本明細書において、共重合体に含まれるエチレン単位及びプロピレン単位とは、それぞれ、エチレン由来の構造単位及びプロピレン由来の構造単位を意味する。
[多層樹脂シート]
本実施形態に係る多層樹脂シートは、第1の樹脂分と、発泡剤と、を含む発泡剤含有樹脂組成物からなる第1層と、第2の樹脂分を含み、発泡剤を含まない発泡剤非含有樹脂組成物からなる第2層とを有する。
<発泡剤含有樹脂組成物>
発泡剤含有樹脂組成物における第1の樹脂分は、エチレン単独重合体、又はエチレン単位を50モル%以上含有する、エチレンと他のオレフィンとの共重合体を含む。このような樹脂分を用いることで、ポリ塩化ビニル樹脂等のハロゲン系樹脂を用いる場合と比較して、環境への影響をより小さくすることができる。さらに、押出成形の際の製膜安定性がより優れたものとなるほか、発泡剤を発泡させた際の発泡セルが細密になり、より良好な発泡状態を有する発泡壁紙を実現するための多層樹脂シートを得ることができる。また、上記のほか、ベース樹脂の表面エネルギーが大きいためにブリードアウトの低減による親インク性の向上効果がより大きく発揮される。
また、エチレン単独重合体及びエチレンと他のオレフィンとの共重合体は、無極性の非ハロゲン系熱可塑性樹脂であり、これらを用いることで、充填剤を増量した場合の粘度上昇がより抑えられるため、高品質の壁紙を安定して生産することができる。
エチレン単独重合体としては、例えば、高圧法で合成された低密度ポリエチレン、中低圧法で合成されたコモノマーを含まない高密度ポリエチレン等が挙げられる。中でも、低密度ポリエチレンが好ましい。
低密度ポリエチレンは、例えば、密度0.91g/cm3以上0.94g/cm3以下の範囲にあるものが挙げられる。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下であり、より好ましくは0.92g/cm3以上0.93g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの分子量、融点、メルトフローレート(MFR)等については特に制限されないが、融点については、50℃〜140℃が好ましく、60℃〜110℃がより好ましい。融点が140℃以下であれば樹脂を溶融して成型する際により高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ない。一方、融点が50℃以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られる。MFRについては3〜150のものが好ましく、4〜100のものがより好ましい。MFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることができ、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ない。一方、MFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙の機械強度が保たれ、施工性及び耐久性に優れる。
低密度ポリエチレンとしては、例えば、ノバテックLD LC802A、ノバテックLD LC604、ノバテックLD LJ902、ノバテックLD LJ802A(以上、日本ポリエチレン株式会社製)、宇部ポリエチレン J2516(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)、ペトロセン202、209(以上、東ソー株式会社製)等の市販品を用いることができる。
エチレン単位を50モル%以上含有するエチレンと他のオレフィンとの共重合体は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、コモノマーとの共重合で得られた高密度ポリエチレン等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。中でも、超低密度ポリエチレンが好ましい。
超低密度ポリエチレンとしては、例えば、密度0.85g/cm3以上0.91g/cm3未満の範囲にあるものが挙げられる。超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.86g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、より好ましくは0.87g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、更に好ましくは0.87g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、特に好ましくは0.88g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、最も好ましくは0.89g/cm3以上0.90g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの分子量、融点、MFR等については特に制限されないが、融点については50〜100℃が好ましく、55〜90℃がより好ましい。融点が100℃以下であれば樹脂を溶融して成型する際により高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ない。一方、融点が50℃以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られる。MFRについては3〜150のものが好ましく、4〜100のものがより好ましい。MFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることができ、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ない。一方、MFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙の機械強度が保たれ、施工性及び耐久性に優れる。
超低密度ポリエチレンとしては、例えば、タフマー DF840、DF940、DF7350(いずれも三井化学株式会社製)、カーネル KJ−640T(日本ポリエチレン株式会社製)、エクセレンFX CX5508(住友化学株式会社製)、エンゲージ 8400/8407(ダウ・ケミカル社製)、エボリューP SP90100(株式会社プライムポリマー製)、ルミタック09L54A(東ソー株式会社製)等の市販品を用いることができる。
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、ニポロン−LM55、LM65、LM70、LM75(以上、東ソー株式会社製)等の市販品を用いることができる。
また、第1の樹脂分は、シラン架橋性樹脂を含んでいてもよい。シラン架橋性樹脂としては、加水分解性シリル基を有する樹脂が挙げられ、例えばシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。シラン架橋性ポリオレフィン系樹脂としては、母体としてのポリオレフィン系重合体に加水分解性シリル基を主として側鎖に導入した樹脂が挙げられる。このような樹脂としては、低密度ポリエチレン系、高密度ポリエチレン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリプロピレン系等の重合体に加水分解性シリル基を主として側鎖に導入した樹脂が挙げられる。架橋は、置換シリル基の加水分解により行われる。なお、このシリル基が末端に位置するポリオレフィン系樹脂が含まれていてもよい。
シラン架橋性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系重合体のモノマーとエチレン性不飽和シラン化合物の容器中でランダム共重合させる方法、又はポリオレフィン系重合体の溶融物に過酸化物を用いてエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト共重合する方法等により得ることができる。ここで、母体としてのポリオレフィン系重合体は、上記の樹脂のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、母体のポリオレフィン系樹脂は、樹脂同士の混合又は分解が許容される程度であれば、上記ポリオレフィン系樹脂と、上記ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂とを併用してもよい。混合又は分散の程度は、使用する押出機の種類により大差があり、また適宜の相溶化剤も使用できるので、組合せ樹脂は一概に区別はできないが、同種の樹脂であることが好ましい。シラン架橋性樹脂として、具体的には、三菱化学株式会社製「リンクロン」等が挙げられる。
第1の樹脂分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の樹脂分を含んでいてもよい。このような樹脂分としては、特に制限はないが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂等のハロゲン系樹脂のほか、非ハロゲン系樹脂として、例えば、上記以外のエチレンと他のオレフィンとの共重合体、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の単一オレフィン重合体、2種以上のオレフィンのランダム又はブロック共重合体など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等)、エチレンコポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの樹脂分は、上記エチレン単独重合体、又はエチレン単位を50モル%以上含有する、エチレンと他のオレフィンとの共重合体の合計量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。本発明の効果を十分に発揮する観点からは、これらの樹脂分を含まないことが更に好ましい。
第1の樹脂分の含有量は、樹脂シートの製膜性の観点から、樹脂の合計量が、発泡剤含有樹脂組成物全量を基準として、30〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、55〜80質量%であることが更に好ましく、60〜80質量%であることが更により好ましい。
本実施形態に係る発泡剤としては、例えば、熱分解型発泡剤を用いることができる。熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ系発泡剤、p−トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ系発泡剤などが挙げられる。これらの中でも、毒性が少なく、発泡開始温度の調節が容易で適用範囲の広いADCAが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
発泡剤としては、例えば、ビニホールAC#3C−K2(永和化成株式会社製、アゾジカルボンアミド系発泡剤)、セルラーD(永和化成株式会社製、ニトロソ系発泡剤)、ネオセルボン SB#51(永和化成株式会社製、ヒドラジド系発泡剤)等の市販品を用いることができる。
発泡剤の含有量は、特に制限されないが、その合計量が、発泡剤含有樹脂組成物全量を基準として1〜20質量%であることが好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲であると、過剰なガスの発生による表面からのガス抜けが抑制されている発泡樹脂層を得ることができる。
また、本実施形態に係る発泡剤含有樹脂組成物には、必要に応じて顔料等を添加して着色してもよい。顔料の添加による着色は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料、又はアニリンブラック、フタロシアニンブルー等の有機顔料などを挙げることができる。
また、本実施形態に係る発泡剤含有樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、充填剤以外の難燃剤、発泡助剤、セル調整剤、安定剤、滑剤、シラン架橋助剤、アクリル系架橋助剤、イソシアヌレート系架橋助剤等の周知の添加剤を用いることができる。
充填剤としては、無機充填剤及び有機充填剤が挙げられる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水和金属化合物等が挙げられる。有機充填剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、木粉、セルロース及びその誘導体が挙げられる。これらの充填剤は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
中でも、無機充填剤として、水和金属化合物及び炭酸カルシウムを含むことが好ましい。充填剤として水和金属化合物及び炭酸カルシウムを併用することで、より効果的に耐傷性に優れた多層樹脂シートを得ることができる。
水和金属化合物とは、加熱により脱水する金属化合物をいう。このような水和金属化合物は、加熱により水分を放出することができる。水和金属化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅等が挙げられる。
水和金属化合物は、粒子径であることが好ましい。水和金属化合物の平均粒径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。水和金属化合物の平均粒径を5μm以下とすることにより、表面積が増加し、一度に大量の水分が脱水される。これにより、シラン架橋反応に用いられる水分量が多くなり、より効率的に架橋が行われる。また、水和金属化合物の平均粒径の下限値は、粘度の上昇を抑える観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。水和金属化合物の平均粒径とは、粒度分布の中央値に相当する50%平均粒径であり、例えば、市販の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
水和金属化合物は、分散性、成形性、難燃性等の向上の観点から、各種の表面処理を施してもよい。このような表面処理を施した水和金属化合物としては、分散性及び成形性の向上の観点からは、例えば、硝酸陰イオン処理水酸化アルミニウム、高温熱水化処理水酸化アルミニウム等が挙げられ、難燃性の向上の観点からは、例えば、硝酸塩処理水酸化アルミニウム、錫酸亜鉛表面処理水酸化アルミニウム、ニッケル化合物表面処理水酸化マグネシウム等のほか、金雲母処理、シリコーン処理、シリコーンポリマー処理等の処理を施した水和金属化合物などが挙げられる。
充填剤の含有量は、耐傷性に優れた発泡壁紙を得る観点から、その合計量が、発泡剤含有樹脂組成物全量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。一方、充填剤の含有量の上限は、樹脂組成物の粘度上昇を抑える観点から、発泡剤含有樹脂組成物全量を基準として、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが更により好ましい。
上記充填剤以外の難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤などが挙げられる。
発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪族系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系、ビウレア等の尿素系、塩化亜鉛等の金属塩化物、酸化亜鉛等の金属酸化物などが挙げられる。
また、発泡助剤としては、脂肪酸金属塩を用いてもよい。脂肪酸金属塩を含むことにより、良好な発泡性を有する樹脂シートを得ることができる。
上記脂肪酸金属塩は、脂肪酸金属塩の炭素鎖に官能基を有する官能基含有脂肪酸金属塩であることが好ましい。ここで、脂肪酸金属塩の炭素鎖とは、脂肪酸を構成する直鎖状の炭化水素基を指す。直鎖状の炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよく、その炭素数は6〜30が好ましいが、炭素数が少なくなると金属石鹸(脂肪酸金属塩)の融点が低下して液状になり取り扱いが難しくなるという点や、炭素鎖が長すぎると融点が高くなりすぎて成型温度での分解性が低下するという観点から、炭素数は10〜24がより好ましい。このような炭化水素基を有する脂肪酸としては、例えば、ヘキサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸系、セバシン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸系、オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸等の不飽和カルボン酸系などが挙げられる。
官能基含有脂肪酸金属塩の官能基としては、上記直鎖状の炭化水素基に直接結合する有機基が挙げられる。官能基の個数は特に制限されず、分子内に官能基を2以上有する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
官能基としては、例えば、水酸基、アルキル基、スルホニル基(スルホン酸エステル)、スルホニル基(亜リン酸エステル)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。中でも、官能基は入手の容易な水酸基であることが好ましい。水酸基含有脂肪酸金属塩を用いることで、水酸基の強い分極に起因する電気的な分子間相互作用がより強固に働き、より効果的にブリードアウトが低減され、印刷適性を更に向上させることができる。特に、樹脂分としてエチレン単独重合体又はエチレンと他のオレフィンとの共重合体を組み合わせた場合には、ベース樹脂の表面エネルギーが大きいため、ブリードアウトの低減による親インク性の向上効果がより大きく発揮され、印刷特性の良好な発泡用原反としての樹脂シートや積層シートを得ることができる。
官能基含有脂肪酸金属塩の官能基含有脂肪酸としては、例えば、2−エチルヘキサン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシラウリン酸等が挙げられる。
官能基含有脂肪酸金属塩の金属としては、例えば、バリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等が挙げられるが、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも亜鉛である場合は、界面活性効果が非常に強く、発泡助剤としての活性も強いことから、特に有用である。
本実施形態に係る官能基含有脂肪酸金属塩は、上述した観点から、2−エチルヘキサン酸亜鉛塩、ヒドロキシラウリン酸亜鉛塩、ヒドロキシステアリン酸亜鉛塩、ジヒドロキシステアリン酸亜鉛塩、ジヒドロキシラウリン酸亜鉛塩が好ましいが、入手の容易さやコストの観点から、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩がより好ましい。これら官能基含有脂肪酸金属塩は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
発泡助剤の含有量としては、その合計量が、発泡剤100質量部に対して、1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、2〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、3〜30質量部の範囲内であることが更に好ましい。発泡剤100質量部に対する発泡助剤の含有量が上記範囲内であれば、界面活性剤及び発泡助剤としての効果を十分に発揮することができる。
セル調整剤としては、有機系セル調整剤及び無機系セル調整剤のいずれを用いてもよく、例えば、シリカ、リン酸エステル系化合物、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂等が挙げられる。セル調整剤は、アデカスタブHP−10(株式会社ADEKA製)、Irgafos 38(B.A.S.F. Japan製)、JPP−2000(城北化学工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
安定剤としては、例えば、フェノール/アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤、リン系、イオウ系等の過酸化物分解剤、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。変色を抑える観点から、ラジカル捕捉剤等が用いられてもよい。ラジカル捕捉剤は、チヌビン783(B.A.S.F. Japan製)等の市販品を用いることができる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、オクチル酸亜鉛等の脂肪酸金属塩系の滑剤などが挙げられる。
シラン架橋助剤としては、例えば、スズ系の架橋助剤等が挙げられる。
アクリル系架橋助剤としては、例えば、トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチルプロパントリメタクリレート(TMPTMA)等が挙げられる。
イソシアヌレート系架橋助剤としては、例えば、トリアリールイソシアヌレート等が挙げられる。
<発泡剤非含有樹脂組成物>
本実施形態に係る発泡剤非含有樹脂組成物は、第2の樹脂分を含み、発泡剤を含まない。
発泡剤非含有樹脂組成物における第2の樹脂分は、プロピレン単位を50〜90モル%含有する、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体を含む。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体におけるプロピレン単位を50モル%以上とすることにより、多層樹脂シートにおける第2層の表面強度を十分に確保することができる。一方、上記プロピレン単位を90モル%以下とすることにより、多層樹脂シートにおける第1層と第2層との層間密着力を十分に確保することができる。上記のような観点から、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体におけるプロピレン単位は、60〜80モル%とすることが好ましい。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体に含まれる他のオレフィンとしては、特に制限はないが、多層樹脂シートにおける第1層と第2層との層間密着力をより効果的に確保する観点から、エチレン、ブテン、ヘキセン、メチルペンテン等であることが好ましく、中でも、第1層に含まれる樹脂分の非結晶成分と相溶性を向上させる観点から、エチレンであることがより好ましい。これらの他のオレフィンは、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
プロピレン単位を50〜90モル%含有する、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体としては、例えば、タフマーXM5090、タフマーXM7070(以上、三井化学株式会社製)等の市販品を用いることができる。
また、第2の樹脂分は、シラン架橋性樹脂を含んでいてもよい。シラン架橋性樹脂としては、上述した第1の樹脂分に含まれるシラン架橋性樹脂と同様のものを用いることができる。
第2の樹脂分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記プロピレン単位を50〜90モル%含有する、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体以外の樹脂分を含んでいてもよい。このような樹脂分としては、特に制限はないが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂等のハロゲン系樹脂のほか、非ハロゲン系樹脂として、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の単一オレフィン重合体、2種以上のオレフィンのランダム又はブロック共重合体など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等)、エチレンコポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの樹脂分は、上記プロピレン単位を50〜90モル%含有する、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体の合計量100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。本発明の効果を十分に発揮する観点からは、これらの樹脂分を含まないことが更に好ましい。
第2の樹脂分の含有量は、樹脂シートの製膜性の観点から、樹脂の合計量が、発泡剤非含有樹脂組成物全量を基準として、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る発泡剤非含有樹脂組成物には、必要に応じて、上記発泡剤含有樹脂組成物において説明した各成分(ただし、発泡剤を除く)を含んでいてもよい。
中でも、本実施形態に係る発泡剤非含有樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。これにより、耐候性に優れた多層樹脂シートを得ることができ、経時劣化による耐傷性の低下を抑制することができる。ラジカル捕捉剤の含有量は、発泡剤非含有樹脂組成物全量を基準として、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
なお、多層樹脂シートを構成する各層の厚みは、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、発泡壁紙用途であれば、第1層の厚みを40〜100μm、第2層の厚みを5〜40μmとすることができる。
本実施形態に係る多層樹脂シートは、上記第1層及び第2層のほかに、第2の樹脂分を含み、発泡剤を含まない第2の発泡剤非含有樹脂組成物からなる第3層を更に備えていてもよい。このような第3層を更に設けることにより、発泡剤含有樹脂組成物を2つの発泡剤非含有樹脂組成物で挟んで共押出成形することが可能となり、発泡剤とダイとが接触することにより生じる問題、例えば、吐出口のエッジ部分に異物が付着する現象(いわゆる「目ヤニ」)を低減させることができ、生産性を更に向上させることができる。このような観点から、本実施形態に係る多層樹脂シートは、上記第2層、上記第1層、及び上記第3層がこの順に積層された積層構造を有することが好ましい。
第2の発泡剤非含有樹脂組成物における第3の樹脂分は、特に制限されるものではなく、上述した第1の樹脂分及び第2の樹脂分と同様のものを用いることができる。後述する基材との密着性をより向上させる観点から、第3の樹脂分として、超低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
また、本実施形態に係る第2の発泡剤非含有樹脂組成物には、必要に応じて、上記発泡剤含有樹脂組成物において説明した各成分(ただし、発泡剤を除く)を含んでいてもよい。
上記第3層の厚みは、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、発泡壁紙用途であれば、第3層の厚みを1〜20μmとすることができる。
[多層樹脂シートの製造方法]
本実施形態に係る多層樹脂シートは、上述した発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物、並びに、所望により第2の発泡剤非含有樹脂組成物を押出成形することにより得ることができる。
押出成形の方法としては特に制限はなく、例えば、上記発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ押出成形することにより、第1層及び第2層を形成してもよいし、少なくとも上記発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物を共押出成形することにより第1層及び第2層を形成してもよい。発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ押出成形することにより、第1層及び第2層を形成した場合には、当該第1層及び第2層をラミネートすることにより多層樹脂シートを製造することができる。
上記第3層を更に備える多層樹脂シートにおいては、例えば、上記発泡剤非含有樹脂組成物、発泡剤含有樹脂組成物及び第2の発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ押出成形することにより、第2層、第1層及び第3層を形成してもよいし、発泡剤非含有樹脂組成物、発泡剤含有樹脂組成物及び第2の発泡剤非含有樹脂組成物を共押出成形することにより、第2層、第1層及び第3層がこの順に積層された積層構造を有する多層樹脂シートを形成してもよい。さらに、上記発泡剤非含有樹脂組成物及び発泡剤含有樹脂組成物を共押出成形し、それとは別に第2の発泡剤非含有樹脂組成物を押出成形することにより、第2層、第1層及び第3層を形成してもよいし、発泡剤含有樹脂組成物及び第2の発泡剤非含有樹脂組成物を共押出成形し、それとは別に発泡剤非含有樹脂組成物を押出成形することにより、第2層、第1層及び第3層を形成してもよい。
発泡剤非含有樹脂組成物、発泡剤含有樹脂組成物及び第2の発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ押出成形することにより、第2層、第1層及び第3層を形成した場合には、当該第2層、第1層及び第3層をこの順でラミネートすることにより多層樹脂シートを製造することができる。
共押出成形の方法としては、例えば、Tダイ押出法、Tダイ押出同時ラミネーション法、Tダイ押出タンデムラミネーション法等の共押出法が挙げられる。
具体的には、例えば、発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物を共押出成形する場合、発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機(例えば、単軸押出機、2軸押出機等)で溶融・混練・分散させた後に、両者をフィードブロックタイプで合流させた後にTダイでシート製膜し、発泡剤含有樹脂組成物からなる第1層と発泡剤非含有樹脂組成物からなる第2層の2層からなる樹脂シートを得る方法などが挙げられる。
Tダイによる押出成形の条件としては、発泡剤成分の分解を抑制しつつ樹脂分の融点以上とする観点から、押出温度を140℃以下とすることが好ましく、135℃以下とすることがより好ましく、130℃以下とすることが更に好ましい。また、押出温度は、最も融点が高い樹脂の融点+10℃以上とすることができる。これにより、未溶融の状態で樹脂が押出されることを抑制することができる。
多層樹脂シートにおける第1層は、架橋処理が施されていてもよい。架橋処理としては、電子線照射処理、過熱蒸気処理等の加熱処理が挙げられる。発泡剤含有樹脂組成物がシラン架橋性樹脂を含む場合には、過熱蒸気処理、水架橋処理を行うことができる。この場合、第1層を他の層とラミネートしながら架橋処理することができる。
電子線照射処理は、例えば、成形した多層樹脂シートの片面側から、又は両面から電子線を照射することにより、多層樹脂シートに架橋処理を施すことができる。電子線照射の条件としては、樹脂層の厚みにもよるが、加速電圧150〜300kV、照射線量10〜100kGyが好ましい。加速電圧が上記範囲内であれば、電子線を樹脂シートの厚み方向深くまで十分に到達させることができ、なおかつ裏打紙への電子線による劣化を抑制することができる。また、照射線量が上記範囲内であれば、樹脂シートの黄変や機械物性の変化を抑制しつつ、樹脂シートに所望の架橋を施すことが容易となる。
過熱蒸気処理は、例えば、130℃〜280℃の環境下で20秒から15分間、過熱蒸気(過熱水蒸気ともいう)処理する方法等が挙げられる。過熱蒸気処理は、例えば、過熱蒸気雰囲気下にシート状物を配し、シート状物に過熱蒸気を接触させる方法が挙げられる。また、水架橋させる方法としては、湿度60%以上の環境下、40℃〜70℃の温度域で1日〜1か月養生させて水架橋させる方法が挙げられ、具体的には、40℃90%の恒温恒湿槽の環境下において養生させて水架橋させる方法が挙げられる。
[積層シート]
本実施形態に係る積層シートは、基材と、該基材上に設けられた上記多層樹脂シートと、を備える。
上記基材としては、従来ある発泡壁紙用裏打紙等の紙基材として通常使用されているものであれば特に限定されずに使用可能である。このような基材としては、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等の水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙、又は炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機質剤を混抄した無機質紙などが挙げられる。これらの秤量は、50〜300g/m2であってもよく、60〜160g/m2であってもよい。
また、基材と上記多層樹脂シートとの接着性を向上させる観点から、基材の表面で多層樹脂シートを設ける側の面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよく、アクリル−ブチル共重合体、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン等から形成される易接着処理層を設けてもよい。
[積層シートの製造方法]
本実施形態に係る積層シートは、例えば、基材上に、上記の方法により得られた多層樹脂シートをラミネートする工程を備える。本発明の効果がより有効に得られる観点から、積層シートは、多層樹脂シートにおける上記第1層を基材上にラミネートする工程を備えることが好ましい。
ラミネートの方法としては、特に限定されるものではないが、多層樹脂シートと基材とを、熱プレス機等を用いて熱圧着を行う方法、過熱蒸気を用いて圧着を行う方法等が挙げられる。過熱蒸気を用いて圧着を行う方法によれば、過熱蒸気によってシート状物の表面の溶融状態を保ったまま基材上へラミネートすることが可能となり、そのレベリング効果によって、密着させる基材の表面の凹凸が多層樹脂シートに転写されることを抑制することができる。また、多層樹脂シートにおける第1層がシラン架橋性樹脂を含む場合には、過熱蒸気によってシラン架橋性樹脂を効率よく架橋させることができる。
実施形態に係る積層シートの製造方法は、例えば、上記発泡剤含有樹脂組成物及び発泡剤非含有樹脂組成物をそれぞれ押出成形することにより、第1層及び第2層を形成し、当該第2層を基材上へラミネートした後、第1層を当該第2層の基材とは反対側の面にラミネートする工程を備えていてもよい。
さらに、上記第3層を備える場合には、例えば、当該第3層を基材上へラミネートした後、第1層を当該第3層の基材側とは反対側の面にラミネートし、更に第2層を当該第1層の第3層側とは反対側の面にラミネートする工程を備えていてもよい。また、第3層を基材上へラミネートした後、第1層及び第2層を有する積層体の第1層側を、当該第3層の基材側とは反対側の面にラミネートする工程を備えていてもよいし、第1層及び第3層を有する積層体の第3層側を基材上へラミネートした後、第2層を当該第1層の基材側とは反対側の面にラミネートする工程を備えていてもよい。
本実施形態に係る積層シートの製造方法は、基材上にラミネートされる前若しくはラミネート中の多層樹脂シートに含まれる樹脂分の一部若しくは全部を架橋する架橋工程、又は積層シートにおける多層樹脂シートに含まれる樹脂分の一部若しくは全部を架橋する架橋工程を更に備えていてもよい。架橋処理については、上記多層樹脂シートの製造方法で述べた方法と同様とすることができる。多層樹脂シートがシラン架橋性樹脂を含む場合は、過熱蒸気によってラミネートとシラン架橋性樹脂の架橋とを同時に行うことができる。
[発泡壁紙の製造方法]
本実施形態に係る発泡壁紙は、基材と、基材上に設けられた発泡樹脂層と、を備える。このような発泡壁紙は、上記積層シートにおける第1層に含まれる発泡剤を発泡させることにより発泡樹脂層を形成する発泡工程を備える、発泡壁紙の製造方法により得ることができる。
発泡剤の発泡は、多層樹脂シートを加熱することにより行うことができる。加熱条件としては、当該多層樹脂シートを構成する成分によって適宜設定することができ、特に制限はないが、160℃〜280℃で10秒〜120秒間加熱することが好ましく、220℃〜240℃で20秒〜40秒間加熱することがより好ましく、220℃で40秒間加熱することが更に好ましい。
本実施形態に係る発泡壁紙の製造方法は、基材上にラミネートされる前若しくはラミネート中の多層樹脂シートに含まれる樹脂分の一部若しくは全部を架橋する架橋工程、又は積層シートにおける多層樹脂シートに含まれる樹脂分の一部若しくは全部を架橋する架橋工程を更に備えていてもよい。架橋処理については、上記多層樹脂シートの製造方法で述べた方法と同様とすることができる。樹脂シートがシラン架橋性樹脂を含む場合は、過熱蒸気によってラミネートとシラン架橋性樹脂の架橋とを同時に行うことができる。
さらに、本実施形態に係る発泡壁紙の製造方法においては、上記第2層の基材とは反対側の面に凹凸形状を設ける凹凸形状形成工程を備えていてもよい。凹凸形状形成工程は、例えば上記発泡工程の後に備えることができる。凹凸形状を設ける方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、加熱発泡の際の熱を利用して、表面側を冷却エンボスロールとし、基材側をゴムロールとしておき、2つのトールでニップし(エンボス加工し)冷却することにより、表面に凹凸形状を形成する方法等が挙げられる。凹凸形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択可能であり、複数を組み合わせてもよい。
本実施形態に係る発泡壁紙の製造方法は、模様層及び表面保護層を設ける印刷工程を備えていてもよい。模様層及び表面保護層は、公知の材料を使用して適宜設けることができる。本発明の目的が達成できるのであれば、模様層及び表面保護層を設けなくともよい。模様層及び表面保護層は、グラビアコーティング等の公知の印刷技術を用いて設けることが可能である。なお、印刷工程は、例えば上記発泡工程の前に設けることができる。すなわち、模様層及び表面保護層は、発泡剤を発泡させる前に設けることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[発泡剤含有樹脂組成物]
同方向噛み合い型2軸押出機を用いて、発泡剤が分解しないように樹脂温度を120℃に制御しながら、表1の配合(単位は質量部)で発泡剤含有樹脂組成物のペレットを作製した。
表1に示される各成分は以下の材料を用いた。
[低密度ポリエチレン]
樹脂A:ノバテックLD LJ802A(日本ポリエチレン株式会社製、商品名、融点=107℃、MFR=27(190℃)、密度=0.919g/cm3、エチレン単位含有量=100モル%)
[超低密度ポリエチレン]
樹脂B:カーネル KJ−640T(日本ポリエチレン株式会社製、商品名、融点=58℃、MFR=30(190℃)、密度=0.885g/cm3、エチレン単位含有量=88モル%)
[シラン架橋性樹脂]
樹脂C:リンクロン SS732N(三菱化学株式会社製、商品名、ポリエチレンベース、融点=58℃、MFR=13(190℃)、密度=0.885g/cm3)
[二酸化チタン]
充填剤A:タイペークCR−60−2(石原産業株式会社製、商品名)
[炭酸カルシウム]
充填剤B:ソフトン1000(備北粉化工業株式会社製、商品名)
発泡剤:ビニホールAC#3C−K2(永和化成工業株式会社製、商品名、アゾジカルボンアミド系発泡剤)
発泡助剤:Zn−St(日東化成工業株式会社製、商品名、ステアリン酸亜鉛)
シラン架橋助剤:リンクロンLZ013(三菱化学株式会社製、商品名、ポリエチレンベース)
ラジカル捕捉剤:チヌビン783(B.A.S.F. Japan製、商品名)
[発泡剤非含有樹脂組成物]
同方向噛み合い型2軸押出機を用いて、樹脂温度を120℃に制御しながら、表2の配合(単位は質量部)で発泡剤非含有樹脂組成物のペレットを作製した。
表2に示される各成分は以下の材料を用いた。
[プロピレンと他のオレフィンとの共重合体]
樹脂D:タフマー XM7070(三井化学株式会社製、商品名、プロピレン・ブテンランダム共重合体、融点=75℃、MFR=3.0(190℃)、プロピレン単位含有量=75モル%)
樹脂E:プライムポリプロY2045GP(株式会社プライムポリマー製、商品名、融点=133℃、MFR=24(190℃)、エチレンランダム、ポリプロピレン単位含有量=96モル%)
[ポリプロピレン]
樹脂F:ウインテックWMG03(日本ポリプロ株式会社製、商品名、融点=140℃、MFR=30(230℃)、プロピレン単位含有量=100モル%)
[シラン架橋性樹脂]
樹脂G:リンクロン PM700N(三菱化学株式会社製、商品名、ポリプロピレンベース、融点=101℃、MFR=300(230℃)、密度=0.876g/cm3)
架橋助剤:TAIC(日本化成株式会社製、商品名、トリアリルイソシアヌレート)
[第2の発泡剤非含有樹脂組成物]
上記樹脂Bを、同方向噛み合い型2軸押出機を用いて、樹脂温度を120℃に制御しながら、第2の発泡剤非含有樹脂組成物のペレットを作製した。
[発泡壁紙の作製]
(実施例1〜4、比較例1〜3)
上記で作製した発泡剤含有樹脂組成物1〜3のペレット、発泡剤非含有樹脂組成物4〜10のペレット及び第2の発泡剤非含有樹脂組成物のペレットを、表3に示す組合せで用いて、多層樹脂シートを作製した。具体的には、スクリュー1(スクリュー径(D)50mm、L/D(スクリュー長をスクリュー径で除したもの)=28の単軸押出機)を用いて発泡剤非含有樹脂組成物のペレットを押出し、スクリュー2(スクリュー径(D)65mm、L/D=28の単軸押出機)を用いて発泡剤含有樹脂組成物のペレットを押出し、スクリュー3(スクリュー径(D)50mm、L/D=28の単軸押出機)を用いて第2の発泡剤非含有樹脂組成物のペレットを押出し、それぞれをフィードブロックタイプで合流させた後に巾700mmのTダイでライン速度20m/分にてシート製膜し、発泡剤非含有樹脂組成物からなる第2層(厚み20μm)と、発泡剤含有樹脂組成物からなる第1層(厚み60μm)と、第2の発泡剤非含有樹脂組成物からなる第3層(厚み10μm)と、からなる多層樹脂シートを得た。また、押出成形の温度設定値は、スクリュー1を140℃、スクリュー2及び3を125℃とした。
次に裏打紙(KJ特種紙製、WK−6651HT、重量65g/m2)上に、上記で製膜した多層樹脂シートを置き、110℃で加熱した熱プレス機でプレス圧力5MPaの条件で2分間プレスして熱融着させ、積層シートを得た。
さらに、第2層側表面にコロナ放電処理を施した後、グラビア印刷機により水性インキ(大日精化工業株式会社製、ハイドリックWP)を用いて1g/m2で絵柄模様を印刷し、グラビアコーティング機(倉敷紡績株式会社製、GP−10)を用いて艶消し表面コート剤(日信化学工業株式会社、ビニブラン890)を2g/m2で塗工し、架橋前原反を作製した。
得られた架橋前原反に対し、実施例1〜3、比較例1〜3ではそれぞれ、加速電圧180kV、照射線量70kGyで電子線の照射をし、樹脂分を架橋させた後、220℃のオーブンで40秒間の加熱を行い、発泡剤を発泡させて発泡壁紙を作製した。
実施例4では、温度40℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿槽で72時間養生を行い、シラン架橋性樹脂を架橋させた後、220℃のオーブンで40秒間の加熱を行い、発泡剤を発泡させて発泡壁紙を作製した。
[多層樹脂シートの評価]
(層間密着性)
実施例1〜4、比較例1〜3で作製した多層樹脂シートについて、第2層側に巾1インチのテープを貼り付けしたのちに剥離し、第2層がテープに追従して剥離した場合を「B」、剥離しなかった場合を「A」と評価した。結果を表3に示す。
[発泡壁紙の評価]
(耐傷性)
コインスクラッチ試験機を用いて、耐傷性の評価を行った。具体的には、水平な面に発泡壁紙を置き、10円硬貨を用いて45°の角度で発泡壁紙を荷重800gで引っ掻き、表面状態を観察した。試験表面に傷がない場合を「A」、傷がついた場合を「B」と評価した。結果を表3に示す。
(耐候性)
サンシャインフェードメーターを用いて、288時間及び576時間の耐候試験を行った後、それぞれに荷重200g、400g、600g及び800gで上記と同様に引っ掻き、表面状態を観察した。試験表面に傷がない場合を「A」、傷がついた場合を「B」と評価した。結果を表3に示す。