以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置について詳細に説明するが、当該切断装置を、図51に示す橋梁100の既設コンクリート床版102の撤去に用いる場合について説明する。
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図2は、前記状況を斜め下方から見た斜視図であり、図3は、前記状況を上方から見た平面図であり、図4は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。
本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10(以下、単に切断装置10と記載することがある。)は、既設コンクリート床版102の部位のうち、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102Aをクレーン等の吊り上げ手段200(図51参照)で吊り上げて撤去した後の状態(既設主桁104の上フランジ104A上に残存コンクリート102Bが残った状態)(図52(A)参照)において、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断する際に用いる実施形態である。また、本第1実施形態に係る切断装置10の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。また、本第1実施形態に係る切断装置10の取り付け態様は、当該切断装置10を残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
本第1実施形態に係る切断装置10は、本体部20と、ガイド部材40と、取り付け部材42と、を備えてなる。
本体部20は、切断装置10の切断機能に関連する部位であり、メイン支柱22と、補助支柱24と、駆動プーリ26と、補助プーリ28と、ワイヤーソー30と、駆動装置32と、取り付け部34と、を有してなる。
メイン支柱22および補助支柱24は、切断装置10の骨組みとなる部材であり、細長い四角柱状の鋼製管状体である。メイン支柱22および補助支柱24は、連結部材22Aを介して、お互いの長手方向が略直交するように連結されている。
メイン支柱22には、駆動プーリ26および駆動装置32が取り付けられており、補助支柱24には、4つの補助プーリ28が取り付けられている。メイン支柱22は、その一端にフランジ状に設けられた取り付け部34を備えており、取り付け部34はアンカーボルト36およびナット36Aによって残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付けられており、これにより、切断装置10の本体部20の全体が残存コンクリート102Bに取り付けられている。したがって、切断装置10の本体部20の全体は、残存コンクリート102Bを介して既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられていることになる。
駆動プーリ26および4つの補助プーリ28は、略同一平面内に位置しており、駆動プーリ26および4つの補助プーリ28を架け渡されたワイヤーソー30は、この略同一平面内を回転して進行するようになっている。
ワイヤーソー30が進行する駆動力は、駆動装置32が駆動プーリ26を回転駆動させることにより得られ、駆動プーリ26が回転駆動すると、その回転方向にワイヤーソー30は進行する。
メイン支柱22には、駆動プーリ26がメイン支柱22の長手方向に移動できるようにレール機構(図示せず)が設けられており、また、駆動装置32は、駆動プーリ26を回転駆動させるだけでなく、駆動プーリ26をメイン支柱22の長手方向に移動させる動力機構も有しており、駆動プーリ26をメイン支柱22の長手方向の適切な位置に移動させて、ワイヤーソー30の張力を安定的に調整することができるようになっている。
ワイヤーソー30は、切断装置10の刃に相当する部材であり、ワイヤーソー30が切断対象物(ここでは、残存コンクリート102B)を取り囲むように接触しながら回転して進行することにより、残存コンクリート102Bを、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する。ワイヤーソー30は、残存コンクリート102Bだけでなく、その内部に存在するずれ止め106も同時に切断することができる。ワイヤーソー30としては、例えば、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着したダイヤモンドワイヤーを用いることができる。ワイヤーソー30は、2箇所の貫通孔50を挿通させて、残存コンクリート102Bを上フランジ104Aの上面と略平行な面内で取り囲むように配置する。貫通孔50は、残存コンクリート102Bの下部に設けられた貫通孔であり、その長手方向が、既設主桁104の長手方向と略直交する方向で、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向となるように設ける。
ガイド部材40は、ワイヤーソー30が下方向(既設主桁104の上フランジ104Aに接触する方向)にずれないように、ワイヤーソー30の位置を案内するガイド部材であり、断面がL字形の鋼材(アングル鋼材)である。ただし、ワイヤーソー30の位置を案内するガイド機能を適切に発揮できる部材であれば、ガイド部材40の材質や形状は特には限定されず、ガイド部材40として、例えば断面が溝形の鋼材を用いてもよい。
ガイド部材40は、取り付け部材42によって、既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部(図4参照)に、所定の配置位置となるように取り付けられている。
図5〜図7を用いて、ガイド部材40および取り付け部材42をさらに説明する。図5は、取り付け部材42を拡大して示す斜視図であり、図6は、取り付け部材42にガイド部材40を取り付ける際の状況を模式的に示す拡大側面図(既設主桁104の長手方向から見た拡大側面図)であり、図7は、ガイド部材40を取り付け部材42を介して既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けた状況を示す拡大側面図(既設主桁104の長手方向から見た拡大側面図)である。
取り付け部材42は、本体部42Aと、溶接で本体部42Aに取り付けられたナット42Bと、ボルト42Cと、当て板42Dと、全ねじボルト42Eと、を有してなる。
取り付け部材42の本体部42Aは、上端部42A1と下端部42A2とを、対向するように備え、かつ、上端部42A1と下端部42A2とを連結する中間部42A3を備えている。
取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに取り付ける際には、上フランジ104Aの上面に取り付け部材42の上端部42A1を配置するとともに、当て板42Dを上フランジ104Aの下面に押し当て、ボルト42Cで締め込むことにより、上端部42A1と当て板42Dとで上フランジ104Aの上面および下面を挟み込んで取り付ける。取り付け部材42の下端部42A2には、ボルト42Cの軸部が挿通できる貫通孔42A2aが設けられており、貫通孔42A2aの位置と対応する位置にナット42Bが下端部42A2に溶接で取り付けられている。ボルト42Cはナット42Bと螺合するようになっている。
取り付け部材42は、上端部42A1と当て板42Dとで上フランジ104Aの上面および下面を挟み込んで、既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けるので、既設主桁104に損傷を与えることなく、かつ、既設主桁104に対して溶接を用いずに、既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。
取り付け部材42の中間部42A3の外面(上端部42A1および下端部42A2が配置されている側とは反対側の面)には、全ねじボルト42Eが溶接で取り付けられている。
ガイド部材40は、上端部40Aと取り付け部40Bとを備えているが、取り付け部40Bには、取り付け部材42の全ねじボルト42Eが挿通できる貫通孔40B1が設けられている。貫通孔40B1に全ねじボルト42Eが挿通するようにガイド部材40を配置して、ワッシャー42Fを全ねじボルト42Eに挿通させ、さらにナット42Gで締め込むことにより、ガイド部材40を取り付け部材42に取り付けることができる。このようにして、ガイド部材40は、取り付け部材42を介して既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。したがって、ガイド部材40についても、既設主桁104に損傷を与えることなく、かつ、既設主桁104に対して溶接を用いずに、既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。
前述したように、ガイド部材40および取り付け部材42は、既設主桁104に損傷を与えることなく、かつ、既設主桁104に対して溶接を用いずに、既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。また、前述したように、切断装置10の本体部20の全体は、残存コンクリート102Bを介して既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。したがって、切断装置10のいずれの部位(本体部20、ガイド部材40、取り付け部材42)も、既設主桁104に損傷を与えることなく、かつ、既設主桁104に対して溶接を用いずに、既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。
図7に示すように、ガイド部材40を取り付け部材42を介して既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けた状態において、ガイド部材40の上端部40Aの上面の高さ位置は、既設主桁104の上フランジ104Aの上面の高さ位置よりも距離sだけ高くなっている。このため、ワイヤーソー30で残存コンクリート102Bを切断している際、ワイヤーソー30と既設主桁104の上フランジ104Aの上面との間は、距離sだけ離れるように調整されている。このため、ワイヤーソー30による切断は、ガイド部材40の上端部40Aの上面よりも上方の位置を、ガイド部材40の上端部40Aの上面と略平行な方向に進行する。
したがって、本第1実施形態に係る切断装置10を用いて残存コンクリート102Bを切断している最中に、ワイヤーソー30が既設主桁104の上フランジ104Aと接触するリスクが大幅に減じられており、本第1実施形態に係る切断装置10を用いることにより、既設主桁104に与える損傷を極力少なくしつつ、既設主桁104の上フランジ104A上の残存コンクリート102Bとずれ止め106を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に同時に切断することができる。
ワイヤーソー30と既設主桁104の上フランジ104Aの上面との間の距離sは、あまり小さすぎると、切断装置10を用いて切断している最中に、ワイヤーソー30が既設主桁104の上フランジ104Aと接触するリスクが大きくなる。また、距離sがあまり大きすぎると、切断装置10での切断後に残るずれ止めの高さが、プレキャストPC床版等の新設床版と既設主桁104の上フランジ104Aとの間に充填するモルタルの厚さ以上となり、切断したずれ止めと新設床版とが干渉する恐れがある。これらの観点から、ワイヤーソー30と既設主桁104の上フランジ104Aの上面との間の距離sは、2mm以上20mm以下であることが好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
なお、本第1実施形態に係る切断装置10の本体部20は、残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付けられているため、残存コンクリート102Bに取り付けた切断装置10の本体部20の重さで、残存コンクリート102Bが切断装置10の本体部20とともに転倒して落下してしまう可能性も考えられる。落下してしまう可能性がある場合には、図8(既設主桁104の長手方向から見た側面図)および図9(上方から見た平面図)に示すように、切断装置10の本体部20を残存コンクリート102Bに取り付ける前に、棒状部材である転倒防止部材54を、隣り合う残存コンクリート102Bの間に架け渡しておくようにする。図8および図9に示す転倒防止部材54は断面がL字形の棒状部材であり、その両端部が、架け渡した残存コンクリート102Bのそれぞれの上面にアンカーボルト54Aで取り付けられている。転倒防止部材54は、本第1実施形態に係る切断装置10の構成部材の1つと考えることもできる。なお、転倒防止部材54は、断面がL字形の棒状部材に限定されるわけではなく、切断装置10の本体部20が取り付けられた残存コンクリート102Bが切断装置10の本体部20とともに転倒して落下してしまうことを防止できる剛性および強度を有する部材であれば、形状および材質は特には限定されない。
また、本第1実施形態に係る切断装置10においては、ガイド部材40と取り付け部材42を別々の部材としたが、図10(ガイド部材40および取り付け部材42に替えて、ガイド取り付け兼用部材44を用いた場合の残存コンクリート102Bの切断中の状況を模式的に示す側面図)に示すように、ガイド部材としての機能と取り付け部材としての機能を併せ持つガイド取り付け兼用部材44を用いてもよい。ガイド取り付け兼用部材44を用いた方が、取り付けの手間を少なくすることができ、施工性がより向上する。
また、図1においては、残存コンクリート102Bを既設主桁104の長手方向に短くして、クレーン等の吊り上げ手段で撤去しやすくするように、切り込み52を設けているが、この切り込み52を入れる時期は、切断装置10による切断の前でも後でもどちらでもよい。
また、本第1実施形態に係る切断装置10の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。したがって、本第1実施形態に係る切断装置10の配置位置は、その重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置である。このため、本第1実施形態に係る切断装置10を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができ、複数設置した本第1実施形態に係る切断装置10によって、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に、残存コンクリート102Bの切断を行うことができる。
また、本第1実施形態に係る切断装置10の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であるので、ワイヤーソー30による残存コンクリート102Bの切断は、上方から見て、既設主桁104の長手方向と略直交する方向に全体として進行する。
(1−2)第1実施形態の施工手順
図11は、本第1実施形態に係る切断装置10を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャートである。ただし、図11のステップS5の工程、ステップS6の工程における壁高欄の切断・撤去、およびステップS14の工程は、本第1実施形態に係る切断装置10を用いての残存コンクリート102Bの切断と直接的に関連するわけではなく、また、本第1実施形態に係る切断装置10を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施する上で必須の工程ではないが、本第1実施形態に係る切断装置10を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施して残存コンクリート102Bを撤去する際には通常行う工程であるので、説明の都合上、図11のフローチャートに記載している。図11のフローチャートを参照しつつ、本第1実施形態に係る切断装置10を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施して既設コンクリート床版102の撤去を行う施工手順を説明する。
ステップS1〜S4と、ステップS5およびS6とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS1〜S4の工程を行った後、ステップS5およびS6の工程を行ってもよいし、ステップS5およびS6の工程を行った後、ステップS1〜S4の工程を行ってもよい。ただし、ステップS7の工程に入る前までに、ステップS1〜S6の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS1〜S6の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
ステップS1では、ワイヤーソー30を通すための貫通孔50(図1、図6および図7等参照)を残存コンクリート102Bに削孔する。貫通孔50を削孔する部位は、既設主桁104の上フランジ104Aの近傍付近であり、橋軸直角方向(既設主桁104の長手方向と直交する水平方向)に削孔する。
次に、ステップS1で設けた貫通孔50の入り口近傍付近および出口近傍付近について、橋軸方向に幅を広げるように残存コンクリート102Bをはつり、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付けられるようにする(ステップS2)。
次に、ステップS2で残存コンクリート102Bをはつった部位に、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに、図6に示すように取り付ける(ステップS3)。図6では、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の片側の端部に取り付けた状況を記載しているが、取り付け部材42は既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付ける。
次に、ステップS3で取り付けた取り付け部材42にガイド部材40を、図7に示すように取り付ける(ステップS4)。
ステップS5では、撤去対象の既設コンクリート床版102の表面の舗装を撤去し、ステップS6で壁高欄および主桁間の床版を切断・撤去する。ステップS6を終えると、図52(A)に示すように、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態になる。
図12は、ステップS1〜S6の工程を終えた後の状態を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。図12に示すように、ステップS1〜S6の工程を終えた後の状態は、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態で、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に、ガイド部材40および取り付け部材42を取り付けた状態である。
ステップS1〜S6の工程を終えた後、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bを架け渡すように転倒防止部材54を配置し、転倒防止部材54の両端部を、架け渡した残存コンクリート102Bのそれぞれの上面にアンカーボルト54Aで取り付けて、図8および図9に示すように、転倒防止部材54の設置を行う(ステップS7)。
次に、切断装置10の本体部20を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの間(転倒防止部材54を架け渡した隣り合う残存コンクリート102Bの間)に配置して、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方へ取り付ける(ステップS8)。具体的には、メイン支柱22の一端部の取り付け部34を、アンカーボルト36およびナット36Aによって一方の残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付けるとともに、ワイヤーソー30の両端部を2つの貫通孔50にそれぞれ入り口側(切断装置10の本体部20の側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置10の本体部20の側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置10の本体部20の全体を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方に取り付ける。
ステップS8で、切断装置10の本体部20の全体を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方に取り付けることが完了したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱22の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を一方の残存コンクリート102Bの周囲に接触させつつ回転させ、一方の残存コンクリート102Bの下端部を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS9)。
ステップS9で一方の残存コンクリート102Bの切断を終えたら、切断装置10の本体部20を一方の残存コンクリート102Bから取り外す(ステップS10)。
次に、切断装置10の本体部20を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの間(転倒防止部材54を架け渡した隣り合う残存コンクリート102Bの間)に再度配置して、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方へ取り付ける(ステップS11)。具体的には、メイン支柱22の一端部の取り付け部34を、アンカーボルト36およびナット36Aによって他方の残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付けるとともに、ワイヤーソー30の両端部を2つの貫通孔50にそれぞれ入り口側(切断装置10の本体部20の側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置10の本体部20の側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置10の本体部20の全体を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方に取り付ける。
ステップS11で、切断装置10の本体部20の全体を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方に取り付けることが完了したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱22の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を他方の残存コンクリート102Bの周囲に接触させつつ回転させ、他方の残存コンクリート102Bの下端部を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS12)。
ステップS12で他方の残存コンクリート102Bの切断を終えたら、切断装置10の本体部20を他方の残存コンクリート102Bから取り外す(ステップS13)。
次に、隣り合う既設主桁104上の切断後の残存コンクリート102Bを、図13に示すように、転倒防止部材54とともにクレーン等の吊り上げ手段200で吊り上げて撤去する(ステップS14)。
そして最後に、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しを行って、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの撤去の1つのサイクルを完了する(ステップS15)。
以上記載した施工手順において、切断装置10は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するように配置するので、切断装置10の配置位置は、その重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置であり、本第1実施形態に係る切断装置10を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができる。したがって、以上記載した施工手順による切断は、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に行うことができる。
(2)第2実施形態
図14は、本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図15は、前記状況を斜め下方から見た斜視図であり、図16は、前記状況を上方から見た平面図であり、図17は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。本第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10に樋部材62を追加した実施形態であるので、本第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60の説明において、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60(以下、単に切断装置60と記載することがある。)は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、既設コンクリート床版102の部位のうち、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102Aをクレーン等の吊り上げ手段200(図51参照)で吊り上げて撤去した後の状態(既設主桁104の上フランジ104A上に残存コンクリート102Bが残った状態)(図52(A)参照)において、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断する際に用いる実施形態である。また、本第2実施形態に係る切断装置60の配置位置は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。また、本第2実施形態に係る切断装置60の取り付け態様は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、当該切断装置60を残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
ただし、本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60は、ガイド部材40の下方に樋部材62を備えている点が、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と相違する。
本第2実施形態に係る切断装置60は、本体部20と、ガイド部材40と、取り付け部材42と、樋部材62と、を備えてなる。
図18は、樋部材62を示す斜視図であり、図19は、樋部材62の取り付け状態を示す鉛直断面図(樋部材62の長手方向から見た鉛直断面図)である。図20は、樋部材62が取り付け部材42に取り付けられた状態を示す斜め上方から見た斜視図であり、図21は、前記状況を斜め下方から見た斜視図であり、図22は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。
樋部材62は、図18に示すように、本体部62Aと、2つの端部壁62Bと、導水管62Cと、を有してなる。
本体部62Aは、その長手方向から見た形状がU字型になっており、上方は開口されている。本体部62Aの両端部には端部壁62Bが設けられており、本体部62Aおよび2つの端部壁62Bによって、上方が開口した容器が構成されている。本体部62Aの底部には導水管62Cが連結されており、樋部材62の内部に貯まった水は、導水管62Cを介して外部に排出できるようになっている。導水管62Cの下端部に図示せぬゴムホース等を取り付け、そのゴムホース等で、樋部材62の内部に貯まった水を所定の場所に導くことができる。
本第2実施形態に係る切断装置60の取り付け部材42は、図19に示すように、下端部42A2の先端に取り付け板42A4を備えており、樋部材62の本体部62Aの側部が、ボルト62Dおよびナット62Eによって取り付け板42A4に取り付けられている。このようにして、樋部材62は取り付け部材42に取り付けられており、樋部材62は、その長手方向がガイド部材40の長手方向と略平行になるように、かつ、ガイド部材40の下方に位置するように配置されている。
本第2実施形態に係る切断装置60は、樋部材62を備えているので、当該切断装置60による残存コンクリート102Bの切断時に、冷却や粉塵発生防止等のために水を用いても、集水作業は容易である。
樋部材62の取り付けは、第1実施形態に係る切断装置10を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャート(図11参照)において、ステップS4で、取り付け部材42へガイド部材40を取り付けた後に、取り付け部材42へ樋部材62を取り付けるようにすればよい。
また、樋部材62の取り外しは、ステップS15で、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しと同時に行えばよい。
(3)第3実施形態
(3−1)第3実施形態の構成
図23は、本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上の既設コンクリート床版102を切断している状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図24は、前記状況を下方から見た平面図であり、図25は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。
本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70(以下、単に切断装置70と記載することがある。)の配置位置は、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。
本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70の取り付け態様は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置70の本体部72の取り付け部34を既設主桁104のウェブ104Bにボルト37およびナット37Aで取り付ける取り付け態様である。本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70は、この取り付け態様が、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と相違する。本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70の説明において、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
また、本第3実施形態に係る切断装置70の配置位置は、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。したがって、本第3実施形態に係る切断装置70の配置位置は、その重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置である。このため、本第3実施形態に係る切断装置70を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができ、複数設置した本第3実施形態に係る切断装置70によって、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に、既設コンクリート床版102の切断を行うことができる。
また、本第3実施形態に係る切断装置70の配置位置は、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であるので、ワイヤーソー30による既設コンクリート床版102の切断は、上方から見て、既設主桁104の長手方向と略直交する方向に全体として進行する。
本第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置70の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様であるため、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102Aを撤去しなくても、当該切断装置70の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付けることができる。
このため、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断しなくても、既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に、上フランジ104Aの上面近傍について既設コンクリート床版102を切断装置70によって切断することができる。
したがって、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断せずに、クレーン等で一度に吊り上げて撤去することが可能な場合がある。この場合には、本第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70を用いることにより、交通規制の時間をより短くすることができる。
また、本第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置70の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様であるため、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(3−2)第3実施形態の施工手順
図26は、本発明の第3実施形態に係る切断装置70を用いて、既設コンクリート床版102の切断を行う場合の施工手順を示すフローチャートである。ただし、図26のステップS35の工程、ステップS36の工程、およびステップS41の工程は、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての既設コンクリート床版102の切断と直接的に関連するわけではなく、また、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての既設コンクリート床版102の切断を実施する上で必須の工程ではないが、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての既設コンクリート床版102の切断を実施して既設コンクリート床版102を撤去する際には通常行う工程であるので、説明の都合上、図26のフローチャートに記載している。図26のフローチャートを参照しつつ、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての既設コンクリート床版102の切断を実施して既設コンクリート床版102の撤去を行う施工手順を説明する。
ステップS31〜S34と、ステップS35およびS36とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS31〜S34の工程を行った後、ステップS35およびS36の工程を行ってもよいし、ステップS35およびS36の工程を行った後、ステップS31〜S34の工程を行ってもよい。ただし、ステップS37の工程に入る前までに、ステップS31〜S36の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS31〜S36の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
ステップS31では、ワイヤーソー30を通すための貫通孔50(図1、図6および図7等参照)を既設コンクリート床版102に削孔する。貫通孔50を削孔する部位は、既設主桁104の上フランジ104Aの近傍付近であり、橋軸直角方向(既設主桁104の長手方向と直交する水平方向)に削孔する。なお、図1、図6および図7等に記載の貫通孔50は残存コンクリート102Bに対して設けられているが、既設コンクリート床版102に対しても同様の部位に貫通孔を設けることができるので、図1、図6および図7等に記載の残存コンクリート102Bを既設コンクリート床版102と置き換え、かつ、既設コンクリート床版102に設けた同様の部位の貫通孔を、貫通孔50と称して以下の説明を行うこととする(本願明細書の他の箇所においても同様とする。)。
ステップS31で設けた貫通孔50の入り口近傍付近および出口近傍付近について、橋軸方向に幅を広げるようにコンクリートをはつり、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付けられるようにする(ステップS32)。
そして、ステップS32でコンクリートをはつった部位に、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに、図6に示すように取り付ける(ステップS33)。図6では、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の片側の端部に取り付けた状況を記載しているが、取り付け部材42は既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付ける。
そして、ステップS33で取り付けた取り付け部材42にガイド部材40を、図7に示すように取り付ける(ステップS34)。
ステップS35では、撤去対象の既設コンクリート床版102の表面の舗装を撤去し、ステップS36で壁高欄を切断・撤去する。本発明の第3実施形態に係る切断装置70の本体部72は、既設主桁104のウェブ104Bに取り付けられており、既設主桁104間の既設コンクリート床版102の部位102Aを撤去しなくても取り付けることができるので、本発明の第3実施形態に係る切断装置70を用いて既設コンクリート床版102の切断を行う場合、当該切断装置70によって既設コンクリート床版102の切断を行う前に、既設主桁104間の既設コンクリート床版102の部位102Aを撤去することは行わない。また、転倒防止部材54を設置することも不要である。
ステップS31〜S36の工程を終えた後、切断装置70の本体部72を、既設主桁104の側方(既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する方向)に配置して、当該既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける(ステップS37)。具体的には、メイン支柱22の一端部の取り付け部34を、ボルト37およびナット37Aによって当該既設主桁104のウェブ104Bに取り付けるとともに、ワイヤーソー30の両端部を2つの貫通孔50にそれぞれ入り口側(切断装置70の重心位置がある側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置70の重心位置がある側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面の近傍の既設コンクリート床版102の部位を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置70の全体を、当該既設主桁104に取り付ける。
ステップS37での切断装置70の本体部72の取り付け後、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱22の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位の周囲に接触させつつ回転させ、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS38)。
ステップS38での既設コンクリート床版102の切断を終えたら、切断装置70の本体部72を当該既設主桁104のウェブ104Bから取り外す(ステップS39)。
次に、切断を終えた既設コンクリート床版102の橋軸直角方向に位置する他の既設コンクリート床版102についても同様の切断が必要かどうか判断し(ステップS40)、他の既設コンクリート床版102についても同様の切断が必要な場合にはステップS37に戻り、ステップS37〜S39の工程を同様に行う。他の既設コンクリート床版102について同様の切断が必要でない場合は、ステップS41に進み、切断後(既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断した後)の既設コンクリート床版102を、既設主桁104の長手方向に切れ目を入れることなく、クレーン等の吊り上げ手段200で一度に吊り上げて撤去する(ただし、吊り上げる既設コンクリート床版102の重量とクレーンの吊り上げ能力との関係等から、既設コンクリート床版102に既設主桁104の長手方向に切れ目を入れて、分割してから複数回に分けて吊り上げた方が好ましければ、そのようにする。)。
なお、本第3実施形態に係る切断装置70の配置位置は、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であり、当該切断装置70の重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置である。また、その取り付け態様は、切断装置70の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様である。
したがって、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての切断は、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所において同時に実施することができる。このため、既設コンクリート床版102の撤去の際、交通規制の時間を短くすることができる。
また、前述したように、本第3実施形態に係る切断装置70を用いての切断においては、切断後(既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断した後)の既設コンクリート床版102を、既設主桁104の長手方向に切れ目を入れることなく、クレーン等の吊り上げ手段200で一度に吊り上げて撤去することが可能な場合もある。この場合には、既設コンクリート床版102の撤去の際、交通規制の時間をより短くすることができる。
(4)第4実施形態
図27は、本発明の第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上の既設コンクリート床版102を切断している状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図28は、前記状況を下方から見た平面図であり、図29は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。本第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74は、第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70に樋部材76を追加した実施形態であるので、本第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74の説明において、第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本発明の第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74(以下、単に切断装置74と記載することがある。)は、第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70と同様に、当該切断装置74の本体部72の取り付け部34を既設主桁104のウェブ104Bにボルト37およびナット37Aで取り付ける取り付け態様であり、本第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74の配置位置は、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。
ただし、本発明の第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74は、ガイド部材40の下方に樋部材76を備えている点が、第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70と相違する。
本第4実施形態に係る切断装置74は、本体部72と、ガイド部材40と、取り付け部材42と、樋部材76と、を備えてなる。
本第4実施形態に係る切断装置74は、第3実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置70と同様に、当該切断装置74の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様であるため、メイン支柱22と干渉しないようにする関係上、樋部材76の高さは、第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置60の樋部材62の高さよりも低くなっている。それ以外については、樋部材76の構成は、樋部材62と同様である。
本第4実施形態に係る切断装置74は、樋部材76を備えているので、既設コンクリート床版102の切断時(既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に既設コンクリート床版102を切断する際)に、冷却や粉塵発生防止等のために水を用いても、集水作業は容易である。
樋部材76の取り付けは、第3実施形態に係る切断装置70を用いて、既設コンクリート床版102の切断を行う場合の施工手順を示すフローチャート(図26参照)において、ステップS34で、取り付け部材42へガイド部材40を取り付けた後に、取り付け部材42へ樋部材76を取り付けるようにすればよい。
また、樋部材76の取り外しは、ステップS42で、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しと同時に行えばよい。
また、本第4実施形態に係る切断装置74は、第3実施形態に係る切断装置70と同様に、当該切断装置74の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様であるため、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断しなくても、既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に、上フランジ104Aの上面近傍について既設コンクリート床版102を切断装置74によって切断することができる。
したがって、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断せずに、クレーン等で一度に吊り上げて撤去することが可能な場合がある。この場合には、本第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74を用いることにより、交通規制の時間をより短くすることができる。
また、本第4実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置74は、第1、第2実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10、60とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置74の本体部72を既設主桁104のウェブ104Bに取り付ける取り付け態様であるため、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(5)第5実施形態
(5−1)第5実施形態の構成
図30は、本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図31は、前記状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図32は、前記状況を上方から見た平面図である。
本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80(以下、単に切断装置80と記載することがある。)の配置位置は、既設主桁104の上フランジ104Aの上方であって、残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向(橋軸方向)に重心位置が位置するような配置位置である。
本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80の本体部82の取り付け態様は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面ではなく、当該切断装置80の本体部82を残存コンクリート102Bの橋軸方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80は、配置位置および取り付け態様が、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と相違する。本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80の説明において、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80の配置位置は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、既設主桁104の上フランジ104Aの上方であって、残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向(橋軸方向)に重心位置が位置するような配置位置であるため、当該切断装置80は既設主桁104の上フランジ104Aによって下方から支持されている。このため、本第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80を用いて残存コンクリート102Bの切断を行う場合、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(5−2)第5実施形態の施工手順
図33は、本第5実施形態に係る切断装置80を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャートである。ただし、図33のステップS55の工程、ステップS56の工程における壁高欄の切断・撤去、およびステップS60の工程は、本第5実施形態に係る切断装置80を用いての残存コンクリート102Bの切断と直接的に関連するわけではなく、また、本第5実施形態に係る切断装置80を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施する上で必須の工程ではないが、本第5実施形態に係る切断装置80を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施して残存コンクリート102Bを撤去する際には通常行う工程であるので、説明の都合上、図33のフローチャートに記載している。図33のフローチャートを参照しつつ、本第5実施形態に係る切断装置80を用いての残存コンクリート102Bの切断を実施して既設コンクリート床版102の撤去を行う施工手順を説明する。
ステップS51〜S54と、ステップS55およびS56とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS51〜S54の工程を行った後、ステップS55およびS56の工程を行ってもよいし、ステップS55およびS56の工程を行った後、ステップS51〜S54の工程を行ってもよい。ただし、ステップS57の工程に入る前までに、ステップS51〜S56の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS51〜S56の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
ステップS51では、ワイヤーソー30を通すための貫通孔50(図1、図6および図7等参照)を残存コンクリート102Bに削孔する。貫通孔50を削孔する部位は、既設主桁104の上フランジ104Aの近傍付近であり、橋軸直角方向(既設主桁104の長手方向と直交する水平方向)に削孔する。
次に、ステップS51で設けた貫通孔50の入り口近傍付近および出口近傍付近について、橋軸方向に幅を広げるように残存コンクリート102Bをはつり、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付けられるようにする(ステップS52)。
次に、ステップS52で残存コンクリート102Bをはつった部位に、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに、図6に示すように取り付ける(ステップS53)。図6では、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の片側の端部に取り付けた状況を記載しているが、取り付け部材42は既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付ける。
次に、ステップS53で取り付けた取り付け部材42にガイド部材40を、図7に示すように取り付ける(ステップS54)。
ステップS55では、撤去対象の既設コンクリート床版102の表面の舗装を撤去し、ステップS56で壁高欄および主桁間の床版を切断・撤去する。ステップS56を終えると、図52(A)に示すように、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態になる。
図12は、ステップS51〜S56の工程を終えた後の状態を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。図12に示すように、ステップS51〜S56の工程を終えた後の状態は、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態で、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に、ガイド部材40および取り付け部材42を取り付けた状態である。
ステップS51〜S56の工程を終えた後、切断装置80の本体部82を、既設主桁104の上フランジ104Aの上方であって、残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向(橋軸方向)に重心位置が位置するように配置する。そして、本発明の第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80の本体部82を、残存コンクリート102Bの橋軸方向の側の側面に取り付ける(ステップS57)。具体的には、メイン支柱22の一端部の取り付け部34を、アンカーボルト36およびナット36Aによって残存コンクリート102Bの橋軸方向の側の側面に取り付けるとともに、ワイヤーソー30の一端部を貫通孔50に挿通させて、他端部と連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置80の本体部82の全体を、残存コンクリート102Bに取り付ける。
ステップS57で、切断装置80の本体部82の全体を、残存コンクリート102Bに取り付けることが完了したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱22の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を残存コンクリート102Bの周囲に接触させつつ回転させ、残存コンクリート102Bの下端部を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS58)。
ステップS58で残存コンクリート102Bの切断を終えたら、切断装置80の本体部82を残存コンクリート102Bから取り外す(ステップS59)。
次に、既設主桁104上の切断後の残存コンクリート102Bを、クレーン等の吊り上げ手段200で吊り上げて撤去する(ステップS60)。
そして最後に、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しを行って、残存コンクリート102Bの撤去の1つのサイクルを完了する(ステップS61)。
(6)第6実施形態
図34は、本発明の第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図35は、前記状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図36は、前記状況を上方から見た平面図であり、図37は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。本第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84は、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80に樋部材62を追加した実施形態であるので、本第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84の説明において、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本発明の第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84(以下、単に切断装置84と記載することがある。)は、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80と同様に、その配置位置が既設主桁104の上フランジ104Aの上方であって、残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向(橋軸方向)に重心位置が位置するような配置位置である。
また、本発明の第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84の本体部82の取り付け態様は、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80と同様に、当該切断装置84の本体部82を残存コンクリート102Bの橋軸方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
ただし、本発明の第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84は、ガイド部材40の下方に樋部材62を備えている点が、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80と相違する。
本第6実施形態に係る切断装置84は、本体部82と、ガイド部材40と、取り付け部材42と、樋部材62と、を備えてなる。本第6実施形態に係る切断装置84の樋部材62は、第2実施形態に係る切断装置60の樋部材62と同一であるので、説明は省略する。
本第6実施形態に係る切断装置84は、樋部材62を備えているので、既設コンクリート床版102の切断時(既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に既設コンクリート床版102を切断する際)に、冷却や粉塵発生防止等のために水を用いても、集水作業は容易である。
樋部材62の取り付けは、第5実施形態に係る切断装置80を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャート(図33参照)において、ステップS54で、取り付け部材42へガイド部材40を取り付けた後に、取り付け部材42へ樋部材62を取り付けるようにすればよい。
また、樋部材62の取り外しは、ステップS61で、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しと同時に行えばよい。
また、本第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84の配置位置は、第5実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置80と同様に、既設主桁104の上フランジ104Aの上方であって、残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向(橋軸方向)に重心位置が位置するような配置位置であるため、当該切断装置84は既設主桁104の上フランジ104Aによって下方から支持されている。このため、本第6実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置84を用いて残存コンクリート102Bの切断を行う場合、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(7)第7実施形態
(7−1)第7実施形態の構成
図38は、本発明の第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図39は、前記状況を上方から見た平面図であり、図40は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86の説明において、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本発明の第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86(以下、単に切断装置86と記載することがある。)は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、既設コンクリート床版102の部位のうち、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102Aをクレーン等の吊り上げ手段200(図51参照)で吊り上げて撤去した後の状態(既設主桁104の上フランジ104A上に残存コンクリート102Bが残った状態)(図52(A)参照)において、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断する際に用いる実施形態である。また、本第7実施形態に係る切断装置86の配置位置は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。また、本第7実施形態に係る切断装置86の取り付け態様は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同様に、当該切断装置86を残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
ただし、本発明の第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86の本体部87のメイン支柱23は、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの側面の間を架け渡すことができるように長さが長く、かつ、伸縮可能になっており、さらに、メイン支柱23の両端部の下方には、4つの補助プーリ28が取り付けられた補助支柱24が取り付けられている。メイン支柱23の両端部の取り付け部34は、長手方向と直交する方向に隣り合うように配置されている既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの対向する側面それぞれにアンカーボルト36およびナット36Aによって取り付けられており、メイン支柱23は隣り合う残存コンクリート102Bの間を架け渡すように取り付けられている。ガイド部材40は、隣り合うように配置されている既設主桁104の上フランジ104Aにそれぞれ取り付けられている。本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86は、このような構成を備えているので、ワイヤーソー30を架け替えることで、隣り合うように配置されている既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bそれぞれを順次切断することができるようになっている。
このため、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの1つの切断が完了するごとに切断装置86を取り外す必要はなく、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの1つの切断が完了したら、ワイヤーソー30のみを架け替えることで、隣り合うように配置されているもう一方の既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの切断を行うことができる。
このため、本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86を用いることにより、既設コンクリート床版102の切断作業および撤去作業をより効率的に行うことができる。
また、本第7実施形態に係る切断装置86の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置である。したがって、本第7実施形態に係る切断装置86の配置位置は、その重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置である。このため、本第7実施形態に係る切断装置86を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができ、複数設置した本第7実施形態に係る切断装置86によって、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に、残存コンクリート102Bの切断を行うことができる。
また、本第7実施形態に係る切断装置86の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であるので、ワイヤーソー30による残存コンクリート102Bの切断は、上方から見て、既設主桁104の長手方向と略直交する方向に全体として進行する。
なお、本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86は、メイン支柱23の両端部の取り付け部34が、長手方向と直交する方向に隣り合うように配置されている既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの対向する側面それぞれに取り付けられており、メイン支柱23が、隣り合う残存コンクリート102Bの間を架け渡すように取り付けられている。このため、本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86を用いて残存コンクリート102Bの切断を行う場合、転倒防止部材54を設置しなくても、切断装置86の本体部87の落下に対する安全性が確保できることも考えられる。切断装置86の本体部87の落下に対する安全性が確保できる場合には、本第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86を用いて残存コンクリート102Bの切断を行う際に転倒防止部材54を設置しなくてもよい。転倒防止部材54を設置する場合は、転倒防止部材54を本第7実施形態に係る切断装置86の構成部材の1つと考えることもできる。
(7−2)第7実施形態の施工手順
図41は、本第7実施形態に係る切断装置86を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャートである。ただし、図41のステップS75の工程、ステップS76の工程における壁高欄の切断・撤去、およびステップS83の工程は、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版の切断と直接的に関連するわけではなく、また、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版の切断を実施する上で必須の工程ではないが、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版の切断を実施して既設コンクリート床版を撤去する際には通常行う工程であるので、説明の都合上、図41のフローチャートに記載している。図41のフローチャートを参照しつつ、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版の切断を実施して既設コンクリート床版の撤去を行う施工手順を説明する。
ステップS71〜S74と、ステップS75およびS76とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS71〜S74の工程を行った後、ステップS75およびS76の工程を行ってもよいし、ステップS75およびS76の工程を行った後、ステップS71〜S74の工程を行ってもよい。ただし、ステップS77の工程に入る前までに、ステップS71〜S76の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS71〜S76の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
ステップS71では、ワイヤーソー30を通すための貫通孔50(図1、図6および図7等参照)を残存コンクリート102Bに削孔する。貫通孔50を削孔する部位は、既設主桁104の上フランジ104Aの近傍付近であり、橋軸直角方向(既設主桁104の長手方向と直交する水平方向)に削孔する。
ステップS71で設けた貫通孔50の入り口近傍付近および出口近傍付近について、橋軸方向に幅を広げるようにコンクリートをはつり、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付けられるようにする(ステップS72)。
そして、ステップS72でコンクリートをはつった部位に、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに、図6に示すように取り付ける(ステップS73)。図6では、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の片側の端部に取り付けた状況を記載しているが、取り付け部材42は既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付ける。
そして、ステップS73で取り付けた取り付け部材42にガイド部材40を、図7に示すように取り付ける(ステップS74)。
ステップS75では、撤去対象の既設コンクリート床版102の表面の舗装を撤去し、ステップS76で壁高欄および主桁間の床版を切断・撤去する。ステップS76を終えると、図52(A)に示すように、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態になる。
図12は、ステップS71〜S76の工程を終えた後の状態を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。図12に示すように、ステップS71〜S76の工程を終えた後の状態は、既設主桁104の上フランジ104Aの上方のみに残存コンクリート102Bが残った状態で、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に、ガイド部材40および取り付け部材42を取り付けた状態である。
ステップS71〜S76の工程を終えた後、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bを架け渡すように転倒防止部材54を配置し、転倒防止部材54の両端部を、架け渡した残存コンクリート102Bのそれぞれの上面にアンカーボルト54Aで取り付けて、図38〜図40に示すように、転倒防止部材54の設置を行う(ステップS77)。
次に、切断装置86を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの間(転倒防止部材54を架け渡した隣り合う残存コンクリート102Bの間)に配置して、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの対向する側面へ架け渡すように取り付ける(ステップS78)。具体的には、メイン支柱23の一端部の取り付け部34を、アンカーボルト36およびナット36Aによって一方の残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付け、かつ、メイン支柱23の他方の一端部の取り付け部34を、アンカーボルト36およびナット36Aによって他方の残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付ける。そして、一方の残存コンクリート102Bについて、ワイヤーソー30の両端部を2つの貫通孔50にそれぞれ入り口側(切断装置86の重心位置がある側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置86の重心位置がある側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの一方を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置86の本体部87を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの両方に架け渡すように取り付けるとともに、切断装置86のワイヤーソー30を所定の位置に配置して、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの両方への切断装置86の取り付けを行う。
ステップS78で、切断装置86を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの両方に取り付けることが完了したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱23の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を一方の残存コンクリート102Bの周囲に接触させつつ回転させ、一方の残存コンクリート102Bの下端部を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS79)。
ステップS79で一方の残存コンクリート102Bの切断を終えたら、ワイヤーソー30を架け替えて、残存コンクリート102Bの他方を水平方向に取り囲むように設置する(ステップS80)。具体的には、他方の残存コンクリート102Bについて、ワイヤーソー30の両端部を2つの貫通孔50にそれぞれ入り口側(切断装置86の重心位置がある側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置86の重心位置がある側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方を水平方向に取り囲むように設置する。
ステップS80で、ワイヤーソー30を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの他方に架け替えることが完了したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱23の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を他方の残存コンクリート102Bの周囲に接触させつつ回転させ、他方の残存コンクリート102Bの下端部を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS81)。
ステップS81で他方の残存コンクリート102Bの切断を終えたら、切断装置86を、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bから取り外す(ステップS82)。
次に、隣り合う既設主桁104上の切断後の残存コンクリート102Bを、図13に示すように、転倒防止部材54とともにクレーン等の吊り上げ手段200で吊り上げて撤去する(ステップS83)。ステップS83で、橋軸直角方向に隣り合う残存コンクリート102Bの撤去の1つのサイクルを完了する。
なお、本第7実施形態に係る切断装置86の配置位置は、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bに対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であり、切断装置86の重心位置が、上方から見て既設主桁104の側方に位置するような配置位置である。また、その取り付け態様は、切断装置86を残存コンクリート102Bの橋軸直角方向の側の側面に取り付ける取り付け態様である。
したがって、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版102の切断は、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所において同時に実施することができる。このため、既設コンクリート床版102の撤去の際、交通規制の時間を短くすることができる。
また、本第7実施形態に係る切断装置86を用いての既設コンクリート床版102の切断においては、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの1つの切断が完了するごとに切断装置86を取り外す必要はなく、既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの1つの切断が完了したら、ワイヤーソー30のみを架け替えることで、隣り合うように配置されているもう一方の既設主桁104の上方の残存コンクリート102Bの切断を行うことができる。
このため、本第7実施形態に係る切断装置86を用いることにより、既設コンクリート床版102の切断作業および撤去作業をより効率的に行うことができる。
(8)第8実施形態
図42は、本発明の第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上に残った残存コンクリート102Bを切断している状況を示す斜め上方から見た斜視図であり、図43は、前記状況を上方から見た平面図であり、図44は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。
本第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88は、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86に樋部材62を追加した実施形態であるので、本第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88の説明において、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88は、ガイド部材40の下方に樋部材62を備えている点が、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86と相違する。第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88の備える樋部材62は、第2実施形態に係る切断装置60の樋部材62と同様であるので、説明は省略する。
本第8実施形態に係る切断装置88は、樋部材62を備えているので、当該切断装置88による残存コンクリート102Bの切断時に、冷却や粉塵発生防止等のために水を用いても、集水作業は容易である。
樋部材62の取り付けは、第7実施形態に係る切断装置86を用いて、残存コンクリート102Bの切断を行う場合の施工手順を示すフローチャート(図41参照)において、ステップS74で、取り付け部材42へガイド部材40を取り付けた後に、取り付け部材42へ樋部材62を取り付けるようにすればよい。
また、樋部材62の取り外しは、ステップS84で、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しと同時に行えばよい。
なお、本第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88は、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86に樋部材62を追加した実施形態であるので、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86の発揮できる効果は、同様に発揮することができ、本第8実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置88は、第7実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置86の発揮できる効果に加えて、樋部材62を備えることによる前記効果をさらに発揮することができる。
(9)第9実施形態
(9−1)第9実施形態の構成
図45は、本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上の既設コンクリート床版102を切断している状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図46は、前記状況を斜め上方から見た斜視図であり、図47は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。図46では、図示の都合上、既設コンクリート床版102は想像線(2点鎖線)で記載している。本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の説明において、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91(以下、単に切断装置91と記載することがある。)は、本体部92と、垂直取り付け部94と、ガイド部材40と、取り付け部材42と、を備えてなる。
本体部92は、メイン支柱93と、補助支柱24と、駆動プーリ26と、補助プーリ28と、ワイヤーソー30と、駆動装置32と、を有してなり、垂直取り付け部94を介して既設コンクリート床版102の下面に取り付けられている。
メイン支柱93および補助支柱24は、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の骨組みとなる部材であり、細長い四角柱状の鋼製管状体である。メイン支柱93の両端に、補助支柱24の中央部が、メイン支柱93および補助支柱24のお互いの長手方向が略直交するように溶接で連結されており、切断装置91が既設コンクリート床版102の下面に取り付けられた状態を下方から見ると、切断装置91の骨格はH形になっている。
メイン支柱93と補助支柱24との交点部(補助支柱24の中央部)の上面には、垂直取り付け部94の下端が溶接で取り付けられており、本第9実施形態に係る切断装置91の本体部92は、垂直取り付け部94を介して既設コンクリート床版102の下面に取り付けられている。
メイン支柱93には、駆動プーリ26および駆動装置32が取り付けられており、補助支柱24には、4つの補助プーリ28が取り付けられている。
駆動プーリ26および4つの補助プーリ28は、略同一平面内に位置しており、駆動プーリ26および4つの補助プーリ28を架け渡されたワイヤーソー30は、この略同一平面内を回転して進行するようになっている。
ワイヤーソー30が進行する駆動力は、駆動装置32が駆動プーリ26を回転駆動させることにより得られ、駆動プーリ26が回転駆動すると、その回転方向にワイヤーソー30は進行する。
メイン支柱93には、駆動プーリ26がメイン支柱93の長手方向に移動できるようにレール機構(図示せず)が設けられており、また、駆動装置32は、駆動プーリ26を回転駆動させるだけでなく、駆動プーリ26をメイン支柱93の長手方向に移動させる動力機構も有しており、駆動プーリ26をメイン支柱93の長手方向の適切な位置に移動させて、ワイヤーソー30の張力を安定的に調整することができるようになっている。
ワイヤーソー30は、切断装置91の刃に相当する部材であり、ワイヤーソー30が切断対象物(ここでの切断対象物は、既設コンクリート床版102の部位のうち、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置する部位)を取り囲むように接触しながら回転して進行することにより、前記切断対象物を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する。ワイヤーソー30は、前記切断対象物のコンクリートだけでなく、その内部に存在するずれ止め106も同時に切断することができる。ワイヤーソー30としては、例えば、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着したダイヤモンドワイヤーを用いることができる。ワイヤーソー30は、2箇所の貫通孔50を挿通させて、前記切断対象物を上フランジ104Aの上面と略平行な面内で取り囲むように配置する。貫通孔50は、前記切断対象物の下部に設けられた貫通孔であり、その長手方向が、既設主桁104の長手方向と略直交する方向で、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向となるように設ける。
ガイド部材40は、ワイヤーソー30が下方向(既設主桁104の上フランジ104Aに接触する方向)にずれないように、ワイヤーソー30の位置を案内するガイド部材であり、断面がL字形の鋼材(アングル鋼材)である。ただし、ワイヤーソー30の位置を案内するガイド機能を適切に発揮できる部材であれば、ガイド部材40の材質や形状は特には限定されず、ガイド部材40として、例えば断面が溝形の鋼材を用いてもよい。
ガイド部材40は、図46に示すように、取り付け部材42によって、既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に、所定の配置位置となるように取り付けられている。また、ガイド部材40は、図45に示すように、切断装置91の本体部92に隣接して橋軸直角方向に隣り合う両方の既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられている。
ガイド部材40が既設主桁104の上フランジ104Aに取り付けられていることにより、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いて既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位を切断している最中に、ワイヤーソー30が既設主桁104の上フランジ104Aと接触するリスクが大幅に減じられており、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いることにより、既設主桁104に与える損傷を極力少なくしつつ、既設主桁104の上フランジ104A上のコンクリートとずれ止め106を、既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に同時に切断することができる。
垂直取り付け部94は、定着鋼板94Aと、アンカーボルト94Bと、垂直連結部材94Cと、を有してなり、本第9実施形態に係る切断装置91の本体部92を既設コンクリート床版102の下面に取り付ける役割を有する。
定着鋼板94Aは、垂直取り付け部94の上端部に位置する鋼板部材であり、定着鋼板94Aの下面に垂直連結部材94Cの上端が溶接で取り付けられており、定着鋼板94Aは、フランジ状に設けられている。定着鋼板94Aは、既設コンクリート床版102の下面に接するように配置されていて、アンカーボルト94Bによって既設コンクリート床版102の下面に取り付けられる。
垂直連結部材94Cは、四角柱状の鋼製管状体であり、その上端が定着鋼板94Aの下面に溶接で取り付けられており、その下端が本体部92の補助支柱24の中央部の上面に溶接で取り付けられている。
本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の取り付け態様は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置91の本体部92を既設コンクリート床版102の下面に垂直取り付け部94を介して取り付ける取り付け態様であり、本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の配置位置は、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間の既設コンクリート床版102の下方に重心位置が位置するような配置位置である。
このため、本第9実施形態に係る切断装置91を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができ、複数設置した本第9実施形態に係る切断装置91によって、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に、既設コンクリート床版102の切断を行うことができる。
また、図45に示すように、本第9実施形態に係る切断装置91の配置位置は、上方から見て、既設主桁104に対して既設主桁104の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)に重心位置が位置するような配置位置であるので、ワイヤーソー30による既設コンクリート床版102の切断は、上方から見て、既設主桁104の長手方向と略直交する方向に全体として進行する。
また、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置91の本体部92を垂直取り付け部94を介して既設コンクリート床版102の下面に取り付ける取り付け態様であるため、切断装置91の使用は、既設コンクリート床版102の部位102A(既設コンクリート床版102の部位のうち、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102A)の撤去がなされていないことが前提となる。
このため、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断していない状態で、切断装置91による切断(既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に、上フランジ104Aの上面近傍について既設コンクリート床版102を切断)を行うことになる。
したがって、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いた場合、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断せずに、クレーン等で一度に吊り上げて撤去することが可能となる場合がある。この場合には、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いることにより、交通規制の時間をより短くすることができる。
さらに、本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の本体部92は、前述したように、メイン支柱93の両端部に、4つの補助プーリ28が取り付けられた補助支柱24が取り付けられている。また、ガイド部材40は、隣り合うように配置されている既設主桁104の上フランジ104Aにそれぞれ取り付けられている。このため、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いて既設コンクリート床版102の切断を行う場合には、ワイヤーソー30を架け替えることで、隣り合うように配置されている既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位を順次切断することができるようになっている。
このため、既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位の1つの切断が完了するごとに切断装置91を取り外す必要はなく、既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位について切断が完了したら、ワイヤーソー30のみを架け替えることで、隣り合うように配置されているもう一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位についても切断を行うことができる。
このため、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いることにより、既設コンクリート床版102の切断作業および撤去作業をより効率的に行うことができる。
また、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91は、第1実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置10とは相違し、残存コンクリート102Bに取り付けるのではなく、当該切断装置91の本体部92を垂直取り付け部94を介して既設コンクリート床版102の下面に取り付ける取り付け態様であるため、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(9−2)第9実施形態の施工手順
図48は、本第9実施形態に係る切断装置91を用いて、既設コンクリート床版102の切断を行う場合の施工手順を示すフローチャートである。ただし、図48のステップS95の工程、ステップS96の工程における壁高欄の切断・撤去、およびステップS103の工程は、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断と直接的に関連するわけではなく、また、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断を実施する上で必須の工程ではないが、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断を実施して既設コンクリート床版を撤去する際には通常行う工程であるので、説明の都合上、図48のフローチャートに記載している。図48のフローチャートを参照しつつ、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断を実施して既設コンクリート床版の撤去を行う施工手順を説明する。
ステップS91〜S94と、ステップS95およびS96とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS91〜S94の工程を行った後、ステップS95およびS96の工程を行ってもよいし、ステップS95およびS96の工程を行った後、ステップS91〜S94の工程を行ってもよい。ただし、ステップS97の工程に入る前までに、ステップS91〜S96の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS91〜S96の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
ステップS91では、ワイヤーソー30を通すための貫通孔50(図1、図6および図7等参照)を既設コンクリート床版102に削孔する。貫通孔50を削孔する部位は、既設主桁104の上フランジ104Aの近傍付近であり、橋軸直角方向(既設主桁104の長手方向と直交する水平方向)に削孔する。
ステップS91で設けた貫通孔50の入り口近傍付近および出口近傍付近について、橋軸方向に幅を広げるようにコンクリートをはつり、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付けられるようにする(ステップS92)。
そして、ステップS92でコンクリートをはつった部位に、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aに、図6に示すように取り付ける(ステップS93)。図6では、取り付け部材42を既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の片側の端部に取り付けた状況を記載しているが、取り付け部材42は既設主桁104の上フランジ104Aの橋軸直角方向の両端部に取り付ける。
そして、ステップS93で取り付けた取り付け部材42にガイド部材40を、図7に示すように取り付ける(ステップS94)。
ステップS95では、撤去対象の既設コンクリート床版102の表面の舗装を撤去し、ステップS96で壁高欄および主桁間の床版を切断・撤去する。
ステップS91〜S94と、ステップS95およびS96とは、作業の順番は特には限定されず、どちらを先に行ってもよい。即ち、ステップS91〜S94の工程を行った後、ステップS95およびS96の工程を行ってもよいし、ステップS95およびS96の工程を行った後、ステップS91〜S94の工程を行ってもよい。ただし、ステップS97の工程に入る前までに、ステップS91〜S96の全ての工程を終えておく必要がある。なお、ステップS91〜S96の工程は、撤去対象範囲の全ての対象物に対して行う。
本発明の第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91は、既設コンクリート床版102の下面に垂直取り付け部94を介して取り付ける。したがって、本第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91を用いての切断においては、既設コンクリート床版102の部位102A(既設コンクリート床版102の部位のうち、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間に位置し、かつ、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置しない部位102A)の撤去がなされていないことが前提となる。
このため、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断していない状態で、切断装置91による切断(既設主桁104の上フランジ104Aの面と略平行(略水平方向)に、上フランジ104Aの上面近傍について既設コンクリート床版102を切断)を行うことになる。
したがって、切断装置91を用いて既設コンクリート床版102の切断を行った場合、既設コンクリート床版102を既設主桁104の長手方向に沿って切断せずに、クレーン等で一度に吊り上げて撤去することが可能となる場合がある。この場合には、切断装置91を用いることにより、交通規制の時間をより短くすることができる。
また、切断装置91を用いる場合、転倒防止部材54を設置することも不要である。
ステップS91〜S96の工程を終えた後、切断装置91を、既設コンクリート床版102の下面に垂直取り付け部94を介して取り付ける(ステップS97)。具体的には、垂直取り付け部94の定着鋼板94Aを、アンカーボルト94Bによって既設コンクリート床版102の下面に取り付ける。また、切断装置91を取り付けた位置の両側の既設主桁104のうちの一方の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位に設けた2つの貫通孔50に、ワイヤーソー30の両端部をそれぞれ入り口側(切断装置91の重心位置がある側)から挿通させて、挿通させた出口側(切断装置91の重心位置がある側とは反対側)で連結して、無端にして、ワイヤーソー30を、一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面の近傍の既設コンクリート床版102の部位を水平方向に取り囲むように設置する。このようにして、切断装置91の全体を、一方の既設主桁104に取り付ける。
ステップS97での切断装置91の取り付け後、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱93の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を、一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位の周囲に接触させつつ回転させ、一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS98)。
ステップS98で、切断装置91を取り付けた位置の両側の既設主桁104のうちの一方の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位の切断を終えたら、ワイヤーソー30の架け替えを行う(ステップS99)。具体的には、切断装置91を取り付けた位置の両側の既設主桁104のうちの他方の上フランジ104Aの上面の近傍の既設コンクリート床版102の部位を水平方向に取り囲むように、ワイヤーソー30を設置する。
ステップS99でのワイヤーソー30の架け替え後、駆動装置32によって、駆動プーリ26の位置(メイン支柱93の長手方向の位置)を調整して、ワイヤーソー30の張力を調整する。ワイヤーソー30の張力を適切に調整したら、駆動装置32によって、駆動プーリ26を回転駆動させ、ワイヤーソー30を、他方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位の周囲に接触させつつ回転させ、他方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、他方の既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断する(ステップS100)。
ステップS100で、切断装置91を取り付けた位置の両側の既設主桁104のうちの他方の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位の切断も終えたら、切断装置91を既設コンクリート床版102の下面から取り外す(ステップS101)。
次に、切断を終えた既設コンクリート床版102の部位の橋軸直角方向の他の部位についても同様の切断が必要かどうか判断し(ステップS102)、橋軸直角方向の他の部位についても同様の切断が必要な場合にはステップS97に戻り、ステップS98〜S101の工程を同様に行う。切断を終えた既設コンクリート床版102の部位の橋軸直角方向の他の部位について同様の切断が必要でない場合は、ステップS103に進み、切断後(既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断した後)の既設コンクリート床版102を、既設主桁104の長手方向に切れ目を入れることなく、クレーン等の吊り上げ手段200で一度に吊り上げて撤去する(ただし、吊り上げる既設コンクリート床版102の重量とクレーンの吊り上げ能力との関係等から、既設コンクリート床版102に既設主桁104の長手方向に切れ目を入れて、分割してから複数回に分けて吊り上げた方が好ましければ、そのようにする。)。
なお、本第9実施形態に係る切断装置91の配置位置は、橋軸直角方向に隣り合う既設主桁104の間の既設コンクリート床版102の下方に重心位置が位置するような配置位置であり、また、その取り付け態様は、切断装置91を当該既設コンクリート床版102の下面に取り付ける取り付け態様である。
このため、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版102の切断においては、用いる切断装置91を、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所に同時に設置することができ、複数設置した切断装置91によって、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所で同時に、既設コンクリート床版102の切断を行うことができる。
したがって、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断は、既設主桁104の長手方向に位置の異なる複数の箇所において同時に実施することができる。このため、既設コンクリート床版102の撤去の際、交通規制の時間を短くすることができる。
また、前述したように、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断においては、切断後(既設主桁104の上フランジ104Aの上面近傍の既設コンクリート床版102の部位を、当該既設主桁104の上フランジ104Aの上面と略平行な方向に切断した後)の既設コンクリート床版102を、既設主桁104の長手方向に切れ目を入れることなく、クレーン等の吊り上げ手段200で一度に吊り上げて撤去することが可能な場合もある。この場合には、既設コンクリート床版102の撤去の際、交通規制の時間をより短くすることができる。
さらに、本第9実施形態に係る切断装置91は、前述したように、メイン支柱93の両端部に、4つの補助プーリ28が取り付けられた補助支柱24が取り付けられている。このため、本第9実施形態に係る切断装置91を用いての既設コンクリート床版の切断では、ワイヤーソー30を架け替えることで、隣り合うように配置されている既設主桁104の上フランジ104Aの上方の既設コンクリート床版102の部位を順次切断することができるようになっている。
このため、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位の1つの切断が完了するごとに切断装置91を取り外す必要はなく、既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位について切断が完了したら、ワイヤーソー30のみを架け替えることで、隣り合うように配置されているもう一方の既設主桁104の上フランジ104Aの上方に位置する既設コンクリート床版102の部位についても同様に切断を行うことができる。
このため、本第9実施形態に係る切断装置91を用いることにより、既設コンクリート床版102の切断作業および撤去作業をより効率的に行うことができる。
また、本第9実施形態に係る切断装置91は、垂直取り付け部94を介して既設コンクリート床版102の下面に取り付ける取り付け態様であるため、転倒防止部材54を設置することは不要である。
(10)第10実施形態
図49は、本発明の第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95を用いて、既設主桁104の上フランジ104A上の既設コンクリート床版102を切断している状況を示す斜め下方から見た斜視図であり、図50は、前記状況を既設主桁104の長手方向から見た側面図である。
本第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95は、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91に樋部材62を追加した実施形態であるので、本第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95の説明において、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91と同一の部材または同一の部位には同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
本第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95は、ガイド部材40の下方に樋部材62を備えている点が、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91と相違する。第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95の備える樋部材62は、第2実施形態に係る切断装置60の樋部材62と同様であるので、説明は省略する。
本第10実施形態に係る切断装置95は、樋部材62を備えているので、当該切断装置95による残存コンクリート102Bの切断時に、冷却や粉塵発生防止等のために水を用いても、集水作業は容易である。
樋部材62の取り付けは、第10実施形態に係る切断装置95を用いて、既設コンクリート床版102の切断を行う場合の施工手順を示すフローチャート(図48参照)において、ステップS94で、取り付け部材42へガイド部材40を取り付けた後に、取り付け部材42へ樋部材62を取り付けるようにすればよい。
また、樋部材62の取り外しは、ステップS104で、ガイド部材40および取り付け部材42の取り外しと同時に行えばよい。
なお、本第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95は、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91に樋部材62を追加した実施形態であるので、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の発揮できる効果は、同様に発揮することができ、本第10実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置95は、第9実施形態に係る既設コンクリート床版の切断装置91の発揮できる効果に加えて、樋部材62を備えることによる前記効果をさらに発揮することができる。