本願で開示する加熱調理器は、加熱室と、前記加熱室内に配置され、被調理物が載置される非金属製の加熱プレートと、前記加熱プレートを加熱する加熱手段と、前記加熱プレートの温度を検出する温度センサと、前記温度センサが検出した前記加熱プレートの温度データに基づいて、前記加熱手段への投入電力量を制御する制御部とを備え、前記加熱手段として、前記加熱室の上部に前記加熱プレートに対向するように配置された上部加熱ヒータと、前記加熱プレートの下方であって、前記加熱室の底部を構成するヒータ支持板上に配置された下部加熱ヒータとを有し、前記温度センサとして、前記加熱プレートの異なる領域の温度を検出する少なくとも2つの温度センサを備える。
本開示にかかる加熱調理器は、上記の構成を備えることで、2つの異なる温度センサによって加熱プレートの異なる領域の温度を同時に把握することができ、得られた加熱プレートの温度データに基づいて、制御部が上部加熱ヒータと下部加熱ヒータとに投入される投入電力量を制御して、加熱プレートの温度をより均一な状態に維持することができる。この結果、予熱時と加熱調理時とのいずれにおいても、加熱プレートの温度を所望の状態として、早く、かつ、ムラ無く、被調理物を調理することができる加熱調理器を得ることができる。
本開示にかかる加熱調理器において、前記温度センサが、調理中に前記下部加熱ヒータから供給される熱量が多い前記加熱プレートの領域の温度を検出する第1の温度センサと、調理中に前記下部加熱ヒータから供給される熱量が少ない前記加熱プレートの領域の温度を検出する第2の温度センサとを含むことが好ましい。このようにすることで、下部加熱ヒータから供給される熱量の多少に応じた加熱プレートの温度変化を正確に検出でき、加熱プレートの正確な温度制御を実現することができる。
また、前記下部加熱ヒータが環状ヒータとして構成され、前記第1の温度センサが前記環状ヒータの内側に位置する前記加熱プレートの温度を検出し、前記第2の温度センサが前記環状ヒータの外側に位置する前記加熱プレートの温度を検出することが好ましい。このようにすることで、ピザなどの円形状の被調理物により好適に対応した加熱プレートの温度制御を効率よく行うことができる。
さらに、前記ヒータ支持板は、底面と前記底面の周囲を取り囲むように形成された側壁部とを有し、前記加熱プレートは、前記ヒータ支持板の前記側壁部の上端部にその裏面が当接するように載置されて、前記ヒータ支持板と前記加熱プレートによって閉鎖空間である下部加熱空間が形成され、前記下部加熱ヒータが、前記ヒータ支持板の前記底面および前記加熱プレートの前記裏面のいずれに対しても所定の間隙を介して前記下部加熱空間内に配置されていることが好ましい。このようにすることで、下部加熱ヒータの熱量が下部加熱空間内の空気を介して輻射熱として加熱プレートに伝わるため、加熱プレートの温度分布のムラを低減することができる。
さらにまた、前記ヒータ支持板の前記下部加熱ヒータが配置されている部分の周囲に、前記底面から立設したヒータ周囲壁部が形成され、前記ヒータ周囲壁部の上端と前記ヒータ支持板上に載置された前記加熱プレートの前記裏面との間に所定の間隔が形成されていることがより好ましい。このようにすることで、加熱プレート中央部分の領域をより多くの熱量によって加熱することができる。
以下、本願で開示する加熱調理器について、図面を参照して説明する。
(実施の形態)
以下では、本願で開示する加熱調理器の実施の形態として、被調理物としてピザを焼くことができる業務用の電気式ピザ窯を例示して説明する。なお、以下で例示する業務用の電気式ピザ窯は、ピザを一枚ずつ焼く構成のものである。
図1は、本実施形態にかかる加熱調理器の外観を示す斜視図である。図1では、被調理物を載置した加熱プレートを出し入れするための扉を、閉じた状態を示している。
図2は、本実施形態にかかる加熱調理器の外観を示す斜視図であり、被調理物を載置した加熱プレートを出し入れするための扉を開いた状態を示している。
図1に示すように、本実施形態にかかる加熱調理器である電気式ピザ窯は、図中では左手前となる正面側から(矢印Aの方向から)見た形状が、上方に向かって凸となる略半円形状(ただし、上端部分は平面状となっている)である上側部分10と、上側部分10の下方に位置する正面形状が横長長方形の基体部分20とから構成されている。本実施形態にかかる電気式ピザ窯では、奥行き方向には同じ断面形状が維持されていて、全体としては、いわゆるかまぼこ状となっている。
本実施形態にかかる電気式ピザ窯では、全体形状をこのようなかまぼこ状とすることで、上側部分10の内部に形成される加熱室の上方部分の体積を小さくすることができる。この結果、本実施形態の電気式ピザ窯では、加熱室内上部に良好な熱溜まりを形成することができ、加熱室内の温度分布の差を小さくすることができると共に、加熱調理に必要となる熱量の低減を実現することができる。
上側部分10の正面側には、図1では図示しないヒンジ機構によって正面手前下側に向かって開閉可能とされている扉11が配置されている。なお、扉11が固着されているヒンジ機構の支持部49(図4参照)は、基体部分20の前端部上面に形成されている。扉11には、上部に、ユーザが扉11の開閉の際に把持する取っ手12が形成されている。
扉11は、主としてアルミニウム合金などの金属部材で構成されているが、扉11前面の中央部分には、耐熱ガラスなどの熱に強い透明部材13が嵌め込まれていて、ユーザは、扉11を閉めた状態でも加熱室18(図2参照)内の調理途中のピザの状態を見ることができるようになっている。なお、本実施形態の電気式ピザ窯では、扉11は一例として20mm〜50mm程度の厚みを有し、透明部材13が配置された窓部以外の周辺部分では、外殻を構成する金属製部材の間にガラスウールなどの断熱材が充填されている。このように、扉11の内部に断熱材を配置することで、加熱室18内部の熱が扉11部分を介して外部に逃げてしまうことを効果的に防ぐことができる。
図2に示すように、扉11が完全に解放された状態では、扉11の内面14が、加熱室18の底面部分における加熱プレート組み立て体30の載置面15の高さよりもわずかに低い高さとなる。このためユーザは、扉11が解放された状態で、加熱プレート組み立て体30を加熱室18の底面部分に容易に出し入れすることができる。
なお、本実施形態の電気式ピザ窯では、扉11の内面14側では、透明部材17の周囲が不透明の金属プレート16で覆われていて、扉11外側から加熱室18内部の状態を確認できる範囲は、扉11内側の透明部材17の範囲のみとなっている。
図1に戻って、上側部分10の上面である天井部分には、加熱室18内部の余剰の蒸気成分などを外部へ放出する煙突14が形成されている。なお、煙突14における空気の流路が大きすぎる場合には、煙突14から排出される空気によって加熱室18内の温度が不所望に下がってしまうため、煙突14に形成されている空気流路の大きさ(流路断面積)はこのような温度低下が生じない範囲で適宜定めることが好ましい。
図1に示すように、本実施形態の電気式ピザ窯における基体部分20の正面側には、ユーザが電気式ピザ窯の操作を行い、かつ、動作状態を確認することができる操作部21が配置されている。
操作部21には、電気式ピザ窯の電源のON/OFFや調理の開始を指示したり、調理時間をセットしたりするための操作ボタンや操作ダイヤル22、電気式ピザ窯の動作状態を表示する表示ランプ23などが配置されている。なお、図1では、操作部21の構成例として、2つの操作ダイヤル22と1つの表示ランプ23のみを図示しているが、操作部21の構成はこれに限られないことはいうまでもない。操作部21の構成において、操作ダイヤル22や表示ランプ23の個数を任意に設定することができることはもちろん、他にもスライドスイッチやプッシュスイッチなどのスイッチ類、ボタン類、加熱室内の温度やタイマ調理の残り時間などの数字情報を表示するディスプレイパネルなど、電気機器の操作部として用いられる各種の操作部材、表示部材を配置することができる。
なお、本実施形態にかかる電気式ピザ窯では、操作部21に配置された操作ダイヤル22や表示ランプ23などの各種電気回路部品が搭載された操作回路基板91(図7参照)が、操作部21の内側に配置されている。また、この操作回路基板91とともに、操作部21の内部には、電気式ピザ窯全体の電源制御や動作制御を行う制御部や電源回路が搭載されたメイン回路基板92(図7参照)が配置されている。
基体部分20の側面には、基体部分20の内部と外部空間とを連通するための空気孔24が形成されている。また、基体部分20の底面側には、電気式ピザ窯全体を支える4つの脚部25が配置されている。
次に、本実施形態の電気式ピザ窯の内部の構成と本実施形態の電気式ピザ窯を構成する各部材について説明する。
図3は、本実施形態にかかる電気式ピザ窯の分解斜視図である。なお、図3では、加熱プレート(組み立て体)は省略して記載している。
図3に示すように、本実施形態にかかる電気式ピザ窯は、正面側の上部に扉11が開閉可能に固着された下部ユニット40、下部ユニット40の上面に固着されて加熱室18の側壁部分を構成する炉壁プレート50、炉壁プレート50の上部天井部分に固着されるヒータユニット60、炉壁プレート50との間にヒータユニット60を挟持するとともに下部ユニット40側面と電気式ピザ窯の背面部分を含めた全体を覆うカバープレート70、を備えている。
下部ユニット40は、偏平直方体形状の枠体として構成され、本実施形態の電気式ピザ窯の基体部分20を構成する。下部ユニット40の正面側の上端部分には、上述した扉11がヒンジ機構により回動可能に固着されている。また、下部ユニット40の正面側部分には操作部21が配置されていて、操作部21内側には、電気式ピザ窯全体の動作制御を行う制御部が搭載されている。
下部ユニット40の上面部分には、第2の加熱手段である下部加熱ヒータ41がその上面に配置されたヒータ支持板42が配置されている。
本実施形態の電気式ピザ窯では、下部加熱ヒータ41は略同心円状に配置された内側環状ヒータ41aと外側環状ヒータ41bとの2本の環状ヒータで構成されている。
ヒータ支持板42は、上方に配置される炉壁プレート50と共に加熱室18を形成し、加熱室18の底部を構成する部材である。ヒータ支持板42は、下部加熱ヒータ41が載置された底面42aと、底面42aの周囲に形成され下部加熱ヒータ41の側方部分の全周を囲む側壁部42bとで構成されている。また、ヒータ支持板42の底面42a上には、下部加熱ヒータ41が配置されている部分の周囲を囲むヒータ周囲壁部43と、第1の温度センサ44、および、第2の温度センサ45とが配置されている。なお、下部ユニット40の上面に配置された下部加熱ヒータ41とヒータ支持板42の詳細については、後に詳述する。
本実施形態で説明する電気式ピザ窯では、下部ユニット40がステンレスや鋼板等の金属材料からなる枠状の物体として構成されていて、下部ユニット40における、加熱室18の下側部分に相当する部分であるヒータ支持板42の下方部分には、空洞46が形成されている。なお、下部ユニット40の両側方と後方(奥側)とに位置する3つの側面は、いずれもカバープレート70の裾部分が外側から覆う構成となっている。
空洞46の側面部分に相当するカバープレート70の両側の裾部分には、図1を用いて説明した空気孔24が形成されている。なお、図3では現れていないが、カバープレート70の後方側の裾部分にも側方の空気孔24と同様に後方側の空気孔が形成されている。さらに、下部ユニット40の底面部材47にも多数の空気孔48が形成されている。また、カバープレート70の一方の裾部分には外気を強制的に空洞46内に送り込む空冷ファン71が形成されている。空冷ファン71によって温度の低い外気を強制的に取り込むとともに、空洞46内に空気の流れを生成することにより、下部加熱ユニット41の熱による空洞46内の温度上昇を低減することができる。この結果、空洞46に面して形成される操作部21の内側に配置された回路基板や、空洞46内に配置される下部加熱ヒータ41の端子部分やその周囲の電気配線、さらには、下部ユニット40の後方側から外部へと延出する図示しない電源コードなどの回路部品を、不所望な高温に曝される事態から保護することができる。
炉壁プレート50は、ステンレス板等の金属製のプレートであり、上方へ凸の湾曲面を形成する側方プレート部51とこの湾曲面形状を塞ぐように形成された背面プレート部52とから構成されている。側方プレート部51の下端部分には外側に延出した側方固着プレート51aが、背面プレート部52の下端部分には後方側へと延出した背面固着プレート52aが形成されていて、この側方固着プレート51aと背面固着プレート52aの下面が下部ユニット40の上面の周辺部分に対向した状態で固着される。このように、炉壁プレート50が下部ユニット40の上面に固着されることで、炉壁プレート50の内側面が加熱室18の炉壁を形成することになる。
炉壁プレート50の正面側には、上方へ延出した前面プレート部53が形成されている。カバープレート70が、炉壁プレート50の外側を覆うようにして下部ユニット40に固着される際には、カバープレート70の前方側(正面手前側)の縁部は、炉壁プレート50の前面プレート53の外側端部に当接する。また、炉壁プレート50の側方固着プレート51aと背面固着プレート52aが下部ユニット40の上面に固着されることによって、炉壁プレート50の外側面とカバープレート70の内側面との間には、前面プレート53や側方固着プレート51a、背面固着プレート52aの幅に相当する所定の間隙が形成されることとなる。本実施形態の電気式ピザ窯では、この炉壁プレート50とカバープレート70との間隙部分に、ガラスウールなどの断熱部材(図示省略)が充填されている。このように、加熱室18の壁部分に相当する炉壁プレート50と電気式ピザ窯の外側面を構成するカバープレート70との間に断熱部材を充填することによって、加熱室18内部の熱が電気式ピザ窯の外部空間に逃げにくくなる。この結果、本実施形態の電気式ピザ窯では、加熱室18内の温度の安定化が図れると共に、予熱時間を短縮し、かつ、調理時における加熱手段から与えることが必要な熱量を低減することができ、よりおいしいピザを焼き上げることができると共に、電気式ピザ窯の低消費電力化も実現することができる。
なお、炉壁プレート50とカバープレート70との間隙の大きさは、一例として20mmから50mm程度とすることができる。また、間隙に充填される断熱材としては、ガラスウールの他に、耐熱性の高い樹脂製のウール材や発泡材などを、さらには、マイカ板等を用いることができる。
炉壁プレート50の天井部分に相当する上方部分には、左右方向に配置された外側へ湾曲する側方プレート部51同士を繋ぐように形成された平面状の開口54が形成されている。そして、炉壁プレート50の上面に形成された開口54の周辺部分には枠状の平坦部分55が形成され、この平坦部分55にはヒータユニット60が載置されている。
ヒータユニット60は、加熱室18内に配置される上部加熱ヒータとしての2本の輻射式ヒータ61と、2本の輻射式ヒータ61が平行な状態で保持できるように輻射式ヒータ61の両端部分を互いに接続する、一対の接続部材62とにより、全体として矩形枠状に構成されている。
輻射式ヒータ61としては、カーボンランプヒータやハロゲンランプヒータ、石英ガラスヒータ、コルチェヒータ等の、高温の熱を輻射可能な各種ヒータを採用することができる。また、輻射式ヒータの出力は、一例として、一本当たり400Wから550Wのものを用いることができる。
ヒータユニット60における2本の輻射式ヒータ61の配置間隔は、炉壁プレート50上方の開口54の開口幅よりも狭く、ヒータユニット60を炉壁プレート50の平坦部に載置した状態で、輻射式ヒータ61が、加熱室18内に露出するようになっている。また、ヒータユニット60を炉壁プレート50上方開口部54周辺の平坦部55上に載置することで、加熱室18の奥行き方向において、輻射式ヒータ61と加熱室18の底面部分に配置される加熱プレートの上面とが平行となる。この結果、本実施形態の電気式ピザ窯では、加熱室18内に配置された加熱プレートおよび加熱プレート上に載置された被調理物であるピザ生地と、上部加熱ヒータである輻射式ヒータ61とが、互いに平行な状態を保ったまま対向することとなる。このようにすることで、加熱プレート上の被調理物に、より均一に上部加熱ヒータからの輻射熱を輻射供給することができる。
なお図3での図示は省略するが、ヒータユニット60の輻射熱ヒータ61の上方には、熱反射プレートが配置されていて、輻射熱ヒータ61から上方へと放出される輻射熱を加熱プレートが載置される加熱室18の底部方向へと反射させる。このようにすることで、輻射熱ヒータ61からの輻射熱を、効率よく加熱プレート上の被調理物に供給することができる。また、熱反射プレートのさらに上方には、加熱室18の天井の最も高い部分を構成することとなるカバー部材93(図7参照)が配置されている。カバー部材93には、煙突14へと繋がる流路が形成されている。
カバープレート70は、ステンレス板やメッキ鋼板等の金属板で形成されていて、電気式ピザ窯の外郭部分を構成する部材である。
本実施形態の電気式ピザ窯では、カバープレート70の開放端部(下側端部)に内側に向かって延出する固着部72が形成されていて、この固着部72を下部ユニット40の底面側に回り込ませてネジで螺結等して固定することで、電気式ピザ窯の上側部分10と基体部分20とを含む外殻全体を構成することができる。なお、上記本実施形態では、カバープレート70として、電気式ピザ窯の側面のみならず背面側をも覆う一体的なものを例示したが、カバープレート70としては、側面部分を覆う略逆U字状の部分と、背面を覆うかまぼこ形状の板部材とを別体のものとして形成し、別々に取り付ける構成とすることができる。また、カバープレート70が覆う範囲を、炉壁プレート50の外側までの上側部分10の範囲内に留め、下方ユニット40の側面は別のカバー部材で覆うように分割することもできる。このように、側面部分と背面部分、または、上側部分と基体部分とを、それぞれ別体のカバー部材で覆うような構成とした場合には、カバープレート70の取り付けにおける作業性が向上するが、加熱室18の熱が逃げないように、カバー部材同士の隙間をしっかりと塞ぐことが必要となる。
なお、本実施形態の電気式ピザ窯のカバープレート70には、前述のように下部ユニット40の側面(背面)となる位置に、下部ユニット40内部の温度上昇を緩和するための空気孔24や、送風ファン71が形成配置されている。
次に、本実施形態にかかる電気式ピザ窯における、加熱室の底面部分を構成する下部ユニット上面の形状について、下部ユニットに載置される加熱プレートとの位置関係を含めて説明する。
図4は、加熱プレートと下部ユニットとの位置関係を示す分割斜視図であり、加熱プレートが下部プレート上の所定の位置に載置された状態の位置関係を分解して示している。
また、図5は、下部ユニットの加熱プレートが載置される側の面である上面を示す平面図である。さらに、図6は、加熱プレートの構成を示す分解斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の電気式ピザ窯では、下部ユニット40の上面に配置されたヒータ支持板42上の所定の位置に加熱プレート組み立て体30が載置され、加熱プレートであるプレート本体31上の被調理物であるピザの調理時には、図3で示した上部加熱ヒータ61とヒータ支持板42上に配置された下部加熱ヒータ41(41a、41b)とによって、プレート本体31の上下両面から熱が加えられて加熱調理が行われる。
なお、図4では図示しない扉11を開けた状態で、電気式ピザ窯の前方側から挿入される加熱プレート組み立て体30が、下部加熱ヒータ41に対して正しい位置に載置されるように、下部ユニット40上面におけるヒータ支持板42が配置されている領域の周囲には、前方から挿入された加熱プレート組み立て体30の横方向(挿入方向に対する左右方向)の位置を規制するための一対のサイドレール81と、加熱プレート組み立て体30の奥行き方向(挿入方向と同じ方向)における位置を規制するエンドレール82とが突出形成されている。
図4、および、図5に示すように、下部加熱ヒータ41は、同心円状に配置された環状の電熱式ヒータであり、本実施形態の電気式ピザ窯では、内側に配置された径小の第1の環状ヒータ41aと、外側に配置された径大の第2の環状ヒータ41bとの2本の環状ヒータを備えている。なお、それぞれの環状ヒータ41a、41bは、インコロイヒータ、IHヒータ、シーズヒータなどで構成することができ、出力は200W〜250Wとすることができる。また、一例として、内側環状ヒータ41aの直径を9cm、外側環状ヒータ41bの直径を16cmとすることができる。
ヒータ支持板42は、下部加熱ヒータ41が配置される底面42aと、底面42aの周囲を下部加熱ヒータ41の配置部分を囲むようにして形成された側壁部42bとで構成されている。また、側壁部41bの上端部には連続して外側に広がるように形成された載置面15となる平面部42cを備えている。
ヒータ支持板42の側壁部42bの高さは、平面部42c上に加熱プレート組み立て体30が載置された際に、加熱プレート組み立て体30において被調理物が載置されるプレート本体31の上面31aとは異なる側の面である裏面31bが、下部加熱ヒータ41と接触せずに所定の間隙を有することができるような高さとなっている。また、第1の環状ヒータ41aと第2の環状ヒータ41bとは、いずれも支持脚83、84に支持されることで、ヒータ支持板42の底面42aとの間にも所定の間隙を保つことができるようになっている。このようにして、下部加熱ヒータ41は、支持脚83、84と接触している部分を除いて中空状態で配置されていることとなる。
ヒータ支持板42の底面42aにおいて、第1の環状ヒータ41aと第2の環状ヒータ41bとが配置されている配置領域を取り囲むようにして、すなわち、外側に位置する径大の第2の環状ヒータ41bの周囲を取り囲むようにして、底面42aからヒータ周囲壁部43が立設している。ヒータ周囲壁部43は平面視環状に形成されていて、2つの環状ヒータ41a、41bと略同心円状に配置されることが好ましい。なお、ヒータ周囲壁部43の高さは、その上端が、ヒータ支持板42上に載置された際のプレート本体31の裏面31bと接触しない高さとなっている。
下部加熱ヒータ41(41a、41b)が配置される同心円の中心部分には、少なくとも2つ備えた温度センサの内の一方の温度センサとして、プレート本体31の温度を検出する第1の温度センサ44が配置されている。第1の温度センサ44の配置位置は、組立体としての加熱プレート30の中央部ではなく、図4に示すように、加熱プレート組み立て体30の中で、被調理物が載置されるプレート本体31の中心31cの位置である。本実施形態の電気式ピザ窯では、プレート本体31は略正方形状であるため、プレート本体31の中心31cの位置とは、プレート本体31の対角線の交点である。
また、ヒータ支持板42の底面42aにおいて、ヒータ周囲壁部43の外側の領域には、少なくとも2つ備えた温度センサの内の他方の温度センサとして、第2の温度センサ45が配置されている。このように、第1の温度センサ44を2本の環状センサ41a、41bが形成する同心円の中心に、また、第2の温度センサ45を、2本の環状ヒータ41a、41bの配置領域を囲んで形成されたヒータ周囲壁部43の外側の位置に配置することで、本実施形態の電気式ピザ窯では、被調理物が載置されるプレート本体31の中央部分の温度を第1の温度センサ44で、プレート本体31の周辺部分の温度を第2の温度センサ45で検出することができる。
本実施形態の電気式ピザ窯では、第1の温度センサ44と第2の温度センサ45とを、いずれも上方に向けて付勢された状態でヒータ支持板42の底面42a上に配置している。また、第1の温度センサ44と第2の温度センサ45は、上方から押し下げる力が働いていない自然状態で、その先端部分である温度検出部分が、ヒータ支持板42の側壁部42bの高さよりも高く、側壁部42bの上端部に連続して形成された平面部42cよりもさらに上方に突出するように配置されている。このため、本実施形態の電気式ピザ窯では、ヒータ支持板42上に加熱プレート組み立て体30が載置された際に、温度センサ44、45の温度検出部分が一定の力でプレート本体31の裏面31bに押しつけられることとなり、プレート本体31の所定部分の温度をより正確に検出することができる。なお、第1の温度センサ44と第2の温度センサ45としては、いずれも測温抵抗体を用いたもの、熱電対を用いたものなど、従来用いられている各種の温度検出素子を使用することができる。また、上記例示したような接触式の温度センサに限られず、放射温度計の原理を用いて非接触で対象物の温度を検出できる温度センサを採用することもできる。さらに、接触式の温度センサの場合でも、上記例示したような上方に向かって付勢されたものには限られず、線状部材で構成されて加熱プレートとの間に一定以上の接触を確保できるものを用いることができる。
図6に示すように、本実施形態の電気式ピザ窯に用いられる加熱プレート組み立て体30は、非金属製の板状体であるプレート本体31と、このプレート本体31を被調理物が載置される上面31a側から保持する上面カバー32と、上面31aの反対側の面である裏面31b側から保持する裏面カバー33とで構成されている。なお、プレート本体31と裏面カバー33との間には、プレート本体31を上面カバー32側に押圧するバネ部材34が配置されていて、プレート本体31を上面カバー32と裏面カバー33とで挟持して組み立て体としての加熱プレートを構成したときに、プレート本体31のガタツキが生じないようになっている。
プレート本体31は、加熱手段である上部加熱ヒータ61や下部加熱ヒータ41からの熱を十分に蓄積することで、よりおいしく、かつ短時間にピザを焼くことができるように、熱伝導率が高く蓄熱性が高い非金属材料で形成されている。
本実施形態の電気式ピザ窯では、プレート本体31としてカーボンプレートを用いている。より具体的には、プレート本体31は、純度99.9%以上のカーボンブラック等の原料を5万トンの高水圧下で固めた後に3000℃で90日間焼成して得たカーボンプレートである。なお、このようにして得られたカーボンプレートの特性諸元は、密度が約2.01g/cm3、比熱が、室温において約0.713J/g・K、300℃で約1.337J/g・K、熱伝導率が、室温で約188.1W/m・K、300℃で約137.7W/m・K、熱拡散率が、室温において約131.2×10-6m2/s、300℃で約51.2×10-6m2/sである。
なお、本願にかかる加熱調理器のプレート本体31の材料としては、上記例示した特性諸元を有するカーボンプレートの他に、上記とは異なる特性を備えたカーボンプレートを用いることができる。また、いわゆる土鍋の素材として加熱調理器に用いられるセラミックス素材や、セラミックス粉末とガラス粉末、またはカーボン粉末などの各種粉末材料の混合体を焼成して形成された板状体を用いることができる。さらに、加熱プレートとして十分な、一例としてアルミニウム程度以上の熱伝導性の高い蓄熱可能な材料であれば、金属粉末を材料として含んだものを用いることもできる。なお、プレート本体31としては、特に、熱伝導性が、130W/m・k程度以上であることが、短時間でのピザの調理を可能とする観点から好ましい。
また、本実施形態の電気式ピザ窯では、直径が約35cmであるLサイズまでのピザ1枚を焼くことを想定していて、プレート本体31は、一辺が38cmの平面視矩形状であり、厚さは7.5mmとしている。
また、図6に示すように、本実施形態の電気式ピザ窯に用いられるプレート本体31は、正方形の四隅部分31dがそれぞれ5cmずつ切り落とされていて、厳密に言えば8角形となっている。
被調理物が円形のピザであるため、プレート本体において実際に被調理物が載置される領域は中央部分の円形領域となる。このため、プレート本体をピザの直径よりも大きな径を有する円形とすれば、ピザを焼くことは可能となる。しかし、加熱調理前の材料としてのピザ生地は温度が低いため、プレート本体を事前に予熱していた場合でも加熱前のピザを載置すると、中央部分のプレート本体の温度が急激に下がることとなる。このとき、加熱調理には直接関与しないピザが載置されない領域を周辺部分として確保しておくことで、この周辺部分に蓄積された熱量によってプレート本体全体としての温度低下を抑えることができる。特に、本実施形態の電気式ピザ釜の場合には、プレート本体として蓄熱性の高いカーボンプレートなどの非金属製部材を用いているために、この周辺部分に蓄積された熱によるピザが載置された中央部分の温度低下を短時間で解消することができる。
一方で、プレート本体を正方形のままとすると、ピザが載置される中央の円形部分以外の周辺領域の面積(体積)が大きくなり過ぎて、加熱プレートの予熱時や調理時に加えることが必要な熱量が過大となってしまう畏れがある。この場合には、消費電力の増大や調理時間が長くなるなどの別の問題点が生じしてしまうことになる。これらの点を考慮して、本実施形態にかかる電気式ピザ窯に用いられるプレート本体は、プレート本体として適切な容量(体積)を確保するために、正方形を基調として四隅部分を切り落とした8角形としている。なお、正方形からの四隅部分の切り落とし量は、上記の観点から、ピザが載置される円形部分に対するそれ以外の周囲領域としてどれだけの面積を確保するのがよいかを見極めて、下部加熱ヒータから得られる熱量、プレート本体の材料や厚みなどによる熱容量の大きさなどを考慮して適宜好ましい値を定めればよい。
また、基調となる矩形状を正方形としているのは、円形の被調理物を載置する上で中央部分として必要な縦横の長さが同じであるからであり、正方形ではなく縦方向または横方向に長い長方形状とすることができる。さらに、ピザ生地を中央部分に載せた際の周辺部分の熱容量を確保する形態としては、中央部と周辺部との厚みを変化させることも可能であり、プレート本体を矩形状とはせずに円形形状とすることも可能である。
本実施形態の電気式ピザ窯では、加熱プレート組み立て体30を構成する上面カバー32と裏面カバーと33とは、いずれもステンレス材などの金属材料により形成されている。
上面カバー32は、中央部分に開口部32aが形成されている。開口部32aは、プレート本体31の外形よりもごくわずかに小さく形成されていて、上面カバー32は、プレート本体31と重ね合わされたときに、プレート本体31の周辺部分をごくわずか覆う状態となる。
裏面カバー33も中央部分に開口部33aが形成されているが、裏面カバー33の開口部33aの大きさは、上面カバー32の開口部32aよりも小さく、特に、プレート本体31の裏面31bの周辺部分を覆うようになっている。上面カバー32では、プレート本体31の上面31a上に被調理物であるピザ生地を載置する際に、プレート本体31がなるべく広い領域として現れることが好ましい。しかし、裏面カバー33では、裏面側に配置される下部加熱ヒータ41の輻射熱が十分にプレート本体31の中央部分に供給されれば十分であり、また、プレート本体31を上面カバー32側に押しつけるためのバネ部材34の配置領域を確保する必要があるからである。なお、バネ部材34は、裏面カバー33の開口部33a周辺に形成された保持部33bによって保持される。
裏面カバー33の両側方と後方側には、上方に向かって折り曲げられた折り曲げ部33cが形成されている。また、開口部33aの前方側端部を利用して、上方に折り曲げられた規制部33dが形成されていて、折り曲げ部33cと規制部33dとによって、プレート本体31の位置を規制する。
上面カバー32の両側方部と後方部分とにも、上方に折り曲げられた枠部32bが形成されていて、間にプレート本体31を挟持した状態で上面カバー32と裏面カバー33とを重ね合わせたときに、この枠部32bが裏面カバー33の折り曲げ部33cの内側に面当接して、上面カバー32と裏面カバー33との位置規制を行うと共に、加熱プレート組み立て体30の剛性を高めている。
上面カバー32の手前側には、横長形状の湾曲部32cが形成されていて、加熱室18内に加熱プレート組み立て体30を出し入れする際にユーザが湾曲部32cを保持できるようになっている。
以上説明したように、本実施形態の電気式ピザ窯では、加熱プレート組み立て体30が上面カバー32と裏面カバー33とでカーボンプレートであるプレート本体31を挟持した構成となっている。また、プレート本体31は、バネ部材34によって上面カバー32に対して押しつけられた状態となっている。このため、加熱プレート組み立て体30の裏面である裏面カバー33の裏面側の外表面に対して、プレート本体31の裏面31bは、裏側から見たときにわずかに凹んだ状態、すなわち、下部ユニット40上に載置した際には、より上方側に位置することとなる。
このため、ヒータ支持板42の底面42a上に形成されたヒータ周囲壁部43の上端位置と、ヒータ支持板42の側壁部42の上端部との高さが同じ高さであった場合でも、下部ユニット40の上面のヒータ支持板42上に載置された状態において、加熱プレート組み立て体30の裏面カバー33の裏側表面がヒータ支持板42の側壁部42bの上端面である平面部42cと当接するのに対し、プレート本体31の裏面31bとヒータ周囲壁部43の上端とは当接せず、両者の間には一定の間隙が形成されることとなる。
図7は、本実施形態にかかる電気式ピザ窯の内部の状態を示す断面図である。図7は、扉が閉じた状態で、かつ、内部に加熱プレートが配置された状態での、左右方向における中心線で切断された状態の電気式ピザ窯を右側方から見た場合の側断面図である。
なお、図7において、図1〜図3を用いて説明した本願にかかる電気式ピザ窯における構成部材について、各部材の形状やその位置関係がより分かりやすいように、改めて同じ符号を付して示している。
図7に示すように、下部ユニット40のヒータ支持板42上に載置された状態において、加熱プレート組み立て体30の裏面カバー33の周辺部分とヒータ支持板42の周囲に形成された平面部42cとが当接することで、加熱プレート組み立て体30とヒータ支持板42との間には、その内部に加熱手段としての下部加熱ヒータ41が配置された閉鎖空間としての下部加熱空間94が形成されることとなる。
このため、下部加熱ヒータ41からの輻射熱を下部加熱空間94の外に逃がさずに、効率よくプレート本体31へと伝えることができる。さらに、下部加熱ヒータ41の周囲には、その上端部とプレート本体31の裏面31bとの間にわずかな間隙が形成されたヒータ周囲壁部43が形成されているため、下部加熱ヒータ41からの輻射熱はより多くがプレート本体31の中央の円形状領域部分に伝えられ、一部の熱量がプレート本体31の周辺領域の下部加熱空間94へと伝わることとなる。この結果、本実施形態の電気式ピザ窯では、下部加熱ヒータ41からの輻射熱をその上面31aに冷たい被調理物が載置されて温度低下が生じやすいプレート本体31の中央部分に集中させることができ、プレート本体31の高い蓄熱性と相俟って被調理物が載置された際のプレート本体31の中央部分の温度低下を低減することができる。
なお、上記本実施形態の電気式ピザ窯では、プレート本体31の温度を測定する温度センサとして、プレート本体31の中心部分の温度を測定する第1の温度センサ44を環状ヒータ41の配置位置における同心円の中心部分に配置したものを示した。本実施形態の電気式ピザ窯において、同心円状に配置された環状ヒータ41の中心はプレート本体31の中心と一致しており、下部加熱ヒータ41で加熱されている状態において、この部分のプレート本体31が最も温度の高い領域であると考えられる。したがって、プレート本体における高温部分の温度データを検出する上では、第1の温度センサ44を同心円状に配置された環状ヒータの中心位置に配置することが最も好ましい。しかし、ヒータ支持板42の形状や構成、また、プレート本体31の裏面31bの形状などによる制約から、同心円の中心位置での温度が検出できない場合もあり得る。このような場合には、複数本配置された環状ヒータ41の内の最も内側に位置する環状ヒータ(本実施形態では第1の環状ヒータ41a)の内側に相当するプレート本体31の温度を測定することができれば、厳密な中心ではなくてもプレート本体31の高い温度領域の温度を検出することができる。
また、本実施形態の電気式ピザ窯において、加熱プレートの周辺部分の温度を測定する第2の温度センサ45を、環状ヒータ41の周囲に配置されるヒータ周囲壁部43よりも外側の位置におけるプレート本体31の温度を測定する構成とした。上述のように、ヒータ周囲壁部43の内部の領域は、下部加熱ヒータ41の動作時において最も高い温度となっている領域であるため、この領域以外の周辺領域のプレート本体31の温度を測定することで、プレート本体31において比較的温度の低い領域の温度を検出することができる。
特に、被調理物が円形のピザでありプレート本体31が矩形状である場合には、上述のように周辺領域に蓄積されていた熱量によって中央部分の温度低下の防止をはかる構成となるため、周辺部分としてプレート本体31の対角線上の位置の温度を検出することが好ましい。
なお、矩形状のプレート本体を用いた場合に、周辺領域として想定される対角線上の領域は全部で4箇所存在することとなる。この場合、プレート支持板42上に載置された状態で扉11側に位置する2箇所は、加熱プレート組み立て体30の出し入れの際などの扉11の開閉の影響を受けて温度が安定しづらいことが懸念される。このため、選択可能な限りにおいて、プレート本体31の4つの対角線上の領域の内の、扉11とは反対側の奥側に位置する対角線上領域の温度を、第2の温度センサ45で測定することが好ましい。
このように、本実施形態の電気式ピザ窯では、プレート本体31の中央部分と周辺部分との温度データを別々に検出することができる。このため、制御部は、プレート本体31の温度分布を把握しながら、上部加熱ヒータ61と下部加熱ヒータ41としての、径小の第1の環状ヒータ41aと経大の第2の環状ヒータ41bとにそれぞれ投入される電力量を個別に調整して、プレート本体31の温度分布を適切に制御することができる。
例えば、予熱時開始時には、上部加熱ヒータ61をOFF、第1の環状ヒータ41aを80%電力、第2の環状ヒータ41bを100%電力とし、ピザの調理時には、上部加熱ヒータ61を100%電力とする中で、調理開始直後は第1の環状ヒータ41aと第2の環状ヒータ41bとをともに50%電力、調理が進むにつれて第1の環状ヒータ41aへの投入電力量を下げていき、予熱を維持する状態では、上部加熱ヒータ61をOFF、第1の環状ヒータ41aをOFF、第2の環状ヒータ41bを60%電力とするなどが考えられる。このように、上部加熱ヒータ61と、2つの環状ヒータ41aと41bとの投入電力量を制御して、プレート本体31の温度を、ピザを焼く上で好適とされる温度300℃が維持できるように調整することができる。
特に、本実施形態の電気式ピザ窯では、プレート本体31として高い蓄熱性を有するカーボンプレートを用いているため、最初の電源投入時に約15分の予熱を行ってプレート本体31の温度を約300℃としておけば、1枚のピザを2分半ほどの短時間で、おいしく調理することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかる加熱調理器としての電気式ピザ窯は、蓄熱性の高い非金属製の加熱プレートであるプレート本体を備え、加熱プレートを上方と下方との両面から加熱手段であるヒータによって加熱する。このとき、加熱プレートの中央部分と周辺部分との温度を、それぞれ異なる温度センサによって検出し、検出された温度データに基づいて各ヒータへの投入電力量が制御される。このため、加熱プレートの予熱時、調理開始時における低温の被調理部材が載置された時、一定時間の加熱調理が行われている時など、被調理物の加熱調理の各段階において、加熱プレートの温度分布を好ましい状態に維持することができ、低消費電力の加熱調理器でありながら、被調理物をおいしく、かつ、短時間で調理することができる。
なお、上記説明において、加熱室の側面が湾曲して上方に行くほど幅が狭くなる形状のものを例示したが、加熱室は、上下方向において幅方向の大きさが略同一な、直方体または立方体形状とすることもできる。また、加熱室の背面側の炉壁を、上方に行くほど手前側に倒れる形状の図を示したが(図7)、加熱室の背面の炉壁は、底面に対して垂直に形成されていてもよく、また、側壁と同様に外側に向かって湾曲する曲面形状とすることもできる。
また、上記実施形態では、上部加熱ヒータとして、加熱室の手前側から奥側に向かって平行に同じ出力数の2本のヒータが配置された構成を示したが、上部加熱ヒータの本数は、1本、または3本以上とすることができ、さらに、複数本のヒータを用いる場合にそれぞれの出力数が異なるヒータを用いることもできる。さらに、ヒータの配置位置、特に、加熱室内の配置高さについて、複数本のヒータを異なる高さに配置することもできる。また、上部加熱ヒータの配置方向も、扉に対して平行に、すなわち、扉側から見て左右方向に配置することもできる。
また、上記の説明では、下部加熱ヒータとして2本の環状ヒータを略同心円状に配置した例を示したが、ヒータは環状のものに限られず例えば略矩形状のヒータや、複数箇所の折り返し部分を経ることで、1本のヒータで面上の領域を加熱できるような構成とすることができる。また、下部加熱ヒータは、1本、または、3本以上の構成とすることができる。
なお、環状ヒータを用いる場合でもヒータ部分が正確な円形である必要はなく、一部に凹凸がある形状や端部分に欠けを有している形状であっても、全体として円形領域に対して熱を放射可能なヒータであればよい。
また、加熱プレートと下部加熱ヒータとの位置関係においても、上記の例のように加熱プレート本体の中心と下部加熱ヒータの配置領域の中心位置とを正確に一致させようとする必要はない。さらに、複数の環状ヒータを配置する場合におけるそれぞれのヒータの中心位置も、およそ一致していればよい。下部加熱ヒータの配置と加熱プレートとの位置関係においては、下部加熱ヒータから加熱プレートに供給される熱量に、例えば加熱プレートの方向に応じた大きな偏りが生じている等の不都合が無く、被調理物を目立ったムラ無く調理することができる範囲内での裕度を有していることはいうまでもない。
さらに、加熱プレート(本体)の温度を検出する温度センサとしても、上述した中央部分の温度を検出する第1の温度センサと、周辺部分の温度を検出する第2の温度センサに加えて、第3またはそれ以上の個数の温度センサを配置して、加熱プレートの各領域の温度をより詳細に検出して、ヒータに入力する電力の制御に活用することができる。但し、複数の温度センサそれぞれが温度を検出する加熱プレートの領域としては、加熱プレートに近接して配置される下部加熱ヒータとの関係において、下部加熱ヒータから供給される熱量が多い領域と、下部加熱ヒータから供給される熱量が少ない領域とを選んで温度センサを配置することが、下部加熱ヒータに投入される電力量を制御することで加熱プレートの温度分布をより均一化する上で好ましい。
また、上記実施形態では、非金属性の加熱プレートであるプレート本体を、金属製の上面カバーと裏面カバーとで挟持した構成を例示した。このようにすることで、外部からの衝撃を受けた際に割れや欠けなどが生じやすいプレート本体を保護することができる。また、非金属製のプレート本体は形状加工性に欠けるため、金属製のカバー部材で覆うことで、組み立て体としての加熱プレートを保持するための湾曲部等を容易に形成することができる。しかし、非金属製の加熱プレート(本体)の強度面や加工性に問題がないのであれば、加熱プレートとして組み立て体を構成する必要はなく、非金属材料により形成された加熱プレート本体をそのまま使用することができる。
なお、ピザ窯としての美観を強調するために、外殻を構成するカバー部材の外側表面に煉瓦模様等の装飾を施したり、カバープレートのさらに外側に、煉瓦で構成されたピザ窯の形状をなぞった装飾外観部材を重ねて配置したりすることもできる。
なお、上記実施形態では、本願に係る加熱調理器として、被調理物としてピザを焼くピザ窯を例示して説明してきた。しかし、本願発明の加熱調理器は、ピザ調理専用の電気式ピザ窯には限られず、パンやクッキー、スポンジケーキ、その他野菜や肉類などの各種被調理物を調理する加熱調理器として実用化することができる。また、上記例示した業務用の加熱調理器には限られず、よりコンパクトな構成として家庭用の加熱調理器を実現することもできる。
以下において、上記図示して説明した形態に対応した本願で開示する加熱調理器の具体的構成例をいくつか説明する。
まず、第1の構成は、加熱室と、前記加熱室内に配置され、被調理物が載置される非金属製の加熱プレートと、前記加熱プレートを加熱する加熱手段と、前記加熱プレートの温度を検出する温度センサと、前記温度センサが検出した前記加熱プレートの温度データに基づいて、前記加熱手段への投入電力量を制御する制御部とを備え、前記加熱手段として、前記加熱室の上部に前記加熱プレートに対向するように配置された上部加熱ヒータと、前記加熱プレートの下方であって、前記加熱室の底部を構成するヒータ支持板上に配置された下部加熱ヒータとを有し、前記温度センサとして、前記加熱プレートの中央部分の温度を検出する第1の温度センサと前記加熱プレートの周辺部分の温度を検出する第2の温度センサとを備えたものである。この構成によれば、第1の温度センサによって加熱プレートの中央部分の温度を、第2の温度センサによって加熱プレートの周辺部分の温度をそれぞれ別々に把握することができ、得られた加熱プレートの温度データに基づいて、制御部が上部加熱ヒータと下部加熱ヒータとに投入される投入電力量を制御して、加熱プレートの温度をより均一な状態に維持することができる。この結果、予熱時と加熱調理時とのいずれにおいても、加熱プレートの温度を所望の状態として、早く、かつ、ムラ無く、被調理物を調理することができる加熱調理器を得ることができる。
さらに、第2の具体的な構成例として、本開示にかかる加熱調理器において、前記加熱プレートが平面視矩形状であり、前記下部加熱ヒータが、前記加熱プレートの中心に対して略同心円状に配置された複数の環状ヒータであって、前記第1の温度センサが前記複数の環状ヒータの内の最も内側に配置された前記環状ヒータの内側に位置する前記加熱プレートの温度を検出し、前記第2の温度センサが前記複数の環状ヒータの内の最も外側に配置された環状ヒータの外側に位置する前記加熱プレートの温度を検出することが好ましい。このようにすることで、下部加熱ヒータからの熱の影響が異なる加熱プレートの中央部分と周辺部分の温度を、より正確に把握することができる。
また、第3の具体的構成例としては、前記ヒータ支持板の前記下部加熱ヒータが配置されている部分の周囲に、前記底面から立設したヒータ周囲壁部が形成された構成において、前記第2の温度センサが、前記ヒータ周囲壁部の外側に位置する前記加熱プレートの温度を検出することが好ましい。このようにすることで、ヒータ周囲壁部の内側に比べて下部加熱ヒータからの熱量が届きにくい、周辺領域の温度を検出することができる。
第4の具体的構成例としては、前記第1の温度センサおよび前記第2の温度センサは、前記ヒータ支持板の前記底面から上方に向かって付勢された状態で配置され、前記加熱プレートが前記ヒータ支持板上に載置された際に、前記第1の温度センサおよび前記第2の温度センサの上端が前記加熱プレートの前記裏面に当接することが好ましい。このようにすることで、加熱プレートの温度をより正確に検出することができる。
第5の具体的構成例として、前記加熱プレートが、カーボンブラック粉末を焼成して形成されたカーボンプレートであることが好ましい。この用にすることで、蓄熱量が極めて高い加熱プレートを実現することができる。
さらに、前記加熱室の天井が上方へと湾曲したアーチ形状とすることができる。また、前記加熱室の外殻を形成する天井と側面とが、内部に断熱材を挟んで形成された金属板により構成することができる。