以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、図1乃至図9、図13、図16A乃至図16Dにおいて、異なる図面同士で互いに整合している。各矢印の方向は、図11及び図12同士で互いに整合している。各矢印の方向は、図14及び図15同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、回路基板CB1及びCB2の図示を省略する。
図1は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物60とが接続された状態を上面視により示した外観斜視図である。図2は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物60とが分離した状態を上面視により示した外観斜視図である。
以下の説明では、一実施形態に係るコネクタ10はリセプタクルコネクタであり、接続対象物60はプラグコネクタであるとして説明する。より具体的には、コネクタ10と接続対象物60とが接続される際に、コンタクト50が弾性変形するコネクタ10をリセプタクルコネクタとし、コンタクト90が弾性変形しない接続対象物60をプラグコネクタとして説明する。コネクタ10及び接続対象物60の種類は、これに限定されない。コネクタ10がプラグコネクタの役割を果たし、接続対象物60がリセプタクルコネクタの役割を果たしてもよい。
以下の説明では、コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2にそれぞれ実装され、一例としてこれらに対して互いに垂直方向に接続されるとして説明する。より具体的には、コネクタ10及び接続対象物60は、一例として上下方向に沿って接続される。コネクタ10及び接続対象物60の接続方法は、これに限定されない。コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2に対して、それぞれ平行方向に接続されてもよいし、一方が垂直方向、他方が平行方向による組み合わせで接続されてもよい。
回路基板CB1及びCB2は、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。例えば、回路基板CB1又はCB2は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。
以下の説明中で使用する「嵌合方向」は、一例として上下方向を含む。「嵌合側」は、一例として上側を含む。「コンタクト50の配列方向」は、一例として左右方向を含む。「コンタクト50の配列方向と略直交する方向」は、一例として前後方向と前後方向に近似する方向とを含む。
一実施形態に係るコネクタ10は、フローティング構造を有している。コネクタ10は、接続されている接続対象物60の回路基板CB1に対する相対的な移動を許容する。すなわち、接続対象物60は、コネクタ10と接続されている状態であっても、回路基板CB1に対して所定の範囲内で動くことができる。
図3は、一実施形態に係るコネクタ10を上面視により示した外観斜視図である。図4は、図3のコネクタ10の上面視による分解斜視図である。図5は、図3のV−V矢線に沿った断面斜視図である。図6は、図5のVI部の拡大図である。図7は、図3のV−V矢線に沿った断面図である。図8は、一対のコンタクト50を示した正面図である。図9は、図8のIX部の拡大図である。
図4に示すとおり、コネクタ10は、大きな構成要素として、第1インシュレータ20と、第2インシュレータ30と、金具40aと、遮蔽部材40bと、コンタクト50と、を有する。コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。第1インシュレータ20に対して下方から金具40aを圧入する。金具40aが圧入された第1インシュレータ20の内側に第2インシュレータ30を配置する。第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に対して下方からコンタクト50を圧入する。第1インシュレータ20に対して上方から遮蔽部材40bを圧入する。
コンタクト50が弾性変形しない状態におけるコネクタ10の詳細な構造について、主に図3乃至図9を参照しながら説明する。
図4及び図5に示すとおり、第1インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、角筒状の部材である。第1インシュレータ20は、中空であり、上面及び下面に開口21a及び21bをそれぞれ有する。第1インシュレータ20は、4つの側面から構成され、内部の空間を囲繞する外周壁22を有する。第1インシュレータ20は、外周壁22の左右両端部で上下方向に沿って第1インシュレータ20の内部に凹設されている金具取付溝23を有する。金具取付溝23には、金具40aが取り付けられる。第1インシュレータ20は、外周壁22の左右両端部で外側に突設されている係合部24を有する。係合部24には、遮蔽部材40bが取り付けられる。
第1インシュレータ20は、外周壁22の前面及び後面の下縁部から下面及び内面にわたって連続的に形成されている複数のコンタクト取付溝25を有する。複数のコンタクト取付溝25は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝25は、第1インシュレータ20の内面において、上下方向に延在する。複数のコンタクト取付溝25には、複数のコンタクト50がそれぞれ取り付けられる。
第2インシュレータ30は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。第2インシュレータ30は、前方からの正面視において略凸字状に形成されている。第2インシュレータ30は、下部を構成する底部31と、底部31から上方に突出し、接続対象物60と嵌合する嵌合凸部32と、を有する。底部31は、左右方向において嵌合凸部32よりも長い。換言すると、底部31の左右両端部は、嵌合凸部32の左右両端部よりもそれぞれ外方に突出する。第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の上面に凹設されている嵌合凹部33を有する。第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の上縁部にわたって嵌合凹部33を囲むように形成されている誘い込み部34を有する。誘い込み部34は、嵌合凸部32の上縁部において上方に向けて斜め内方に傾斜する傾斜面を含む。
第2インシュレータ30は、左右方向に並んで形成されている複数のコンタクト取付溝35を有する。複数のコンタクト取付溝35は、上下方向に延在する。コンタクト取付溝35の下部は、第2インシュレータ30の前面及び後面それぞれの下部が凹設されることで形成されている。コンタクト取付溝35の中央部は、第2インシュレータ30の内部に形成されている。コンタクト取付溝35の上部は、嵌合凹部33の前後方向の両内面それぞれが凹設されることで形成されている。複数のコンタクト取付溝35には、複数のコンタクト50がそれぞれ取り付けられる。
図5及び図6に示すとおり、第2インシュレータ30は、嵌合凹部33の底面から下方に向けて内部で延在する壁部36を有する。壁部36は、前後方向に配列された状態で第2インシュレータ30に取り付けられている一対のコンタクト50の間に位置する。壁部36は、一対のコンタクト50それぞれと対向する。壁部36の上部は、最も幅広に形成されている。壁部36の中央部及び下部は、上部よりも幅狭に形成されている。壁部36の前面及び後面は、コンタクト取付溝35の一部を構成する。第2インシュレータ30の内部に形成されているコンタクト取付溝35の中央部は、壁部36の中央部及び上部の幅の変化に伴い、下側よりも上側において前後方向に幅狭である。
金具40aは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図4に示す形状に成形加工したものである。金具40aは金具取付溝23に圧入され、第1インシュレータ20の左右両端部それぞれに配置されている。金具40aは、左右方向からの正面視において、それぞれ略H字状に形成されている。金具40aは、その前後両側の下端部において、略U字状に外側に延出する実装部41aを有する。金具40aは、その上下方向の略中央部において、前後方向に延在する連続部42aを有する。金具40aは、連続部42aにおいて、前後方向略中央の下縁部から内方に向けて左右方向に突出する抜止部43aを有する。抜止部43aは、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。金具40aは、その前後両側の上端部において、第1インシュレータ20に対して係止する係止部44aを有する。
遮蔽部材40bは、電気伝導性を有する任意の金属材料を用いて図4に示す形状に成形加工したものである。遮蔽部材40bは、金属製であってもよいし、樹脂材を含み表層に電気伝導性を有してもよい。遮蔽部材40bは、同一形状で一対形成されている。一対の遮蔽部材40bは、係合部24に圧入され、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30を前後左右方向から囲繞する。
遮蔽部材40bは、上下方向に幅を有し左右方向に直線的に延在する第1遮蔽部41bを有する。第1遮蔽部41bは、第1インシュレータ20の前後方向の外面の略全体を外側から覆う。遮蔽部材40bは、第1遮蔽部41bの左右両側縁部それぞれから屈曲しながら前後の内側方向に延出する第2遮蔽部42bを有する。第2遮蔽部42bは、前後方向に幅を有する。第2遮蔽部42bは、第1インシュレータ20の左右両側面それぞれの一部を外側から覆う。
遮蔽部材40bは、第1遮蔽部41bの上縁部の中央部全体から略逆U字状に内側に屈曲する第1屈曲部43bを有する。第1屈曲部43bは、第1遮蔽部41bの上縁部において左右方向に延在する。遮蔽部材40bは、第2遮蔽部42bの上縁部の略全体から略逆U字状に外側に屈曲する第2屈曲部44bを有する。第2屈曲部44bは、第2遮蔽部42bの上縁部において前後方向に延在する。
遮蔽部材40bは、第2遮蔽部42bの内端部において下方に直線状に延出する係合部45bを有する。係合部45bが第1インシュレータ20の係合部24に係合することで、遮蔽部材40bが第1インシュレータ20に対して固定される。遮蔽部材40bは、第1遮蔽部41bの下縁部の左右両端それぞれから略L字状に外側に延出する実装部46bを有する。遮蔽部材40bは、第1遮蔽部41bの外面が左右方向に沿って直線状に隆起することで形成されている隆起部47bを有する。
図4乃至図9に示すとおり、コンタクト50は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金、又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。コンタクト50の全体形状は、抜き加工のみによって形成される。コンタクト50は、弾性変形に伴う形状変化が大きくなるように、弾性係数の小さい金属材料によって形成されている。コンタクト50の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
図4に示すとおり、コンタクト50は、左右方向に複数配列されている。図5乃至図7に示すとおり、コンタクト50は、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に取り付けられている。同一の左右位置に配列される一対のコンタクト50は、コンタクト50の配列方向と略直交する方向に沿って対称的に形成及び配置されている。より具体的には、一対のコンタクト50は、その間の中心を通る上下軸に対して互いに略線対称となるように形成及び配置されている。
コンタクト50は、上下方向に沿って延在し、第1インシュレータ20によって支持される基部51を有する。コンタクト50は、基部51の上端部に形成され、第1インシュレータ20に対して係止する係止部52を有する。係止部52は、後述する第1幅広部51aよりも嵌合側に形成されている。係止部52はさらに、基部51の下端部と連続して形成され、第1インシュレータ20に対して係止する。基部51及び係止部52は、第1インシュレータ20のコンタクト取付溝25に収容されている。コンタクト50は、係止部52の下端部の外側から略L字状に外方に延出する実装部53を有する。
コンタクト50は、基部51の一部を構成し、第1インシュレータ20側に位置する第1幅広部51aを有する。第1幅広部51aは、第1インシュレータ20の内側において外周壁22の内面に沿って位置する。第1幅広部51aは、第1インシュレータ20に対して直接係止しておらず、係止部52が第1インシュレータ20に対して係止することで支持される。第1幅広部51aは、後述する第1弾性部54aと連続して形成されている。第1幅広部51aは、第1弾性部54aの外端部の近傍において、第1弾性部54aと隣接するように形成されている。
第1幅広部51aは、第1インシュレータ20に沿ったコンタクト50の他の部分よりも、コンタクト50の配列方向と略直交する方向において第2インシュレータ30側に突出する。より具体的には、第1幅広部51aは、基部51の他の部分よりも前後方向において一段内側に突出する。第1幅広部51aは、基部51の他の部分よりも前後方向に幅広である。同様に、第1幅広部51aは、第1弾性部54aよりも幅広である。このように、第1幅広部51aは、全体として基部51の他の部分及び第1弾性部54aよりも断面積が大きく形成されている。これにより、第1幅広部51aは、基部51の他の部分及び第1弾性部54aよりも高い電気伝導性を有する。より具体的には第1幅広部51aは、基部51の他の部分及び第1弾性部54aよりも低い特性インピーダンスを有する。
図8及び図9に示すとおり、コンタクト50は、第1幅広部51aの表面に形成されている凹凸部51bを有する。左右方向の一方の外面では、凹凸部51bは、中央に形成されている凹部を前後両側から凸部が挟むように形成されている。逆に、左右方向の他方の外面では、凹凸部51bは、中央に形成されている凸部を前後両側から凹部が挟むように形成されている。凹凸部51bは、コンタクト50が第1インシュレータ20に取り付けられている状態で、コンタクト取付溝25の表面と接触する。これにより、抜き加工によって左右方向に幅狭に形成されているコンタクト50の左右方向に沿ったねじれが抑制される。したがって、コンタクト50は、左右方向に幅狭であっても第1インシュレータ20に対して安定に取り付けられる。さらに、コネクタ10と接続対象物60とが嵌合した状態において、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して相対的に移動した場合であっても、コンタクト50にかかる左右方向のねじれが抑制される。
コンタクト50は、基部51から前後方向に沿って内側に延出する、弾性変形可能な第1弾性部54aを有する。第1弾性部54aは、基部51から斜め下方に向けて内側に延出した後、斜め上方に向けて屈曲し、そのまま直線的に延在する。第1弾性部54aは、その内側の端部において下方に向けて再度屈曲し、後述する中間部54bの上端部と接続されている。第1弾性部54aは、基部51及び第1幅広部51aよりも幅狭に形成されている。以上により、第1弾性部54aは、弾性変位する部分を調整することができる。
コンタクト50は、第1弾性部54aと連続して形成されている中間部54bを有する。中間部54bは、全体として第1弾性部54aよりも幅広、すなわち断面積が大きく形成されていることで、第1弾性部54aよりも高い電気伝導性を有する。中間部54bは、コンタクト50が弾性変形しない状態において嵌合方向に延在する。
中間部54bは、上部を構成する第1調整部54b1と、中央部を構成する第2調整部54b2と、下部を構成する第3調整部54b3と、を有する。第1調整部54b1の上端部は、第1弾性部54aと接続されている。第1調整部54b1は、第1弾性部54aよりも断面積が大きい。第1調整部54b1は、前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段外側に突出する。第2調整部54b2は、第1調整部54b1よりも断面積が小さくかつ第1弾性部54aよりも断面積が大きい。例えば、第2調整部54b2は、第1調整部54b1よりも前後方向に幅狭に、かつ第1弾性部54aよりも前後方向に幅広に形成されている。第3調整部54b3は、第2調整部54b2よりも断面積が大きい。第3調整部54b3は、前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段内側に突出する。このように、中間部54bは、第1調整部54b1及び第3調整部54b3において高い電気伝導性を有し、第2調整部54b2においてこれらよりも低い電気伝導性を有する。第1調整部54b1と第3調整部54b3とは対称的に形成されている。より具体的には、第1調整部54b1と第3調整部54b3とは、中間部54bの中心に対して互いに略点対称となるように形成されている。
コンタクト50は、第3調整部54b3の下端部から第2インシュレータ30まで延出し、弾性変形可能な第2弾性部54cを有する。第2弾性部54cは、第3調整部54b3の下端部から斜め上方に向けて屈曲し、そのまま直線的に延在する。第2弾性部54cは、斜め下方に向けて再度屈曲し、後述する第2幅広部55の外端部と接続されている。第2弾性部54cは、第1弾性部54aと同様に中間部54bよりも幅狭に形成されている。以上により、第2弾性部54cは、弾性変位する部分を調整することができる。
第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cは、略クランク状に一体的に形成されている。第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cは、嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されている。第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、中間部54bに対して対称的に形成されている。より具体的には、第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、中間部54bの中心に対して互いに略点対称となるように形成されている。
第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、中間部54bにおいて、嵌合方向の両端側からそれぞれ延出する。より具体的には、第1弾性部54aは、第1調整部54b1の上縁部における内側の端部から延出する。一方で、第2弾性部54cは、第3調整部54b3の下縁部における外側の端部から延出する。このように、第1弾性部54aと中間部54bとの接続点及び第2弾性部54cと中間部54bとの接続点は、中間部54bの中心に対して互いに対称的な位置に形成されている。第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、第1幅広部51a及び後述する第2幅広部55と連続している端部と反対側の端部において中間部54bとそれぞれ連続している。より具体的には、第1弾性部54aは、外端部で第1幅広部51aと連続している一方で、内端部で中間部54bと連続している。同様に、第2弾性部54cは、内端部で第2幅広部55と連続している一方で、外端部で中間部54bと連続している。
図7及び図8に示すとおり、コンタクト50は、第2弾性部54cと連続する第2幅広部55を有する。第2幅広部55は、第2弾性部54cの内端部の近傍において、第2弾性部54cと隣接するように形成されている。第2幅広部55は、第2インシュレータ30側に位置する。第2幅広部55は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝35内に位置する。第2幅広部55は、第2インシュレータ30に対して直接係止しておらず、後述する係止部58が第2インシュレータ30に対して係止することで支持される。
第2幅広部55は、第2インシュレータ30に沿ったコンタクト50の他の部分よりも、コンタクト50の配列方向と略直交する方向において第1インシュレータ20側に突出する。より具体的には、第2幅広部55は、後述する第3弾性部56、係止部58、及び弾性接触部59よりも前後方向において一段外側に突出する。第2幅広部55は、第3弾性部56、係止部58、及び弾性接触部59よりも前後方向に幅広である。同様に、第2幅広部55は、第2弾性部54cよりも幅広である。このように、第2幅広部55は、全体として第2弾性部54c、第3弾性部56、係止部58、及び弾性接触部59よりも断面積が大きく形成されている。これにより、第2幅広部55は、第2弾性部54c、第3弾性部56、係止部58、及び弾性接触部59よりも高い電気伝導性を有する。より具体的には第2幅広部55は、第2弾性部54c、第3弾性部56、係止部58、及び弾性接触部59よりも低い特性インピーダンスを有する。
コンタクト50は、第2幅広部55から上方に向けて延出し、第2インシュレータ30の内壁に沿って配置されている、弾性変形可能な第3弾性部56を有する。第3弾性部56は、弾性変形しない状態において嵌合方向に延在する。第3弾性部56は、全体にわたって、その内側に形成されている第2インシュレータ30の壁部36と対向する。コンタクト50は、第3弾性部56が弾性変形する際の屈曲点を構成するように、第3弾性部56の表面に形成されている切欠部57を有する。切欠部57は、第3弾性部56の前後方向の外面の略中央部において、その表面が切り取られた状態で形成されている。コンタクト50は、第3弾性部56の上方に連続して形成され、第2インシュレータ30に対して係止する係止部58を有する。係止部58は、第3弾性部56よりも幅広に形成されている。コンタクト50は、係止部58の上方に連続して形成され、嵌合の際に接続対象物60のコンタクト90と接触する弾性接触部59を有する。弾性接触部59は、コンタクト50において、例えば第2調整部54b2から第1調整部54b1と反対側に連続する部分の先端に形成されている。
図5乃至図7に示すとおり、第2幅広部55、第3弾性部56、切欠部57、及び係止部58は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝35に収容されている。第2幅広部55、第3弾性部56、及び係止部58は、略全体にわたって、その内側に形成されている第2インシュレータ30の壁部36と対向する。第2弾性部54cと第3弾性部56とを接続する第2幅広部55は、壁部36の下端部と対向する位置に配置されている。
第2幅広部55及び第3弾性部56の下半部は、第2インシュレータ30の前面及び後面の凹設部分として構成されるコンタクト取付溝35の下部に収容されている。第3弾性部56の上半部及び係止部58は、第2インシュレータ30の内部により構成されるコンタクト取付溝35の中央部に収容されている。切欠部57は、コンタクト取付溝35の下部と中央部との境界近傍に位置するように、第3弾性部56の表面に形成されている。
弾性接触部59は、第2インシュレータ30の嵌合凹部33の内面の凹設部分として構成されるコンタクト取付溝35の上部に略収容されている。弾性接触部59の先端は、コンタクト取付溝35から嵌合凹部33内に露出している。
図10は、コンタクト50の各構成部における特性インピーダンス変化の様子を示した模式図である。図10を参照しながら、第1幅広部51a及び第2幅広部55の機能について主に説明する。図10において、縦軸は特性インピーダンスの大きさを示す。横軸はコンタクト50における位置を示す。実線グラフは特性インピーダンスの実測値を示す。二点鎖線グラフは特性インピーダンスの理論値を示す。それぞれのグラフに対して太線及び細線の2つのグラフを示しているが、太線は、一実施形態に係るコンタクト50のように第1幅広部51a及び第2幅広部55が形成されている場合の特性インピーダンス変化を示す。一方で、細線は、例えば第1幅広部51a及び第2幅広部55が形成されていない仮の場合の特性インピーダンス変化を示す。破線グラフは特性インピーダンスの理想値を示す。初めに、一実施形態に係るコンタクト50の第1幅広部51a及び第2幅広部55の機能と比較するために、これらの構成部が形成されていない場合の特性インピーダンス変化について、細線のグラフを参照しながら説明する。
第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54c全体の特性インピーダンスは、中間部54bによって調整される。各構成部における特性インピーダンスは、理論的には、その幅、すなわち断面積に合わせて離散的に変化するが、実際には連続的に変化すると考えられる。コンタクト50では、大きな弾性変形量を得るために第1弾性部54aが幅狭に(断面積が狭く)形成されていることで、理想値に調整された特性インピーダンスが第1弾性部54aにおいて増大する。第1弾性部54aと連続して中間部54bを幅広に(断面積が大きく)形成することで、第1弾性部54aにおいて増大した特性インピーダンスが中間部54bにおいて意図的に理想値を下回るようにする。中間部54bと連続する第2弾性部54cが第1弾性部54aと同様に幅狭に(断面積が狭く)形成されていることで、理想値を下回っていた特性インピーダンスが第2弾性部54cにおいて再度理想値を上回る。このように、中間部54bは、第1弾性部54a及び第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加分を抑制して特性インピーダンスを全体にわたり理想値に近づける役割を果たす。
より具体的には、第2調整部54b2よりも幅広に形成されている第1調整部54b1により、中間部54bの上部において特性インピーダンスがさらに減少する。これにより、第1弾性部54aにおいて理想値から増大した特性インピーダンスが、意図的により早く理想値を下回るようにする。換言すると、第1弾性部54aにおける特性インピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。コンタクト50では、中間部54bの中央部、すなわち第2調整部54b2において特性インピーダンスを若干増加させる。このような設計により、第2調整部54b2における特性インピーダンスの過剰な低下、すなわち理想値と実測値との極度の乖離が抑制される。コンタクト50では、第1調整部54b1と同様に幅広に形成されている第3調整部54b3により、中間部54bの下部において特性インピーダンスがさらに減少する。これにより、中間部54bにおいて理想値を下回っている特性インピーダンスが、第2弾性部54cにおいて意図的により遅く理想値を上回るようにする。換言すると、第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。以上のように、中間部54bを3つの構成部に分けて特性インピーダンス、すなわち電気伝導性を調整することで、中間部54bは、第1弾性部54a及び第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加分を抑制して特性インピーダンスをより理想値に近づけることができる。
続いて、一実施形態に係るコンタクト50のように第1幅広部51a及び第2幅広部55が形成されている場合の特性インピーダンス変化について、細線のグラフと比較しながら太線のグラフに基づいて説明する。一実施形態に係るコンタクト50では、中間部54bの反対側で第1弾性部54aと隣接するように幅広な(断面積が大きい)第1幅広部51aが形成されている。これにより、第1弾性部54aに対して、中間部54b側と同様に、その反対側でも第1弾性部54aにおける特性インピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。結果として、第1弾性部54aにおける特性インピーダンスの増加幅が細線の場合と比較して全体的に抑制される。同様に、一実施形態に係るコンタクト50では、中間部54bの反対側で第2弾性部54cと隣接するように幅広な(断面積が大きい)第2幅広部55が形成されている。これにより、第2弾性部54cに対して、中間部54b側と同様に、その反対側でも第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。結果として、第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加幅が細線の場合と比較して全体的に抑制される。以上のように、第1幅広部51a及び第2幅広部55によって特性インピーダンスをさらに調整することで、これらの構成部は、第1弾性部54a及び第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加分を抑制して特性インピーダンスをさらに理想値に近づけることができる。
以上のような構造のコネクタ10では、回路基板CB1の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト50の実装部53がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具40aの実装部41a及び遮蔽部材40bの実装部46bがはんだ付けされる。以上により、コネクタ10は、回路基板CB1に対して実装される。回路基板CB1の実装面には、例えば、CPU、コントローラ、及びメモリ等を含むコネクタ10とは別の電子部品が実装される。
図11は、図3のコネクタ10と接続される接続対象物60を上面視により示した外観斜視図である。図12は、図11の接続対象物60の上面視による分解斜視図である。
図11及び図12を参照しながら、一実施形態に係るコネクタ10と接続される接続対象物60の構成について主に説明する。
図12に示すとおり、接続対象物60は、大きな構成要素として、インシュレータ70と、金具80aと、遮蔽部材80bと、コンタクト90と、を有する。接続対象物60は、インシュレータ70に対して下方からコンタクト90を圧入し、上方から金具80a及び遮蔽部材80bを圧入することで組み立てられる。
インシュレータ70は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、略四角柱状の部材である。インシュレータ70は、上面に形成されている嵌合凹部71を有する。インシュレータ70は、嵌合凹部71の内部に形成されている嵌合凸部72を有する。インシュレータ70は、嵌合凹部71の上縁部にわたって嵌合凹部71を囲むように形成されている誘い込み部73を有する。誘い込み部73は、嵌合凹部71の上縁部において上方に向けて斜め外方に傾斜する傾斜面を含む。インシュレータ70は、底部の左右両端部で外側に突設されている係合部74を有する。係合部74には、金具80aが取り付けられる。インシュレータ70は、左右両側面それぞれの上端部に凹設されている取付溝75を有する。取付溝75には、遮蔽部材80bが取り付けられる。
インシュレータ70は、底部の前側、その内部、及び嵌合凸部72の前面にわたって凹設されている複数のコンタクト取付溝76を有する。インシュレータ70は、底部の後側、その内部、及び嵌合凸部72の後面にわたって凹設されている複数のコンタクト取付溝76を有する。複数のコンタクト取付溝76は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝76は、嵌合凸部72の前後両面それぞれにおいて上下方向に沿って延設されている。複数のコンタクト取付溝76には、複数のコンタクト90がそれぞれ取り付けられる。
金具80aは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。図11にも示すとおり、金具80aは、係合部74に圧入され、インシュレータ70の左右両端部それぞれに配置されている。金具80aは、その下端部において、略L字状に外側に延出する実装部81aを有する。金具80aは、実装部81aと上方に連続して形成され、インシュレータ70に対して係止する係止部82aを有する。
遮蔽部材80bは、電気伝導性を有する任意の金属材料を用いて図12に示す形状に成形加工したものである。遮蔽部材80bは、金属製であってもよいし、樹脂材を含み表層に電気伝導性を有してもよい。遮蔽部材80bは、同一形状で一対形成されている。一対の遮蔽部材80bは、取付溝75に圧入され、インシュレータ70を前後左右方向から囲繞する。
遮蔽部材80bは、上下方向に幅を有し左右方向に直線的に延在する第1遮蔽部81bを有する。第1遮蔽部81bは、インシュレータ70の前後方向の外面の略全体を外側から覆う。遮蔽部材80bは、第1遮蔽部81bの左右両側縁部それぞれから屈曲しながら前後の内側方向に延出する第2遮蔽部82bを有する。第2遮蔽部82bは、前後方向に幅を有する。第2遮蔽部82bは、インシュレータ70の左右両側面それぞれの一部を外側から覆う。
遮蔽部材80bは、第2遮蔽部82bの上縁部から略逆U字状に内側に延出する係合部83bを有する。係合部83bがインシュレータ70の取付溝75に係合することで、遮蔽部材80bがインシュレータ70に対して固定される。遮蔽部材80bは、第1遮蔽部81bの下縁部の左右両端それぞれから略L字状に外側に延出する実装部84bを有する。遮蔽部材80bは、第1遮蔽部81bの外面が左右方向に沿って直線状に隆起することで形成されている隆起部85bを有する。
コンタクト90は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金、又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。コンタクト90の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
コンタクト90は、左右方向に沿って複数配列されている。コンタクト90は、略L字状に外側に延出する実装部91を有する。コンタクト90は、その上端に形成され、嵌合の際にコネクタ10のコンタクト50の弾性接触部59と接触する接触部92を有する。
以上のような構造の接続対象物60では、回路基板CB2の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト90の実装部91がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具80aの実装部81a及び遮蔽部材80bの実装部84bがはんだ付けされる。以上により、接続対象物60は、回路基板CB2に対して実装される。回路基板CB2の実装面には、例えば、カメラモジュール及びセンサ等を含む接続対象物60とは別の電子部品が実装される。
図13は、図1のXIII−XIII矢線に沿った断面図である。
図13を主に参照しながら、コネクタ10に対して接続対象物60を接続するときの、フローティング構造を有するコネクタ10の動作について説明する。
コネクタ10のコンタクト50は、第1インシュレータ20の内部で、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20と離間し、かつ、浮いた状態で、第2インシュレータ30を支持している。このとき、第2インシュレータ30の下部は、第1インシュレータ20の外周壁22によって囲繞される。嵌合凹部33を含む第2インシュレータ30の上部は、第1インシュレータ20の開口21aより上方に突出する。
コンタクト50の実装部53が回路基板CB1に対してはんだ付けされることで、第1インシュレータ20は、回路基板CB1に対して固定される。第2インシュレータ30は、コンタクト50の第1弾性部54a、第2弾性部54c、及び第3弾性部56が弾性変形することで、回路基板CB1に固定された第1インシュレータ20に対して相対的に移動可能となる。
このとき、第1インシュレータ20の開口21aの周縁部は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の前後左右方向への過剰な移動を規制する。第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく前後左右方向に移動すると、第2インシュレータ30の嵌合凸部32が開口21aの周縁部と接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上前後左右の外側に移動しない。
図2にも示すとおり、このようなフローティング構造を有するコネクタ10に対して接続対象物60の上下方向の向きを逆にした状態で、コネクタ10及び接続対象物60の前後位置及び左右位置を略一致させながら、互いを上下方向に対向させる。その後、接続対象物60を下方に移動させる。このとき、互いの位置が例えば前後左右方向に多少ずれていても、コネクタ10の誘い込み部34と接続対象物60の誘い込み部73とが接触する。その結果、コネクタ10のフローティング構造により第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して相対的に移動する。これにより、コネクタ10の嵌合凸部32が、接続対象物60の嵌合凹部71に誘い込まれる。
接続対象物60を下方にさらに移動させると、コネクタ10の嵌合凸部32と接続対象物60の嵌合凹部71とが嵌合する。このとき、コネクタ10の嵌合凹部33と接続対象物60の嵌合凸部72とが嵌合する。コネクタ10の第2インシュレータ30と接続対象物60のインシュレータ70とが嵌合した状態で、コネクタ10のコンタクト50と接続対象物60のコンタクト90とが互いに接触する。より具体的には、コンタクト50の弾性接触部59とコンタクト90の接触部92とが互いに接触する。このとき、コンタクト50の弾性接触部59の先端は、外側に向けて若干弾性変形し、コンタクト取付溝35の内部に向けて弾性変位する。
以上により、コネクタ10と接続対象物60とは、完全に接続される。このとき、コンタクト50及びコンタクト90を介して、回路基板CB1と回路基板CB2とが電気的に接続される。
この状態で、コンタクト50の一対の弾性接触部59は、接続対象物60の一対のコンタクト90を前後方向に沿った内側への弾性力により前後両側から挟持する。これにより生じる接続対象物60のコンタクト90への押圧力の反作用により、接続対象物60をコネクタ10から抜去する場合、第2インシュレータ30は、コンタクト50を介して抜去方向、すなわち上方向への力を受ける。これにより、仮に第2インシュレータ30が上方に移動したとしても、図4に示す、第1インシュレータ20に圧入された金具40aの抜止部43aが、第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。第1インシュレータ20に圧入された金具40aの抜止部43aは、第1インシュレータ20内部において、第2インシュレータ30の底部31の左右両端部の直上に位置する。したがって、第2インシュレータ30が上方に移動しようとすると、外方に突出した底部31の左右両端部が抜止部43aと接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上上方に移動しない。
図14は、一対のコンタクト50が弾性変形する第1例を示した模式図である。図15は、一対のコンタクト50が弾性変形する第2例を示した模式図である。
図14及び図15を参照しながら、一対のコンタクト50が弾性変形するときの各構成部の動作について、詳細に説明する。以下では説明の簡便のために、各図の右側に配置されているコンタクト50をコンタクト50aとし、各図の左側に配置されているコンタクト50をコンタクト50bとして説明する。図14及び図15において、コンタクト50a及び50bが弾性変形しない状態を二点鎖線によって示す。
図14では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって右方向に移動した場合を想定する。
第2インシュレータ30が右方向に移動すると、コンタクト50aの係止部58が第2インシュレータ30の壁部36によって右方向に押される。このとき、コンタクト50aの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として内側に撓む。コンタクト50aの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより内側に弾性変形する。第2インシュレータ30の壁部36と接触しているコンタクト50aの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50aの第2幅広部55は、その相対位置を内側に変化させる。
コンタクト50aの第3弾性部56が右方向に移動すると、第2弾性部54cが弾性変形しつつ、第2弾性部54cと中間部54bとの接続点も右方向に移動する。一方で、第1弾性部54aと中間部54bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が外側に屈曲し、中間部54bが上方から下方に向けて斜め右方向に傾斜する。
第2インシュレータ30が右方向に移動すると、コンタクト50bの係止部58が第2インシュレータ30の内壁によって右方向に押される。このとき、コンタクト50bの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として外側に撓む。コンタクト50bの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより外側に弾性変形する。コンタクト取付溝35の内壁と接触しているコンタクト50bの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50bの第2幅広部55は、その相対位置を外側に変化させる。
コンタクト50bの第3弾性部56が右方向に移動すると、第2弾性部54cが弾性変形しつつ、第2弾性部54cと中間部54bとの接続点も右方向に移動する。一方で、第1弾性部54aと中間部54bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が内側に屈曲し、中間部54bが上方から下方に向けて斜め右方向に傾斜する。
図15では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって左方向に移動した場合を想定する。
第2インシュレータ30が左方向に移動すると、コンタクト50aの係止部58が第2インシュレータ30の内壁によって左方向に押される。このとき、コンタクト50aの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として外側に撓む。コンタクト50aの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより外側に弾性変形する。コンタクト取付溝35の内壁と接触しているコンタクト50aの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50aの第2幅広部55は、その相対位置を外側に変化させる。
コンタクト50aの第3弾性部56が左方向に移動すると、第2弾性部54cが弾性変形しつつ、第2弾性部54cと中間部54bとの接続点も左方向に移動する。一方で、第1弾性部54aと中間部54bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が内側に屈曲し、中間部54bが上方から下方に向けて斜め左方向に傾斜する。
第2インシュレータ30が左方向に移動すると、コンタクト50bの係止部58が第2インシュレータ30の壁部36によって左方向に押される。このとき、コンタクト50bの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として内側に撓む。コンタクト50bの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより内側に弾性変形する。第2インシュレータ30の壁部36と接触しているコンタクト50bの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50bの第2幅広部55は、その相対位置を内側に変化させる。
コンタクト50bの第3弾性部56が左方向に移動すると、第2弾性部54cが弾性変形しつつ、第2弾性部54cと中間部54bとの接続点も左方向に移動する。一方で、第1弾性部54aと中間部54bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が外側に屈曲し、中間部54bが上方から下方に向けて斜め左方向に傾斜する。
以上のような一実施形態に係るコネクタ10では、信号伝送における伝送特性が向上する。コネクタ10では、コンタクト50が第1幅広部51a及び第2幅広部55を有することで、それぞれの伝送路の幅、すなわち伝送路の断面積に応じて特性インピーダンスが調整される。例えば、第1幅広部51a及び第2幅広部55は、コンタクト50の配列方向と略直交する方向に突出することで幅広に形成されている。これにより、コンタクト50の対応する部分における特性インピーダンスが理想値に近付く。すなわち、コネクタ10は、特性インピーダンスの整合をとることができる。したがって、コネクタ10では、大容量かつ高速伝送においても所望する伝送特性が得られる。第1幅広部51a及び第2幅広部55を有さない従来の電気コネクタと比較して伝送特性がより向上する。
各幅広部がコンタクト50の配列方向と略直交する方向に突出することで、コンタクト50の配列方向において、隣接するコンタクト50同士のピッチに影響を与えない。より具体的には、各幅広部がコンタクト50の配列方向に突出した場合、隣接するコンタクト50同士のピッチが大きくなる。しかし、各幅広部がコンタクト50の配列方向と略直交する方向に突出することで、コンタクト50の配列方向にコネクタ10が大型化しない。コネクタ10では、このような状態で所望する伝送特性が得られる。したがって、コネクタ10は、コンタクト50の配列方向に沿って小型化可能である。加えて、各幅広部が他方のインシュレータ側に突出することで、各幅広部は、中間部54bが弾性変位する領域内に納まる。したがって、コンタクト50の前後方向の幅が不必要に増大しない。これにより、コネクタ10は、コンタクト50の配列方向と略直交する方向に沿っても小型化可能である。
各幅広部がコンタクト50の配列方向と略直交する方向に突出するようにコンタクト50を設計することで、コンタクト50の全体形状が抜き加工のみによって形成可能である。これにより、コンタクト50の生産性が向上する。さらに、コンタクト50が複雑な形状で設計された場合であっても、コンタクト50の製造が容易である。したがって、所望する伝送特性に合わせた最適な形状を精度良く維持した状態でコンタクト50が製造可能である。このように、コンタクト50の生産性が向上し、結果、コネクタ10の生産性が向上する。
第1幅広部51a及び第2幅広部55が第1弾性部54a及び第2弾性部54cとそれぞれ連続して形成されていることで、幅狭に形成されている各弾性部に与える各幅広部の影響がより強調される。これにより、各弾性部の特性インピーダンスがより効果的に低下する。したがって、図10を参照しながら説明したとおり、各弾性部における特性インピーダンスの増加分が効果的に抑制される。
コンタクト50が第1調整部54b1、第2調整部54b2、及び第3調整部54b3を有することで、コンタクト50の対応する部分における特性インピーダンスが調整され、特性インピーダンスの理想値に近付くことができる。したがって、コネクタ10では、大容量かつ高速伝送においても所望する伝送特性がより容易に得られる。各調整部を有さない従来の電気コネクタと比較して伝送特性がより向上する。
コネクタ10は、以下で説明するように、上述した信号伝送における良好な伝送特性に加えて、良好なフローティング構造を実現できる。
コネクタ10は、コンタクト50が第2弾性部54cを有することで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の可動量をより大きくできる。より具体的には、第1弾性部54aの弾性変形に加えて、第2弾性部54cの弾性変形が生じることで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の可動量が増大する。
コネクタ10は、コンタクト50が第3弾性部56をさらに有することで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の可動量をより大きくできる。より具体的には、第1弾性部54a及び第2弾性部54cの弾性変形に加えて、第3弾性部56の弾性変形が生じることで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の可動量が増大する。逆に言うと、コネクタ10は、所定の可動量を得るために必要となるコンタクト50の弾性変形量の一部を第3弾性部56にも割り当てることができるので、第1弾性部54a及び第2弾性部54cの弾性変形量を低減できる。これにより、第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cの全長が短くなり、コネクタ10の前後方向の幅が短縮される。したがって、コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保しつつ、小型化に寄与できる。
第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cの全長が短くなることで、コネクタ10では、伝送特性がさらに向上する。コネクタ10は、信号伝送路が短くなることで、高周波信号であっても伝送損失を低減させた状態で伝送できる。
第2インシュレータ30が第2幅広部55と対向する位置に壁部36を有することで、図7の前後方向に対称的に配置されている一対のコンタクト50同士の接触が抑制される。上述のとおり、第2弾性部54cと第3弾性部56とを接続する第2幅広部55は、第2弾性部54c及び第3弾性部56の弾性変形に伴って、例えば図7の前後方向に沿って移動する。このとき、仮に第2インシュレータ30に壁部36が形成されていないとすると、それぞれの弾性変形状態に応じて、前後一対のコンタクト50の第2幅広部55同士が接触する可能性もある。壁部36の形成により、このような第2幅広部55同士の接触が抑制され、短絡等の電気的に引き起こされる不具合及び破損等の力学的に引き起こされる不具合が抑制される。別言すると、コネクタ10は、壁部36の形成により、第3弾性部56の過剰な弾性変形を規制できる。第2弾性部54c及び第3弾性部56の弾性変形に伴って第2幅広部55が移動するような状況であっても、コネクタ10の製品としての信頼性が維持される。
コネクタ10では、第1調整部54b1が前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段外側に突出し、第3調整部54b3が前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段内側に突出する。このような形成方法により、図14及び図15に示すとおり、コンタクト50が弾性変形した場合であっても、第1調整部54b1及び第3調整部54b3のいずれも、コンタクト50の他の部分及び第2インシュレータ30に接触しない。したがって、コネクタ10は、第1調整部54b1及び第3調整部54b3の突出部分がコンタクト50の弾性変形の妨げになることなく、円滑な第2インシュレータ30の移動を実現して、良好なフローティング構造に寄与できる。
コネクタ10は、第1弾性部54a及び第2弾性部54cが中間部54bにおいて嵌合方向の両端側からそれぞれ延出することで、必要とされる中間部54bの可動量を確保できる。したがって、コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保できる。コネクタ10は、第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cが略クランク状に一体的に形成されていることで、上記の効果を奏しつつ図7における前後方向の幅の短縮化にも寄与できる。例えば、第1弾性部54aが中間部54bの上縁部における内側の端部から延出し、第2弾性部54cが中間部54bの下縁部における外側の端部から延出する。これにより、コネクタ10全体の前後方向の幅が短縮される。加えて、第1インシュレータ20内の限られた領域で第1弾性部54a及び第2弾性部54cの弾性変形する部分を長くすることができ、良好なフローティング構造が得られる。
第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cが嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されていることで、第2弾性部54cと接続されている第2幅広部55が最下方に配置されている。これにより、第3弾性部56が延伸し、より大きく弾性変形することができる。結果として、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の可動量が増大する。
コネクタ10は、コンタクト50が切欠部57を有することで、第2インシュレータ30が移動した際に、第2インシュレータ30の内壁と接触する係止部58に加わる力を抑制させることができる。同様に、コネクタ10は、コンタクト取付溝35の上部に位置する弾性接触部59に加わる力を抑制させることができる。コネクタ10は、切欠部57近傍よりも下側において、第3弾性部56を撓ませることができる。より具体的には、コネクタ10では、第3弾性部56において、係止部58の下端部から切欠部57近傍に至るまでの上半部よりも、下半部の弾性変形量がより大きくなる。以上により、係止部58の第2インシュレータ30に対する係止及び弾性接触部59の接触部92に対する接触が安定した状態で、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動に第3弾性部56が寄与できる。
コンタクト50が弾性係数の小さい金属材料によって形成されていることで、コネクタ10は、第2インシュレータ30にかかる力が小さい場合であっても、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保できる。すなわち、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20に対して滑らかに移動することができる。これにより、コネクタ10は、接続対象物60と嵌合する際の位置ずれを容易に吸収できる。コネクタ10では、何らかの外的要因によって発生する振動をコンタクト50の各弾性部が吸収する。これにより、実装部53に大きな力が加わる可能性が抑制される。したがって、回路基板CB1との接続部分の破損が抑制される。すなわち、回路基板CB1と実装部53との接続部分のはんだにクラックが入ることを抑制できる。したがって、コネクタ10と接続対象物60とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
コンタクト50が幅広に形成された第2幅広部55を有することで、コネクタ10の組立性が向上する。第2幅広部55が幅広に形成されていることによって、当該部分の剛性が高まる。これにより、コンタクト50は、第2幅広部55を支点として、組立装置等により第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の下方から安定して挿入される。
金具40aが第1インシュレータ20に圧入されて、実装部41aが回路基板CB1にはんだ付けされることで、金具40aは、第1インシュレータ20を回路基板CB1に対して安定して固定できる。金具40aにより、回路基板CB1に対する第1インシュレータ20の実装強度が向上する。
遮蔽部材40bが第1インシュレータ20に取り付けられることで、コネクタ10の前後左右方向における強度が増大する。遮蔽部材40bが隆起部47bを有することで、遮蔽部材40b自体の剛性が高まり、結果として、コネクタ10の前後左右方向における強度も増大する。
遮蔽部材40bが第1インシュレータ20に取り付けられることで、コネクタ10の前後左右方向における外部からのノイズによる電気的な悪影響が抑制される。例えば、コネクタ10に対して外部から流入する磁気等のノイズが低減することで、コンタクト50によって伝送される大容量高速の信号に対する電気的な悪影響が抑制される。逆に、コネクタ10から外部に流出する磁気等のノイズが低減することで、コンタクト50によって伝送される信号が及ぼす、コネクタ10周辺に搭載されている電子部品への電気的な悪影響が抑制される。例えば、コネクタ10周辺の電子部品の誤作動が抑制される。
本発明は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。発明の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
上述したコネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、金具40a、遮蔽部材40b、及びコンタクト50の少なくとも1つは、圧入ではなくインサート成形によって第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の少なくとも一方と一体的に成形されてもよい。
第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に沿って第1幅広部51a及び第2幅広部55がそれぞれ形成されているとして説明したが、これに限定されない。コネクタ10の伝送特性が維持されるのであれば、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の少なくとも一方に沿って対応する幅広部が形成されていればよい。
中間部54bにおいて、伝送路の幅、すなわち伝送路の断面積が増大して特性インピーダンスが低下することで電気伝導性が向上するとして説明したが、電気伝導性が向上する中間部54bの構成はこれに限定されない。中間部54bは、電気伝導性が向上する任意の構成を有してもよい。例えば、中間部54bは、幅が同一のまま第1弾性部54aよりも厚く形成されていてもよい。例えば、中間部54bは、断面積が同一のまま第1弾性部54aよりも電気伝導性の高い材料によって形成されていてもよい。例えば、中間部54bは、第1弾性部54aと断面積が同一のまま表面に電気伝導性を向上させるめっきを有してもよい。
中間部54bでは、嵌合側から順に第1調整部54b1、第2調整部54b2、及び第3調整部54b3の断面積を変化させて電気伝導性を調整するとして説明したが、中間部54bの構成はこれに限定されない。中間部54bは、嵌後側から順に電気伝導性が高い、低い、及び高い構成部を含む任意の構成を有してもよい。例えば、中間部54bでは、上記のとおり、幅、厚さ、断面積、材料、及びめっきの種類の少なくとも1つを変化させることで電気伝導性が調整されてもよい。
図16Aは、コンタクト50の中間部54bの形状の第1例を示す模式図である。図16Bは、コンタクト50の中間部54bの形状の第2例を示す模式図である。図16Cは、コンタクト50の中間部54bの形状の第3例を示す模式図である。図16Dは、コンタクト50の中間部54bの形状の第4例を示す模式図である。
中間部54bの形状は、図9に示すような形状に限定されない。中間部54bは、上述した機能を実現できる任意の形状を有してもよい。例えば、中間部54bは、図16A乃至図16Dに示すような形状を有してもよい。図16Aを参照すると、中間部54bにおいて、第1調整部54b1が第2調整部54b2から上方に突出し、第3調整部54b3が第2調整部54b2から下方に突出する。図16Bを参照すると、中間部54bにおいて、第1調整部54b1は、第2調整部54b2から上方に突出し、かつ前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段外側に突出する。第3調整部54b3は、第2調整部54b2から下方に突出し、かつ前後方向に沿って第2調整部54b2よりも一段内側に突出する。図16Cを参照すると、中間部54bは全体として矩形状に形成され、その中央部に開口を有する。図16Dを参照すると、中間部54bは、第1調整部54b1から第2調整部54b2に向かうにつれ先細りとなり、第2調整部54b2から第3調整部54b3に向かうにつれ先太りとなるように形成されている。
中間部54bは、第1弾性部54a及び第2弾性部54cが弾性変形しない状態において接続対象物60との嵌合方向に延在し、第1弾性部54a及び第2弾性部54cは中間部54bにおいて、嵌合方向の両端側からそれぞれ延出するとして説明した。これに限定されず、第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cの全体形状は、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、任意の形状であってよい。例えば、中間部54bは、嵌合方向からずれた状態で延在してもよい。例えば、第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、中間部54bにおいて、図7の前後方向の両端側からそれぞれ延出してもよい。例えば、第1弾性部54a及び第2弾性部54cの形状は、任意であってよく、それぞれがより多くの屈曲部を有してもよい。例えば、第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cの全体形状は、略クランク状ではなく、略U字状であってもよい。
図8に示すとおり、第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cは、嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されているとして説明したが、これに限定されない。第1弾性部54a、中間部54b、及び第2弾性部54cは、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、逆側から順に配置されてもよい。
第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、基部51よりも幅狭に形成されているとして説明したがこれに限定されない。第1弾性部54a及び第2弾性部54cは、必要とされる弾性変形量を確保できる任意の構成を有してもよい。例えば、第1弾性部54a又は第2弾性部54cは、コンタクト50の他の部分よりも弾性係数のさらに小さい金属材料によって形成されていてもよい。
コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の可動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、第2弾性部54c及び第3弾性部56を有さなくてもよい。
壁部36は、嵌合凹部33の底面から下方に向けて内部で延在するとして説明したがこれに限定されない。壁部36は、一対のコンタクト50同士の接触を抑制できるのであれば、例えば、第2幅広部55と対向する位置にのみ形成されていてもよい。
コネクタ10は、係止部58の係止及び弾性接触部59の接触が安定した状態で第3弾性部56が第2インシュレータ30の移動に寄与できるのであれば、切欠部57を有さなくてもよい。
コンタクト50は、弾性係数の小さい金属材料によって形成されているとして説明したが、これに限定されない。コンタクト50は、必要とされる弾性変形量を確保できるのであれば、任意の弾性係数を有する金属材料によって形成されていてもよい。
コンタクト50は、凹部及び凸部を含む凹凸部51bを有するとして説明したが、これに限定されない。コンタクト50は、凹凸部51bに代えて凸部のみを有してもよい。
図17は、第1変形例に係るコンタクト50の断面形状を示した図7に対応する断面図である。図18は、第2変形例に係るコンタクト50の一部を拡大した図9に対応する拡大図である。
図17を参照すると、コンタクト50の第2幅広部55は、第2インシュレータ30に沿ったコンタクト50の他の部分よりも、コンタクト50の配列方向と略直交する方向において第2インシュレータ30側にさらに突出してもよい。より具体的には、第2幅広部55は、上下方向の広範な領域にわたって、第3弾性部56よりも前後方向において内側にさらに突出してもよい。
これにより、第2幅広部55が前後方向にさらに幅広となり、第2弾性部54cの特性インピーダンスがより効果的に低下する。したがって、図10を参照しながら説明したとおり、第2弾性部54cにおける特性インピーダンスの増加分がより効果的に抑制される。加えて、第2幅広部55がさらに幅広となることでその強度が向上し、製品の組立が容易になる。例えば、第2幅広部55を支点として組立装置等により第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の下方からコンタクト50が挿入される場合、第2幅広部55の強度が向上することで安定した挿入が実現される。したがって、コネクタ10を組み立てる際の作業性が向上する。
図18を参照すると、図17の第2幅広部55の構成に加えて、コンタクト50の第1幅広部51aは、第1インシュレータ20に沿ったコンタクト50の他の部分よりも、コンタクト50の配列方向と略直交する方向において第1インシュレータ20側にさらに突出してもよい。より具体的には、第1幅広部51aは、基部51の他の部分よりも前後方向において一段外側にさらに突出してもよい。
これにより、第1幅広部51aが前後方向にさらに幅広となり、第1弾性部54aの特性インピーダンスがより効果的に低下する。したがって、図10を参照しながら説明したとおり、第1弾性部54aにおける特性インピーダンスの増加分がより効果的に抑制される。
以上のように、第1幅広部51a及び第2幅広部55の少なくとも一方は、図17及び図18に例示したように、各幅広部が位置するインシュレータ側にさらに突出してもよい。
コンタクト50の凹凸部51bは、上述した構成に限定されない。凹凸部51bは、コンタクト50の左右方向に沿ったねじれを抑制できる任意の構成を有してもよい。例えば、図18に示すとおり、凹凸部51bは、第1幅広部51aの表面の一部を前後上下方向に4つの領域に分割して、前後方向及び上下方向それぞれにおいて隣接する領域同士で凹部と凸部とが互い違いになるように形成されていてもよい。
接続対象物60は、回路基板CB2に接続されるプラグコネクタであるとして説明したが、これに限定されない。接続対象物60は、コネクタ以外の任意の対象物であってもよい。例えば、接続対象物60は、FPC、フレキシブルフラットケーブル、リジッド基板、又は任意の回路基板のカードエッジ等であってもよい。
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ、及びエンジンコントロールユニット等の任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム、及びセキュリティシステム等の車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、及び複合機等の任意の情報機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。
このような電子機器は、信号伝送における良好な伝送特性を有する。コネクタ10の良好なフローティング構造により回路基板間の位置ずれが吸収されるので、電子機器の組み立ての際の作業性が向上する。すなわち、電子機器の製造が容易になる。コネクタ10により回路基板CB1との接続部分の破損が抑制されるので、電子機器の製品としての信頼性が向上する。