以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、半導体装置100の一例を示す平面図である。半導体装置100は、活性領域102および外側領域105が形成された半導体基板を有する半導体チップである。半導体基板は、第1導電型を有する。本例においては、第1導電型をN型として、第2導電型をP型として説明する。ただし、第1および第2導電型は逆の導電型であってもよい。
活性領域102は、例えば半導体装置100を駆動したときに電流が流れる領域である。活性領域102には、複数のメイントランジスタ部104およびダイオード部106が設けられる。メイントランジスタ部104は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタを含む。ダイオード部106は、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。
複数のメイントランジスタ部104に含まれるそれぞれのトランジスタは、互いに電気的に並列に設けられ、ゲート、エミッタ、コレクタの各端子には同一の電位が印加される。複数のダイオード部106に含まれるそれぞれのダイオードは、互いに電気的に並列に設けられ、エミッタ(またはアノード)、カソードの各端子には同一の電位が印加される。
メイントランジスタ部104およびダイオード部106は、所定の配列方向に沿って交互に配列されてよい。また、上述した配列方向と直交する方向に、複数のメイントランジスタ部104が配列されてよい。また、上述した配列方向と直交する方向に、複数のダイオード部106が配列されてよい。2つのメイントランジスタ部104の間、および、2つのダイオード部106の間には、ゲート電位を伝送するゲートランナーが設けられてよい。
外側領域105は、活性領域102の外側に設けられる。活性領域102の外側とは、活性領域102により囲まれておらず、且つ、活性領域102の中心よりも半導体基板10の端部に近い領域を指す。外側領域105は、活性領域102を囲んでいてもよい。外側領域105の更に外側には、耐圧構造部109等が設けられてよい。耐圧構造部109は、半導体基板の表面側の電界集中を緩和する。耐圧構造部109は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。また、活性領域102のウェル領域と、外側領域105のウェル領域とは分離している。
外側領域105には、センストランジスタ部108が設けられる。センストランジスタ部108は、メイントランジスタ部104に流れる電流を検出する。例えばセンストランジスタ部108には、メイントランジスタ部104に流れるメイン電流に比例し、且つ、メイン電流よりも小さい電流が流れる。例えばセンストランジスタ部108は、メイントランジスタ部104と並列に接続され、同一のゲート電位が入力される。ただし、センストランジスタ部108には、メイントランジスタ部104に接続される抵抗よりも大きな抵抗が接続される。
センストランジスタ部108は、ダイオード部106と対向しない位置に設けられる。本例のセンストランジスタ部108は、メイントランジスタ部104と対向する位置に設けられる。センストランジスタ部108に隣接して、ゲートパッド103を形成してよい。ゲートパッド103の面積は、センストランジスタ部108の面積より大きくてよい。ゲートパッド103、センストランジスタ部108は、いずれも、メイントランジスタ部104と対向する位置に設けられる。
図2は、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の一例を示す平面図である。図2においては、メイントランジスタ部104のうち、ゲートパッド103およびセンストランジスタ部108に対向する部分を示している。
活性領域102には、P+型のメインウェル領域17が設けられる。メイントランジスタ部104の少なくとも一部の構成は、メインウェル領域17に形成される。例えばメイントランジスタ部104のメインゲートトレンチ部40の少なくとも一部は、メインウェル領域17に形成される。なお、図2等において、トレンチ部に沿ってメインウェル領域17、メインエミッタ電極52等の端辺を図示しているが、メインウェル領域17、メインエミッタ電極52等は、トレンチ部の配列方向に沿って更に延伸していてもよい。
センストランジスタ部108は、センスゲートトレンチ部140を有する。センスゲートトレンチ部140は、半導体基板の表面において外側領域105からメインウェル領域17まで延伸して形成される。メインウェル領域17は、例えば半導体基板と異なる導電型を有し、且つ、半導体基板と同一の導電型のウェル分離領域120によって、センスウェル領域117と分離される領域を指してよい。また、メインウェル領域17は、活性領域102においてベース領域14の外側に設けられ、且つ、ベース領域14よりも不純物濃度が高い領域を指してもよい。
センスゲートトレンチ部140が、活性領域102のメインウェル領域17まで延伸することで、センストランジスタ部108が、活性領域102に対してフローティングになることを防ぐことができる。例えば、活性領域102の印加電圧が大きく変動した場合に、センストランジスタ部108は、メインウェル領域17に延伸したセンスゲートトレンチ部140を介して、当該電圧変動に追従することができる。このため、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の間の電圧差を緩和して、電界集中を緩和することができる。
また、センスゲートトレンチ部140およびメインゲートトレンチ部40は電気的に接続されてよい。これにより、センスゲートトレンチ部140は、メインゲートトレンチ部40における電圧変動にも追従することができる。
本例のセンスゲートトレンチ部140は、メインウェル領域17に延伸して、活性領域102に設けられたメインゲートトレンチ部40と半導体基板10の内部で接続する。つまり、センスゲートトレンチ部140およびメインゲートトレンチ部40は連続して形成される。
図2の例において、センストランジスタ部108に対向するメイントランジスタ部104は、チップの表面側において、メインエミッタ電極52、メインゲートトレンチ部40、メインダミートレンチ部30、メインウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、および、コンタクトホール54を有する。また、センストランジスタ部108は、チップの表面側において、ゲート電極151、センスエミッタ電極152、センスゲートトレンチ部140、センスダミートレンチ部130、センスウェル領域117、エミッタ領域112、ベース領域114、コンタクト領域115、コンタクトホール154、および、コンタクトホール155を有する。
メインゲートトレンチ部40、メインダミートレンチ部30、メインウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15、センスゲートトレンチ部140、センスダミートレンチ部130、センスウェル領域117、エミッタ領域112、ベース領域114、および、コンタクト領域115は、半導体基板の表面側の内部に形成される。また、メインエミッタ電極52、センスエミッタ電極152およびゲート電極151は、半導体基板の表面の上方に設けられる。
P+型のメインウェル領域17およびP+型のセンスウェル領域117は分離して形成される。本例では、メインウェル領域17およびセンスウェル領域117の間に、半導体基板と同一の導電型(本例ではN−型)のウェル分離領域120が形成される。
メインエミッタ電極52、センスエミッタ電極152およびゲート電極151と、半導体基板の表面との間には層間絶縁膜が形成されるが、図2では省略している。コンタクトホール54、コンタクトホール154およびコンタクトホール155は、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。メインエミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って半導体基板と接触する。センスエミッタ電極152は、コンタクトホール154を通って半導体基板と接触する。ゲート電極151は、コンタクトホール155を通って半導体基板と接触する。
メインエミッタ電極52、センスエミッタ電極152およびゲート電極151は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミで形成される。各電極は、タングステンを含む材料で形成される領域を有してもよい。
1以上のメインゲートトレンチ部40および1以上のメインダミートレンチ部30は、メイントランジスタ部104の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。メインダミートレンチ部30は、半導体基板の表面において予め定められた延伸方向に延伸して形成される。本例におけるメインダミートレンチ部30は直線形状を有しており、上述した配列方向とは垂直な方向に延伸して形成される。
メインゲートトレンチ部40は、メインダミートレンチ部30と平行に形成される。ただし、メインゲートトレンチ部40は、メインダミートレンチ部30よりも延伸方向において長い。
1以上のセンスゲートトレンチ部140および1以上のセンスダミートレンチ部130は、センストランジスタ部108の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。センストランジスタ部108におけるトレンチ部の配列方向および間隔は、メイントランジスタ部104におけるトレンチ部の配列方向および間隔と同一であってよい。センスゲートトレンチ部140は、メインゲートトレンチ部40と対向する位置に設けられ、センスダミートレンチ部130は、メインダミートレンチ部30と対向する位置に設けられる。
センスダミートレンチ部130は、半導体基板の表面において予め定められた延伸方向に延伸して形成される。センストランジスタ部108におけるトレンチ部の延伸方向は、メイントランジスタ部104におけるトレンチ部の延伸方向と同一であってよい。本例におけるセンスダミートレンチ部130は直線形状を有しており、上述した配列方向とは垂直な方向に延伸して形成される。
センスゲートトレンチ部140は、センスダミートレンチ部130と平行に形成される。ただし、センスゲートトレンチ部140は、センスダミートレンチ部130よりも延伸方向において長い。センスゲートトレンチ部140は、センスウェル領域117から、ウェル分離領域120を横切って、メインウェル領域17まで形成される。本例のセンスゲートトレンチ部140は、メインウェル領域17においてメインゲートトレンチ部40と接続する。
本例におけるセンスダミートレンチ部130の端部は、センスウェル領域117に形成される。他の例では、センスダミートレンチ部130は、メインウェル領域17まで延伸してもよい。センスダミートレンチ部130は、対向するメインダミートレンチ部30と接続してもよい。この場合、センスダミートレンチ部130は、ウェル分離領域120を横切って形成される。
メインウェル領域17の拡散深さは、メインゲートトレンチ部40およびメインダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。メインダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、メインウェル領域17に覆われていてよい。また、センスウェル領域117の拡散深さは、センスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130の深さよりも深くてよい。センスダミートレンチ部130の延伸方向の端の底は、センスウェル領域117に覆われていてよい。
センスゲートトレンチ部140は、対向部141および突出部143を有する。対向部141は、センスダミートレンチ部130と対向する範囲において、上述した延伸方向に延伸して形成される。つまり、対向部141は、センスダミートレンチ部130と平行に形成される。
突出部143は、対向部141から更に延伸して、センスダミートレンチ部130と対向しない範囲に形成される。突出部143は、対向部141の両端に設けられる。メイントランジスタ部104側の突出部143は、メインウェル領域17まで延伸する。また、逆側の突出部143は、センスダミートレンチ部130の両側に設けられた2つの対向部141を接続する。当該突出部143の少なくとも一部は曲線形状を有してよい。
メイントランジスタ部104とは逆側の突出部143を覆う絶縁層に、コンタクトホール155が形成される。コンタクトホール155は、突出部143において対向部141から最も離れた領域に対応して形成されてよい。本例の突出部143は、対向部141から最も離れた領域において、対向部141とは直交する方向に延伸する部分を有する。コンタクトホール155は、突出部143の当該部分に対応して形成されてよい。
ゲート電極151は、メイントランジスタ部104とは逆側の突出部143の一部を覆って形成される。ゲート電極151は、突出部143においてコンタクトホール155が設けられた部分を覆って形成される。本例のゲート電極151は、対向部141およびセンスダミートレンチ部130の上方には形成されない。
メインエミッタ電極52は、メインゲートトレンチ部40、メインダミートレンチ部30、メインウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。本例のメインエミッタ電極52の一端は、ウェル分離領域120の上方に設けられる。突出部143は、全体がセンスウェル領域117に形成されてよい。
メイントランジスタ部104において各トレンチ部に挟まれる領域には、ベース領域14が形成される。センストランジスタ部108において各トレンチ部に挟まれる領域には、ベース領域114が形成される。ベース領域14および114は、メインウェル領域17およびセンスウェル領域117よりも不純物濃度の低いP−型である。
ベース領域14および114の表面には、ベース領域14および114よりも不純物濃度の高いP+型のコンタクト領域15および115が形成される。また、コンタクト領域15および115の表面の一部に、半導体基板よりも不純物濃度が高いN+型のエミッタ領域12および112が選択的に形成される。
コンタクト領域15および115、ならびに、エミッタ領域12および112のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。1以上のコンタクト領域および1以上のエミッタ領域は、各トレンチ部に挟まれる領域において、トレンチ部の延伸方向に沿って交互に半導体基板の表面に露出するように形成される。センストランジスタ部108におけるコンタクト領域115およびエミッタ領域112の繰り返し数は、メイントランジスタ部104におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12の繰り返し数よりも少なくてよい。
メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108において、コンタクトホール54および154は、コンタクト領域、エミッタ領域およびダミートレンチ部の各領域の上方に形成される。エミッタ領域とエミッタ電極との接触面積を最大化すべく、コンタクトホール54および154は、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。また、コンタクトホール54および154は、エミッタ領域の表面の全範囲を露出させるように形成されてよい。また、コンタクトホール54および154は、コンタクト領域の表面の全範囲も露出させるように形成されてよい。ただし、コンタクトホール54および154は、ベース領域およびウェル領域に対応する領域には形成されない。
また、コンタクトホール54および154は、エミッタ領域に対向する範囲のゲートトレンチ部の上方にも形成される。本例のコンタクトホール54および154は、エミッタ領域およびコンタクト領域に対向する範囲のゲートトレンチ部を露出させる。なお、後述するようにゲートトレンチ部のトレンチ内の上端に、トレンチ内の電極とエミッタ電極とを絶縁する絶縁部が形成される。
また、コンタクトホール54および154は、エミッタ領域に対向する範囲のダミートレンチ部を露出させるように形成される。本例のコンタクトホール54および154は、エミッタ領域およびコンタクト領域に対向する範囲のダミートレンチ部を露出させる。エミッタ電極は、露出したダミートレンチ部の内部の電極と接触する。
本例の半導体装置100は、センストランジスタ部108に隣接して、ゲートパッド103が形成されている。ゲートパッド103の面積は、センストランジスタ部108においてIGBTが形成される領域の面積より大きくてよい。ゲートパッド103、および、センストランジスタ部108は、いずれも、メイントランジスタ部104と対向する位置に設けられる。
ゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40は、センストランジスタ部108と対向するメインゲートトレンチ部40とは異なる形状を有してよい。本例においてゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40は、センスゲートトレンチ部140と接続しない。ゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40は、対向部41および突出部43を有する。
対向部41、ならびに、対向部41に対応するメインエミッタ電極52、メインウェル領域17、コンタクトホール54、エミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14の構造は、センストランジスタ部108と対向するメインゲートトレンチ部40等の構造と同様である。メインエミッタ電極52、メインウェル領域17およびコンタクトホール54は、ゲートパッド103に対向する領域、および、センストランジスタ部108と対向する領域の双方において連続して形成されてよい。
対向部41は、メインダミートレンチ部30と対向する位置に設けられる。突出部43は、対向部41から延伸して設けられ、且つ、メインダミートレンチ部30と対向しない位置に設けられる。本例において突出部43の全体は、メインウェル領域17に形成される。
突出部43は、メインダミートレンチ部30の両側に設けられた2つの対向部41を接続する。突出部43は、メインダミートレンチ部30から最も離れた領域において、トレンチ部の配列方向と略平行に延伸する部分を有する。突出部43の当該部分は、ゲート電極50で覆われる領域に設けられる。半導体装置100は、突出部143の当該部分に対応して設けられたコンタクトホール55を更に備える。
ゲート電極50は、センストランジスタ部108に対応して設けられたゲート電極151と一体に形成されてよい。ゲート電極50およびゲート電極151の一部の領域上にゲートパッド103が形成される。
ゲート電極50は、コンタクトホール55を通って、突出部43のトレンチ内に形成された電極と接触する。これにより、ゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40とゲート電極50とを接続する。
図3は、図2におけるb−b'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜26、メインエミッタ電極52、センスエミッタ電極152、ゲート電極151およびコレクタ電極24を有する。層間絶縁膜26は、メインエミッタ電極52、センスエミッタ電極152およびゲート電極151と、半導体基板10との間に形成される。層間絶縁膜26には、コンタクトホール54、154および155が形成される。
半導体基板10は、当該断面において、センスウェル領域117およびメインウェル領域17を有する。センスウェル領域117およびメインウェル領域17にそれぞれ囲まれた領域には、ベース領域14および114が形成される。センスウェル領域117およびメインウェル領域17ならびにベース領域14および114の裏面側にはN−型のドリフト領域18が形成される。
ドリフト領域18の裏面側にはN−型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20の裏面側にはP+型のコレクタ領域22が形成される。コレクタ領域22の裏面側にはコレクタ電極24が形成される。また本明細書において、基板、層、領域等の各部材のセンスエミッタ電極152側の面を表面、コレクタ電極24側の面を裏面または底部と称する。また、センスエミッタ電極152とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
また、メインウェル領域17およびセンスウェル領域117は、ウェル分離領域120により分離される。ウェル分離領域120は、ドリフト領域18から延伸して形成され、メインウェル領域17およびセンスウェル領域117の間を通り、半導体基板10の表面に露出する。これにより、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の間で電流が流れることを防ぐ。
一方で、図2に示したセンスゲートトレンチ部140は、ウェル分離領域120を横切って、メインウェル領域17の内部まで形成される。このため、メインウェル領域17に対してセンスウェル領域117がフローティングになることを防ぐことができる。例えばメインウェル領域17とセンスゲートトレンチ部140内部の電極とは容量結合し、センスゲートトレンチ部140内部の電極とセンスウェル領域117とは容量結合する。このため、メインウェル領域17に大きな電圧変動が生じた場合、センスウェル領域117は、センスゲートトレンチ部140を介して、当該電圧変動に追従することができる。
また、センスゲートトレンチ部140のセンスゲート導電部144およびメインゲートトレンチ部40のメインゲート導電部44は電気的に接続されている。このため、センスゲートトレンチ部140は、メインゲートトレンチ部40の電圧変動にも追従することができる。このため、メインウェル領域17の端部における電界集中を緩和することができる。
コンタクトホール54は、半導体基板10の表面において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の少なくとも一部を露出させる。メインエミッタ電極52は、コンタクトホール54を通過して、エミッタ領域12およびコンタクト領域15と接触する。
コンタクトホール154は、半導体基板10の表面において、エミッタ領域112およびコンタクト領域115の少なくとも一部を露出させる。センスエミッタ電極152は、コンタクトホール54を通過して、エミッタ領域112およびコンタクト領域115と接触する。
コンタクトホール155は、半導体基板10の表面において、センスゲートトレンチ部140の突出部143の少なくとも一部を露出させる。センスゲートトレンチ部140は、センスゲートトレンチの内壁に形成された絶縁膜142と、絶縁膜142の内側においてセンスゲートトレンチ内に充填されたセンスゲート導電部144とを有する。
コンタクトホール155によりセンスゲート導電部144の表面の少なくとも一部が露出する。ゲート電極151は、コンタクトホール155を通って、センスゲート導電部144の表面と接触する。後述するように、センスゲートトレンチの上端近傍には、センスエミッタ電極152とセンスゲート導電部144とを絶縁するセンスゲート絶縁部が形成される。ただし、コンタクトホール155により露出するセンスゲートトレンチ部140には、センスゲート絶縁部が形成されず、センスゲート導電部144の表面の少なくとも一部が露出する。
コンタクトホール155により露出するセンスゲートトレンチ部140は、後述するセンスダミートレンチ部130と同一の断面構造を有してよい。例えば、突出部143の一部において、センスゲート導電部144のゲートトレンチの開口側の端面(本例では表面)の少なくとも一部は、半導体基板10の表面と同じ高さである。センスゲート導電部144の表面全体が、半導体基板10の表面と同一の高さであってもよい。
また、コンタクトホール155により露出するセンスゲートトレンチ部140のゲートトレンチは、対向部141におけるセンスゲートトレンチ部140のゲートトレンチよりも、浅くてよい。つまり、対向部141のセンスゲートトレンチは、突出部143の一部のセンスゲートトレンチよりも深い。コンタクトホール155により露出するセンスゲートトレンチ部140のセンスゲートトレンチは、後述するセンスダミートレンチと同一の深さまで形成されてよい。また、コンタクトホール155により露出するセンスゲートトレンチ部140のゲートトレンチは、センスダミートレンチと同一の幅を有してよい。このような構成により、半導体基板10の表面の凹凸を低減することができる。
ただし、センスゲートトレンチ部140の構造は、図3の例に限定されない。例えばセンスゲートトレンチ部140は、センスゲートトレンチの内部においてセンスゲート導電部144の上方に設けられた絶縁部を有してよい。コンタクトホール155により露出する領域において、当該絶縁部は貫通孔を有してよい。当該貫通孔を通ってゲート電極151は、センスゲート導電部144と接触してよい。
図4は、図2におけるa−a'断面の一例を示す図である。a−a'断面は、センストランジスタ部108における断面である。図4においてはセンストランジスタ部108の構造を説明するが、メイントランジスタ部104も、a−a'断面と平行な断面において同様の構造を有する。
本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、センスエミッタ電極152およびコレクタ電極24を有する。センスエミッタ電極152は、半導体基板10の表面に形成される。センスエミッタ電極152は、エミッタ端子53と電気的に接続される。エミッタ端子53は、メインエミッタ電極52とも電気的に接続されてよい。
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面に形成される。コレクタ電極24は、コレクタ端子と電気的に接続される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。コレクタ電極24は、メイントランジスタ部104、センストランジスタ部108およびダイオード部106に対して一体の電極として設けられてよい。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板、窒化物半導体基板等であってもよい。半導体基板10の表面側には、P−型のベース領域114が形成される。また、N+型のエミッタ領域112が、ベース領域114の表面側における一部の領域に選択的に形成される。メイントランジスタ部104においては、エミッタ領域112およびベース領域114に代えて、エミッタ領域12およびベース領域14が形成される。エミッタ領域12および112は互いに分離している。また、ベース領域14および114は互いに分離している。
また、半導体基板10は、N+型の蓄積領域116、N−型のドリフト領域18、N−型のバッファ領域20、および、P+型のコレクタ領域22を更に有する。ドリフト領域18、バッファ領域20およびコレクタ領域22は、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の双方に連続して形成される。また、ダイオード部106においては、コレクタ領域22に代えて、N+型のカソード領域が形成される。
蓄積領域116は、ベース領域114の裏面側に形成される。蓄積領域116の不純物濃度は、ドリフト領域18の不純物濃度よりも高い。メイントランジスタ部104における蓄積領域116は、センストランジスタ部108の蓄積領域116とは分離して形成される。
蓄積領域116は、隣接するトレンチ間に形成される。例えばセンストランジスタ部108において蓄積領域116は、センスダミートレンチ部130およびセンスゲートトレンチ部140の間に形成される。蓄積領域116は、センスダミートレンチ部130およびセンスゲートトレンチ部140の間の全領域を覆うように設けられてよい。蓄積領域116を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
ドリフト領域18は、蓄積領域116の裏面側に形成される。バッファ領域20は、ドリフト領域18の裏面側に形成される。バッファ領域20の不純物濃度は、ドリフト領域18の不純物濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域114の裏面側から広がる空乏層が、コレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。コレクタ領域22は、バッファ領域20の裏面側に形成される。また、コレクタ領域22の裏面にはコレクタ電極24が設けられる。
当該断面における半導体基板10の表面側には、1以上のセンスゲートトレンチ部140、および、1以上のセンスダミートレンチ部130が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10の表面から、ベース領域114を貫通して、ドリフト領域18に到達する。本例においてセンスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130は、半導体基板10の表面から、エミッタ領域112、ベース領域114および蓄積領域116を貫通して、ドリフト領域18に到達する。
センスゲートトレンチ部140は、半導体基板10の表面側に形成されたセンスゲートトレンチ、絶縁膜142、センスゲート導電部144およびセンスゲート絶縁部137を有する。絶縁膜142は、センスゲートトレンチの内壁を覆って形成される。絶縁膜142は、センスゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。センスゲート導電部144は、センスゲートトレンチの内部において絶縁膜142よりも内側に形成される。つまり絶縁膜142は、センスゲート導電部144と半導体基板10とを絶縁する。センスゲート導電部144は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
センスゲート絶縁部137は、センスゲートトレンチの内部においてセンスゲート導電部144の上方に形成され、センスゲート導電部144とセンスエミッタ電極152とを絶縁する。本例においてセンスゲート導電部144のセンスゲートトレンチ開口側の端面は、半導体基板10の表面よりも、半導体基板10の内部側に設けられる。ここで半導体基板10の表面は、エミッタ領域112の表面を指してよい。また、センスゲート導電部144のセンスゲートトレンチ開口側の端面を、センスゲート導電部144の表面と称する場合がある。
センスゲート絶縁部137は、センスゲート導電部144の表面よりも上側において、センスゲートトレンチ内部に充填される。センスゲート絶縁部137は、センスゲート導電部144の表面全体を覆って設けられる。センスゲート絶縁部137のセンスゲートトレンチ開口側の端面の少なくとも一部は、半導体基板10の表面と同じ高さに設けられる。なお、センスゲート絶縁部137のセンスゲートトレンチ側の端面を、センスゲート絶縁部137の表面と称する場合がある。
センスゲート絶縁部137の表面は、センスエミッタ電極152と接触する。センスゲート絶縁部137とセンスエミッタ電極152との間には、他の導電部材または絶縁部材が介在しないことが好ましい。このように、センスゲート絶縁部137をセンスゲートトレンチ内に形成することで、半導体基板10の表面の凹凸を低減することができる。
また、センスゲート絶縁部137の表面全体が、半導体基板10の表面と同一面に形成されてよい。この場合、半導体基板10の表面の凹凸を更に低減できる。従って、半導体基板10の表面の上方に積層する構造を容易に形成できる。また、半導体装置100の微細化が容易になる。
センスゲート絶縁部137は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、または、その他の絶縁材料を含む。センスゲート絶縁部137の深さ方向における厚みは、絶縁膜142のセンスゲートトレンチ底部における厚みよりも大きくてよい。
センスゲート導電部144は、少なくとも隣接するベース領域114と対向する領域を含む。それぞれのセンスゲート導電部144は、ゲート端子51に電気的に接続される。ゲート端子51は、ゲートパッド103であってよい。本例では、図2に示したように突出部143においてセンスゲート導電部144がゲート電極151と電気的に接続する。また、ゲート電極151がゲート端子51に電気的に接続する。ゲート端子51を介してセンスゲート導電部144に所定の電圧が印加されると、ベース領域114のうちセンスゲートトレンチに接する界面の表層にチャネルが形成される。
センスダミートレンチ部130は、半導体基板10の表面側に形成されたセンスダミートレンチ、絶縁膜132およびセンスダミー導電部134を有する。絶縁膜132は、センスダミートレンチの内壁を覆って形成される。
センスダミー導電部134は、センスダミートレンチの内部に形成され、且つ、絶縁膜132よりも内側に形成される。絶縁膜132は、センスダミー導電部134と半導体基板10とを絶縁する。センスダミー導電部134は、センスゲート導電部144と同一の材料で形成されてよい。例えばセンスダミー導電部134は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。センスダミー導電部134は、深さ方向においてセンスゲート導電部144と同一の長さを有してよい。
センスエミッタ電極152は、センスダミートレンチの内部においてセンスダミー導電部134と接触する。センスダミートレンチの内部とは、センスダミートレンチの開口を含む。つまり、センスダミー導電部134のセンスダミートレンチの開口側の端面の少なくとも一部は、半導体基板10の表面と同じ高さであり、センスエミッタ電極152は、半導体基板10の表面と同じ高さのセンスダミー導電部134の当該端面と接触してよい。なお、センスダミー導電部134のセンスダミートレンチの開口側の端面を、センスダミー導電部134の表面と称する場合がある。
また、半導体基板10の表面側において、センスゲートトレンチの開口幅W2は、センスダミートレンチの開口幅W1より大きい。ここで開口幅とは、開口が有する幅のうち最大の幅を指してよい。開口が円形状の場合、開口幅は円形状の直径を指す。センスゲートトレンチの開口幅W2を大きくすることで、同一のエッチング工程でセンスゲートトレンチおよびセンスダミートレンチを形成した場合に、センスゲートトレンチの長さをセンスダミートレンチよりも長くすることができる。このため、長さの異なるセンスゲートトレンチおよびセンスダミートレンチを容易に形成することができる。
また、図4の例では、センスダミー導電部134の表面は、センスダミートレンチの開口と同じ位置に設けられていた。他の例では、センスダミー導電部134の表面は、センスダミートレンチの開口よりも半導体基板10の内部の深い位置に設けられてもよい。この場合、センスエミッタ電極152は、センスダミートレンチの内部まで形成されて、センスダミー導電部134の表面と接触する。
また、絶縁膜132は、センスダミートレンチの基板表面側の端部近傍には形成されなくてもよい。これにより、センスダミートレンチの側壁には、エミッタ領域112の少なくとも一部が露出する。絶縁膜132は、センスダミートレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成し、センスダミートレンチ内に所定の厚みのセンスダミー導電部134を形成した後に、センスダミー導電部134により覆われていない酸化または窒化膜を除去することで形成してよい。
この場合、センスエミッタ電極152は、センスダミートレンチ内のセンスダミー導電部134の表面とも接触し、且つ、センスダミートレンチの側壁においてエミッタ領域112とも接触する。これにより、エミッタ領域112とセンスエミッタ電極152との接触面積を拡大して、コンタクト抵抗を下げることができる。
本例においてセンスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130は、図4に示すように所定の配列方向において交互に配置される。また、各トレンチ部は一定の間隔で配置されてよい。ただし、各トレンチ部の配置は上記の例に限定されない。2つのセンスダミートレンチ部130の間に複数のセンスゲートトレンチ部140が配置されてよい。また、それぞれのセンスダミートレンチ部130の間に設けられるセンスゲートトレンチ部140の数は一定でなくともよい。
なお、センスゲートトレンチ部140のセンスゲートトレンチは、センスダミートレンチ部130のセンスダミートレンチよりも深い位置まで形成されてよい。これにより、センスゲート導電部144とセンスダミー導電部134とを同一のプロセスで同一の長さに形成しても、センスゲートトレンチ内にはセンスゲート絶縁部137を設ける空間を確保しつつ、センスダミートレンチ内にセンスダミー導電部134を充填することができる。
以上においてはセンスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130の構造を説明したが、上述したように、メインゲートトレンチ部40およびメインダミートレンチ部30も、センスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130と同様の構造を有する。
メインゲートトレンチ部40は、メインゲートトレンチ、絶縁膜およびメインゲート導電部を有する。a−a'断面と平行な断面におけるメインゲートトレンチ、絶縁膜およびメインゲート導電部の形状、大きさ、位置、材料等は、a−a'断面におけるセンスゲートトレンチ、絶縁膜142およびセンスゲート導電部144と同一であってよい。
メインダミートレンチ部30は、メインダミートレンチ、絶縁膜およびメインダミー導電部を有する。a−a'断面と平行な断面におけるメインダミートレンチ、絶縁膜およびメインダミー導電部の形状、大きさ、位置、材料等は、a−a'断面におけるセンスダミートレンチ、絶縁膜132およびセンスダミー導電部134と同一であってよい。
つまり、メインゲートトレンチは、ダミートレンチよりも深い位置まで形成されてよい。メインゲートトレンチの幅は、ダミートレンチよりも大きくてよい。メインダミー導電部のメインダミートレンチの開口側の端面の少なくとも一部は、半導体基板10の表面と同じ高さであり、メインエミッタ電極は、メインダミー導電部の端面と接触してよい。メインゲート絶縁部のメインゲートトレンチの開口側の端面の少なくとも一部は、半導体基板10の表面と同じ高さであり、メインエミッタ電極は、メインゲート絶縁部の端面と接触してよい。
メイントランジスタ部104は、a−a'断面と平行な断面において、メインエミッタ電極52、エミッタ領域12、ベース領域14、蓄積領域116、ドリフト領域18、バッファ領域20、コレクタ領域22およびコレクタ電極24を有する。a−a'断面と平行な断面におけるメインエミッタ電極52、エミッタ領域12、ベース領域14、蓄積領域116、ドリフト領域18、バッファ領域20、コレクタ領域22およびコレクタ電極24の形状、大きさ、位置、材料等は、a−a'断面におけるセンスエミッタ電極152、エミッタ領域112、ベース領域114、蓄積領域116、ドリフト領域18、バッファ領域20、コレクタ領域22およびコレクタ電極24と同一であってよい。
本例の半導体装置100によれば、メインダミートレンチ部30およびセンスダミートレンチ部130を設けることで、ドリフト領域へのIE効果を高めてオン電圧を低減することができる。また、ゲートトレンチ内にゲート絶縁部を設けることで、半導体基板10の表面における凹凸を低減することができる。また、エミッタ電極とダミー導電部とが直接接触することで、半導体基板10の表面における凹凸を低減することができる。このため、半導体装置100を容易に微細化できる。
また、本例の半導体装置100においては、メインダミートレンチ部30およびセンスダミートレンチ部130におけるトレンチ内のダミー導電部と、メインエミッタ電極52およびセンスエミッタ電極152とが直接接触する。つまり、ダミー導電部とエミッタ電極との間に、ポリシリコン等の他の導電材料を設けない。このため、半導体基板10の表面の凹凸を低減することができる。また、ダミー導電部の表面全体が、半導体基板10の表面と同一の高さであってよい。この場合、半導体基板10の表面の凹凸を更に低減できる。従って、半導体基板10の表面の上方に積層する構造を容易に形成できる。
また、半導体装置100は、ゲートトレンチ部およびダミートレンチ部の間のメサ領域におけるエミッタ領域12およびエミッタ領域112の表面に絶縁膜を有さなくてよい。つまり、メサ領域におけるエミッタ領域の表面が、すべてエミッタ電極に接触してよい。各トレンチ部の上方に絶縁膜を設ける場合、当該絶縁膜がメサ領域のエミッタ領域の表面の一部を覆ってしまう。また、絶縁膜のサイズは製造ばらつきを有する。このため、半導体装置を微細化してメサ幅を小さくすることが困難になる。これに対して半導体装置100によれば、メサ領域におけるエミッタ領域の表面に絶縁膜を設けなくてよいので、半導体装置100をより微細化することができる。
なお、各トレンチ部の構造は、図4に示した例に限定されない。ゲートトレンチ部とダミートレンチ部は同一の深さおよび幅で形成されてもよい。また、半導体基板10の表面に各トレンチ部を覆う絶縁膜が形成されてよく、各トレンチ内の導電部と接続するポリシリコン等の導電材料が形成されてもよい。
次に、図1から図4に示した半導体装置100の製造方法の一例を説明する。ただし、半導体装置100の製造方法は本例に限定されない。まず、ドリフト領域18と同一の導電型(本例ではN−型として説明する)の半導体基板10を準備する。
次に、半導体基板10の表面に所定のパターンのエッチングマスクを設け、メインゲートトレンチ部40、メインダミートレンチ部30、センスゲートトレンチ部140およびセンスダミートレンチ部130用の複数のトレンチを形成する。トレンチを形成した後、トレンチの内壁に絶縁膜を形成する。そして、トレンチの内部に導電材料を充填する。
次に、半導体基板の表面側からP型不純物を注入して、1100度程度の温度で2時間程度の熱処理を行い、半導体基板10の表面全体に、トレンチよりも浅いP型ベース領域14および114を形成する。次に、半導体基板10の表面側からN型不純物を注入して、ベース領域より深く、トレンチよりも浅いN型蓄積領域116を形成する。例えば、加速電圧2.8MeV、5.0×1012/cm2程度でリンをイオン注入することで、N型蓄積領域116を形成する。
次に、エミッタ領域12および112に対応する部分が開口したマスクを用いて、半導体基板10の表面側からN型不純物を選択的に注入する。これにより、P型ベース領域14および114の内部にN+型エミッタ領域12および112を選択的に形成する。
その後、半導体基板10の表面側に層間絶縁膜26を形成する。層間絶縁膜26は、トレンチ内において、導電部の上方にも形成される。ゲートトレンチ内に形成された層間絶縁膜26がゲート絶縁部として機能する。
また、層間絶縁膜26にそれぞれのコンタクトホールを形成する。そして、エミッタ電極およびゲート電極を形成する。次に、半導体基板10の裏面側から例えば1.0×1014/cm2程度でセレンをイオン注入した後、900度程度の温度で2時間程度の熱処理を行う。これにより、半導体基板10の裏面側にN+型のバッファ領域20を形成する。残った半導体基板10のN−型の領域がドリフト領域18になる。拡散係数の大きいセレンを用いることで、深い位置にバッファ領域20を形成できる。また、バッファ領域20を形成する前に、半導体基板10を研磨して、厚みを調整してもよい。
セレンのイオン注入に代えて、プロトンを異なるドーズ量で複数回イオン注入することで、N+型バッファ領域20を形成してもおい。これにより、不純物濃度が基板表面側から基板裏面側に向けて不純物濃度が増加するバッファ領域20を形成できる。
次に、半導体基板10の裏面側から例えば1.0×1013/cm2以上、4.0×1013/cm2以下のドーズ量でP型不純物をイオン注入する。これにより、半導体基板10の裏面側に、バッファ領域20よりも薄いP+型コレクタ領域22を形成する。P型不純物のドーズ量が1.0×1013/cm2未満の場合、コレクタ領域とコレクタ電極とがオーミック接合できないので、好ましくない。
図5は、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の他の例を示す平面図である。本例におけるメイントランジスタ部104は、活性領域102に設けられ、半導体基板10の内部においてセンスゲートトレンチ部140と分離したメインゲートトレンチ部40を備える。メインゲートトレンチ部40は、対向部41および突出部43を有する。
対向部41は、メインダミートレンチ部30と対向する位置に設けられる。突出部43は、対向部41から延伸して設けられ、且つ、メインダミートレンチ部30と対向しない位置に設けられる。本例において突出部43の全体は、メインウェル領域17に形成される。突出部43は、突出部143と同一の形状を有してよい。突出部43は、メインダミートレンチ部30の両側における2つの対向部41を接続する。
また、突出部43の一部に対応してコンタクトホール55が設けられる。コンタクトホール55は、突出部43のうち、最もセンストランジスタ部108側の領域に設けられてよい。突出部43は、センストランジスタ部108に最も近い領域において、トレンチ部の配列方向と略平行に延伸する部分を有する。コンタクトホール55は当該部分に対応して形成されてよい。
本例の半導体装置100は、コンタクトホール55を覆う位置にゲート電極50を有する。ゲート電極50の少なくとも一部は、メインウェル領域17の上方に形成される。ゲート電極50の全体がメインウェル領域17の上方に形成されてもよい。ゲート電極50は、ゲート電極151と同一の電位が印加されてよい。ゲート電極50は、ゲート電極151と同一の材料で形成されてよい。
センスゲートトレンチ部140のメイントランジスタ部104側の突出部143は、メインウェル領域17の内部まで延伸する。ただし本例の突出部143は、メインゲートトレンチ部40と接続しない。当該突出部143は、センスダミートレンチ部130の両側の2つの対向部141を接続する。突出部143は、メインゲートトレンチ部40に最も近い領域において、トレンチ部の配列方向と略平行に延伸する部分を有する。突出部143の当該部分は、ゲート電極50で覆われる領域に設けられる。半導体装置100は、突出部143の当該部分に対応して設けられたコンタクトホール155を更に備えてよい。
コンタクトホール155は、突出部143の当該部分のセンスゲート導電部144を露出させる。ゲート電極50は、コンタクトホール155を通って、センスゲート導電部144と接触する。つまり、ゲート電極50は、メインゲート導電部44およびセンスゲート導電部144の両方に接触する。これにより、メインゲート導電部44およびセンスゲート導電部144を電気的に接続する。このような構成によっても、センストランジスタ部108をメイントランジスタ部104の電圧変動に追従させることができる。
また、センストランジスタ部108に隣接して、ゲートパッド103を形成してよい。ゲートパッド103は、図2に示したゲートパッド103と同一であってよい。図5に示した例においては、ゲートパッド103と対向するメインゲートトレンチ部40と、センストランジスタ部108に対向するメインゲートトレンチ部40とは同一の構造を有してよい。また、ゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40の構造は、図2に示したゲートパッド103に対向するメインゲートトレンチ部40の構造と同一であってよい。いずれのメインゲートトレンチ部40も、半導体基板10の内部においてセンスゲートトレンチ部140とは分離して設けられる。
ゲート電極50は、センストランジスタ部108に対応して設けられたゲート電極151と一体に形成されてよい。ゲート電極50、メインエミッタ電極52、メインウェル領域17およびコンタクトホール54は、ゲートパッド103に対向する領域、および、センストランジスタ部108と対向する領域の双方において連続して形成されてよい。
図6は、メイントランジスタ部104およびセンストランジスタ部108の他の例を示す平面図である。本例において、センストランジスタ部108に対向するメインゲートトレンチ部40は、複数の第1トレンチ部161および1以上の第2トレンチ部162を有する。第1トレンチ部161は、予め定められた方向に延伸して設けられる。本例の第1トレンチ部161は、メインダミートレンチ部30と平行に設けられる。また、第1トレンチ部161は、センスゲートトレンチ部140と接続する。
第2トレンチ部162は、第1トレンチ部161の延伸方向とは異なる方向に延伸して設けられる。本例の第2トレンチ部162は、第1トレンチ部161と直交する方向に延伸する。第2トレンチ部162は、隣接する2つの第1トレンチ部161を接続する。第2トレンチ部162は、メインウェル領域17に形成されてよい。
第2トレンチ部162は、それぞれの第1トレンチ部161の間に形成されてよい。図6に示すように、第2トレンチ部162は、3以上の第1トレンチ部161を接続するように設けられてもよい。
第2トレンチ部162は、ゲート電極50の下方に設けられる。第2トレンチ部162とゲート電極50の間の層間絶縁膜26にはコンタクトホール55が設けられる。コンタクトホール55は、第2トレンチ部162におけるメインゲート導電部44の表面を露出させる。第2トレンチ部162の少なくとも当該部分には、メインゲート絶縁部が形成されない。第2トレンチ部162の全体においてメインゲート絶縁部が形成されなくともよい。ゲート電極50は、コンタクトホール55を通って、メインゲート導電部44の表面と接触する。このような構成によっても、センストランジスタ部108をメイントランジスタ部104の電圧変動に追従させることができる。
なお、第2トレンチ部162は、第1トレンチ部161よりも浅く形成されてよい。第2トレンチ部162は、メインダミートレンチ部30と同一の深さまで形成されてよい。第2トレンチ部162は、第1トレンチ部161よりも細く形成されてよい。第2トレンチ部162は、メインダミートレンチ部30と同一の太さで形成されてよい。
また、センストランジスタ部108に隣接して、ゲートパッド103を形成してよい。ゲートパッド103は、図2に示したゲートパッド103と同一であってよい。図6に示した例において、ゲートパッド103と対向するメインゲートトレンチ部40と、センストランジスタ部108に対向するメインゲートトレンチ部40とは異なる形状を有する。本例では、ゲートパッド103と対向するメインゲートトレンチ部40は、半導体基板10の内部においてセンスゲートトレンチ部140と分離しており、センストランジスタ部108と対向するメインゲートトレンチ部40は、半導体基板10の内部においてセンスゲートトレンチ部140と接続されている。
ゲート電極50は、センストランジスタ部108に対応して設けられたゲート電極151と一体に形成されてよい。ゲート電極50、メインエミッタ電極52、メインウェル領域17およびコンタクトホール54は、ゲートパッド103に対向する領域、および、センストランジスタ部108と対向する領域の双方において連続して形成されてよい。
図7は、メインゲートトレンチ部40の一例を示す平面図である。図7は、メインゲートトレンチ部40対向部41を部分的に示している。図7においてはメインダミートレンチ部30を省略している。本例のメインゲートトレンチ部40は、第1トレンチ部161および第2トレンチ部162を有する。第2トレンチ部162は、第1トレンチ部161の延伸方向において所定の間隔で形成される。
半導体装置100は、それぞれの第2トレンチ部162の上方を通過する1以上のゲート電極50を有する。それぞれの第2トレンチ部162に対してコンタクトホール55が設けられる。ゲート電極50は、コンタクトホール55を通って第2トレンチ部162と接触する。
また、ゲート電極50は、複数の第1トレンチ部161の上方を横切って設けられ、トレンチ部の配列方向にゲート電位を伝送するゲートランナーとして機能する。それぞれのゲート電極50には同一の電位が印加される。それぞれのゲート電極50の間にはメインエミッタ電極52が設けられる。
第2トレンチ部162の周囲には、メインウェル領域17が形成されてよい。それぞれの第2トレンチ部162の間には、ベース領域14、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が形成されてよい。メインエミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、ベース領域14、コンタクト領域15、エミッタ領域12および第1トレンチ部161と接触する。
また、第1トレンチ部161および第2トレンチ部162で囲まれる領域内にメインダミートレンチ部30が形成されてよい。メインダミートレンチ部30および第2トレンチ部162は分離して設けられる。このような構成により、メインゲートトレンチ部40に均一なゲート電位を印加することができる。
図8は、メインゲートトレンチ部40の他の例を示す平面図である。図8は、メインゲートトレンチ部40対向部41を部分的に示している。本例の半導体装置100は、トレンチ部の延伸方向において離散的に配置された複数のゲート電極50を有する。それぞれのゲート電極50には同一の電位が印加される。それぞれのゲート電極50の間にはメインエミッタ電極52が設けられる。
それぞれのゲート電極50は、複数のメインゲートトレンチ部40および複数のメインダミートレンチ部30の上方を横切って設けられる。ゲート電極50と各トレンチ部との間には層間絶縁膜26が設けられる。ゲート電極50とメインゲートトレンチ部40の間の層間絶縁膜26にはコンタクトホール55が設けられる。ゲート電極50は、コンタクトホール55を通ってメインゲート導電部44に接触する。
コンタクトホール55の下方におけるメインゲートトレンチ部40には、メインゲート絶縁部が設けられない。コンタクトホール55の下方におけるメインゲートトレンチ部40は、他の領域のメインゲートトレンチ部40よりも浅く形成されてよい。コンタクトホール55の下方におけるメインゲートトレンチ部40は、他の領域のメインゲートトレンチ部40よりも細く形成されてよい。このような構成により、メインゲートトレンチ部40に均一なゲート電位を印加することができる。
図9は、比較例に係る半導体装置200の構成を示す図である。半導体装置200は、トランジスタ部270およびダイオード部280を有する。また半導体装置200の表面側には、ゲート電極250、エミッタ電極252、ゲートトレンチ部240、ダミートレンチ部230、エミッタトレンチ部260、ウェル領域217、エミッタ領域212、ベース領域214、コンタクト領域215、コンタクトホール226、228、249、254およびポリシリコン層221、225、248を有する。
図10は、図9におけるc−c'断面を示す。半導体装置200は、当該断面において、半導体基板210、エミッタ電極252、絶縁部238およびコレクタ電極224を有する。エミッタ電極252は、エミッタ端子253に電気的に接続される。
半導体基板210には、ゲートトレンチ部240、ダミートレンチ部230、エミッタトレンチ部260、エミッタ領域212、ベース領域214、蓄積領域216、ドリフト領域218、バッファ領域220、コレクタ領域222およびカソード領域282が形成される。ゲートトレンチ部240は絶縁膜242およびゲート導電部244を有する。ゲート導電部244は、ゲート端子251に電気的に接続される。ダミートレンチ部230は、絶縁膜232およびダミー導電部234を有する。エミッタトレンチ部260は、絶縁膜262およびエミッタ導電部264を有する。
絶縁部238は、半導体基板10の表面において、ゲートトレンチ部240、ダミートレンチ部230およびエミッタトレンチ部260のそれぞれを覆って設けられる。ただし、絶縁部238は、ゲートトレンチ部240およびダミートレンチ部230の間のメサ領域におけるエミッタ領域212の表面の少なくとも一部を露出させる。エミッタ電極252は、当該エミッタ領域212の表面と接触する。
絶縁部238に覆われないエミッタ領域212の面積は、絶縁部238の製造ばらつきにより変化する。このため、エミッタ領域212の少なくとも一部を露出させるには、絶縁部238の製造ばらつきを考慮しなければならない。特に本例では、メサ領域の両側に絶縁部238が形成されるので、メサ領域の幅は両側の絶縁部238のばらつきの影響を受ける。このため、半導体装置200を微細化するとエミッタ領域212を確実に露出させることが困難なので、半導体装置200を微細化することが難しい。これに対して図4に示した半導体装置100によれば、半導体基板10の表面上においてメインゲートトレンチ部40およびメインダミートレンチ部30を覆う絶縁膜を設けないので、半導体装置100を微細化してもエミッタ領域12とメインエミッタ電極52とを接触させることができる。
また、半導体装置200では、半導体基板210の表面において絶縁部238をパターニングする。このため、半導体基板210の表面には凹凸が形成される。これに対して図4に示した半導体装置100は、半導体基板10の表面に絶縁部238を設けないので、半導体基板10の表面の凹凸を低減できる。
図11は、図9におけるd−d'断面を示す。半導体装置200は、当該断面において、半導体基板210、エミッタ電極252、ゲート電極250、コレクタ電極224、ポリシリコン層221、ポリシリコン層248および絶縁部238を備える。
ポリシリコン層221およびポリシリコン層248は、半導体基板210の表面に形成され、各トレンチ内の導電部と、エミッタ電極252またはゲート電極250とを接続する。半導体装置200は、半導体基板210の表面に選択的にポリシリコン層221およびポリシリコン層248を有する。このため、半導体基板210の表面に凹凸が生じてしまい、絶縁部238等の半導体基板210の表面の上方に形成される層の形成が容易ではなくなる。
これに対して図3および図4に示した半導体装置100によれば、メインエミッタ電極52が、各トレンチ内の導電部と直接接触するので、半導体基板10の表面にポリシリコン層を設けなくともよい。このため、半導体基板10の表面の凹凸を低減することができる。
図12は、第2の実施形態に係る半導体装置100の断面を示す図である。本例の半導体装置100においては、センストランジスタ部108の閾値電圧が、メイントランジスタ部104の閾値電圧より大きい。より具体的には、センストランジスタ部108におけるエミッタ領域112の深さ方向における長さDa1は、メインゲートトレンチ部40におけるエミッタ領域12の深さ方向における長さDb1よりも小さい。
センストランジスタ部108におけるベース領域114と、メイントランジスタ部104におけるベース領域14は、同一の深さまで形成されている。しかし、エミッタ領域112とエミッタ領域12の深さ方向の長さが異なるので、センスゲートトレンチ部140に隣接するベース領域114の長さDa2は、メインゲートトレンチ部40に隣接するベース領域14の長さDb2よりも大きくなる。
ゲートトレンチに隣接するベース領域の長さはチャネル長に相当する。このため、上述した構造により、センストランジスタ部108の閾値電圧は、メイントランジスタ部104の閾値電圧よりも大きくなる。この結果、ターンオン時のセンストランジスタ部108の立ち上がりが、メイントランジスタ部104の立ち上がりよりも遅くなり、センストランジスタ部108におけるサージ電流の発生を抑制できる。この結果、センストランジスタ部108を用いた保護回路等を安定して動作させることができる。
本例においては、メインゲートトレンチ部40は、センスゲートトレンチ部140よりも深い位置まで形成される。ただし、メインゲート導電部44およびセンスゲート導電部144の深さ方向における長さは同一である。この結果、メインゲート導電部44の上面の位置は、センスゲート導電部144の上面の位置よりも深くなる。
後述するように、それぞれのゲート導電部をマスクとして、ゲートトレンチの側壁にN型の不純物を注入して拡散することで、メインゲートトレンチ部40におけるエミッタ領域12を、センストランジスタ部108におけるエミッタ領域112よりも深い位置まで形成できる。このような製造方法により、閾値の異なるトランジスタを容易に形成することができる。
なお、面積が異なる複数の開口を有するマスクを用いて半導体基板10の表面をエッチングすることで、深さの異なるメインゲートトレンチおよびセンスゲートトレンチを形成してよい。マスクの開口面積が大きい場合、深いゲートトレンチが形成できる。これにより、深さの異なるゲートトレンチ48を同時に形成して製造工程を効率化しつつ、それぞれのトランジスタ部の閾値電圧を調整することができる。なお、本例の半導体装置100における他の部分の構造は、図1から図8において説明したいずれかの半導体装置100と同一であってよい。
図13は、図2または図6に示した半導体装置100に、図12に示した構造を適用した場合の、ゲートトレンチに沿った断面を示す図である。図12において説明したように、本例の半導体装置100においてはメインゲートトレンチ部40およびセンスゲートトレンチ部140の深さおよび幅が異なる。一方で、図2または図6に示した半導体装置100においては、メインゲートトレンチ部40およびセンスゲートトレンチ部140は接続されている。
本例の半導体装置100は、メインゲートトレンチ部40およびセンスゲートトレンチ部140を接続する接続ゲートトレンチ部156を有する。接続ゲートトレンチ部156の一端はメインゲートトレンチ部40に接続され、他端はセンスゲートトレンチ部140に接続される。接続ゲートトレンチ部156の深さおよび幅は、一端から他端にかけて徐々に変化する。このような構造により、構造が急激に変化することを避け、電界が集中することを防ぐことができる。また、接続ゲートトレンチ部156は、メインゲート絶縁部37およびセンスゲート絶縁部137を接続する絶縁部を有する。絶縁部の厚みも徐々に変化する。
なお、接続ゲートトレンチ部156は、センスウェル領域117およびメインウェル領域17のいずれか、または、両方に形成されることが好ましい。接続ゲートトレンチ部156を高濃度のウェル領域で囲むことで、接続ゲートトレンチ部156を保護することができる。
図14は、ゲートトレンチ部の構造の変形例を示す図である。なお、以下の例ではメインゲートトレンチ部40を用いて説明するが、センスゲートトレンチ部140についても同様である。また、以下の例においては、半導体基板10における構造を示し、層間絶縁膜、金属電極等を省略する場合がある。また、以下の例では蓄積領域16を省略しているが、半導体装置100は蓄積領域16を有してよい。
メインゲート導電部44の上端45は、半導体基板10の表面よりも深い位置に設けられる。つまり、メインゲート導電部44の上端45は、ゲートトレンチ48の内部に落ち込んでいる。メインゲート導電部44の上端45とは、メインゲート導電部44のうち、最も上側にある端部を指す。
ゲートトレンチ48の内部においてメインゲート導電部44および絶縁膜42が設けられていない領域には、メインゲート絶縁部37が設けられる。これにより、メインゲート導電部44は、メインエミッタ電極52と絶縁される。
メインゲート導電部44は、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。メインゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ48に接する界面の表層にチャネルが形成される。
なお、半導体基板10の深さ方向の断面において、メインゲート導電部44の上端45と、半導体基板10の表面との間におけるゲートトレンチ48の側壁の平均傾きは、メインゲート導電部44の上端45と対向する位置における側壁の傾きよりも大きい。なお、本明細書における「傾き」は、特に明示がない限り、当該断面における、半導体基板10の深さ方向に対する傾きを指す。例えば、半導体基板10の表面の「傾き」は、ほぼ90度であり、深さ方向と平行な直線の「傾き」は0度である。なおゲートトレンチ48の所定の範囲内における側壁の平均傾きは、当該断面におけるゲートトレンチ48の側壁の傾きをゲートトレンチ48の側壁の所定の長さに渡って積分し、当該積分値を当該所定の長さで除算することで算出してよい。
本例のゲートトレンチ48は、半導体基板10の表面と接する領域に肩部33を有する。肩部33は、ゲートトレンチ48の側壁のうち、メインゲート導電部44と、半導体基板10の表面との間(すなわちメインゲート導電部44の上端45よりも上側)に形成される。当該断面において、肩部33におけるゲートトレンチ48の側壁の平均傾きは、メインゲート導電部44の上端45と対向する位置における側壁の傾きより小さい。なお、肩部33と、メインゲート導電部44の上端45との間におけるゲートトレンチ48の側壁の傾きは、メインゲート導電部44の上端45と対向する位置におけるゲートトレンチ48の側壁の傾きとほぼ等しくてよい。
このように、メインゲート導電部44の上端45よりも上側におけるゲートトレンチ48の側壁の傾きを大きくすることで、ゲートトレンチ48に接する領域におけるエミッタ領域12の深さを制御しやすくなる。エミッタ領域12の深さを制御することで、残存するベース領域14の長さを制御することができる。ゲートトレンチ48に接するベース領域14の長さはチャネル長に相当する。このため、メイントランジスタ部104の閾値電圧を制御しやすくなる。
図15は、半導体装置100のうち、メインゲートトレンチ部40およびエミッタ領域12の製造工程の一部を説明する図である。まずゲートトレンチ形成段階S300において、半導体基板10の表面にゲートトレンチ48を形成する。ゲートトレンチ48は、半導体基板10の表面と接する領域に肩部33を有する。例えば、所定の開口を有する第1マスクを用いて半導体基板10の表面をエッチングしてトレンチを形成した後に、第1マスクよりも開口の大きい第2マスクを用いてトレンチの縁部をエッチングすることで肩部33を有するゲートトレンチ48を形成してよい。
次に、ゲート導電部形成段階S302において、ゲートトレンチ48の内壁に絶縁膜42およびメインゲート導電部44を形成する。絶縁膜42は、半導体基板10を酸化することで形成してよい。なお、メインゲート導電部44の上端45が、半導体基板10の表面11よりも深い位置となるように、メインゲート導電部44を形成する。本例においてメインゲート導電部44の上端45は、肩部33よりも下側に設けられる。メインゲート導電部44は、例えば不純物をドープしたポリシリコンで形成される。
メインゲート導電部44を形成した後、半導体基板10の表面にP型の不純物を注入および拡散して、ベース領域14を形成する。P型の不純物は例えばホウ素である。ベース領域14の拡散温度は、例えば1100度程度である。なお、ベース領域14を形成してから、メインゲートトレンチ部40を形成してもよい。
次に、エミッタ領域形成段階S304において、半導体基板10にN型の不純物を注入して拡散する。N型の不純物は例えば砒素である。また、コンタクト領域15にホウ素等のP型の不純物を注入して拡散する。エミッタ領域12およびコンタクト領域15の不純物は、同一の工程で拡散してよい。当該拡散工程の温度は、ベース領域14の拡散温度より低くてよい。当該拡散工程の温度は、例えば1000度以下である。
これによりエミッタ領域12を形成する。なおS304においては、半導体基板10の表面だけでなく、メインゲート導電部44をマスクとして、ゲートトレンチ48の側壁にも不純物を注入する。このような方法により、エミッタ領域12は、ゲートトレンチ48と接触する部分が最も深くなるように形成される。
S304においては、トランジスタ部が有するべき閾値電圧に応じた深さまで、ゲートトレンチ48と接する領域においてN型の不純物を拡散させる。より深い位置まで不純物を拡散させる場合、より高い温度またはより長い時間での熱処理が必要になる。ただし、長い時間をかけて熱処理すると製造効率が劣化するので、高い温度での熱処理が好ましい。しかし、高温で熱処理した場合、単位時間あたりに不純物が拡散する長さが大きくなるので、不純物の拡散深さを制御することが困難になる。
これに対して本例においては、ゲートトレンチ48が肩部33を有するので、ゲートトレンチ48と接する領域において不純物を拡散させる長さを低減することができる。つまり、肩部33が設けられた領域においては、半導体基板10の表面11よりも下側に不純物が注入される。このため、所定の深さのエミッタ領域12を形成する場合に、不純物を拡散させなければならない長さを低減することができる。
このため、より低い温度で不純物を拡散させても、熱処理時間が長くならず、製造効率が劣化しない。そして、低い温度で不純物を拡散できるので、ゲートトレンチ48に接する領域におけるエミッタ領域12の深さを精度よく制御することができる。
また、ゲートトレンチ48が肩部33を有することで、メインゲートトレンチ部40に挟まれるメサ領域の面積を小さくすることができる。このため、電子注入促進効果(IE効果)を得ることができる。
なお、S304においては、半導体基板10の深さ方向に対して所定の傾きθ1を有する方向から、ゲートトレンチ48の側壁に不純物を注入してよい。これにより、不純物を効率よく注入することができる。傾きθ1は、例えば10度以下である。
また、エミッタ領域12を、メインゲート導電部44をマスクとしたセルフアラインで形成するので、エミッタ領域12をメインゲートトレンチ部40に容易に接触させることができる。一方、エミッタ領域12を、メインゲートトレンチ部40とは独立したマスクを用いて形成した場合、マスクの位置合わせ等における製造ばらつきにより、エミッタ領域12とメインゲートトレンチ部40とが接触せずに、半導体装置100が動作できない場合が生じてしまう。
図16は、メインゲートトレンチ部40の形状を説明する図である。本例では、メインゲート導電部44の上端45と対向する位置31における、ゲートトレンチ48の側壁の傾きをθ2とする。また、ゲートトレンチ48の開口の径方向における肩部33の幅をW1、深さ方向の長さをD1とする。なお、肩部33の始点は、半導体基板10の表面11におけるゲートトレンチ48の側壁の端部であってよい。また、肩部33の終点は、位置31から半導体基板10の表面11に向けてゲートトレンチ48の側壁を辿った場合に、ゲートトレンチ48の側壁の傾きがθ2よりも所定値以上大きくなる位置であってよい。一例として当該所定値は10度である。当該所定値は0度であってよく、20度であってよく、30度であってもよい。
肩部33は、半導体基板10の内部に向けて凸の曲面部を有してよい。つまり肩部33の傾きは、半導体基板10の表面からの距離が大きくなるに従って増大する。このような肩部33の形状により、より効率よく、深い位置に不純物を注入することができる。このため、所定の深さのエミッタ領域12を形成するための不純物の拡散長さを短くすることができる。
また、肩部33の長さD1は、幅W1よりも大きくてよい。これにより、ゲートトレンチ48の開口面積を小さくして微細化できるとともに、ゲートトレンチ48に隣接する領域において深い位置に不純物を注入することができる。また、長さD1は幅W1と等しくてよく、長さD1は幅W1より小さくてもよい。
肩部33の幅W1は、位置31におけるゲートトレンチ48の幅の半分以下であってよく、1/4以下であってよい。これにより、半導体基板10の表面11におけるゲートトレンチ48の面積が増大することを抑制できる。また、幅W1は、位置31におけるゲートトレンチ48の幅の1/20以上であってよく、1/10以上であってもよい。これにより、不純物を深い位置に効率よく注入できる。
また、肩部33の長さD1は、メインゲート導電部44の上端45と半導体基板10の表面11との距離R1の半分以下であってよい。また、長さD1は距離R1の半分より大きくてもよい。また、長さD1は距離R1とほぼ等しくてもよい。一例として、長さD1が、距離R1の90%以上、110%以下の場合を、長さD1と距離R1とがほぼ等しいとみなす。
また、ゲートトレンチ48の側壁は、メインゲート導電部44の上端45と、半導体基板10の表面11の間において、傾きが20度以上となる部分を有する。例えば、肩部33の少なくとも一部の傾きθ3が20度以上となる。このように、上端45よりも上側において、ゲートトレンチ48の側壁の傾きが大きくなることで、不純物を深い位置に効率よく注入でき、ゲートトレンチ48に隣接する領域に対する不純物の拡散の制御が容易になる。
図17は、エミッタ領域12およびメインゲート導電部44の形状を説明する図である。上述したように、ゲートトレンチ48の内壁からも不純物が注入されるので、エミッタ領域12は、ゲートトレンチ48に隣接する部分の下端34が、他の部分よりも深い位置に設けられる。このような形状により、ゲートトレンチ48に隣接する領域におけるベース領域14の長さを制御でき、半導体装置100の閾値電圧を制御することができる。
また、エミッタ領域12において、ゲートトレンチ48と接触する部分の深さ方向における長さD2が、エミッタ領域12の他の部分の長さよりも大きくてよい。例えば、ゲートトレンチ48が設けられていないメサ領域におけるエミッタ領域12の長さD3は、長さD2より小さい。
また、メインゲート導電部44の半導体基板10の表面11側の端面は、ゲートトレンチ48の側壁と隣接する部分(本例では上端45)が、最も半導体基板10の表面11に近く形成される。本例では、メインゲート導電部44の半導体基板10の表面11側の端面のうち、ゲートトレンチ48の中央に位置する部分46が、最も半導体基板10の表面11から遠い位置に形成される。
一例として、メインゲート導電部44の当該端面は、ゲートトレンチ48の側壁から、ゲートトレンチ48の中央にかけて、半導体基板10の表面からの距離が徐々に増加する。つまり、半導体基板10の表面11からの深さが増大するに従い、ゲートトレンチ48の側壁と隣接するメインゲート導電部44の厚みが徐々に増加する。上述したように、メインゲート導電部44をマスクとして不純物を斜めに注入した場合、メインゲート導電部44の厚みが小さい箇所は、不純物がメインゲート導電部44を透過して半導体基板10に注入される。これにより、ゲートトレンチ48と隣接する領域において、半導体基板10の表面11から見て深い位置まで、不純物を容易に注入して拡散させることができる。
図18Aは、肩部33の形状の変形例を示す図である。本例の肩部33は、半導体基板10の表面側に向かって凸の曲面部を有する。つまり、本例の肩部33の傾きは、半導体基板10の表面からの距離が大きくなるに従って減少する。このような形状によっても、半導体基板10の表面11から見て深い位置まで、不純物を容易に拡散させることができる。
図18Bは、肩部33の形状の変形例を示す図である。本例の肩部33は、少なくとも一部において直線形状を有する。当該直線形状は、メインゲート導電部44の上端45と対向する位置におけるゲートトレンチ48の側壁の傾きθ2よりも、所定値以上大きい傾きを有する。当該所定値は10度であってよく、20度であってよく、30度であってもよい。このような形状によっても、半導体基板10の表面11から見て深い位置まで、不純物を容易に拡散させることができる。
図19は、メインゲート導電部44の製造工程の一例を示す図である。まず、肩部33を有するゲートトレンチ48を半導体基板10の表面11に形成する。次に、ゲートトレンチ48および半導体基板10の表面に絶縁膜42を形成する。次に、ゲートトレンチ48および半導体基板10の表面に導電材料47を堆積する。導電材料47を堆積していくと、ゲートトレンチ48の内部においては、側壁に堆積する導電材料47の厚みが増加する。また、導電材料47は肩部33に沿った形状を維持しつつ、厚みが増加する。
ゲートトレンチ48の中心まで導電材料47を充填すると、図19の下側に示すように、ゲートトレンチ48の開口の上方における導電材料47は、下に凸の形状を有する。そして、ゲートトレンチ48の内部における所定の深さまで導電材料47をエッチングすることで、図17に示したようなメインゲート導電部44を形成する。このように、ゲートトレンチ48が肩部を有することで、上面が下側に凸のメインゲート導電部44を容易に形成できる。このため、ゲートトレンチ48の側面に容易に不純物を注入できる。
図20は、センスゲートトレンチ部140と、メインゲートトレンチ部40の構造例を示す図である。本例においては、図12および図13の例と同様に、センストランジスタ部108の閾値電圧が、メイントランジスタ部104の閾値電圧より大きい。
本例では、センスゲートトレンチ部140におけるセンスゲート導電部144の上端と半導体基板10の表面11との距離をL1とする。また、メインゲートトレンチ部40におけるメインゲート導電部44の上端と半導体基板10の表面11との距離をL2とする。距離L1は距離L2より小さい。
上述したように、ゲート導電部の上端と半導体基板10の表面11との距離が大きくなるほど、ゲートトレンチ48に隣接するエミッタ領域は深くなり、チャネル長は短くなる。このため、センスゲートトレンチ部140のチャネル長C1は、メインゲートトレンチ部40のチャネル長C2よりも大きくなる。このため、センスゲートトレンチ部140の閾値電圧は、メインゲートトレンチ部40の閾値電圧よりも大きくなる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。また、特許請求の範囲または明細書における「上」と「下」とは、互いに逆の方向を指す。ただし、「上」の用語は、重力方向と逆向きの方向に限定されない。また、「下」の用語は、重力方向に限定されない。