JP6341553B2 - 三次元組織体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、細胞が細胞外マトリックスを介して三次元に配置された三次元組織体、及びその製造方法に関する。
生体外で細胞の三次元組織を構築する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、細胞表面全体が接着膜で被覆された被覆細胞を培養することによって、細胞の三次元構造体を製造する方法、及び、内部に血管網に類似する構造を有する三次元構造体が開示されている。
特開2012−115254号公報
しかしながら、特許文献1に開示された三次元構造体は、その内部に血管網に類似する構造を有するものの、この血管網構造は三次元構造体の外部との接続がない末端が閉じた構造である。このため、特許文献1の三次元構造体を用いて薬剤評価等を行った場合、前記薬剤等が血管網内に入らない又は前記薬剤三次元構造体全体に単純拡散されるため、血管網構造が形成された周辺組織への薬剤の影響を観察することは困難である。
そこで、本開示は、毛細血管様構造を備える新たな三次元組織体、及びその製造方法を提供する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体であって、前記三次元組織体は、表面に少なくとも1つの開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する、三次元組織体に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体を培養して前記細胞集積体表面に開口構造を形成し、かつ前記細胞集積体内に前記開口構造と連結した管状構造を形成することを含む、三次元組織体の製造方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記細胞集積体上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を、最表層として培養すること、を含む、三次元組織体の製造方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、を含む、三次元組織体の製造方法に関する。
本開示は、毛細血管様構造を備える新たな三次元組織体、及びその製造方法を提供できる。
図1は、実施例1の三次元組織体の構造を説明するための模式図及び画像であって、図1Aは実施例1の三次元組織体の構造を説明するための説明図、図1Bは実施例1の三次元組織体の構造を説明するためのZY平面の断面模式図、図1Cは最表層の共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)画像、図1Dは中間層のCLSM画像、図1EはZY平面のCLSM画像、並びに図1FはZY平面のHE(hematoxylin-eosin)染色画像を示す。 図2は、実施例2の三次元組織体のCLSM画像であって、図2Aは最表層のCLSM画像、図2Bは中間層のCLSM画像、及び図2Cは最下層のCLSM画像である。 図3は、比較例1の三次元組織体のCLSM画像であって、図3AはZY平面のCLSM画像、図3Bは中間層のCLSM画像を示す。 図4は、三次元組織体における毛細血管様構造の孔径を示すグラフであって、図4Aは、実施例2及び比較例1の三次元組織体における毛細血管様構造の孔径を示すグラフであり、図4Bは、実施例2の三次元組織体における毛細血管様構造の孔径を示すグラフである。 図5は、物質透過性評価における三次元組織体のCLSM画像であって、図5AはFD250k添加前の中間層のCLSM画像であり、図5Bは添加から約10分経過後の中間層のCLSM画像である。 図6は、物質透過性評価における三次元組織体のCLSM画像であって、図6は、FD70k添加からの経過時間と透過率との関係を示すグラフである。 図7は、物質透過性評価における三次元組織体のCLSM画像であって、図7Aはマイクロ粒子添加前の中間層のCLSM画像であり、図7Bは洗浄後の中間層のCLSM画像である。 図8は、物質透過性評価における三次元組織体のCLSM画像である。 図9は、培養日数と三次元組織体における透過率との関係の評価を示すものであって、図9Aは培養1日目の中間層のCLSM画像、図9Bは培養2日目の中間層のCLSM画像、図9Cは培養3日目の中間層のCLSM画像、図9Dは培養日数と透過率との関係を示すグラフである。
本開示は、三次元組織体の形成において、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞といった管状構造を形成する細胞を最表層に配置して三次元組織体の培養を行えば、三次元組織体の最表層に開口構造が形成できる、との知見に基づく。また、本開示は、上記の管状構造を形成する細胞を、三次元組織体の内部及び/又は最下層と最表層とに配置して三次元組織体の培養を行えば、最表層に形成された開口構造と三次元組織体内に形成された管状構造と連結した管状構造のネットワークが形成できる、との知見に基づく。さらに、本開示は、上記の管状構造を形成する細胞を最下層と最表層とに配置し、三次元組織体の培養を所定の孔径の多孔質膜上で行えば、最表層と最下層とに開口構造に形成され、かつ組織体の内部に形成された管状構造が最表層の開口構造と最下層の開口構造とに連結し、組織体の外部に接続可能な連通した管状構造が形成された三次元組織体が得られる、との知見に基づく。また、本開示は、三次元組織体の形成において、管状構造を形成する細胞の配置によって、三次元組織体の表面(最表層及び最下層)への開口構造の形成を制御できる、という知見に基づく。
管状構造形成に寄与する細胞を上記のように配置して培養すれば、一又は複数の実施形態において、最表層に開口構造が形成され、該開口構造が三次元組織体内に形成された管状構造と連結し、その結果、三次元組織体に外部と接続した構造を有する管状のネットワークが形成できるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。血管内皮細胞の周辺に存在する線維芽細胞が産生する液性因子の影響を受け、血管内皮細胞が管状構造を形成しながら組織内部を移動する。その際に、確率的に出会った管同士が連結することで、最表層(最表面)の開口構造と三次元組織体内の管状構造とが連結した構造が形成されると考えられる。但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
[三次元組織体]
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体であって、前記三次元組織体は、少なくとも1つの開口構造を表面に有し、かつ、管状構造を内部に有し、前記開口構造と前記管状構造とは連結している三次元組織体(以下、「本開示の三次元組織体」ともいう)に関する。本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、薬剤及び薬剤キャリア等の透過性や周辺組織への浸透性、並びに薬効発現の評価を行うことができうるという効果を奏し、また、創薬スクリーニングのためのモデルとして使用できうる。また、本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、癌細胞の浸潤や転移、又は抗癌剤の評価等を行うことができうるという効果を奏する。
本開示において「三次元組織体」は、細胞と、細胞外マトリックスを含み、細胞が細胞外マトリックスを介して三次元に配置された細胞の構築物をいう。本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、開口構造を最表層に有し、かつ、分岐した構造の管状構造を内部に有し、開口構造と管状構造とは連結している。つまり、本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、三次元組織体を連通するような管状のネットワークを有している。本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、外部と接続可能な、毛細血管様構造又はリンパ管網様構造のような管状のネットワークを内部に有する。
本開示において「開口構造」とは、細胞層表面に形成された孔をいい、一又は複数の実施形態において、三次元組織体内に形成された管状構造と連結しているものをいう。開口構造としては、一又は複数の実施形態において、三次元組織体の外部から開口構造を通じて管状構造内に液体及び物質等を導入可能な構造、及び/又は、管状構造内の液体及び物質等を開口構造を通じて三次元組織体の外部に排出可能な構造等が挙げられる。本開示の三次元組織体において、三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成された少なくとも1対の開口構造は、管状構造によって連通している。
本開示において「分岐した管状構造」とは、1又は複数の分岐部を有し、三次元組織体内に形成された中空の管状構造をいう。分岐した管状構造は、一又は複数の実施形態において、毛細血管網様構造又はリンパ管網様構造ともいうことができる。管状構造の壁面は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞又はリンパ管細胞を含み、実質的に血管内皮細胞又はリンパ管細胞によって構成されていることが好ましい。三次元組織体の物質透過性を向上させ、かつ、より生体内に近い環境で評価等を行うことができる点から、管状構造は、一又は複数の実施形態において、三次元組織体の厚み方向に連通するように形成されており、好ましくは三次元組織体内に毛細血管網やリンパ管網のように網目状に形成されている。
本開示の三次元組織体において、管状構造が三次元組織体を連通して三次元組織体の外部に接続可能となり、三次元組織体の物質透過性を向上させ、かつ、より生体内に近い環境で評価等を行うことができる点から、開口構造は、一又は複数の実施形態において、三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成され、創薬スクリーニング等の評価を容易に行うことができる点から、三次元組織体の最表層及び最下層にそれぞれ形成されていることが好ましい。
開口構造は、三次元組織体の物質透過性を向上させ、かつ、より生体内に近い環境で評価等を行うことができる点から、一又は複数の実施形態において、1つの面に複数個形成されていることが好ましい。開口構造の大きさは、管状構造の径と同程度であればよく、一又は複数の実施形態において、5〜100μmであり、生体の毛細血管と類似の観点では、5〜15μm又は5〜10μmが好ましい。開口構造の大きさは、共焦点レーザー顕微鏡観察により求めることができる。
本開示の三次元組織体は、細胞が細胞外マトリックスを介して三次元に配置されている。本開示において「三次元に細胞を配置された」とは、細胞が、細胞がマトリックス成分を介して三次元的に積み重ねられていることをいい、好ましくは細胞層が複数層積層されていることをいう。「細胞層が複数層積層されている」とは、一又は複数の実施形態において、細胞層が単層の細胞集積体ではないことをいう。
本開示において「細胞外マトリックス成分」とは、生体内で細胞の外の空間を充填して骨格的役割、足場を提供する役割、及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たす物質をいう。また、細胞外マトリックス成分は、さらに、in vitro細胞培養において骨格的役割、足場を提供する役割及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たしうる物質を含んでもよく、また人工的に合成された物質やその一部を含んでもよい。細胞外マトリックス成分としては、後述の例又は特許49419464号及び特開2012-115254号に開示のものが使用できる。
本開示の三次元組織体は、一又は複数の実施形態において、細胞を含む。本開示の三次元組織体に含まれる細胞としては、一又は複数の実施形態において、細胞集積体を形成する細胞と、管状構造を形成する細胞等が挙げられる。細胞集積体を形成する細胞としては、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞、肝ガン細胞等のがん細胞、上皮細胞、神経細胞、心筋細胞、肝細胞、組織幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。管状構造を形成する細胞としては、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞、及びリンパ管内皮細胞等が挙げられる。細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外に由来の細胞であってもよい。細胞は、一又は複数の実施形態において、胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞等の由来の細胞であってもよい。細胞は、一又は複数の実施形態において、培養細胞であってもよい。培養細胞としては、一又は複数の実施形態において、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等が挙げられる。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上であってもよい。
[三次元組織体の製造方法]
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法(以下、「本開示の三次元組織体の製造方法」ともいう)に関する。本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体を培養して前記細胞集積体表面に開口構造を形成し、かつ前記細胞集積体内に前記開口構造と連結する管状構造を形成することを含む。また、本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、基材上に血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記細胞集積体上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を、最表層として培養することを含む。本開示の三次元組織体の製造方法によれば、本開示の三次元組織体を簡単に製造することができる。
本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を含む細胞が三次元に配置された細胞集積体の上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、その状態で細胞培養を行うことを含む。これにより、細胞集積体の表面に開口構造が形成され、かつ細胞集積体の内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造が形成された三次元組織体を製造することができる。
本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において細胞集積体上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を、最表層として培養することを含む。本開示において「最表層として培養」とは、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を最後に播種し、その状態で一定期間培養を行うこと、又は血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を細胞集積体上に播種した後、その他の細胞を播種することなく一定期間培養することを含む。本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を最後に播種し、その状態で一定期間培養を行うことを含む。また、本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を細胞集積体上に播種した後、その他の細胞を播種することなく、一定期間培養することを含む。血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が細胞集積体上に配置された状態での培養は、一又は複数の実施形態において、1日間以上、2日間以上又は3日間以上であり、また7日間以下又は5日間以下である。
細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、細胞集積体上に配置される血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞により形成される細胞層と、細胞集積体の血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞により形成される細胞層とが、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置することによって形成された細胞積層物を挟み込んだ形態となるように、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と被覆細胞とを配置する培養することにより行う(サンドイッチ型)。また、細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と被覆細胞との混合物を基材上に配置して培養することにより行う(ミクスチャー型)。細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、サンドイッチ型とミクスチャー型を組み合わせて行ってもよい。
〔サンドイッチ型〕
細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置することを含む。細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、さらに、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞の配置、及び被覆細胞の配置を繰返し行ってもよい。
また、細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、基材上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、三次元に配置された被覆細胞上に血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び被覆細胞上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置することを含む。細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、さらに、被覆細胞の配置、及び血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞の配置を繰返し行ってもよい
〔ミクスチャー型〕
細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞との混合物を三次元に配置することを含む。
細胞集積体の形成は、一又は複数の実施形態において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞の配置、及び被覆細胞の配置を行った後、培養を行うことを含む。
基材は、一又は複数の実施形態において、多孔質膜を有する。基材としては、一又は複数の実施形態において、トランスウェル(登録商標)、及びセルカルチャーインサート(商品名)等が挙げられる。多孔質膜の孔径は、一又は複数の実施形態において、0.1μm以上又は0.4μm以上であり、基材に接する面に開口構造がより形成されやすくなる点から、3μm以上、5μm以上又は8μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上であり、細胞が基材に十分に保持される観点から8μm以下である。
本開示において「被覆細胞」とは、細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜(以下、「細胞外マトリックス膜」ともいう)とを有する。細胞外マトリックス膜は、一又は複数の実施形態において、上述の細胞外マトリックス成分を1種類又は2種類以上含む。細胞外マトリックス膜は、一又は複数の実施形態において、物質A、及び物質Aと相互作用する物質とを含んでいてもよく、好ましくは物質Aを含む膜と物質Aと相互作用する物質Bを含む膜とを含む。物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、RGD配列を有するタンパク質又は高分子(以下、「RGD配列を有する物質」ともいう)とRGD配列を有するタンパク質又は高分子と相互作用するタンパク質又は高分子(以下、「相互作用を有する物質」ともいう)との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質又は高分子(以下、「正の電荷を有する物質」ともいう)と負の電荷を有するタンパク質又は高分子(以下、「負の電荷を有する物質」ともいう)との組み合わせが挙げられる。細胞としては、上述のものが挙げられる。被覆細胞は、一又は複数の実施形態において、特開2012-115254号公報に開示された方法を参酌して調製ことができる。
本開示の三次元組織体の製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の三次元組織体を製造することを含む。
本開示は、一又は複数の実施形態において、細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成することを含む三次元組織体の製造方法に関する。本実施形態の製造方法によれば、三次元組織体の最下層(基材に面する細胞層)に少なくとも開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する三次元組織体を製造することができる。本実施形態の製造方法において、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞の配置、細胞集積体の形成、及び基材等は、上述の通りである。
[評価方法]
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の三次元組織体を用いた被検物質を評価する方法(以下、「本開示の評価方法」ともいう)に関する。本開示の評価方法は、前記被検物質を、三次元組織体の開口構造を有する表面に接触させること、及び、被検物質の接触による被検物質による三次元組織体への影響を観察することを含む。本開示の評価方法によれば、一又は複数の実施形態において、従来の方法と比較して生体に近い環境で被検物質の評価を行うことができるという効果を奏しうる。本開示の評価方法は、一又は複数の実施形態において、新薬の創出(スクリーニング)等における各種分子量の薬物の動態評価、化粧品や医薬部外品等の開発における評価において極めて有用なツールとなりうる。
[キット]
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示の三次元組織体と、三次元組織体が配置された培養基材と、記基材を配置可能な培養容器とを含むキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットによれば、一又は複数の実施形態において、本開示の評価方法をより簡便に行うことができる。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、所定の検査に用いる試薬、材料、用具、及び装置、並びに、その評価についての説明書(取扱説明書)の少なくとも1つを含む製品をさらに含んでいてもよい。
以下に、本開示の三次元組織体の製造方法を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
まず、ディッシュ(ウェル)内に配置されたセルカルチャーインサートのメンブレンフィルター上に、血管内皮細胞を播種する。血管内皮細胞は、一又は複数の実施形態において、単層の血管内皮細胞が形成されるように播種すればよい。播種時の血管内皮細胞の密度は、一又は複数の実施形態において、1×102〜1×109個/cm2、1×104〜1×108個/cm2、又は1×105〜1×107個/cm2である。培養は、一又は複数の実施形態において、ディッシュ内に培地を添加して行う。培地は、一又は複数の実施形態において、Eagle's MEM培地、Dulbecco's Modified Eagle培地(DMEM)、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RDMI、及びGlutaMax培地等が挙げられる。培地は、一又は複数の実施形態において、血清を添加した培地であってもよいし、無血清培地であってもよい。培養温度は、一又は複数の実施形態において、4〜60℃、20〜40℃、又は30〜37℃である。培養時間は、一又は複数の実施形態において、1〜24時間、又は6〜24時間である。
血管内皮細胞の播種に先立ち、メンブレンフィルター表面に細胞外マトリックス成分を含む膜を形成してもよい。細胞外マトリックス成分を含む膜の形成は、一又は複数の実施形態において、生体外マトリックス成分を含む溶液をメンブレンフィルターに塗布、滴下、及び含浸等させることにより行うことができる。溶液における細胞外マトリックス成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、0.0001〜1質量%、0.01〜0.5質量%、又は0.02〜0.1質量%である。溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び緩衝液等の水性溶媒が挙げられる。緩衝液としては、一又は複数の実施形態において、Tris-HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、グリシルグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、Britton-Robinson緩衝液、又はGTA緩衝液等が挙げられる。溶液のpHは、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、3〜11、6〜8又は7.2〜7.4である。
ついで、細胞外マトリックス膜で被覆された線維芽細胞(被覆線維芽細胞)を、血管内皮細胞層上に播種し、培養する。被覆線維芽細胞の播種は、一又は複数の実施形態において、被覆細胞が三次元的に積み重ねられた状態となるように行う。播種時の被覆細胞の密度は、一又は複数の実施形態において、一又は複数の実施形態において、1×102〜1×109個/cm3、1×104〜1×108個/cm3又は1×105〜1×107個/cm3である。培地及び培養条件は上述の通りである。被覆線維芽細胞における細胞外マトリックス膜の厚みは、一又は複数の実施形態において、1〜1×103nm又は2〜1×102nmである。
被覆線維芽細胞は、一又は複数の実施形態において、物質Aを含む溶液(溶液A)と、物質Bを含む溶液(溶液B)とを、線維芽細胞に交互に接触させることにより調製することができる。溶液A及び溶液Bにおける物質A及びBの含有量及び緩衝液は、上記のメンブレンフィルター上への膜形成と同様である。
ついで、血管内皮細胞の播種及び培養と、被覆繊維芽細胞の播種及び培地とを交互に繰返し行う。これにより、より緻密なネットワークを有する毛細血管様構造が三次元組織体内に形成される。
ついで、上述の手順で形成された細胞積層体上に、血管内皮細胞を播種し、血管内皮細胞が最表層に位置した状態で培養を行う。これにより、最下層と最表層とにそれぞれ開口構造が形成され、最下層と最表層とに形成された開口構造が毛細血管様構造によって連通した三次元組織体が形成される。播種する細胞の密度、培地及び培養温度は上述の通りである。培養期間は、一又は複数の実施形態において、1日間以上、2日間以上、又は3日間以上であり、また7日間以下又は5日間以下である。
上記実施形態は、血管内皮細胞と被覆された線維芽細胞を用いて三次元組織体を作製する形態を例にとり説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。リンパ管内皮細胞を用いた場合、及び血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞とを用いた場合であっても、上記実施形態を参酌して同様に製造でき、その他の被覆細胞を用いた場合であっても同様に製造できる。
以下に、細胞外マトリックス成分として記載したRGD配列を有する物質、相互作用を有する物質、正の電荷を有する物質、及び負の電荷を有する物質について、例を挙げて説明する。
(RGD配列を有する物質)
RGD配列を有する物質とは、細胞接着活性を担うアミノ酸配列である「Arg−Gly−Asp」(RGD)配列をするタンパク質又は高分子をいう。本明細書において「RGD配列を有する」とは、元来RGD配列を有するものでもよいし、RGD配列が化学的に結合されたものでもよい。RGD配列を有する物質は、一又は複数の実施形態において、生分解性である。
RGD配列を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、従来公知の接着性タンパク質、又はRGD配列を有する水溶性タンパク質等が挙げられる。接着性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、又はコラーゲン等が挙げられる。RGD配列を有する水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、RGD配列を結合させたコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、グロブリン、プロテオグリカン、酵素、又は抗体等が挙げられる。
RGD配列を有する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。RGD配列を有する合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、又はポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。
RGD配列を有する物質は、これらの中でも、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、ポリリジン、エラスチン、RGD配列を結合させたコラーゲン、RGD配列を結合させたゼラチン、キチン、又はキトサンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、ポリリジン、RGD配列を結合させたコラーゲン、又はRGD配列を結合させたゼラチンである。
(相互作用する物質)
相互作用する物質とは、RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質若しくは高分子をいう。本明細書において「相互作用する」とは、一又は複数の実施形態において、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、共有結合形成、タンパク質間の特異的相互作用、及び又はファンデルワールス力等によって化学的及び又は物理的にRGD配列を有する物質と相互作用する物質とが結合、接着、吸着又は電子の授受が可能な程度に近接することを意味する。相互作用する物質は、生分解性であることが好ましい。
RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、又は抗体等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、エラスチン、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はデキストラン硫酸等の糖、及びヒアルロン酸等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、一又は複数の実施形態において、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリリジン、ポリグルタミン酸、又はポリアスパラギン酸等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、上述のRGD配列を有する合成高分子として例示したものが挙げられる。
相互作用する物質は、これらの中でも、ゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、グロブリン、アルブミン、ポリグルタミン酸、コラーゲン、又はエラスチンが好ましく、より好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、又はコラーゲン、さらに好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、又はヒアルロン酸である。
RGD配列を有する物質と相互作用する物質との組み合わせは、特に制限されず、相互作用する異なる物質の組み合わせであればよく、いずれか一方がRGD配列を含む高分子又はタンパク質であり、他方がこれと相互作用する高分子又はタンパク質であればよい。RGD配列を有する物質と相互作用を有する物質との組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、フィブロネクチンとコラーゲン、ラミニンとゼラチン、ラミニンとコラーゲン、ポリリジンとエラスチン、ビトロネクチンとコラーゲン、RGD結合コラーゲン又はRGD結合ゼラチンとコラーゲン又はゼラチン等が挙げられる。中でも、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、又はラミニンとゼラチンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチンとゼラチンである。なお、RGD配列を有する物質及び相互作用を有する物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
(正の電荷を有する物質)
正の電荷を有する物質とは、正の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。正の電荷を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、塩基性コラーゲン、塩基性ゼラチン、リゾチーム、シトクロムc、ペルオキシダーゼ、又はミオグロビン等が挙げられる。正の電荷を有する高分子としては、一又は複数の実施形態において、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、一又は複数の実施形態において、ポリ(α−リジン)、ポリ(ε−リジン)等のポリリジン、ポリアルギニン、又はポリヒスチジン等が挙げられる。合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
(負の電荷を有する物質)
負の電荷を有する物質とは、負の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。負の電荷を有するタンパク質としては、一又は複数の実施形態において、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、一又は複数の実施形態において、酸性コラーゲン、酸性ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カタラーゼ、β−ラクトグロブリン、チログロブリン、α−ラクトアルブミン、又は卵白アルブミン等が挙げられる。負の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、一又は複数の実施形態において、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリ(βリジン)等のポリアミノ酸、又はデキストラン硫酸等が挙げられる。合成高分子としては、一又は複数の実施形態において、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、末端カルボキシ化ポリエチレングリコール、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミン塩、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
正の電荷を有する物質と負の電荷を有する物質との組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、ε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、ε−ポリリジンとポリスルホン酸塩、キトサンとデキストラン硫酸、ポリアリルアミンハイドロクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩等が挙げられ、好ましくはε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩である。ポリスルホン酸塩としては、一又は複数の実施形態において、ポリスルホン酸ナトリウム(PSS)等が挙げられる。なお、正の電荷を有する物質及び負の電荷を有する物質は、それぞれ、一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
〔1〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体であって、
前記三次元組織体は、表面に少なくとも1つの開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する、三次元組織体。
〔2〕 前記開口構造は、前記三次元組織体の上部表面に形成されている、〔1〕記載の三次元組織体。
〔3〕 前記開口構造は、前記三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の三次元組織体。
〔4〕 前記三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成された少なくとも1対の開口構造が、前記管状構造によって連通している、〔3〕記載の三次元組織体。
〔5〕 前記管状構造は、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群から選択される少なくとも一つを含む、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の三次元組織体。
〔6〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、
前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体を培養して前記細胞集積体表面に開口構造を形成し、かつ前記細胞集積体内に前記開口構造と連通した管状構造を形成すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
〔7〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、
前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
前記細胞集積体上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を、最表層として培養すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
〔8〕 前記三次元組織体は、表面に少なくとも1つの開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する、〔7〕記載の製造方法。
〔9〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
〔10〕 前記細胞集積体の形成は、
前記基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、を含む、〔6〕から〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕 前記細胞集積体の形成は、
前記基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、
前記三次元に配置された被覆細胞上に血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
被覆細胞上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置することを含む、〔6〕から〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔12〕 前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体の培養は、前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を最表層として行う、〔6〕から〔11〕のいずれかに記載の製造方法。
〔13〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、
前記被覆細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、
前記被覆細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が最表層に配置された状態で、培養を行うことを含む、三次元組織体の製造方法。
〔14〕 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること(工程a)、
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること(工程b)、
前記被覆細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること(工程c)、及び
前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が最表層に配置された状態で、培養を行うこと(工程d)を含む、三次元組織体の製造方法。
〔15〕 工程bと工程cとの間において、被覆細胞の配置と、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞の配置を交互に1回又は2回以上行うこと、〔14〕記載の製造方法。
〔16〕 前記基材は、多孔質膜を含む、〔6〕から〔12〕のいずれかに記載の製造方法。
〔17〕 〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の三次元組織体を製造することを含む、〔6〕から〔16〕のいずれかに記載の三次元組織体の製造方法。
〔18〕 〔6〕から〔17〕のいずれかに記載の三次元組織体の製造方法により製造されうる、三次元組織体。
〔19〕 〔1〕から〔5〕及び〔18〕のいずれかに記載の三次元組織体と、
前記三次元組織体が配置された培養基材と、
前記基材を配置可能な培養容器と、を含むキット。
〔20〕 三次元組織体を用いた被検物質を評価する方法であって、
前記三次元組織体は、〔1〕から〔5〕及び〔18〕のいずれかに記載の三次元組織体であり、
前記被検物質を、前記三次元組織体の開口構造を有する表面に接触させること、及び
前記被検物質の接触による被検物質による三次元組織体への影響を観察することを含む、評価方法。
以下に、実施例を用いて本開示をさらに説明する。但し、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
なお、本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
50mM Tris-HCl(pH7.4):HCl(Nacalai Tesque社製)でpH7.4に調整した50mM Trisを、0.2μm γ-ray sterile filter(倉敷紡績株式会社製)で滅菌濾過したもの
BFN:Fibronectin from bovine plasma(SIGMA製)
BFN溶液:0.04mg BFN/1ml 50mM Tris-HCl(pH7.4)
Gelatin溶液:0.04mg Gelatin/1ml 50mM Tris-HCl(pH7.4)を、0.2μm γ-ray sterile filter(倉敷紡績株式会社製)で滅菌濾過したもの
DMEM培地:10wt% FBS(GIBCO社製)を含むDulbecco's eagle's medium(SIGMA社製)
(実施例1)
[被覆細胞の作製]
NHDF被覆細胞の作製
NHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞、CAMBREX社製)を培地(DMEM、Invitrogen社製)で培養し、トリプシン処理(0.25%トリプシン、0.02%EDTA)(37℃、20分間)して細胞を回収した。回収したNHDFを1×106cell/mlの濃度でBFN溶液に分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(FN浸漬操作)。ついで、上澄みを除き、50 mM Tris-HCl(pH=7.4)溶液を加え、細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(洗浄操作)。上澄みを除き、Gelatin溶液に細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら、1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行い(G浸漬操作)、ついで洗浄操作を行った。そして、FN浸漬操作、洗浄操作、G浸漬操作、及び洗浄操作をこの順番で行った。FN浸漬操作及びG浸漬操作は洗浄操作とそれぞれセットで1ステップとし、最終的に、FN浸漬操作を5回、G浸漬操作を4回、計9ステップ行うことによってNHDF被覆細胞を作製した(ECM被膜の厚み:6nm)。
[三次元組織体の作製]
24ウェル培養プレートに配置したインサート(コーニング社製、ポアサイズ:0.4μm)にBFN溶液を添加し15分インキュベートすることでインサート表面にFNをーティングした。7×104個のHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞、Lonza社製)を播種し、DMEM培地を添加して37℃で12〜24時間培養した。ついで、その上に4×105個のNHDF被覆細胞を播種し、37℃で12〜24時間培養した。その上にBFN溶液とGelatin溶液とを交互に1回ずつ加えてNHDF層上にFN-G膜を形成した後、7×104個のHUVECの播種及び培養(37℃12〜24時間)、4×105個のNHDF被覆細胞の播種及び培養(37℃12〜24時間)、並びにFN-G膜の形成を行った。ついで、その上に7×104個のHUVECを播種した後、37℃で2日間培養して三次元組織体を得た(厚み:60μm)。得られた三次元組織体をパラホルムアルデヒドで固定した後、HUVECを抗CD31抗体、核を4'6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色し、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)にて観察した。その結果を図1に示す。
図1は、得られた三次元組織体の構造を説明するための模式図及び画像であって、図1Aは得られた三次元組織体の構造を説明するための説明図、図1Bは得られた三次元組織体の構造を説明するためのZY平面の断面模式図、図1Cは最表層のCLSM画像、図1Dは中間層のCLSM画像、図1EはZY平面のCLSM画像、並びに図1FはZY平面のHE(hematoxylin-eosin)染色画像を示す。図1C及びDにおいて、開口構造(又は管状構造)の一部を矢印で示す。図1C〜Fに示すように、得られた三次元組織体は、内部にCD31陽性の毛細血管様構造が明確に確認された。さらに、三次元組織体の最表層に開口構造(大きさ:10〜30μm)が形成されていることが確認できたと共に、最表層に形成された開口構造が、内部に形成された毛細血管様構造によって接続していることが確認できた。つまり、得られた三次元組織体は、外部に接続した構造を有する毛細血管様ネットワークが形成されていることが確認できた。開口構造の大きさは、共焦点レーザー顕微鏡観察により求めた。
(実施例2)
ポアサイズが8μmのインサート(コーニング社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして三次元組織体(厚み:60μm)を作製し、CLSMにて観察した。その結果を図2に示す。図2は、得られた三次元組織体のCLSM画像であって、図2Aは最表層のCLSM画像、図2Bは中間層のCLSM画像、及び図2Cは最下層のCLSM画像である。
図2A〜Cに示すように、得られた三次元組織体は、内部にCD31陽性の毛細血管様構造が明確に確認された。さらに、三次元組織体の最表層及び最下層にはそれぞれ開口構造(大きさ:10〜30μm)が形成されていることが確認できたと共に、最表層と最下層とに形成された開口構造が、内部に形成された毛細血管様構造によって連通していることが確認できた。つまり、得られた三次元組織体は、最表層から最下層まで連通する毛細血管様ネットワークが形成されていることが確認できた。
(比較例1)
実施例1と同様のインサートを使用し、その上に4×105個のNHDF被覆細胞を播種し、DMEM培地を添加して37℃で12〜24時間培養した。その上にBFN溶液とGelatin溶液とを交互に1回ずつ加えてNHDF層上にFN-G膜を形成した後、7×104個のHUVECの播種及び培養(37℃12〜24時間)、及び4×105個のNHDF被覆細胞の播種及び培養(37℃2日間)を行い、三次元組織体を得た。得られた三次元組織体を実施例1と同様にしてCLSMにて観察した。その結果を図3に示す。図3AはZY平面のCLSM画像、図3Bは中間層のCLSM画像を示す。
図3A及びBに示すように、得られた三次元組織体は内部にCD31陽性の毛細血管様構造が明確に確認されたものの、最表層及び最下層に開口構造は形成されていなかった。つまり、比較例1の三次元組織体に形成された毛細血管様構造は、三次元組織体の外部との接続はなく、末端が閉じた構造であった
(実施例3)
実施例2と同様のインサートを使用し、その上に7×104個のHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞、Lonza社製)を播種し、DMEM培地を添加して37℃で12〜24時間培養した。ついで、その上に4×105個のNHDF被覆細胞を播種し、37℃で12〜24時間培養した。その上にBFN溶液とGelatin溶液とを交互に1回ずつ加えてNHDF層上にFN-G膜を形成した後、7×104個のHUVECを播種し、37℃で2日間培養して三次元組織体を得た。得られた三次元組織体を、実施例1と同様にしてCLSMによる観察を行ったところ、得られた三次元組織体は、実施例2の三次元組織体と同様に、内部にCD31陽性の毛細血管様構造が明確に確認された。さらに、三次元組織体の最表層及び最下層にはそれぞれ開口構造が形成されていることが確認できたと共に、最表層と最下層とに形成された開口構造が、内部に形成された毛細血管様構造によって連通していることが確認できた。
[毛細血管様構造の孔径の測定]
実施例2の三次元組織体について、最表層、中間層(最表層から深さ20μmの位置)及び最下層(最表層から深さ60μmの位置)のそれぞれにおける毛細血管様構造の孔径の測定を行った。測定は、共焦点レーザー顕微鏡観察により行った。その結果を図4Aに示す。また、比較例1の三次元組織体について、同様の方法で、中間層(最表層から深さ20μmの位置)における毛細血管様構造の孔径の測定を行った。その結果を図4Aに示す。
図4Aは、三次元組織体における毛細血管様構造の孔径を示すグラフである。図4Aに示すように、実施例2の三次元組織体に形成された毛細血管様構造の孔径は、いずれの測定箇所でも生体内の毛細血管の内径と同程度又はそれ以上であった。
実施例2の三次元組織体の中間層における、XY平面に対して直交する方向及び平行方向での毛細血管様構造の孔径を測定した。その結果を図4Bに示す。図4Bは、三次元組織体における毛細血管様構造の孔径を示すグラフである。図4Bに示すように、実施例2の三次元組織体において、縦方向に形成された毛細血管様構造は、組織表面に対して平行(横方向)に形成された毛細血管様構造よりも大きな孔径を有していた。
[物質透過性の評価(その1)]
実施例2の三次元組織体を用いて、三次元組織体に形成された毛細血管様構造における物質透過性の評価を行った。評価は、三次元組織体の最表層に1mg/mL FITC dextran 250k(FD250k)(粒径:11nm)のPBS液を添加し、CLSMで観察することにより行った。その画像の一例を図5に示す。図5AはFD250k添加前の中間層のCLSM画像であり、図5Bは添加から約10分経過後の中間層のCLSM画像である。図5A及びBに示すように、FD250kは、三次元組織体における毛細血管様構造の内部に選択的に拡散し、局在化していることが確認できた。これにより、最表層に開口構造を有する実施例2の三次元組織体においてFD250kは、三次元組織体の表面からランダムに発生する単純拡散ではなく、最表層の開口構造を通じて毛細血管様構造内に透過したことが確認できた。また、添加から10分経過した時点で、FD250kは三次元組織体の最下層に到達し、最下層の開口構造から外部に排出されていることが確認できた。これらにより、最表層を覆うHUVEC及び毛細血管様構造を構成するHUVECが、緻密な細胞間結合であるタイトジャンクションを形成することが示唆された。
[物質透過性の評価(その2)]
実施例2及び3並びに比較例1の三次元組織体を用いて、三次元組織体に形成された毛細血管様構造における物質透過性の評価を透過率の測定により行った。評価は、三次元組織体の最表層に1mg/mL FITC dextran 70k(FD70k)(粒径:4nm)のPBS液を添加し、添加から1、2、6(又は18)、及び12時間経過後にインサートを配置したウェル内の蛍光強度を測定し、得られた蛍光強度から透過率を算出することにより行った。その結果を図6に示す。また、FD70kの透過の様子をCLSMにより観察した。
また、比較例2として、実施例1と同様のインサートを使用し、その上に8×105個のNHDF被覆細胞を播種し、DMEM培地を添加して37℃で2日間培養して三次元組織体を作製した。得られた三次元組織体を実施例1と同様にパラホルムアルデヒドで固定し、それを用いて上記と同様の透過率の測定を行った。その結果を図6に示す。
図6は、FD70k添加からの経過時間と透過率との関係を示すグラフである。透過率は、インサートのみの場合の透過率を100%とした場合の透過率を示す。図6に示すように、実施例2及び3の三次元組織体は、いずれの時間帯でも比較例1及び2の三次元組織体と比較して高い透過率を示した。特に、実施例2の三次元組織体は、24時間経過後の時点で36%と高い透過率を示した。
最表層に開口構造を有する実施例2及び3の三次元組織体では、FD70kは、三次元組織体における毛細血管様構造の内部に選択的に拡散し、局在化していることが確認できた。これにより、実施例2及び3の三次元組織体においてFD70kは、三次元組織体の表面からランダムに発生する単純拡散ではなく、最表層の開口構造を通じて毛細血管様構造内に透過したことが確認できた。
[物質透過性の評価(その3)]
実施例2の三次元組織体を用いて、三次元組織体に形成された毛細血管様構造におけるマイクロ粒子の透過性の評価をした。評価は、三次元組織体の最表層にマイクロ粒子(粒径:4μm)含有液(1.8×105個/mL)0.1mLを添加し、37℃で1日間静置した後、三次元組織体の最表層にPBS0.2mLを添加して洗浄し、洗浄後の毛細血管様構造内をCLSMで観察することにより行った。その画像の一例を図7に示す。図7Aはマイクロ粒子添加前の中間層のCLSM画像であり、図7Bは洗浄後の中間層のCLSM画像である。図7Bに示すように、マイクロ粒子は、三次元組織体における毛細血管様構造の内部に選択的に拡散し、局在化していることが確認できた。これにより、最表層に開口構造を有する実施例2の三次元組織体においてマイクロ粒子は、FD250kと同様に、三次元組織体の表面からランダムに発生する単純拡散ではなく、最表層の開口構造を通じて毛細血管様構造内に透過したことが確認できた。
[物質透過性の評価(その4)]
実施例2の三次元組織体を用いて、三次元組織体に形成された毛細血管様構造における物質透過性の評価をした。評価は、共焦点レーザー顕微鏡観察にて行った。その画像の一例を図8に示す。図8は赤血球添加後のCLSM画像である。図8に示すように、赤血球は、三次元組織体における毛細血管様構造の内部に選択的に拡散し、局在化していることが確認できた。これにより、最表層に開口構造を有する実施例2の三次元組織体においてヒト赤血球は、三次元組織体の表面からランダムに発生する単純拡散ではなく、最表層の開口構造を通じて毛細血管様構造内に透過したことが確認できた。
(実施例4)
実施例2と同様にして作製した三次元組織体を、37℃でさらに1、2、3又は4日間培養したものを用い、三次元組織体におけるFD70kの透過率を評価した。なお、NHDFはCelltracker Greenを用いて染色した。その結果を図9に示す。図9Aは培養1日目の中間層のCLSM画像、図9Bは培養2日目の中間層のCLSM画像、図9Cは培養3日目の中間層のCLSM画像、図9Dは培養日数と透過率との関係を示すグラフである。図9Dに示すように、いずれの培養日数においても同程度の透過率を示し、培養日数による透過率の変化はほとんど見られなかった。

Claims (14)

  1. 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
    基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、
    前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
    前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体を培養して前記細胞集積体表面に開口構造を形成し、かつ前記細胞集積体内に前記開口構造と連結する管状構造を形成すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
  2. 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
    基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、
    前記細胞集積体上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
    前記細胞集積体上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を、最表層として培養すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
  3. 前記三次元組織体は、表面に少なくとも1つの開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する、請求項記載の製造方法。
  4. 細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置された三次元組織体の製造方法であって、
    基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
    前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞と、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞とを配置して細胞が三次元に配置された細胞集積体を形成すること、を含む、三次元組織体の製造方法。
  5. 前記細胞集積体の形成は、
    前記基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
    前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、を含む、請求項からのいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記細胞集積体の形成は、
    前記基材上に、血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、
    前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に、細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置すること、
    前記三次元に配置された被覆細胞上に血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を配置すること、及び
    被覆細胞上に配置された血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞上に細胞外マトリックス成分を含む被膜で被覆された被覆細胞を三次元に配置することを含む、請求項からのいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞が配置された細胞集積体の培養は、前記血管内皮細胞及び/又はリンパ管内皮細胞を最表層として行う、請求項からのいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記基材は、多孔質膜を含む、請求項からのいずれかに記載の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の製造方法により製造される三次元組織体であって、
    細胞と細胞外マトリックス成分とを含み、前記細胞が三次元に配置され
    前記三次元組織体は、上部表面に少なくとも1つの開口構造を有し、かつ、内部に前記開口構造と連結する分岐した管状構造を有する、三次元組織体。
  10. 前記開口構造は、前記三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成されている、請求項9に記載の三次元組織体。
  11. 前記三次元組織体の厚み方向の面にそれぞれ形成された少なくとも1対の開口構造が、前記管状構造によって連通している、請求項10に記載の三次元組織体。
  12. 前記管状構造は、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項9から11のいずれかに記載の三次元組織体。
  13. 請求項から12のいずれかに記載の三次元組織体と、
    前記三次元組織体が配置された培養基材と、
    前記基材を配置可能な培養容器と、を含むキット。
  14. 三次元組織体を用いた被検物質を評価する方法であって、
    前記三次元組織体は、請求項から12のいずれかに記載の三次元組織体であり、
    前記被検物質を、前記三次元組織体の開口構造を有する表面に配置すること、及び
    前記被検物質を配置したことによって被検物質による三次元組織体への影響を観察することを含む、評価方法。
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