JP6601165B2 - 発泡成形品及び車両用シート - Google Patents
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また、上述の外層材内でモールドウレタンを一体的に発泡成形する方法では、縫製された外層材の内側でウレタン原料が発泡するため、外層材の内側に発泡圧力が加わり、外層材の縫い目からウレタン原料が漏出する場合があることが知られている。
これに対し、下記特許文献2及び特許文献3に開示された技術が知られている。
しかしながら、特許文献2では、縫製糸に対するウレタン原料の含浸に関する点は、問題とされておらず、何ら検討はなされていない。また、この構成では、空気や発泡ガスが抜け出るのに伴って、ウレタン原料が縫製糸に浸透すると考えられ、その浸透量はばらついてしまうことが予想される。
しかしながら、特許文献3においても、縫製糸に対するウレタン原料の含浸に関する点は、問題とされておらず、何ら検討はなされていない。
前記縫製部を構成する縫製糸が、毛羽糸を含み、
前記毛羽糸は、マルチフィラメント糸を芯糸とし、起毛繊維が前記芯糸と交絡された短繊維であり、
前記起毛繊維が、植物性繊維であることを要旨とする。
請求項2に記載の発泡成形品は、請求項1に記載の発泡成形品において、前記外層材は、前記モールドウレタン材と接する裏面側に、層の表裏に通気性を有するスラブウレタン層を備えることを要旨とする。
請求項3に記載の発泡成形品は、請求項2に記載の発泡成形品において、前記スラブウレタン層は、2層以上からなり、
表面側に第1のスラブウレタン層を有し、前記第1のスラブウレタン層に対して裏面側に第2のスラブウレタン層を有し、
前記第2のスラブウレタン層は、前記第1のスラブウレタン層よりも通気度が低くされていることを要旨とする。
また、上記問題を解決するために、請求項4に記載の車両用シートは、請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の発泡成形品を備えることを要旨とする。
請求項5に記載の車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、内部にエアバックモジュールが埋設されるとともに、着座者側へ突出するように形成されたサイドサポート部を有する車両用シートであって、
前記サイドサポート部に前記発泡成形品が用いられていることを要旨とする。
また、毛羽糸がマルチフィラメント糸を芯糸とし、その芯糸に起毛繊維が交絡された糸である場合には、紡績糸等のように短繊維を紡いだ毛羽糸を用いた場合に比べて、より安定した糸強度を得ることができる。即ち、切れ目のないマルチフィラメント糸を芯糸として採用できるため、安定した糸強度が得られる。
更に、外層材が、裏面側にスラブウレタン層を備える場合には、縫製時に形成される糸孔が毛羽糸によって閉塞されることに加えて、ウレタン原料がスラブウレタン層に吸収されることによって、糸孔に対して直接的に発泡圧力が負荷されることを防止する。そのため、スラブウレタン層よりも表面側に位置される縫製糸に対して、より効果的にウレタン原料の浸透を防止できる。
また、スラブウレタン層が2層以上からなり、表面側に第1のスラブウレタン層を有し、第1のスラブウレタン層に対して裏面側に第2のスラブウレタン層を有して、第2のスラブウレタン層が第1のスラブウレタン層よりも通気度が低い場合には、第1のスラブウレタン層へのウレタン原料の浸透を第2のスラブウレタン層が抑制することによって、第2のスラブウレタン層を備えない場合に比べて、糸孔に対して、直接的に発泡圧力が負荷されることを防止できる。そのため、第1のスラブウレタン層よりも外層材側に位置される縫製糸に対して、更に効果的にウレタン原料の浸透を防止できる。
また、内部にエアバックモジュールが埋設されるとともに、着座者側へ突出するように形成されたサイドサポート部を有する車両用シートであって、サイドサポート部に発泡成形品が用いられている場合には、エアバックモジュールを配置した周囲に発泡成形品を用いたとしても、エアバックの展開時の圧力によって必要な個所の縫製糸が的確に破断されるように正確に設計を行うことができる。
本発明の発泡成形品1は、縫製部11を有する外層材10と、外層材10の縫製部11を含む側(裏面10bの側)において、ウレタン原料が発泡され固化されて、外層材10と一体にされたモールドウレタン材20と、を備える。そして、縫製部11を構成する縫製糸30が、毛羽糸を含むことを特徴とする。
このうち、表面10aは意匠面をなし、裏面10bはモールドウレタン材20と対向される側の面であり、通常、内面である。この外層材10は、1層のみから構成されてもよく、2層以上から構成されてもよい。
外層材10の最外層(表面10aの側の層)としては、例えば、意匠布(ファブリック)、樹脂層(PVC、PP等)、合成皮革、天然皮革等が挙げられる。この最外層に対して内側の層(内面10bの側の層)としては、スラブウレタン層13が挙げられる。その他、不織布層、接着剤層、フィルム層等が挙げられる。これらの層は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、スラブウレタン層13は、1層のみからなってもよく2層以上からなってもよい。通常、1層以上5層以下であり、1層又は2層が好ましい。
(1)外層材10を構成する第1の個片101(以下、単に「第1個片」)と、外層材10を構成する第2の個片102(以下、単に「第1個片」)とが、互いの表面101aと表面102aとが接するように突き合せた状態で、第1個片101の裏面101bから第2個片102の裏面102bまでを貫通するように縫製された形態(図1−図3参照)、
(2)第1個片101と第2個片102とが、互いの表面101aと表面102aとが接するように突き合せた状態で折り込まれ、第1個片101の裏面101bから第2個片102の表面102aまでを貫通するように縫製された形態(図4参照)、
(3)第1個片101と第2個片102とが上下に重ねて縫製された形態(第1個片101の裏面101bと第2個片102の表面102aとが接する。図5参照)、
(4)第1個片101と第2個片102とが、互いの裏面101bと裏面102bとが接するように突き合せた状態で、第1個片101の表面101aから第2個片102の表面102aまでを貫通するように縫製された形態などが挙げられる。
これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
また、例えば、図6に例示されるように、外層材10は平板状に縫製した形態にできる。平板状に縫製した外層材10は、外層材10と仕切り材25との間にウレタン原料を充填し、外層材10と仕切り材25との層間でウレタン原料を発泡・固化することによって、外層材10の裏面側にモールドウレタン材20を備えるようにすることができる。
縫製糸30は、その一部のみに毛羽糸が利用されてもよいが、縫製糸30の全部が毛羽糸であることが好ましい。
毛羽糸は、上述のフィラメントヤーンのなかでも、マルチフィラメント糸を芯糸とし、芯糸に毛羽をなす起毛繊維が交絡された糸であることが好ましい。即ち、芯糸に拘束された起毛繊維を有する糸であることが好ましい。このうちマルチフィラメント糸は、長繊維が引き揃えて加撚された糸であることが好ましい。また、マルチフィラメントは、1種の構成糸のみから形成されてもよいが、複数種の構成糸から形成されていてもよい。
これらのなかでは、芯糸はポリエステル系樹脂及び/又はナイロン系樹脂による構成糸であることが好ましく、ポリエステル系樹脂であることがより好ましい。また、起毛繊維は、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂及び/又は植物性繊維による構成糸であることが好ましく、植物性繊維であることがより好ましく、特に綿であることが好ましい。
モールドウレタン材20は、通常、スラブウレタン層13よりも高密度である。具体的な密度については前述の通りである。
更に、モールドウレタン材20は、スラブウレタン層13に比べて硬いことが好ましい。具体的には、モールドウレタン材20の40%圧縮時の硬さ等級(JIS K6401)は210以上であることが好ましい。この等級は、210以上600以下がより好ましく、270以上600以下が特に好ましい。
また、モールドウレタン材20の通気性の有無及びその程度については特に限定されない。更に、モールドウレタン材20に関するクラッシングの有無も特に限定されない。
本発明の車両用シート50は、前述の本発明の発泡成形品1を備えることを特徴とする。具体的には、発泡成形品1は、ヘッドレスト及び/又はシートパッドとして備えることができる。
より具体的には、前述の発泡成形品1は、車両用シート50のなかでも、特に内部にエアバッグモジュール55が埋設されるとともに、着座者Aの側へ突出するように形成されたサイドサポート部512を有する車両用シート50において、サイドサポート部512として備えられていることが好ましい。
(1)実施例1
図1に示すように、合成皮革の裏面(非意匠面側)に1層のスラブウレタン層13がラミネートされた表皮材を、縫製によって繋ぎ合わせて袋状に形成された外層材10とした。この外層材10は、第1個片101と第2個片102とを繋ぎ合わせたものである。そして、第1個片101と第2個片102とを、互いの表面101aと表面102aとが接するように突き合せた状態で、第1個片101の裏面101bから第2個片102の裏面102bまでを貫通するように、毛羽糸である縫製糸30によって縫製した外層材10であり、縫製部11を有する。
更に、合成皮革の厚さは、0.5mm以上2mm以下である一方、スラブウレタン層13の厚さは、1mm以上10mm以下である。また、スラブウレタン層13の密度は20kg/m3以上60kg/m3以下であり、通気度は0.5cc/cm2/sec以上400cc/cm2/sec以下である。
この発泡成形品1では、モールドウレタン材20が、ウレタン原料の充填及び発泡の際に、スラブウレタン層13に一部が浸透して、固化されており、外層材10と一体化されている。そして、この発泡成形品1では、繋ぎ目19を押し広げて見ても、ウレタンの漏れ出しは認められなかった。また、縫製糸30へのウレタンの浸透は、一部で認められたものの、全縫製長に対して1%以下に抑えられた。
その結果、点線で囲んだ拡大図(矢印Xの方向から繋ぎ目19を見た状態を拡大して示した図)に例示するように、縫製時に縫製糸30が挿通された、各々の個片の貫通孔101x及び102xは、図に示すように、引き伸ばされた形態となり、ウレタン原料が漏れ出し易い状態となる。
しかしながら、本実施例1では、縫製糸30として毛羽糸を用いているため、貫通孔101x及び102xが、毛羽糸の嵩高さによって封止された状態となり、ウレタン原料の漏れ出しは認められなかったと考えられる。更に、縫製糸30へのウレタンの含浸も非常に少なく抑えられた。
図2に示すように、合成皮革の裏面(非意匠面側)にスラブウレタン層13がラミネートされた表皮材を、縫製によって繋ぎ合わせて袋状に形成された外層材10とした。このスラブウレタン層13は、2層のスラブウレタン層から構成されている。即ち、外側に配置された第1スラブウレタン層131と、内側に配置された第2スラブウレタン層132と、を備える。
また、外層材10は、第1個片101と第2個片102とを繋ぎ合わせたものである。そして、第1個片101と第2個片102とを、互いの表面101aと表面102aとが接するように突き合せた状態で、第1個片101の裏面101bから第2個片102の裏面102bまでを貫通するように、毛羽糸である縫製糸30によって縫製した外層材10であり、縫製部11を有する。
更に、合成皮革の厚さは、0.5mm以上2mm以下である。
また、第1スラブウレタン層131の厚さは、1mm以上10mm以下である。また、第1スラブウレタン層131の密度は20kg/m3以上60kg/m3以下であり、通気度は60cc/cm2/sec以上200cc/cm2/sec以下である。
一方、第2スラブウレタン層132の厚さは、1mm以上5mm以下である。また、第2スラブウレタン層132の密度は20kg/m3以上60kg/m3以下であり、通気度は0.5cc/cm2/sec以上1.5cc/cm2/sec以下である。
この発泡成形品1では、モールドウレタン材20が、ウレタン原料の充填及び発泡の際に、第2スラブウレタン層132の裏面側に僅かに浸透して、固化されており、外層材10と一体化されている。そして、この発泡成形品1では、繋ぎ目19を押し広げて見ても、ウレタンの漏れ出しは認められず、縫製糸30へのウレタンの浸透や、縫製糸30の硬化が認められなかった。
加えて、本実施例2では、スラブウレタン層13として、通気度が低い第2スラブウレタン層132を備える。そのため、より確実に縫製糸30へのウレタン原料の含浸が防止されて、縫製糸30へのウレタンの含浸が全く認められず、縫製糸30が硬化された個所は認められなかった。
従って、本実施例の発泡成形品1では、縫製糸30のウレタン含浸による硬さの差異が生じず、縫製の自由度が維持されて、繋ぎ目19の柔軟性が確保された。
車両用シート50は、図7に示すように、着座者Aの背もたれとなるシートバック51を備えている。更に、車両用シート50は、このシートバック51と接続されて、着座部となるシートクッション(図示せず)を備えている。
シートバック51は、中央サポート部511及びサイドサポート部512を備えている。サイドサポート部512は、着座者Aの側へ突出するように形成され、中央サポート部511の左右に一対として設けられて、着座者Aを左右から包み込むようにされている。更に、サイドサポート部512のうち、左側のサイドサポート部512内には、エアバッグモジュール55が埋設され、必要な際には、エアバッグモジュール55内の袋体が膨出する構造となっている。
外層材10は、その表面を構成する合成皮革層と、その内側にラミネートされたスラブウレタン層13とを備える。スラブウレタン層13は、外側に配置された第1スラブウレタン層と内側に配置された第2スラブウレタン層との2層から構成されている。これら第1スラブウレタン層及び第2スラブウレタン層は、実施例2と同様の特性を有している(図2参照)。
更に、外層材10は、複数に分割された個片を縫い合わせて一枚にされている。この際の縫製は毛羽糸のみを用いてなされており、複数の縫製部11a、11b及び11cを備えている。各縫製部11a−11cを構成する縫製糸30には、いずれも毛羽糸が用いられている。
この製造方法を行った際には、前述のように、外層材10の内部への充填圧及び発泡の際の発泡圧によって、外層材10の各縫製部11a−11cの繋ぎ目が開く方向へ引っ張られたとしても、縫製糸30として毛羽糸を用いるとともに、2層化されたスラブウレタン層13を用いており、更には、このスラブウレタン層13のうちの内側の第2スラブウレタン層は、外側の第1スラブウレタン層よりも、通気度が低くされているために、縫製糸30へのウレタン原料の浸透が防止されている。従って、各縫製部11a−11cを構成する縫製糸30は、ウレタンの浸透による硬化が認められず、柔軟な状態が維持されている。特に、バーストラインを構成する縫製糸30においても同様であり、設計通りの破断を行わせることができる。
また、本明細書には下記[1]〜[6]に関する説明が含まれる。
[1]に記載の発泡成形品は、縫製部を有する前記外層材と、前記外層材の前記縫製部を含む側において、ウレタン原料が発泡され固化されて、前記外層材と一体にされたモールドウレタン材と、を備えた発泡成形品において、
前記縫製部を構成する縫製糸が、毛羽糸を含むことを要旨とする。
[2]に記載の発泡成形品は、[1]に記載の発泡成形品において、前記毛羽糸は、マルチフィラメント糸を芯糸とし、起毛繊維が前記芯糸と交絡された糸であることを要旨とする。
[3]に記載の発泡成形品は、[1]又は[2]に記載の発泡成形品において、前記外層材は、前記モールドウレタン材と接する裏面側に、スラブウレタン層を備えることを要旨とする。
[4]に記載の発泡成形品は、[3]に記載の発泡成形品において、前記スラブウレタン層は、2層以上からなり、
表面側に第1のスラブウレタン層を有し、前記第1のスラブウレタン層に対して裏面側に第2のスラブウレタン層を有し、
前記第2のスラブウレタン層は、前記第1のスラブウレタン層よりも通気度が低くされていることを要旨とする。
[5]に記載の車両用シートは、前記発泡成形品を備えることを要旨とする。
[6]に記載の車両用シートは、[1]に記載の車両用シートにおいて、内部にエアバックモジュールが埋設されるとともに、着座者側へ突出するように形成されたサイドサポート部を有する車両用シートであって、
前記サイドサポート部に前記発泡成形品が用いられていることを要旨とする。
10;外層材、10a;表面、10b;裏面、
101;第1個片、101a;第1個片の表面、101b;第1個片の裏面、
102;第2個片、102a;第2個片の表面、102b;第2個片の裏面、
11、11a、11b、11c;縫製部、
13;スラブウレタン層、131;第1スラブウレタン層、132;第2スラブウレタン層、
19;繋ぎ目、
20;モールドウレタン材、
25;仕切り材、
30;縫製糸、
50;車両用シート、51;シートバック、511;中央サポート部、512;サイドサポート部、55;エアバッグモジュール、57;裏面材、
61;ドア、62;ピラー、
A;着座者。
Claims (5)
- 縫製部を有する外層材と、前記外層材の前記縫製部を含む側において、ウレタン原料が発泡され固化されて、前記外層材と一体にされたモールドウレタン材と、を備えた発泡成形品において、
前記縫製部を構成する縫製糸が、毛羽糸を含み、
前記毛羽糸は、マルチフィラメント糸を芯糸とし、起毛繊維が前記芯糸と交絡された短繊維であり、
前記起毛繊維が、植物性繊維であることを特徴とする発泡成形品。 - 前記外層材は、前記モールドウレタン材と接する裏面側に、層の表裏に通気性を有するスラブウレタン層を備える請求項1に記載の発泡成形品。
- 前記スラブウレタン層は、2層以上からなり、
表面側に第1のスラブウレタン層を有し、前記第1のスラブウレタン層に対して裏面側に第2のスラブウレタン層を有し、
前記第2のスラブウレタン層は、前記第1のスラブウレタン層よりも通気度が低くされている請求項2に記載の発泡成形品。 - 請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の発泡成形品を備えることを特徴とする車両用シート。
- 内部にエアバックモジュールが埋設されるとともに、着座者側へ突出するように形成されたサイドサポート部を有する車両用シートであって、
前記サイドサポート部に前記発泡成形品が用いられている請求項4に記載の車両用シート。
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