JP6606802B2 - 高配向FePt磁気記録媒体、高配向FePt磁気記録媒体を用いた熱アシスト磁気記録装置、高配向FePt磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
FePt-C媒体では、FePt粒子の配向制御のためにMgO下地が用いられる。これまでの研究により、FePtの磁化容易軸分散はMgO下地の結晶粒の(001)方位の分散に起因することがわかっており、(001)方向に高配向したMgO下地を実現するための配向制御層の開発が必要とされていた。
(1)基板上又は熱吸収層を設けた基板上に形成されたCrBを下地とする(001)配向したMgO下地制御層と、
前記MgO下地制御層の上に、L1 0 −FePt合金薄膜の(001)方向を前記基板面に垂直に成長させてなる磁性層であって、
前記L1 0 −FePt合金薄膜が、次の組成式:
(Fe x Pt 1−x ) 1−z Ag z (0.4<x<0.55、0<z<0.2)
であることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体。
(2) 基板上又は熱吸収層を設けた基板上に形成されたCrBを下地とする(001)配向したMgO下地制御層と、
前記MgO下地制御層の上に、L10−FePt合金薄膜の(001)方向を前記基板面に垂直に成長させてなる磁性層であって、
前記L1 0 −FePt合金薄膜が、次の組成式:
(Fe x Pt 1−x ) 1−z Ag z −C v (0.4<x<0.55、0<z<0.2、0<v≦50vol%)
であることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体。
(3)前記熱吸収層が、Ta,Cu(TaとCuの積層膜を含む)、NiTa合金からなる群から選択された材料よりなることを特徴とする前記(1)又は(2)の高配向FePt磁気記録媒体。
(4)前記磁性層が、L1 0 −FePt合金薄膜を主体とする結晶粒子と、C,B,Al 2 O 3 ,SiO 2 ,TiO 2 ,及びCr 2 O 3 から選択される1つ以上を含有する非磁性物質を主体とする粒界部を有するグラニュラー構造の強磁性層を含む複合膜であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項の高配向FePt磁気記録媒体。
(5)さらに、前記磁性層の上部又は下部に補助記録層を設けると共に、前記補助記録層の組成は、A1構造のFePtを含む強磁性合金であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項の高配向FePt磁気記録媒体。
(6)さらに、磁性層と補助記録層との間に、交換結合制御層を設けると共に、前記交換結合制御層の組成は、Ru又はRu合金であることを特徴とする前記(5)の高配向FePt磁気記録媒体。
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項の高配向FePt磁気記録媒体を用いた熱アシスト磁気記録装置。
(8)前記(1)〜(6)のいずれか1項の高配向FePt磁気記録媒体の製造方法であって、スパッタリング成膜時の基板温度を650℃以上に維持して、完全に規則化したL1 0 型構造を有するFePt合金微粒子を島状に成長させることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体の製造方法。
ここで、「高配向」とは、L10−FePt結晶の磁化容易軸(001)方向が基板面に垂直に強く配向していることをいう。
図1は、本発明の一実施形態である高配向FePt媒体(垂直磁気記録媒体)の層構造を示す概略図である。図において、高配向FePt媒体は、基板上に、熱吸収層、CrB下地層、MgO下地層、及びFePt合金を主成分とする材料からなる磁性層(FePt合金薄膜)をこの順に備えている。
基板がガラス基板や熱酸化Si基板のように表面がアモルファスの場合には、直接、アモルファスCrBを成長させることが可能である。
本発明においては、(001)方向に高配向したMgO下地層を用いることにより、L10-FePt合金薄膜の(001)方向を基板面に垂直に成長させることができる。
本発明において、媒体の超高記録密度化のために、磁性層は、L10-FePt合金を主体とする結晶粒子と、例えばC,B,Al2O3,SiO2,TiO2,Cr2O3などの非磁性物質を主体とする粒界部を有するグラニュラー構造の強磁性層(グラニュラー磁性層)を含む複合膜であることが好ましい。具体的な上記グラニュラー磁性層を構成するL10-FePt合金薄膜としては、例えばC(カーボン)を含有するFePtやFePtAg(FePtをAgで合金化したもの)が挙げられる。また、このグラニュラー磁性層の膜厚は、例えば20nm以下であることが好ましい。
(FexPt1-x)1-zAgz-Cv
ここで、0.4<x<0.55、0≦z<0.2、0≦v≦50vol%である。(FexPt1-x)1-zAgzは(100-v)vol%である。30vol%≦v≦50vol%とすることがより好ましい。
Fe:Ptを1:1に近い組成とすることで、L10型/A1相の規則・不規則変態温度が一番高くなることから、高いL10規則の駆動力が得られる。
FePtのL10型構造の規則化の促進を目的として、FePtをAgで合金化することが好ましい。この場合、上記のように、FePtに対しAgを原子比で0〜20%の割合で含ませる。
FePt-C層又はFePtAg-C層中のCは膜成長中に、FePt又はFePtAgと相分離し、グラニュラー構造の非磁性マトリックスを形成する。
例えばFePt合金を構成するFeとPtの各々のターゲット、又はFePtAg合金を構成するFeとPtとAgの各々のターゲットを用いた同時スパッタリングでもよく、組成が予備的に調整されたFePt合金ターゲット、又はFePtAg合金ターゲットを用いたスパッタリングでもよい。
上記のFeとPtを主成分とする合金ターゲットは、成膜される磁性層中のFeとPtの組成が1:1に近い組成、具体的には、FexPt1-xのxが0.4<x<0.55となるように作製することが好ましい。また、FeとPtの各々のターゲットを用いる場合は、各々のターゲットに投入する電力を制御することにより、およそ1:1の成膜速度にすることができる。
また、FePt合金+非磁性マトリックスとなる化合物の2つのターゲットを使った同時スパッタリングでもよい。また、非磁性マトリックスの体積分率は成膜速度を制御することにより変更することができる。
例えばCを含有するFePt合金を成膜する場合には、FePtとCの同時スパッタリング(コスパッタ)を採用することができる。FePt合金ターゲットとCターゲットを用い、実施例に示すように、FePtスパッタリング中に、Cターゲットの電力を制御し、Cの成膜速度を変化させる方法が好ましい。
チャンバー内で、まず、ガラス基板上に、100nmの膜厚のアモルファスNiTa層(a-NiTa層)を、NiTaターゲットを用いて、DCスパッタリング法により形成した。室温で、Arガス圧5.8mTorr、成膜速度3.33 nm/minの条件とした。
チャンバー内で、まず、熱酸化膜付きSi単結晶基板上に、8nmの膜厚のTa層を、DCスパッタリング法により形成した。室温で、DC電力1000W、Krガス圧0.05Paの条件とした。
上記Ta層上に、115nmの膜厚のCu層を、DCスパッタリング法により形成した。室温で、DC電力500W、Arガス圧0.1Paの条件とした。
上記Cu層上に、27nmの膜厚のTa層を、DCスパッタリング法により形成した。室温で、DC電力1000W、Krガス圧0.05Paの条件とした。
チャンバー内で、MgO単結晶基板上に、10nmの膜厚のFePt-30vol%Cを、比較例1と同様に、DCスパッタリング法により形成した。
上記のようにして作製した比較例1、実施例1、比較例2の薄膜について、θ・2θ法でX線回折測定を行った。
図3(a)に、比較例1の「ガラス基板/NiTa(100nm)/多結晶MgO(10nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜、図3(b)に、実施例1の「熱酸化膜付きSi単結晶基板/Ta(8nm)/Cu(115nm)/Ta(27nm)/CrB(2nm)/MgO(5nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜、図3(c)に、比較例2の「MgO単結晶基板/FePt-30vol%C(10nm)」の薄膜のX線回折パターンを示す。いずれもFePt(001)、FePt(002)からの回折線が強く観測されていることからFePtが(001)に強く配向していることがわかる。図3(a)に示すように、CrB下地のないMgO(図2(a)参照)では、FePtからの回折線がブロードであるのに対し、図3(b)に示すように、CrB下地を挿入したMgO(図2(b)参照)では、FePtからの回折線が急峻に変化していることがわかる。CrB下地を挿入したMgO(多結晶)では、図3(c)に示すMgO単結晶基板(図2(c)参照)を用いた場合よりも、FePtからの回折線が急峻になっている。
上記のようにして作製した比較例1、実施例1の薄膜について、加速電圧200kVの電子顕微鏡を用いて室温で断面TEM像の撮影を行った。
図5(a)に、比較例1の「ガラス基板/NiTa(100 nm)/多結晶MgO(10 nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜、図5(b)に、実施例1の「熱酸化膜付きSi単結晶基板/Ta(8nm)/Cu(115nm)/Ta(27nm)/CrB(2nm)/MgO(5nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜の断面TEM像を示す。いずれのMgO層も平坦・均一に形成されていることがわかる。
上記のようにして作製した比較例1、実施例1、比較例2の薄膜について、振動試料型磁力計を用いて室温で磁気特性の測定を行った。
図6(a)に、比較例1の「ガラス基板/NiTa(100nm)/多結晶MgO(10nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜、図6(b)に、実施例1の「熱酸化膜付きSi単結晶基板/Ta(8nm)/Cu(115nm)/Ta(27nm)/CrB(2nm)/MgO(5nm)/FePt-30vol%C(10nm)」からなる薄膜、図6(c)に、比較例2の「MgO単結晶基板/FePt-30vol%C(10nm)」の薄膜の磁気特性(面内及び垂直方向の磁化曲線)を示す。図6(b)においては、MgOにCrB下地を設けたことによりFePt粒子の配向性が向上したため、図6(a)と比較して、面内のヒステリシス及びゼロ磁場付近のキンクが大幅に低減している。一般に面内磁気成分の指標として用いられている残留磁化比(Mr///Mr^)がCrBなしでは0.159であるが、CrBを挿入することにより0.124と改善している。MgO単結晶基板を用いた場合、図6(c)に示されるように、磁気特性は優れているが、MgO単結晶基板は高価で実用には向かない。
本発明の高配向FePt磁気記録媒体は、図7に示されるような公知の熱アシスト磁気記録装置に用いることができる。熱アシスト磁気記録装置は、書き込みヘッド1と読み取りヘッド2とから構成される。
書き込みヘッド1は、書き込み磁極10、磁束戻り磁極11、書き込み磁極10を磁束戻り磁極11に接続するヨーク12、ヨーク12に取り付けられた書き込みコイル13、及び、ヨーク12を通って延在し、磁極10、11の間に配置された加熱部材から構成される。加熱部材は、レーザー発生部(光源)14、レーザー光源14から発生したレーザーをヘッド先端まで導く光導波路15、光導波路15の先端部の近接場光発生部16から構成される。すなわち、レーザー光源14からの半導体レーザーを、光導波路15の先端部の近接場光発生部16に集光させ、近接場光発生部16から発生した近接場光により、媒体17を加熱することができる。
書き込み電流が書き込みヘッド1のコイル13を通って書き込み磁極10において磁場を生成し、この磁場が書き込み磁極10の下の媒体17の磁気記録層を磁化する。
媒体17の磁気記録層に記録されたビットの検出(読み取り)は、TMR素子20により行なわれる。一対の磁気透過性シールドS1、S2がTMR素子20の両側に配置されていて、読み取り中であるビット以外のビットからの磁束がTMR素子20に到達するのを防止している。
10 書き込み磁極
11 磁束戻り磁極
12 ヨーク
13 書き込みコイル
14 レーザー発生部(光源)
15 光導波路
16 近接場光発生部
17 媒体
2 読み取りヘッド
S1 磁気透過性シールド
S2 磁気透過性シールド
20 TMR素子
Claims (8)
- 基板上又は熱吸収層を設けた基板上に形成されたCrBを下地とする(001)配向したMgO下地制御層と、
前記MgO下地制御層の上に、L1 0 −FePt合金薄膜の(001)方向を前記基板面に垂直に成長させてなる磁性層であって、
前記L1 0 −FePt合金薄膜が、次の組成式:
(Fe x Pt 1−x ) 1−z Ag z (0.4<x<0.55、0<z<0.2)
であることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体。 - 基板上又は熱吸収層を設けた基板上に形成されたCrBを下地とする(001)配向したMgO下地制御層と、
前記MgO下地制御層の上に、L10−FePt合金薄膜の(001)方向を前記基板面に垂直に成長させてなる磁性層であって、
前記L1 0 −FePt合金薄膜が、次の組成式:
(Fe x Pt 1−x ) 1−z Ag z −C v (0.4<x<0.55、0<z<0.2、0<v≦50vol%)
であることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体。 - 前記熱吸収層が、Ta,Cu(TaとCuの積層膜を含む)、NiTa合金からなる群から選択された材料よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の高配向FePt磁気記録媒体。
- 前記磁性層が、L1 0 −FePt合金薄膜を主体とする結晶粒子と、C,B,Al 2 O 3 ,SiO 2 ,TiO 2 ,及びCr 2 O 3 から選択される1つ以上を含有する非磁性物質を主体とする粒界部を有するグラニュラー構造の強磁性層を含む複合膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高配向FePt磁気記録媒体。
- さらに、前記磁性層の上部又は下部に補助記録層を設けると共に、前記補助記録層の組成は、A1構造のFePtを含む強磁性合金であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高配向FePt磁気記録媒体。
- さらに、磁性層と補助記録層との間に、交換結合制御層を設けると共に、前記交換結合制御層の組成は、Ru又はRu合金であることを特徴とする請求項5に記載の高配向FePt磁気記録媒体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高配向FePt磁気記録媒体を用いた熱アシスト磁気記録装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高配向FePt磁気記録媒体の製造方法であって、スパッタリング成膜時の基板温度を650℃以上に維持して、完全に規則化したL1 0 型構造を有するFePt合金微粒子を島状に成長させることを特徴とする高配向FePt磁気記録媒体の製造方法。
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