECU70は、乗り物1に搭載され、センタリング制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成される。このECU70は、センタリング制御のほか、乗り物1の走行制御を行うものであってもよい。ECU70は、車速判定部71およびセンタリング制御部72を備えている。車速判定部71は、車速センサ81の出力信号に基づいて乗り物1の車速Vを認識し、その車速Vが予め設定された基準速度Vthより小さいか否かを判定する。また、車速判定部71は、乗り物1の車速Vがゼロであるか否かを判定する。センタリング制御部72は、車速Vが基準速度Vthより小さい場合に車速ゼロも含めてセンタリング機構45にセンタリング動作を行わせ、車速Vがゼロのときにセンタリング機構45により本体3を直立した状態にロックさせ、車速Vが基準速度以上である場合にセンタリング機構45によるセンタリング動作を解除する制御処理を実行するものである。すなわち、センタリング制御部72は、乗り物1の車速に応じて、ロック動作処理、ロック解除処理、センタリング制御処理及びセンタリング解除処理を選択的に実行する。基準速度Vthは、予めECU70に設定される設定速度である。このセンタリング制御部72は、例えば、その機能に応じたプログラム又はソフトウェアをECU70に格納することにより構成される。
ロック動作処理は、本体3が傾斜しないように本体3をアッパアーム42等に対し固定する処理である。ロック機構としては、例えば、本体3をアッパアーム42等に押圧又は掛止させて、本体3の傾斜を抑制する機構が用いられる。ロック解除処理は、ロック機構の作動を解除して本体3がアッパアーム42等に対し固定されないフリーな状態とする処理である。センタリング制御処理は、本体3を直立した状態に戻し、又は、本体3を直立した状態に維持する制御処理であって、セルフセンタリング動作を実行する処理である。センタリング解除処理は、セルフセンタリング動作を停止する処理である。
乗り物1には、出力部82が設けられている。出力部82は、ECU70から出力される制御信号を受けて作動するアクチュエータであって、例えば、セルフセンタリング動作に用いられるモータ45e又はロック機構を作動させるアクチュエータなどが該当する。
次に、乗り物1のセンタリング制御処理について、図12に示すフローチャートを用いて説明する。
図12に示すフローチャートの制御処理は、例えば、乗り物1のスタートボタンを押下し、電源オンスイッチをオンとし、または、走行操作をするなどの動作によって開始され、主に車速判定部71およびセンタリング制御部72によって実行される。まず、ステップS10(以下、単にS10と示す。他のステップも同様に示す。)に示すように、ロック解除処理が行われる。例えば、センタリング制御部72の作動により、ECU70から出力部82に対しロック解除信号が出力され、ロック解除信号を受けてモータ45eが作動する。図10に示すように、このモータ45eの作動によって、リンク機構45dが作動し、傾斜板45aに押圧されていた押圧部材45bの押圧力が低減される。このとき、押圧部材45bの押圧力はスプリング45cの付勢に応じたものとなり、モータ45eの作動による押圧力より小さいものとなり、本体3がアッパアーム42に対し強く固定された状態が解かれ、セルフセンタリング状態となる。
次に、S12に処理が移行し、車速判定部71により、車速Vが基準速度Vthより小さいか否かが判定される。車速Vは車速センサ81の出力信号に基づく速度であり、基準速度Vthは予めECU70に設定される設定速度である。S12にて車速Vが基準速度Vthより小さくないと判定された場合には、センタリング解除処理が行われる(S16)。センタリング解除処理は、セルフセンタリング動作を停止する処理である。例えば、センタリング制御部72の作動によってECU70から出力部82へセンタリング解除信号が出力されて、モータ45eが作動し、本体3がアッパアーム42に対しフリーな状態とされる。具体的には、図10に示すように、モータ45eが作動し、モータ45eの回転動作が直線動作に変換され、その直線動作を受けてリンク機構45dが作動する。このリンク機構45dの作動により、押圧部材45bの端部が傾斜板45aの傾斜面45fから離間する。このため、本体3とアッパアーム42との係合が解かれ、本体3が自由に傾斜できる状態となる。従って、乗り物1が基準速度Vth以上の車速Vで走行しているときには、本体3が側方へ容易に傾斜でき、乗り物1の旋回操作が容易なものとなる。そして、S16のセンタリング解除処理を終えたら、処理はS10に移行する。
ところで、図12のS12において、車速Vが基準速度Vthより小さいと判定された場合には、センタリング制御処理が行われる(S14)。センタリング制御処理は、セルフセンタリング動作を行ってセルフセンタリング機能を発揮させる処理である。例えば、センタリング制御部72の作動によってECU70から出力部82へセンタリング制御信号が出力され、モータ45eの作動し、本体3が直立した状態に戻され、また、本体3が直立した状態を維持する。具体的には、図8に示すように、モータ45eが作動し、モータ45eの回転動作が直線動作に変換され、その直線動作を受けてリンク機構45dが作動する。このリンク機構45dの作動により、押圧部材45bの端部が傾斜板45aに接触して押圧する。このとき、押圧部材45bが傾斜面45fの傾斜の上部側に接触している場合には、押圧部材45bの押圧により、その接触位置は傾斜面45fの下部側へ移動する。この移動により、アッパアーム42に対し本体3が相対的に回転することとなる。これにより、本体3が傾斜した状態から直立した状態となる。一方、押圧部材45bが傾斜面45fの傾斜の下部側に接触している場合には、押圧部材45bの押圧により、その接触位置は傾斜面45fの上部側へ移動することなく、下部側の位置を維持する。これにより、本体3が直立した状態を維持することとなる。
そして、図12において、S18に処理が移行し、車速判定部71によって、車速Vがゼロであるか否かが判定される。このS18にて、車速Vがゼロでないと判定された場合には、処理はS10に戻る。一方、S18にて、車速Vがゼロであると判定された場合には、ロック動作処理が行われる(S20)。ロック動作処理は、本体3が傾斜しないように本体3をアッパアーム42等に対し固定する処理であって、例えば、センタリング制御部72の作動により、ECU70から出力部82にロック動作信号が出力される。このロック動作信号を受けてモータ45eが作動し、リンク機構45dを通じて押圧部材45bを傾斜板45aに押圧させる。このときの押圧力は、セルフセンタリング動作時の押圧力より強いものとされる。これにより、アッパアーム42と本体3が強く係合し、アッパアーム42に対して本体3が相対的に移動しない状態となり、本体3をロックした状態とすることができる。S20のロック動作処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
このように、図12に示すセンタリング制御処理によれば、乗り物1の車速Vがゼロのときには本体3をロック状態とすることができる。これにより、乗り物1の停止時に本体3が側方へ傾斜することを抑制することができる。また、車速Vが基準速度Vthより小さい低速時にはセルフセンタリング状態とすることできる。これにより、乗り物1の低速走行時に本体3を傾斜させることを可能としつつ、本体3が傾斜した場合には直立した状態に戻すことができる。また、車速Vが基準速度Vth以上である高速走行時にはセンタリング解除状態とすることができる。これにより、本体3を傾斜させて乗り物1の旋回操作が容易に行える。
以上のように、本実施形態に係る乗り物1によれば、運転者Dが跨ることにより着座可能な着座部5、および、その着座部5を挟んだ左右の位置に設けられる足載置部6を備えることにより、運転者Dが着座部5に着座し足載置部6に足を載置した際に運転者Dの頭、腰、足が上下方向にほぼ一直線に位置するような姿勢となる。このため、着座により運転者Dの骨盤が後傾したり、着座姿勢が猫背となったりすることが抑制され、健康上において良好な運転姿勢をとることができる。
また、足載置部6が本体3でなくロアアーム41に支持されていることにより、足載置部6に載せた足を踏ん張り、または、蹴り出すことによって本体3を容易に傾斜させることができる。また、運転者Dが足載置部6に載せた足を動かすことで操舵操作が行われることにより、普段の生活で使っている下肢の筋肉を活用して操舵操作を行うことができ、下肢筋肉の減退を抑制することができる。また、運転者Dの頭、腰、足が上下方向にほぼ一直線に位置するような運転姿勢においては、足に運転者Dの体重を乗せやすく、足の捻りによる操舵操作が行いやすいものとなり、乗員の下肢の筋肉を操舵操作又は旋回操作に有効活用することができる。さらに、足載置部6は車輪2に接続されるロアアーム41に支持されており、足載置部6上で足を踏ん張ることにより荷重を車輪2に伝達しやすく、操作性が良好なものとなる。このように、良好な運転姿勢で下肢筋力を活用した運転操作が可能となり、健康志向に沿う乗り物1を提供することができる。
また、この乗り物1によれば、足載置部6の回転動作に応じて転舵輪、すなわち前輪23および車輪2に操舵力を伝達させる前輪操舵力伝達機構62および車輪操舵力伝達機構64を備えることにより、運転者Dの足の動きにより足載置部6を回転させることで転舵輪に操舵力を伝達させ、車両を確実に旋回させることができる。
また、この乗り物1によれば、右側の車輪2に接続される右側のロアアーム41と左側の車輪2に接続される左側のロアアーム41が同一の軸線C1を中心に回転可能に取り付けられることにより、乗り物1が旋回した場合、足載置部6を取り付けているロアアーム41の位置変動が小さいものとなり、左右のロアアーム41、41の間の高さ位置の変動が小さいものとなる。このため、乗り物1の旋回時において、運転者Dの足元が上下に大きく変動することが抑制され、安定した運転操作が可能となる。
また、この乗り物1によれば、センタリング機構45により、基準速度Vthより低車速の際に本体3を直立状態とすることができ、基準速度Vth以上の車速の際にセンタリング動作を解除して、乗り物1の旋回性の向上を図ることができる。
さらに、センタリング機構45を本体3の中心位置に配置したことにより、乗り物1の乗車スペースを確保でき、その搭乗性に優れたものとすることできる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る乗り物の一実施形態を説明したものであり、本発明に係る乗り物は本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る乗り物は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る乗り物を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。