JP6608281B2 - 薬剤候補化合物のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法 - Google Patents

薬剤候補化合物のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、薬剤候補化合物のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法、及び心筋組織チップ、及び心筋組織チップを用いた薬剤候補化合物のスクリーニング方法に関する。
化粧品、医薬品及び医薬部外品等といったヒトに直接適用される物質の研究開発において、薬効試験、薬理試験及び安全性試験等といった物質の評価試験は重要である。これらの試験は、従来、マウスやラット等の動物を用いて行われているが、近年、動物愛護の観点から動物実験の見直しが求められ、動物実験に代わり、細胞を用いたin vitro薬剤評価が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、生体組織は三次元体であり、様々な細胞が相互作用することで機能を発現していることから、三次元体である組織や臓器としての薬剤応答は細胞単体での薬剤応答と異なり、細胞単体では正確な評価を行うことが困難である。このため、動物実験に代わる三次元組織体を用いて評価する方法が求められているが、その技術は未だ確立されていないのが現状である。
特開2003−33177号公報
本開示は、一又は複数の実施形態において、心筋の三次元組織が形成され、薬剤のスクリーニングに利用可能な心筋組織チップ、該心筋組織チップの製造方法及び心筋組織チップを用いた薬剤のスクリーニング方法を提供する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法であって、細胞の表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を基材上に配置すること、及び前記被覆細胞の配置を繰返し行うことによって前記基材上に心筋三次元組織体を形成することを含み、前記細胞が、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞を含む、心筋組織チップの製造方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップであって、基材と、前記基材上に形成された心筋三次元組織体とを含み、前記心筋三次元組織体は、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と、細胞外マトリックス成分とを少なくとも含み、前記心筋細胞が前記細胞外マトリックス成分を介して積層されている、心筋組織チップに関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の心筋組織チップを用いた薬剤候補化合物のスクリーニング方法であって、薬剤候補化合物を前記心筋組織チップに接触させること、候補化合物の前記心筋組織チップにおける心筋三次元組織体への影響を観察すること、及び観察結果に基いて候補化合物を評価することを含む、スクリーニング方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と細胞外マトリックス成分と線維芽細胞とを含み、前記心筋細胞と前記線維芽細胞とを三次元に配置して培養することにより得られた培養心筋組織に関する。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、心筋の三次元組織が形成され、薬剤のスクリーニングに利用可能な心筋組織チップ、その製造方法及び心筋組織チップを用いた薬剤のスクリーニング方法を提供できる。
図1は、参考例の心筋三次元組織体の顕微鏡写真の一例である。 図2は、参考例の心筋三次元組織体の薬剤投与に伴う拍動数の変化を示すグラフの一例である。 図3は、実施例1で作製した心筋組織チップにおける心筋三次元組織体の顕微鏡写真の一例である。 図4は、実施例2で作製した心筋組織チップにおける心筋三次元組織体の薬剤投与に伴う拍動数の変化を示すグラフの一例である。 図5は、実施例3で作製した心筋組織チップにおける心筋三次元組織体(7日間培養後)の組織切片画像(HE染色画像)である。 図6は、実施例3で作製した心筋組織チップにおける心筋三次元組織体(7日間培養後)の位相差顕微鏡写真である。 図7は、実施例8で作製した血管網を有する心筋三次元組織体(6日間培養後)の共焦点レーザー顕微鏡写真であり、図7Aは実施例8−1で作製した心筋三次元組織体(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=100:0)の画像であり、図7Bは実施例8−2で作製した心筋三次元組織体(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=50:50)の画像である。
本開示において「心筋組織チップ」は、基材と、基材上に形成された心筋三次元組織体とを含む。
本開示において「心筋三次元組織体」とは、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と細胞外マトリックス成分とを少なくとも含み、心筋細胞が細胞外マトリックス成分を介して積層された細胞の構造体のことをいい、一又は複数の実施形態において、生体内における心筋構造を模したものであることが好ましい。本開示において人工多能性幹細胞(以下、「iPS細胞」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、疾患特異的iPS細胞、及び正常iPS細胞が挙げられる。本開示において、iPS細胞の由来は特に限定されず、ヒト及びマウス等が挙げられるが、ヒトの心毒性をより正確に評価可能な心筋組織チップを提供する点から、ヒト由来iPS細胞が好ましい。本開示において、iPS細胞に由来する心筋細胞は、一又は複数の実施形態において、市販のものを使用してもよいし、自家調製したものを使用してもよい。本開示における心筋三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、iPS細胞に由来する心筋細胞及び細胞外マトリックス成分以外に、心筋を構成しうる心筋細胞以外の細胞及び器官(及び又はそれを構成する細胞)等を含んでもよい。心筋細胞以外の細胞としては、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経細胞、癌細胞等が挙げられる。器官としては、一又は複数の実施形態において、血管、リンパ管、神経等が挙げられる。器官を構成する細胞としては、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経細胞、癌細胞等が挙げられる。
本開示において「被覆細胞」とは、細胞外マトリックス成分を含む被膜と細胞とを含み、その細胞表面が該被膜によって被覆されている細胞をいう。被覆される細胞としては、上述の細胞が挙げられる。被覆細胞は、一又は複数の実施形態において、後述する方法、実施例及び特開2012−115254号公報に開示された方法により作製できる。
本開示において「細胞外マトリックス成分」とは、生体内で細胞の外の空間を充填して骨格的役割、足場を提供する役割、及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たす物質をいう。また、細胞外マトリックス成分は、さらに、in vitro細胞培養において骨格的役割、足場を提供する役割及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たしうる物質を含んでいてもよい。
[心筋組織チップの製造方法]
本開示は、薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法であって、細胞の表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を基材上に配置すること、及び前記被覆細胞の配置を繰返し行うことによって前記基材上に心筋三次元組織体を形成することを含み、前記細胞が人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞(以下、「iPS細胞由来の心筋細胞」ともいう)を含む心筋組織チップの製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)に関する。
本開示の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、薬剤のスクリーニングに用いられる市販の様々なサイズのマイクロウェルに、層数や構造が均一に制御された心筋三次元組織体が形成された心筋組織チップを提供できる。また、本開示の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、マイクロウェルに遅くとも1日以内で心筋三次元組織体を形成することができる。本開示の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、マイクロウェルの内部に少なくとも5層以上の心筋三次元組織体を提供できる。
本開示の製造方法により得られる心筋組織チップは、一又は複数の実施形態において、医薬、製薬、化粧品、食品及び環境の分野における安全性や薬物動態に関する試験・検査の用途に用いることができる。
本開示の製造方法は、細胞の表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を基材上に配置することを繰返し行うことによって、基材上に心筋三次元組織体を形成することを含み、好ましくは覆細胞を基材上に配置することを繰返し行った後、培養することによって基材上に心筋三次元組織体を形成することを含む。培養温度は、一又は複数の実施形態において、4〜60℃、20〜40℃、又は30〜37℃である。培養時間は、特に限定されるものではなく、一又は複数の実施形態において、1〜168時間、3〜24時間、又は3〜12時間である。培地は、特に制限されず、細胞に応じて適宜決定でき、例えば、Eagle’s MEM培地、Dulbecco’s Modified Eagle培地(DMEM)、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RDMI、GlutaMax培地等が挙げられる。培地は、一又は複数の実施形態において、血清を添加した培地であってもよいし、無血清培地であってもよい。
本開示の製造方法は、生体の心筋組織により近い組織体とする点から、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞を基材上に配置することを含む。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、iPS細胞由来の心筋細胞を含む被覆細胞と混合して配置してもよいし、該被覆細胞と別個に配置してもよい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、心筋細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞、細胞数)が99:1〜1:99となるように配置する。心筋細胞と線維芽細胞との比率は、一又は複数の実施形態において、心筋細胞に活動電位を発生させ、より規則的な拍動を実現する点から、80:20〜30:70、80:20〜45:55又は75:25〜50:50が好ましい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓線維芽細胞であることが好ましい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。線維芽細胞は、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。
本開示の製造方法は、三次元組織体内に血管網を形成させて生体の心筋組織により近い組織体とする点から、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞を基材上に配置することを含む。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、iPS細胞由来の心筋細胞を含む被覆細胞と混合して配置してもよいし、該被覆細胞と別個に配置してもよい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓微小血管内皮細胞であることが好ましい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。血管内皮細胞は、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。
心筋三次元組織体形成時における被覆細胞の密度は、一又は複数の実施形態において、目的とする心筋三次元組織体の大きさ及び厚み、培養する容器の大きさならびに積層される細胞の数等に応じて適宜決定でき、一又は複数の実施形態において、1×102個/cm3〜1×109個/cm3、1×104個/cm3〜1×108個/cm3、又は1×105個/cm3〜1×107個/cm3である。
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、iPS細胞由来の心筋細胞を含む細胞が、少なくとも4層以上積層されるように被覆細胞を配置することを含む。積層する細胞層の数は特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、5、6、7、8、9、又は10層以上等が挙げられる。
被覆細胞の配置は、形成する心筋三次元組織体の再現性の向上、及び製造効率向上の点、また、より高速な製造が可能になり、層数及び構造の制御がより容易になる点から、一又は複数の実施形態において、液吐出ノズルを用いて被覆細胞を基板上に吐出することによって行うことが好ましく、インクジェット式吐出装置などの噴射装置を用いて行うことがより好ましい。噴射装置としては、一又は複数の実施形態において、1吐出あたり1個の被覆細胞を基材の所定の領域に吐出できる装置であって、ピエゾ駆動のインクジェット式吐出装置を好ましく採用できる。
被覆細胞の吐出は、一又は複数の実施形態において、1吐出あたり1個の被覆細胞を吐出することによって行うことが好ましい。1吐出あたり1個の被覆細胞を吐出することによって心筋組織パターンを形成することによって、より生体内の心筋組織に類似した心筋三次元組織体を形成することができる。本開示の製造方法における被覆細胞の配置は、一又は複数の実施形態において、予め設定されたパターンに基き、所定の細胞が被覆された被覆細胞が所定の位置に配置されるように、液吐出ノズルを移動させながら行うことが好ましい。本開示の製造方法は、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を使用することから、一又は複数の実施形態において、吐出による細胞の配置時における細胞へのストレスを軽減でき、かつ効率よく細胞を積層することができる。
本開示の製造方法において、心筋三次元組織体の面積は、一又は複数の実施形態において、1mm2以上、5mm2以上、10mm2以上、又は20mm2以上であり、また1000mm2以下、700mm2以下、600mm2以下、又は500mm2以下である。
本開示の製造方法において、ハイスループットスクリーニングを可能にする点から、一又は複数の実施形態において、心筋三次元組織体を基材上に複数個形成することが好ましい。基材としては、一又は複数の実施形態において、マルチウェルプレートが挙げられる。また、基材は、取り扱いが容易となる点から、一又は複数の実施形態において、各ウェルにメンブレンフィルタが配置されたマルチウェルプレートであってもよく、好ましくはハウジング部と基底部とを備え、基底部がメンブレンフィルタである容器が配置されたマルチウェルプレートが挙げられる。マルチウェルプレートにおけるウェルの数は、特に限定されるものではなく、一又は複数の実施形態において、24、96、384、及び1536等が挙げられる。メンブレンフィルタの孔径は、培養した細胞がメンブレンフィルタ上に保持可能な範囲であれば特に制限されず、一又は複数の実施形態において、0.1μm〜2μm、又は0.4μm〜1.0μmである。また、メンブレンの材質は、一又は複数の実施形態において、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
[スクリーニング用心筋組織チップ]
本開示は、一又は複数の実施形態において、薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップであって、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と、細胞外マトリックス成分とを少なくとも含み、前記人工多能性幹細胞が前記細胞外マトリックス成分を介して積層された心筋三次元組織体である心筋組織チップ(以下、「本開示の心筋組織チップ」ともいう)に関する。本開示の心筋組織チップは、本開示の製造方法によって製造できる。本開示の心筋組織チップによれば、一又は複数の実施形態において、医薬、製薬、化粧品、食品及び環境の分野における安全性や薬物動態に関する試験・検査を行うことができる。本開示の心筋組織チップにおいて、基材、細胞外マトリックス、及び心筋細胞は上述の通りである。
本開示の心筋組織チップにおいて、iPS細胞は、一又は複数の実施形態において、動物実験では困難なヒトの心毒性評価をより正確に行うことができることから、ヒト由来iPS細胞であることが好ましい。
本開示の心筋組織チップにおいて、心筋三次元組織体は、生体の心筋組織に近い組織とする点から、一又は複数の実施形態において、さらに線維芽細胞を含む。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓線維芽細胞であることが好ましい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。
心筋三次元組織体における心筋細胞と線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞、細胞数)は、一又は複数の実施形態において、99:1〜1:99である。心筋細胞と線維芽細胞との比率は、一又は複数の実施形態において、心筋細胞に活動電位を発生させ、より規則的な拍動を実現する点から、80:20〜30:70、80:20〜45:55又は75:25〜50:50が好ましい。
本開示の心筋組織チップにおいて、心筋三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、さらに血管内皮細胞を含む。心筋三次元組織体は、心筋三次元組織体の機能をより長期間安定に維持させる点から、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞で形成された血管網を含むことが好ましい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓微小血管内皮細胞であることが好ましい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。
本開示の心筋組織チップにおいて、心筋三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、心筋細胞が4層以上積層されており、心筋細胞が5層以上積層されていることが好ましく、より好ましくは6、7、8、9、又は10層以上積層されている。
本開示の心筋組織チップにおいて、心筋三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、マルチウェルプレートの各ウェルに形成されている。本開示の心筋組織チップにおける心筋三次元組織体の面積は、一又は複数の実施形態において、1mm2以上、5mm2以上、10mm2以上、又は20mm2以上であり、また1000mm2以下、700mm2以下、600mm2以下、又は500mm2以下である。
心筋三次元組織体における細胞の密度は、一又は複数の実施形態において、1×105個/mm3以上、5×105個/mm3以上、1×106個/mm3以上、5×106個/mm3以上、又は1×107個/mm3以上であり、また、1×1010個/mm3以下、5×109個/mm3以下、又は1×109個/mm3以下である。
[スクリーニング方法]
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の心筋組織チップを用いた薬剤候補化合物のスクリーニング方法であって、薬剤候補化合物を前記心筋組織チップに接触させること、候補化合物の前記心筋組織チップにおける心筋三次元組織体への影響を観察すること、及び観察結果に基いて候補化合物を評価することを含むスクリーニング方法(以下、「本開示のスクリーニング方法」ともいう)。本開示のスクリーニング方法によれば、一又は複数の実施形態において、医薬、製薬、化粧品、食品及び環境の分野における安全性や薬物動態に関する試験・検査を行うことができる。本開示のスクリーニング方法においてスクリーニングする薬剤候補化合物としては、一又は複数の実施形態において、心疾患治療薬等が挙げられる。
[スクリーニング用キット]
本開示は、一又は複数の実施形態において、薬剤候補化合物のスクリーニングのためのキットであって、本開示の心筋組織チップ、培地、及び取扱説明書を含むキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。培地は、上述の培地が挙げられる。
以下、本開示の製造方法で用いられうる被覆細胞について説明する。
被覆細胞は、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、細胞の表面が細胞外マトリックス成分被膜で被覆されている。細胞外マトリックス成分を含む被膜は、物質Aを含む膜と、前記物質Aと相互作用する物質Bを含む膜とを含むことが好ましい。物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「RGD配列を有する物質」ともいう)と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子(以下、「相互作用を有する物質」ともいう)との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「正の電荷を有する物質」ともいう)と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「負の電荷を有する物質」ともいう)との組み合わせである。
細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚みは、一又は複数の実施形態において、1nm〜1×103nm、又は2nm〜1×102nmが好ましく、被覆細胞がより密に積層された心筋三次元組織体が得られるという理由から、3nm〜1×102nmがより好ましい。細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚みは、例えば、被膜を構成する膜の数によって適宜制御することができる。細胞外マトリックス成分を含む被膜は、特に制限されず、1層であってもよいし、一又は複数の実施形態において、例えば、3、5、7、9、11、13、15層又はそれ以上の多層であってもよい。
<被覆細胞の調製>
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、被覆細胞を調製する工程を含んでいてもよい。被覆細胞は、物質Aを含む溶液と、物質Bを含む溶液とを、心筋細胞等の細胞に交互に接触させることにより調製することができる。物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、上記の通り、RGD配列を有する物質と相互作用を有する物質との組み合わせ、又は、正の電荷を有する物質と負の電荷を有する物質との組み合わせが挙げられる。
(RGD配列を有する物質)
RGD配列を有する物質とは、細胞接着活性を担うアミノ酸配列である「Arg−Gly−Asp」(RGD)配列を有するタンパク質又は高分子をいう。本明細書において「RGD配列を有する」とは、元来RGD配列を有するものでもよいし、RGD配列が化学的に結合されたものでもよい。RGD配列を有する物質は、生分解性であることが好ましい。
RGD配列を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、従来公知の接着性タンパク質、又はRGD配列を有する水溶性タンパク質等が挙げられる。接着性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、又はコラーゲン等が挙げられる。RGD配列を有する水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、RGD配列を結合させたコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、グロブリン、プロテオグリカン、酵素、又は抗体等が挙げられる。
RGD配列を有する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。RGD配列を有する合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、又はポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。
RGD配列を有する物質は、これらの中でも、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、ポリリジン、エラスチン、RGD配列を結合させたコラーゲン、RGD配列を結合させたゼラチン、キチン、又はキトサンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、ポリリジン、RGD配列を結合させたコラーゲン、又はRGD配列を結合させたゼラチンである。
(相互作用する物質)
相互作用する物質とは、RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質若しくは高分子をいう。本明細書において「相互作用する」とは、一又は複数の実施形態において、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、共有結合形成、タンパク質間の特異的相互作用、及び又はファンデルワールス力等によって化学的及び又は物理的にRGD配列を有する物質と相互作用する物質とが結合、接着、吸着又は電子の授受が可能な程度に近接することを意味する。相互作用する物質は、生分解性であることが好ましい。
RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、又は抗体等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、エラスチン、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はデキストラン硫酸等の糖、及びヒアルロン酸等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、一又は複数の実施形態において、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリリジン、ポリグルタミン酸、又はポリアスパラギン酸等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、上述のRGD配列を有する合成分子が挙げられる。
相互作用する物質は、これらの中でも、ゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、グロブリン、アルブミン、ポリグルタミン酸、コラーゲン、又はエラスチンが好ましく、より好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、又はコラーゲン、さらに好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、又はヒアルロン酸である。
RGD配列を有する物質と相互作用する物質との組み合わせは、特に制限されず、相互作用する異なる物質の組み合わせであればよく、いずれか一方がRGD配列を含む高分子又はタンパク質であり、他方がこれと相互作用する高分子又はタンパク質であればよい。RGD配列を有する物質と相互作用を有する物質との組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、フィブロネクチンとコラーゲン、ラミニンとゼラチン、ラミニンとコラーゲン、ポリリジンとエラスチン、ビトロネクチンとコラーゲン、RGD結合コラーゲン又はRGD結合ゼラチンとコラーゲン又はゼラチン等が挙げられる。中でも、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、又はラミニンとゼラチンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチンとゼラチンである。なお、RGD配列を有する物質及び相互作用を有する物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
(正の電荷を有する物質)
正の電荷を有する物質とは、正の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。正の電荷を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、塩基性コラーゲン、塩基性ゼラチン、リゾチーム、シトクロムc、ペルオキシダーゼ、又はミオグロビン等が挙げられる。正の電荷を有する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、一又は複数の実施形態において、ポリ(α−リジン)、ポリ(ε−リジン)等のポリリジン、ポリアルギニン、又はポリヒスチジン等が挙げられる。合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
(負の電荷を有する物質)
負の電荷を有する物質とは、負の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。負の電荷を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、酸性コラーゲン、酸性ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カタラーゼ、β−ラクトグロブリン、チログロブリン、α−ラクトアルブミン、又は卵白アルブミン等が挙げられる。負の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリ(βリジン)等のポリアミノ酸、又はデキストラン硫酸等が挙げられる。合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、末端カルボキシ化ポリエチレングリコール、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミン塩、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
正の電荷を有する物質と負の電荷を有する物質との組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、ε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、ε−ポリリジンとポリスルホン酸塩、キトサンとデキストラン硫酸、ポリアリルアミンハイドロクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩等が挙げられ、好ましくはε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩である。ポリスルホン酸塩としては、一又は複数の実施形態において、ポリスルホン酸ナトリウム(PSS)等が挙げられる。なお、正の電荷を有する物質及び負の電荷を有する物質は、それぞれ、一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
以下に、被覆細胞の調製方法の好適な実施形態として、細胞に、まずRGD配列を有する物質を含有する溶液Aを接触させた後、RGD配列を有する物質に相互作用を有する物質を含有する溶液Bと接触させることにより被覆細胞を調製する方法を、例にとり説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定して解釈されるものではない。
まず、細胞を溶液Aと接触させる。これにより、細胞表面にRGD配列を有する物質を含む膜が形成され、細胞表面がRGD配列を有する物質を含む膜によって被覆される。細胞と溶液Aとの接触は、一又は複数の実施形態において、溶液Aを細胞に塗布又は添加すること、溶液Aに細胞を浸漬させること、溶液Aを細胞に滴下又は噴霧すること等により行うことができる。中でも、操作が容易であるという理由から、溶液Aに細胞を浸漬させることにより、細胞と接触させることが好ましい。
接触条件は、一又は複数の実施形態において、接触方法、RGD配列を有する物質及び又は細胞の種類、及び含有液の濃度等に応じて適宜決定できる。接触時間は、一又は複数の実施形態において、30秒〜24時間、1分〜60分、1分〜15分、1分〜10分、又は1分〜5分が好ましい。接触時の雰囲気温度及び又は溶液Aの温度は、一又は複数の実施形態において、4〜60℃、20〜40℃、又は30〜37℃が好ましい。
溶液Aは、RGD配列を有する物質を含んでいればよく、好ましくはRGD配列を有する物質と溶媒又は分散媒体(以下、単に「溶媒」ともいう)とを含む。溶液AにおけるRGD配列を有する物質の含有量は、一又は複数の実施形態において、0.0001〜1質量%、0.01〜0.5質量%、又は0.02〜0.1質量%が好ましい。溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び緩衝液等の水性溶媒が挙げられる。緩衝液としては、一又は複数の実施形態において、Tris−HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、グリシルグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、Britton−Robinson緩衝液、又はGTA緩衝液等が挙げられる。溶媒のpHは、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、3〜11、6〜8、又は7.2〜7.4が好ましい。
溶液Aは、一又は複数の実施形態において、塩、細胞成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、生理活性ペプチド、又は医薬組成物等をさらに含有してもよい。医薬組成物としては、一又は複数の実施形態において、疾患の治療剤、予防剤、抑制剤、抗菌剤、又は抗炎症剤等が挙げられる。塩としては、一又は複数の実施形態において、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、コハク酸ナトリウム等が挙げられる。塩は、一種類でもよいし二種類以上含有していてもよい。溶液A及び溶液Bの双方が塩を含有していてもよいし、いずれか一方が塩を含有していてもよい。溶液A中の塩濃度は、特に制限されないが、一又は複数の実施形態において、1×10-6M〜2Mであり、好ましくは1×10-4M〜1M、より好ましくは1×10-4M〜0.05Mである。
ついで、RGD配列を有する物質を含む膜の形成に使用されなかった物質を除去する。除去は、一又は複数の実施形態において、遠心分離又は濾過等により行うことができる。遠心分離による除去は、一又は複数の実施形態において、溶液Aに細胞を分散させた状態で遠心分離し、ついで上澄みを除去することにより行うことができる。遠心分離条件は、細胞の種類、細胞の濃度、及び溶液Aに含まれる含有物の組成によって適宜決定できる。
上記除去に加えて、洗浄操作を行うことが好ましい。洗浄は、一又は複数の実施形態において、遠心分離又は濾過等により行うことができる。遠心分離による洗浄は、一又は複数の実施形態において、上澄みを除去された細胞に溶媒を添加し、遠心分離及び上澄みの除去をすることにより行うことができる。洗浄に用いる溶媒は、溶液Aの溶媒と同じであることが好ましい。
ついで、RGD配列を有する物質を含む膜で被覆された細胞を溶液Bと接触させる。これにより、RGD配列を有する物質を含む膜表面に相互作用をする物質を含む膜が形成され、RGD配列を有する物質を含む膜で被覆された細胞表面が相互作用をする物質を含む膜によって被覆される。溶液Bとの接触は、RGD配列を有する物質に代えて相互作用する物質を使用する以外は、溶液Aとの接触と同様に行うことができる。
溶液A又は溶液Bと細胞との接触とを交互に繰り返し行うことにより、細胞表面全体に、RGD配列を有する物質を含む膜と相互作用をする物質を含む膜とが交互に積層された細胞外マトリックス成分を含む被膜を形成することができる。溶液A又は溶液Bと細胞との接触を行う回数は、形成する細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚み等に応じて適宜決定できる。
[培養心筋組織]
本開示は、一又は複数の実施形態において、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と細胞外マトリックス成分と線維芽細胞とを含む培養心筋組織(以下、「本開示の培養心筋組織」ともいう)に関する。本開示の培養心筋組織は、一又は複数の実施形態において、iPS細胞由来の心筋細胞及び線維芽細胞を三次元に配置して培養することにより得ることができる。本開示の培養心筋組織は、一又は複数の実施形態において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆されたiPS細胞由来の心筋細胞及び線維芽細胞を三次元に配置して培養することにより得ることができる。
本開示において「培養心筋組織」とは、iPS細胞由来の心筋細胞と細胞外マトリックス成分と線維芽細胞とを含み、iPS細胞由来の心筋細胞が三次元に配置された細胞の構造体又は集合体をいう。本開示の培養心筋組織は、一又は複数の実施形態において、心不全等の治療のための移植片や治療用薬剤として使用できる。本開示の培養心筋組織は、一又は複数の実施形態において、再生医療の実施に用いることができる。
培養心筋組織は、生体の心筋組織に近い組織とする点から、一又は複数の実施形態において、さらに線維芽細胞を含む。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓線維芽細胞であることが好ましい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。
心筋三次元組織体における心筋細胞と線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞、細胞数)は、一又は複数の実施形態において、99:1〜1:99である。心筋細胞と線維芽細胞との比率は、一又は複数の実施形態において、心筋細胞に活動電位を発生させ、より規則的な拍動を実現する点から、80:20〜30:70、80:20〜45:55又は75:25〜50:50が好ましい。
培養心筋組織は、一又は複数の実施形態において、さらに血管内皮細胞を含む。培養心筋組織は、機能をより長期間安定に維持させる点から、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞で形成された血管網を含むことが好ましい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、心臓微小血管内皮細胞であることが好ましい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来する細胞であってもよい。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。血管網は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞をiPS由来の心筋細胞及び線維芽細胞と混合して播種し、培養することによって形成できる。
培養心筋組織の面積は、一又は複数の実施形態において、20mm2以上、100mm2以上、200mm2以上、500mm2以上、又は1000mm2以上である。培養心筋組織の厚みは、一又は複数の実施形態において、1μm以上又は10μm以上であり、また10000μm以下である。
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[1] 薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法であって、
細胞の表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を基材上に配置すること、及び
前記被覆細胞の配置を繰返し行うことによって前記基材上に心筋三次元組織体を形成することを含み、
前記細胞が、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞を含む、心筋組織チップの製造方法。
[2] 前記基材上に線維芽細胞を配置することを含む、[1]記載の製造方法。
[3] 前記心筋細胞及び線維芽細胞の比(心筋細胞:線維芽細胞)が99:1〜1:99となるように、前記心筋細胞及び前記線維芽細胞を配置することを含む、[2]記載の製造方法。
[4] 前記心筋細胞を含む細胞の層が4層以上積層されるように前記細胞を配置する、[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記被覆細胞の配置は、液吐出ノズルを用いて前記被覆細胞を基板上に吐出することによって行う、[1]から[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記被覆細胞の吐出は、1吐出あたり1個の被覆細胞を吐出することによって行う、[5]記載の製造方法。
[7] 前記基材は、マルチウェルプレートである、[1]から[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記基材上に複数個の心筋三次元組織体を形成することを含む、[1]から[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップであって、
基材と、
前記基材上に形成された心筋三次元組織体とを含み、
前記心筋三次元組織体は、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と、細胞外マトリックス成分とを少なくとも含み、前記心筋細胞が前記細胞外マトリックス成分を介して積層されている心筋組織チップ。
[10] 前記心筋三次元組織体は、さらに線維芽細胞を含む、[9]記載の心筋組織チップ。
[11] 前記心筋細胞と線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞)が、99:1〜1:99である、[10]記載の心筋組織チップ。
[12] 前記心筋細胞が、5層以上積層されている、[9]から[11]のいずれかに記載の心筋組織チップ。
[13] 前記心筋三次元組織体は、さらに血管内皮細胞で形成された血管網を含む、[9]から[12]のいずれかに記載の心筋組織チップ。
[14] [1]から[8]のいずれかに記載の製造方法によって製造される、[9]から[13]のいずれかに記載の心筋組織チップ。
[15] [9]から[14]のいずれかに記載の心筋組織チップを用いた薬剤候補化合物のスクリーニング方法であって、
薬剤候補化合物を前記心筋組織チップに接触させること、
候補化合物の前記心筋組織チップにおける心筋三次元組織体への影響を観察すること、及び、
観察結果に基いて候補化合物を評価することを含む、スクリーニング方法。
[16] 薬剤候補化合物のスクリーニングのためのキットであって、
[9]から[14]のいずれかに記載の心筋組織チップ、
培地、及び、
取扱説明書、を含むキット。
[17] 人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と細胞外マトリックス成分と線維芽細胞とを含み、
前記心筋細胞と前記線維芽細胞とを三次元に配置して培養することにより得られた、培養心筋組織。
[18] 前記心筋細胞と線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞)が、99:1〜1:99である、[17]記載の培養心筋組織。
[19] 収縮・弛緩機能を有する、[17]又は[18]に記載の培養心筋組織。
[20] さらに、血管内皮細胞で形成された血管網を含む、[17]から[19]のいずれかに記載の培養心筋組織。
なお、本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
50mM Tris−HCl(pH7.4):HCl(Nacalai Tesque社製)でpH7.4に調整した50mM Trisを、0.2μm γ−raysterile filter(倉敷紡績株式会社製)で滅菌濾過したもの
BFN:Fibronectin from bovine plasma(SIGMA製)
BFN溶液:0.2mg BFN/1ml 50mM Tris−HCl(pH7.4)
DMEM:10% FBS(GIBCO社製)を含むDulbecco’s eagle’s medium(SIGMA社製)
Gelatin溶液:0.2mg Gelatin/1ml 50mM Tris−HCl(pH7.4)を、0.2μm γ−ray sterile filter(倉敷紡績株式会社製)で滅菌濾過したもの
(参考例)
[被覆細胞の作製]
ラット新生児より心筋細胞を回収し、回収した細胞表面にフィブロネクチンとゼラチンを含む被膜を形成して被覆細胞を作製した。被膜の形成は以下の手順で行った。ラット由来心筋細胞を1.7×107cell/mlの濃度で0.2mg/mlのフィブロネクチンを含む50mM Tris−HCl(pH=7.4)溶液に分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(FN浸漬操作)。ついで、上澄みを除き、50 mM Tris−HCl(pH=7.4)溶液を加え、細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(洗浄操作)。上澄みを除き、0.2mg/mlのゼラチンを含む50mM Tris−HCl(pH=7.4)溶液に細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら、1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行い(G浸漬操作)、ついで洗浄操作を行った。そして、FN浸漬操作、洗浄操作、G浸漬操作、及び洗浄操作をこの順番で行った。FN浸漬操作及びG浸漬操作は洗浄操作とそれぞれセットで1ステップとし、最終的に、FN浸漬操作を5回、G浸漬操作を4回、計9ステップ行うことによって被覆細胞を作製した(コーティング層の厚み:7nm)。
[心筋三次元組織体の作製(その1)及び評価]
24ウェル培養プレートに配置したトランスウェル(コーニング社製;ポアサイズ:0.4μm、表面積:0.33cm2)のメンブレンフィルタ上に5×105個の被覆細胞を播種し、10重量%FBSを含むDMEM培地を添加して37℃で7日培養した。これにより心筋細胞が5層積層された心筋三次元組織体(厚み:およそ30μm)が得られた。得られた心筋三次元組織体における心筋細胞の密度は5×107個/mm2であった。得られた心筋三次元組織体を蛍光染色し、得られた心筋三次元組織体の組織構造の評価を行った。染色はDAPI(核)、Alexa488(トロポニン)、TRITC標識Phalloidin(アクチン)で行った。その結果を図1に示す、図1は染色後の心筋三次元組織体の顕微鏡写真である。図1に示すように、得られた心筋三次元組織体は、トロポニン骨格を有する心筋組織構造が形成されていることが確認できた。
[心筋三次元組織体の作製(その2)及び評価]
メンブレンフィルタ上に播種した被覆細胞の数を10×105個とした以外は、上記と同じ手順で心筋三次元組織体を作製した(10層、厚み:およそ60μm)。得られた心筋三次元組織体における心筋細胞の密度は5×107個/mm2であった。得られた心筋三次元組織体が拍動していることを確認した後、1.0μMイソプロテレノールを添加して30分間培養した。拍動数を測定した後、DMEMに培地交換してイソプロテレノールを除去し、41時間培養した後拍動数を測定した。その結果を図2に示す。なお、拍動数の測定は、位相差顕微鏡観察により行った。
図2は、心筋三次元組織体の1分間あたりの拍動数の変化を示すグラフの一例である。図2に示すように、得られた心筋三次元組織体は、拍動促進剤であるイソプロテレノールを添加すると拍動数が大幅に上昇した。また、イソプロテレノールを含まない培地に交換して41時間後の拍動数を測定したところ、イソプロテレノールを添加前のレベルまで減少することが確認できた。よって、得られた心筋三次元組織体は、薬剤応答性を有する心筋機能を有していることが確認できた。
(実施例1)
ラット新生児由来の心筋細胞に替えてヒトiPS細胞由来心筋細胞を使用した以外は、上記と同様にして被覆細胞を作製した。ヒトiPS細胞は253G1株を使用した。作製した被覆細胞を用い、心筋三次元組織体の作製(その2)と同様にして10層の心筋三次元組織体を含む心筋組織チップを作製した。得られた心筋三次元組織体を数日間培養し、その位相差顕微鏡写真を図3に示す。作製した心筋三次元組織体は、数日間培養後においても組織全体で均一には駆動する様子が観察された。
(実施例2)
心筋三次元組織体における層数を5層とした以外は、実施例1と同様にして心筋組織チップを作製した。作製した心筋組織チップを1日間培養した後、1Mイソプロテレノール(拍動促進剤)を添加し、添加前後の拍動数を計測した。その結果を図4に示す。図4に示すように、薬剤刺激に応答して拍動数が増加することが確認された。つまり、得られた心筋三次元組織体は薬剤応答性を有する心筋機能を有することから、薬剤評価が可能な心筋三次元組織体を供える心筋組織チップが作製できた。
(実施例3)
心筋三次元組織体における層数を4層とした以外は、実施例1と同様にして心筋三次元組織体を含む心筋組織チップを作製した。作製した心筋三次元組織体を7日間培養した後の組織切片画像(HE染色画像)を図5に、位相差顕微鏡写真を図6に示す。得られた心筋三次元組織体の拍動数は40回/分であった。
(実施例4)
ヒトiPS由来心筋細胞(5×105cells)を用いて被覆細胞を作製し、実施例2と同様にして心筋組織チップ(5層)を作製した。
(実施例5)
ヒトiPS由来被覆心筋細胞(3.75×105cells)と被覆線維芽細胞(1.25×105cells)とを用いた以外は実施例4と同様にして心筋組織チップを作製した(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=75:25)。
(実施例6)
ヒトiPS由来被覆心筋細胞(2.5×105cells)と被覆線維芽細胞(2.5×105cells)とを用いた以外は実施例5と同様にして心筋組織チップを作製した(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=50:50)。
(実施例7)
ヒトiPS由来被覆心筋細胞(1.25×105cells)と被覆線維芽細胞(3.75×105cells)とを用いた以外は実施例5と同様にして心筋組織チップを作製した(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=25:75)。
[カルシウムイメージング]
実施例4〜6の心筋組織チップを用いてカルシウムイメージングを行った。カルシウムイメージングは以下の手順で行った。すなわち、培養5日後の心筋組織チップに4μMのFluo3AMを添加し45分間インキュベートした。その後、励起波長508nm、蛍光波長527nmの条件で蛍光顕微鏡を用いてイメージングを行った。
実施例5の心筋組織チップ(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=75:25)が最も強い蛍光強度を示すと共に、最も大きな拍動を示した。拍動に伴う蛍光強度の変化は実施例5及び実施例6の順番で強く、拍動は実施例5及び実施例4の順番で大きかった。実施例4は拍動したものの、拍動に伴う蛍光強度の変化は見られなかった。また、実施例6は拍動が殆ど観察されなかった。
(実施例8)
[血管網を有する心筋組織チップの作製]
ヒトiPS由来被覆心筋細胞(1.0×106cells)及び被覆正常ヒト微小血管内皮細胞(NHCMEC)を、NHCMECの割合が細胞数全体の10%の比率となるように混合して24ウェルセルカルチャーインサートに播種し、培養して心筋組織チップを作製した(実施例8−1)。得られた心筋組織チップにおける心筋三次元組織体(6日間培養後)の位相差顕微鏡写真を図7Aに示す。
ヒトiPS由来被覆心筋細胞のみに替えて、ヒトiPS由来被覆心筋細胞(5.0×105cells)と被覆線維芽細胞(5.0×105cells)とを用いた以外は、実施例8−1と同様にして心筋組織チップを作製した(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:被覆線維芽細胞=50:50、実施例8−2)。得られた心筋組織チップにおける心筋三次元組織体(6日間培養後)の位相差顕微鏡写真を図7Bに示す。
図7A及びBに示すように、被覆線維芽細胞を混合して作製した実施例8−2の心筋組織チップのほうが被覆線維芽細胞を含まない実施例8−1の心筋組織チップと比較して、より微細な血管網が形成された。
(実施例9)
[培養心筋組織の作製]
ヒトiPS由来被覆心筋細胞6.5×107cellsと正常ヒト心臓線維芽細胞(NHCF)6.5×106cellsとを混合し、100mmディッシュに配置したトランスウェルインサート(メンブレン直径:75mm、培養面積44cm2)に播種し、4日間培養して培養心筋組織(5層、1.3×107cells/layer)を作製した(ヒトiPS由来被覆心筋細胞:線維芽細胞=90:10)。作製した培養心筋組織が拍動することを確認した。

Claims (8)

  1. 薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップの製造方法であって、
    表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞を準備すること、
    表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された線維芽細胞を準備すること、及び
    前記被覆心筋細胞及び前記被覆線維芽細胞の基材への配置を繰返し行うことによって、前記心筋細胞及び前記線維芽細胞を含む心筋三次元組織体であって前記細胞が5層以上積層された心筋三次元組織体を前記基材上に複数個形成することを含み、
    前記心筋細胞と前記線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞)が、75:25〜50:50であり、
    前記基材は、マルチウェルプレートであり、
    前記チップは、ハイスループットスクリーニングを行うためのチップである、心筋組織チップの製造方法。
  2. 表面が細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された血管内皮細胞を準備すること、及び
    前記心筋三次元組織体の形成は、前記血管内皮細胞を配置することをさらに含み、
    前記心筋三次元組織体は、前記血管内皮細胞で形成された血管網をさらに含む、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記被覆細胞の配置は、液吐出ノズルを用いて前記被覆細胞を基板上に吐出することによって行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 薬剤のスクリーニングに用いる心筋組織チップであって、
    基材と、
    前記基材上に形成された複数個の心筋三次元組織体とを含み、
    前記心筋三次元組織体は、人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞と、線維芽細胞と、細胞外マトリックス成分とを少なくとも含み、前記心筋細胞及び前記線維芽細胞を含む細胞層が前記細胞外マトリックス成分を介して5層以上積層されており、
    前記心筋細胞と前記線維芽細胞との比率(心筋細胞:線維芽細胞)が、75:25〜50:50であり、
    前記基材は、マルチウェルプレートである、
    ハイスループットスクリーニングを行うための心筋組織チップ。
  5. 前記心筋三次元組織体は、さらに血管内皮細胞で形成された血管網を含む、請求項に記載の心筋組織チップ。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の製造方法により製造された、請求項4又は5に記載の心筋組織チップ。
  7. 請求項からのいずれかに記載の心筋組織チップを用いた薬剤候補化合物のスクリーニング方法であって、
    薬剤候補化合物を前記心筋組織チップに接触させること、
    候補化合物の前記心筋組織チップにおける心筋三次元組織体への影響を観察すること、及び、
    観察結果に基いて候補化合物を評価することを含む、スクリーニング方法。
  8. 薬剤候補化合物のスクリーニングのためのキットであって、
    請求項からのいずれかに記載の心筋組織チップ、
    培地、及び、
    取扱説明書、を含むキット。
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