以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るスプール切換弁装置について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、図1に示す軸AXの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向であって、後述する第1入力ポート41,44、第2入力ポート42,45、および出力ポート43,46が延びる方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。
また、以下の説明においては、特に断りのない限り、軸AXに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と呼び、軸AXを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、軸AXを中心とする周方向(θX方向)、すなわち、軸AXの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のスプール切換弁装置1を示す外観斜視図である。図2は、本実施形態のスプール切換弁装置1を示すZX断面図である。図3は、本実施形態のスプール切換弁装置1の部分を示す側面図である。図4は、本実施形態のスプール切換弁装置1を備える切換ユニット100を示すXY断面図である。図3においては、弁座部材60がスプール筐体10に装着される前の状態を示している。なお、本明細書において側面図とは、径方向に視た図である。
図1から図3に示すように、スプール切換弁装置1は、スプール筐体10と、弁座部材60,70と、出力ポート43,46、弁体34,35と、を備える。図4に示すように、スプール切換弁装置1は、例えば、ボディBDに挿入され、切換ユニット100の一部を構成する。
図2に示すように、スプール筐体10は、軸方向(X軸方向)に沿って延びる柱状である。本実施形態においてスプール筐体10は、例えば、円柱状である。スプール筐体10は、例えば、金属製である。スプール筐体10は、第1空洞穴20,30と、隔壁11と、第1入力ポート41,44と、第1溝部91,92と、第2溝部93,94と、弁座部材装着部12,13と、を有する。
第1空洞穴20は、スプール筐体10の軸方向一方側(−X側)の端部16から軸方向他方側(+X側)に窪む穴である。第1空洞穴30は、スプール筐体10の軸方向他方側(+X側)の端部17から軸方向一方側(−X側)に窪む穴である。すなわち、本実施形態においてスプール筐体10は、軸方向の両端部にそれぞれ第1空洞穴を有する。
なお、以下の説明においては、第1空洞穴20における端部16側(−X側)および第1空洞穴30における端部17側(+X側)を、単に「手前側」と呼ぶ場合がある。また、第1空洞穴20における端部16と逆側(+X側)および第1空洞穴30における端部17と逆側(−X側)を、単に「奥側」と呼ぶ場合がある。
第1空洞穴20は、例えば、軸AXを中心として軸方向(X軸方向)に延びる多段の円柱状である。第1空洞穴20は、第1入力ポート空洞部21と、第1弁座部51と、弁座部材挿入穴部22と、を有する。
第1入力ポート空洞部21は、第1入力ポート41と接続される部分である。第1入力ポート空洞部21は、軸方向(X軸方向)に延びる。本実施形態において第1入力ポート空洞部21は、例えば、第1空洞穴20の最も奥側(+X側)に位置する。第1入力ポート空洞部21は、第1入力ポート41を介して、スプール切換弁装置1の外部と繋がる。第1入力ポート空洞部21の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。第1入力ポート空洞部21の直径は、弁体34の直径よりも小さい。
第1弁座部51は、第1入力ポート空洞部21の手前側(−X側)に接続される。すなわち、第1弁座部51は、軸方向(X軸方向)において、第1空洞穴20と第1入力ポート41との接続箇所よりも端部16側(−X側)に位置する。第1弁座部51の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。第1弁座部51の内側面は、奥側(+X側)から手前側に向かうに従って径方向に拡がる傾斜面である。第1弁座部51の内側面は、軸AXに対して、例えば、45°で傾斜している。
弁座部材挿入穴部22は、第1弁座部51の手前側(−X側)に接続される。本実施形態において弁座部材挿入穴部22は、例えば、第1空洞穴20の最も手前側に位置する。弁座部材挿入穴部22は、手前側に開口する。弁座部材挿入穴部22は、軸方向(X軸方向)に延びる。
弁座部材挿入穴部22の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。弁座部材挿入穴部22における奥側(+X側)の端部の直径は、第1弁座部51における手前側(−X側)の端部の直径よりも大きい。そのため、第1空洞穴20の内側面には、弁座部材挿入穴部22から第1弁座部51に向かって第1空洞穴20の直径が小さくなる段部22aが設けられる。弁座部材挿入穴部22には、弁座部材60が挿入される。
第1空洞穴30は、軸方向(X軸方向)に反転している点を除いて、第1空洞穴20と同様である。第1空洞穴30は、第1入力ポート空洞部31と、第1弁座部52と、弁座部材挿入穴部32と、を有する。第1入力ポート空洞部31は、第1入力ポート44と接続される部分である。第1入力ポート空洞部31は、第1入力ポート44を介して、スプール切換弁装置1の外部と繋がる。第1入力ポート空洞部31の直径は、弁体35の直径よりも小さい。第1空洞穴30の内側面には、弁座部材挿入穴部32から第1弁座部52に向かって第1空洞穴30の直径が小さくなる段部32aが設けられる。弁座部材挿入穴部32には、弁座部材70が挿入される。
本実施形態において第1空洞穴20と第1空洞穴30とは、例えば、隔壁11を介して軸方向(X軸方向)に対向する。言い換えると、第1空洞穴20と第1空洞穴30とは、隔壁11によって軸方向に隔てられる。
隔壁11は、第1空洞穴20と第1空洞穴30との軸方向(X軸方向)の間に位置する。本実施形態において隔壁11は、例えば、スプール筐体10における軸方向の中央に位置する。
図4に示すように、第1入力ポート41は、スプール筐体10を径方向に貫通する孔である。第1入力ポート41は、第1入力ポート空洞部21とスプール筐体10の外周面(外側面)である筐体外周面10aとに開口する。すなわち、第1入力ポート41は、スプール筐体10の側面を貫通して第1空洞穴20と外部とを繋げる。本実施形態においてスプール筐体10は、例えば、2つの第1入力ポート41を有する。2つの第1入力ポート41は、例えば、径方向に対向する。
第1入力ポート44は、第1空洞穴30と外部とを繋げる点を除いて、第1入力ポート41と同様である。本実施形態において第1入力ポート41の周方向位置と第1入力ポート44の周方向位置とは、例えば、同じである。
図1に示すように、第1溝部91,92および第2溝部93,94は、スプール筐体10の筐体外周面10aから径方向内側に窪む溝である。本実施形態において第1溝部91,92および第2溝部93,94は、例えば、周方向の一周に亘って延びる環状である。
第1溝部91の軸方向(X軸方向)の位置は、第1入力ポート41の軸方向の位置を含む。すなわち、第1溝部91には、第1入力ポート41が開口する。第1溝部92の軸方向(X軸方向)の位置は、第1入力ポート44の軸方向の位置を含む。すなわち、第1溝部92には、第1入力ポート44が開口する。
第2溝部93の軸方向(X軸方向)の位置は、後述する出力ポート43の軸方向の位置を含む。すなわち、第2溝部93には、出力ポート43が開口する。第2溝部93は、弁座部材装着部12の外周面に位置する。第2溝部94の軸方向(X軸方向)の位置は、後述する出力ポート46の軸方向の位置を含む。すなわち、第2溝部94には、出力ポート46が開口する。第2溝部94は、弁座部材装着部13の外周面に位置する。
図2に示すように、弁座部材装着部12は、スプール筐体10の端部16に位置する。弁座部材装着部12は、軸方向(X軸方向)に延びる筒状である。弁座部材装着部12の内部は、第1空洞穴20の一部である弁座部材挿入穴部22である。
弁座部材装着部12には、弁座部材60が径方向に重ねられて装着される。本実施形態においては、弁座部材装着部12の内部である弁座部材挿入穴部22に、後述する弁座部材筒部60aが挿入される。
本実施形態において弁座部材装着部12は、径方向外側に延びる筐体フランジ部(フランジ部)14を有する。筐体フランジ部14は、弁座部材装着部12における弁座部材60が挿入される側(−X側)の端部に位置する。すなわち、スプール筐体10は、軸方向(X軸方向)の端部16に径方向外側に延びる筐体フランジ部14を有する。そのため、弁座部材60を弁座部材装着部12に対して安定して装着しやすい。
筐体フランジ部14は、例えば、軸AXを中心とする円環状である。筐体フランジ部14における弁座部材60が挿入される側(−X側)の面は、例えば、弁座部材60と接触する。
弁座部材装着部12は、ガイド部80を有する。ガイド部80は、弁座部材60の後述する突起部63を案内する。本実施形態においてガイド部80は、例えば、弁座部材装着部12を径方向に貫通するスリットである。ガイド部80は、弁座部材60が挿入される側(−X側)に開口する。
なお、以下の説明においては、ガイド部において、軸方向(X軸方向)における弁座部材が挿入される側(−X側)を単に「挿入側」と呼ぶ場合がある。また、ガイド部において、軸方向における挿入側と逆側(+X側)、すなわち第1入力ポート41側を単に「終端側」と呼ぶ場合がある。
ガイド部80は、少なくとも一部において軸方向(X軸方向)の位置が変化し、かつ、少なくとも一部において周方向(θZ方向)の位置が変化する。図3に示すように、本実施形態においてガイド部80は、例えば、挿入側(−X側)から終端側(+X側)へ向かうに従って周方向一方側(−θX側)に湾曲する。すなわち、本実施形態においてガイド部80は、軸方向の位置が変化するとともに、周方向の位置が変化する。本実施形態においてガイド部80は、例えば、円弧状である。すなわち、本実施形態においてガイド部80は、例えば、円弧状に延びる部分を有する。
図2に示す弁座部材装着部13は、軸方向(X軸方向)に反転している点を除いて、弁座部材装着部12と同様である。弁座部材装着部13は、スプール筐体10の端部17に位置する。弁座部材装着部13の内部は、第1空洞穴30の一部である弁座部材挿入穴部32である。弁座部材装着部13には、弁座部材70が径方向に重ねられて装着される。
本実施形態において弁座部材装着部13は、径方向外側に延びる筐体フランジ部(フランジ部)15を有する。すなわち、スプール筐体10は、軸方向(X軸方向)の端部17に径方向外側に延びる筐体フランジ部15を有する。
弁座部材装着部13は、ガイド部81を有する。すなわち、本実施形態においてガイド部81は、弁座部材装着部13に設けられる。ガイド部81は、弁座部材70の後述する突起部73を案内する。
図1に示すように、本実施形態においてガイド部81は、例えば、挿入側(+X側)から終端側(−X側)へ向かうに従って周方向他方側(+θX側)に湾曲する。すなわち、本実施形態においてガイド部80とガイド部81とは、それぞれ挿入側から終端側に向かうに従って、互いに周方向逆側に湾曲する。ガイド部81のその他の構成は、軸方向(X軸方向)に反転している点を除いて、ガイド部80の構成と同様である。
弁座部材60は、スプール筐体10の端部16に装着される。弁座部材70は、スプール筐体10の端部17に装着される。すなわち、本実施形態において弁座部材は、スプール筐体10の両端部にそれぞれ装着される。弁座部材70は、軸方向(X軸方向)に反転している点を除いて、弁座部材60と同様である。そのため、以下の説明においては、代表して弁座部材60についてのみ説明する場合がある。
弁座部材60は、筒状である。本実施形態において弁座部材60は、例えば、軸方向(X軸方向)に延びる円筒状である。弁座部材60は、例えば、金属製である。図2に示すように、弁座部材60は、第2空洞穴60cと、第2入力ポート42と、弁座部材フランジ部60bと、弁座部材筒部60aと、を有する。
第2空洞穴60cは、第1空洞穴20と繋がる穴である。本実施形態において第2空洞穴60cは、例えば、弁座部材60を軸方向(X軸方向)に貫通する孔である。第2空洞穴60cは、第2入力ポート空洞部61と、第2弁座部53と、弁体可動部62と、を有する。
第2入力ポート空洞部61は、第2入力ポート42と接続される部分である。第2入力ポート空洞部61は、軸方向(X軸方向)に延びる。本実施形態において第2入力ポート空洞部61は、例えば、軸方向において、第2空洞穴60cにおける第1空洞穴20と接続される側と逆側(−X側)の端部に位置する。
第2入力ポート空洞部61は、第2入力ポート42を介して、スプール切換弁装置1の外部と繋がる。第2入力ポート空洞部61の断面形状は、例えば、円形状である。第2入力ポート空洞部61の直径は、弁体34の直径よりも小さい。
第2弁座部53は、軸方向(X軸方向)において、第2入力ポート空洞部61の第1入力ポート41側(+X側)に接続される。すなわち、第2弁座部53は、軸方向において、第2空洞穴60cと第2入力ポート42との接続箇所よりも第1入力ポート41側に位置する。第2弁座部53の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。第2弁座部53の内側面は、軸方向において、第2入力ポート42側(−X側)から第1入力ポート41側(+X側)に向かうに従って径方向に拡がる傾斜面である。第2弁座部53の内側面は、軸AXに対して、例えば、45°で傾斜している。
弁体可動部62は、軸方向(X軸方向)において、第2弁座部53の第1入力ポート41側(+X側)に接続される。本実施形態において弁体可動部62は、例えば、軸方向において、第2空洞穴60cの最も第1入力ポート41側に位置する。弁体可動部62は、軸方向に延びる。弁体可動部62は、第1入力ポート41側に開口する。
弁体可動部62の第1入力ポート41側(+X側)の端部は、第1空洞穴20の第1弁座部51と接続される。すなわち、弁体可動部62は、第1弁座部51と第2弁座部53との軸方向(X軸方向)の間の空間である。弁体可動部62は、内部に弁体34を収容する。弁体可動部62の断面形状(YZ断面形状)は、例えば、円形状である。弁体可動部62の直径は、弁体34の直径よりも大きい。
図4に示すように、第2入力ポート42は、弁座部材60を径方向に貫通する。第2入力ポート42は、第2入力ポート空洞部61と弁座部材60の外周面とに開口する。すなわち、第2入力ポート42は、第2空洞穴60cと外部とを繋げる。本実施形態において弁座部材60は、例えば、2つの第2入力ポート42を有する。2つの第2入力ポート42は、例えば、径方向に対向する。本実施形態において第2入力ポート42は、例えば、弁座部材60のスプール筐体10と逆側(−X側)の端部に開口する。
弁座部材フランジ部60bは、弁座部材筒部60aよりも径方向外側に延びる部分である。弁座部材フランジ部60bは、例えば、軸AXを中心とする円環状である。弁座部材フランジ部60bは、筐体フランジ部14と軸方向(X軸方向)に対向する。弁座部材フランジ部60bの筐体フランジ部14側(+X側)の面は、筐体フランジ部14と接触する。弁座部材フランジ部60bの外周面は、スプール筐体10の外周面と同一面上に位置する。
図2に示すように、弁座部材筒部60aは、弁座部材フランジ部60bから、軸方向(X軸方向)の第1入力ポート41側(+X側)に延びる筒状である。本実施形態において弁座部材筒部60aは、例えば、軸AXを中心とする円筒状である。
本実施形態において弁座部材筒部60aは、スプール筐体10における弁座部材装着部12の径方向内側に装着される。すなわち、本実施形態において弁座部材60は、弁座部材装着部12の径方向内側に挿入される。弁座部材筒部60aの外周面は、弁座部材装着部12の内側面、すなわち弁座部材挿入穴部22の内側面と接触する。
弁座部材筒部60aの軸方向の寸法は、例えば、弁座部材装着部12の軸方向の寸法と同じである。これにより、弁座部材フランジ部60bが筐体フランジ部14と接触した状態において、弁座部材筒部60aの先端が段部22aに接触する。
弁座部材筒部60aは、突起部63を有する。突起部63は、径方向外側に突出する。すなわち、弁座部材60は、径方向に突出する突起部63を有する。突起部63は、ガイド部80によって案内される。スプール切換弁装置1を組み立てる作業者(以下、単に作業者という)は、突起部63をガイド部80に沿って案内しつつ、弁座部材60をスプール筐体10の第1空洞穴20に挿入することで、弁座部材60をスプール筐体10に容易に装着することができる。
具体的には、図3に示すように、作業者は、突起部63の周方向位置とガイド部80における挿入側(−X側)の開口部80aの周方向位置とを合わせた状態で、弁座部材60をスプール筐体10に近づけ、弁座部材筒部60aの先端を弁座部材装着部12の内側、すなわち第1空洞穴20に挿入する。そして、作業者は、弁座部材筒部60aを第1空洞穴20の奥側(+X側)に挿入しつつ、突起部63がガイド部80に案内されるのに従って弁座部材60を周方向に回転させる。図3の例では、突起部63は軸方向(X軸方向)の第1入力ポート41側(+X側)に進むに従ってガイド部80に沿って−θX方向に案内される。そのため、作業者は、弁座部材60を第1空洞穴20の奥側(+X側)に挿入するとともに−θX方向に回転させる。
このようにして、作業者は、弁座部材筒部60aが段部22aに突き当たるまで、弁座部材60を第1空洞穴20の奥側(+X側)に挿入する。ここで、ガイド部80は、少なくとも一部において軸方向(X軸方向)の位置が変化し、かつ、少なくとも一部において周方向の位置が変化する。そのため、突起部63が、ガイド部80における周方向位置が変化する部分に引っ掛かり、弁座部材60が軸方向に移動することが抑制される。したがって、弁座部材60がスプール筐体10から脱落することが抑制される。
以上のようにして、本実施形態によれば、弁座部材60をスプール筐体10に対して、容易に装着することができる。
本実施形態のスプール切換弁装置1の組み立て方法としては、作業者は、弁座部材60の弁体可動部62に弁体34を収容した状態で、上述したように弁座部材60をスプール筐体10に装着する。
このとき、弁体34の弁体可動部62への収容作業および弁座部材60のスプール筐体10への装着作業は、弁体可動部62の開口部が鉛直方向上側を向いた状態で行われることが好ましい。この場合、弁体可動部62の鉛直方向下側に第2弁座部53が位置した状態となるため、弁体可動部62に投入された弁体34は自重により第2弁座部53に嵌まる。これにより、弁座部材60のスプール筐体10への装着作業を円滑に行うことができる。
本実施形態においてスプール切換弁装置1は、2つの弁座部材60,70を備えるため、作業者は、弁座部材60と同様にして、弁座部材70をスプール切換弁装置1に装着する。これにより、本実施形態のスプール切換弁装置1の組み立てが完了する。したがって、本実施形態によれば、弁体34,35の収容作業および弁座部材60,70の装着作業のみによってスプール切換弁装置1を組み立てることができるため、組立作業性を向上できる構造を有するスプール切換弁装置1が得られる。
また、弁座部材の装着方法としては、弁座部材をスプール筐体に圧入して装着する方法、および弁座部材とスプール筐体との少なくとも一方をカシメて弁座部材をスプール筐体に装着する方法も考えられる。
しかしながら、弁座部材をスプール筐体に圧入して装着する場合には、弁座部材とスプール筐体とが強く擦れ合う。そのため、弁座部材あるいはスプール筐体の一部が削れて、スプール切換弁装置内にコンタミネーションが生じる場合がある。また、弁座部材とスプール筐体との少なくとも一方をカシメて弁座部材をスプール筐体に装着する場合には、カシメる際に、弁座部材の一部あるいはスプール筐体の一部が削れて、スプール切換弁装置内にコンタミネーションが生じる場合がある。
スプール切換弁装置内にコンタミネーションが生じると、コンタミネーションによって弁体の移動が阻害される等により、スプール切換弁装置の弁切換動作が動作不良を起こす虞があった。なお、弁座部材およびスプール筐体が金属製である場合、コンタミネーションは、例えば、細かい金属片である。
これに対して、本実施形態によれば、突起部63をガイド部80によって案内しつつ弁座部材60をスプール筐体10に挿入することで、弁座部材60をスプール筐体10に装着できる。そのため、弁座部材60をスプール筐体10に圧入することも、弁座部材60とスプール筐体10との少なくとも一方をカシメることもなく、弁座部材60をスプール筐体10に装着できる。したがって、本実施形態によれば、スプール切換弁装置1内にコンタミネーションが生じることを抑制できる。その結果、スプール切換弁装置1の弁切換動作が動作不良を起こすことを抑制できる。
また、本実施形態によれば、弁座部材60をガイド部80に沿って周方向に回転させつつ第1空洞穴20に挿入することのみで弁座部材60をスプール筐体10に装着できる。そのため、弁座部材をスプール筐体に圧入して装着する場合、および弁座部材とスプール筐体との少なくとも一方をカシメて弁座部材をスプール筐体に装着する場合と比べて、弁座部材60をスプール筐体10に装着する手間がより掛からない。そのため、本実施形態によれば、スプール切換弁装置1の組み立て性をより向上できる。
また、本実施形態によれば、ガイド部80は、弁座部材装着部12を径方向に貫通するスリットである。そのため、突起部63の径方向の寸法が大きい場合であっても突起部63の径方向外側の端部がガイド部80と接触することがない。これにより、突起部63における径方向の寸法の設計自由度を高くすることができる。
また、本実施形態によれば、ガイド部80は、円弧状に延びる部分を有する。すなわち、ガイド部80は、軸方向位置が変化するとともに、周方向位置が変化する部分を有する。そのため、突起部63がガイド部80の円弧状の部分に位置した状態で、弁座部材60をスプール筐体10に装着した場合、突起部63、すなわち弁座部材60を軸方向に移動させるためには、弁座部材60をガイド部80に沿って周方向に移動させる必要がある。これにより、弁座部材60の軸方向位置を固定することで、スプール筐体10に対して弁座部材60が周方向に回転することを防止できる。
また、本実施形態によれば、突起部63は、弁座部材60に設けられ、径方向外側に突出する。そのため、例えば、突起部63をプレス加工によって作る場合、突起部63を受けるダイを弁座部材60の径方向外側に設置できる。これにより、ダイを設置しやすく、プレス加工によって突起部63を作りやすい。
また、本実施形態によれば、弁座部材60は、弁座部材装着部12の径方向内側に挿入される。そのため、本実施形態のようにガイド部80がスリットである場合、弁座部材60をスプール筐体10に装着する際に、スプール筐体10の径方向外側からガイド部80に沿って案内される突起部63を視認することができる。これにより、突起部63をガイド部80に沿って案内しやすく、弁座部材60をスプール筐体10に装着しやすい。
図1および図2に示すように、突起部63は、ガイド部80の内側に位置する。弁座部材60が段部22aに突き当てられた状態、すなわち図1および図2に示す状態において、突起部63は、ガイド部80の軸方向(X軸方向)における第1入力ポート41側(終端側,+X側)の端部である終端部80bの内側に位置する。
突起部63におけるガイド部80の内側に位置する部分の幅は、ガイド部80の幅よりも小さい。そのため、突起部63をガイド部80によって案内する際に、突起部63とガイド部80の内縁とが擦れることを抑制できる。これにより、コンタミネーションが生じることをより抑制できる。
弁座部材60が段部22aに突き当てられた状態において、突起部63は、例えば、ガイド部80の内縁から離れた位置にある。言い換えると、弁座部材60が段部22aに突き当てられた状態において、突起部63は、例えば、ガイド部80の内縁と接触しない。
なお、以下の説明において、弁座部材が段部に突き当てられた状態、すなわち図1および図2に示す状態を、単に弁座部材が「適切に装着された状態」と呼ぶ場合がある。
突起部63の形状は、特に限定されない。図1および図2の例では、突起部63の形状は、例えば、略円錐状である。図2に示すように、突起部63は、例えば、弁座部材筒部60aの一部が、径方向内側から径方向外側にプレスされるプレス加工によって塑性変形することで作られる。
弁座部材筒部60aは、貫通孔64を有する。貫通孔64は、突起部63と径方向に対向する。そのため、例えば、突起部63をプレス加工によって作る場合、弁座部材筒部60aの径方向外側から貫通孔64にパンチを通して、弁座部材筒部60aの一部を径方向内側から径方向外側にプレスすることができる。したがって、本実施形態によれば、突起部63をプレス加工によって作りやすく、突起部63の製造を容易にできる。
図4に示すように、弁体可動部62には、出力ポート43が設けられる。出力ポート43は、弁体可動部62と外部とを繋げる。出力ポート43は、弁体可動部62とスプール筐体10の筐体外周面10aとに開口する。本実施形態において出力ポート43は、弁座部材60の側面に開口する弁座部材側出力ポート部66と、スプール筐体10の側面に開口する筐体側出力ポート部12aとが重ね合わされて構成される。
弁座部材側出力ポート部66は、弁座部材筒部60aを径方向に貫通する孔である。筐体側出力ポート部12aは、弁座部材装着部12を径方向に貫通する孔である。図3に示すガイド部80の終端部80bと筐体側出力ポート部12aとの周方向の間の距離は、突起部63と弁座部材側出力ポート部66との周方向の間の距離とほぼ同じである。これにより、突起部63が終端部80bに位置する状態、すなわち弁座部材60がスプール筐体10に適切に装着された状態において、弁座部材側出力ポート部66と筐体側出力ポート部12aとが径方向に重なり、出力ポート43が構成される。
図4に示すように、本実施形態において出力ポート43は、例えば、2つ設けられる。2つの出力ポート43は、例えば、径方向に対向する。
弁座部材70は、第2空洞穴70cと、第2入力ポート45と、弁座部材フランジ部70bと、弁座部材筒部70aと、を有する。第2空洞穴70cは、第1空洞穴30と繋がる穴である。第2空洞穴70cは、第2入力ポート空洞部71と、第2弁座部54と、弁体可動部72と、を有する。
第2入力ポート空洞部71は、第2入力ポート45と接続される部分である。第2入力ポート空洞部71の直径は、弁体35の直径よりも小さい。弁体可動部72は、第1弁座部52と第2弁座部54との軸方向(X軸方向)の間の空間である。弁体可動部72は、内部に弁体35を収容する。弁体可動部72の直径は、弁体35の直径よりも大きい。
本実施形態において弁座部材筒部70aは、スプール筐体10における弁座部材装着部13の径方向内側に装着される。すなわち、本実施形態において弁座部材70は、弁座部材装着部13の径方向内側に挿入される。
図2に示すように、弁座部材筒部70aは、突起部73を有する。弁座部材60および弁座部材70がスプール筐体10に適切に装着された状態においては、突起部73の周方向位置は、例えば、突起部63の周方向位置と同じである。弁座部材筒部70aは、突起部73と径方向に対向する位置に貫通孔74を有する。
図4に示すように、弁体可動部72には、出力ポート46が設けられる。本実施形態において出力ポート46は、弁座部材70の側面に開口する弁座部材側出力ポート部76と、スプール筐体10の側面に開口する筐体側出力ポート部13aとが重ね合わされて構成される。
弁体34は、弁体可動部62内に軸方向(X軸方向)に移動可能に収容される。本実施形態において弁体可動部62は、第2空洞穴60cに設けられるため、弁体34は、第2空洞穴60c内に位置する。弁体34は、第1弁座部51と第2弁座部53とに嵌まることが可能である。
弁体34は、第1弁座部51に嵌まることで、第1入力ポート空洞部21を閉塞する。これにより、第1入力ポート41が閉じられる。一方、弁体34は、第2弁座部53に嵌まることで、第2入力ポート空洞部61を閉塞する。これにより、第2入力ポート42が閉じられる。すなわち、弁体34は、第1弁座部51と第2弁座部53とのいずれか一方に嵌まることで、第1入力ポート41および第2入力ポート42を開閉可能である。
第1入力ポート41および第2入力ポート42を開閉可能であれば、弁体34の形状は、特に限定されない。本実施形態において弁体34は、例えば、球状である。
弁体35は、弁体可動部72内に軸方向(X軸方向)に移動可能に収容される。弁体35は、弁体34と同様に、第1弁座部52と第2弁座部54とのいずれか一方に嵌まることで、第1入力ポート44および第2入力ポート45を開閉可能である。弁体35のその他の構成は、弁体34の構成と同様である。
上述したように、本実施形態においてスプール筐体10は、軸方向(X軸方向)の両端部にそれぞれ第1空洞穴を有し、かつ、スプール筐体10の両端部にはそれぞれ弁座部材が装着される。そのため、図2に示すように、本実施形態においてスプール切換弁装置1は、2つの切換弁構造、切換弁構造2および切換弁構造3を備える。
切換弁構造2は、第1入力ポート41と、第1入力ポート空洞部21と、第1弁座部51と、弁体可動部62と、出力ポート43と、弁体34と、第2弁座部53と、第2入力ポート空洞部61と、第2入力ポート42と、で構成される。切換弁構造3は、第1入力ポート44と、第1入力ポート空洞部31と、第1弁座部52と、弁体可動部72と、出力ポート46と、弁体35と、第2弁座部54と、第2入力ポート空洞部71と、第2入力ポート45と、で構成される。
スプール切換弁装置の組み立ては、切換弁構造の数が多いほど複雑になりやすく、手間が掛かる。これに対して、本実施形態によれば、上述したようにスプール切換弁装置1の組立作業性を向上できる。すなわち、上述した組立作業性を向上できる効果は、本実施形態のように複数の切換弁構造を有するスプール切換弁装置1において特に効果が大きい。
次に、スプール切換弁装置1を備えた切換ユニット100について説明する。図4に示すように、切換ユニット100は、スプール切換弁装置1と、ボディBDと、プラグ115と、を備える。
ボディBDは、有底の筒状である。ボディBDは、底部111と、空洞部110と、を有する。底部111は、例えば、軸方向(X軸方向)と直交する底面112を有する。空洞部110は、+X側の端部から軸方向に延びる穴である。空洞部110の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。
空洞部110には、+X側の端部からスプール切換弁装置1が挿入される。空洞部110の軸方向(X軸方向)の寸法は、スプール切換弁装置1の軸方向の寸法よりも大きい。空洞部110の内周面は、スプール筐体10の外周面と嵌め合わされる。
プラグ115は、空洞部110におけるスプール切換弁装置1よりも+X側に挿入される。プラグ115は、例えば、円柱状である。プラグ115の外周面は、空洞部110の内周面と嵌め合わされる。プラグ115の外周面と空洞部110の内周面との間には、例えば、適宜、図示しないOリング等のシール材が設けられてもよい。
ボディBDは、ボディBDの外側と空洞部110とを接続する接続孔121,122,123,124,125,126を有する。各接続孔121〜126は、径方向に延びる。接続孔121は、軸方向(X軸方向)および周方向について、例えば、第1入力ポート41と同じ位置に配置される。接続孔122は、軸方向および周方向について、例えば、第2入力ポート42と同じ位置に配置される。接続孔123は、軸方向および周方向について、例えば、出力ポート43と同じ位置に配置される。
接続孔124は、軸方向および周方向について、例えば、第1入力ポート44と同じ位置に配置される。接続孔125は、軸方向および周方向について、例えば、第2入力ポート45と同じ位置に配置される。接続孔126は、軸方向および周方向について、例えば、出力ポート46と同じ位置に配置される。
接続孔121には、第1導入部131からオイル、およびオートマチックトランスミッションフルード等の液体(以下、油と呼ぶ)が導入される。接続孔122には、第2導入部132から油が導入される。接続孔123からは、弁体可動部62の油が第1排出部133に排出される。
接続孔124には、第3導入部134から油が導入される。接続孔125には、第4導入部135から油が導入される。接続孔126からは、弁体可動部72の油が第2排出部136に排出される。
切換ユニット100を組み立てる作業者は、スプール切換弁装置1をボディBDの空洞部110に挿入した後、空洞部110にプラグ115を挿入して空洞部110をシールする。これにより、切換ユニット100が組み立てられる。
切換ユニット100においてスプール切換弁装置1は、ボディBDの底部111とプラグ115とによって軸方向両側を挟持される。そのため、切換ユニット100においてスプール切換弁装置1の軸方向位置は、固定される。これにより、スプール切換弁装置1における弁座部材60,70の軸方向位置も固定される。本実施形態においては、上述したようにガイド部80,81が円弧状であるため、弁座部材60,70の軸方向位置が固定されると、スプール筐体10に対する弁座部材60,70の周方向の回転が防止される。
例えば、スプール筐体10に対して弁座部材60,70が周方向に回転すると、筐体側出力ポート部12a,13aと弁座部材側出力ポート部66,76とが周方向にずれて出力ポート43,46が閉塞される虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、スプール筐体10に対する弁座部材60,70の周方向の回転が防止されるため、切換ユニット100において、スプール切換弁装置1の出力ポート43,46が閉塞されることを防止できる。
上記の切換ユニット100において、第1導入部131から第1油圧で導入された油は、接続孔121、第1溝部91、第1入力ポート41、および第1入力ポート空洞部21を順次通って弁体可動部62に導入される。弁体可動部62に導入された油は、出力ポート43、第2溝部93、および接続孔124を順次通って第1排出部133に排出される。
一方、第2導入部132から第2油圧で導入された油は、接続孔122、第2入力ポート42、および第2入力ポート空洞部61を順次通って弁体可動部62に導入される。弁体可動部62に導入された油は、出力ポート43、第2溝部93、および接続孔124を順次通って第1排出部133に排出される。
このように、本実施形態において第1排出部133から排出される油が通る油路は、第1入力ポート41を通る油路と、第2入力ポート42を通る油路との2つがある。本実施形態においては、切換弁構造2によって、第1排出部133から排出される油が通る油路を上記2つの油路のうちで切り換えることができる。
例えば、第1入力ポート41から導入される油の第1油圧が第2入力ポート42から導入される油の第2油圧よりも高い場合には、弁体34は、第1油圧と第2油圧との圧力差によって第2入力ポート42側(−X側)に移動して第2弁座部53に嵌る。上述したように、弁体34が第2弁座部53に嵌ると、第2入力ポート42が閉じられる。したがって、第1排出部133から排出される油が通る油路を、第1入力ポート41を通る油路とすることができる。その結果、第1排出部133から排出される油を第1導入部131から導入される油とすることができる。
一方、第2油圧が第1油圧よりも高い場合には、弁体34は、第1油圧と第2油圧との圧力差によって第1入力ポート側(+X側)に移動して第1弁座部51に嵌る。上述したように、弁体34が第1弁座部51に嵌ると、第1入力ポート41が閉じられる。したがって、第1排出部133から排出される油が通る油路として、第2入力ポート42を通る油路とすることができる。その結果、第1排出部133から排出される油を第2導入部132から導入される油とすることができる。
このように、スプール切換弁装置1の切換弁構造2によって油路を切り換えることができる。上記油路の切り換えは、切換弁構造3についても同様である。切換弁構造3は、第2排出部136から排出される油が通る油路を、第3導入部134から第1入力ポート44を通る油路と、第4導入部135から第2入力ポート45を通る油路と、のうちのいずれか一方に切り換えることができる。
本実施形態のスプール切換弁装置1の切換弁構造2,3においては、弁体34,35が移動するのみによって、油路を切り換えることができる。そのため、油路の切り換えを迅速に行うことが可能であるとともに、スプール切換弁装置1の部品点数を低減し、かつ、スプール切換弁装置1を小型軽量化することができる。
また、切換ユニット100において上述した各油路を作るためには、スプール切換弁装置1をボディBDに取り付ける際に、各接続孔121,123,124,126と、第1入力ポート41、出力ポート43、第1入力ポート44、および出力ポート46と、を接続する必要がある。
これに対して、本実施形態によれば、スプール筐体10の筐体外周面10aに、環状の第1溝部91,92および第2溝部93,94が設けられる。第1入力ポート41は、第1溝部91に開口する。出力ポート43は、第2溝部93に開口する。第1入力ポート44は、第1溝部92に開口する。出力ポート46は、第2溝部94に開口する。そのため、ボディBDの空洞部110に対するスプール切換弁装置1の周方向位置によらず、各接続孔121,123,124,126を、第1溝部91,92または第2溝部93,94を介して、各第1入力ポート41,44または各出力ポート43,46と接続できる。
したがって、本実施形態によれば、スプール切換弁装置1をボディBDに取り付ける際に、スプール切換弁装置1を周方向に位置合わせする必要がなく、切換ユニット100の組み立てが容易である。また、スプール切換弁装置1の構造が、ボディBDの各接続孔121,123,124,126の位置に制約を与えることがない。そのため、本実施形態によれば、ボディBDの設計の自由度を高めることができる。
なお、本実施形態においては、以下の構成を採用することもできる。
本実施形態においてガイド部80の構成は、突起部63を案内できるならば、特に限定されない。本実施形態においてガイド部80は、例えば、径方向に窪む溝であってもよい。
例えば、ガイド部80がスリットである場合、出力ポート43から第2溝部93に流入した油が、スリットであるガイド部80を介して弁座部材装着部12と弁座部材筒部60aとの隙間に流れ込む虞がある。これにより、第1排出部133から排出される油の量にばらつきが生じる虞があった。
これに対して、この構成によれば、ガイド部80が弁座部材装着部12を貫通しない溝であるため、出力ポート43から第2溝部93に流入した油が、ガイド部80を介して弁座部材装着部12と弁座部材筒部60aとの隙間に流れ込むことがない。これにより、第1排出部133から排出される油の量がばらつくことを抑制できる。
また、本実施形態においてガイド部80は、例えば、側面視において、軸方向(X軸方向)に対して傾いた方向に直線的に延びる形状であってもよい。
また、本実施形態においては、切換弁構造2と切換弁構造3とが互いに異なる構成であってもよい。また、本実施形態においては、切換弁構造2,3のうちいずれか一方のみが設けられてもよい。この場合、スプール切換弁装置1は、第1空洞穴と、弁座部材と、をそれぞれ1つずつ備える。
また、本実施形態において突起部63は、突起部63を径方向に貫通する孔を有してもよい。この場合、弁体可動部62内の油が、突起部63の孔、スリットであるガイド部80、第2溝部93、および接続孔123を介して、第1排出部133から排出される。すなわち、突起部63の孔とガイド部80とによって出力ポートが構成される。
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に対してガイド部の形状が異なる。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
図5(A),(B)および図6(A),(B)は、本実施形態のスプール切換弁装置201の部分を示す側面図である。図5(A)から図6(B)に示すように、スプール切換弁装置201は、スプール筐体210と、弁座部材60と、を備える。スプール筐体210は、弁座部材装着部212を有する。弁座部材装着部212は、第1実施形態の弁座部材装着部12と異なり、筐体フランジ部14を有していない。
図5(A)に示すように、弁座部材装着部212は、ガイド部280を有する。ガイド部280は、第1直線部281と、第2直線部282と、円弧状部283と、を有する。第1直線部281と第2直線部282とは、円弧状部283によって接続される。
第2直線部282は、軸方向(X軸方向)に沿って直線的に延びる。そのため、第2直線部282に沿って突起部63を案内する際に、弁座部材60を周方向に回転させる必要がない。したがって、第2直線部282において突起部63の案内が容易である。第2直線部282は、ガイド部280における挿入側(−X側)の端部に位置する。第2直線部282は、挿入側に開口する。
円弧状部283は、第2直線部282の終端側(+X側)の端部に接続される。円弧状部283は、挿入側(−X側)から終端側に向かうに従って、+θX方向に湾曲する円弧状である。
第1直線部281は、円弧状部283の終端側(+X側)の端部に接続される。第1直線部281は、周方向に沿って直線的に延びる。そのため、図5(A)の例のように弁座部材60が適切に装着された状態において突起部63が第1直線部281に位置する場合、図5(B)に示すように、弁座部材60がスプール筐体210から脱落する向き(−X向き)に移動しても、突起部63が第1直線部281の内縁に引っ掛かる。
ここで、突起部63が引っ掛かる部分が、例えば、円弧状である場合、弁座部材60と接触するガイド部の内縁が、軸方向(X軸方向)および周方向に対して傾斜する。そのため、弁座部材60がスプール筐体210から脱落する向き(−X向き)に力を受けると、突起部63がガイド部の内縁から周方向成分の力を受け、弁座部材60が周方向に回転する虞がある。したがって、弁座部材60の軸方向位置が固定されていない状態では、弁座部材60がスプール筐体10から脱落する虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、弁座部材60がスプール筐体210から脱落する向き(−X向き)に移動した際に、突起部63引っ掛かるガイド部280の部分を第1直線部281とできる。第1直線部281は周方向に沿って直線的に延びるため、第1直線部281の内縁は、周方向に沿って延び、軸方向と直交する。これにより、弁座部材60がスプール筐体210から脱落する向きに力を受けても、第1直線部281の内縁から突起部63に周方向の力が加えられることがない。したがって、本実施形態によれば、弁座部材60がスプール筐体210から脱落する向きに力を受けても弁座部材60が周方向に回転することがなく、弁座部材60の脱落をより抑制できる。
第1直線部281の内縁には、凸部284が設けられる。凸部284は、第1直線部281の内縁から突出する。すなわち、ガイド部280の内縁には、ガイド部280の内縁から突出する凸部284が設けられる。そのため、突起部63が弁座部材60をスプール筐体210に装着する向きと逆向きにガイド部280に沿って案内される場合に、突起部63が凸部284に引っ掛かりやすく、結果として弁座部材60がスプール筐体210から脱落することを抑制できる。
図5(B)の例において凸部284は、第1直線部281の内縁において、ガイド部280の終端部280bよりも円弧状部283側(−θX側)に位置する。凸部284は、例えば、第1直線部281の挿入側(−X側)の内縁から終端側(+X側)に突出する。そのため、例えば、図5(B)のように、弁座部材60がわずかに軸方向(X軸方向)に移動され、突起部63が第1直線部281の挿入側(−X側)の内縁に接触した場合、凸部284に引っ掛かることで、突起部63が周方向に移動することをより抑制できる。
凸部284の突出高さ、すなわち図5(B)の例では軸方向(X軸方向)の寸法は、ガイド部280の幅とガイド部280の内側に位置する突起部63の幅との差よりも小さい。そのため、ガイド部280が延びる方向において凸部284が位置するガイド部280の部分を突起部63が通る際に、突起部63と凸部284あるいはガイド部280の内縁とが擦れることが抑制される。これにより、コンタミネーションが生じることを抑制できる。
凸部284の形状は、特に限定されない。図5(B)の例では、凸部284の形状は、例えは、側面視で半円形状である。
図6(B)に示すように、スプール切換弁装置201には、出力ポート243が設けられる。出力ポート243は、弁座部材側出力ポート部266と、筐体側出力ポート部212aと、が径方向に重ね合わされて構成される。弁座部材側出力ポート部266は、第1実施形態の弁座部材側出力ポート部66と同様である。筐体側出力ポート部212aは、第1実施形態の筐体側出力ポート部12aと同様である。
本実施形態において、図6(A)に示す第1直線部281の周方向の寸法L1は、図6(B)に示す弁座部材側出力ポート部266の周方向の寸法L2の半分と、筐体側出力ポート部212aの周方向の寸法L3の半分と、を足し合わせた寸法よりも小さい。
本実施形態のように弁座部材60が適切に装着された状態において突起部63が第1直線部281に位置する場合、弁座部材60の軸方向位置を固定した場合であっても、図6(A)に示すように突起部63が第1直線部281の範囲内で周方向に移動可能な場合がある。これにより、弁座部材60の軸方向位置を固定した場合であっても、スプール筐体210に対して弁座部材60が周方向に回転する虞がある。そのため、弁座部材側出力ポート部266と筐体側出力ポート部212aとが周方向にずれて、出力ポート243が閉塞される虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、第1直線部281の寸法L1と、弁座部材側出力ポート部266の寸法L2と、筐体側出力ポート部212aの寸法L3とが上記関係にある。これにより、弁座部材60が周方向に最大寸法L1分だけ回転しても、弁座部材側出力ポート部266と筐体側出力ポート部212aとが少なくとも一部で重なり合う。したがって、本実施形態によれば、スプール筐体210に対して弁座部材60が周方向に回転した場合であっても、出力ポート243が閉塞されることを抑制できる。
スプール切換弁装置201のその他の構成は、第1実施形態のスプール切換弁装置1の構成と同様である。
なお、本実施形態においては、ガイド部280の内縁における凸部284が設けられる位置は特に限定されない。また、本実施形態においてガイド部280は、円弧状部283を有しなくてもよい。この場合、第1直線部281と第2直線部282とが直接的に接続される。この場合、ガイド部280の形状は、側面視において、第1直線部281と第2直線部282とが直角に接続されるL字形状である。
<第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態に対して、弁座部材装着部312が弁座部材360の径方向の内側に挿入される点において異なる。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
図7は、本実施形態のスプール切換弁装置301を示すZX断面図である。図7に示すように、スプール切換弁装置301は、スプール筐体310と、弁座部材360と、を備える。スプール筐体310は、第1空洞穴320と、第1入力ポート41と、弁座部材装着部312と、を有する。第1空洞穴320は、第1入力ポート空洞部21と、第1弁座部51と、筐体側弁体可動部322と、を有する。
筐体側弁体可動部322は、第1弁座部51の手前側(−X側)に接続される。筐体側弁体可動部322は、軸方向(X軸方向)に延びる。筐体側弁体可動部322は、手前側に開口する。
弁座部材装着部312は、弁座部材360の径方向内側に挿入される。すなわち、本実施形態において弁座部材装着部312には、例えば、弁座部材360が径方向外側に重ねられて装着される。弁座部材装着部312の内部は、筐体側弁体可動部322である。弁座部材360がスプール筐体310に適切に装着された状態において、弁座部材装着部312の先端は、後述する段部362aと接触する。弁座部材装着部312には、ガイド部80が設けられる。
弁座部材装着部312は、第2実施形態の弁座部材装着部212と同様に、筐体フランジ部14を有していない。スプール筐体310のその他の構成は、第1実施形態のスプール筐体10の構成と同様である。
弁座部材360は、第2空洞穴360cと、第2入力ポート42と、弁座部材フランジ部60bと、弁座部材筒部360aと、を有する。第2空洞穴360cは、第2入力ポート空洞部61と、第2弁座部53と、弁座部材側弁体可動部365と、筐体挿入穴部362と、を有する。
弁座部材側弁体可動部365は、軸方向(X軸方向)において第2弁座部53の第1入力ポート41側(+X側)に接続される。弁座部材側弁体可動部365の軸方向における第1入力ポート41側の端部は、筐体側弁体可動部322と接続される。本実施形態においては、筐体側弁体可動部322と弁座部材側弁体可動部365とによって、弁体34が収容される弁体可動部が構成される。そのため、本実施形態において弁体34は、第1空洞穴320内、または第2空洞穴360c内に位置する。
筐体挿入穴部362は、軸方向(X軸方向)において弁座部材側弁体可動部365の第1入力ポート41側(+X側)に接続される。筐体挿入穴部362には、弁座部材装着部312が挿入される。筐体挿入穴部362は、軸方向に延びる。筐体挿入穴部362の断面(YZ断面)形状は、例えば、円形状である。筐体挿入穴部362の直径は、弁座部材側弁体可動部365の直径よりも大きい。そのため、第2空洞穴360cの内側面には、第2入力ポート42側(−X側)から第1入力ポート41側(+X側)に向かって第2空洞穴360cの直径が大きくなる段部362aが設けられる。
弁座部材筒部360aは、径方向に突出する突起部363を有する。突起部363は、弁座部材360に設けられる。突起部363は、径方向内側に突出する。そのため、突起部363をプレス加工によって作る場合、弁座部材筒部360aに径方向外側からパンチを当てることができる。これにより、弁座部材筒部360aに、図2に示す貫通孔64を設ける必要がない。したがって、弁座部材360を製造する手間を低減できる。
なお、上記の第1実施形態から第3実施形態の各実施形態においては、以下の構成を採用することもできる。
上記各実施形態の説明においては、弁座部材が突起部を有し、弁座部材装着部がガイド部を有する構成としたが、これに限られない。各実施形態においては、弁座部材がガイド部を有し、弁座部材装着部が突起部を有してもよい。すなわち、各実施形態においては、弁座部材と弁座部材装着部とのうちのいずれか一方が、径方向に突出する突起部を有し、弁座部材と弁座部材装着部とのうちのいずれか他方が、突起部を案内するガイド部を有する構成を採用できる。
また、各実施形態においてガイド部が弁座部材に設けられる場合で、かつ、ガイド部がスリットである場合には、ガイド部は弁座部材を径方向に貫通する。すなわち、各実施形態においては、ガイド部が、弁座部材と弁座部材装着部とのうちのガイド部が設けられる側を径方向に貫通するスリットである構成を採用できる。
また、各実施形態においてガイド部の形状は、少なくとも一部において軸方向(X軸方向)の位置が変化し、かつ、少なくとも一部において周方向の位置が変化するならば、特に限定されない。すなわち、ガイド部の形状は、第1実施形態および第2実施形態において示した構成以外の構成であってもよい。
また、各実施形態においては、弁体可動部が第1空洞穴に設けられてもよい。この場合、弁体は、第1空洞穴に収容される。
なお、上記説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。