JP6610668B2 - トナー用ポリエステル樹脂とその製造方法、およびトナーとその製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2016年6月2日に、日本に出願された特願2016−111018号、及び2016年11月15日に、日本に出願された特願2016−222003号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
定着方式については、現像によって得られたトナー像を加圧および加熱されたローラーを用いて定着するヒートローラー方式と、電気オーブンまたはフラッシュビーム光を用いて定着する非接触定着方式とがある。
さらに、近年のプリンターの高速化、小型化、省エネルギー化等により、トナーには、低温定着性等のトナー特性の向上も求められている。
しかし、融点が低いワックスやTgが低い樹脂を多量に用いると、トナーの高温下での弾性が低下し、高温下でオフセットが発現しやすくなる(すなわち、耐ホットオフセット性が低下する)。そのため、トナー用のバインダー樹脂として、高温での弾性が高いポリエステル樹脂が使用されている。
例えば特許文献1には、4価の多価カルボン酸であるピロメリット酸を用いてオフセット発生温度が高いトナー用ポリエステル樹脂が開示されている。
特許文献2、3には、種々の4価以上の多価カルボン酸を使用したトナー用ポリエステル樹脂が開示されている。
VOCの発生は、使用者の健康や環境へ影響を及ぼすおそれがある。
そのため、近年、健康や環境保護を考慮してVOCの総量(TVOC:Total Volatile Organic Compound)の低減が求められており、トナーにおいてもTVOCの低減(低TVOC化)が求められている。
特許文献6に記載のように、脂肪族ジオール成分の量を調整する方法では、ポリエステル樹脂の低TVOC化に限界があった。
[1] 下記化合物(A)および化合物(B)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物に由来する構成単位、及び3価以上のカルボン酸(ただし前記化合物(A)及び前記化合物(B)を除く)由来の構成単位を含有し、
カルボン酸由来の全構成単位に対し、前記3価以上のカルボン酸由来の構成単位の含有量が、0.5モル%以上であり、
溶融混練後の酸価が55mgKOH/g以下であるトナー用ポリエステル樹脂。
[2] さらに、沸点が290℃以下の脂肪族アルコールに由来する構成単位、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位を含有し、TVOCが380ppm以下である、[1]に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[3] 溶融混練後の180℃における貯蔵弾性率G’が300Pa以上である、[1]又は[2]に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[4] 240℃における貯蔵弾性率G’が1000Pa以下である、[1]〜[3]の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[5] [1]〜[4]の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[4] [1]〜[4]の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含有する、トナー。
[5] [1]〜[4]の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を混練する工程を含む、トナーの製造方法。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、以下に示す化合物(A)および化合物(B)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、「4価のカルボン酸(a)」ともいう。)に由来する構成単位を含む。以下に示す化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する単位を構成単位として含むことが好ましい。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、下記化合物(A)および化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(4価のカルボン酸(a))に由来する構成単位を含む。
式(2)中、Z2は単結合または2価の連結基である。
式(3)中、Z3は単結合または2価の連結基である。
式(4)中、Z4は単結合または2価の連結基である。
2価の連結基の構造としては、例えば、メチル基やトリフルオロメチル基を有する脂肪族鎖、エーテル基、カルボニル基、スルホン基、ビスフェノール、フルオレン、テトラヒドロナフタレン、シクロヘキセン等の誘導体が挙げられる。
これらの中でも、コスト、得られるトナー用ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率のバランス、及び重合の制御に優れる観点から3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価カルボン酸(b)(ただし、化合物(A)および化合物(B)を除く)としては、2価のカルボン酸、3価のカルボン酸が挙げられる。
また、多価カルボン酸(b)として、化合物(A)および化合物(B)以外の4価のカルボン酸(以下、「他の4価のカルボン酸」という。)を用いてもよい。
これらの中でも、作業性およびコストの点でテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、作業性およびコストの点でトリメリット酸またはその酸無水物が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコール(c)としては、2価のアルコール、3価以上のアルコールが挙げられる。
2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。なお、括弧内の数値はアルキレンオキサイドの付加モル数を表す。
これらの中でも、トナーの保存性が向上する観点では、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が好ましく、その中でも、常温でのスラリー低粘度化の観点から、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。また、重合反応性や樹脂のガラス転移温度(Tg)を40℃以上に設計しやすい観点では、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールが特に好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
そのため、多価ポリアルコールとして脂肪族アルコールを用いるとポリエステル樹脂の生産性には優れるが、TVOCの高いポリエステル樹脂が得られやすい。
しかし、理由は明確になっていないが、本発明ではアルコールとの反応性が良好である酸無水物構造を有する4価のカルボン酸(a)を使用することで、TVOCが低いポリエステル樹脂を得られやすい。
なお、沸点が290℃以下の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、作業性およびコストの点でトリメチロールプロパンが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
トナー用ポリエステル樹脂の原料として、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、末端官能基数の調整や他のトナー用材料の分散性向上を目的として、上述した4価のカルボン酸(a)、多価カルボン酸(b)および多価アルコール(c)以外の原料(他の原料)を用いてもよい。
1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸;ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸等;桂皮酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和二重結合を分子内に一つ以上有する不飽和カルボン酸などが挙げられる。
1価のアルコールとしては、例えばベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコール;オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、下記混練条件により混練した後の180℃における貯蔵弾性率(G’)が300Pa以上であることが好ましく、600Pa以上であることがより好ましい。詳しくは後述するが、トナーは、例えばトナー用ポリエステル樹脂と配合物(例えば着色剤等)と混合した後、溶融混練して製造されることから、下記混練条件により混練したトナー用ポリエステル樹脂は、トナーとなったときとほぼ同じ状態である。よって、混練後の180℃における貯蔵弾性率(G’)が300Pa以上であれば、トナーに使用した際、耐ホットオフセット性が良好となる。混練後の180℃における貯蔵弾性率(G’)の上限値については特に制限されず高いほど好ましいが、実質的には2000Pa以下である。具体的には、300〜2000Paが好ましく、600〜2000Paがより好ましい。
なお、貯蔵弾性率は回転型レオメーターの方法で測定することができる。
(混練条件)
二軸押出機を用い、設定温度120℃、滞在時間3分の条件でポリエステル樹脂を溶融混練する。
ポリエステル樹脂等の結着樹脂は、通常、トナー中に90質量%以下程度含まれる。
ポリエステル樹脂のTVOCが380ppm以下であれば、前記ポリエステル樹脂を含有するトナーのTVOCは、概ね300ppm以下となるので、TVOCが十分に低減されたトナーが得られる。
ポリエステル樹脂のTVOCは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて測定することができる。
トナー用ポリエステル樹脂のTgは、示差走差熱量計の測定により求めたものである。
具体的には、100℃で10分間加熱してメルトクエンチを行った後、昇温速度5℃/minで測定したときのチャートの低温側のベースラインと、Tg近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求め、これをTgとする。
トナー用ポリエステル樹脂のT4は、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/minの等速昇温下の条件で測定し、サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度である。
なお、溶融混練した後の酸価の測定方法は以下のとおりである。
<酸価の測定方法>
溶融混練後の樹脂の酸価は、以下のようにして求められる。
二軸押出機を用い、設定温度120℃、滞在時間3分の条件でポリエステル樹脂を溶融混練する。
測定サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に秤量し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し測定サンプルを溶解する。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定する(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って酸価を算出する。
酸価(mgKOH/g)={(B−C)×0.02×56.11×p}/A
まず、トナー用ポリエステル樹脂約0.5gを100mLの三角フラスコ内に秤量し(D(g))、テトラヒドロフラン(THF)を50mL加え、トナー用ポリエステル樹脂を溶解する。
別途、ガラスフィルターに6〜7分目までセライト545をきつく充填し、十分に乾燥した後に、乾燥したガラスフィルターを秤量する(E(g))。
次いで、乾燥したガラスフィルター内に、トナー用ポリエステル樹脂が溶解したTHF溶液を移して吸引濾過する。アセトンを用いて三角フラスコの壁に残存した内容物の全てをガラスフィルター内に移し、ガラスフィルター内はアセトンを流して可溶解分は吸引瓶に落とし、フィルター内に溶剤が残らないように吸引続けた後に、真空乾燥機で十分に乾燥して、乾燥したガラスフィルターを秤量し(F(g))、以下の式に従ってゲル分率(THF不溶解分)を算出する。
ゲル分率(質量%)=(F−E)/D×100
トナー用ポリエステル樹脂のMnが上記範囲内であれば、トナーの耐久性や定着性がより向上する。
ポリエステル樹脂のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
非晶質とするためには、原料成分の種類や比率を調整すればよい。具体的には、3価以上の多価カルボン酸や多価アルコールの量を増やすことで、非晶質のトナー用ポリエステル樹脂が得られやすくなる。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、上述した化合物(A)および化合物(B)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(4価のカルボン酸(a))の存在下で、多価カルボン酸(b)と、多価アルコール(c)と、必要に応じて他の材料とを反応させることで得られる。
特に、多価アルコール(c)としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を用いる場合、前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の量は、4価のカルボン酸(a)と多価カルボン酸(b)との合計100モル部に対して、5〜140モル部が好ましく、10〜120モル部がより好ましい。ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の量が、5モル部以上であればトナーの保存性が向上し、140モル部以下であれば重合安定性を良好に維持できる。
一般的に、エステル化反応およびエステル交換反応は、反応系から水の留出がなくなるまで行われる。その後引き続き重縮合反応を実施するが、このとき反応装置内を徐々に減圧し、150mmHg(20kPa)以下、好ましくは15mmHg(2kPa)以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら重縮合を行う。一方、縮合反応は、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで行われる。
なお、反応を終了させるとは、重合装置の攪拌を停止し、重合装置内部を常圧とした後、窒素等の不活性ガスにより重合装置内部を加圧して重合装置下部より反応物(トナー用ポリエステル樹脂)を取り出して100℃以下に冷却することをいう。
重合触媒としては、チタンアルコキシド化合物(例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等)、酸化チタン、ジブチル錫オキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられる。
離型剤としては、後述するトナーの配合物として使用できるワックスと同様のものが挙げられ、いずれか1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
以上説明した本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、上述した4価のカルボン酸(a)に由来する単位を構成単位として含むので、耐ホットオフセット性に優れ、かつ重合装置から取り出しやすい。具体的には、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、上記混練条件により混練した後の180℃における貯蔵弾性率(G’)が300Pa以上となりやすいため、耐ホットオフセット性に優れる。また、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、240℃における貯蔵弾性率(G’)が600Pa未満となりやすいため、重合装置から取り出しやすい。
よって、本発明のポリエステル樹脂は、TVOCが十分に低減されている。
しかも、本発明のポリエステル樹脂であれば、従来のように樹脂の製造において重合後に揮発成分を留去したり、樹脂の製造時の減圧反応時間を長くして残留モノマーを除去したりする必要がなく、また反応性の高いエチレングリコールを用いているので、生産性が高い。
本発明のポリエステル樹脂は、トナー用のバインダー樹脂として好適であり、本発明のポリエステル樹脂を用いれば、TVOCが十分に低減されたトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、上述した本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含有する。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂の含有量は、トナーの総質量に対して、5〜95質量%が好ましい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、イエロー系着色剤としてはベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料などが挙げられ、マゼンタ系着色剤としてはキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料などが挙げられ、シアン系着色剤としてはフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性に優れる点から、トナーの総質量に対して、2〜10質量%が好ましい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、荷電制御剤としては無色ないし淡色で、トナーへの色調障害が少ないものが適しており、このような荷電制御剤としては、例えばサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、トナーの総質量に対して、0.5〜5質量%が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下であれば荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
離型剤の融点は、上記トナー性能を考慮して適宜決定すればよい。
離型剤の含有量は特に制限されないが、上記のトナー性能を左右することから、トナーの総質量に対して、0.3〜15質量%が好ましい。離型剤の含有量の下限値は、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
これらの添加剤の含有量は、トナーの総質量に対して、0.05〜10質量%が好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上であればトナーの性能改質効果が十分に得られる傾向にあり、10質量%以下であればトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
磁性体の含有量は特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナーの総質量に対して、3〜70質量%が好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下であればトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
キャリアとしては、例えば鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリアなどが挙げられる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などが挙げられる。
キャリアの使用量は、トナー100質量部に対して、500〜1000質量部が好ましい。キャリアの使用量が500質量部以上であればかぶり等が発生しにくくなる傾向にあり、1000質量部以下であれば定着画像の濃度が十分なものとなる傾向にある。
本発明のトナーを製造する方法としては特に制限されず、粉砕法、ケミカル法のいずれの方法も採用できる。本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、トナー用ポリエステル樹脂を混練する工程を含む粉砕法に特に適している。
ケミカル法では、例えば本発明のトナー用ポリエステル樹脂と配合物とを溶剤に溶解または分散させ、得られた液を、分散安定剤が溶解または分散した水系媒体に分散させて造粒した後に溶剤を除去し、造粒物を洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って、トナーを製造する。また、例えば本発明のトナー用ポリエステル樹脂を溶剤に溶解させ、得られた液を、分散安定剤が溶解または分散した水系媒体中で乳化した後に溶剤を除去し、得られたポリエステル乳化液と、配合物を分散した水系媒体とを混合して、微粒子を凝集、融合させた後、凝集物を分離し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行うことでもトナーを製造できる。
なお、実施例1−1〜1−9、2−1は参考例である。
<構成単位の組成分析>
ポリエステル樹脂の構成単位(組成)は、以下のようにして分析した。
超伝導核磁気共鳴装置を用い、以下の条件にて1H−NMR、13C−NMRを測定し、各構成単位由来の帰属ピークの積分比から、4価のカルボン酸(a)、多価カルボン酸(b)および多価アルコール(c)の割合を求めた。
・装置:日本電子株式会社製、「ECS−400」
・マグネット:JMTC−400/54/SS
・観測周波数:1H−NMR(400MHz)、13C−NMR(100MHz)
・溶媒:重水素化クロロホルム
・温度:50℃
・積算回数:1H−NMR(256回)、13C−NMR(5000回)
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、示差走差熱量計(島津製作所社製、「DSC−60」)を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。測定試料は10mg±0.5mgをアルミパン内に計量し、ガラス転移温度以上の100℃で10分融解後、ドライアイスを用いて急冷却処理したサンプルを用いた。
ポリエステル樹脂の軟化温度は、フローテスター(島津製作所社製、「CFT−500D」)を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、樹脂サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定し、これを軟化温度とした。
溶融混練後のポリエステル樹脂の酸価は、以下のようにして測定した。
二軸押出機を用い、設定温度120℃、滞在時間3分の条件でポリエステル樹脂を溶融混練した。
測定サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に秤量し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し測定サンプルを溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って酸価を算出した。
酸価(mgKOH/g)={(B−C)×0.02×56.11×p}/A
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、以下のようにして測定した。
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した測定サンプルについて、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって溶出曲線を測定し、標準ポリスチレンによる検量線を基に測定サンプルの数平均分子量を算出した。
ポリエステル樹脂のゲル分率は、以下のようにして測定した。
測定サンプル約0.5gを100mLの三角フラスコ内に秤量し(D(g))、THF50mLを加え、70℃に設定したウォーターバスに3時間浸漬し、測定サンプルをTHFに溶解させた。
別途、ガラスフィルター1GP100に6〜7分目までセライト545をきつく充填し、105℃の乾燥機で3時間以上乾燥して、乾燥したガラスフィルターを秤量した(E(g))。
次いで、乾燥したガラスフィルター内に、測定サンプルが溶解したTHF溶液を移して、吸引ろ過した。アセトンを用いて三角フラスコの壁に残存した内容物すべてをガラスフィルター内に移し、ガラスフィルター内はアセトンを流して可溶解分は吸引瓶に落とし、フィルター内に溶剤が残らないように吸引続けた後に、80℃の真空乾燥機で1時間以上乾燥して、乾燥したガラスフィルターを秤量し(F(g))、以下の式に従ってゲル分率(THF不溶解分)を算出した。
ゲル分率(質量%)=(F−E)/D×100
前処理として、測定試料を220℃、GAP1mmで10分間保持後、10分間で80℃(14℃/minで冷却速度)まで冷却した後、回転型レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、「HAAKE MARSIII」)を用い、以下の測定条件により貯蔵弾性率(G’)を測定した。
・ジオメトリー:25mmφパラレルプレート
・GAP:1mm
・周波数:1Hz
・歪:1%
・測定範囲:80〜240℃(3℃/minの昇温速度)
◎(極めて良好):貯蔵弾性率(G’)が400Pa未満である。
○(良好):貯蔵弾性率(G’)が400Pa以上、600Pa未満である。
×(劣る):貯蔵弾性率(G’)が600Pa以上である。
二軸押出機を用い、設定温度120℃、滞在時間3分の条件でポリエステル樹脂を溶融混練した。
取り出し性の評価と同様にして貯蔵弾性率(G’)を測定した。
180℃における貯蔵弾性率(G’)から、以下の評価基準にて耐ホットオフセット性を評価した。
◎(極めて良好):貯蔵弾性率(G’)が600Pa以上である。
○(良好):貯蔵弾性率(G’)が300Pa以上、600Pa未満である。
×(劣る):貯蔵弾性率(G’)が300Pa未満である。
表1に示す仕込み組成の4価のカルボン酸(a)、多価カルボン酸(b)および多価アルコール(c)と、重合触媒としてテトラ−n−ブトキシチタンとを蒸留塔備え付けの重合装置に投入した。なお、重合触媒の量は、4価のカルボン酸(a)および多価カルボン酸(b)に対して500ppmとした。
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を235℃とし、重合装置内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。
その後、重合装置の攪拌を停止し、重合装置内部を常圧とした後、窒素により重合装置内部を加圧して重合装置下部より反応物を取り出して100℃以下に冷却し、トナー用ポリエステル樹脂を得た。
得られたトナー用ポリエステル樹脂について、構成単位の組成(樹脂組成)分析を行い、ガラス転移温度(Tg)、軟化温度(T4)、酸価、ゲル分率および数平均分子量(Mn)を測定した。溶融混練後のトナー用ポリエステル樹脂の酸価を測定した。結果を表2に示す。
仕込み組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、トナー用ポリエステル樹脂を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
仕込み組成を表3に示すように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、トナー用ポリエステル樹脂を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表4に示す。
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・a−BPDA:2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
・BPAF:9,9−Bis(3,4−dicarboxyphenyl)fluorendianhydride
・BPA−DA:4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
・TPA:テレフタル酸
・IPA:イソフタル酸
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・TMA:トリメリット酸無水物
・EG:エチレングリコール
・BPP:ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.3モル付加物
・BPE:ビスフェノールAエチレンオキサイド2.0モル付加物
一方、比較例1−1、1−2においては、ピロメリット酸二無水物を使用したが、十分に重合度が上がらなかったため、耐ホットオフセット性が不十分であった。
比較例1−3においては、比較例1−1、1−2よりも多くのピロメリット酸二無水物を使用したので重合度は上がったが、各実施例に比べると耐ホットオフセット性は不十分であった。また、重合度が上がったため、重合装置からの取り出し性も不十分であった。
比較例1−4においては、トリメリット酸無水物を使用したが、十分に重合度が上がらなかったため、耐ホットオフセット性が不十分であった。
比較例1−5においては、比較例1−4よりも多くのトリメリット酸無水物を使用したので重合度は上がったが、各実施例に比べると耐オフセット性は不十分であった。また、重合度が上がったため、重合装置からの取り出し性も不十分であった。
比較例1−6においては、溶融混練後の酸価が56mgKOH/gであったため、耐ホットフセット性が不十分である。
ポリエステル樹脂のTVOCは、以下のようにして測定した。
測定サンプル約10mg(9.9mg以上、10.1mg未満)を精秤し、測定サンプルから揮発成分を加熱脱着装置内で130℃にて10分間加熱抽出した後、冷却モジュールにてトラップ(濃縮)した。次いで、急速加熱した後、GC−MSに供試し、TVOCを定量した。測定装置、測定条件、定量方法は以下の通りである。
・加熱脱着装置:ゲステル株式会社製、「加熱脱着導入システム TDS A/TDS 2/CIS 4」
・GC−MS:アジレント・テクノロジー株式会社製、「GC/MS 6890N/5975」
・試料加熱温度:50℃(0.5min)→50℃/min→130℃(10min)
・クライオフォーカスおよび急速加熱条件:−30℃(0.5min)→12℃/sec→130℃(10min)
・インターフェイス:130℃
・キャリアガス:ヘリウム
・Desorpthopn Mode:スプリットレス
・カラム:フロンティア・ラボ株式会社製、「UA−5(30min×0.25mmI.D.膜厚0.25μm)
・カラム温度:35℃(3min)→10℃/min→330℃(7min)
・キャリアガス:ヘリウム(流量1.0ml/min)
・注入口モード:ソルベントベント(ベント流量50ml/min、スプリットベントライン流量30min/min@0.02min)
・トランスファーライン温度:280℃
・イオン化法:EI
・イオン化電圧:70V
・イオン化電流:300μA
・スキャンレンジ:29〜550amu
得られたクロマトグラムにおいて、n−ヘキサンおよびn−ヘキサデカンのピーク溶出時間の間に検出される成分について、エチレングリコール(EG)を除く各成分のピーク面積総和を、予め作成しておいたトルエン溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、トルエン換算濃度として算出した。
EGについては、EGのピーク面積を、予め作成しておいたEG溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、EG濃度として算出した。
EGを除く各成分の面積総和の濃度と、EGの濃度の和の値をTVOCとした。
表5に示す仕込み組成の4価のカルボン酸(a)、多価カルボン酸(b)および多価アルコール(c)と、重合触媒としてテトラ−n−ブトキシチタンとを蒸留塔備え付けの重合装置に投入した。なお、重合触媒の量は、4価のカルボン酸(a)および多価カルボン酸(b)に対して1000ppmとした。
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を235℃とし、重合装置内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。
その後、重合装置の攪拌を停止し、重合装置内部を常圧とした後、窒素により重合装置内部を加圧して重合装置下部より反応物を取り出して100℃以下に冷却し、トナー用ポリエステル樹脂を得た。
得られたトナー用ポリエステル樹脂について、TVOC、ガラス転移温度(Tg)、軟化温度(T4)、ゲル分率を測定した。溶融混練後のトナー用ポリエステル樹脂の酸価を測定した。結果を表5に示す。
仕込み組成を表5に示すように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、トナー用ポリエステル樹脂を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表5に示す。
仕込み組成を表5に示すように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、トナー用ポリエステル樹脂を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表5に示す。
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・TPA:テレフタル酸
・IPA:イソフタル酸
・TMA:トリメリット酸無水物
・EG:エチレングリコール
・BPP:ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.3モル付加物
・BPE:ビスフェノールAエチレンオキサイド2.3モル付加物
・TBT:テトラ−n−ブトキシチタン
・Sb2O3:アンチモン
一方、比較例2−1は、4価のカルボン酸(a)を含まないためにTVOCが高い結果となった。
本発明によれば、TVOCが十分に低減された、トナー用ポリエステル樹脂、および前記トナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーを提供できる。
Claims (6)
- 下記化合物(A)および化合物(B)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物に由来する構成単位、3価以上のカルボン酸(ただし前記化合物(A)及び前記化合物(B)を除く)由来の構成単位、沸点が290℃以下の脂肪族アルコールに由来する構成単位、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位を含有し、
カルボン酸由来の全構成単位に対し、前記3価以上のカルボン酸由来の構成単位の含有量が、0.5モル%以上であり、
溶融混練された際の酸価が55mgKOH/g以下であるトナー用ポリエステル樹脂。
- TVOCが380ppm以下である、請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
- TVOCが20ppm以下である、請求項2に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記化合物(A)および前記化合物(B)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物(4価のカルボン酸(a))の存在下で、2価以上の多価カルボン酸(b)(ただし前記化合物(A)及び前記化合物(B)を除く)と、2価以上の多価アルコール(c)とを反応させる工程を含み、
前記2価以上の多価カルボン酸(b)が、前記3価以上のカルボン酸を含み、
前記2価以上の多価アルコール(c)が、前記沸点が290℃以下の脂肪族アルコール、および前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を含み、
前記4価のカルボン酸(a)の量が、前記4価のカルボン酸(a)と前記2価以上の多価カルボン酸(b)との合計を100モル%としたときに1〜30モル%である、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含有する、トナー。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を混練する工程を含む、トナーの製造方法。
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