以下に、実施形態に係るエレベータシステムのドア点検装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態のエレベータシステムのドア点検装置を適用可能なダブルデッキエレベータ10の構成を示す例示的な模式図である。ダブルデッキエレベータ10は、建物(ビルやマンション等)に設置される昇降路12の上下方向に連結された上かご14a(第一の乗りかご)と下かご14b(第二の乗りかご)とで構成される乗りかごユニット14を備える。上かご14aと下かご14bとは、かご枠20により上下方向に固定されて一体的に昇降する。
本実施形態のダブルデッキエレベータ10は、通常運転モードと点検モードとによって運転可能である。通常運転モードは、運輸対象(例えば、利用者や荷物等)の乗降のために着床階の乗り場ドア(ホールドア)とともに乗りかごドアの通常開閉動作が実行可能なモードである。通常運転モードは、さらに複数の運転モード、例えば、第1通常運転モード、第2通常運転モード、第3通常運転モードを含んでもよい。第1通常運転モードの場合、上かご14aは、例えば偶数階16aの偶数階乗り場18aに停止する専用の乗りかごとして運転され、下かご14bは、例えば奇数階16bの奇数階乗り場18bに停止する専用の乗りかごとして運転される。第1通常運転モードは、「ダブル運転方式」と称する場合もある。第2通常運転モードの場合、出発基準階において上かご14aは偶数階乗り場18aのみ、下かご14bは奇数階乗り場18bのみで呼び登録可能である。そして、出発基準階を出発して他階に応答後は、上かご14aは、当該上かご14aが到達できない最下階G以外、下かご14bは、当該下かご14bが到達できない最上階T以外の全階にて呼び登録が可能となる運転モードである。第2通常運転モードは、「セミダブル運転方式」と称する場合がある。第3通常運転モードの場合、上かご14aと下かご14bのうち一方の乗りかごのみを使用可能として、上かご14aは当該上かご14aが到達できない最下階G以外、下かご14bは当該下かご14bが到着できない最上階T以外の全階にて呼び登録が可能となる運転モードである。第3通常運転モードは、「シングル運転方式」と称する場合もある。通常運転モードの各モードは、ダブルデッキエレベータ10が設置される建物の形態や、利用者の利用時間帯、利用乗り場等の特徴に応じて固定としてもよいし、適宜切り替え可能としてもよい。なお、以下に説明する実施形態において、通常運転モードを実行する場合、一例として第1通常運転モードを実行する場合を示す。
第1通常運転モードにおいて、乗りかごユニット14の昇降移動に伴い、上かご14aは、偶数階乗り場18a間を移動し、下かご14bは奇数階乗り場18b間に移動する。なお、偶数階乗り場18aと奇数階乗り場18bとで部分的に天井高が異なる場合がある。例えば、エントランスホール(例えば1階)は、他の階(2階以上の階)より天井高が高い場合がある。このような場合に対応するため、乗りかごユニット14は、着床階に応じて、かご枠20内における上かご14aと下かご14bの上下方向の位置(間隔)を調整する調整機構を備えてよい。
ダブルデッキエレベータ10が例えば、1階(最下階G)をエントランスホールとする高層ビルに設置された場合、上階の奇数階16bに向かう利用者は、1階から下かご14bに乗り込む。一方、上階の偶数階16aに向かう利用者は、エスカレータ22や階段(図示省略)を用いて2階に移動し、2階から上かご14aに乗り込む。同様に、上階で下かご14bに乗り込んだ利用者は、他の奇数階16bのみに移動可能であり、上階で上かご14aに乗り込んだ利用者は、他の偶数階16aのみに移動可能である。したがって、利用者が偶数階16aと奇数階16bとの間を移動する場合には、エスカレータや階段、または各階に停止可能な単かごタイプのエレベータが利用されることになる。
ダブルデッキエレベータ10は、乗りかごユニット14と、カウンターウェイト24とをメインロープ26で連結した、いわゆるつるべ式のエレベータとして構成されうる。昇降路12は、ダブルデッキエレベータ10を備える建物の鉛直方向に沿って設けられており、鉛直方向が昇降方向になるように建物内の複数の階床に渡って設けられている。また、昇降路12の昇降方向上側には、乗りかごユニット14を昇降移動させる巻上機28(モータ30、メインシーブ32等を含む)やそらせシーブ34等を設置する機械室36が設けられている。また、昇降路12には、乗りかごユニット14やカウンターウェイト24が昇降する際のガイドとなる昇降方向に延びるガイドレール(図示省略)がそれぞれ設置されている。
昇降路12の各偶数階16aの偶数階乗り場18aおよび各奇数階16bの奇数階乗り場18bに対応する位置には、例えば長方形の乗り場開口部12aが設けられている。上かご14aが各偶数階乗り場18aに移動して停止する(着床)する場合、および下かご14bが各奇数階乗り場18bに移動して停止する(着床する)場合、上かご14aの上かごドア38aおよび下かご14bの下かごドア38bが各乗り場開口部12aの位置と一致する。各偶数階乗り場18aおよび各奇数階乗り場18bには、乗り場開口部12aを塞ぐように、開閉自在なホールドア40(乗り場ドア)が設けられている。ホールドア40は、通常は閉鎖状態になっており、ロック機構(図示省略)により、開状態への動作が規制されている。これにより、ホールドア40は、通常時は偶数階乗り場18a側および奇数階乗り場18b側と昇降路12側との間を遮っている。ホールドア40は、上かご14aまたは下かご14bが目的階に到着して、上かごドア38aまたは下かごドア38bが閉状態から開状態に動作するのに連動して、ロック機構によるロックを解除すると共に、閉状態から開状態となる。
図2は、ダブルデッキエレベータ10の上かご14aの上かごドア38aのかごドア開閉機構42の例示的な模式図である。なお、下かご14bの下かごドア38bも同様な構造であるため、代表して上かごドア38aのかごドア開閉機構42について説明する。
かごドア開閉機構42は、ハンガーケース44、主連動シーブ46a、従連動シーブ46b、駆動ベルト48、ガイドレール50等を含んで構成されている。ハンガーケース44は、上かご14aのドア上部のドア開閉方向に延設され、当該ハンガーケース44の上部両端近傍部に回転可能な主連動シーブ46aおよび従連動シーブ46bが設けられている。主連動シーブ46aと従連動シーブ46bとには、長楕円の移動軌道を形成するように駆動ベルト48が掛け渡されている。また、ハンガーケース44内の駆動ベルト48の下方には、駆動ベルト48と実質的に平行なガイドレール50が延設されている。
駆動ベルト48のうち上側移動部分の一部には、右かごドアハンガー52Rに設けられた掛止部材54Rが固定されている。右かごドアハンガー52Rは、ハンガーローラ56およびエキセントリックローラ58を介してガイドレール50に摺動可能に係合している。そして、右かごドアハンガー52Rに右かごドア38aRが吊り下げ姿勢で固定されている。同様に、駆動ベルト48のうち下側移動部分の一部には、左かごドアハンガー52Lに設けられた掛止部材54Lが固定されている。左かごドアハンガー52Lは、ハンガーローラ56およびエキセントリックローラ58を介してガイドレール50に摺動可能に係合している。そして、左かごドアハンガー52Lに左かごドア38aLが吊り下げ姿勢で固定されている。
主連動シーブ46aに連結されたドアモータ60を回転駆動して、駆動ベルト48を時計回り方向に移動させることにより、右かごドア38aRおよび左かごドア38aLを開動作させることができる。また、駆動ベルト48を反時計回り方向に移動させることにより、右かごドア38aRおよび左かごドア38aLを閉動作させることができる。
図3は、ダブルデッキエレベータ10の偶数階乗り場18aのホールドア40の構造の例示的な模式図である。なお、奇数階乗り場18bのホールドア40の構造も同様な構造であるため、代表して偶数階乗り場18aのホールドア40について説明する。
ホールドア40は、一例として右ホールドア40Rと左ホールドア40Lとで構成される。ホールドア40(右ホールドア40R、左ホールドア40L)は、昇降路12を昇降する上かご14aが停止する各偶数階乗り場18aの乗り場開口部12aの床部18cに設けられたドア開閉方向に延びるホールシル62(敷居)に沿って移動可能である。右ホールドア40Rの上端部には、複数のハンガーローラ64および複数のエキセントリックローラ66を備える右ホールドアハンガー68Rが固定されている。同様に、左ホールドア40Lの上端部には、複数のハンガーローラ64および複数のエキセントリックローラ66を備える左ホールドアハンガー68Lが固定されている。右ホールドアハンガー68Rおよび左ホールドアハンガー68Lの各ハンガーローラ64およびエキセントリックローラ66がガイドレール70に対して転動することによって、右ホールドア40Rおよび左ホールドア40Lが開閉方向に移動可能となる。
一方、ホールドア40(右ホールドア40R、左ホールドア40L)の下端部には、複数のドアガイドシュー72が固定され、ホールシル62の溝部62aの内部を移動可能になっている。ホールドア40は、上端部がハンガーローラ64、エキセントリックローラ66介してガイドレール70によってガイドされ、下端部が溝部62aに嵌まり込むドアガイドシュー72によってガイドされる。その結果、ホールドア40は、捻れや傾きが抑制され、かつスムーズな開閉動作が実現できるように構成されている。
また、図2示す上かごドア38a側には、例えば「カミソリ」と呼ばれる係合部材(図示省略)が取り付けられ、右かごドア38aRと左かごドア38aLとが予め決められた僅かな距離だけ開いたときに係合部材が、図3に示すホールドア40側に設けられた被係合部材(例えばローラ)と係合するとともに、ホールドア40のインターロック(図示省略)を解除して開方向に移動する。その結果、右かごドア38aRおよび左かごドア38aLに連動して、右ホールドア40Rおよび左ホールドア40Lが同時に開閉する。
なお、図2において、ドアモータ60の回転軸の回転力を検出するトルクセンサ74が配置されている。トルクセンサ74は、ドアモータ60の回転軸に非接触または接触させた状態でトルク値を計測する。本実施形態において、トルクセンサ74の検出するトルク値は、乗りかごドアの動作状態、例えば、開閉の有無や開閉のスムーズさ(所定負荷以下での開閉動作)等を示す開閉状態情報であり、ダブルデッキエレベータ10の全体を制御する制御盤76に提供される。なお、乗りかごドアの動作状態が検出できれば、トルクセンサ74に限らず、種々の検出装置を利用可能ある。
図1に戻り、各偶数階乗り場18aおよび各奇数階乗り場18bには、制御盤76と無線や有線のネットワークを介して接続された乗り場操作盤78が設けられている。この乗り場操作盤78は、利用者が上かご14a(または下かご14b)を、当該利用者がいる偶数階乗り場18a(または奇数階乗り場18b)に呼ぶ際に操作する入力装置である。同様に、上かご14aおよび下かご14bには、かご内操作盤80が設けられている。かご内操作盤80は、上かご14aまたは下かご14bに乗り込んだ利用者が、行先階を指定したり、上かごドア38aまたは下かごドア38bを開閉したりする際に用いる入力装置である。
上かご14aおよび下かご14bは、利用者や荷物を乗せることが可能な例えば箱形状であり、上かご14a(下かご14b)の内部と偶数階乗り場18a(奇数階乗り場18b)との間で、利用者や荷物の出入りを可能にする、かご開口部14cが形成されている。そして、かご開口部14cを塞ぐように開閉自在な上かごドア38a(下かごドア38b)が設けられている。
カウンターウェイト24は、メインロープ26を介して乗りかごユニット14に連結された釣り合いおもりであり、昇降路12内で乗りかごユニット14と連動して昇降する。カウンターウェイト24は、ウェイト用ガイドレール(図示省略)に沿って昇降する。このカウンターウェイト24は、乗りかごユニット14が所定積載量(例えば、最大積載量に対して1/2程度)の場合に、機械室36に配設される巻上機28を挟んで、乗りかごユニット14と釣り合うように重量が設定されている。メインロープ26は、昇降路12の上部に設けられた巻上機28のメインシーブ32やそらせシーブ34等に掛けられて、一端に乗りかごユニット14が接続され、他端にかご枠20が接続されることにより、双方を連結している。
巻上機28は、例えばモータ30と、モータ30に連結されたメインシーブ32を有し、モータ30で発生する動力でメインロープ26を巻き上げる。巻上機28は、機械室36内に配置された制御盤76により駆動制御が可能になっている。
制御盤76は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された参照データ、ダブルデッキエレベータ10の仕様等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路等を備える。制御盤76は、種々のセンサ、検出器やダブルデッキエレベータ10の各部と電気的に接続され、各部の動作を統括的に制御する。なお、ダブルデッキエレベータ10の仕様によっては、機械室36がない場合もある。この場合、制御盤76は、昇降路12の壁面や三方枠等に設置されることがある。
上述したような本実施形態のダブルデッキエレベータ10は、通常運転モードに加え、点検モードを備える。点検モードは、ホールドア40、上かごドア38a、下かごドア38bのうち少なくとの一つに対する開閉動作異常の有無判定を実行するモードである。点検モードは、例えば、所望のタイミングや利用者のいない時間帯または利用者の少ない時間帯等に実行することができる。点検モードは、例えば、同一の偶数階乗り場18a(または奇数階乗り場18b)に上かご14aと下かご14bを順次停止させて、上かごドア38aおよび下かごドア38bを開閉動作させることにより、上かごドア38aまたは下かごドア38bの動作状態を点検する。また、点検モードでは、上かごドア38aまたは下かごドア38bと連動して開閉するホールドア40の動作状態の点検が可能である。
例えば、ある階(点検階A:例えば2F)に上かご14aを着床させる。そして、上かごドア38aの開閉動作を行った結果、上かごドア38aが正常な開閉動作を行ったとする。例えば、上かごドア38aの開閉速度が正常であり、かつ、正常な位置(全開位置および全閉位置)まで開閉動作が実行された場合、点検階Aのホールドア40および上かごドア38aの「開閉動作異常」は「なし」、つまり、「正常」と判定できる(判定a)。この場合、続けて、下かご14bを同一階(点検階A、この場合2階)に着床させて、下かごドア38bの開閉動作を実行する。その結果、下かごドア38bが正常な開閉動作を行った場合、点検階Aのホールドア40および下かごドア38bの「開閉動作異常」は「なし」、つまり、「正常」と判定できる(判定b)。したがって、判定aおよび判定bの結果から、点検階A(この場合、2階)のホールドア40および、上かごドア38a、下かごドア38bは「正常」であると判定できる。一方、下かご14bを同一階(点検階A)に着床させて、下かごドア38bの開閉動作を実行した結果、下かごドア38bが正常な開閉動作を行わなかったとする。この場合、既に、点検階Aにおける上かご14aの正常な開閉動作により、点検階Aのホールドア40に「開閉動作異常」は「なし」と判定されているため、下かごドア38bに「開閉動作異常」があると判定できる(判定c)。したがって、判定aと判定cの結果から、下かごドア38bのみが「開閉動作異常」であると判定することができる。
また、点検階Aに上かご14aを着床させて、上かごドア38aの開閉動作を行った結果、上かごドア38aが正常な開閉動作を行わなかった場合、点検階Aのホールドア40と上かごドア38aのうち少なくとも一方に「開閉動作異常」があると判定できる(判定d)。この場合、続けて、下かご14bを同一階(点検階A)に着床させて、下かごドア38bの開閉動作を実行する。その結果、下かごドア38bが正常な開閉動作を行ったとする。この場合、点検階Aのホールドア40および下かごドア38bの「開閉動作異常」は「なし」、つまり「正常」と判定できる(判定e)。したがって、判定dと判定eの結果から、上かご14aが点検階Aで開閉動作を行った場合の「開閉動作異常」の原因は、上かご14aであり、上かごドア38aのみが「開閉動作異常」があると判定することができる。
また、このとき、下かごドア38bが正常な開閉動作を行わなかった場合、点検階Aのホールドア40または下かごドア38bのうち少なくとも一方に「開閉動作異常」の可能性があると判定できる(判定f)。したがって、判定dと判定fの結果から、点検階Aに対するドア点検開閉処理において、「正常」と判定される結果は得られず、点検階Aにおけるドア点検処理では、ドアごとの「開閉動作異常」の有無判定は不可となる。この場合、ホールドア40が「正常」で、上かごドア38aと下かごドア38bの両方が「開閉動作異常」の場合、ホールドア40が「開閉動作異常」で、上かごドア38aと下かごドア38bの両方が「正常」、両方が「開閉動作異常」、いずれか一方が「開閉動作異常」の場合、の三通りが考えられる。
以上の結果を図4に示す結果リストにまとめて示す。
点検階Aにおける点検が完了したら、点検階を他の階に変更する(例えば点検階B、この場合、例えば3階)。そして、上述と同様に、点検階Bに上かご14aを着床させて上かごドア38aの開閉動作を行う。なお、この場合、点検階Aに下かご14bを着床させたときに、上かご14aは点検階Bに着床していることになる。したがって、点検階を1階分ずつ移動させる場合は、点検処理上の点検階の認識位置が変更されるだけとなる。続いて、同一の点検階Bに下かご14bを着床させて下かごドア38bの開閉動作を行う。その結果、図4に示すように、点検階Bのホールドア40、上かごドア38a、下かごドア38bの「開閉動作異常」の有無判定ができる。そして、点検階Bにおける点検が完了したら、点検階を他の階に変更し(例えば点検階C、この場合、例えば4階)、上述と同様な点検処理をおよび判定を繰り返し実行する。このような点検処理を各階において実施することにより、「開閉動作異常」が、ホールドア40、上かごドア38a、下かごドア38bのいずれに存在するかを効率的に検出することができる。なお、複数の階のホールドア40が同時に「開閉動作異常」を発生する可能性は低い。したがって、複数の階で「開閉動作異常」が検出された場合は、上かごドア38aおよび下かごドア38bに「開閉動作異常」が発生していると推定できる。
逆に、いずれかの点検階でホールドア40に「開閉動作異常」は「ない」との判定が行われた場合、ホールドア40を正常に開閉させた上かごドア38aまたは下かごドア38bの特定が可能である。したがって、上かごドア38aまたは下かごドア38bの開閉動作が正常であると判定された場合、正常と判定された上かごドア38aまたは下かごドア38bのみを各点検階に着床させて、開閉動作を実行する。正常と判定された上かごドア38aまたは下かごドア38bで開閉点検を実施することにより、「開閉動作異常」が発生した場合、その原因は、点検階のホールドア40が原因であると判定できる。その結果、各点検階のホールドア40の「開閉動作異常」の有無判定を効率的に行うことができる。また、上かごドア38aと下かごドア38bとの両方の開閉動作が正常であると判定された場合、ホールドア40の「開閉動作異常」の判定のための上かご14aおよび下かご14bの同一階の停止による判定から非同一階の停止による判定に変更してもよい。つまり、上かご14aは偶数階16aのみに着床させて開閉動作を実行させ、下かご14bは奇数階16bのみに着床させて開閉動作を実行させる。つまり、点検モードにおいて、通常運転モードと同じ動作で乗りかごユニット14を移動させる(この場合、ダブル運転方式)。その結果、各点検階のホールドア40の「開閉動作異常」の有無判定をさらに効率的に行うことができる。
上述したような、ホールドア40、上かごドア38a、下かごドア38bの「開閉動作異常」の有無判定を実行するための、エレベータシステムのドア点検装置82の構成をダブルデッキエレベータ10主要構成とともに図5を用いて説明する。なお、本実施形態の場合、一例としてドア点検装置82は制御盤76において、CPUがROM等の記憶装置に記憶されたプログラム読出し、実行することで実現される。また、別に実施形態においては、ドア点検装置82は、専用のハードウエアで構成されてもよい。また、ドア点検装置82が制御盤76とは別に構成されてもよい。
制御盤76は、主としてドア点検装置82と運行制御部84とで構成される。運行制御部84は、通常運転モードにおいて、乗り場操作盤78からの乗り場呼び登録やかご内操作盤80からのかご呼び登録にしたがい、乗りかごユニット14(上かご14aおよび下かご14b)を目的の偶数階16aおよび奇数階16bに移動させるように、モータ30の回転方向と回転速度を決定する。そして、モータ30の駆動によりメインロープ26を昇降方向に移動させて乗りかごユニット14を昇降移動させる。また、乗りかごユニット14が目的の階床に到着した場合、運行制御部84は、ドアモータ60を制御して、上かごドア38aや下かごドア38bの開閉制御を実行する。なお、制御盤76と乗りかごユニット14(上かご14aおよび下かご14b)とは、テールコード(図示省略)を介して電気的に接続され、上かご14aや下かご14bのかご内操作盤80やかごドア開閉機構42と制御盤76との間で制御信号の送受が行われている。昇降路12が複数存在し、各昇降路12において、乗りかごユニット14が並列的に運行されている場合には、運行制御部84は、各乗りかごユニット14が効率的に運行されるように相互制御するようにしてもよい。運行制御部84の通常運行モードにおける動作は、周知のエレベータ制御を利用可能であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
ドア点検装置82は、上述したような点検モードにおける上かごドア38aや下かごドア38bの「開閉動作異常」の有無判定を実行するためのモジュールとして、例えば、モード切替部82a、送受信部82b、情報取得部82c、判定部82d等を含む。
モード切替部82aは、本実施形態のダブルデッキエレベータ10において、通常運転モードと点検モードとを切り替える。送受信部82bは、ネットワーク86を介して接続された遠隔監視装置88とダブルデッキエレベータ10の遠隔監視や遠隔点検のための情報の送受信を行う。遠隔監視装置88は、ダブルデッキエレベータ10が設置された建物と同じ建物に設置されてもよいし、異なる建物(管理センター等)に設置されてもよい。遠隔監視装置88は、ダブルデッキエレベータ10のドア開閉動作異常の監視の他、ダブルデッキエレベータ10に動作に関する他の項目の監視を行ってもよい。遠隔監視装置88からの監視報告に基づき、ダブルデッキエレベータ10の保守員等が適切なタイミングで効率的に、ダブルデッキエレベータ10の保守点検作業を行うことができる。
送受信部82bは、例えば、遠隔監視装置88から提供される点検要求信号を受信する。また、送受信部82bは、点検要求信号に基づく点検モードの実行により取得された開閉状態情報と開閉動作異常の有無判定結果との少なくとも一方を、遠隔監視装置に送信する。情報取得部82cは、点検モードの実行中にホールドア40とともに開閉する上かごドア38aまたは下かごドア38bの開閉状態情報を取得する。例えば、上かごドア38aおよび下かごドア38bのトルクセンサ74が出力するトルク値を取得する。判定部82dは、上述したように、同一階(点検階)の乗り場に対する、上かごドア38aの開閉状態情報と下かごドア38bの開閉状態情報とに基づき、点検階のホールドア40と、上かごドア38aと、下かごドア38bとのうち少なくとの一つに対する開閉動作異常の有無判定を実行する。
したがって、モード切替部82aは、送受信部82bを介して取得した遠隔監視装置88からの点検要求信号にしたがい、通常運転モードから点検モードに切り替える。点検モードの実施は、ダブルデッキエレベータ10の利用者が少ない時間帯(例えば、深夜等)や予め利用者に通知された点検時間帯に行うようにすることができる。なお、別の実施形態では、制御盤76に接続された操作盤を保守点検員等が操作することにより、モードの切り替えを行うようにしてもよい。
点検モードに切り替えられると、運行制御部84は、予め定められた点検シーケンスに基づき、モータ30を制御して乗りかごユニット14を点検を開始する階床に移動させる。例えば、最下階Gに下かご14bを着床させて、上かご14aが着床している最下階Gの1階上の階を最初の点検階Aとして点検を開始する。この場合、乗りかごユニット14は、上昇方向に移動しながら、ドアの「開閉動作異常」の有無判定を実行する。同様に、最上階Tに上かご14aを着床させて、最上階Tを最初の点検階として点検を開始するようにしてもよい。この場合、乗りかごユニット14は、下降方向に移動しながら、ドアの「開閉動作異常」の有無判定を実行する。なお、点検開始階は、これに限られず、例えば、点検モードに切り替えられたときに上かご14aと下かご14bが着床している階のいずれか一方を、点検開始の点検階としてもよい。この場合、乗りかごユニット14は、例えば、予め定められた方向に移動しながら、ドアの「開閉動作異常」の有無判定を実行する。このとき、乗りかごユニット14を基準として移動可能な階が多い方にまず移動を開始するようにしてもよい。また、過去の点検履歴を参照し、開閉異常の頻度の高い階床を最初の点検階としてもよい。逆に、過去に開閉異常が発生していない階床、つまり、部品の寿命に達する期間が短いものから点検を行うようにしてもよい。また、特定の階床のみを点検対象としてもよい。いずれの場合も、開閉異常を効率的に発見することができる。
情報取得部82cは、点検モードが実行されている場合、点検開閉動作が実行されている上かごドア38aまたは下かごドア38bのトルクセンサ74の出力値を点検開閉が行われている階床(点検階)と関連付けた情報として取得する。なお、この場合、開動作時の情報か、閉動作時の情報かを区別して取得してもよい。このような区別を行うことで、開閉異常が発生した場合の異常分類や異常原因を究明のための情報としても活用することができる。なお、本実施形態では、情報取得部82cは、上かごドア38aおよび下かごドア38bのドアモータ60に対して設けられたトルクセンサ74の出力値を取得する例を示しているが、これに限らず、上かごドア38aや下かごドア38bに設けられた他の検出装置(センサ)を利用してもよい。例えば、光電センサや磁気センサ等を用いてもよい。
判定部82dは、情報取得部82cが取得したトルクセンサ74の出力値(トルク値)と、例えば予め設定された閾値(基準トルク値)との比較を行い、出力値が閾値以内であれば、「正常判定」を行い、出力値が閾値を超えていれば、「異常判定」を行う。この場合の閾値は、予め実験等で決定しておくことができる。また、判定部82dは、図4の結果リストを用いて説明したように、同一の点検階における上かごドア38aに対する判定結果と下かごドア38bに対する判定結果とに基づき、点検階のホールドア40と上かごドア38aと下かごドア38bとのいずれに異常があるか、または異常の可能性があるかを判定する。
送受信部82bは、情報取得部82cが取得した開閉状態情報(例えば、トルクセンサ74の出力値)と、判定部82dの判定結果の少なくとも一方を、ネットワーク86を介して遠隔監視装置88に送信する。遠隔監視装置88において、判定結果と共に開閉状態情報を受け取る場合、各点検階における開閉状態情報を解析することで、開閉異常の状況把握や修繕対策をより効率的に行うことができる。また、遠隔監視装置88において、判定結果のみを受け取る場合、開閉異常の発生および発生場所の把握をより迅速に行うことができる。
判定部82dは、ホールドア40の開閉動作異常があると判定した場合、通常運転モードにおいて、異常判定されたホールドア40に対応する乗り場を「不停止階」としてもよい。この場合、判定部82dは、通常運転モードの実行時に、運行制御部84に対して、メンテナンス等によりホールドア40の開閉動作異常が解消されるまで、「不停止階」を特定する情報を提供する。前述したように、ホールドア40自体に開閉動作異常が発生している場合、その原因は、ホールシル隙間におけるゴミ等の異物の詰まりや、衝撃の付与によるドア等の機構部品の変形等が考えられる。したがって、ホールドア40の開閉速度が正常時より少し遅かったり、スムーズでなかったりする程度で、利用者等の乗り降りが可能な場合がる。しかし、このような場合、突然ホールドア40の開閉ができなくなる場合もある。本実施形態の判定部82dは、トルクセンサ74の出力値が閾値を超えた場合に、異常判定を行い、それ以降は、開閉異常となったホールドア40の乗り場を「不停止階」にする。その結果、利用者が上かご14aや下かご14bに閉じ込められてしまう等の不具合を防止することができる。
なお、ホールドア40の開閉異常により不停止階となった場合、対応する乗り場の乗り場操作盤78等に「不停止階」であることを表示してもよい。同様に、上かご14aや下かご14bのかご内操作盤80等に「不停止階」が存在することを表示してもよい。このような場合、不停止階の上下の階を臨時の停止階としてもよい。例えば、通常運転モードにおいて、上かご14aの停止階である8階が不停止階になった場合、8階に対する臨時停止階として、7階や9階を上かご14aの停止階としてもよい。この場合、ホールドア40に不具合がある場合でも、利用者の不便を最小限に抑えつつ、ダブルデッキエレベータ10の通常運転を継続することができる。
また、ドア点検装置82は、上かご14aの上かごドア38aと下かご14bの下かごドア38bの少なくとも一方において、開閉動作異常があると判定した場合、異常判定された乗りかごを、通常運転モードにおいて「不使用かご」としてもよい。この場合も、通常運転モードの実行中に、開閉動作異常が発生した乗りかごに利用者等が閉じ込められてしまう不都合を防止することができる。なお、この場合の通常運転モードは、従来通り、正常な、例えば下かご14bが奇数階16bのみに停止する、奇数階運転を行ってもよい。また、別の実施形態では、例えば下かご14bが正常な場合、下かご14bは最上階T以外の各階床に停止可能な「シンブル運転方式」で運転してもよい。同様に、例えば上かご14aが正常な場合、上かご14aは、最下階G以外の各階床に停止可能な「シンブル運転方式」で運転してもよい。この場合、運送効率は低下するものの、エレベータの運行を継続することができるため、利用者の不便の最小限に抑えつつ、ダブルデッキエレベータ10の運転を継続することができる。
以上のように構成されるドア点検装置82を用いたダブルデッキエレベータ10のドア点検開閉処理手順の一例を図6および図7のフローチャートを用いて説明する。なお、図6は、ドア点検開閉処理の前半部分であり、図7はドア点検開閉処理の後半部分を説明するフローチャートの一例である。
モード切替部82aは、常時、送受信部82bを介して遠隔監視装置88からの点検要求信号を受け付けたか否かの確認を実行している(S100)。送受信部82bを介して点検要求信号を受け付けた場合(S100のYes)、モード切替部82aは、運行制御部84の制御状態を「通常運転モード」から「点検モード」に切り替える(S102)。そして、ドア点検装置82は運行制御部84を介して、乗りかごユニット14を点検開始階に移動させる(S104)。例えば、乗りかごユニット14の下かご14bを最下階G(例えば1階)に移動させる。その結果、上かご14aは、最下階Gの1階分上の階(この場合、2階)に着床する。したがって、この場合、最初の点検階Aは、2階となる。
ドア点検装置82は、運行制御部84を介して、まず、上かご14aの上かごドア38aの点検開閉動作を実行する。情報取得部82cは、点検階A(2階)で上かごドア38aを点検開閉動作させた場合の上かごドア38aのドアモータ60のトルクセンサ74のトルク値を開閉状態情報として取得し、その結果をRAM等の記憶装置に一時的に登録する(S106)。
続いて、ドア点検装置82は、運行制御部84を介して下かご14bを点検階A(この場合、2階)に移動させる(S108)。そして、ドア点検装置82は、運行制御部84を介して、下かごドア38bの点検開閉動作を実行する。情報取得部82cは、点検階A(2階)で下かごドア38bを点検開閉動作させた場合の下かごドア38bのドアモータ60のトルクセンサ74のトルク値を開閉状態情報として取得し、その結果をRAM等の記憶装置に一時的に登録する(S110)。
判定部82dは、S106で取得した上かごドア38aの点検結果とS110で取得した下かごドア38bの点検結果とに基づき、上かごドア38aと下かごドア38bとの両方に開閉異常があるか否か判定する(S112)。判定部82dは、上かごドア38aと下かごドア38bとの両方に開閉異常があると判定した場合(S112のYes)、「点検階A(この場合、2階)のホールドア40に「開閉動作異常」があるか、上かごドア38aおよび下かごドア38bの両方に「開閉動作異常」の可能性がある」という判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S114)。
また、判定部82dは、開閉異常が上かごドア38aと下かごドア38bとの両方ではないと判定した場合で(S112のNo)、上かごドア38aが開閉異常であると判定した場合(S116のYes)、「上かごドア38aのみに「開閉動作異常」がある」という判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S118)。この時点で、判定部82dは、点検階A(この場合、2階)のホールドア40と下かごドア38bは、「正常」であると確定することができる。
また、判定部82dは、S116において、開閉異常が上かごドア38aではないと判定した場合で(S116のNo)、下かごドア38bが開閉異常であると判定した場合(S120のYes)、「下かごドア38bのみに「開閉動作異常」がある」という判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S122)。この時点で、判定部82dは、点検階A(この場合、2階)のホールドア40と上かごドア38aは、「正常」であると確定することができる。
また、判定部82dは、S120において、開閉異常が下かごドア38bではないと判定した場合(S120のNo)、「点検階A(この場合、2階)のホールドア40と上かごドア38aおよび下かごドア38bは、「正常」である」という判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S124)。
S114において、「点検階Aのホールドア40または上かごドア38aと下かごドア38bに「開閉動作異常」の可能性がある」と判定された場合、ドア点検装置82は、所定数の点検階で点検を実施済みか否かを確認する(S126)。ホールドア40の場合、複数の階で同時に開閉動作異常が生じる可能性は低い。換言すれば、複数の階でホールドア40または上かごドア38aと下かごドア38bに「開閉動作異常」の可能性があると判定された場合、ホールドア40に「開閉動作異常」が発生している可能性より、上かごドア38aと下かごドア38bとの両方に「開閉動作異常」が発生している可能が高いと判定できる。したがって、所定数の点検階での点検が実施されていない場合(S126No)、ドア点検装置82は、運行制御部84を介して点検階を例えば1階分移動させる(S128)。この場合、S108で下かご14bを点検階A(この場合、2階)に移動させたことで、上かご14aは既に1階分上階の3階に移動している。したがって、点検階B(この場合、3階)を移動さるS128の処理は、ドア点検装置82において、点検階の認識位置を更新する処理となる。そして、S106に移行し、ドア点検装置82は、次の点検階B(この場合、3階)に着床している上かごドア38aによる点検開閉動作を実施し、S108以降の処理を実行する。なお、S112の処理で、上かごドア38aと下かごドア38bとの少なくともいずれか一方が「正常」と判定される場合もある。この場合、点検階B以降の処理で、ホールドア40、上かごドア38a、下かごドア38bの正常判定が順次行われることになる。
一方、S126において、所定数の点検階で点検が実施済みの場合(S126のYes)、例えば、2階から6階まで点検を実施した結果、いずれの点検階においても「ホールドア40または上かごドア38aと下かごドア38bに「開閉動作異常」の可能性がある」と判定された場合である。前述したように、複数の点検階でホールドア40が同時に「開閉動作異常」となる可能性は低いため、上かごドア38aと下かごドア38bの両方で「開閉動作異常」が発生しているために、各点検階のホールドア40も「開閉動作異常」と見なされたと推定することができる。つまり、保守員がメンテナンス作業を実際に開始する場合、まず、上かごドア38aおよび下かごドア38bから始めることで作業に効率を向上することができる。そこで、判定部82dは、全点検階の点検を実施することなく、「上かごドア38aと下かごドア38bとに「開閉動作異常」が発生している可能性がある。」という判定結果や「保守員は、上かごドア38aと下かごドア38bを優先的に確認する必要がある」という判定結果等を出力してもよい。また、判定部82dは、ネットワーク86を介して遠隔監視装置88に、その判定結果を送信する(S130)。なお、上かごドア38aと下かごドア38bとに「開閉動作異常」が発生している可能性がある場合の、点検階の数は、適宜変更可能で、上述した「5階分」未満でもよいし、以上でもよい。また、全ての階床に対して点検を実施してもよい。
その後、モード切替部82aは、「点検モード」から「通常運転モード」に切り替えて(S132)、一連のドアの開閉動作点検処理を一旦終了する。なお、判定部82dが、上かごドア38aと下かごドア38bの両方で「開閉動作異常」が発生していると判定した場合、実質的にダブルデッキエレベータ10の運転は不能となるため、モード切替部82aが通常運転モードに切り替えた(復帰させた)時点で、ダブルデッキエレベータ10の利用が不可であることを示す、メッセージ等を乗り場操作盤78等に備えられた表示部に表示したり、乗り場操作盤78の操作受付を一時的に無効にしたりする処理を実行する。
S118において、「上かごドア38aのみに「開閉動作異常」がある」と判定された場合、つまり、上かごドア38aと下かごドア38bのうち少なくとも一方の開閉動作が「正常」であると判定された場合である。この場合、ドア点検装置82は、下かご14bが対応する点検階を1階分移動する(S134)。S118で「上かごドア38aのみに「開閉動作異常」がある」と判定された時点で、下かごドア38bは、「正常」であることが確定している。したがって、S134以降の処理では、下かごドア38bのみを用いて各点検階のホールドア40の「開閉動作異常」の有無判定を実施し、その判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S136)。つまり、ホールドア40の「開閉動作異常」の判定のための上かご14aおよび下かご14bの同一階の停止による判定から非同一階の停止による判定に変更する。なお、下かご14bは構造上、最上階Tには着床できない。そのため、ドア点検装置82は、最上階T以外の点検階の点検が済んでいない場合(S138のNo)、S134に移行し、他の点検階に下かご14bを移動させて、S136以降の処理を実行する。
S138において、最上階T以外の点検階の点検が済んでいる場合(S138のYes)、判定部82dは、「上かごドア38aに「開閉動作異常」が発生している。」という判定結果に加え、いずれかの点検階でホールドア40の「開閉動作異常」が発見された場合(例えば、X階の場合)は、「X階のホールドア40に「開閉動作異常」が発生している。」という判定結果を出力する。また、判定部82dは、ネットワーク86を介して遠隔監視装置88に、その判定結果を送信する(S130)。
その後、モード切替部82aは、「点検モード」から「通常運転モード」に切り替えて(S132)、一連のドアの開閉動作点検処理を一旦終了する。なお、判定部82dが、上かごドア38aで「開閉動作異常」が発生していると判定した場合、仮に幾つかの階床でホールドア40の「開閉動作異常」が発生している場合でも、下かご14bを用いて、「開閉動作異常」の発生しているホールドア40に対応する階床以外を停止階とする運転が可能になる。つまり、ダブルデッキエレベータ10において上かご14aは、「不使用かご」となると共に、下かご14bは、「開閉動作異常」が発生しているホールドア40が対応する「不停止階」および最上階Tを除く、階床に停止する「シングル運転方式」で、運転を継続することができる。
S122において、「下かごドア38bのみに「開閉動作異常」がある」と判定された場合、つまり、上かごドア38aと下かごドア38bのうち少なくとも一方の開閉動作が「正常」であると判定された場合である。この場合、ドア点検装置82は、上かご14aが対応する点検階を1階分移動する(S140)。S122で「下かごドア38bのみに「開閉動作異常」がある」と判定された時点で、上かごドア38aは、「正常」であることが確定している。したがって、S140以降の処理では、上かごドア38aのみを用いて各点検階のホールドア40の「開閉動作異常」の有無判定を実施し、その判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S142)。つまり、ホールドア40の「開閉動作異常」の判定のための上かご14aおよび下かご14bの同一階の停止による判定から非同一階の停止による判定に変更する。なお、上かご14aは構造上、最下階Gには着床できない。そのため、ドア点検装置82は、最下階G以外の点検階の点検が済んでいない場合(S144のNo)、S140に移行し、他の点検階に上かご14aを移動させて、S142以降の処理を実行する。
S144において、最下階G以外の点検階の点検が済んでいる場合(S144のYes)、判定部82dは、「下かごドア38bに「開閉動作異常」が発生している。」という判定結果に加え、いずれかの点検階でホールドア40の「開閉動作異常」が発見された場合(例えば、Y階の場合)は、「Y階のホールドア40に「開閉動作異常」が発生している。」という判定結果を出力する。また、判定部82dは、ネットワーク86を介して遠隔監視装置88に、その判定結果を送信する(S130)。
その後、モード切替部82aは、「点検モード」から「通常運転モード」に切り替えて(S132)、一連のドアの開閉動作点検処理を一旦終了する。なお、判定部82dが、下かごドア38bで「開閉動作異常」が発生していると判定した場合、仮に幾つかの階床でホールドア40の「開閉動作異常」が発生している場合でも、上かご14aを用いて、「開閉動作異常」の発生しているホールドア40に対応する階床以外を停止階とする運転が可能になる。つまり、ダブルデッキエレベータ10において下かご14bは、「不使用かご」となると共に、上かご14aは、「開閉動作異常」が発生しているホールドア40が対応する「不停止階」および最下階Gを除く、階床に停止する「シングル運転方式」で、運転を継続することができる。
S124において、「点検階A(この場合、2階)のホールドア40と上かごドア38aおよび下かごドア38bは、「正常」である」と判定された場合、少なくとも上かごドア38aおよび下かごドア38bは、「正常」であることが確定する。そこで、ドア点検装置82は、上かご14aと下かご14bとを最寄りの通常停止階に移動させる(S146)。例えば、「点検階A(この場合、2階)のホールドア40と上かごドア38aおよび下かごドア38bは、「正常」である」と判定された場合、下かご14bは、通常運転では非停止階である2階に着床し、上かご14aは、通常運転では非停止階である3階に着床している。したがって、S146の処理が実行されることにより、下かご14bは、通常運転で最寄りの停止階である3階に着床し、上かご14aは、通常運転で最寄りの停止階である4階に着床することになる。そして、情報取得部82cは、上かご14aが着床している4階におけるドアの開閉状態情報と取得し、判定部82dは、取得した開閉状態情報に基づく判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S148)。同様に、情報取得部82cは、下かご14bが着床している3階におけるドアの開閉状態情報と取得し、判定部82dは、取得した開閉状態情報に基づく判定結果をRAM等の記憶装置に一時的に記憶する(S150)。つまり、ホールドア40の「開閉動作異常」の判定のための上かご14aおよび下かご14bの同一階の停止による判定から非同一階の停止による判定に変更する。このように、既に「正常」であることが確定している上かごドア38aおよび下かごドア38bを用いることにより、2階分のホールドア40の「開閉動作異常」の有無点検を同時に行うことができるので、点検効率を向上させることができる。ドア点検装置82は、全ての点検階の点検が済んでいない場合(S152のNo)、S146に移行し、他の点検階に上かご14aおよび下かご14bを移動させて、S148以降の処理を実行する。
S152において、全ての点検階の点検が済んでいる場合(S152のYes)、判定部82dは、いずれかの点検階でホールドア40の「開閉動作異常」が発見された場合(例えば、Z階の場合)は、「Z階のホールドア40に「開閉動作異常」が発生している。」という判定結果を出力する。また、判定部82dは、ネットワーク86を介して遠隔監視装置88に、その判定結果を送信する(S130)。
その後、モード切替部82aは、「点検モード」から「通常運転モード」に切り替えて(S132)、一連のドアの開閉動作点検処理を一旦終了する。なお、判定部82dが、仮に幾つかの階床でホールドア40の「開閉動作異常」が発生している場合でも、上かご14aと下かご14bを用いて、「開閉動作異常」は発生しているホールドア40に対応する階床以外を停止階とする運転が可能になる。つまり、ダブルデッキエレベータ10において、「開閉動作異常」が発生しているホールドア40が対応する「不停止階」とする、「ダブル運転方式」で、運転を継続することができる。なお、ダブル運転方式で、ダブルデッキエレベータ10を運転する場合、仮に7階が不停止階となった場合、下かご14bに乗った利用者は7階で降ることができない。その場合、下かご14bは、臨時に下かご14bを通常では非停止階である6階や8階に停止させてもよい。この場合、下かご14bのかご内操作盤80等に設けられた表示部等に、臨時停止階で降り、目的階に他の手段(エスカレータや階段)で移動する旨のメッセージを表示するようにしてもよい。また、上かご14aのかご内操作盤80等に設けられた表示部等には、「不停止階」が存在するため臨時停止した旨を示すメッセージを表示するようにしてもよい。
なお、S100において、モード切替部82aが点検要求信号を受け付けていない場合には(S100のNo)、このフローを一旦終了させる。
このように、本実施形態のダブルデッキエレベータ10のドア点検装置82によれば、エレベータドアの不具合が乗りかご側のドアが原因か、乗り場(ホール)側のドアが原因かを迅速に判定できる。その結果、保守員がダブルデッキエレベータ10を訪れた際に、修理作業を迅速に開始可能となり、労力を軽減しつつ、保守点検作業の効率を向上することができる。
また、ドア点検装置82による点検実施の指示および点検に基づき判定結果の取得を遠隔監視装置88で行えるようにすることで、保守員がダブルデッキエレベータ10が設置された現場に赴く前に、故障内容の把握や修理方針、修理部品の準備等をスムーズに行うことが可能になる。その結果、保守員の労力の軽減および保守点検作業の効率化を効果的に実現するとことができる。
上述した実施形態の場合、「点検モード」は、遠隔監視装置88から送信される点検要求信号に基づき実施され、判定結果を遠隔監視装置88に送信する例を示した。他の実施形態では、制御盤76に点検要求信号を例えば所定時刻に出力する出力部を設け、判定結果を出力する出力部(例えば表示部)を設けてもよい。この場合、深夜等に実行された判定結果を制御盤76で確認することができる。つまり、保守員は、保守作業の開始に先立ち、制御盤76を確認することにより、「開閉動作異常」の発生しているドアの確認が可能となり、労力の軽減および保守点検作業の効率化を効果的に実現するとことができる。
また、上述した実施形態の場合、判定部82dが、「開閉動作異常」が発生しているドアを特定する例を示した。他の実施形態では、判定部82dは、「開閉動作異常」が発生している事実のみを判定し、遠隔監視装置88側で「開閉動作異常」が発生しているドアを特定する処理を実行してもよい。この場合、ドア点検装置82側の処理負荷の軽減が可能になる。
なお、上述したドア点検装置82は、上かご14aと下かご14bが上下方向に連結されているダブルデッキエレベータ10に適用する例を説明したが、同一昇降路内に複数の乗りかごが設けられた、エレベータシステムであれば適用可能である。例えば、同一の昇降路内を複数の乗りかごが独立して運転可能な、いわゆる「マルチカーエレベータ」においても、本実施形態のドア点検装置82は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。