JP6598344B2 - 環状ペプチドをタンパク質構造に提示させる超汎用法 - Google Patents

環状ペプチドをタンパク質構造に提示させる超汎用法 Download PDF

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Description

本発明は、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に提示する方法等に関する。
タンパク質の活性を向上させることを目的として、タンパク質のアミノ酸残基を改変するか、タンパク質に別のペプチド構造を導入する技術が知られている。
特許文献1には、生物活性を上昇させた、生物活性異種ペプチド配列を内部に挿入して有する血清アルブミンタンパク質を含んで成るキメラポリペプチドが開示されている。
特許文献2には、FnIIIベースポリペプチドの少なくとも1つのループ領域の改変に加えて、FnIIIポリペプチドのβシートの改変が、FnIIIベース結合分子とターゲット分子との結合能力を改善することが開示されている。
また、特許文献3には、1個以上の生物活性ペプチドを抗体タンパク質のFcドメインに組み込んだ分子が開示されているが、具体的には、Fcドメインのループ領域における隣接したアミノ酸残基に対して生物活性ペプチドが挿入されている。
特許文献4には、特許文献3同様に、修飾されたFc分子が記載されているが、抱合部位のアミノ酸残基の側鎖を通じて共有結合された付加機能部分を有するFc分子が開示され、具体的には、抱合部位のアミノ酸残基がシステイン残基であることが開示されている。
加えて、特許文献5及び6には、免疫グロブリンの構造ループを1カ所以上改変して新たな結合能を免疫ブロブリンに賦与する技術が開示されている。
特許文献2においては、FnIIIのループ構造部分にランダム化したペプチド配列を挿入したライブラリーから標的への結合活性種を獲得している。
また、特許文献5及び6においても、既得のペプチドを挿入するのではなく、ランダム化したペプチド配列を免疫グロブリンの特定の構造ループの1カ所に挿入し、そのライブラリーから標的への結合活性を有する活性種をスクリーニングしている。
すなわち、これらの従来技術においては、単なるランダム化されたペプチドが挿入されたライブラリーを得ているに過ぎず、ライブラリーのスクリーニングにより、挿入されたことが同定されたペプチド部分について、それらペプチド単独で標的への結合活性を維持できるか不明である。言い換えれば、挿入されたペプチドは、ライブラリー化するために挿入されている配列であって、そもそも結合活性を有することが期待されていない。また、タンパク質の互換性、例えば免疫グロブリンで提示されているペプチドをFnIIIに再挿入しても元の活性を維持できるか不明である。
特表2005−505243号公報 特表2013−539362号公報 特表2008−514201号公報 特表2009−504164号公報 特表2009−541361号公報 特表2009−540837号公報
本発明が解決しようとする課題は、ループ構造を有するタンパク質を足場として、環状ペプチドが有する構造と活性を保持させた状態で、環状ペプチドを、タンパク質上に提示する方法を提供することである。
本発明は、以下のとおりである。
(1)
環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に提示する方法であって、
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えることにより、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させることを含む、方法。
(2)
ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が、4〜7Åの範囲内にある、(1)に記載の方法。
(3)
ループ構造を有するタンパク質が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基の間に1〜15アミノ酸残基を有する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)
環状ペプチドが、タンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸からなる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)
化学架橋構造が、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
2以上の環状ペプチドが、複数のループ構造を有するタンパク質の異なるループ構造にそれぞれ融合する、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)
2以上の環状ペプチドが、同一のアミノ酸配列を有する、(6)に記載の方法。
(8)
2以上の環状ペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する、(6)に記載の方法。
(9)
環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える際に、リンカー配列を介して環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)
ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んで、環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)
環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させて環状ペプチドをタンパク質上に提示させた改変タンパク質の製造方法であって、
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
環状ペプチドのアミノ酸配列から、タンパク質上に提示させる部分アミノ酸配列を選択し、該部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を選択し、
ループ構造を有するタンパク質のループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に相当する塩基配列を選択し、該選択された塩基配列間に存在する塩基を必要に応じて削除し、選択された環状ペプチドの部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を挿入して組み込んだ塩基配列を有する核酸を準備し、
該核酸を翻訳する、改変タンパク質の製造方法。
(12)
ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が、4〜7Åの範囲内にある、(11)に記載の方法。
(13)
ループ構造を有するタンパク質が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基の間に1〜15アミノ酸残基を有する、(11)又は(12)に記載の方法。
(14)
環状ペプチドが、タンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸からなる、(11)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)
化学架橋構造が、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を含む、(11)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)
2以上の環状ペプチドが、複数のループ構造を有するタンパク質の異なるループ構造にそれぞれ融合する、(11)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17)
2以上の環状ペプチドが、同一のアミノ酸配列を有する、(16)に記載の方法。
(18)
2以上の環状ペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する、(16)に記載の方法。
(19)
環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える際に、リンカー配列を介して環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、(11)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)
ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んで、環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、(11)〜(19)のいずれかに記載の方法。
(21)
(11)〜(20)のいずれかに記載の製造方法により得られる改変タンパク質。
本発明によれば、ループ構造を有するタンパク質を足場として、環状ペプチドが有する構造と活性を保持させた状態で、環状ペプチドを、タンパク質上に提示する方法を提供することができる。
実施例で用いた環状ペプチドの構造を示す。環状ペプチドを示す一般式において、SはCysのチオール基に由来する硫黄原子を意味する。Xaaは任意のアミノ酸を示し、sは任意の0以上の整数である。Variable region(可変領域)は、一文字標記により、環状ペプチドの内部構造を構成するアミノ酸配列を示し、小文字で示したアミノ酸(w、yなど)はそれぞれ、D体のアミノ酸(D−Trp、D−Tyr)を示す。 足場タンパク質として用いたフィブロネクチンの第10Type IIIリピートドメインの立体構造を示す。第10Type IIIリピートドメインにおけるループ構造は、Val1490をBNとし、Ser1499をBCとして、その間の8アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒトフィブロネクチンの第10Type IIIリピートドメインを用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。Val1490(BN)とSer1499(BC)の間の配列が挿入配列を示す。挿入配列中、TGRとSPAは、ヒトフィブロネクチンの第10Type IIIリピートドメインに由来するアミノ酸配列を示し、下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 Expi293F細胞から発現・分泌させたFn10−Fc及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。 環状ペプチド融合タンパク質(Fn10−Fc変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒトIgG由来Fc領域の立体構造を示す。ヒトIgG由来Fc領域におけるループ構造は、それぞれ、L1サイト〜L8サイトとして示すとおり、各サイトにおいて、BNとして示されるアミノ酸残基と、BCとして示されるアミノ酸残基と、その間にそれぞれ存在する1〜3アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒトIgG由来Fc領域を用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。Fc領域のヒンジ領域に近い「上部」のL1〜L3サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL1〜L3サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 足場タンパク質として、ヒトIgG由来Fc領域を用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。Fc領域の「底部」のL4〜L6サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL4〜L6サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 足場タンパク質として、ヒトIgG由来Fc領域を用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。Fc領域の「側面部」のL7〜L8サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL7〜L8サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 Expi293F細胞から発現・分泌させたFc及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。 環状ペプチド融合タンパク質(Fc変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒトIgG全体の立体構造を示す。融合に用いるFc領域におけるループ構造は図6〜図9に示したL1サイト〜L8サイトであるが、ここではそれぞれの位置を、図6においてBN、BCとして示したアミノ酸残基の中間点として表現した。 図13Aは、Expi293F細胞から発現・分泌させたIgG及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。図13Bは、環状ペプチド融合タンパク質(IgG変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒト血清アルブミンの立体構造を示す。ヒト血清アルブミンにおけるループ構造は、それぞれ、L1〜L4サイトとして示すとおり、各サイトにおいて、BNとして示されるアミノ酸残基と、BCとして示されるアミノ酸残基と、その間にそれぞれ存在する2又は4アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒト血清アルブミンを用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。L1〜L4サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL1〜L4サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 Expi293F細胞から発現・分泌させたHSA及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。 環状ペプチド融合タンパク質(HSA変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒト成長ホルモンの立体構造を示す。ヒト成長ホルモンにおけるループ構造は、それぞれ、L1〜L2サイトとして示すとおり、各サイトにおいて、BNとして示されるアミノ酸残基と、BCとして示されるアミノ酸残基と、その間にそれぞれ存在する1アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒト成長ホルモンを用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。L1〜L2サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL1〜L2サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 図20Aは、Expi293F細胞から発現・分泌させたhGH及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。図20Bは、環状ペプチド融合タンパク質(hGH変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒト血清レチノール結合タンパク質の立体構造を示す。ヒト血清レチノール結合タンパク質におけるループ構造は、それぞれ、L1〜L2サイトとして示すとおり、各サイトにおいて、BNとして示されるアミノ酸残基と、BCとして示されるアミノ酸残基と、その間にそれぞれ存在する2アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒト血清レチノール結合タンパク質を用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。L1〜L2サイトにおける環状ペプチドが融合した融合タンパク質をそれぞれL1〜L2サイト変異体として示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 図23Aは、Expi293F細胞から発現・分泌させたヒト血清レチノール結合タンパク質(RBP)及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。図23Bは、環状ペプチド融合タンパク質(RBP変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 足場タンパク質として用いたヒト胎盤アルカリフォスファターゼの立体構造を示す。ヒト胎盤アルカリフォスファターゼにおけるループ構造は、各サイトにおいて、Lys402をBNとし、Gly404をBCとして、その間の1アミノ酸残基のループ領域とからなる。 足場タンパク質として、ヒト胎盤アルカリフォスファターゼを用いた場合の融合タンパク質における部分構造である、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を示す。下線部分は環状ペプチドに由来するアミノ酸配列を示し、灰色文字はリンカー配列を示す。 Expi293F細胞から発現・分泌させたヒト胎盤アルカリフォスファターゼ(PLAP)及びその環状ペプチド融合タンパク質のSDS−PAGEを示す。 環状ペプチド融合タンパク質(PLAP変異体)と結合分子との相互作用結果を示す。 mP6−9ペプチド融合タンパク質(Fc変異体)によるプレキシンB1シグナル伝達の阻害効果を示す。
本発明を、発明を実施するための形態により具体的に説明するが、本発明は、以下の発明を実施するための形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
本発明は、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に提示する方法であって、
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えることにより、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させることを含む、方法である。
本発明によれば、ループ構造を有するタンパク質を足場として、環状ペプチドが有する構造と活性を保持させた状態で、環状ペプチドを、タンパク質上に提示することができる。また、環状ペプチドを、タンパク質上に提示することにより、環状ペプチドは、タンパク質を足場とすることにより、生体適合性が増す、また、タンパク質が有する機能を環状ペプチドに賦与することができるといった利点がある。
本発明においては、環状ペプチドは、その部分構造がタンパク質のループ構造と置き換わる形式で、タンパク質上に提示される。また、好適には、環状ペプチドのループ構造と置き換わる部分構造が、活性、より具体的には、生理活性を示すための構造である。また、構造面からは、好適には、環状ペプチドのループ構造と置き換わる部分構造が、環状ペプチドの分子内環状構造を構成しているアミノ酸配列から選択される。
本発明により、環状ペプチドと、タンパク質に限定を加えることなく、環状ペプチドをタンパク質構造に、すなわち、タンパク質上に提示させる超汎用法を提供することができる。
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有しているように、化学架橋構造により環状構造を有するペプチドであるが、化学架橋構造を、タンパク質のループ構造に代替することにより、すなわち、ペプチドを環状化するにあたってこれまで使ってきた化学架橋構造にかわり、さも一分子と捉えたタンパク質を用いるという技術思想を有する点に、本発明は特徴を有する。
とはいえ、環状ペプチドとループ構造を有するタンパク質とを融合させた改変タンパク質におけるアミノ酸配列の一次構造自体は環状化しているものではない。そして、改変タンパク質における環状ペプチドに由来する構造が、見かけ上、もともと存在していた環状ペプチドにおける環状構造とは全体でみると異なる形状でありながら、局所的にはペプチドの3次元構造は維持され、かつ、環状ペプチドの活性を維持できるものである。
本発明の効果として、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に、環状ペプチドの構造を保持させた状態で提示することは、間接的に、ループ構造を有するタンパク質上に環状ペプチドを融合させた改変タンパク質における環状ペプチドが本来有する活性を保持していることにより確認することができる。すなわち、本発明においては、環状ペプチドが有する活性が、改変タンパク質においても発揮されることで、ループ構造を有するタンパク質上に、環状タンパク質は、その構造を保持させた状態で提示されていると考えることができる。なお、本発明においては、環状ペプチドが構造を保持していることを、改変タンパク質の構造情報を取得することにより確認してもよい。
ループ構造を有するタンパク質としては、特に限定されるものではないが、以下のタンパク質として例示できる。以下、これらを「足場タンパク質」という場合がある。
足場タンパク質としては、特に限定されるものではないが、例えば、イムノグロブリン、フィブロネクチン、アルブミン、ヒト成長ホルモン、アルカリフォスファターゼ、レチノール結合タンパク質、ユテログロビン、フィブリノーゲン、血液凝固因子、トランスフェリン、Cas9を含むゲノム編集酵素、Gタンパク質共役型受容体、サイトカイン受容体、成長因子受容体、インテグリン、カドヘリン、トランスフェリン受容体、免疫受容体、ウイルスエンベロープタンパク質及びウイルスキャプシドタンパク質等が挙げられる。
足場タンパク質としては、部分断片タンパク質であってよく、上記例示しているタンパク質の部分断片タンパク質が例示される。
足場タンパク質は、ループ構造を有するのであれば、全長タンパク質における一部分の構造として、ループ構造を含む部分断片を用いてもよい。
また、足場タンパク質としては、ループ構造を有するタンパク質又はそのループ構造を有する部分断片タンパク質に、さらに別のタンパク質が融合していてもよい。
上記例示した足場タンパク質は、その二次構造において、ループ構造を有する。
ループ構造としては、特に限定されるものではないが、αヘリックス及び/又はβシートを連結するポリぺプチド鎖領域であって、折れ曲がり構造を有する構造を意味する。
本発明においては、上記例示した各足場タンパク質に存在するループ構造を用いることができる。
本発明においては、足場タンパク質のループ構造内に、環状ペプチドを挿入して、環状ペプチドと足場タンパク質とを融合させるが、当該融合は、共有結合による融合であることが好ましい。
環状ペプチドと共有結合させるループ構造としては、特に限定されるものではなく、上記例示した足場タンパク質に存在するループ構造であってよい。
ループ構造中、どの部位に環状ペプチドを挿入するかは、特に限定されるものではなく、汎用性をもってループ構造中の任意の部位に環状ペプチドを挿入してよい。
ループ構造における任意の部位とは、環状ペプチドを挿入するための2つのアミノ酸残基が、ループ構造内から選択される部位であることを意味する。
ループ構造内の2つのアミノ酸残基は、ループ構造において、2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が4〜7Åで存在し、しかもどちらも少なくとも部分的にはタンパク質表面に露出している2つのアミノ酸残基であることが好ましい。
2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が4〜7Åにあることにより、足場タンパク質に融合された環状ペプチドは、元の環状ペプチドにおける構造を改変ペプチドにおいても維持しやすいこととなる。
2つのアミノ酸残基のCα原子間距離は、立体構造が明らかな足場タンパク質の構造データから確認することができる。足場タンパク質の立体構造が明らかで無い場合でも、その相似タンパク質(ホモログ)の構造情報から構築したモデル構造があれば、上記2アミノ酸残基間の距離は見積もることができる。
ループ構造内において環状ペプチドと融合するために選択される2つのアミノ酸残基は、ループ構造内に存在する隣接するアミノ酸残基であってもよいが、2つのアミノ酸残基が隣接しないアミノ酸残基同士であることが好ましい。2つのアミノ酸残基が隣接しないとは、2つのアミノ酸残基が、タンパク質のループ構造におけるアミノ酸一次配列において、不連続なアミノ酸残基であることと同義である。
例えば、タンパク質の結晶構造において、2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が4〜7Åであるような配置の2つのアミノ酸残基を選択する場合、足場タンパク質において、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基の間に1〜15アミノ酸残基存在していてもよい。2つのアミノ酸残基の間に1〜15アミノ酸残基存在しているとは、2つのアミノ酸残基が、タンパク質のループ構造におけるアミノ酸一次配列において、1〜15アミノ酸残基を介して存在していることと同義である。
2つのアミノ酸残基の間の1〜15アミノ酸残基部分は、ループ構造を形成するアミノ酸残基であることが好ましい。
本発明の環状ペプチドをループ構造を有するタンパク質上に提示する方法においては、環状ペプチドは、ループ構造を有するタンパク質を足場として、該足場タンパク質上に提示されるが、好適には、ループ構造が環状ペプチドに置き換わることにより、タンパク質の構造及び環状ペプチドの構造が保持される。
ループ構造から、2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が4〜7Åとなるように環状ペプチドと結合させる2つのアミノ酸残基を選択することにより、タンパク質の本来有する構造を維持することができると共に、環状ペプチドの活性を保持することができる。
本発明において、環状ペプチドが、その活性を保持しているとは、ループ構造を有するタンパク質に融合させる環状ペプチドは、何らかの生理活性を有する化合物として知られていることが好ましく、環状ペプチドとして有する生理活性が、環状ペプチドをタンパク質に融合させた後も、当該生理活性を保持していることを意味する。
なお、その場合に、生理活性の程度は、タンパク質に融合させた前後で、異なる活性値/阻害値を示してもよい。
本発明において、「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」とは以下の意味で用いる。
ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えるとは、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基において、環状ペプチドの化学架橋構造以外の構造が結合していてもよく、環状ペプチドの化学架橋構造を除いて、さらに環状ペプチドの環状構造を構成する1又は複数のアミノ酸を除いた部分アミノ酸配列が結合していてもよい。
すなわち、部分アミノ酸配列が結合しているとは、環状ペプチドにおける活性、より具体的には、生理活性を示すための構造を含む部分構造が結合していればよい。
また、環状ペプチドを構成するアミノ酸は、以下に示すとおり、タンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸であり得、一部に非タンパク質性アミノ酸を含む環状ペプチドであることが好適であるが、環状ペプチドが非タンパク質性アミノ酸を含む場合、環状ぺプチドが融合された改変タンパク質においては、環状ペプチドに由来する非タンパク質性アミノ酸は、タンパク質性アミノ酸に置換されていることが好ましい。
環状ペプチドを構成するタンパク質性アミノ酸は、足場タンパク質と融合させる際に、そのままのアミノ酸として融合させることが好ましいが、他のタンパク質性アミノ酸に置換して融合してもよい。
また、融合させる環状ペプチドのアミノ酸配列は、元の環状ペプチドのアミノ酸配列と同一であってもよく、1又は複数のアミノ酸を置換、欠失又は挿入した配列であってもよい。
本発明において、1又は複数のアミノ酸という場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9あるいは10個のアミノ酸であってもよく、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2あるいは1個のアミノ酸であってよい。
本発明において、「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、環状ペプチドの化学架橋構造が、リンカー配列を介してループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられていてよい。
リンカー配列を介して置き換えられる場合、環状ペプチドが融合された改変タンパク質においては、N末端側においては、ループ構造に由来するアミノ酸配列、リンカー配列、環状ペプチドに由来するアミノ酸配列という順序で融合し、C末端側においては、環状ペプチドに由来するアミノ酸配列、リンカー配列、ループ構造に由来するアミノ酸配列という順序で融合している。
N末端側、C末端側双方でリンカー配列を有していてもよく、N末端側及びC末端側の一方でリンカー配列を有していてもよい。
リンカー配列としては、特に限定されるものではないが、1又は複数のSer、Gly及びCysからなる配列が挙げられ、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2あるいは1個のSer、Gly及びCysからなる配列が挙げられる。リンカー配列としては、Ser及び/又はGlyからなる配列が好ましく用いられる。
本発明において、「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んで、環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられていてもよい。
ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んで置き換えられる場合、環状ペプチドが融合された改変タンパク質においては、N末端側においては、ループ構造を構成する2つのアミノ酸のN末端側の一方のアミノ酸、ループ構造に由来するアミノ酸配列、所望によりリンカー配列、環状ペプチドに由来するアミノ酸配列という順序で融合し、C末端側においては、環状ペプチドに由来するアミノ酸配列、所望によりリンカー配列、ループ構造に由来するアミノ酸配列、ループ構造を構成する2つのアミノ酸のC末端側の他方のアミノ酸、という順序で融合している。
N末端側、C末端側双方でループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んでいてもよく、N末端側及びC末端側の一方でループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列とは、ループ構造を構成する2つのアミノ酸に挟まれたループ構造に由来するアミノ酸配列であって、それぞれ、ループ構造を構成する2つのアミノ酸に隣接して結合するアミノ酸配列であることが好ましい。
より具体的に説明する。
本発明において、環状ペプチドの化学架橋構造を置き換える足場タンパク質に存在する2つのアミノ酸残基のうち、ループ構造を構成するアミノ酸残基であって、N末端側に位置するアミノ酸残基をBN、C末端側のアミノ酸残基をBCとする場合、環状ペプチドのループ構造は、−BN−(Xaa1)m−BC−で表される構造を含む(ループ構造を形成している限り、Xaa1は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸残基であり、mは、0以上の任意の整数であり、1〜15の整数であることが好適である。)。
「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、環状ペプチドに由来するアミノ酸は、BNと結合していてもよく、BNとリンカー配列を介して結合していてもよく、BNから任意の数で表される番目のXaa1と、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。
また、「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、環状ペプチドに由来するアミノ酸は、BCと結合していてもよく、BCとリンカー配列を介して結合していてもよく、BCから任意の数で表される番目のXaa1と、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。
Nから任意の数で表される番目のXaa1と、所望によりリンカー配列を介して結合している場合、あるいは、BCから任意の数で表される番目のXaa1と、所望によりリンカー配列を介して結合していている場合、環状ペプチドを融合した改変タンパク質は、ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含むこととなる。
一方、環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を形成する2つのアミノ酸残基のうち、N末端側に位置するアミノ酸残基をCN、C末端側のアミノ酸残基をCCとする場合、環状ペプチドは、CN−(Xaa2)n−CCで表される一次配列を少なくとも有する(環状ペプチドを形成し得る限り、Xaa2は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸残基であり、nは、2以上の任意の整数である。)。環状ペプチドは、分子内環状構造以外にも環状構造からの鎖状の分岐鎖を有していてもよい。なお、環状ペプチドにおいては、2つのアミノ酸残基であるCNとCCが、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を形成して環状ペプチドとなる。
「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、ループ構造を構成する2つのアミノ酸、あるいは、ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸は、所望によりリンカー配列を介して、CN及び/又はCCと結合していてもよい。
N及び/又はCCが、非タンパク質性アミノ酸である場合には、タンパク質性アミノ酸に置換されていることが好ましく、CN及び/又はCCがCysである場合には、CN及び/又はCCを欠失させてもよく、CCがCysである場合には、CNは、Cysに置換して、環状ペプチドが融合されていてもよい。
「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、環状ペプチドに由来するアミノ酸は、CNで結合していてもよく、CNでリンカー配列を介して結合していてもよく、CNから任意の数で表される番目のXaa2で、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。中でも、CNが非タンパク質性アミノ酸である場合には、CNをタンパク質性アミノ酸に置換して、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。
また、「環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える」際に、環状ペプチドに由来するアミノ酸は、CCで結合していてもよく、CCでリンカー配列を介して結合していてもよく、CCから任意の数で表される番目のXaa2で、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。中でも、CCを欠失させて、CCから数えて1番目のXaa2で、すなわち、CCと結合するXaa2で、所望によりリンカー配列を介して結合していてもよい。
Nから任意の数で表される番目のXaa2と、所望によりリンカー配列を介して結合している場合、あるいは、CCから任意の数で表される番目のXaa2と、所望によりリンカー配列を介して結合していている場合、環状ペプチドを融合した改変タンパク質は、環状ペプチドの部分配列を含むこととなる。
環状ペプチドが、ループ構造を有するタンパク質に融合されるとは、ループ構造−BN−(Xaa1)m−BC−の−(Xaa1)m−における全部又は一部の−(Xaa1)p−に代えて、環状ペプチドにおいて、分子内環状構造を構成するCN−(Xaa2)n−CCの全部又は一部が置き換わることを意味する。
構造としては、−BN−(Xaa1)q−[CN−(Xaa2)n−CC]−(Xaa1)r−BC−で表される構造となる。なお、該構造においては、リンカー配列を含まない場合として記載しているが(pはm以下の整数であり、p+q+rは、mとなる。qとrは、0以上の整数であるが、0〜10の整数であることが好適である。)、リンカー配列を含む場合には、(Xaa1)q−[CN−(Xaa2)n−CC]の結合、[CN−(Xaa2)n−CC]−(Xaa1)rの結合間に、リンカー配列が存在することとなる。
なお、[CN−(Xaa2)n−CC]は、当該配列における全部又は一部のアミノ酸配列が融合していることを意味する。好適には、部分配列として、CN−(Xaa2)nが融合される。また、CN及び/又はCCが、非タンパク質性アミノ酸である場合には、それぞれ、タンパク質性アミノ酸として融合していることを意味してよい。
ここで、BNとBCで表されるアミノ酸残基は、ループ構造におけるアミノ酸残基をそのまま用いてもよいが、別のアミノ酸残基に置換してもよい。また、CNとCCで表されるアミノ酸残基は、環状ペプチドにおけるアミノ酸残基をそのまま用いてもよいが、別のアミノ酸残基に置換してもよいし、欠失させてもよい。好適には、CNは、タンパク質性アミノ酸に置換され、CCは、欠失させる。
環状ペプチドを融合させた改変タンパク質においては、環状ペプチド由来のアミノ酸配列におけるN末端アミノ酸とそのN末端側で融合しているBNとしたループ構造を構成する2つのアミノ酸残基までの間のアミノ酸数と、環状ペプチド由来のアミノ酸配列におけるC末端アミノ酸とそのC末端側で融合しているBCとしたループ構造を構成する2つのアミノ酸残基までの間のアミノ酸数とは、同一でも異なっていてもよい。
環状ペプチド由来のアミノ酸配列におけるN末端アミノ酸とそのN末端側で融合しているBNとしたループ構造を構成する2つのアミノ酸残基までの間のアミノ酸数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9あるいは10個であってもよく、0〜10、0〜9、0〜8、0〜7、0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1あるいは0個のアミノ酸であってよい。
環状ペプチド由来のアミノ酸配列におけるC末端アミノ酸とそのC末端側で融合しているBCとしたループ構造を構成する2つのアミノ酸残基までの間のアミノ酸数についても同様に、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9あるいは10個であってもよく、0〜10、0〜9、0〜8、0〜7、0〜6、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1あるいは0個のアミノ酸であってよい。
環状ペプチドは、一般的なmRNAディスプレイ法により製造されるペプチドであってよく、TRAP法やRaPID法で製造されるペプチドであってもよく、また、ファージディスプレイ法により製造されるペプチドであってもよい。また、これらの変法におり製造されるペプチドであってもよい。
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造として、例えば、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を含む。
通常、RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法により選択される環状ペプチドは、チオエーテル結合又はジスルフィド結合といった分子内環状構造を形成するための化学架橋構造以外の構造が、生理活性を有する活性点であることが多い。
そうすると、環状ペプチドのチオエーテル結合又はジスルフィド結合を、ループ構造を有するタンパク質との結合に置き換えることにより、通常、RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファ−ジディスプレイ法により得られる環状ペプチドの高い特異性と親和性を、所望のタンパク質の所望のループ構造内に賦与することができる。また。特に限定されるものではないが、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を分子内環状構造として有する環状ペプチドを融合することにより、環状ペプチドを汎用性をもって融合させることができる。
環状ペプチドとしては、特に限定されるものではないが、天然型の環状ぺプチドを用いてもよく、非天然型の環状ペプチドを用いてもよい。
天然型の環状ペプチドをタンパク質上に提示する場合には、アミノ酸残基同士を結合するいずれの結合も、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造といえるため、いずれの結合を採用することもできるが、天然型の環状ペプチドにおける活性部位と考えられる領域以外のアミノ酸残基同士の結合を、タンパク質と融合させるための化学架橋構造とすることが好ましい。
環状ペプチドは、4以上のアミノ酸残基により形成される環状構造を分子内に少なくとも有するペプチドである。4以上のアミノ酸残基により形成される環状ペプチドにおける環状構造は、直鎖状ペプチドにおいて、2アミノ酸以上離れた2つのアミノ酸残基が直接に、又はリンカー等を介して結合することによって分子内に形成される閉環構造である。
2つのアミノ酸残基が2アミノ酸以上離れていることは、2つのアミノ酸残基の間に少なくとも2つのアミノ酸残基が存在していることと同義であり、2つのアミノ酸残基は、その間に2つ以上のアミノ酸を介して結合することとなる。
環状構造における閉環構造は、特に限定されないが、2つのアミノ酸が、共有結合することにより形成される。
2つのアミノ酸間の共有結合としては、例えば、ジスルフィド結合、ペプチド結合、アルキル結合、アルケニル結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホネートエーテル結合、アゾ結合、C−S−C結合、C−N−C結合、C=N−C結合、アミド結合、ラクタム架橋、カルバモイル結合、尿素結合、チオ尿素結合、アミン結合、及びチオアミド結合等が挙げられる。
2つのアミノ酸がアミノ酸の主鎖において結合すると、ペプチド結合により閉環構造が形成されるが、2つのアミノ酸の側鎖同士、側鎖と主鎖の結合等により、2つのアミノ酸間の共有結合は形成されてもよい。
環状構造は、直鎖状ペプチドのN末端とC末端のアミノ酸の結合に限られず、末端のアミノ酸と末端以外のアミノ酸の結合、又は末端以外のアミノ酸同士の結合により形成されてもよい。環状構造を形成するために結合する2つのアミノ酸の一方が末端アミノ酸で、他方が非末端アミノ酸である場合、環状ペプチドは、環状構造からの鎖状の分岐鎖として、環状構造に直鎖のペプチドが尾のように付いた構造を有する。
環状構造を形成するアミノ酸としては、タンパク質性アミノ酸に加え、人工のアミノ酸変異体や誘導体を含み、例えば、タンパク質性L−アミノ酸、アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物等が挙げられる。
タンパク質性アミノ酸(proteinogenic amino acids)は、当業界に周知の3文字表記により表すと、Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、及びValである。
非タンパク質性アミノ酸(non−proteinogenic amino acids)としては、タンパク質性アミノ酸以外の天然又は非天然のアミノ酸を意味する。
非天然アミノ酸としては、例えば、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α−二置換アミノ酸(α−メチルアラニンなど)、N−アルキル−α−アミノ酸、D−アミノ酸、β−アミノ酸、α−ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)、及び側鎖中のカルボン酸官能基がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)等が挙げられる。非天然アミノ酸の具体例としては、国際公開第2015/030014号に記載のアミノ酸が挙げられる。
環状構造を形成するアミノ酸の数は4以上であれば特に限定されないが、例えば、5以上、8以上、10以上であってもよく、30以下、25以下、20以下、15以下であってもよい。
環状構造を形成するアミノ酸の数としては、4以上30以下であることが好ましく、4以上30以下の範囲内で、環状構造を形成するアミノ酸の数を5以上、8以上、10以上としてもよく、30以下、25以下、20以下、15以下としてもよい。
環状構造を形成するアミノ酸の数は、8以上20以下としてもよく、10以上20以下としてもよく、10以上15以下としてもよい。
本発明において用いられる環状ペプチドは、公知のペプチド合成技術を用いて製造することのできる環状ペプチドである。
環状ペプチドの製造方法としては、例えば、液相法、固相法、液相法と固相法を組み合わせたハイブリッド法等の化学合成法、遺伝子組み換え法、無細胞翻訳系による翻訳合成法等が挙げられる。
環状ペプチドは、RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法により好適に製造できるペプチドを用いることが好ましい。
RaPID法においては、例えば、下記表1に示す官能基1を有するアミノ酸と、対応する官能基2を有するアミノ酸が環状化した環状ペプチドとすることができる。
官能基1と2はどちらがN末端側にきてもよく、N末端とC末端に配置してもよいし、一方を末端アミノ酸、他方を非末端アミノ酸としてもよいし、両方を非末端アミノ酸としてもよい。
官能基1と官能基2により形成される結合が、環状ペプチドにおける分子環状構造を形成するための化学架橋構造といえる。
表1:
Figure 0006598344
式中、X1は脱離基であり、脱離基としては、例えば、Cl、Br及びI等のハロゲン原子が挙げられ、Arは置換基を有していてもよい芳香環である。
ファージディスプレイ法においては、Cys同士が結合して環状化した環状ペプチドとすることができるため、官能基1としての−SHと官能基2としてのHS−によるジスルフィド結合を有する環状ペプチドとすることができる。
(A−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、クロロアセチル化したアミノ酸を用いることができる。クロロアセチル化アミノ酸としては、N-chloroacetyl-L-alanine、N-chloroacetyl-L-phenylalanine、N-chloroacetyl-L-tyrosine、N-chloroacetyl-L-tryptophan、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-chloroacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-chloroacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-chloroacetyl-L-ornithine、ε-N-chloroacetyl-L-lysine、及びこれらに対応するD−アミノ酸誘導体等が挙げられる。
(A−1)の官能基を有するアミノ酸としては、N-chloroacetyl-L-tryptophan及びN-chloroacetyl-L-tyrosineが好適に用いられ、D体であることがより好適である。
なお、本明細書において、L体であることを明示して記載する場合があるが、L体であってもよく、D体であってもよいことを意味し、また、L体とD体の任意の割合での混合物であってもよい。L体及びD体であることを明示して記載していない場合についても、L体であってもよく、D体であってもよいことを意味し、また、L体とD体の任意の割合での混合物であってもよい。
(A−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、及び2-amino-8-mercaptooctanoic acid等が挙げられる。
(A−1)の官能基を有するアミノ酸としては、cysteineが好適に用いられる。
(A−1)の官能基を有するアミノ酸と(A−2)の官能基を有するアミノ酸による環状化方法は、例えば、Kawakami, T. et al., Nature Chemical Biology 5, 888-890 (2009);Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009);Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008);Goto, Y. et al., ACS Chemical Biology 3, 120-129 (2008);Kawakami T. et al, Chemistry & Biology 15, 32-42 (2008)、及び国際公開第2008/117833号等に記載された方法が挙げられる。
(B−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、propargylglycine、homopropargylglycine、2-amino-6-heptynoic acid、2-amino-7-octynoic acid、及び2-amino-8-nonynoic acid等が挙げられる。
4-pentynoyl化や5-hexynoyl化したアミノ酸を用いてもよい。
4-pentynoyl化アミノ酸としては、例えば、N-(4-pentenoyl)-L-alanine、N-(4-pentenoyl)-L-phenylalanine、N-(4-pentenoyl)-L-tyrosine、N-(4-pentenoyl)-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-(4-pentenoyl)-L-diaminopropanoic acid、γ-N-(4-pentenoyl)-L-diaminobutyric acid、σ-N-(4-pentenoyl)-L-ornithine、ε-N-(4-pentenoyl)-L-lysine、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体等が挙げられる。
5-hexynoyl化アミノ酸としては、4-pentynoyl化アミノ酸として例示した化合物において、4-pentynoyl基が、5-hexynoyl基に置換されたアミノ酸が挙げられる。
(B−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、azidoalanine、2-amino-4-azidobutanoic acid、azidoptonorvaline、azidonorleucine、2-amino-7-azidoheptanoic acid、及び2-amino-8-azidooctanoic acid等が挙げられる。
azidoacetyl化や3-azidopentanoyl化したアミノ酸を用いることもできる。
azidoacetyl化アミノ酸としては、例えば、N-azidoacetyl-L-alanine、N-azidoacetyl-L-phenylalanine、N-azidoacetyl-L-tyrosine、N-azidoacetyl-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-azidoacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-azidoacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-azidoacetyl-L-ornithine、ε-N-azidoacetyl-L-lysine、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体等が挙げられる。
3-azidopentanoyl化アミノ酸としては、azidoacetyl化アミノ酸として例示した化合物において、azidoacetyl基が、3-azidopentanoyl基に置換されたアミノ酸が挙げられる。
(B−1)の官能基を有するアミノ酸と(B−2)の官能基を有するアミノ酸による環状化方法は、例えば、Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008)、及び国際公開第2008/117833号等に記載された方法が挙げられる。
(C−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、N-(4-aminomethyl-benzoyl)-phenylalanine (AMBF)及び3-aminomethyltyrosine等が挙げられる。
(C−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、5-hydroxytryptophan(WOH)等が挙げられる。
(C−1)の官能基を有するアミノ酸と(C−2)の官能基を有するアミノ酸による環状化方法は、例えば、Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009)及び国際公開第2008/117833号に記載された方法等が挙げられる。
(D−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、2-amino-6-chloro-hexynoic acid、2-amino-7-chloro-heptynoic acid、及び2-amino-8-chloro-octynoic acid等が挙げられる。
(D−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、及び2-amino-8-mercaptooctanoic acid等が挙げられる。
(D−1)の官能基を有するアミノ酸と(D−2)の官能基を有するアミノ酸による環状化方法は、例えば、国際公開第2012/074129号に記載された方法等が挙げられる。
(E−1)のアミノ酸としては、例えば、N-3-chloromethylbenzoyl-L-phenylalanine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tyrosine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tryptophane、及びこれらに対応するD-アミノ酸誘導体等が挙げられる。
(E−2)のアミノ酸としては、例えば、cysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、 mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、及び2-amino-8- mercaptooctanoic acid等が挙げられる。
(E−1)の官能基を有するアミノ酸と(E−2)の官能基を有するアミノ酸による環状化方法は、例えば、(A−1)と(A−2)の環状化方法や(D−1)と(D−2)の環状化方法を参考にして行うことができる。
環形成アミノ酸としては、(A−1)の官能基を有するアミノ酸と(A−2)の官能基を有するアミノ酸との組み合わせが好ましく、脱離基でHが置換されたN−アセチルトリプトファンとcysteinの組み合わせがより好ましく、N-haloacetyl-D-tyrosine又はN-haloroacetyl-D-tryptophan、好適にはN-chloroacetyl-D-tyrosine又はN-chloroacetyl-D-tryptophanとcystein(Cys)の組み合わせがさらに好ましい。
本発明においては、RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法により製造される環状ペプチドであって、所望の結合分子に対して生理活性を有する環状ペプチドを用いることが好ましい。
RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法により好適に製造できるペプチドにおける官能基1及び官能基2により形成される結合を分子内環状構造を形成するための化学架橋構造として、ループ構造を有するタンパク質と融合させることが好ましい。
本発明において用いられる環状ペプチドについて、RaPID法により製造される環状ペプチドを例に、以下説明する。
本発明において、RaPID法により製造される環状ペプチドとしては、特に限定されるものではないが、以下の一般式で表される環状ペプチドが挙げられる。
Figure 0006598344
上記一般式で表される環状ペプチドは、例示となるが、表1に記載の官能基1及び官能基2として、(A)である場合の構造を有する。
ここで、一般式において、SはCysのチオール基に由来する硫黄原子を意味する。Xaaは任意のアミノ酸を示し、sは任意の0以上の整数である。Variable region(可変領域)は、環状アミノ酸を構成するCys以外のアミノ酸配列を示す。Variable region(可変領域)のN末端のアミノ酸は、上記(A−1)の官能基を有するアミノ酸であることが好ましい。
Variable region(可変領域)のアミノ酸配列は、RaPID法により製造される環状ペプチドにおける部分アミノ酸配列であり、環状ペプチドを構成する限り、任意のアミノ酸配列であり得る。
環状ペプチドとして、上記一般式で表されるペプチドが用いられる場合には、Variable regionのN末端のアミノ酸残基が、CNであり、Cysが、CCである。
Nが、例えば、非タンパク質性アミノ酸であるN-haloroacetyl-D-tryptophanである場合には、タンパク質性アミノ酸であるL-tryptophanに置換して、例えば、非タンパク質性アミノ酸であるN-chloroacetyl-D-tyrosineである場合には、タンパク質性アミノ酸であるL-tyrosineに置換して環状ペプチドが融合されることが好適である。また、CNをタンパク質性アミノ酸であるCysに置換してもよい。CCが、例えば、Cysである場合には、CCを欠失させて環状ペプチドが融合されることが好適であるし、また、CCがCysである場合に、CCであるCysをも融合させる場合には、CNをCysに置換して融合することも好ましい。一般式で表される環状ペプチドが融合される場合、所望により、D−アミノ酸は、L−アミノ酸に置換されるものの、環状ペプチドの環状構造を構成するアミノ酸配列の部分アミノ酸配列として、Variable region(可変領域)のアミノ酸配列が、環状ペプチドが融合された改変タンパク質に融合されることが好ましい。本発明においては、Variable region(可変領域)のアミノ酸配列の一部が、例えば、CNが非タンパク質性アミノ酸である場合に、タンパク質性アミノ酸に置換されている場合も、Variable region(可変領域)のアミノ酸配列が、環状ペプチドが融合された改変タンパク質に融合されていると理解される。Variable region(可変領域)とCCであるCysが共に、融合されていてもよい。
RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法により好適に製造できる環状ペプチドをループ構造を有するタンパク質と融合させる場合には、具体的には、以下のような改変を行うことも好適である。
(1)RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法やファージディスプレイ法における分子内環状構造を形成するための化学架橋構造に関与するアミノ酸残基をそれぞれ置換又は削除して、環状ペプチド由来のアミノ酸残基と、ループ構造由来のアミノ酸残基とを融合させてもよい。
具体的には、RaPID法による環状ペプチドにおいては、官能基1を有するアミノ酸残基をタンパク質性アミノ酸に置換し、官能基2を有するアミノ酸残基をそれぞれ欠失して、ループ構造と融合する。官能基1を有するアミノ酸残基として、D−アミノ酸等の非タンパク質性アミノ酸が用いられることがある。
ファージディスプレイ法による環状ぺプチドにおいては、化学架橋構造であるS−S結合を構成するCys残基を削除して、ループ構造と融合してもよい。
より具体的には、RaPID法において、官能基1として(A−1)の構造が採用されている場合、一般に、(A−1)の構造を有するアミノ酸としては、ClAc−D−TrpやClAc−D−Tyrが用いられていることが多いが、改変タンパク質においては、該アミノ酸残基をL−TrpやL−Tyrに置換することが好ましい。また、ClAc−D−TrpやClAc−D−Tyrを欠失させてもよい。
また、(A−2)の構造を有するアミノ酸としては、Cysが用いられていることが多いが、改変タンパク質においては、該Cys残基を欠失させてもよい。
(2)(1)において、環状ペプチドは有さないが、Ser、Gly及びCysといったアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を環状ペプチドとループ構造とのリンカー配列として用いて、環状ペプチド由来のアミノ酸残基と、ループ構造由来のアミノ酸残基との間に挿入して、融合させてもよい。
(3)分子内環状構造を形成するための化学架橋構造に関与するアミノ酸残基をL−Cysに変換し、環状ペプチドをループ構造と融合させた改変タンパク質において、ジスルフィド結合により架橋構造を形成させると共に、Ser及びGlyといったアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を環状ペプチドとループ構造とのリンカー配列として用いて、環状ペプチド由来のアミノ酸残基と、ループ構造由来のアミノ酸残基との間に挿入して、融合させてもよい。
リンカー配列を構成するアミノ酸残基の数は、1以上のアミノ酸残基であればよく、アミノ酸残基の数は、特に限定されるものではない。
本発明においては、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に提示する方法において環状ペプチドをループ構造を有するタンパク質に融合させることを含むが、環状ペプチドをループ構造を有するタンパク質に融合させるには、通常の遺伝子工学技術を用いて行うことができる。
具体的には、本発明は、環状ペプチドをタンパク質に融合させる方法として、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させて環状ペプチドをタンパク質上に提示させた改変タンパク質の製造方法をも提供する。
本発明における、環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させて環状ペプチドをタンパク質上で提示させた改変タンパク質の製造方法は、
環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
環状ペプチドのアミノ酸配列から、タンパク質上で提示させる部分アミノ酸配列を選択し、該部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を選択し、
ループ構造を有するタンパク質のループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に相当する塩基配列を選択し、該選択された塩基配列間に存在する塩基を必要に応じて削除し、選択された環状ペプチドの部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を挿入して組み込んだ塩基配列を有する核酸を準備し、
該核酸を翻訳する、改変タンパク質の製造方法である。
環状ペプチドとしては、RaPID法やTRAP法のようなmRNAディスプレイ法又はファージディスプレイ法により選択される環状ペプチドを用いることが好ましく、mRNAディスプレイ法によることがより好ましく、mRNAディスプレイ法等によれば、環状ペプチドのうち、挿入すべき部分アミノ酸配列の塩基配列は容易に理解することができる。
ループ構造を有するタンパク質のループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に相当する塩基配列を選択し、該選択された塩基配列間に存在する塩基を必要に応じて削除する方法や、選択された環状ペプチドの部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を挿入して組み込んだ塩基配列を有する核酸を準備する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を援用して実施することができる。
また、準備された核酸の翻訳方法は、本発明の属する技術分野において、既に周知な事項であるので、それら周知な方法を適宜適用して、核酸の翻訳を行えばよい。
ループ構造を有するタンパク質のループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に相当する塩基配列を選択するにあたっては、ループ構造を有するタンパク質のアミノ配列において(部分断片タンパク質のアミノ酸配列であってもよく、融合タンパク質のアミノ酸配列であってもよい。)、ループ構造を構成するアミノ酸配列の中から、環状ペプチドを融合させる足場となる2つのアミノ酸残基が選択される。
2つのアミノ酸残基は、足場タンパク質の構造データを用いたり、足場タンパク質の立体構造が明らかで無い場合でも、その相似タンパク質(ホモログ)の構造情報から構築したモデル構造を用いることにより、選択することができる。
2つのアミノ酸残基を選択するにあたっては、複数のループ構造を有する足場タンパク質を選択している場合には、環状ペプチドを融合させるループ構造を選択し、当該ループ構造内からCα原子間距離が4〜7Åにある2つのアミノ酸残基を選択することが好ましい。
2つのアミノ酸残基を選択する際には、1〜15アミノ酸残基離れた2つのアミノ酸残基を選択することが好ましく、Cα原子間距離が4〜7Åにあり、かつ、1〜15アミノ酸残基離れた2つのアミノ酸残基を選択することがより好ましい。
ここで、足場タンパク質から選択した2つのアミノ酸残基のうち、元の足場タンパク質において、N末端側にあるアミノ酸残基をBNとし、C末端側にあるアミノ酸残基をBCとする。
Nに結合するC末端側のアミノ酸配列を環状ペプチドとの結合に用いてもよく、また、BCに結合するN末端側のアミノ酸配列を環状ペプチドとの結合に用いてもよい。
環状ペプチドと結合させるアミノ酸残基を選択した後、リンカー配列の付加を選択することもできる。
足場タンパク質に融合させる環状ペプチドの選択においては、何らかの生理活性を有することが知られている、あるいは、生理活性を有することを確認した環状ペプチドを選択することが好ましい。また、環状ペプチドのアミノ酸配列は、常法により、適宜確認してもよい。
環状ペプチドの化学架橋構造となる結合を特定し、当該結合を切断することにより得られる一次アミノ酸配列情報に基づいて、融合させる環状ペプチドにおけるアミノ酸配列を選択する。
選択されたアミノ酸配列に基づいて、タンパク質に必要な翻訳に必要となる塩基配列を決定して、翻訳することにより所定の改変タンパク質を製造することができる。
本発明の方法により得られるループ構造を有するタンパク質を足場として、環状ペプチドをタンパク質上に提示させた改変タンパク質は、環状ペプチドの構造と活性を保持させた状態で環状ペプチドを提示するので、環状ペプチドの活性に基づいた試薬、医薬等として用いることができる。
また、環状ペプチドが融合された改変タンパク質は、タンパク質自体が有している活性に加え、環状ペプチドの有する活性を示すため、2種の異なる又は同種の活性を有する改変タンパク質として用いることも可能である。
本発明においては、1の環状ペプチドが、1又は2以上のループ構造を有するタンパク質の1又は2以上のループ構造にそれぞれ融合していてもよく、2以上の環状ペプチドが、複数のループ構造を有するタンパク質の異なるループ構造にそれぞれ融合していてもよい。
2以上の環状ペプチドが融合する場合、同一のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであってもよく、2以上の環状ペプチドが異なるアミノ酸配列を有する環状ぺプチドであってもよい。
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
結合分子としたヒトプレキシンB1、ヒトMet受容体、ヒトEGF受容体及びヒトTrkB受容体に対して、国際公開第2011/049157号及び特開2013−46637号公報等に基づいてRaPIDシステムを実施して、それぞれに特異的に結合する環状ペプチドを1〜3種類ずつ得た。環状ペプチドの構造を図1に示す。
図1において、可変領域のアミノ酸配列のN末端アミノ酸及び定常部のCys(一般式中に図示)がそれぞれ後に連結に用いるアミノ酸残基CN及びCCに対応する。なお、環状ペプチドのN末端アミノ酸としてw及びyと小文字で示されるD−アミノ酸は、それぞれL−アミノ酸に置換して、あるいは、欠失させて融合タンパク質に導入した。
図1に記載の環状ペプチドのうち、P6及びP7は、Cell Chem. Biol, 2016, 23, 1341−1350に記載される環状ペプチドであり、いずれもヒトプレキシンB1に対して結合する活性を有している。mP6−9はP6のアミノ酸配列の一部を改変したもので、P6に同じくヒトプレキシンB1への結合性を有している。また、P6及びmP6−9はヒトプレキシンB1に結合することによってヒトプレキシンB1へのセマフォリン4Dの結合をアロステリックに阻害し、結果として細胞においてセマフォリン4D刺激による形態変化を抑制する活性を有する(Cell Chem. Biol, 2016, 23, 1341−1350)。
aMD4、aMD5及びaML5は、Nature Commun, 2015, 6, 6373に記載される環状ペプチドであり、いずれもヒトMet受容体に対して結合する活性を有している。また、これらのペプチドは単独ではヒトMet受容体を活性化しないが、架橋により二量体化するとヒトMet受容体の活性化を引き起こし、アゴニスト活性を有することがわかっている。
A6−2f及びtrkD5はそれぞれ対応するヒトEGF受容体及びヒトTrkB受容体にナノモルレベルの親和性で結合する。
〔実施例1〕フィブロネクチンの第10番目のType IIIリピートドメインと環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
上記8種類の生理活性環状ペプチドの化学架橋構造に置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有するタンパク質としてヒトフィブロネクチンの第10番目のType IIIリピートドメイン(以下、「Fn10」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上で6番目と7番目のβストランドで挟まれたループ部分からCα原子間距離が4.1ÅであるVal1490(BNに相当)とSer1499(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基として選定した。この部分の立体構造を図2に示す。
Fn10において選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる8アミノ酸残基の一部を、図1で示した環状ペプチドの可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした(なお、環状ペプチドの可変領域のw又はyで表される非タンパク質性アミノ酸は、タンパク質性アミノ酸であるW又はYに置換して、融合された環状ペプチドの可変領域のアミノ酸配列がデザインされている。以下、同様である。また、P7を融合させる場合にのみ、P7の可変領域におけるN末のアミノ酸残基であるwをCysに置換して、CCに相当するCysと共にデザインした。)。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドを融合後のループ部分のアミノ酸配列を図3に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒトプロラクチンのシグナル配列をコードするDNA、ヒトフィブロネクチンのアミノ酸残基番号1418〜1509の領域をコードするDNA、そしてヒトIgG1のFc領域をコードするDNAをつないで、Fn10−Fc融合タンパク質のコンストラクトを作成し、これを発現ベクターpcDNA3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に組み込んだ。
Fn10−Fc発現ベクターを元に、フィブロネクチン領域内のVal1490とSer1499で挟まれるループ領域の8アミノ酸残基を、図3に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれFn10(P6)−FcのようにFn10(環状ペプチド名)−Fcと命名した。
Expi293F細胞(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を3mLのExpi293 Expression Medium(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、細胞が3x106cells/mLになるように播種した。その後、常法に従い、ExpiFectamine 293 Reagent(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、3μgのFn10−Fc(あるいはその変異体)発現用ベクターを、Expi293F細胞へ遺伝子導入した。遺伝子導入後、37℃、8%CO2条件下、125rpmで細胞を18時間振とう培養した。その後、ExpiFectamime 293 Transfection Enhance er 1及びExpiFectamime 293 Transfection Enhancer 2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)をそれぞれ15μL、150μL添加し、37℃、8%CO2条件下、125rpmで3日間振とう培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清0.3mLにプロテインA−セファロース(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を30μL加え、2時間回転混和した。遠心分離によってセファロースを沈殿させて上清を除き、1mLのTris−buffered saline(TBS,20mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.5)で3回セファロースを洗浄し、SDSサンプルバッファー20μLを加えて95℃で2分間加熱して試料を溶出した。溶出した試料の5μLを還元条件下で電気泳動に供し、クマシーブリリアントブルーで染色した。
電気泳動の結果を図4に示す。図4において、サンプル番号は、丸数字で示す。Fn10−Fc(サンプル番号1)は予想される分子量(37.5kDa)の位置にバンドが見られ、すべての環状ペプチド融合タンパク質(サンプル番号2〜9)はそれよりも若干高い分子量を示し、全体のアミノ酸長として12〜20残基長いことに呼応していた。いずれもペプチド挿入の無いFn10−Fcと遜色ない量の環状ペプチド融合タンパク質がExpi293F細胞から発現・分泌していることが確認された。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
様々な環状ペプチドを融合したFn10−Fcについて、融合前の環状ペプチドが有していた結合分子に対する結合能を保持しているかどうかを調べるため、プルダウン型の結合試験を行った。Protein Exp. Purification, 2014, 95, 240−247に記載された方法に準じて、4種類の結合分子(すべて一回膜貫通型の受容体)の細胞外領域のC末端にPAタグ(和光純薬工業社製)が付加された融合タンパク質をコードするコンストラクトを作成し、これを発現ベクターpcDNA3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に組み込んだ。このベクターを用いて前述の方法によりExpi293F細胞で一過性発現させ、可溶性受容体断片であるPlexinB1−PA、Met−PA、EGFR−PA及びTrkB−PAをそれぞれ含む培養上清を調製した。
PAタグを付加した受容体細胞外領域を含む培養上清0.5mLに抗PAタグ抗体であるNZ−1を固定化したセファロース(和光純薬工業社製)を30μL加え、2時間回転混和することで結合分子をセファロースにキャプチャーした。遠心分離によってセファロースを沈殿させて除いた後、別に調製した各種の環状ペプチド融合タンパク質(Fn10−Fc変異体)を含む培養上清を0.5mL加え、さらに2時間回転混和して反応させた。再び遠心分離によってセファロースを沈殿させ、1mLのTBSで3回セファロースを洗浄し、SDSサンプルバッファー20μLを加えて95℃で2分間加熱して試料を溶出した。溶出した試料の5μLを還元条件下で電気泳動に供し、クマシーブリリアントブルーで染色した。
電気泳動の結果を図5に示す。プレキシンバインダーであるP6、mP6−9及びP7のアミノ酸配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号2〜4)はPlexinB1−PAと、MetバインダーであるaMD4、aMD5及びaML5のアミノ酸配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号5〜7)はMet−PAと、EGF受容体バインダーであるA6−2fのアミノ酸配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号8)はEGFR−PAと、TrkBバインダーであるtrkD5のアミノ酸配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号9)はTrkB−PAと、それぞれ特異的に結合することが、プルダウンの結果から明らかになった。
コントロールとして用いたFn10−Fc(サンプル番号1)はいずれの受容体タンパク質に対しても結合性を示さなかった。以上のことから、8種類の環状ペプチドは、すべてFn10のループ構造上に提示することでオリジナルの環状ペプチドの結合能を保持した融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例2〕抗体のFc領域と環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有するタンパク質としてヒトIgG由来Fc領域(以下、「Fc」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上でβストランドで挟まれたループ部分からCα原子間距離が4〜7Åの間にある2アミノ酸残基を探索した。その結果、Fcのヒンジ領域に近い「上部」から3カ所、Fcの「底部」から3カ所、Fcの「側面部」から2カ所の計8カ所を選定した。融合に用いる部位の名称としては、「上部」からはSer267(BNに相当)とPro271(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL1サイト、Tyr296(BNに相当)とSer298(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL2サイト、Leu328(BNに相当)とPro331(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL3サイト、と呼ぶ。「底部」からはLys360(BNに相当)とGln362(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL4サイト、Ser383(BNに相当)とGln386(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL5サイト、Gln419(BNに相当)とAsn421(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL6サイト、と呼ぶ。「側面部」からはGly341(BNに相当)とPro343(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL7サイト、Ser400(BNに相当)とGly402(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL8サイト、と呼ぶ。これらの部分の立体構造を図6に示す。
Fcの上部、底部、側面部において選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる領域の一部を、環状ペプチドmP6−9、aMD4、あるいはaMD5の可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドの融合後のループ部分のアミノ酸配列を図7〜図9に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒトプロラクチンのシグナル配列をコードするDNA、Hisx8タグをコードするDNA、MycタグをコードするDNA、そしてヒトIgG1のFc領域をコードするDNAをつないでFc融合タンパク質のコンストラクトを作成し、これを発現ベクターpcDNA3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に組み込んだ。
Fc発現ベクターを元に、L1〜L8サイトのループ領域のアミノ酸配列を、図7〜図9に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれFc(mP6−9_L1)のようにFc(環状ペプチド名_サイト名)と命名した。
Fc及びその環状ペプチド融合タンパク質20種(3種類のペプチドと8カ所の挿入部位バリエーション)について、実施例1において前述の方法によってExpi293F細胞を用いた一過性発現を行い、培養上清からプロテインAセファロースによって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図10に示す。Fc(サンプル番号1)は予想される分子量(30.6kDa)の位置にバンドが見られ、すべての環状ペプチド融合タンパク質(サンプル番号2〜21)は30〜37kDaの分子量に相当する移動度を示すバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(Fc変異体)について、実施例1において前述の方法によって可溶性受容体断片であるPlexinB1−PA及びMet−PAをキャプチャーしたNZ−1セファロースに対する結合をプルダウン法により調べた。
電気泳動の結果を図11に示す。プレキシンバインダーであるmP6−9のアミノ酸配列を組み込んだ8種の融合タンパク質(サンプル番号2〜9)のすべてがPlexinB1−PAと結合し、MetバインダーであるaMD4及びaMD5のアミノ酸配列を組み込んだ12種の融合タンパク質のうち11種(サンプル番号10〜13、15〜21)がMet−PAと特異的に結合することが、プルダウンの結果から明らかになった(なお、Fc(aMD5_L2、サンプル番号14)についても特異的な結合は確認できた。)。すなわちFn10−Fcの時と同様、IgGのFc領域のループ構造上に直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例3〕IgG抗体と環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有するタンパク質としてヒトIgG全長タンパク質(以下、「IgG」と呼ぶ)を選択した。IgGはその構造の一部として実施例2において用いた足場タンパク質であるFcそのものを含むため、融合に用いる部位としては実施例2に示したL1〜L8サイトをそのまま利用した。IgGとそのFc領域(環状ペプチドの融合部位を含む)、及び2つの抗原結合部位であるFab領域の立体構造を図12に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ニューロピリン1に対するヒトIgG1モノクローナル抗体のH鎖全長領域をコードするDNAを発現ベクターp3xFLAG−CMV−14(シグマ−アルドリッチ社製)に組み込んだ。同抗体のLκ鎖全長領域をコードするDNAも同様にp3xFLAG−CMV−14ベクターに組み込んだ。
上記IgG1H鎖発現ベクターを元に、そのFc領域のL1〜L8サイトのループ領域のアミノ酸配列を、図7〜図9に示す挿入配列に入れ替えたH鎖発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合H鎖のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれIgG(mP6−9_L1)のようにIgG(環状ペプチド名_サイト名)と命名した。
H鎖及びそのPlexinB1結合性環状ペプチド(mP6−9)融合変異体発現ベクターを、対応するLκ鎖発現ベクターと1:1の比率で混合し、実施例2と同じ方法によってExpi293F細胞に遺伝子導入して一過性発現を行い、発現分泌されるIgGタンパク質を培養上清からプロテインAセファロースによって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図13Aに示す。融合していないIgG(サンプル番号1)は予想される分子量(H鎖47kDa、L鎖25kDa)の位置にバンドが見られ、すべての環状ペプチド融合タンパク質(サンプル番号2〜9)はH鎖のみ47kDaよりわずかに高分子量に相当する移動度を示すバンド、L鎖は融合前のIgGと同じ25kDaのバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(IgG変異体)について、実施例2において前述の方法によって可溶性受容体断片であるPlexinB1−PAをキャプチャーしたNZ−1セファロースに対する結合をプルダウン法により調べた。
電気泳動の結果を図13Bに示す。プレキシンバインダーであるmP6−9のアミノ酸配列を組み込んだ6種の融合タンパク質(サンプル番号2〜9)のすべてがPlexinB1−PAと結合結合することが、プルダウンの結果から明らかになった。すなわちFc単独の時と同様、IgG中のFc領域のループ構造上に直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例4〕ヒト血清アルブミンと環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有するタンパク質としてヒト血清アルブミン(以下、「HSA」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上でαヘリックスで挟まれたループ部分からCα原子間距離が4〜7Åの間にある2アミノ酸残基を探索した。その結果、HSAの分子上で溶媒露出度が高い4カ所を選定した。融合に用いる部位の名称としては、Asp56(BNに相当)とAla59(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL1サイト、Cys169(BNに相当)とLys174(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL2サイト、Ala363(BNに相当)とPro366(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL3サイト、Ala561(BNに相当)とLys564(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL4サイト、と呼ぶ。これらの部分の立体構造を図14に示す。
HSAにおいて選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる領域の一部を、環状ペプチドmP6−9及びaMD4の可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドの融合後のループ部分のアミノ酸配列を図15に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒト血清アルブミン全長をコードするDNA、Hisx8タグをコードするDNA、MycタグをコードするDNAをつないでHSA融合タンパク質のコンストラクトを作成し、これを発現ベクターpcDNA3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に組み込んだ。
HSA発現ベクターを元に、L1〜L4サイトのループ領域のアミノ酸配列を、図12に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれHSA(mP6−9_L1)のようにHSA(環状ペプチド名_サイト名)と命名した。
HSA及びその環状ペプチド融合タンパク質8種(2種類のペプチドX4カ所の挿入部位バリエーション)について、実施例1において前述の方法によってExpi293F細胞を用いた一過性発現を行い、C末端にHisタグが付加されていることを利用して培養上清からNi−NTAアガロースによって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図16に示す。HSA(サンプル番号1)は予想される分子量(67kDa)の位置にバンドが見られ、すべての環状ペプチド融合タンパク質(サンプル番号2〜9)はそれよりわずかに高分子量に相当する移動度を示すバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(HSA変異体)について、実施例1において前述の方法によってPlexinB1及びMetの可溶性受容体断片との結合を確認した。ただし、mP6−9ペプチド融合タンパク質においては、結合分子としてPlexinB1−PAではなくPlexinB1−Fcタンパク質を用い、プルダウンのビーズもNZ−1−SepharoseではなくプロテインA−Sepharoseを用いた。
電気泳動の結果を図17に示す。プレキシンバインダーであるmP6−9のアミノ酸配列を組み込んだ4種の融合タンパク質のすべて(サンプル番号2〜5)がPlexinB1−Fcと結合し、MetバインダーであるaMD4のアミノ酸配列を組み込んだ4種の融合タンパク質(サンプル番号6〜9)についても4種のすべてがMet−PAと特異的に結合することが、プルダウンの結果から明らかになった。環状ペプチドを融合していないHSA(サンプル番号1)ではHSAタンパク質を全く含まないコントロール培養上清(サンプル番号10)でも見られる非特異的バンドのみが共沈降し、結合しないことが確認された。すなわちFn10−Fc、Fcの時と同様、HSAのαヘリックスに挟まれたループに直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例5〕ヒト成長ホルモンと環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、ループ構造を持つタンパク質としてヒト成長ホルモン(以下、「hGH」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上でαヘリックスで挟まれたループ部分からCα原子間距離が4〜7Åの間にある2アミノ酸残基を探索した。その結果、hGHの分子構造上、長軸の先端に相当する2カ所を選定した。融合に用いる部位の名称としては、Asp130(BNに相当)とSer132(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL1サイト、Asn152(BNに相当)とAsp154(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL2サイト、と呼ぶ。これらの部分の立体構造を図18に示す。
hGHにおいて選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる領域の一部を、環状ペプチドmP6−9の可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドの融合後のループ部分のアミノ酸配列を図19に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒト成長ホルモン発現ベクターはhGH全長のC末端にHisx8タグとTEVプロテアーゼ認識配列を付加したpSGHV0(Protein Expr. Purif.,2000, 20(3), 500−506に記載)を用いた。このベクターを元に、L1〜L2サイトのループ領域のアミノ酸配列を、図19に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれhGH(mP6−9_L1)のようにhGH(環状ペプチド名_サイト名)と命名した。
hGH及びその環状ペプチド融合タンパク質2種(1種類のペプチドX2カ所の挿入部位バリエーション)について、実施例1において前述の方法によってExpi293F細胞を用いた一過性発現を行い、培養上清からNi−NTAアガロースによって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図20Aに示す。hGH(サンプル番号1)は予想される分子量(26kDa)の位置にバンドが見られ、2つの環状ペプチド融合体(サンプル番号2及び3)はそれよりわずかに高分子量に相当する移動度を示すバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(hGH変異体)について、実施例1において前述の方法によって可溶性受容体断片であるPlexinB1−PAをキャプチャーしたNZ−1セファロースに対する結合をプルダウン法により調べた。
電気泳動の結果を図20Bに示す。野生型のhGH(サンプル番号1)はPlexinB1−PAと結合しないが、プレキシンバインダーであるmP6−9の配列を組み込んだ2種の融合タンパク質(サンプル番号2及び3)は特異的に結合することが、プルダウンの結果から明らかになった。すなわちFn10−Fc、Fc、HSAの時と同様、分泌ホルモンであるhGHのループに直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例6〕ヒト血清レチノール結合タンパク質と環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有する脂質結合タンパク質としてヒト血清レチノール結合タンパク質(以下、「RBP」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上でβストランドで挟まれたループ部分からCα原子間距離が4〜7Åの間にある2アミノ酸残基を探索した。その結果、RBPのβバレル構造から突出するヘアピンループ2カ所を選定した。融合に用いる部位の名称としては、Leu64(BNに相当)とTrp67(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL1サイト、Ala94(BNに相当)とLeu97(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基とする場合をL2サイト、と呼ぶ。これらの部分の立体構造を図21に示す。
RBPにおいて選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる領域の一部を、環状ペプチドmP6−9の可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドの融合後のループ部分のアミノ酸配列を図22に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒトRBP発現ベクターは、RBP全長をコードするDNAとPAタグをコードするDNAをつないで作成し、これを発現ベクターpcDNA3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に組み込んだ。このベクターを元に、L1〜L2サイトのループ領域のアミノ酸配列を、図22に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれRBP(mP6−9_L1)のようにRBP(環状ペプチド名_サイト名)と命名した。
RBP及びその環状ペプチド融合タンパク質2種(1種類のペプチドX2カ所の挿入部位バリエーション)について、実施例1において前述の方法によってExpi293F細胞を用いた一過性発現を行い、培養上清からPAタグに対する抗体であるNZ−1を固定化したセファロース(和光純薬工業社製)によって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図23Aに示す。RBP(サンプル番号1)は予想される分子量(25kDa)の位置にバンドが見られ、2つの環状ペプチド融合体(サンプル番号2及び3)はそれよりわずかに高分子量に相当する移動度を示すバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の調製と結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(RBP変異体)について、前述と同様の方法によって可溶性受容体断片であるPlexinB1−FcをキャプチャーしたプロテインAセファロースに対する結合をプルダウン法により調べた。
電気泳動の結果を図23Bに示す。野生型のRBP(サンプル番号1)はPlexinB1−Fcと結合しないが、プレキシンバインダーであるmP6−9の配列を組み込んだ2種の融合タンパク質(サンプル番号2及び3)は特異的に結合することが、プルダウンの結果から明らかになった。すなわちFn10−Fc、Fc、HSA、hGHの時と同様、脂質結合性分泌タンパク質であるRBPのループに直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例7〕ヒト胎盤型アルカリフォスファターゼと環状ペプチドの融合
1.環状ペプチド融合タンパク質のデザイン
生理活性環状ペプチドの化学架橋構造と置き換えるため、足場タンパク質となるループ構造を有する酵素タンパク質としてヒト胎盤型アルカリフォスファターゼ(以下、「PLAP」と呼ぶ)を選択し、その立体構造上で酵素活性部位から離れたループ部分からCα原子間距離が5.5ÅであるLys404(BNに相当)とGly406(BCに相当)の2アミノ酸残基を連結残基として選定した。この部分の立体構造を図24に示す。
PLAPにおいて選定したBNとBCの2アミノ酸残基によって挟まれる領域の一部を、環状ペプチドmP6−9及びaMD4の可変領域のアミノ酸配列の両側に適宜任意のリンカーアミノ酸を追加したもので置き換えた融合タンパク質をデザインした。デザインした融合タンパク質における、環状ペプチドの融合後のループ部分のアミノ酸配列を図25に示す。
2.環状ペプチド融合タンパク質の調製
ヒト胎盤型アルカリフォスファターゼ発現ベクターはPLAP全長のC末端にMycタグとHisx6タグを付加したpAPtag−5ベクター(Methods Enzymol. 2000, 327, 19−35に記載)を用いた。このベクターを元に、ループ部分を図25に示す挿入配列に入れ替えた発現ベクターを作製した。挿入配列部分はextension PCR法を用いて増幅し、目的とする各種の環状ペプチド融合タンパク質のコンストラクトを得た。環状ペプチド融合タンパク質はそれぞれPLAP(mP6−9)のようにPLAP(環状ペプチド名)と命名した。
PLAP及びその環状ペプチド融合タンパク質2種(2種類のペプチドX1カ所の挿入部位)について、実施例1において前述の方法によってExpi293F細胞を用いた一過性発現を行い、培養上清からNi−NTAアガロースによって沈降させてSDS−PAGE分析をおこなった。
電気泳動の結果を図26に示す。PLAP(サンプル番号1)は予想される分子量(74kDa)の位置にバンドが見られ、2つの環状ペプチド融合タンパク質(サンプル番号2及び3)はそれよりわずかに高分子量に相当する移動度を示すバンドとして現れた。
3.環状ペプチド融合タンパク質の結合分子に対する結合
得られた環状ペプチド融合タンパク質(PLAP変異体)について、実施例1において前述の方法によって可溶性受容体断片であるPlexinB1−Fc及びMet−FcをキャプチャーしたプロテインAセファロースに対する結合をプルダウン法により調べた。
電気泳動の結果を図27に示す。野生型のPLAP(サンプル番号1)はPlexinB1−FcやMet−Fcと結合しないが、プレキシンバインダーであるmP6−9の配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号2)はPlexinB1−Fcと、aMD4の配列を組み込んだ融合タンパク質(サンプル番号3)はMet−Fcと、それぞれ特異的に結合することがプルダウンの結果から明らかになった。すなわちFn10−Fc、Fc、HSA、hGH、RBPの時と同様、酵素タンパク質であるPLAPのループに直接挿入することによっても、環状ペプチドはその結合分子に対する結合活性を保持したまま融合タンパク質に変換できることが確認された。
〔実施例8〕環状タンパク質融合ペプチドの生理活性
プレキシンB1バインダーペプチドであるP6及びその類縁体であるmP6−9は、細胞上に発現したプレキシンB1に結合してそのシグナル伝達を阻害する。この阻害活性がタンパク質に融合した状態でも発揮されるかどうかしらべるため、セマフォリン4D(Sema4D)刺激時のプレキシンB1発現細胞の形態変化に与える影響を評価した。
細胞の形態変化はxCELLigence RTCA DP装置(ACEA Biosciences社製)を用いたインピーダンス法により測定した。プレキシンB1安定発現細胞(Cell Chem. Biol, 2016, 23, 1341−1350に記載)を6,000cells/wellの濃度でE−PlateView16PETプレート(ACEA Biosciences社製)に播種し、37℃で20時間培養した。次に培地中に、実施例2で記載したmP6−9ペプチド融合タンパク質を1nM〜1μMの範囲で加えてさらに30分間保温したのち、刺激剤としてSema4D−Fcタンパク質(R&D Systems社製)を終濃度1nMで加え、セルのインピーダンスをモニターした。
結果を図28に示す。Sema4D−Fcの添加後すぐにインピーダンスの急速な低下が起こり、細胞の形態変化が起こって接着面積が退縮することがわかる。一方、6種類の融合タンパク質で前処理した細胞では、加えた融合タンパク質の濃度に依存して細胞の形態変化が抑制され、すべての融合タンパク質が100nM以上においてほぼ完全にプレキシンB1の活性化をブロックすることが明らかになった。すなわち、環状ペプチドの状態でmP6−9が有していたプレキシンB1シグナル阻害剤としての効力が、融合タンパク質に変換された後も保たれていることが明らかになった。

Claims (11)

  1. 所望の分子に結合活性を有する環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質上に提示する方法であって、
    環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
    環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えることにより、環状ペプチドを、所望の分子に対する結合活性を保持したままループ構造を有するタンパク質に融合させることを含む、方法。
  2. ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基のCα原子間距離が、4〜7Åの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
  3. ループ構造を有するタンパク質が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基の間に1〜15アミノ酸残基を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 環状ペプチドが、タンパク質性アミノ酸及び/又は非タンパク質性アミノ酸からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 化学架橋構造が、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 2以上の環状ペプチドが、複数のループ構造を有するタンパク質の異なるループ構造にそれぞれ融合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 2以上の環状ペプチドが、同一のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 2以上の環状ペプチドが、異なるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
  9. 環状ペプチドの化学架橋構造を、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換える際に、リンカー配列を介して環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ループ構造を構成する2つのアミノ酸以外のループ構造を構成するアミノ酸配列を含んで、環状ペプチドの化学架橋構造が、ループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に置き換えられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 所望の分子に結合活性を有する環状ペプチドを、ループ構造を有するタンパク質に融合させて環状ペプチドをタンパク質上に提示させた改変タンパク質の製造方法であって、
    環状ペプチドは、分子内環状構造を形成するための化学架橋構造を有し、
    環状ペプチドのアミノ酸配列から、タンパク質上に提示させる部分アミノ酸配列を選択し、該部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を選択し、
    ループ構造を有するタンパク質のループ構造を構成する2つのアミノ酸残基に相当する塩基配列を選択し、該選択された塩基配列間に存在する塩基を必要に応じて削除し、選択された環状ペプチドの部分アミノ酸配列に相当する塩基配列を挿入して組み込んだ塩基配列を有する核酸を準備し、
    該核酸を翻訳することを含み、改変タンパク質が所望の分子に対する結合活性を保持している、製造方法。
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