JP6604971B2 - 絶縁放熱シート、ヒートスプレッターおよび電子機器 - Google Patents

絶縁放熱シート、ヒートスプレッターおよび電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁放熱シート、ヒートスプレッターおよび電子機器に関するものである。本願は、2015年1月9日に、日本に出願された特願2015−003074に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、半導体チップ、トランジスター、コンデンサ、キャパシターなどの電子部品及び電池(バッテリー)などの電気部品のさらなる高性能化が進められている。それに伴って、電子部品や電気部品の発熱量が増大している。電子部品や電気部品が高温になると、寿命が短くなったり、信頼性が低下したりする場合がある。
従来、電子部品や電気部品には、これらが発生する熱を放散させるヒートシンクやヒートスプッレターが取り付けられている。ヒートスプレッターとしては、アルミニウム箔や銅箔などの熱伝導性を有する金属箔に粘着テープを貼り合せたものなどが多く用いられている。
例えば、特許文献1には、粘着剤層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる層上に熱放射層を設けた熱放射シートとを積層した、除熱用放熱シートが開示されている。
特開2005−101025号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている熱放射層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金にアルミナを塗装したものであることから、衝撃や変形によりアルミナ層に欠損が生じることがある。このアルミナ層の欠損等は、十分な絶縁性の確保を阻害するため、絶縁性を必要とする場所への使用は困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品等の発熱体に容易に接合し、かつ電子部品等で発生する熱を効率良く拡散、放熱できる絶縁放熱シートを提供すること、特に、各種電子部品の小型軽量化及び薄型化にも対応できる絶縁放熱シートを提供することを課題とする。
発明者らは、鋭意検討の結果、絶縁層と、熱放射フィラーおよびバインダーを含有する熱放射層と、金属層と、粘着層とを順に有し、絶縁層及び粘着層を所定の厚みにすることで、高い熱拡散性及び絶縁性を実現できることを見出した。
熱放射層の上に層を設けることは、熱放射を阻害するおそれがあり、当業者の通常の技術常識からは行われないことである。しかしながら、本発明者らはその積層条件を所定の条件とすることで、高い熱拡散性及び絶縁性を実現できることを見出した。
また所定の粘着層をさらに備えることで、発熱体への接合性と、熱放射層への熱伝導性を共に備えることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示す構成を備えるものである。
(1)本発明の一態様に係る絶縁放熱シートは、絶縁層と、熱放射フィラーおよびバインダーを含有する熱放射層と、金属層と、粘着層とを順に有し、前記絶縁層および前記粘着層の平均厚みが各々5〜50μmである。
(2)上記(1)に記載の絶縁放熱シートは、絶縁破壊電圧が1kV以上であることが好ましい。
(3)上記(1)又は(2)のいずれかに記載の絶縁放熱シートは、前記熱放射層の平均厚みが0.1〜5μmであってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記金属層の平均厚みが20〜100μmであってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記熱放射フィラーが炭素質材料であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記炭素質材料が、カーボンブラック、黒鉛および気相法炭素繊維から選ばれる1種または2種以上の材料であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記バインダーの少なくとも一種が、エポキシ樹脂または高分子多糖類が、酸架橋剤によって架橋されたものでもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記熱放射フィラー20〜50質量%およびバインダー50〜80質量%を含有してもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートは、前記粘着層の金属層と反対側の面に、剥離シートをさらに有してもよい。
(10)本発明の一態様に係るヒートスプレッターは、上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の絶縁放熱シートを含む。
(11)本発明の一態様に係る電子機器は、上記(10)に記載のヒートスプレッターを組み込んだものである。
本発明の絶縁放熱シートは、電子部品等の発熱体に容易に接合し、かつ電子部品等で発生する熱を効率良く拡散、放熱できる。
本発明の一態様にかかる絶縁放熱シートの断面を模式的に示した図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図1は、本発明の一態様にかかる絶縁放熱シートの断面を模式的に示した図である。図1に示す絶縁放熱シート10は、絶縁層1と、熱放射フィラーおよびバインダーを含有する熱放射層2と、金属層3と、粘着層4とを順に有する。絶縁層1および粘着層4の平均厚みは、各々5〜50μmである。絶縁放熱シート10の使用前には必要に応じてさらに粘着層4の露出面に剥離シート5を積層しても良い。各層の間には、その他の層を有していてもよい。
「平均厚み」とは、絶縁放熱シート10の断面を観察し、無作為に選んだ10カ所の厚みを測定し、その算術平均値として得られた値を指す。
<絶縁層>
絶縁層1は、電子部品等の発熱体に絶縁放熱シート10を接合した際に、最外層となる層である。
絶縁層1は、電気絶縁性を有する。絶縁性とは、例えば絶縁層1の両面に1〜5kVの電圧を印加した際にも絶縁破壊されず、絶縁性を維持できることを意味する。
絶縁層1が絶縁性を有することで、電子部品等の中の絶縁性を必要とする場所でも使用も可能となる。
絶縁層1を構成する材料としては、絶縁性を有すれば特に限定されず、樹脂材料やセラミック材料を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンなどを用いることができる。絶縁性、耐熱性の観点から、PETが特に好ましい。
絶縁層1の平均厚みは、5〜50μmである。絶縁層1の平均厚みは、5〜15μmであることが好ましい。絶縁層1の平均厚みが5〜50μmであれば、十分な絶縁性と高い放熱性を維持することができる。
絶縁層1を熱放射層2の上に積層する方法は、特に限定されるものではない。例えば、絶縁層1となる樹脂を溶融押し出しし、熱放射層上にラミネートする方法や、予めフィルム状に成形された絶縁層1を各種の粘着剤、接着剤により熱放射層2と貼り合せる方法がある。
絶縁放熱シート10は、上述のような絶縁層1を有することで、外部との高い絶縁性を維持することができる。その結果、電子部品等の中の絶縁性を必要とする場所でも絶縁放熱シート10の使用が可能となる。
また絶縁層1は、その下に形成される熱放射層2等を保護するため、絶縁放熱シート10の耐摩耗性も向上することができる。すなわち、絶縁放熱シート10に衝撃や変形が加わっても、放熱性及び絶縁性を維持することができる。
<熱放射層>
熱放射層2は、熱放射フィラーおよびバインダーを含有する。
熱放射層2に用いられる熱放射フィラーは、放射率0.8以上であれば金属、非金属に関わらず特に限定されない。高熱放射率および低コストの観点からは、炭素質材料が好ましい。炭素質材料としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択して用いても良い。熱放射フィラーの粒子径は、累積質量50%粒子径(D50)が0.1〜2.0μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがより好ましい。累積質量50%粒子径(D50)が0.1〜2.0μmであると、平滑性の高い熱放射層を得ることができる。
熱放射層2に用いられるバインダーとしては、熱放射フィラーを結着できる材料であれば特に限定されない。熱放射フィラーの結着性、熱放射フィラーおよびバインダーの組成物の塗工性、及び熱放射層2としての皮膜性能の観点から、バインダーとしては、熱、又は光硬化性の樹脂が好ましい。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ビニルエステル系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ノボラック系樹脂、アミノ系樹脂、および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂、高分子多糖類等を用いることができる。
バインダーとして用いられる硬化性樹脂としては、耐久性、密着性の点で熱硬化のエポキシ系樹脂、又は高分子多糖類がより好ましく、これらを酸架橋剤で架橋し硬化することが好ましい。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテル等が例示でき、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることが出来る。高分子多糖類としては、キトサン、キチンおよびその誘導体から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。酸架橋剤としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水ドデシルコハク酸、無水メチルナジック酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることが出来る。
熱放射層2における熱放射フィラーの含有量は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜40質量%である。熱放射層2における熱放射フィラーの含有量がこの範囲内であることにより、熱放射フィラー単体の熱放射率に熱放射層2の放熱性を近づけることができ、熱放射層2の放熱性を向上させるメリットがある。熱放射層2におけるバインダーの含有量は、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは60〜70質量%である。熱放射層2におけるバインダーの含有量がこの範囲内であることにより、熱放射フィラーを基材上に担持するメリットがある。
熱放射層2の形成方法は、特に限定されない。例えば、熱放射フィラーおよびバインダーの組成物を、絶縁層1又は金属層3の上に塗布、硬化することで熱放射層2を形成することが出来る。
熱放射フィラーおよびバインダーの組成物は、必要に応じて溶剤で希釈してから塗布、乾燥、さらに硬化させて熱放射層2を形成してもよい。
熱放射フィラーおよびバインダーの組成物の塗工方法としては、均一の厚みの薄膜を形成すること出来るグラビア塗工が塗工方法として好ましい。
熱放射層の平均厚みとしては、0.1〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。熱放射層の平均厚みが0.1〜5μmであれば、熱放射層内の熱放射フィラー量を十分確保でき、十分な放熱性を得られる。
<金属層>
金属層3は、熱放射層2と電子部品等の発熱体の間に備えられる。金属層3は、高い熱伝導性を有することで、熱放射層2に発熱体で発生した熱を効率よく伝えることができる。
金属層3としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムおよびそれらの金属を含む合金などを用いることができる。熱伝導率が高い金属であることが好ましく、低価格や加工容易性の観点からは、金属層3として銅、アルミニウムおよびそれらの金属を含む合金を用いることが好ましい。
金属層3の平均厚みは、20〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好ましい。金属層3の平均厚みが20μm以上であると、熱放射性に優れた絶縁放熱シート10が得られるとともに、絶縁放熱シート10を製造する工程における金属層3の歪みや変形が少ないものとなる。金属層3の平均厚みが100μm以下であると、発熱体に絶縁放熱シート10を接合する際の、絶縁放熱シート10の発熱体に対する形状追従性を十分に確保することができる。従って、発熱体の表面が曲面である場合にも、発熱体と絶縁放熱シート10との接触面積を十分に確保することができるため、発熱体の熱を効率よく放熱することができる。
<粘着層>
粘着層4は、絶縁放熱シート10を電子機器等の発熱体と接合するための層である。
粘着層4に用いられる粘着剤としては、特に限定されない。絶縁性と粘着力が十分であれば良く、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることが出来る。中でも、粘着力の点でアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
粘着剤は、溶剤を含んだもの、無溶剤のもの、何れも用いることができる。粘着剤の凝集力を高める目的で、粘着剤に応じた硬化剤を含んでも良い。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物等を用いることができる。
粘着層4の形成方法としては、例えば、金属層3または剥離シート5の一方の面に、溶剤で希釈された粘着剤を塗布し、乾燥して熱硬化させる方法等が挙げられる。
本発明に用いる粘着層4の平均厚みは、5〜50μmであり、8〜20μmであることが好ましい。粘着層4の平均厚みが5μm以上であると、粘着層4と、発熱体および金属層3との接合強度が十分に高く、絶縁性も満足できる絶縁放熱シート10となる。粘着層4の平均厚みが50μm以下であると、発熱体の熱を、粘着層4を介して金属層3に効率よく伝導できる。
粘着剤の塗布方法は、特に限定されない。例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いる方法が挙げられる。
粘着層4の粘着力は、後述する測定方法を用いて測定したSUS304に対する粘着力が5N/25mm以上のものであることが好ましく、8N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。粘着層4の粘着力が5N/25mm以上であると、粘着層4と、発熱体および金属層3との接合強度が十分に高い絶縁放熱シート10となる。
「粘着力の試験方法」
粘着層4の粘着力は、以下に示す方法により求める。
厚さ50μmのPETフィルム(東レ株式会社製、「ルミラー(登録商標)S−10」)を基材とし、基材上に粘着層4を形成して、試験用積層シートとする。次に、試験用積層シートを縦25mm、横100mmの大きさに切り取り、短冊状シート片とする。次いで、SUS304からなる試験板上に、粘着層を試験板に向けて短冊状シートを積層する。その後、短冊状シート上を、2kgのゴムローラー(幅:約50mm)を1往復させて試験板と短冊状シートとを接合する。
接合された試験板および短冊状シートを、23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置する。その後、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、短冊状シートの試験板に対する粘着力(N/25mm)を測定する。
粘着層4は、粘着剤に絶縁性の熱伝導性フィラーを含有させてもよい。熱伝導性フィラーとしては、絶縁性で熱伝導性を有するものであればよい。例えば、金属酸化物、金属窒化物および金属水和物などから選択される1種または2種以上の粒子が挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタンなどが挙げられる。金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などが挙げられる。金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
熱伝導性フィラーは、粉体であることが粘着層4へ均一に分散させる観点から好ましい。熱伝導性フィラーの粒子径は、累積質量50%粒子径(D50)が1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。熱伝導性フィラーの粒子径は、粘着層4の厚みに合せて適宜設定することが好ましい。累積質量50%粒子径(D50)が1〜50μmであると、粘着層4に含まれる熱伝導性フィラーと、発熱体および金属層3との接触面積が十分に得られ、発熱体の熱を、粘着層4を介して金属層3に効率よく伝導できる。
「累積質量50%粒子径(D50)」は、例えば、株式会社島津製作所製の商品名「SALD−200V ER」のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いるレーザ回折式粒度分布測定により得られる。
「剥離シート」
剥離シート5としては、特に限定されない。例えば、剥離処理剤により表面が処理されたプラスチックフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などのものを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。
「絶縁放熱シートの製造方法」
絶縁放熱シート10の製造方法について特に制限はない。例えば、金属層3の片面に熱放射層2を形成し、その後、熱放射層2に絶縁層1をラミネートする。さらに金属層3のもう片面に粘着層4を貼り合せることで絶縁放熱シート10を得ることが出来る。得られた絶縁放熱シート10は、粘着層4の金属層3と貼り合せた面の反対側に、剥離シート5が積層されることで、絶縁放熱シート10を発熱体に接合するまでの間、剥離シート5によって粘着層4を保護できる。絶縁放熱シート10は、絶縁層1、熱放射層2、金属層3、および粘着層4がこの順で積層されていれば良く、必要に応じて各層の間に粘着剤層やラミネート層等の他の層を含んでもよい。
絶縁放熱シート10は、熱放射率が0.8〜1であることが好ましく、より好ましくは0.9〜1である。熱放射率が0.8〜1であれば、十分な熱放射性が得られる。
絶縁放熱シート10は絶縁破壊電圧が1kV以上であることが好ましい。より好ましくは、2kV以上である。絶縁破壊電圧が1kV以上であれば、弱電用途への使用に問題がなく使用が可能となる。
絶縁放熱シート10は、発熱体に容易に接合でき、さらに、発熱体の熱を効率よく放熱できるものである。したがって、絶縁放熱シート10は、発熱体で発生した熱を熱放散するためのヒートスプレッターとして好適に用いることができる。発熱体としては、例えば、半導体チップ、トランジスター、コンデンサ、キャパシターなどの電子部品、電池(バッテリー)などの電気部品が挙げられる。発熱体の他の例としては、さらに、電子回路基板、太陽電池パネル、証明器具、ディスプレイバックライト、プロジェクター、LEDライト、信号、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレットPC、サーバー、小型ゲーム機、太陽電池パネルメモリーモジュール、アンプ、各種の電池、及び、カメラモジュール等を挙げる事ができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(粘着層の作製)
アクリル系粘着剤(昭和電工株式会社製 ビニロール(登録商標) PSA SV−6805 固形分 47% )100質量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製 コロネート(登録商標) HX 固形分100%)1質量部、及び希釈用溶剤の酢酸エチル100質量部を混合し粘着剤組成物を作製した。次いで、表面が離型処理されたPETフィルム(東洋紡社製E7006、厚み75μm)上にドクターブレードにより溶剤乾燥後所定の厚みとなるように塗工し溶剤を乾燥させ、次いで上記表面離型処理PETフィルムを被せて粘着シートを得た。この粘着シートは、後述する金属層と接着させることで粘着層となる。
<絶縁放熱シートの製造>
(実施例A−1)
絶縁層1として12μmPETフィルムに接着剤(昭和電工株式会社製 EX−2022)を1μm厚となるように塗工乾燥し、次いで熱放射層2と金属層3を有するカーボンコートアルミ金属シート(昭和電工製:カーボンコートアルミ箔 SDX(商標))のカーボンコート層上に貼り合せ、絶縁層1、熱放射層2、金属層3が順に積層された積層シートを形成した。熱放射層2は、熱放射フィラーとしてカーボンブラック、バインダーとしてキトサン誘導体をピロメリット酸により架橋させたものである。熱放射層2の平均厚みは1μmであり、金属層3は、平均厚み50μmのアルミ箔である。
次に、一方の表面離型処理PETフィルムを除去した10μm厚の粘着シートを、積層シートの金属層面に貼り合せることで絶縁放熱シートA−1を得た。
(実施例A−2)
実施例A−1の絶縁層1を50μmPETフィルムに、粘着層4の平均厚みを50μmに変更した以外は実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、実施例A−2の絶縁放熱シートを得た。
(実施例A−3)
実施例A−1の絶縁層を12μmポリエチレンフィルムに変更した以外は、実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、実施例A−3の絶縁放熱シートを得た。
(実施例A−4)
<ポリウレタンの合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた5L四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート及び水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシル基を末端に有するポリプロピレングリコールである商品名「D−2000」(三井化学ファイン株式会社製、数平均分子量:2000(カタログ値))を、前者が474.6g、後者が3992.4g(モル比で前者:後者=15:14)で仕込んだ。その後、前記イソホロンジイソシアネート及びD−2000に対し、ジオクチルスズジラウレート100質量ppmを加え、70℃まで昇温して4時間反応させ、イソシアナト基を末端に有するポリウレタンを得た。
その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート33.0g(上記ポリウレタンの理論末端イソシアナト基量と当量(2モル相当分))を加えた後、70℃で2時間反応させ、重量平均分子量が70,000のアクリロイル基を末端に有するポリウレタンを得た。このとき、IRスペクトルにより、イソシアナト基由来の吸収ピークが消失したことを確認した後、反応を終了した。なお、上記アクリロイル基を末端に有するポリウレタンの重量平均分子量は、以下の条件でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー:商品名「Shodex GPC−101」(昭和電工株式会社製、「Shodex」は登録商標である)を用いて測定したポリスチレン換算の分子量である。
カラム:LF−804(昭和電工株式会社製)
カラムの温度:40℃
試料:0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/min
溶離液:テトラヒドロフラン
<ポリウレタン樹脂組成物の製造>
このようにして得られたポリウレタン100質量部と、重合性単量体である2−エチルヘキシルアクリレート252質量部とイソステアリルアクリレート196質量部とアクリル酸18質量部と2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部とを、フラスコで混合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
<熱伝導性粘着剤組成物の製造>
このようにして得られたポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、熱伝導性フィラーである、D50が18μmの水酸化アルミニウム(昭和電工社製、商品名 H−31)300質量部と、光重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:LUCIRIN TPO)を0.8質量部とを、室温下でディスパーを用いて混合し、均一な熱伝導性粘着剤組成物を調製した。
<熱伝導性フィラー含有粘着シートの製造>
このようにして調製した熱伝導性粘着剤組成物を用いて、以下に示す方法により、熱伝導性フィラー含有粘着シートを形成した。
熱伝導性粘着剤組成物を、前記表面離型処理された厚み75μmのPETフィルム(200mm×200mm)に、アプリケーターを用いて膜厚(硬化後の平均厚み)が50μm厚となるように塗布した。その後、粘着剤組成物からなる塗膜上に、同じ表面離型処理PETフィルムを配置した。続いて、一方の剥離PETフィルム上から、紫外線照射装置(日本電池株式会社製、UV照射装置4kw×1、出力:160W/cm、メタルハライドランプ)を用いて、照射距離12cm、ランプ移動速度20m/min、照射量約1000mJ/cmの条件で紫外線を照射して、熱伝導性粘着剤組成物を硬化させた。
以上の工程により、2枚の剥離PETフィルム間に、厚み50μm厚の熱伝導性粘着層が挟まれた熱伝導性粘着シートを得た。
次に、実施例1に記載の粘着シートを、熱伝導性粘着シートに変更した以外は、実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、実施例A−4の絶縁放熱シートを得た。
(比較例B−1)
実施例A−1の絶縁層1を除いた構成に変更した以外は、実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、比較例B−1の絶縁放熱シートを得た。
(比較例B−2)
実施例A−1の粘着層4の平均厚みを3μmに変更した以外は、実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、比較例B−2の絶縁放熱シートを得た。
(比較例B−3)
実施例A−1の熱放射層2を除いた構成に変更した以外は、実施例A−1の絶縁放熱シートと同様にして、実施例B−3の絶縁放熱シートを得た。
実施例A−1、A−2、A−3、A−4、比較例B−1、B−2、B−3の絶縁放熱シートそれぞれについて、上記の方法を用いて、粘着力を求めた。また、実施例A−1、A−2、A−3、A−4、比較例B−1、B−2、B−3の絶縁放熱シートそれぞれについて、下記の方法を用いて、放熱性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(平均厚みの測定)
各実施例、比較例の絶縁放熱シートをカッターで切断した断面を電子マイクロメータ(株式会社セイコー・イーエム社製ミリトロン1240)により無作為に10点観察し、絶縁層を除く各層の厚みを測定して、その算術平均値を求めた。絶縁層は所定の厚みの市販のフィルムを使用しているため測定していない。
(電気絶縁性の評価)
JIS C2110−1に準拠した方法で、各実施例および各比較例で作製した絶縁放熱シートの絶縁破壊電圧を測定した。
具体的には、縦100mm、横100mmの正方形の絶縁放熱シートの剥離PETフィルムを剥がしたものを測定サンプルとして用いた。
測定には菊水電子工業(株)製の耐電圧試験器(TOS5101)を使用し、上部電極は直径25mm、高さ25mm、下部電極は直径70mm、高さ15mmのものを使用した。
昇圧はJIS C2110−1の60秒段階昇圧試験の条件に従って行い、サンプルが破壊された電圧を絶縁破壊電圧とした。
得られた結果について、以下のように評価した。
○:1kV以上
×:1kV未満
(放熱性の評価)
剥離PETフィルムを剥がした縦60mm、横60mmの正方形の絶縁放熱シートを、縦60mm、横60mmの正方形のセラミックヒーター(坂口電熱社製 WALN−1)の両面に、セラミックヒーターに粘着シートの粘着層を対向させて積層した。そして、セラミックヒーターを5Wで発熱させた時のヒーター温度(60分後)を測定し、放熱性を評価した。評価は、室温25℃、湿度50%RHの環境で行った。
なお、絶縁放熱シートを貼り付けない状態のセラミックヒーターを5Wで発熱させた時のヒーター温度は150℃であった。
Figure 0006604971
実施例A−1、A−2、A−3は、電気絶縁性、放熱性、粘着力ともに良好な結果を示した。A−4は粘着層にフィラーを含有しているため、粘着力が低下したが、粘着層が50μmと厚くても放熱性の低下は見られなかった。これに対し、絶縁層を有しない比較例B−1は良好な絶縁性能が得られず、粘着層の厚みが十分でない比較例B−2は粘着力が低下するとともに良好な電気絶縁性が得られなかった。熱放射層を有しない比較例B−3は放熱性が悪い結果となった。
1:絶縁層、2:熱放射層、3:金属層、4:粘着層、5:剥離シート、10:絶縁放熱シート

Claims (11)

  1. 絶縁層と、熱放射フィラーおよびバインダーを含有する熱放射層と、金属層と、粘着層とを順に有し、
    前記絶縁層および前記粘着層の平均厚みが各々5〜50μmである絶縁放熱シート。
  2. 絶縁破壊電圧が1kV以上である請求項1に記載の絶縁放熱シート。
  3. 前記熱放射層の平均厚みが0.1〜5μmである請求項1又は2のいずれかに記載の絶縁放熱シート。
  4. 前記金属層の平均厚みが20〜100μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁放熱シート。
  5. 前記熱放射フィラーが炭素質材料である請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁放熱シート。
  6. 前記炭素質材料が、カーボンブラック、黒鉛および気相法炭素繊維から選ばれる1種または2種以上の材料である請求項5に記載の絶縁放熱シート。
  7. 前記バインダーの少なくとも一種が、エポキシ樹脂または高分子多糖類が酸架橋剤によって架橋されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁放熱シート。
  8. 前記熱放射層が、前記熱放射フィラー20〜50質量%およびバインダー50〜80質量%を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁放熱シート。
  9. 前記粘着層の金属層と反対側の面に、剥離シートをさらに有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁放熱シート。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の絶縁放熱シートを含むヒートスプレッター。
  11. 請求項10に記載のヒートスプレッターを組みこんだ、電子機器。
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