JP6591779B2 - 増ちょう剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な増ちょう剤およびこの増ちょう剤を配合したグリース、およびそれらの製造方法、ならびにこのグリースが封入されたグリース封入軸受に関する。特に家電や産業機器、自動車のエンジンルーム内で使用される電装補機などの高温高速回転で使用される軸受に封入して使用されるグリースおよび該グリース封入軸受に関する。
各種電装補機や産業機器などに組み込まれる転がり軸受には、潤滑性を付与するためにグリースが封入される。このグリースは基油および増ちょう剤と、必要に応じて添加剤とを混練して得られる。上記基油としては、鉱油やエステル油、シリコーン油、エーテル油等の合成潤滑油が、上記増ちょう剤としては、リチウム石けんなどの金属石けんやウレア化合物がそれぞれ一般的に使用されている。また、添加剤としては、必要に応じて酸化防止剤、さび止剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤などの各種添加剤が配合される。
家電や産業機器用モータ、電装補機などに使用される転がり軸受は、これらの機器の高性能化に伴い、高温および高速回転条件下で使用されるため、高温高速耐久性に優れていることが要求される。また、同時に静音性に優れていることも要求される。
従来、低温から高温まで広い温度範囲で良好な潤滑性を発揮し、軸受の冷時異音の発生を抑え、長時間にわたり高温耐久性に優れた軸受封入用グリースとして、合成炭化水素油と所定のエステル油とからなる基油に、ウレア系増ちょう剤を配合したものが知られている(特許文献1)。また、自動車のプーリ用軸受に用いられ、軸受の軌道面やボール表面の脆性剥離や冷時異音の発生を抑えるグリースとして、合成炭化水素とエステル油とからなる所定粘度の基油に、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を配合したものが知られている(特許文献2)。また、高温高速回転条件における焼き付き寿命が長いグリースとして、基油にエステル油を含み、増ちょう剤として所定のジウレア化合物を3〜30重量%含むグリースが知られている(特許文献3)。
特許文献1〜特許文献3に示されるように、高温耐久性に優れたグリースとして、ジウレア化合物を増ちょう剤に用いたものが知られている。これら各特許文献において使用されているジウレア化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネートとモノアミンとを反応させることで得られている。
しかしながら、上記各特許文献に示されるような、基油としてエステル油や合成炭化水素油を含む基油を用い、増ちょう剤としてジウレア化合物を用いた潤滑組成物であっても、該組成物を近年の家電や産業機器に用いられる軸受に封入した際に、これらの軸受に近年要求される高温高速耐久性などの性能を満足させることが必ずしもできないという問題がある。
たとえば、近年の自動車の高性能化・高出力化に伴い、電装補機部品の小型軽量化および高機能化・高速化が進んでおり、軸受の使用環境がますます高温化する傾向にある。電装補機軸受用グリースには、上記ジウレア化合物を用いたウレアグリースが多用されているが、180℃をこえる高温用途では耐熱性が不足し使用が困難である。このため、基油や増ちょう剤にフッ素化合物を用いたフッ素グリースが使用される場合がある。しかしながら、ウレアグリースに比較して、フッ素グリースは各段に高価なため、工業的に汎用に使用できないという問題がある。
高温高荷重用潤滑グリースとして、1分子中に2個の環状イミド結合を必須として、これに2個のウレア結合、ウレタン結合、またはアミド結合を有する化合物を増ちょう剤とする潤滑グリースが知られている(特許文献4)。
しかしながら、このイミド結合を含む化合物は、イミド結合単独ではなく、他のウレア結合、ウレタン結合、またはアミド結合との組み合わせを必須としている。ウレア結合、ウレタン結合、またはアミド結合は、ポリイミド樹脂と、ポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂との比較に見られるように、耐熱性がイミド結合に対して劣る。そのため、特許文献4に記載の増ちょう剤であっても、近年の高温高速耐久性などの性能を満足させることが出来ないという問題がある。
イミド化合物を増ちょう剤に用いたグリースとして、エステル系基油に特定のイミド構造を有する増ちょう剤を用いグリースが知られている(特許文献5)。しかしながら、これらのグリースよりも、さらに高温高速耐久性に優れたグリースが求められている。
特開平9−208982号公報 特許平11−270566号公報 特開2001−107073号公報 特開昭54−114506号公報 特開2011−168699号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高温高速耐久性に優れたグリースを製造できる増ちょう剤、その製造方法、この増ちょう剤を用いたグリース、およびこのグリースを封入したグリース封入軸受の提供を目的とする。
本発明の増ちょう剤は、芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとの配合割合で、両者をエステル油中で反応させて得られる芳香族ジイミド化合物からなる。この芳香族ジイミド化合物は、不活性雰囲気中にて所定の昇温速度で測定された熱重量曲線の微分曲線が1つのピークで表されることを特徴とする。ここで、熱重量曲線の微分曲線とは、熱重量曲線を表す関数を微分して得られる第一次導関数のグラフをいう。すなわち、関数y=f(x)のグラフが熱重量曲線であるとすると、微分曲線とは、関数y=f’(x)のグラフをいう。
本発明の増ちょう剤の製造方法は、芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとの配合割合で、両者をエステル油中で150℃以下の温度で反応させる第一の反応工程と、上記第一の反応工程後、反応生成物を不活性雰囲気中にて所定の昇温速度で測定した熱重量曲線の微分曲線が1つのピークで表される条件にて、上記エステル油中で反応させる第二の反応工程を有することを特徴とする。
特に上記第二の反応工程が180℃以上の温度で反応させることを特徴とする。
また、上記第一および第二の反応工程が、陰イオン性界面活性剤を添加して行なわれることを特徴とする。さらに、第三級アミン系触媒の存在下に行なわれることを特徴とする。
本発明のグリースは、基油に増ちょう剤を含んでなり、この増ちょう剤が上記本発明の増ちょう剤であることを特徴とする。
また、本発明のグリース封入軸受は上記本発明のグリースが封入されてなるグリース封入軸受であることを特徴とする。
本発明のグリースは、芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとをエステル油中にて所定の条件で反応させた増ちょう剤を用いているので、このグリースを封入する軸受の高温高速耐久性を向上させることができる。特に従来のジウレア化合物を増ちょう剤とする場合と比較して、高温高速耐久性を向上させることができる。
本発明のグリース封入転がり軸受は、上記グリースが封入されてなるので、高温高速耐久性に優れる。このため、近年において高温および高速回転条件下で使用される家電や産業機器のモータ用などの転がり軸受として好適に利用できる。
芳香族ジイミド化合物の生成過程を示す赤外スペクトル図である。 芳香族ジイミド化合物粉末の熱重量曲線である。 深溝玉軸受の断面図である。 実施例および比較例で得られた粉末の熱重量曲線である。 実施例1で得られた粉末のH−NMRチャートである。
芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとをエステル油中にて反応させて芳香族ジイミド化合物を得た。この芳香族ジイミド化合物を増ちょう剤として用いるグリースを封入した軸受の高温高速耐久性をより向上させるべく検討した。エステル油中で反応させて得られる芳香族ジイミド化合物の熱重量曲線を測定したところ、2段階に熱分解が生じていることが分かった。反応条件を検討して熱分解が1段階で生じる芳香族ジイミド化合物としたところ、上記高温高速耐久性のさらなる向上が見られた。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明に使用できる芳香族酸一無水物としては、芳香環内の隣接する2つの炭素原子がイミド環を形成するジカルボン酸一無水物が挙げられる。隣接する2つの炭素原子にそれぞれカルボキシル基が結合しており、これらジカルボキシが脱水して得られる酸一無水物基がジイソシアネート類の1つのイソシアネート基と反応してイミド環が形成される。
芳香族酸一無水物としては、無水フタル酸、無水ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中で無水フタル酸が好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、芳香環に直接イソシアネート基が結合している化合物であれば使用できる。例えば、フェニレンジイソシアネート、メチルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート等の芳香族単環式ジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルブタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート等の芳香族二環式ジイソシアネートが挙げられる。これら芳香族ジアミンは置換されていてもよい。これらの中で工業的に入手のし易さからジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
芳香族酸一無水物と芳香族ジイソシアネートとを反応させる溶媒としてのエステル油は、芳香族エステル油、ポリオールエステル油が挙げられる。これら芳香族エステル油、ポリオールエステル油はグリースの基油となる。グリースの基油としては、高温高速耐久性に優れることから、ポリオールエステル油を用いることが特に好ましい。
芳香族エステル油は、芳香族多塩基酸またはその誘導体と、高級アルコールとの反応で得られる化合物が好ましい。芳香族多塩基酸としては、トリメリット酸、ビフェニルトリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸、またはこれらの酸無水物などの誘導体が挙げられる。高級アルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコールなどの炭素数4以上の脂肪族1価アルコールが好ましい。芳香族エステル油の例としては、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。
ポリオールエステル油は、ポリオールと一塩基酸との反応で得られる分子内にエステル基を複数個有する化合物が好ましい。ポリオールに反応させる一塩基酸は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。なお、オリゴエステルの場合には二塩基酸を用いてもよい。
ポリオールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。一塩基酸としては、炭素数4〜18の1価の脂肪酸が挙げられる。例えば、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。
本発明の増ちょう剤の製造方法について説明する。
芳香族酸一無水物と芳香族ジイソシアネートとをエステル基油に溶解させて反応させることにより、芳香族ジイミド化合物が製造できる。
芳香族酸一無水物と芳香族ジイソシアネートとの配合割合は、反応性ある遊離基を残さないため、芳香族ジイソシアネートのイソシアネート基と芳香族酸一無水物の無水カルボン酸基とは略当量となるように、すなわち、芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとの割合で配合する。
上記反応において、反応触媒を用いることが好ましく、その触媒としては第三級アミン系触媒が好ましい。第三級アミン系触媒としてはトリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミンなどが挙げられる。触媒の配合量としては、芳香族ジイソシアネート1モル当たり0.3〜1.0モルであることが好ましい。
また、上記反応において、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤としては、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が好ましい。特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤の市販品としては、例えば、花王株式会社製、商品名ポイズ520、ポイズ532A、ホモゲノールL18、ホモゲノールL1820等が挙げられる。界面活性剤の配合量としては、界面活性剤を除いた配合量全体100質量部当たり1〜10質量部であることが好ましい。
エステル油中での反応温度を150℃以下、好ましくは90〜150℃に設定して、第一の反応工程を行なう。この工程で芳香族酸一無水物と芳香族ジイソシアネートとの脱炭酸反応により芳香族ジイミド化合物の生成が開始する。
図1は芳香族ジイミド化合物の生成過程を示す赤外スペクトル図である。図1(a)は150℃にて10時間反応させた後のFT−IRであり、図1(b)はさらに180℃にて3時間反応させた後のFT−IRである。
図1(a)に示すように、3000cm-1付近および1000〜1300cm-1付近のエステル油に起因するピークと共に、1780cm-1にイミド環に基づく特徴的なピークが認められた。
図1(b)に示すように、150℃にて10時間反応させた後、さらに180℃にて3時間反応させることにより、1780cm-1のピークがより明瞭になった。
150℃にて10時間反応させた反応生成物にベンジン、アセトンなどの非溶媒を加えて芳香族ジイミド化合物を沈殿・乾燥して芳香族ジイミド化合物の粉末を得た。
図2は、第一および第二の反応工程で得られた芳香族ジイミド化合物粉末の熱重量曲線である。熱重量曲線は熱重量測定装置により、アルミニウムパンに試料を詰めて、窒素雰囲気、昇温速度5℃/分の条件で室温から500℃まで昇温し、その時の重量減少を測定した。図2において、aは第一の反応工程後、bは第二の反応工程後の熱重量曲線であり、a’はaの微分曲線、b’はbの微分曲線である。図2に示すように、微分曲線a’において明瞭に2つのピークa'1およびa'2が認められ、ピークa'1に対応する約150℃付近から開始する約15%程度の重量減少と、ピークa'2に対応する250℃付近から徐々に開始する主重量減少と、2段階に熱分解が生じていることが分かった。
一方、第二の反応工程後の熱重量曲線bの微分曲線b’は単一のピークb'1を有しており、300℃付近から1つの熱分解が生じていることが分かった。
本発明は、熱分解が2段階になることを防ぐために、上記第一段階の反応生成物をエステル油中で反応させる第二の反応工程を有する。第二の反応工程を経ることにより、反応生成物の熱分解曲線が1段階の曲線となり、その微分曲線も1つのピークで表せる。
第二の反応工程における反応条件としては、150℃をこえる温度であればよいが、反応時間を考慮すると180℃以上の温度で反応させることが好ましい。より好ましくは180℃〜200℃、1〜3時間である。
第二の反応工程を経ることにより、図2に示すように、反応生成物の熱分解曲線が1段階の曲線bとなり、その微分曲線b’も1つのピークとなる。
本発明のグリースは、上記エステル油を基油とし、上記芳香族ジイミド化合物を増ちょう剤とするグリースとして利用できる。例えば、第二の反応工程を経た反応生成物をグリースとして利用できる。
グリースの基油に対して増ちょう剤としての上記芳香族ジイミド化合物の配合割合は、グリース全体に対して10〜60質量%であることが好ましい。10質量%未満では、グリースが軟化して漏洩しやすく軸受に封入することが困難になる。また60質量%をこえると硬質化して、軸受封入用のグリースとして実用性がなくなる。
本発明のグリースには、必要に応じて、アミン系やフェノール系の酸化防止剤を配合できる。このような酸化防止剤としては、p,p′-ジオクチルジフェニルアミン、N,N′-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどのアルキル化ジフェニルアミン、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、オレイルアミドアミン、フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、アルキルジチオりん酸亜鉛、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネートなどが挙げられる。また、セバシン酸ナトリウムを酸化防止剤として配合できる。
本発明のグリースには、その優れた性能を高めるため、必要に応じて他の公知の添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、塩素系、イオウ系、りん系化合物、有機モリブデンなどの極圧剤、石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、ソルビタンエステルなどのさび止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などが挙げられ、これらを単独または2種類以上組み合わせて添加できる。
本発明のグリース封入軸受の一例を図3に示す。図3は転がり軸受である深溝玉軸受の断面図である。グリース封入軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。また、この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等にシール部材6が固定され、少なくとも転動体4の周囲に本発明のグリース7が封入される。
実施例1
エステル油として、HATCO社製商品名ハトコールH3855(148mm2/s(40℃))を用いた。このエステル油62gに無水フタル酸20.6g(0.14モル)、ジフェニルメタンジイソシアネート(表1においてMDIと表す)17.4g(0.07モル)、および反応触媒としてトリエチレンジアミン5gを投入して、150℃で10時間反応させた。その後180℃の温度を維持して3時間放置した。生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。表1のグリース組成の単位は「g」である。なお、180℃で3時間放置後、反応物の一部を分取して多量のベンジンに投入して淡黄色粉末を得た。この粉末の熱重量曲線を上述した図2に示す条件で測定した。結果を図4に示す。
上記淡黄色粉末をダイレクトMS法(D−MS)により分子量を測定したところ、分子量は458.12であった。また元素分析を行なったところ、炭素75.4質量%、窒素6.1質量%、水素4.2質量%であった。さらに、H−NMRを測定した。H−NMRの結果を図5に示す。
これらの結果は、上記淡黄色粉末が下記化学構造を有する芳香族ジイミド化合物であることを示している。
実施例1で得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。さらに、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
< 高温高速耐久性試験>
転がり軸受(軸受寸法:内径20mm、外径47mm、幅14mm)に実施例1で得られたグリースを1.8g封入し、軸受外輪外径部温度を200℃、ラジアル荷重を67N、アキシャル荷重を67Nの下で10,000rpmの回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間(時間(h))をASTMD3336に準拠して測定した。
実施例2および実施例3
基油、増ちょう剤等を表1に示す割合で配合し、150℃で10時間反応させた後、180℃で2時間(実施例2)、1時間(実施例3)放置する以外は実施例1と同様にして半固形状のグリースを得た。実施例1と同一条件で測定した熱重量曲線を図4に示す。また、実施例1と同一条件で測定した混和ちょう度および高温高速耐久性試験を表1に示す。
実施例4
反応触媒としてトリエチレンジアミンを添加しない以外は実施例1と同様にして半固形状のグリースを得た。実施例1と同一条件で測定した混和ちょう度および高温高速耐久性試験を表1に示す。
実施例5
基油、増ちょう剤等を表1に示す割合で配合し、陰イオン界面活性剤として、花王株式会社製商品名ホモゲノールL1820を5g配合する以外は、実施例4と同様にして半固形状のグリースを得た。実施例1と同一条件で測定した混和ちょう度および高温高速耐久性試験を表1に示す。
比較例1
基油、増ちょう剤等を表1に示す割合で配合し、150℃で10時間反応させた。生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。なお、150℃で10時間反応後、反応物の一部を分取して多量のベンジンに投入して淡黄色粉末を得た。この粉末の熱重量曲線を上述した条件で測定した。結果を図3に示す。
比較例2および比較例3
基油、増ちょう剤等を表1に示す割合で配合し、150℃で10時間反応させた。生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。なお、比較例3で用いた非イオン界面活性剤は花王株式会社製商品名エマルゲン104Pである。実施例1と同一条件で測定した混和ちょう度および高温高速耐久性試験を表1に示す。
比較例4
表1 に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。MDIを基油半量に加熱溶解させ、これにp−トルイジンを同基油半量に加熱溶解させたものを加えた。p−トルイジンの配合量は、モル比でMDIの2 倍量である。生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。実施例1と同一条件で測定した混和ちょう度および高温高速耐久性試験を表1に示す。
表1に示すように、150℃で10時間反応後、さらに180℃で反応させて得た芳香族ジイミド化合物を増ちょう剤として用いた各実施例は、高温処理しなかった芳香族ジイミド化合物やジウレア化合物を増ちょう剤として用いた各比較例よりも高温高速耐久性に優れることが分かる。なお、実施例3は、比較例2と高温高速耐久性は同等であったが、比較例2よりも使用中の増ちょう剤の熱分解が少なく、運転初期に油分離し難い点において優れていた。
本発明のグリースは、芳香族ジイミド化合物を増ちょう剤とするので、高温高速耐久性に優れる。このため、近年において高温および高速回転条件下で使用される家電や産業機器のモータ用などの転がり軸受として好適に利用できる。
1 グリース封入軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース

Claims (4)

  1. 芳香族酸一無水物2モルと芳香族ジイソシアネート1モルとの配合割合で、前記芳香族酸一無水物および前記芳香族ジイソシアネートをエステル油中で反応させて得られる芳香族ジイミド化合物からなる増ちょう剤の製造方法であって、
    該芳香族ジイミド化合物は、不活性雰囲気中にて所定の昇温速度で測定された熱重量曲線の微分曲線が1つのピークで表され
    前記製造方法は、前記芳香族酸一無水物2モルと前記芳香族ジイソシアネート1モルとの配合割合で、前記芳香族酸一無水物および前記芳香族ジイソシアネートをエステル油中で150℃以下の温度で反応させる第一の反応工程と、
    前記第一の反応工程後、反応生成物を不活性雰囲気中にて所定の昇温速度で測定した熱重量曲線の微分曲線が1つのピークで表される条件にて、前記エステル油中で反応させる第二の反応工程を有し、
    前記第二の反応工程が180℃以上の温度で反応させることを特徴とする増ちょう剤の製造方法。
  2. 前記第二の反応工程の反応時間が2時間〜3時間であることを特徴とする請求項1記載の増ちょう剤の製造方法。
  3. 前記第一および第二の反応工程が、陰イオン性界面活性剤を添加して行なわれることを特徴とする請求項または請求項記載の増ちょう剤の製造方法。
  4. 前記第一および第二の反応工程が第三級アミン系触媒の存在下に行なわれることを特徴とする請求項、請求項または請求項記載の増ちょう剤の製造方法。
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