JP6603565B2 - 微多孔膜、電池用セパレータ及び電池 - Google Patents

微多孔膜、電池用セパレータ及び電池 Download PDF

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Description

本発明は、微多孔膜、電池用セパレータ及び電池に関する。
ポリオレフィンを素材とするポリオレフィン製微多孔膜は、優れた電気絶縁性とイオン透過性を示すことから、透過分離膜、燃料電池及びコンデンサー等におけるセパレータとして幅広く使用されている。特に近年ではノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラ、車載用などに広く備えられているリチウムイオン電池用のセパレータとして、ポリオレフィン製微多孔膜が好適に用いられている。
近年、これらの電子機器の高性能化も著しく、電池の大型化、高容量化が必要とされている。これに伴い、大型化した電池の寿命を確保することに対する要求が急速に高まっている。特に、電池の繰り返しの充放電を経た後に良好に電池容量を保つ特性(サイクル特性)において、様々な技術開発が行われている。例えば、特許文献1,2には、良好なサイクル特性を有するセパレータが開示されている。なお、従来、セパレータ表面を評価するための指標として、特許文献3に記載されているように、平均中心粗度Ra等が用いられる。
特開2009−269941号公報 特開2010−202828号公報 特開2014−62244号公報
しかしながら、特許文献3では、電池捲回体の捲回性及び、表面コーティングの平滑性については一切検討されていない。また、特許文献1、2では、蓄電池用セパレータについて、前記PSDに関する検討は一切行われていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池のサイクル特性、電池捲回体の捲回性、及び表面コーティングの平滑性のバランスが良好な微多孔膜、電池用セパレータ及び電池を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換したパワースペクトル密度が所定の範囲にある場合、上述の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ポリオレフィン樹脂を含む、電池セパレータ用の微多孔膜であって、
当該微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度の平均値Paveが、空間周波数0.37(/mm)以上3.3(/mm)以下の範囲において、4400(mm・nm2)≦Pave≦84000(mm・nm2)を満たす、微多孔膜。
[2]
前記Paveが18000(mm・nm2)≦Pave≦73000(mm・nm2)を満たす、[1]に記載の微多孔膜。
[3]
前記Paveが31500(mm・nm2)≦Pave≦73000(mm・nm2)を満たす、[1]又は[2]に記載の微多孔膜。
[4]
前記微多孔膜を巻き取ったロールにおいて、当該ロールの外径の最大値と最小値の差が、0.1〜1.0(mm/2000m)である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の微多孔膜。
[5]
[1]乃至[4]のいずれかに記載の微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
[6]
[5]に記載の電池用セパレータを含む、電池。
本発明によれば、電池のサイクル特性、電池捲回体の捲回性、及び表面コーティングの平滑性のバランスに優れる微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を含む、電池セパレータ用の微多孔膜であって、当該微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度(PSD)の平均値Paveが、空間周波数0.37(/mm)以上3.3(/mm)以下の範囲において、4400(mm・nm2)≦Pave≦84000(mm・nm2)を満たす。上記Paveの範囲を、以下では、単に「PSD範囲」ともいう。
本実施形態の微多孔膜は、上記のように構成されているため、とりわけ、当該微多孔膜のPaveが上記範囲内にあるため、電池のサイクル特性、電池捲回体の捲回性、及び表面コーティングの平滑性のバランスに優れる。さらに本実施形態の微多孔膜により、電池特性及び生産性に優れるリチウムイオン二次電池を実現し得る。
また、本実施形態の微多孔膜を巻き取ったロールにおいて、当該ロールの外径の最大値と最小値の差が0.1〜1.0(mm/2000m)であることが好ましい。本実施形態の微多孔膜は、外径差が上記範囲内にある場合、表面コーティングの平滑性がより優れる傾向にあり、より生産性に優れるリチウムイオン二次電池を実現し得る。
<ポリオレフィン微多孔膜>
本実施形態の微多孔膜は、共重合高密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンを含むポリオレフィン混合物(以下単に「混合物」ともいう)から得られる微多孔膜であることが好ましい。
(共重合高密度ポリエチレン)
共重合高密度ポリエチレンとは、エチレンと他のモノマーとの共重合により得られるポリエチレンであって、高密度のものである。
共重合高密度ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)としては、特に限定されないが、1万〜30万が好ましい。Mvは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
共重合高密度ポリエチレンのコモノマーは、炭素数が3以上のα−オレフィン(以下単に「コモノマー」ともいう)であることが好ましく、以下に限定されないが、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどが挙げられる。なかでも、他のポリエチレンとの親和性の観点から炭素数3のプロピレンがより好ましい。炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含量は、当該共重合高密度ポリエチレンのエチレン単位に対して0.1モル%以上であることが好ましく、0.1〜1モル%であることがより好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.8モル%である。1モル%以下である場合、充分な結晶化度を確保でき、微多孔膜の充分な透過性を確保できる傾向にある。なお、上記含量は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
当該共重合高密度ポリエチレンの密度は、炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含量と関係しているが、融点や透過性の観点から、高密度とする。ここでいう「高密度」(単位:g/cm3)とは0.93〜0.97であり、好ましくは0.94〜0.96である。なお、本実施形態においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
本実施形態で使用する共重合高密度ポリエチレンは、様々な公知の方法によって製造可能であり、以下に限定されないが、例えば、特公平1−12777号公報に開示されていたようなクロム化合物担持触媒やマグネシウム化合物含有チーグラー触媒、又はメタロセン触媒を用いる重合により製造することができる。
(高密度ポリエチレン)
本実施形態において、高密度ポリエチレンは、コモノマー単位含量0.1%未満のポリエチレンであり、コモノマーの含まれていないホモポリエチレンが好ましい。なお、ここでいう「高密度」は、上記共重合高密度ポリエチレンについての「高密度」と同じ定義を有する。
当該高密度ポリエチレンのMvは、10万以上80万未満であることが好ましく、より好ましくはMvが20万以上70万未満の上記ポリエチレンであり、数種類のポリエチレンをブレンドしてもかまわない。当該高密度ポリエチレンのMvが20万以上である場合、充分な機械強度が確保される傾向にあり、80万未満である場合、分子量分布が広くなることを防止でき、不良率(欠点)の増加を防止できる傾向にある。
(混合物の組成)
前記混合物中に占める共重合高密度ポリエチレンの割合は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜75質量%であり、更に好ましくは25〜70質量%である。割合は10〜90質量%である場合、メカニズムは定かでないが、本実施形態の所望のPSD範囲が得られる傾向にある。
前記混合物中に占める、当該高密度ポリエチレンの割合は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。10質量%以上である場合、充分な耐熱性が得られる傾向にあり、90質量%以下である場合、ヒューズ応答時間が充分に短くなる傾向にある。
また、本実施形態の微多孔膜は、耐熱性を向上させる観点から、さらにポリプロピレンを含むことが好ましい。すなわち、前記混合物に、さらにポリプロピレンを含有させることが好ましい。この場合、当該混合物とポリプロピレンの総量に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能を両立させる観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは4〜10質量%である。
本実施形態における混合物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機フィラー;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、混合物中における共重合高密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計100質量部に対して、20質量部以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本実施形態の微多孔膜の粘度平均分子量は、15〜55万であることが好ましく、より好ましくは15〜45万である。粘度平均分子量が15〜55万であると、メカニズムは定かでないが、本実施形態の所望のPSD範囲が得られる傾向にある。なお、粘度平均分子量は、例えば、分子量の異なる原料ポリマーの組成比を変更する等により上記の範囲に調整することができる。換言すると、粘度平均分子量は原料ポリマーの粘度平均分子量とそれらの配合比から算出することができる。一方、ASTM−D4020に準拠して粘度平均分子量を測定することもできる。すなわち、ポリマー(ポリオレフィン)原料又は、微多孔膜を135℃のデカリン溶液に溶解して、極限粘度[η]を測定し、次式により粘度平均分子量(Mv)を算出することができる。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
また、ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出できる。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
本実施形態の微多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、イオン伝導性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度である。微多孔膜は、上述した材料からなる単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。
本実施形態の微多孔膜の膜厚は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下である。機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。微多孔膜の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。上記膜厚は、ダイヤルゲージ(尾崎製作所:「PEACOCK No.25」(商標))により測定することができる。
本実施形態の微多孔膜の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましく30%以上65%以下、更に好ましくは35%以上55%以下である。イオン伝導性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。微多孔膜の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることによって調整することができる。上記気孔率は、微多孔膜を10cm角に切り取ったものをサンプルとし、その体積と質量から次式を用いて計算することによりにより測定することができる。
気孔率(%)=(体積(cm3)−質量(g)/ポリマー組成物の密度)/体積(c
3)×100
本実施形態の微多孔膜の透気度は、好ましくは100〜600秒、より好ましくは120〜550秒、更に好ましくは150〜500秒である。透気度が600秒以下である場合、充分な透過性が確保される傾向にあり、透気度が100秒以上である場合、孔径が過剰に大きくなることを防止できる傾向にある。微多孔膜の透気度は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることによって調整することができる。上記透気度は、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計により測定することができる。
本実施形態の微多孔膜の突刺強度は、電池捲回時の耐破断性や、電極間の短絡による電池不良の観点から、好ましくは1〜20N/20μm、更に好ましくは2〜18N/20μmである。微多孔膜の突刺強度は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることによって調整することができる。上記突刺強度は、カトーテック製「KES−G5ハンディー圧縮試験器」(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い測定することができる。すなわち、上記のようにして得られる最大突き刺し荷重(N)を突刺強度とする。
<パワースペクトル密度(PSD)>
パワースペクトル密度は、測定した微多孔膜の表面データのフーリエ変換により空間周波数成分毎の振幅強度を求めたものである。すなわち、本実施形態の微多孔膜の表面形状プロファイルを測定し、当該表面形状プロファイルをフーリエ変換して得られる、空間周波数0.37(/mm)以上3.3(/mm)以下の範囲における、パワースペクトル密度の平均値Paveは、4400(mm・nm2)以上84000(mm・nm2)以下であり、好ましくは18000(mm・nm2)以上73000(mm・nm2)以下であり、より好ましくは31500(mm・nm2)以上73000(mm・nm2)以下である。
aveが4400(mm・nm2)以上である場合、本実施形態の微多孔膜を用いた電池のサイクル特性が優れる。また、84000(mm・nm2)以下である場合、本実施形態の微多孔膜を用いた電池の捲回工程において電極との捲回性に優れる。ここで、Paveが当該範囲にある場合、サイクル特性が優れるメカニズムは定かでないが、下記のとおりであると推定される。電池は充放電を繰り返すことによって、電解液の劣化で電池性能が低下していく。それは電気化学反応により、電解液が分解し、分解ガスが発生するためと考えられる。ガスが溜まると、リチウムイオンの移動を妨げ、サイクル特性は悪化する傾向にある。一方、微多孔膜のPaveが上記範囲にあると、微多孔膜の適度なうねりのため、微多孔膜と電極の接触面の間に極小の隙間が生じ、そこから分解ガスが出やすくなり、サイクル特性が向上すると推定される。また、その極小の隙間から外部の空気が入りにくく、電極捲回体を製造する際、微多孔膜と電極の接触面に空気によるしわあるいは歪みが発生しにくいため、電池の生産性に優れると推定される。Paveの値が増減するメカニズムは定かでないが、Paveの値に影響を与える種々の要因の中でも微多孔膜の粘度平均分子量、製造時の熱処理における風速と相関が高いと推定される。粘度平均分子量が小さくなるほど、また、風速が大きくなるほど、Paveの値が大きくなる傾向がみられる。上記Paveは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<微多孔膜ロールの外径差>
本実施形態の微多孔膜を巻き取ったロールの外径の最大値と最小値の差は、0.1〜1.0(mm/2000m)であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.6(mm/2000m)であり、さらに好ましくは0.1〜0.4(mm/2000m)である。ここで、外径差が当該範囲にある場合、表面コーティングの平滑性が優れるメカニズムは定かでないが、下記のとおりであると推定される。ロールの外径差が大きいと、巻き取ったロールの幅方向内側の歪みが大きく、歪みによるしわが発生しやすい。そのため、塗布工程において、しわがある表面にグラビアコーターが接触できなく、塗工欠陥が発生すると推定される。上記外径差に影響を与える要因は種々あるが、ダイスのリップ調整、オシレート幅調整、熱固定の温度、倍率、巻取り張力等の各因子を調整することにより上記範囲に調整することができ、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(製造方法)
微多孔膜を製造する方法としては特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物(共重合高密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを含む組成物、以下同じ。)と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法。
以下、微多孔膜を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と上記の孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、以下に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
(孔形成材)
上記孔形成材としては、以下に限定されないが、例えば、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒を用いることが好ましい。このような不揮発性溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレンやポリプロピレンの場合には、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こりにくく、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定されない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが成形性向上のために十分なものとなる傾向にある。一方、可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン分子鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易い。
(製膜工程)
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、以下に限定されないが、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、以下に限定されないが、例えば、金属、水、空気、或いは可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジや欠点など膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断などのリスクが低減される傾向にある。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる傾向にある。
(可塑剤除去工程)
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去して微多孔膜とする。孔形成材を除去する方法としては、以下に限定されないが、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。微多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、微多孔膜中の孔形成材残存量は微多孔膜全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ孔形成材に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
(延伸工程)
また、上記シート状成形体又は微多孔膜を延伸することが好ましい。延伸は前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよい。また、前記シート状成形体から孔形成材を抽出した微多孔膜に対して行ってもよい。さらに、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に行ってもよい。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる微多孔膜の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる微多孔膜が裂けにくくなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、以下に限定されないが、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。
ここで、同時二軸延伸とは、MD(微多孔膜連続成形の機械方向)の延伸とTD(微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD又はTDに延伸がなされているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる微多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
(熱固定)
微多孔膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的として、所定の温度、風速及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。これらの熱処理は、テンターやロール延伸機を用いて行うことができる。なお、上記風速は、13〜18m/sであることが好ましく、より好ましくは14〜17m/sであり、さらに好ましくは15〜17m/sである。
延伸操作は、膜のMD及び/又はTDに1.0倍以上、より好ましくは1.1倍以上の延伸を施すことが、さらなる高強度かつ高気孔率な微多孔膜が得られる観点から好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよいが、MD或いはTD片方だけ行ってもよい。
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、好ましくはTDに行う。延伸及び緩和操作における温度は、ポリオレフィン樹脂の融点より低いことが好ましい。延伸及び緩和操作における温度が上記範囲であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
(電池用セパレータ及び電池)
本実施形態の微多孔膜は、とりわけ、電池用セパレータとしての用途に好ましく用いられる。すなわち、本実施形態の電池用セパレータは、本実施形態の微多孔膜を含む。また、本実施形態の電池は、本実施形態の微多孔膜を含む。
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。下記の実施例及び比較例において、部はすべて質量部である。
実施例及び比較例において示される特性の試験方法は次のとおりである。
(コモノマー単位含量(炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含量))
13C−NMRスペクトルにおいて、コモノマー由来のシグナル強度の積分値のモル換算値(A)を、(A)とエチレン単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(B)との和で除して得られた商に100を乗じることにより、コモノマー単位含量(モル%)を求めた。ただし、ポリオレフィン微多孔膜中にポリプロピレンが含有される場合は、前記により求められたポリプロピレン含量(wt%)に相当するコモノマー単位含量(モル%)を除いた値を微多孔膜のコモノマー単位含量(モル%)とする。
例えば、コモノマーとしてプロピレンを用いる場合、下記の構造モデルにおいて、I1、I1’、I2、I3、Iα、Iβ、Iγ、Im及びIMをそれぞれ対応する炭素に由来する13C−NMRスペクトルのシグナル強度とすると、コモノマー単位含量は下式で表される。
コモノマー単位含量(モル%)=(A)/[(A)+(B)]×100
(ここで、(A)=(I1+Im+Iα/2)/3、(B)=(I1+I2+I3+IM+Iα/2+Iβ+Iγ)/2)となる。)
ここで、末端の影響は小さいため無視することができ、I1、I2及びI3をIm、Iα、Iβ及びIγを2Imとして上式を整理すると、コモノマー単位含量は下式で表される。
コモノマー単位含量(モル%)=Im/[Im+(IM+5Im)/2]×100
Figure 0006603565
(表面形状プロファイルデータをフーリエ変換したパワースペクトル密度(PSD)測定)
表面形状プロファイルは、触針式表面形状測定器(製品名:DEKTAK XT−A(株式会社アルバック製))を使用し、実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用いて2000× 2000 μm2の範囲を測定した。測定条件は、針圧が1mg、針径半径が12.5μmである触針を使用し、データ点毎のサンプリング間隔は、微多孔膜の捲回方向2000(μm)/200(pt)=10(μm/pt)、膜幅方向2000(μm)/3000(pt)=0.67(μm/pt)とした。PSDの計算では、プログラムは膜幅方向、それぞれ200ラインの平均粗さ曲線のパワースペクトル密度を計算した。出力結果はそれぞれの空間周波数における平均プロファイルパワーを表している。
このパワースペクトル密度関数は元の表面プロファイルのフーリエ変換した結果を二乗したものであり、N点存在する長さLのプロファイルをデジタイズした時の平均PSD(f)は次式で与えられる。
Figure 0006603565
上記式において、iは2乗して−1となる数を表し、d0はデータサンプリング間隔を表し、Zjは振幅関数を表し、jはN点存在する長さ(測定範囲)Lのプロファイルのj番目(j=1、2、…N)を表し、空間周波数fはK/Lに等しく、Kは整数であって、1からN/2の間の値をとる。なお、後述の各実施例及び比較例では、上記d0は0.67μmとし、上記Lは2000μmとした。
(ロールの外径の変化量(外径差))
実施例及び比較例で得られた微多孔膜を20m/minの速度で巻き取ったロールの外径を、レーザー寸法測定器(測定部:株式会社キーエンス社製、センサーヘッドLS−3060、コントローラ部:株式会社キーエンス社製コントローラLS−3000)を用いて測定した。
詳細には、2組の投光機と受光機とよりなる寸法測定装置を捲回体の回転軸方向に平行に移動させることにより捲回体の回転軸方向全ての位置で線上に外径を測定した。得られたロール外径のチャー卜において、幅方向内外径値の最大値と最小値の差を求めた。前記ロールの幅は1200mm〜1300mm、長さは2000mとした。
(サイクル特性)
実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用い,帯状正極及び帯状負極を、帯状負極、セパレータ、帯状正極、セパレータの順に重ねて渦巻状に複数回捲回することで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を平板状にプレス後、アルミニウム製容器に収納し、アルミニウム製リードを正極集電体から導出して電池蓋に、ニッケル製リードを負極集電体から導出して容器底に溶接した。さらにこの容器内に非水電解液(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解して調製)を注入し封口した。こうして作製されるリチウムイオン電池は、縦(厚み)6.3mm,横30mm,高さ48mmの大きさで、公称放電容量が620mAhとなるように設計されていた。上記のようにして組み立てたリチウムイオン電池にて、電流値310mA(0.5C),終止電池電圧4.2Vの条件で6時間定電流定電圧(CCCV)充電を行った。このとき充電終了直前の電流値はほぼ0の値となった。その後、25℃雰囲気下で1週間放置(エージング)した。
その次に、電流値620mA(1.0C),終止電池電圧4.2Vの条件で3時間定電流定電圧(CCCV)充電し、一定電流値(CC)620mAで電池電圧3.0Vまで放電放する、というサイクルを行なった。このときの放電容量を初回放電容量とした。その後、さらに前述のサイクルを300回繰り返した。このサイクルにおいて、初回放電容量に対する300サイクル目の容量の割合(%)を容量維持率とした。容量維持率が高いとサイクル特性が良いものとして、下記基準にて評価した。
◎:90%以上
○:85%〜90%
△:80%〜85%
×:85%未満
(電池捲回体の捲回性)
実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用いて作成した電極捲回体は、捲回機(皆藤製作所株式会社製手動捲回機)を使用して捲回した。詳細は以下のとおりとした。実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用い、帯状正極及び帯状負極を、帯状負極、セパレータ、帯状正極、セパレータの順に重ねて渦巻状に複数回捲回することで電池捲回体を作製した。前記帯状正極、帯状負極及びセパレータの幅は、それぞれ50mm、52mm、56mm、長さは3mとした。前記電極体を作製する捲回工程において、前記負極の幅方向中央が微多孔膜の幅方向中央に一致する際、微多孔膜の両端は負極からはみ出す部分の幅(W)は、以下の式からわかるように、それぞれ2mmであり、捲回基準とした。
W(mm)=(微多孔膜の幅−負極の幅)/2=2mm
微多孔膜のしわあるいは歪みにより、負極の幅方向中央が、微多孔膜の幅方向中央に一致しない場合の、微多孔膜の幅方向両端は負極からはみ出す部分の幅をそれぞれW1、W2とした。すなわち、以下の式に示すように、W1は2mmより大きく、W2は2mmより小さいと規定した。
1+W2(mm)=微多孔膜の幅−負極の幅=4mm
1>2mm、W2<2mm
前記電極体を作製する捲回工程において、しわあるいは歪みによる巻ズレの幅(d)を以下の式より算出した。
d(mm)=W1―W=W−W2
なお、巻ズレの幅(d)は小さいと捲回性が良いものとして、下記基準にて評価した。
○:1.0mm未満
△:1.0〜1.5mm
×:1.5mm以上
(表面コーティングの平滑性)
実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用い、表面にコロナ放電処理(放電量50W)を実施した後、当該処理面側に、アルミナ粒子(平均粒径0.7μm))98.2質量部、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度99%以上)1.8質量部を150質量部の水にそれぞれ均一に分散させた水溶液を、グラビアコーターを用いて塗布した。その後、60℃にて乾燥して水を除去し、微多孔膜上に厚さ2μmの多孔層が形成した多層多孔膜を得た。
作製した多層多孔膜から100cm2の寸法を有するサンプルを20箇所切り出し、20箇所の多孔層の単位面積当たりの質量(W)の最大値(WMAX)と最小値(WMIN)を用いて、以下の式より質量変化値(R)を算出した。
R値=WMAX―WMIN
Wは多層多孔膜の質量を測定した後、多孔層を除去した微多孔膜の質量を測定し、以下の式より算出した。
W(g/m2)=(多層多孔膜の質量―ポリオレフィン樹脂多孔膜の質量)×1000
R値が低いと表面コーティングの平滑性が良いものとして、下記基準にて評価した。
○:0.01g/m2〜0.30g/m2
△:0.30g/m2〜0.50g/m2
×:0.50g/m2以上
〔実施例1〕
Mvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を19部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を19部、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)を2部、酸化防止剤として該組成物に対して0.3部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを混合し、二軸押出機にフィーダーを介して投入した。更に流動パラフィン(松村石油(株)製P−350(商標))60部をサイドフィードで押出機に注入し、200℃条件で混練し、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに30℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1500μmのゲル状シートを成形した。このゲル状シートを120℃で同時二軸延伸機で7×7倍に延伸した後、この延伸フィルムを塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去し微多孔膜を得た。得られた微多孔膜を、熱固定(「HS」と略記することがある)を行なうべくTDテンターに導き、熱固定温度131℃、熱量風速13.2m/s、延伸倍率1.5倍でHSを行い、その後、0.85倍の緩和操作(即ち、HS緩和率が0.85倍)を行い、膜を得た。得られた膜について、各種特性を評価した結果を表1に示す。
〔実施例2〕
熱固定温度131.5℃、熱量風速13.7m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例3〕
Mvが15万の共重合高密度ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単位含量0.6モル%、密度0.95)を12部、Mvが25万の高密度(密度0.95)ポリエチレンを14部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を12部、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)を2部のポリオレフィン原料を使用した。また、熱固定温度128℃、熱量風速14.5m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例4〕
熱量風速15.7m/sでHSを行う以外は、実施例3と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例5〕
表層/中間層/表層の3層構成を有する積層多孔フィルムを以下のように製造した。表層にはMvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を14部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を14部、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)を1.6部、無機フィラーを7.4部の原料を使用した。無機フィラーとしてはタルク(勝光山株式会社製 SK−C2)を用いた。中間層にはMvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を15.7部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を15.7部、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレンを1.6部のポリオレフィン原料を使用した。
次に、表層の原料、中間層の原料をそれぞれ別個の二軸押出機に投入した。両押出機のシリンダーの途中部分に、流動パラフィンを、表層層に63質量%、表層層に67質量%になるように注入した。ダイスはマルチマニホールド式の共押出が可能なTダイを用いた。ダイス内では、表層がほぼ均等に等分され、中間層の両側に積合された。ダイスから出た溶融フィルム原反は、キャストロールで冷却固化させた。さらに、熱固定温度132.5℃、熱量風速15.9m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例6〕
熱固定温度132℃、熱量風速16.1m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例7〕
熱固定温度128.5℃、熱量風速16.6m/sでHSを行う以外は、実施例3と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例8〕
Mvが15万の共重合高密度ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単位含量0.6モル%、密度0.95)を20部、Mvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を18部、Mv40万の高密度ポリプロピレン(密度0.91)を2部のポリオレフィン原料を使用した。また、熱固定温度123℃、熱量風速17.1m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔実施例9〕
熱固定温度123.5℃、熱量風速17.5m/sでHSを行う以外は、実施例8と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔比較例1〕
熱固定温度130℃、熱量風速12.4m/sでHSを行う以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔比較例2〕
熱固定温度134℃、熱量風速18.2m/sでHSを行う以外は、実施例5と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
〔比較例3〕
熱固定温度124℃、熱量風速18.6m/sでHSを行う以外は、実施例8と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
Figure 0006603565

Claims (9)

  1. ポリオレフィン樹脂を含む、電池セパレータ用の微多孔膜であって、
    当該微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度の平均値Paveが、空間周波数0.37(/mm)以上3.3(/mm)以下の範囲において、4400(mm・nm2)≦Pave≦84000(mm・nm2)を満たす、微多孔膜。
  2. 前記Paveが18000(mm・nm2)≦Pave≦73000(mm・nm2)を満たす、請求項1に記載の微多孔膜。
  3. 前記Paveが31500(mm・nm2)≦Pave≦73000(mm・nm2)を満たす、請求項1又は2に記載の微多孔膜。
  4. 前記微多孔膜を巻き取ったロールにおいて、当該ロールの外径の最大値と最小値の差が、0.1〜1.0(mm/2000m)である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微多孔膜。
  5. 前記ポリオレフィン樹脂が、粘度平均分子量が1万〜30万である共重合高密度ポリエチレン10〜90質量%と、粘度平均分子量10〜80万の高密度ポリエチレン10〜90質量%とを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微多孔膜。
  6. 前記微多孔膜の粘度平均分子量が、15〜55万である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微多孔膜。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
  8. 請求項に記載の電池用セパレータを含む、電池。
  9. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の微多孔膜を製造するための方法であって、
    共重合高密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを含むポリオレフィン樹脂組成物を溶融混錬し、成形してシートを得る工程と、
    前記シートを延伸して延伸フィルムを得る工程と、
    前記延伸フィルムを熱固定に供する工程と、
    を含み、
    前記熱固定における熱量風速が、13〜18m/sである、微多孔膜の製造方法。
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