しかしながら、左右幅の広い大型黒板では、部屋の左右両端位置に着席した受講者からの視認性を高めるために、黒板面の左右両側部もしくは全体が水平方向に凹湾曲した所謂湾曲黒板が多用されている。このような湾曲黒板に可動式プロジェクターを設ける場合、その可動台座を走行させる長尺のガイドレールとして、前述した複数の中空部を有する金属押出型材のような高剛性で強度的に優れるものが望ましいが、高剛性のガイドレールでは湾曲黒板の凹湾曲に合わせるための曲げ加工が極めて困難であることに加え、複数本のプロジェクター用伝送ケーブルを上下にUターン状に折り返すケーブルダクトチェーンを介して配設する上で、その配設部の直線性が必要であることから、水平直線状のガイドレールを採用せざるを得ない。従って、前記想定のようにプロジェクターの可動台座に映写スクリーンの巻回保持枠を取り付ける手段では、該巻回保持枠が水平直線状のガイドレールに沿ってプロジェクターと一体に直線的に移動するだけであるため、凹湾曲した黒板面に対して映写スクリーンを適正に展張できない。
本発明は、上述の事情に鑑みて、湾曲黒板を対象として、可動式プロジェクターを映写スクリーンと一体に黒板の左右方向に沿って移動可能に設置して、しかも凹湾曲した黒板面のどの位置に対しても映写スクリーンを適正に展張可能とする黒板用映写装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る黒板用映写装置は、黒板面10の少なくとも一部が水平方向に凹湾曲した黒板本体1と、黒板設置部の壁面Wに沿って水平直線状に配設されたプロジェクター用ガイドレール2と、黒板面10の上縁に沿って配設されて前記凹湾曲に対応する曲線部3aを有するスクリーン用ガイドレール3とを備え、プロジェクター用ガイドレール2にはプロジェクターPを搭載した可動台座4が走行自在に載置されると共に、スクリーン用ガイドレール3には黒板面10に展張して磁着させる巻上げ式映写スクリーンSの巻装保持枠5が走行自在に支持され、可動台座4に巻装保持枠5がスライド機構6を介して前後移動可能に連結されていることを特徴としている。
請求項2の発明は、上記請求項1の黒板用映写装置において、スライド機構6A〜6Cのスライダー60,66に、巻装保持枠5が左右方向中央部で水平回動可能に枢着されていることを特徴としている。
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の黒板用映写装置において、巻装保持枠5が左右二箇所で支持枠7を介してスクリーン用ガイドレール3に支持されると共に、各支持枠7に対して巻装保持枠5が水平回動可能に枢着されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の黒板用映写装置において、スライド機構6B,6Cは、可動台座4側に取り付けた前後方向の摺動ガイドレール65と、この摺動ガイドレール65に前後摺動自在に嵌合するスライダー66と、該スライダー66に一端側を固着して他端側を巻装保持枠5に連結した連結部材67とで構成されてなる。
請求項5の発明は、上記請求項4の黒板用映写装置において、プロジェクター用ガイドレール2が黒板本体1の上方に離間して建物躯体の壁面Wに取り付けられ、摺動ガイドレール65が可動台座4の前部に垂設された吊持部材46を介して該プロジェクター用ガイドレール2の下側に配置してなるものとしている。
請求項6の発明は、上記請求項1〜5の黒板用映写装置において、プロジェクター用ガイドレール2が前後両側に長手方向に連続する中空部2a,2bを有する金属押出型材からなり、両中空部2a,2b上を可動台座4の前後両側に設けた各々複数個の支持ローラーR1,R2が転動すると共に、当該ガイドレール2上に、複数本のプロジェクター用伝送ケーブルCを保持するケーブルダクトチェーン8が上端を可動台座4に止着して上下にUターン状に折り返す形で配置してなる構成としている。
次に、本発明の効果について、図面を参照して具体的に説明する。請求項1の発明に係る黒板用映写装置では、プロジェクターPを搭載した可動台座4が水平直線状のプロジェクター用ガイドレール2上に走行自在に載置される一方、巻上げ式映写スクリーンSの巻装保持枠5が黒板面10の凹湾曲に対応する曲線部3aを有するスクリーン用ガイドレール3に走行自在に支持されているが、可動台座4に巻装保持枠5がスライド機構6A〜6Cを介して前後移動可能に連結されているから、可動台座4と巻装保持枠5のいずれかを手操作で左右に動かすことで、両者4,5を一体に黒板1の左右方向の任意位置へ移動させることができると共に、黒板面10の凹湾曲による前後位置の変化に対応して巻装保持枠5が自動的に前後変位するから、凹湾曲した黒板面10における左右方向のどの位置であっても、巻装保持枠5と該黒板面10とが適切な一定間隔に保たれ、もって該黒板面10に対して常に映写スクリーンSを適正に展張することが可能となる。
請求項2の発明によれば、スライド機構6A〜6Cのスライダー60,66に、巻装保持枠5が左右方向中央部で水平回動可能に枢着されているから、黒板面10の凹湾曲による面方向の変化に対応して、巻装保持枠5が常に映写スクリーンSを該黒板面10に沿わせる向きに自動的に回動変位し、もって黒板面10における左右方向のどの位置でも映写スクリーンSを容易に適正姿勢に展張して磁着できる。
請求項3の発明によれば、巻装保持枠5は、左右二箇所で支持枠7を介してスクリーン用ガイドレール3に支持され、且つ各支持枠7に対して水平回動可能に枢着していることで、黒板左右方向のどの位置でも左右の2点支持で水平姿勢を保つから、映写スクリーンSを引き出す際に傾きを生じず、もって該映写スクリーンSをより容易に適正姿勢に展張できる。
請求項4の発明によれば、スライド機構6B,6Cは、可動台座4側の前後方向の摺動ガイドレール65に嵌合するスライダー66に、連結部材67を介して巻装保持枠5を連結する構成であるから、構造的に簡素であり、可動台座4及び巻装保持枠5に対する組み付けを容易に行えるという利点がある。
請求項5の発明によれば、プロジェクター用ガイドレール2を黒板本体1の上方に離間して壁面Wに取り付け、請求項4で規定するスライド機構6Cの摺動ガイドレール66を可動台座4の前部に垂設された吊持部材46を介してプロジェクター用ガイドレール2の下側に配置する構成であるから、特に既設の固定式黒板において、その仕様や強度面から黒板本体の頂部に対するプロジェクター用ガイドレール2の取り付けが困難であっても、支障なく本黒板用映写装置を適用できるという利点がある。
請求項6の発明によれば、プロジェクター用ガイドレール2は、前後両側に長手方向に連続する中空部2a,2bを有する金属押出型材からなり、両中空部2a,2b上を可動台座4の前後両側に設けた各々複数個の支持ローラーR1,R2が転動するから、プロジェクターPの重量が大きく、且つ当該ガイドレール2が長尺であっても、高剛性で充分な支持強度を保持する。そして、該ガイドレール2上に上下にUターン状に折り返す形で配置したケーブルダクトチェーン8に、複数本のプロジェクター用伝送ケーブルCが保持されるから、これら伝送ケーブルCの劣化を生じにくく、その配線作業が容易になると共に、配線部分の外観体裁も良好となる。
以下に、本発明に係る黒板用映写装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、第一〜第三実施形態において、共通する構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1及び図2で示す第一実施形態の黒板用映写装置において、1は横長矩形の大型の黒板本体であり、建物躯体の壁面Wに固定された昇降装置11に背面側で昇降可能に取り付けられている。その黒板面10は、一般的な暗緑色で下地鋼板による磁力吸着性を有しており、平面状の中央部10aより連続する左右両側部10b,10cが水平方向に凹湾曲して、左右両側端が最も前方へ出ている。この黒板本体1の頂部には水平直線状のプロジェクター用ガイドレール2が複数の取付金具12を介して黒板面10よりも後部に位置するように取り付けられ、このガイドレール2上にプロジェクターPを搭載した可動台座4が走行自在に載置されている。また、黒板面10の上縁に沿って略全長にわたるスクリーン用ガイドレール3が固設され、このガイドレール3に巻上げ式映写スクリーンSの巻装保持枠5が走行自在に支持されている。そして、巻装保持枠5が可動台座4に対してがスライド機構6Aを介して前後移動可能に連結されている。なお、スクリーン用ガイドレール3の左右両側部は、黒板面10の左右両側部10b,10cの凹湾曲に対応した曲線部3aになっている。
プロジェクターPは、可動台座4上に立設したプロジェクター支柱41の上部から前方へ突出する取付アーム42の先端側に保持されており、図2の仮想線で示すように、巻装保持枠5から引き出されて黒板面10に展張される映写スクリーンSに映像を投影するようになっている。また、プロジェクター用ガイドレール2上には、図1(b)の仮想線で示すように、上端側を可動台座4に止着したケーブルダクトチェーン8が上下にUターン状に折り返して、下端側を当該ガイドレール2に止着した形で配置している。12は黒板本体1の中央下部に取り付けられたブレーキ操作ハンドルであり、把持して上げ下げ操作することにより、黒板本体1を上下限位置まで昇降できると共に、手放すことでブレーキがかかって該黒板本体1を定位置に保持できるようになっている。
プロジェクター用ガイドレール2は、図7及び図8に示すように、前後両側に長手方向に連続する断面略矩形の中空部2a,2bを有するアルミ押出型材からなるレール本体20と、該レール本体20の両中空部2a,2b間に構成される配線用溝部2cを封鎖するアルミ押出型材からなる蓋板部材21とで構成されている。そして、レール本体20の後部側の中空部2b上には、前後に対向立設した断面逆L字状の側壁部20a,20bにより、上方に開放して長手方向に連続するチャンネル状の走行ガイド枠部22が構成されている。また、スクリーン用ガイドレール3は、同じく図7及び図8に示すように、略角筒状のアルミ押出型材からなり、全長にわたって前方へ開くスリット状開口部31を有すると共に、下部側に中空部32を備えており、黒板本体1の上枠部14に長手方向複数箇所でビス止めされている。
可動台座4は、図3〜図5及び図8に示すように、プロジェクター支柱41を立設した平面視略矩形の基枠40の前後縁に垂下壁部40a,40b、同左右縁に立ち上げ壁部40c,40dがそれぞれ一体形成されており、左右縁の立ち上げ壁部40c,40dには直立した十字形の取付板43が下部でビス止めされている。そして、基枠40の前部下面側には縦断面逆L字形のローラー取付板44がビス止めされ、このローラー取付板44に複数個(図4では4個)の支持ローラーR1が枢着されると共に、該基枠40の後縁の垂下壁部40bにも複数個(図5では5個)の支持ローラーR2が前面側と後面側とに交互に配置して枢着されている。また、後縁の垂下壁部40bの左右両端には水平片40eが固着され、この水平片40eに横回転ローラーR3が枢着されている。
プロジェクター用ガイドレール2上における可動台座4は、前部の支持ローラーR1がレール本体20の前側中空部2a上に転接する一方、垂下壁部40bの下部が支持ローラーR2と共に該レール本体20の走行ガイド枠部22内に配置し、もって後側中空部2b上を支持ローラーR2が転接する。また、図5及び図8に示すように、該走行ガイド枠部22内には左右の横回転ローラーR3,R3も配置しており、この横回転ローラーR3によって支持ローラーR2が走行ガイド枠部22の両内側面に対して非接触状態に保たれると共に、当該横回転ローラーR3が走行ガイド枠部22の内側面に転接することで、ガイドレール2上を移動する可動台座4の前後方向の位置ずれが防止される。
ケーブルダクトチェーン8は、図4に示すように、その上端部8aが可動台座4に設けた右側の取付板43の頂端から側方へ突出する取付片43aに止着されると共に、下端部8bがプロジェクター用ガイドレール2の中間位置において蓋板部材21に取付金具81を介して止着され、該蓋板部材21上でUターン状に折り返して配置している。そして、ガイドレール2の左端側から配線用溝部2cを通して引き込まれた複数本のプロジェクター用伝送ケーブルCが、蓋板部材6に設けた配線穴6aから導出してケーブルダクトチェーン8内に挿通され、その上端部8aから導出してプロジェクター支柱41内導入されている。
映写スクリーンSの巻装保持枠5は、図3及び図6〜図8に示すように、後方斜め下向きに開放した断面略C字形のアルミ押出型材からなる横長の筒枠50の両端に、円形端板51が該筒枠50の内周に設けた複数(図では3つ)のビスホール50aを利用してビス止めされ、その内側中心に水平な巻取り軸52を備えており、内側端部に設けた巻上げ機構(図示省略)を介して映写スクリーンSを該巻取り軸52に巻回して保持するようになっている。また、筒枠50の外周頂部には長手方向に連続する奥広の係止溝50bが形成されている。なお、巻装保持枠5の巻上げ機構は、巻取り軸52をばね力によって巻取り方向に回転付勢する周知のものである。
一方、映写スクリーンSは、所謂マグネットスクリーンとして裏面側の磁力層によって黒板面10に磁着し得るものであり、下縁に硬質合成樹脂からなる縁材9が止着されると共に、上縁側は同じ左右幅で上下長さの短いマスクシートMを介して巻取り軸52に繋がっている。このマスクシートMは、黒色で柔軟な非磁着性材料からなる。また、縁材9は、図6に示すように裏面側の長手方向複数箇所に帯状のマグネットシート91が貼着されると共に、図3に示すように長手方向中央部に半円状の把手92が固着されている。
そして、巻装保持枠5は、図1で示すように、左右2箇所で支持枠7,7を介してスクリーン用ガイドレール3に走行自在に支持されている。各支持枠7は、図6に示すように、略逆T形の板体からなる保持枠本体71と、一対の前後方向の長孔72a,72aを有する矩形の位置調整板72と、帯状取付板73とで構成されている。その保持枠本体71には、左右に張出する両側片部71a,71aの後面側に一対の支持ローラーR4,R4及び一対の上側水平ローラーR5,R5が、垂直板部71bの後面側下部に中間水平ローラーR6が、更に垂直板部71bの下端から後方斜めに延出した突片部71cに下側水平ローラーR7が、それぞれ取り付けられている。そして、保持枠本体71は、垂直板部71aの上端から前方へ突出する連結片71dを位置調整板72上に重ねた状態で、該連結片71dと位置調整板72とをボルト・ナット型の枢支ピン74を介して枢着することにより、位置調整板72に対して水平回動可能に連結される。
スクリーン用ガイドレール3に両支持枠7,7を介して巻装保持枠5を保持させるには、図6及び図7に示すように、各支持枠7の帯状取付板73を、ボルトbによって巻装保持枠5の係止溝50bに挿入したナット片53に螺着して所定位置で固定する一方、位置調整板72を枢着した各保持枠本体71の支持ローラーR4、R4と上側水平ローラーR5,R5及び中間水平ローラーR6とを、スクリーン用ガイドレール3の一端側から内側へ嵌入させて、該保持枠本体71を作業位置まで移動し、作業位置において該保持枠本体71に枢着する位置調整板72の各長孔72aに上方から通した各ボルトbを、巻装保持枠5側に固定している帯状取付板73に螺着すればよい。このとき、巻装保持枠5の前後位置を位置調整板72の長孔72aの範囲で調整できる。なお、図7に示すように、保持枠本体71の各支持ローラーR4はスクリーン用ガイドレール3の中空部32上を転接するが、各上側水平ローラーR5が該ガイドレール3の奥側内壁面に、各中間水平ローラーR6が該ガイドレール3の手前側内壁面にそれぞれ転接することで、支持枠7の前後の位置ずれが防止されると共に、ガイドレール3の外側下方に配置する下側水平ローラーR7が黒板面10に転接することで、支持枠7の前方への傾きも防止される。
かくしてスクリーン用ガイドレール3に保持させた巻装保持枠5は、既述のようにスライド機構6Aを介してプロジェクター用ガイドレール2上の可動台座4に連結させる。このスライド機構6Aは、図3及び図8に示すように、可動台座4側の左右の取付板43,43における十字形の水平部43bの内面側前後2箇所に固着されたガイドブロック60,60と、これらガイドブロック60,60に前後摺動自在に嵌合した左右一対の断面略コ字形のスライドバー61,61と、両スライドバー61,61の前部側に保持させる上向き開放コ字形の連結枠62と、該連結枠62の水平板部62aの下面側に配置させる帯状取付板63とからなる。
そして、連結枠62は、両スライドバー61,61に対し、両側板部62b,62bにそれぞれ設けた一対の上下方向の長孔62c,62cを通してボルト止めすることで、両スライドバー61,61と一体のスライダー60を構成する。また、帯状取付板63は、巻装保持枠5の左右方向中央部において、既述の支持枠7における帯状取付板73と同様に、ボルトbによって巻装保持枠5の係止溝50bに挿入したナット片53に螺着して固定されると共に、連結枠62の水平板部62aに対してボルト・ナット型の枢支ピン64を介して水平回動可能に連結される。なお、連結枠62が両スライドバー61,61に対して長孔62c,62cを通してボルト止めするから、その長孔62cの範囲で巻装保持枠5の高さを調整できる。
上記構成の黒板用映写装置では、プロジェクター用ガイドレール2上に載置されたプロジェクターPを搭載した可動台座4に対し、スクリーン用ガイドレール3に支持された巻装保持枠5がスライド機構6Aを介して前後移動可能に連結されているから、可動台座4と巻装保持枠5のいずれかを手操作で左右に動かすだけで、両者4,5を一体に黒板左右方向の任意位置へ移動可能であり、その移動位置で巻装保持枠5から映写スクリーンSを引き出して黒板面10に展張して磁着させ、プロジェクターPによって該映写スクリーンSに所要の映像を投影することができる。
すなわち、直線状のプロジェクター用ガイドレール2に対し、スクリーン用ガイドレール3は左右両側部が黒板面10の左右両側部10b,10cの凹湾曲に沿う曲線部3a,3aになっているから、可動台座4と巻装保持枠5との間隔は、図8の実線で示す黒板面10の中央部10aに位置する場合を最小として、左右両側部10b,10cの各々端になるほど同図の仮想線で示すように拡大するが、該間隔の増減に対応してスライド機構6Aのスライダー60が自動的に前後に摺動することで、可動台座4と巻装保持枠5の連結状態が維持される結果、可動台座4と巻装保持枠5の一体移動に支障を生じない。従って、巻装保持枠5は、黒板左右方向のどの位置になっても、黒板面10に対して適切な一定間隔に保たれ、もって該黒板面10に対して常に映写スクリーンSを容易に展張して適正に磁着することが可能となる。
また、黒板面10の凹湾曲した左右両側部10b,10cでは、その面方向に対応して巻装保持枠5の向きも内向きに変化する必要があるが、図9の黒板左側部で代表して示すように、該巻装保持枠5を支持する左右両側の支持枠7,7における位置調整板72が保持枠本体71に水平回動可能に連結し、同じくスライド機構6Aの帯状取付板63も連結枠62に水平回動可能に連結しているから、該巻装保持枠5は自動的に無理なく内向きに回動変位する。従って、黒板面10における左右方向のどの位置でも、映写スクリーンSを容易に適正姿勢に展張して磁着できる。なお、該巻装保持枠5が左右二箇所で支持枠7を介してスクリーン用ガイドレール3に支持されることで、黒板左右方向のどの位置でも左右の2点支持で水平姿勢を保つから、映写スクリーンSを引き出す際に傾きを生じず、もって該映写スクリーンSをより容易に適正姿勢に展張できる。
一方、本実施形態のように、プロジェクター用ガイドレール2として前後両側に長手方向に連続する中空部2a,2bを有する金属押出型材を用い、両中空部2a,2b上を可動台座4の前後両側に設けた各々複数個の支持ローラーR1,R2が転動する構成とすれば、プロジェクターPの重量が大きく、且つ当該ガイドレール2が長尺であっても、高剛性で充分な支持強度を確保できる。また、本実施形態のように、該ガイドレール2上に上下にUターン状に折り返す形で配置したケーブルダクトチェーン8に、複数本のプロジェクター用伝送ケーブルCを保持する構成では、これら伝送ケーブルCの劣化を生じにくく、その配線作業が容易になると共に、配線部分の外観体裁も良好となる。
本発明の黒板用映写装置を適用する黒板本体1としては、本実施形態では黒板面10の平面状の中央部10aより連続する左右両側部10b,10cが凹湾曲したものを例示したが、左右方向の全長にわたって凹湾曲したり、左右の片側のみが凹湾曲する等、黒板面10の少なくとも一部が水平方向に凹湾曲したものであればよい。また、本実施形態の黒板は昇降式であるが、本発明は固定式の黒板にも適用できる。そして、固定式の黒板では、後述する第三実施形態で例示するようにに、プロジェクター用ガイドレール2を黒板本体1上ではなく建物壁面Wに取り付けてもよい。
更に、本発明は既設の黒板に対する適用性にも優れる。すなわち、既設の黒板が昇降式と固定式のいずれであっても、スクリーン用ガイドレール3を黒板面10の凹湾曲に対応した曲線部となるように曲げ加工するだけで、プロジェクター用ガイドレール2、可動台座4、巻装保持枠5、スライド機構6Aには黒板仕様が異なっても共通部品を使用できる。なお、直線状のプロジェクター用ガイドレール2については長尺の原材を適用黒板の左右方向長さに合わせて切断すればよく、スクリーン用ガイドレール3は高剛性を要しないために曲げ加工の容易な原材を用いることができる。
可動台座4に対して巻装保持枠5を前後移動可能に連結するためのスライド機構については、第一実施形態では左右のスライドバー61,61と連結枠62がスライダー60として一体に前後動するものを例示したが、他の種々の構成が可能である。例えば、次の第二実施形態及び第三実施形態の黒板用映写装置では、可動台座4側に取り付ける摺動ガイドレールとスライダーとからなる簡素なスライド機構を採用している。
第二実施形態の黒板用映写装置は、図10(a)(b)に示すように、プロジェクター用ガイドレール2上の可動台座4に対し、巻装保持枠5がスライド機構6Bを介して連結されているが、それ以外は既述の第一実施形態と同様である。このスライド機構6Bでは、可動台座4より前方へ棚状に張出したレール保持枠45の水平板部45aの下面側左右中央部に、前後方向に沿う摺動ガイドレール65がポルト止めされ、この摺動ガイドレール65の下方に開く奥広のガイド溝65aに、断面略逆凸字状のスライダー66が前後摺動自在に挿嵌され、上下部を互いに逆方向にくの字形に二段曲折した帯板からなる連結部材67が上部側で該スライダー66の下面にねじ止めされると共に、この連結部材67の下部側が巻装保持枠5側に固定された帯状取付板63にボルト・ナット型の枢支ピン64を介して水平回動可能に連結されている。
なお、帯状取付板63は、第一実施形態と同様に、その両端部において係止溝50bに挿入したナット片53にボルト止めされている。また、可動台座4側のレール保持枠45は、後方へ延出した左右両側の側板部45b、45bにおいて、各々可動台座4の左右の取付板43,43に各々前後2箇所で上下方向の長孔43c,43cを通してボルト止めされており、その長孔43cの範囲で高さ調整可能になっている。
この第二実施形態の黒板用映写装置においても、プロジェクター用ガイドレール2上の可動台座4に対し、スクリーン用ガイドレール3に支持された巻装保持枠5がスライド機構6Bを介して前後移動可能に連結されているから、黒板面10の凹湾曲に伴って両者4,5の間隔変化を生じるに関わらず、手操作で両者4,5を一体に黒板左右方向の任意位置へ移動可能である。また、巻装保持枠5は、可動台座4のスライダー66に対して水平回動可能に枢着しているから、黒板面10の凹湾曲に対応して常に該黒板面10に沿うように回動変位する。従って、黒板面10における左右方向のどの位置でも、映写スクリーンSを容易に適正姿勢に展張して磁着できる。
第三実施形態の黒板用映写装置は、既存の湾曲部を有する固定式黒板に適用したものである。図11に示すように、この場合の黒板本体1は、その背面側において幅狭のスペーサー15を介在した状態で、略逆L字形の取付金具16によって建物躯体の壁面Wに固定されており、壁面Wから黒板面10までの間隔が狭い上に、耐荷重強度も不充分であることで、その頂部へのプロジェクター用ガイドレール2の取付けが困難である。このため、プロジェクター用ガイドレール2は、図示のように、黒板本体11から上方へ離間した位置において、壁付け用枠材23を介して壁面Wに取り付けている。この壁付け用枠材23は、上下二つの中空部23a,23aを有するアルミ押出型材からなり、上下に張出する取付板部23b,23bにおいて壁面Wにボルト止めされており、前面側に設けた係止部23c,23dをプロジェクター用ガイドレール2の後端上下の係止片20c,20dに各々係合すると共に、前方へ突出する受け片23eを該ガイドレール2の後部下面に重合してボルト止めすることにより、該ガイドレール2を安定に強固に支承している。
一方、スクリーン用ガイドレール3は既述の第一及び第二実施形態と同様に黒板面10の上縁に沿って配設されており、このスクリーン用レール3に巻装保持枠5が左右の支持枠7,7を介して既述同様に走行自在に支持されている。そして、この巻装保持枠5は、プロジェクター用ガイドレール2上の可動台座4に対し、スライド機構6Cを介して前後移動可能に連結されている。すなわち、可動台座4の基本的な構造は既述第一及び第二実施形態と同様であるが、その基枠40の前縁の垂下壁部40aにL字状の板体からなる吊持部材46が垂設されており、スクリーン用ガイドレール3の下方に配置した該吊持部材46の水平板部46bの下面側に、前後方向に沿う摺動ガイドレール65がボルト止めされており、第二実施形態のスライド機構6Bと同様に、該摺動ガイドレール65に前後摺動自在に挿嵌されたスライダー66に連結部材67が上部側でねじ止めされると共に、この連結部材67の下部側が巻装保持枠5側に固定された帯状取付板63にボルト・ナット型の枢支ピン64を介して水平回動可能に連結されている。
従って、この第三実施形態の黒板用映写装置においても、可動台座4と巻装保持枠5は、黒板面10の凹湾曲に伴う相互の間隔変化を生じるに関わらず、手操作で一体に黒板左右方向の任意位置へ移動可能であり、且つ巻装保持枠5が黒板面10の凹湾曲に対応して常に該黒板面10に沿うように回動変位するから、黒板面10における左右方向のどの位置でも映写スクリーンSを容易に適正姿勢に展張して磁着できる。
なお、この第三実施形態における吊持部材46は、可動台座4の基枠40に対し、垂直板部46aの上部において図示省略した上下方向の長孔を介して高さ調整可能にボルト止めされている。このように、既述の第一及び第二実施形態を含めて、スライド機構6A〜6Cの連結部分に介在する上下方向の長孔によって巻装保持枠5の高さを調整可能とすれば、黒板仕様等によってプロジェクター用ガイドレール2とスクリーン用ガイドレール3との高低差が変動しても、その長孔の範囲で対応可能となる。
本発明の黒板用映写装置では、プロジェクター用ガイドレール2及びスクリーン用ガイドレール3の断面形状、可動台座4及び巻装保持枠5の形態、スライド機構の構造及び部材構成、該スライド機構の可動台座4及び巻装保持枠5に対する取付及び連結構造、プロジェクターP及び映写スクリーンSの大きさと形状等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。