JP2019167444A - ポリエステル樹脂及びトナー - Google Patents

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匡弘 小澤
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隆浩 森
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Asako Kaneko
朝子 金子
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Abstract

【課題】ワックス分散性を向上し、良好な定着性および保存性を有するトナーを提供できるポリエステル樹脂およびこれを用いたトナーを提供する。【解決手段】第一級水酸基が炭素数50以上の長鎖アルキル基末端炭素に結合しており、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5個以上である化合物(X)由来の構成単位を有するポリエステル樹脂。【選択図】 なし

Description

本発明は、トナーバインダーなどに使用されるポリエステル樹脂に関する。
電子写真印刷法および静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち、定着が行われる。定着方式については、現像によって得られたトナー像を加圧および加熱されたローラーを用いて定着するヒートローラー方式と、電気オーブンまたはフラッシュビーム光を用いて定着する非接触定着方式とがある。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーは、まず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好である必要がある。また、装置は加熱体である定着部を有し、装置内での温度が上昇するため、トナーがブロッキングしないことが必要である。
さらに、ヒートローラー方式においては、省エネ化の観点から定着部の低温化が進み、トナーにはより低い温度で紙に定着する性能、つまり低温定着性が強く求められるようになってきた。加えて、装置のコンパクト化が進み、離型剤を塗布しないローラーが用いられるようになっており、トナーにはヒートローラーとの剥離性、すなわち非オフセット性への要求が高まっている。
トナー用バインダー樹脂は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、強靭性等に優れ、保存性とのバランスの良いポリエステル樹脂が特に注目されている。
また、ポリエステル樹脂は定着時の剥離性を付与するためにトナー中にワックスなどの離型成分を混合している。しかし、ポリエステル樹脂とワックスとは相溶性が悪く、トナー中のワックス成分の分散状態が悪いために、ワックスの剥離効果を十分に得られず、非オフセット性を発揮できなかった。さらに、画像の安定性や耐久性等にも弊害を及ぼしていた。
そのため、従来からポリエステル樹脂とワックスとの相溶性についてはさまざまな検討がなされてきた。
たとえば、特許文献1には、末端水酸基含有の長鎖アルキルを用いてポリエステル樹脂を変性することにより、低温定着性およびワックス分散性が比較的良好なトナーが開示されている。一方、特許文献2には、長鎖アルキルジオールを添加したポリエステル樹脂が開示されている。さらに、特許文献3には、変性ポリプロピレン重合体をポリエステル樹脂の重合体成分として含むことにより、低温定着性、耐ブロッキング性、耐オフセット性に優れるトナー用ポリエステル樹脂が開示されている。
特開平11−295919号公報 特開2016−196619号公報 特開平7−114209号公報
しかし、特許文献1に記載の長鎖アルキルは、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5未満であるため、トナーにおけるワックス分散性が不十分であった。特許文献2に記載されているポリエステルは、長鎖アルキルジオールを構成単位として有したポリエステルとしていないので、ワックス分散性を向上させるには不十分であった。特許文献3に記載されている変性ポリプロピレンは、第一級水酸基が末端に結合されていないため、ワックス分散性が不十分であった。
本発明は、ワックス分散性を向上し、良好な定着性および保存性を有するトナーを提供できるポリエステル樹脂およびこれを用いたトナーを提供することを目的としている。
前記目的は以下の本発明[1]〜[5]によって達成される。
[1] 第一級水酸基が炭素数50以上の長鎖アルキル基末端炭素に結合しており、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5個以上である化合物(X)由来の構成単位を有するポリエステル樹脂。
[2] 前記化合物(X)の含有量が、ポリエステル樹脂全量中0.5〜15質量%である、[1]に記載のポリエステル樹脂。
[3] ガラス転移温度が45〜65℃である、[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂。
[4] 軟化温度が80〜200℃である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル樹脂を含有するトナー。
本発明のポリエステル樹脂を用いることによって、定着性、および保存性の良好なトナーを提供することができる。
本発明のポリエステル樹脂は、第一級水酸基が炭素数50以上の長鎖アルキル基末端炭素に結合しており、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5以上である化合物(X)由来の構成単位を有する。
前記化合物(X)は、炭素数50以上の長鎖アルキル基の末端炭素に第一級水酸基が結合している。第一級水酸基の結合位置が末端であることにより、長鎖アルキルによる立体障害を回避でき、ポリエステルを重合する際の多価カルボン酸のカルボキシル基との反応性が高まる。また、第一級水酸基は、前記カルボキシル基との反応性に富み、他の第二級水酸基、第三級水酸基よりも、化合物(X)がポリエステル構成単位として取り込まれやすくなる。
また、本発明では長鎖アルキル基が、炭素数50以上の長鎖アルキル基であることが必要である。炭素数50以上の長鎖アルキル基は、化合物(X)がポリエステル樹脂の構成単位として取り込まれた場合に、トナーのワックス分散性を良好にする作用を奏する。長鎖アルキル基の炭素数は、ワックス分散性の点から100以上が好ましい。また、長鎖アルキル基の炭素数の上限値は、特に制限されない。
長鎖アルキル基としては、特に制限されず、直鎖のアルキル基でもよく、分岐を有するアルキル基でもよい。例えば、直鎖のアルキル基としては炭素数50以上のポリエチレン構造アルキル基が挙げられ、分岐を有するアルキル基としては炭素数50以上のポリプロピレン構造のアルキル基や、炭素数50以上のポリブタジエン水素化物のアルキル基が挙げられる。炭素数50以上のポリブタジエン水素化物のアルキル基が好ましい。
また、前記化合物(X)の、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5以上であることが必要である。平均官能基導入率が1.5個以上の場合に、ワックス分散性が良好となる。平均官能基導入率は2個以上が好ましい。
なお、平均官能基導入率は、化合物(X)の酸価あるいは水酸基価を求め、求めた水酸基価の値と各数平均分子量の値から下記式により、平均官能基導入率を算出する。
平均官能基導入率
=酸価あるいは水酸基価(mgKOH/g)×数平均分子量/(56.1×10−3
また、前記化合物(X)における官能基とは、酸またはアルコールと反応して共有結合を生成する基のことである。酸またはアルコールと反応して共有結合を生成する反応としては、特に制限されないが、例えば、縮合反応、付加反応、エステル交換反応等が挙げられる。これらの反応によって、化合物(X)の官能基とポリエステル樹脂の原料成分である酸またはアルコールとが反応することにより、化合物(X)の長鎖アルキル基がポリエステル樹脂中に構成単位として取り込まれる。このような反応をする官能基としては、特に制限されないが、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、グリシジル基、アルコキシ基、イソシアネート基、およびエステル基等が挙げられる。中でも、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、エステル基が好ましい。化合物(X)の好ましい形態の具体例としては、ポリテールH(三菱ケミカル社製)があり、工業的に入手することができる。
化合物(X)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂全量(ポリエステル樹脂、および未反応の化合物(X)の合計量)中0.5〜15質量%であることが好ましい。化合物(X)の含有量が、0.5質量%以上の場合に、トナー化時に添加するワックスの分散が良好となる傾向にあり、15質量%以下の場合に、耐ブロッキング性が良好となる傾向にある。
本発明のポリエステル樹脂に含まれる、前記化合物(X)以外の構成単位として、下記の酸成分由来の構成単位、アルコール成分由来の構成単位が挙げられる。
酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)としては、特に制限されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチル、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の芳香族ジカルボン酸成分;フタル酸、セバシン酸、イソデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸成分;トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の3価以上の多価カルボン酸成分等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、ハンドリング性およびコストの点でテレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。また、3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸またはその酸無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸成分を使用する場合は、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部に対して0.1〜30モル部使用することが好ましい。3価以上の
多価カルボン酸成分の使用量が、0.1モル部以上の場合にトナーの定着性が良好となる傾向にあり、30モル部以下の場合にトナーの保存性が良好となる傾向にある。
アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)としては、特に制限されず、脂肪族ジオール成分、芳香族ジオール成分を用いることができる。
脂肪族ジオール成分としては、特に制限されないが、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
芳香族ジオール成分としては、特に制限されないが、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオール成分等が挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、脂肪族ジオール成分と芳香族ジオール成分を組み合せて使用することもできる。
また、アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)としては、これらのジオール成分以外にも、3価以上の多価アルコール成分を使用することもできる。3価以上の多価アルコール成分としては、特に制限されないが、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
3価以上の多価アルコール成分を使用する場合は、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部に対して0.1〜30モル部含有することが好ましい。これは、0.1モル部以上含有することでトナーの定着性が良好となる傾向にあるためであり、30モル部以下とすることでトナーの保存性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは1〜28モル部の範囲である。
本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgという。)は、特に制限されないが、45〜65℃であることが好ましい。Tgが45℃以上である場合に、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、また、65℃以下である場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。Tgの下限値は50℃以上がより好ましい。また、ポリエステル樹脂の軟化温度は、特に制限されないが、トナーの定着性を良好とするために80〜200℃であるのが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の酸価は、特に制限されないが、20mgKOH/g以下が好ましい。酸価が20mgKOH/g以下の場合にトナーの保存性が良好となる傾向にある。ポリエステル樹脂の酸価の上限値は、15mgKOH/g以下がより好ましく、12mgKOH/g以下が特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、第一級水酸基が炭素数50以上の長鎖アルキル基末端炭素に結合しており、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5個以上である化合物(X)の存在下で、前記酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)および前記アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)を重合することによって製造することができる。
化合物(X)は、上述の酸成分およびアルコール成分とともに反応容器内に投入し、化合物(X)の存在下で重合してポリエステル樹脂を製造することが好ましい。このようにして重合することによって、化合物(X)が反応してポリエステル樹脂中に組み込まれる。化合物(X)を酸成分およびアルコール成分とともに反応容器内に投入して重合することによって、外添ワックスの分散性がより効果的に向上する。
本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記の成分とともに離型剤成分を添加してポリエステル樹脂を重合することもできる。離型剤成分を添加して重合することにより、トナーの定着性、ワックス分散性が向上する傾向にある。離型剤成分としては、後述するトナー配合物として使用できるワックスと同様のものが適宜使用でき、例えばカルナバワックス、ライスワックス、蜜蝋、官能基を有さないポリプロピレン系ワックス、官能基を有さないポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂の重合方法は、特に制限されず、上述の成分を反応容器内に投入して、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合する方法等が挙げられる。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマンニウム等の重合触媒を用いることができる。
重合温度は、特に制限されないが、180℃〜280℃の範囲とするのが好ましい。重合温度が180℃以上の場合に、生産性が良好となる傾向にあり、280℃以下の場合に、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にある。重合温度の下限値は200℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましい。重合温度の上限値は270℃以下がより好ましい。
本発明のトナーは、本発明のポリエステル樹脂をトナーバインダーとして単独、または、他のトナーバインダー樹脂と含有する。バインダー樹脂として本発明の効果を損なわない範囲で本発明のポリエステル樹脂以外にも、他の樹脂、例えば、本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、環状オレフィン樹脂、メタクリル酸系樹脂、エポキシ樹脂などと組み合わせて使用することもできる。これら他の樹脂の使用量は、ワックス分散性の観点から、バインダー樹脂中50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて、着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動改質剤等の添加剤、磁性体等を配合することができる。
着色剤としては、特に制限されないが、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料もしくは顔料などを挙げることができる。これらの染料や顔料はそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。フルカラートナーの場合には、イエローとしてベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料など、マゼンタとしてキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料など、シアンとしてフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー中2〜10質量%であることが好ましい。
荷電制御剤としては、特に制限されないが、正帯電制御剤として4級アンモニウム塩や、塩基性もしくは電子供与性の有機物質等が挙げられ、負帯電制御剤として金属キレート類、含金属染料、酸性もしくは電子求引性の有機物質等が挙げられる。カラートナーの場合、帯電制御剤が無色ないし淡色で、トナーへの色調障害がないことが重要であり、例としてはサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物等が挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、特に制限されないが、トナー中0.5〜5質量%であるのが好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
離型剤としては、特に制限されないが、カルナバワックス、ライスワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を挙げることができる。
離型剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの離型効果、保存性、定着性、発色性等を左右することから、トナー中0.3〜15質量%であることが好ましい。離型剤の含有量の下限値は、より好ましくは1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
流動改質剤などの添加剤としては、特に制限されないが、微粉末のシリカ、アルミナ、チタニア等の流動性向上剤、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末、スチレン樹脂、アクリル樹脂などの抵抗調節剤、滑剤などが挙げられ、これらは内添剤または外添剤として使用される。
これらの添加剤の含有量は、特に制限されないが、トナー中0.05〜10質量%であるのが好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上の場合にトナーの性能改質効果が充分に得られる傾向にあり、10質量%以下の場合にトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
本発明のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤の何れの現
像剤としても使用できる。
磁性1成分現像剤として用いる場合には磁性体を含有し、磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金の他、化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
磁性体の含有量は、特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナー中3〜70質量%であることが好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下の場合にトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の下限値は、3質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
また、2成分現像剤として用いる場合、キャリアと併用して用いられる。キャリアとし
ては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、一般に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを使用することができる。
本発明のトナーの製造方法については、特に制限されないが、前述のポリエステル樹脂および配合物を混合した後、2軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(粉砕法)、前述のポリエステル樹脂および配合物を溶剤に溶解・分散させ、水系媒体中にて造粒したのち溶剤を除去し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(ケミカル法)等が挙げられる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の実施の態様がこれに限定されるものではない。また、本実施例で示される樹脂やトナーの評価方法は以下の通りである。
(1)ポリエステル樹脂の評価方法
1)ガラス転移温度(Tg)
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
2)軟化温度
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
3)酸価(AV)
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
4)ポリエステル樹脂中の化合物(X)の反応有無
1)と同様の装置を用い、同条件で測定を行い、DSCチャートにおける化合物(X)由来の吸熱ピークの有無から、ポリエステル樹脂中の化合物(X)の反応有無を判定した。
5)ポリエステル樹脂中の化合物(X)の平均官能基導入率
ライスワックスについては、1価のアルコールと1価のカルボン酸のエステル化物であることから、平均官能基導入率は1である。その他の化合物については、下記のように求める。
まず、化合物(X)の酸価、あるいは水酸基価を求める。酸価は、前述のポリエステル樹脂の酸価測定法と同様の方法にて求める。水酸基価は、化合物(X)を無水酢酸でアセチル化反応させたのち蒸留水を加えて加水分解して過剰の無水酢酸から生じた酢酸を中和滴定し、無水酢酸の消費量から水酸基価を求める。前記方法にて求めた水酸基価の値と、各数平均分子量の値から、平均官能基導入率を算出する。
平均官能基導入率
= 酸価あるいは水酸基価(mgKOH/g)× 数平均分子量 /(56.1×10−3
(2)トナーの評価方法
1)ワックス分散性の評価
下記方法で得られたポリエステル樹脂を用いて、ワックス混練物を作成した。ワックス混練物の作成法を以下に示す。ポリエステル樹脂を93質量%、およびパラフィンワックス(日本精蝋社製、HNP−9PD)3質量%を配合し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。次いで、得られた混合物を2軸混練機で溶融混練した。溶融混練は内温を樹脂の軟化温度に設定して行った。混練後、冷却してワックス混練物を得た。
得られたワックス混練物をPPシートで挟み、70℃でプレス後、一旦室温まで冷却した後、100℃に加熱してワックス粒を溶融させた。溶融したワックス粒の大きさを、光学顕微鏡にて観測し、200μm四方の視野内に観測されるワックス径の最大値をワックス径とした。ワックス径が小さい程ワックス分散性が良好と言える。前記観測結果を基に、以下の基準によりワックス分散性を評価した。
◎(非常に良好):ワックス径が5μm未満
○(良好) :ワックス径が5μm以上10μm未満
△(使用可能) :ワックス径が10μm以上15μm未満
×(劣る) :ワックス径が15μm以上
2)低温流動性評価(低温定着性)
回転型レオメーター(TAインスツルメント社製、「AR−2000ex」)を用いて、トナーの損失弾性率(G’’)を測定した。測定条件は以下の通りである。
・ジオメトリー:25mmφパラレルプレート
・GAP:1mm
・周波数:1Hz
・ひずみ:0.01
・測定温度:80〜240℃(3℃/minで昇温)
損失弾性率(G’’)は、トナーの低温定着性と良い相関を示す。120℃における損失弾性率(G’’)から、低温流動性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○(良好):損失弾性率(G’’)が22000Pa未満。
×(劣る):損失弾性率(G’’)が22000Pa以上。
3)耐ブロッキング性
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを50℃に保温された乾燥機に約2
4時間放置し、トナーの凝集程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を
以下の通りとした。
◎(良好):サンプル瓶を逆さにするだけで分散する。
○(使用可能):サンプル瓶を逆さにし、2〜3回叩くと分散する。
×(劣る):サンプル瓶を逆さにし、4〜5回以上叩くと分散する。
実施例1
表1に示す仕込み組成の酸成分、アルコール成分、化合物(X)と、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂1を得た。得られた樹脂の特性値を表1に示す。
次いで、上記で得られたポリエステル樹脂1を用いて、トナー化を行った。トナーの配合には、ポリエステル樹脂1を93質量%、キナクリドン顔料(クラリアント社製HOSTAPARM PINK E、C.I.番号:Pigment Red 122)を3質量%、ポリエチレンワックス(三洋化成工業社製、サンワックス171−P)3質量%、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−84)1質量%を使用し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。次いで、得られた混合物を2軸混練機で溶融混練した。溶融混練は内温を樹脂の軟化温度に設定して行った。混練後、冷却してトナー混練物を得、ジェットミル微粉砕機で10μm以下に微粉砕し、分級機にて3μm以下の微粒子を除去して粒径を整えた。得られた微粉末100質量部に対して、0.25質量部のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、最終的にトナーを得た。得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2及び比較例1〜5
酸成分、アルコール成分、化合物(X)、および化合物(X)の添加時期を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂2〜7を得た。得られた樹脂の特性値を表1に示す。
次いで、ポリエステル樹脂1に代えて、それぞれポリエステル樹脂2〜4,ポリエステル樹脂A,ポリエステル樹脂B,ポリエステル樹脂C、およびポリエステル樹脂Dを用いること以外は、実施例1と同様の方法でトナーを得た。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1に示す。
以上の実施例、比較例より、以下のことが判明した。
(1)実施例1、2の化合物(X)を含有するポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を用いたトナーは、トナー化時添加ワックスの分散性が向上し、定着性と耐ブロッキング性に優れたトナーが得られた。
化合物(X)を含有しない樹脂より得たトナーは、トナー化時に添加するワックスの分散性が不十分であり、定着性と耐ブロッキング性が劣っていた(比較例1)。
化合物(X)より炭素数の小さいアルキル基を有する化合物を含有する樹脂より得たトナーも、トナー化時に添加するワックスの分散性が不十分であり、定着性と耐ブロッキング性が劣っていた(比較例5)。
化合物(X)の添加時期を原料と同時期から縮合反応終了後に変更して、化合物(X)が構成単位にとりこまれない樹脂より得たトナーも、トナー化時に添加するワックスの分散性が不十分であり定着性と耐ブロッキング性が劣っていた(比較例2)。
化合物(X)に替えて、第一級水酸基がアルキル基末端炭素に結合していない化合物を使用した場合も、トナー化時に添加するワックスの分散性が不十分であり定着性と耐ブロッキング性が劣っていた(比較例3)。
化合物(X)に替えて、平均官能基導入率が1.5未満である化合物を使用した場合も、トナー化時に添加するワックスの分散性が不十分であり定着性と耐ブロッキング性が劣っていた(比較例4)。
表1に記載した実施例および比較例については、以下に記載した材料を用いた。
BPP:ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.3モル付加物
BPE:ビスフェノールAエチレンオキサイド2.0モル付加物
化合物A:ポリテールH(三菱ケミカル社製)
化合物B:炭素数160のポリプロピレンをベースとして、両末端をマレイン酸変性した
化合物
化合物C:ライスワックス
化合物D:ノナンジオール

Claims (5)

  1. 第一級水酸基が炭素数50以上の長鎖アルキル基末端炭素に結合しており、1分子鎖当たりの平均官能基導入率が1.5個以上である化合物(X)由来の構成単位を有するポリエステル樹脂。
  2. 前記化合物(X)の含有量が、ポリエステル樹脂全量中0.5〜15質量%である、請求項1記載のポリエステル樹脂。
  3. ガラス転移温度が45〜65℃である、請求項1または2記載のポリエステル樹脂。
  4. 軟化温度が80〜200℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂を含有するトナー。
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