JP2017142985A - 微多孔膜、電池用セパレータ及び電池 - Google Patents

微多孔膜、電池用セパレータ及び電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電池安全性を確保でき、かつ表面加工性に優れるポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び電池を提供することを目的とする。【解決手段】電池セパレータ用の微多孔膜が、ポリオレフィン樹脂を含み、かつ微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度の平均値Paveが、空間周波数30(/mm)以上80(/mm)以下の範囲において、15(mm・nm2)≦Pave≦45(mm・nm2)を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、微多孔膜、電池用セパレータ及び電池に関する。
ポリオレフィンを素材とするポリオレフィン製微多孔膜は、優れた電気絶縁性とイオン透過性を示すことから、透過分離膜、燃料電池及びコンデンサー等におけるセパレータとして幅広く使用されている。特に近年ではノート型パーソナルコンピュータ又は携帯電話、デジタルカメラ、車載用などに広く備えられているリチウムイオン電池用のセパレータとして、ポリオレフィン製微多孔膜が好適に用いられている。
近年、これらの電子機器の高性能化も著しく、電池の大型化、高容量化が進んでいる。さらに、車載用電池では、より長寿命と高安全性が重要となっており、様々な使用環境又は不慮の事故に備えて、より一層の安全対策について開発が加速されている。中でも、電池の正極と負極とが短絡して電池内部の温度が上昇した場合の安全性は、欠かせない評価項目である。例えば、過充電状態において、釘等の鋭利な導電体が電池缶に刺し入れられた場合、外部から過剰に加熱された場合、外部から過剰に押し潰された場合などには、しばしば、電池の内部で急激な温度上昇を引き起こす。
今まで、電池内の異常昇温について、セパレータの熱収縮率が大きく関係することが明らかになっている。例えば、特許文献1には、釘刺試験のような短絡試験においても、熱暴走を抑止する良好なセパレータが開示されている。
また、安全対策として、熱収縮率のよいセパレータを使用する以外に、セパレータの表面に無機フィラーを加工して耐熱性を持たせる方法も一般的になっている。その際、塗工工程の生産率を確保するために、セパレータの表面加工性が要求されている。表面加工性を評価するための指標として、外径差、たるみ、カールなどが挙げられる。例えば、特許文献2には、弛み難いセパレータが開示されている。
なお、セパレータ表面を評価するための指標として、特許文献3に記載されているように、平均中心粗度Ra等が用いられる。
特開2005−235508号公報 特開2011−140633号公報 特開2014−62244号公報
しかしながら、特許文献1、2では、蓄電池用セパレータについて、表面評価に関する検証は一切おこなわれていない。また、特許文献3では、電池の安全性又はセパレータの弛み性については一切検証されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池安全性を確保でき、かつ表面加工性に優れるポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び電池を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換したパワースペクトル密度が所定の範囲にある場合、上述の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明では、従来評価されていないセパレータの表面形状に注目しており、セパレータの表面形状を変えることによって、電池安全性が改善されたことを発見した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ポリオレフィン樹脂を含む、電池セパレータ用の微多孔膜であって、
前記微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度の平均値Paveが、空間周波数30(/mm)以上80(/mm)以下の範囲において、15(mm・nm)≦Pave≦45(mm・nm)の関係を満たす、
前記微多孔膜。
[2]
前記平均値Paveが、20(mm・nm)≦Pave≦45(mm・nm)の関係を満たす、[1]に記載の微多孔膜。
[3]
前記平均値Paveが、20(mm・nm)≦Pave≦40(mm・nm)の関係を満たす、[1]又は[2]に記載の微多孔膜。
[4]
前記微多孔膜を巻き取ったロールを、任意の場所から長手方向に繰り出したときに、繰り出された微多孔膜の長さ3mでのたるみ量が、30mm以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の微多孔膜。
[5]
[1]〜[4]のいずれか1項に記載の微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
[6]
[5]に記載の電池用セパレータを含む、電池。
本発明によれば、短絡試験において熱暴走が抑止でき、かつ良好な表面加工性を有する電池セパレータ用微多孔膜を提供することができる。
図1は、たるみ量の測定を模式的に説明する概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を含み、かつ電池セパレータのために使用される。
本実施形態に係る微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度(PSD)の平均値Paveが、空間周波数30(/mm)以上80(/mm)以下の範囲において、15(mm・nm)≦Pave≦45(mm・nm)の関係を満たす。上記平均値Paveの範囲を、以下では、単に「PSD範囲」ともいう。
本実施形態の微多孔膜は、従来評価されていないセパレータの表面形状に注目しており、表面形状を変えることによって、電池安全性が改善されたことを発見した。微多孔膜の平均値Paveが上記PSD範囲内にあると、短絡試験において熱暴走を抑止でき、かつ表面加工性に優れるリチウムイオン二次電池用セパレータを実現し得る。
また、本実施形態に係る微多孔膜を巻き取ったロールを、任意の場所から長手方向に繰り出したときに、繰り出された微多孔膜の長さ3mでのたるみ量が30mm以下であることが好ましい。本実施形態の微多孔膜は、たるみ量が30mm以下の範囲内にある場合、表面加工性がより優れる傾向にあり、より生産性に優れるリチウムイオン二次電池を実現し得る。たるみ量は、後述する実施例に記載の条件及び方法に従って測定される。
<ポリオレフィン微多孔膜>
本実施形態の微多孔膜は、共重合高密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンとを含むポリオレフィン混合物(以下単に「混合物」ともいう)から得られる微多孔膜であることが好ましい。
(共重合高密度ポリエチレン)
共重合高密度ポリエチレンとは、エチレンと他のモノマーとの共重合により得られるポリエチレンであって、高密度のものである。
共重合高密度ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)としては、特に限定されないが、1万〜30万が好ましい。Mvは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
共重合高密度ポリエチレンのコモノマーは、炭素数が3以上のα−オレフィン(以下単に「コモノマー」ともいう)であることが好ましく、以下に限定されないが、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどが挙げられる。中でも、他のポリエチレンとの親和性の観点から炭素数3のプロピレンがより好ましい。炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含有量は、当該共重合高密度ポリエチレンのエチレン単位に対して0.1モル%以上であることが好ましく、0.1モル%〜1モル%であることがより好ましく、0.2モル%〜0.8モル%であることがさらに好ましい。コモノマーの含有量が1モル%以下である場合、充分な結晶化度を確保でき、微多孔膜の充分な透過性を確保できる傾向にある。なお、コモノマーの含有量は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
共重合高密度ポリエチレンの密度は、炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含有量と関係しているが、融点又は透過性の観点から、高密度と見なす。ここでいう「高密度」(単位:g/cm)とは、0.93〜0.97であり、好ましくは0.94〜0.96である。なお、本実施形態においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
本実施形態で使用する共重合高密度ポリエチレンは、様々な公知の方法によって製造可能であり、以下に限定されないが、例えば、特公平1−12777号公報に開示されていたようなクロム化合物担持触媒若しくはマグネシウム化合物含有チーグラー触媒、又はメタロセン触媒を用いる重合により製造することができる。
(高密度ポリエチレン)
本実施形態において、高密度ポリエチレンは、コモノマー単位の含有量が0.1%未満のポリエチレンであり、コモノマーの含まれていないホモポリエチレンが好ましい。なお、ここでいう「高密度」は、上記共重合高密度ポリエチレンについての「高密度」と同じ定義を有する。
高密度ポリエチレンのMvは、10万以上80万未満であることが好ましく、より好ましくはMvが20万以上70万未満であり、数種類のポリエチレンをブレンドすることによって、加重平均値としてのMvを調整してもよい。高密度ポリエチレンのMvが10万以上である場合、充分な機械強度が確保される傾向にあり、80万未満である場合、分子量分布が広くなることを防止でき、不良率(欠点)の増加を防止できる傾向にある。
(混合物の組成)
前記混合物中に占める共重合高密度ポリエチレンの割合は、好ましくは10質量%〜90質量%であり、より好ましくは20質量%〜75質量%であり、更に好ましくは25質量%〜70質量%である。共重合高密度ポリエチレンの割合が10質量%〜90質量%である場合、メカニズムは定かでないが、本実施形態の所望のPSD範囲が得られる傾向にある。
前記混合物中に占める高密度ポリエチレンの割合は、好ましくは10質量%〜90質量%であり、より好ましくは20質量%〜80質量%、更に好ましくは30質量%〜70質量%である。高密度ポリエチレンの割合が10質量%以上である場合、充分な耐熱性が得られる傾向にあり、90質量%以下である場合、ヒューズ応答時間が充分に短くなる傾向にある。
また、本実施形態の微多孔膜は、耐熱性を向上させる観点から、さらにポリプロピレンを含むことが好ましい。すなわち、前記混合物に、さらにポリプロピレンを含有させることが好ましい。この場合、混合物とポリプロピレンの総量に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能を両立させる観点から、1質量%〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは4質量%〜10質量%である。
本実施形態における混合物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体;無機フィラー;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、混合物中における共重合高密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計100質量部に対して、0.0001質量部以上かつ20質量部以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本実施形態の微多孔膜の粘度平均分子量は、15万〜55万であることが好ましく、より好ましくは15万〜45万である。本明細書では、微多孔膜の粘度平均分子量は、微多孔膜が1種類のポリオレフィン原料から得られるときには、1種類のポリオレフィン原料の粘度平均分子量と対応しており、微多孔膜が複数種のポリオレフィン原料から得られるときには、それぞれのポリオレフィン原料の粘度平均分子量の加重平均値である。微多孔膜の粘度平均分子量が15万〜55万であると、メカニズムは定かでないが、本実施形態の所望のPSD範囲が得られる傾向にある。なお、粘度平均分子量は、例えば、分子量の異なる原料ポリマーの組成比を変更すること等により、上記の範囲に調整することができ、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の微多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、イオン伝導性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度である。微多孔膜は、上述した材料から成る単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。
本実施形態の微多孔膜の膜厚は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下である。微多孔膜の膜厚は、機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。微多孔膜の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御することによって調整されることができる。微多孔膜の膜厚は、ダイヤルゲージ(尾崎製作所:「PEACOCK(登録商標) No.25」)により測定することができる。
本実施形態の微多孔膜の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましく30%以上65%以下、更に好ましくは35%以上55%以下である。微多孔膜の気孔率は、イオン伝導性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。微多孔膜の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、及び熱固定時の緩和率を制御すること、又はこれらを組み合わせることによって、調整されることができる。上記気孔率は、微多孔膜を10cm角に切り取ってサンプルを作製し、そのサンプルの体積と質量から次式を用いて計算することによりにより測定することができる。
気孔率(%)=[{体積(cm)−(質量(g)/ポリマー組成物の密度)}/体積(cm)]×100
本実施形態の微多孔膜の透気度は、好ましくは100秒〜600秒、より好ましくは120秒〜550秒、更に好ましくは150秒〜500秒である。透気度が600秒以下である場合、充分な透過性が確保される傾向にあり、透気度が100秒以上である場合、孔径が過剰に大きくなることを防止できる傾向にある。微多孔膜の透気度は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、及び熱固定時の緩和率を制御すること、又はこれらを組み合わせることによって調整されることができる。上記透気度は、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計により測定することができる。
本実施形態の微多孔膜の突刺強度は、電池捲回時の耐破断性、又は電極間の短絡による電池不良の観点から、好ましくは1N/20μm〜20N/20μm、より好ましくは2N/20μm〜18N/20μmである。微多孔膜の突刺強度は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、及び熱固定時の緩和率を制御すること、又はこれらを組み合わせることによって調整されることができる。上記突刺強度は、カトーテック製「KES−G5ハンディー圧縮試験器」(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、及び突き刺し速度2mm/秒の条件下で突き刺し試験を行うことにより測定されることができる。すなわち、上記のようにして得られる最大突き刺し荷重(N)が突刺強度である。
<パワースペクトル密度(PSD)>
パワースペクトル密度は、測定した微多孔膜の表面データのフーリエ変換により空間周波数成分毎の振幅強度を求めたものである。すなわち、本実施形態の微多孔膜の表面形状プロファイルを測定し、当該表面形状プロファイルをフーリエ変換して得られる、空間周波数30(/mm)以上80(/mm)以下の範囲における、パワースペクトル密度の平均値Paveは、15(mm・nm)以上45(mm・nm)以下であり、好ましくは20(mm・nm)以上45(mm・nm)以下であり、より好ましくは20(mm・nm)以上40(mm・nm)以下である。
微多孔膜の平均値Paveが15(mm・nm)以上である場合、微多孔膜の生産性に優れる。また、微多孔膜の平均値Paveが45(mm・nm)以下である場合、微多孔膜を用いたセパレータは、短絡試験において、セパレータの収縮性が低いため、電池の熱暴走が抑止できる。ここで、平均値Paveが上記PSD範囲にある場合、高温時の低収縮性の特性が優れるメカニズムは定かでないが、下記の通りであると推定される。
電池は釘刺試験又は衝突試験のような評価試験において、瞬時に発生する熱により、セパレータが熱収縮する。したがって、セパレータの欠損分が拡大すると共に、絶縁されていた正極板と負極板とが接触して短絡を引き起こし、発煙・発火に至る恐れがある。
一方、微多孔膜の平均値Paveが45(mm・nm)以下の範囲にあると、セパレータの微多孔膜表面には緩やかなうねりを有している。この緩やかなうねりにより、セパレータは電極との接触面積が増えており、電極表面に密着し易い状態になると考えられる。そのため、熱収縮が起こる際、セパレータと電極の接触面間で抵抗力が発生し、セパレータの収縮又は変形が抑えられ、好ましいと推定される。
また、微多孔膜の平均値Paveが15(mm・nm)未満の範囲にあると、生産工程において、走行する微多孔膜表面と、搬送ロール表面の接触面の微小な隙間が少なくなる。したがって、接触面に発生した強い摩擦により、微多孔膜は蛇行又は歪みが起こり易くなり、生産性が悪化する傾向にあると考えられる。よって、平均値Paveは、15(mm・nm)以上が好ましいと推定される。
したがって、微多孔膜の平均値Paveが、15(mm・nm)以上45(mm・nm)以下の範囲内にあると、良好な電池安全性かつ安定な生産性を有する電池セパレータが得られる。
平均値Paveの値が増減するメカニズムは定かでないが、平均値Paveの値に影響を与える種々の要因の中でも、微多孔膜の粘度平均分子量及び/又は製造時の熱処理における風速と相関が高いと推定される。粘度平均分子量が小さくなるほど、かつ/又は風速が大きくなるほど、平均値Paveの値が大きくなる傾向がみられる。平均値Paveは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<微多孔膜のたるみ>
本実施形態の微多孔膜を巻き取ったロールを、任意の場所から長手方向に繰り出したときに、繰り出された微多孔膜の長さ3mでのたるみ量が30mm以下であることが好ましく、より好ましくは25mm以下であり、さらに好ましくは20mm以下である。図1では、たるみ量の測定が模式的に説明されている。たるみ量が30mm以下である場合、表面加工性が優れるメカニズムは定かでないが、下記の通りであると推定される。
微多孔膜を巻き取ったロールは保管する過程において、セパレータの残留応力で収縮又は伸びが発生し、ロール全面の平面性を均一に保つことが困難である。そのため、繰出したセパレータフィルムにおいて平面性の悪い部分が弛み易くなる。一方、微多孔膜の平均値Paveが上記PSD範囲にあると、セパレータの表面には緩やかなうねりが形成される。巻き取ったロールにおいて、セパレータ同士の接触面積が増えるため、収縮又は伸びが起こる際、セパレータ同士の接触面間で抵抗力が発生し、セパレータの変形が抑えられると推定される。そのため、塗布工程時に、たるみに起因する塗工欠陥が減り、表面加工性が優れるセパレータを実現し得る。
(微多孔膜の製造方法)
微多孔膜を製造する方法としては特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物(共重合高密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを含む組成物、以下同じ。)と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法。
以下、微多孔膜を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、以下に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
(孔形成材)
孔形成材としては、特に限定されないが、例えば、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上の温度で均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。このような不揮発性溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン又はポリプロピレンの場合には、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こり難く、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定されない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とから成る組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは20質量%〜90質量%、より好ましくは30質量%〜80質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが成形性向上のために十分になる傾向にある。一方、可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン分子鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易い。
(製膜工程)
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、以下に限定されないが、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、以下に限定されないが、例えば、金属、水、空気、又は可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジ、欠点などの膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断などのリスクが低減される傾向にある。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる傾向にある。
(可塑剤除去工程)
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去して微多孔膜とする。孔形成材を除去する方法としては、以下に限定されないが、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式と連続式のいずれでもよい。微多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬及び乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、微多孔膜中の孔形成材の残存量は、微多孔膜全体の質量に対して1質量%未満に調整されることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒であり、孔形成材に対して良溶媒であり、かつ沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
(延伸工程)
また、上記シート状成形体又は微多孔膜を延伸することが好ましい。延伸は前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよい。また、前記シート状成形体から孔形成材を抽出した微多孔膜に対して延伸を行ってもよい。さらに、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に延伸を行ってもよい。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる微多孔膜の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる微多孔膜が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、以下に限定されないが、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、及びシャットダウン性の観点からは、同時二軸延伸が好ましい。
ここで、同時二軸延伸とは、MD(微多孔膜連続成形の機械方向)の延伸とTD(微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD又はTDに延伸が為されているときは、他の方向は、非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
延伸工程時の延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる微多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
(熱固定)
微多孔膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的として、所定の温度、風速及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。これらの熱処理は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。なお、上記風速は、3m/s〜10m/sであることが好ましく、より好ましくは4m/s〜9m/sであり、さらに好ましくは5m/s〜9m/sである。
延伸操作時に、膜のMD及び/又はTDに1.0倍以上、より好ましくは1.1倍以上の延伸を施すことが、さらなる高強度及び高気孔率を有する微多孔膜を得る観点から好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD及びTD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD及びTDの両方向で行ってもよいが、MDとTDの片方だけ行ってもよい。
可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、TD方向に行われることが好ましい。延伸及び緩和操作における温度は、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から、ポリオレフィン樹脂の融点より低いことが好ましい。
(電池用セパレータ及び電池)
本実施形態の微多孔膜は、とりわけ、電池用セパレータとしての用途に好ましく用いられる。すなわち、本実施形態の電池用セパレータは、本実施形態の微多孔膜を含む。また、本実施形態の電池は、本実施形態の微多孔膜を含む。
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。下記の実施例及び比較例において、部はすべて質量部である。
実施例及び比較例において示される特性の試験方法は次の通りである。
(コモノマー単位の含有量(炭素数が3以上のα−オレフィン単位の含有量))
13C−NMRスペクトルにおいて、コモノマー由来のシグナル強度の積分値のモル換算値(A)を、(A)とエチレン単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(B)との和で除して得られた商に100を乗じることにより、コモノマー単位の含有量(モル%)を求めた。ただし、ポリオレフィン微多孔膜中にポリプロピレンが含有される場合は、上記により求められたポリプロピレン含有量(wt%)に相当するコモノマー単位の含有量(モル%)を除いた値を微多孔膜のコモノマー単位含量(モル%)とする。
例えば、コモノマーとしてプロピレンを用いる場合、下記の構造モデル:
Figure 2017142985
において、I1、I1’、I2、I3、Iα、Iβ、Iγ、Im及びIMをそれぞれ対応する炭素に由来する13C−NMRスペクトルのシグナル強度とすると、コモノマー単位の含有量は下式で表される。
コモノマー単位の含有量(モル%)=(A)/[(A)+(B)]×100
{式中、(A)=(I1+Im+Iα/2)/3、かつ(B)=(I1+I2+I3+IM+Iα/2+Iβ+Iγ)/2)である。}
ここで、末端の影響は小さいため無視することができ、かつI1、I2及びI3をIm、Iα、Iβ及びIγを2Imとして、上式を整理すると、コモノマー単位の含有量は下式で表される。
コモノマー単位の含有量(モル%)=Im/[Im+(IM+5Im)/2]×100
(表面形状プロファイルデータをフーリエ変換したパワースペクトル密度(PSD)測定)
表面形状プロファイルについては、触針式表面形状測定器(製品名:DEKTAK XT−A(株式会社アルバック製))を使用し、実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用いて2000×2000μmの範囲を測定した。測定条件については、針圧が1mg、かつ針径半径が12.5μmである触針を使用し、そしてデータ点毎のサンプリング間隔は、微多孔膜の捲回方向2000(μm)/200(pt)=10(μm/pt)、膜幅方向2000(μm)/3000(pt)=0.67(μm/pt)である。PSDの計算では、プログラムは膜幅方向、それぞれ200ラインの平均粗さ曲線のパワースペクトル密度を計算した。出力結果は、それぞれの空間周波数における平均プロファイルパワーを表している。
このパワースペクトル密度関数は、元の表面プロファイルのフーリエ変換した結果を二乗したものであり、N点存在する長さLのプロファイルをデジタイズした時の平均PSD(f)は次式で与えられる。
Figure 2017142985
{式中、iは2乗して−1となる数を表し、dはデータサンプリング間隔を表し、Zは振幅関数を表し、jはN点存在する長さ(測定範囲)Lのプロファイルのj番目(j=1、2、…N)を表し、空間周波数fはK/Lに等しく、Kは整数であって、1からN/2の間の値を取る。}
なお、後述の各実施例及び各比較例では、上記dを0.67μmとし、上記Lを2000μmとして、平均PSD(f)を算出した。
(たるみ量)
図1に示される通りにたるみ量の評価装置を形成した。ロールに巻き取った微多孔膜1(幅は950〜2150mmである)を引出し、1本のフリーロール2を通した後、距離3mで平行に配置された2本のフリーロール3,4を介して、重り5により微多孔膜7の幅1mm当たり1mNの荷重を掛けた。微多孔膜7に荷重を掛けてから30秒後に、2本のフリーロール3,4の中央の位置で、基準台6と微多孔膜の最端部の距離(L1)をJIS第1級の金尺を用いて測定した。また、フリーロール3又は4の最上端から基準台6までの距離(L2)をJIS第1級の金尺を用いて測定した。たるみ量Lを下記式に従って算出した。
たるみ量L=L2−L1
(電池安全性)
a.電池作製
(a−1) 正極板作製
活物質として92.2質量%のリチウムコバルト複合酸化物LiCoO、導電剤として2.3質量%のリン片状グラファイトと2.3質量%のアセチレンブラック、及びバインダーとして3.2質量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗付し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗付量は250g/mであり、かつ活物質嵩密度は3.00g/cmであった。得られた圧縮成形体を幅約40mmに切断して帯状にした。
(a−2) 負極板作製
活物質として96.9重量%の人造グラファイト、及びバインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4重量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7重量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗付し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗付量は106g/mであり、かつ活物質嵩密度は1.35g/cmであった。得られた圧縮成形体を幅約40mmに切断して帯状にした。
(a−3) 非水電解液の調製
非水電解液としてエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
(a−4) 捲回・組み立て
実施例又は比較例で調製された微多孔膜セパレータ、上記で得られた帯状正極、及び上記で得られた帯状負極を、帯状負極、セパレータ、帯状正極、及びセパレータの順に重ねて、渦巻状に複数回捲回することで電極板積層体を作製した。
この電極板積層体を平板状にプレスした後、アルミニウム製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器壁に、負極集電体から導出したニッケル製リードを容器蓋端子部に接続した。さらに、この容器内に、上記で得られた非水電解液を注入し封口した。このようにして作製される角型リチウムイオン電池は、縦(厚み)6.3mm、横30mm、及び高さ48mmの寸法を有し、かつ公称放電容量が620mAhとなるように設計されていた。
b.容量(mAh)測定
上記のように組み立てたリチウムイオン電池に対して、電流値310mA(0.5C)、終止電池電圧4.2Vの条件下で6時間の定電流定電圧(CCCV)充電を行った。このとき、充電終了直前の電流値は、ほぼ0の値となった。その後、25℃雰囲気下で電池を1週間放置(エージング)した。
エージングされた電池について、電流値620mA(1.0C)、及び終止電池電圧4.2Vの条件下で、3時間の定電流定電圧(CCCV)充電を行ってから、一定電流値(CC)620mAで電池電圧3.0Vまで電池を放電するというサイクルを行った。このときの放電容量を初回放電容量とした。初回放電容量が±10mA以内の電池を安全性評価に使用した。
c.オーブン試験
安全性評価用電池をオーブンに入れ、充電後の電池を室温から150℃まで5℃/分で昇温し、150℃で30分間放置して、電池を観察した。観察された電池を次の基準に従って評価した。発火しなかった電池の評価を良好とした。
○(良好):発火なし
×(不良):発火あり
(表面加工性)
実施例及び比較例で得られた微多孔膜を用い、表面にコロナ放電処理(放電量50W)を実施した後、コロナ放電処理面側に、アルミナ粒子(平均粒径0.7μm)98.2質量部、及びポリビニルアルコール(平均重合度1,700、ケン化度99%以上)1.8質量部を150質量部の水にそれぞれ均一に分散させた水溶液を、グラビアコーターを用いて塗布した。その後、塗布された微多孔膜を60℃で乾燥して水を除去し、微多孔膜上に厚さ2μmの多孔層が形成された多層多孔膜を得た。
作製した多層多孔膜から10cmの寸法を有するサンプルを20箇所切り出し、20箇所の多孔層の単位面積当たりの質量(W)の最大値(WMAX)と最小値(WMIN)を用いて、以下の式より質量変化値(R)を算出した。
R値=WMAX−WMIN
多孔層の単位面積当たりの質量(W)は、多層多孔膜の質量を測定した後、多孔層を除去した微多孔膜の質量を測定し、以下の式より算出された。
W(g/m)=(多層多孔膜の質量−ポリオレフィン樹脂多孔膜の質量)×1000
R値が低いと表面コーティングの平滑性が良いものとして、下記基準に従って表面加工性を評価した。
◎(著しく良好):0.01g/m〜0.25g/m
○(良好):0.26g/m〜0.35g/m
△(許容):0.36g/m〜0.50g/m
×(不良):0.50g/m以上
〔実施例1〕
Mvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を18.5部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)を18.5部、Mv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)を3部、及び酸化防止剤として、これらの混合物に対して0.3部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを混合し、二軸押出機にフィーダーを介して投入した。更に流動パラフィン(松村石油(株)製P−350(商標))60部をサイドフィードで押出機に注入し、200℃で混練し、押出機先端に設置したTダイから樹脂組成物を押出した直後に、20℃に冷却したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1600μmのゲル状シートを成形した。このゲル状シートを121℃で同時二軸延伸機により7×8倍に延伸した後、この延伸フィルムを塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後、塩化メチレンを乾燥除去して、微多孔膜を得た。得られた微多孔膜を、熱固定(「HS」と略記することがある)を行なうべくTDテンターに導き、熱固定温度132℃、熱量風速3.1m/s、及び延伸倍率1.9倍の条件下でHSを行い、その後、0.87倍の緩和操作(即ち、HS緩和率が0.87倍である)を行い、膜を得た。得られた膜について、各種特性を評価した結果を表1に示す。
〔実施例2〕
Mvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)19部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)19部、及びMv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)2部を、ポリオレフィン原料として使用した。熱固定温度131.5℃及び熱量風速4.6m/sの条件下でHSを行うこと以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔実施例3〕
Mvが15万の共重合高密度ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単位含有量:0.6モル%、密度:0.95)20部、Mvが25万の高密度(密度0.95)ポリエチレン18部、及びMv40万のホモポリマーのポリプロピレン(密度0.91)2部を、ポリオレフィン原料として使用した。また、熱固定温度123℃、熱量風速5.2m/s、及び延伸倍率1.95倍の条件下でHSを行うこと以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔実施例4〕
熱固定温度132.5℃及び熱量風速7.3m/sの条件下でHSを行うこと以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔実施例5〕
Mvが15万の共重合高密度ポリエチレン(コモノマー:プロピレン、プロピレン単位含有量:0.6モル%、密度:0.95)12部、Mvが25万の高密度ポリエチレン(密度0.95)14部、Mvが70万の高密度ポリエチレン(密度0.95)12部、及びMv40万の高密度ポリプロピレン(密度0.91)2部を、ポリオレフィン原料として使用した。また、熱固定温度127.5℃、熱量風速8.5m/s及び延伸倍率1.85倍でHSを行うこと以外は、実施例1と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔実施例6〕
熱量風速9.4m/s及び延伸倍率1.85倍の条件下でHSを行うこと以外は、実施例3と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔比較例1〕
熱固定温度128℃及び熱量風速10.8m/sの条件下でHSを行うこと以外は、実施例5と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
〔比較例2〕
熱固定温度123.5℃及び熱量風速11.2m/sの条件下でHSを行うこと以外は、実施例6と同様の製膜を行った。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。
Figure 2017142985
1 微多孔膜ロール
2 フリーロール
3 フリーロール
4 フリーロール
5 重り
6 基準台
7 繰り出された微多孔膜
L1 2本のフリーロール(3,4)の間での基準台(6)と微多孔膜の最端部の距離
L2 基準台(6)とフリーロール(3又は4)の最上端の距離

Claims (6)

  1. ポリオレフィン樹脂を含む、電池セパレータ用の微多孔膜であって、
    前記微多孔膜の表面形状プロファイルデータをフーリエ変換して得られるパワースペクトル密度の平均値Paveが、空間周波数30(/mm)以上80(/mm)以下の範囲において、15(mm・nm)≦Pave≦45(mm・nm)の関係を満たす、
    前記微多孔膜。
  2. 前記平均値Paveが、20(mm・nm)≦Pave≦45(mm・nm)の関係を満たす、請求項1に記載の微多孔膜。
  3. 前記平均値Paveが、20(mm・nm)≦Pave≦40(mm・nm)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の微多孔膜。
  4. 前記微多孔膜を巻き取ったロールを、任意の場所から長手方向に繰り出したときに、繰り出された微多孔膜の長さ3mでのたるみ量が、30mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微多孔膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
  6. 請求項5に記載の電池用セパレータを含む、電池。
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