JP5908574B2 - グリースの製造方法 - Google Patents
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Description
従来、低温から高温まで広い温度範囲で良好な潤滑性を発揮し、軸受の冷時異音の発生を抑え、長時間にわたり高温耐久性に優れた軸受封入用グリースとして、合成炭化水素と所定のエステル油とからなる基油に、ウレア系増ちょう剤を配合したものが知られている(特許文献1参照)。また、自動車のプーリ用軸受に用いられ、軸受の軌道面やボール表面の脆性剥離や冷時異音の発生を抑えるグリースとして、合成炭化水素とエステル油とからなる所定粘度の基油に、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を配合したものが知られている(特許文献2参照)。また、高温高速回転条件における焼き付き寿命が長いグリースとして、基油にエステル油を含み、増ちょう剤として所定のジウレア化合物を 3〜30 重量%含むグリースが知られている(特許文献3参照)。
特許文献1〜特許文献3に示されるように、高温耐久性に優れたグリースとして、ジウレア化合物を増ちょう剤に用いたものが知られている。これら各特許文献において使用されているジウレア化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネートとモノアミンとを反応させることで得られている。
しかしながら、このイミド結合を含む化合物は、イミド結合単独ではなく、他のウレア結合、ウレタン結合、またはアミド結合との組み合わせを必須としている。ウレア結合、ウレタン結合、またはアミド結合は、ポリイミド樹脂と、ポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂との比較に見られるように、耐熱性がイミド結合に対して劣る。そのため、特許文献4に記載の増ちょう剤であっても、近年の高温高速耐久性などの性能を満足させることが出来ないという問題がある。
特にn=0であり、ジイソシアネートと酸一無水物との反応、またはモノイソシアネートと酸二無水物との反応により得られることを特徴とする。
脂肪族ジアミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ヘプチレンジアミン、オクチレンジアミン、ビス(2−アミノエトキシ)エタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、2,2’−ジアミノジエチルジスルフィド、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、これらの異性体等が挙げられる。
脂環族ジアミンおよびその他のジアミンとしては、モロホリンジアミン、1,3−ビス(3−アミノメチル)シクロヘキサン、4,4‘−ジアミノ−ジシクロヘキシル−メタン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、3,4−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサ[5,5]ウンデカン、ジアミノシロキサン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、3(4),8(9)−ビス(アミノエチル)トリシクロ{5,2,1,0}デカン、これらの異性体等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン、エチルフェニレンジアミン等の芳香族単環式ジアミン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメチルビフェニル、ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)エタン、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)ブタン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルフィド、ビス(アミノフェニル)スルホン等の芳香族二環式ジアミンが挙げられる。これら芳香族ジアミンは置換されていてもよい。
これらの中でもフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、ジアミノビフェニル、ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルフィド、ビス(アミノフェニル)スルホン、またはこれらのジイソシアネート誘導体が好ましい例として挙げられる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、これらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、酸一無水物、エステル、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、4,4'−スルホニルジフタル酸、m−タ−フェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸、4,4'−オキシジフタル酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−または3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−または3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ブタンテトラカルボン酸、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が例示される。
これらの酸の誘導体としては、隣接する2つのカルボキシル基が脱水して得られる酸二無水物、カルボキシル基のエステル、酸ハロゲン化物等が挙げられる。イミド環を生成しやすい酸二無水物が好ましい。
モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、アニリン、トルイジン、ドデシルアニリン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、アミノジフェニルエーテル、アミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
モノイソシアネートは、アミン類とホスゲンを反応させる公知の方法により、上記アミン類の誘導体として容易に得られる。
(i)H2NR1NH2で表されるジアミン1モルと、R2(CO)2Oで表されるジカルボン酸一無水物2モルとを有機溶媒、またはグリース基油中で反応させる。上記ジアミンに代えて、OCNR1NCOを使用することもできる。この場合上記式(1)においてn=0の化合物が得られる。
(ii)O(CO)2R3(CO)2Oで表されるテトラカルボン酸二無水物1モルと、H2NR1NH2で表されるジアミン2モルとを反応させて、イミド環を含み、末端アミノ基の化合物を得る。この末端アミノ基を有する化合物1モルにR2(CO)2Oで表されるジカルボン酸一無水物2モルを有機溶媒、またはグリース基油中で反応させる。この場合上記式(1)においてn=1の化合物が得られる。
また、テトラカルボン酸二無水物と、ジカルボン酸一無水物と、ジアミンとの反応モル比を変えて、逐次的に反応生成物を得ることにより、上記式(1)においてn=2〜5の化合物が得られる。
上記ジアミンに代えて、OCNR1NCOを使用することもできる。
(iii)O(CO)2R3(CO)2Oで表されるテトラカルボン酸二無水物1モルと、R4で表されるモノアミン2モルとを有機溶媒、またはグリース基油中で反応させる。上記モノアミンに代えて、R4NCOを使用することもできる。この場合上記式(2)においてn=0の化合物が得られる。
(iV)O(CO)2R3(CO)2Oで表されるテトラカルボン酸二無水物2モルと、H2NR1NH2で表されるジアミン1モルとを反応させて、イミド環を含み、末端カルボン酸無水物の化合物を得る。この末端カルボン酸無水物基を有する化合物1モルにR4NH2で表されるモノアミン2モルを有機溶媒、またはグリース基油中で反応させる方法。この場合上記式(2)においてn=1の化合物が得られる。
また、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、モノアミンとの反応モル比を変えて、逐次的に反応生成物を得ることにより、上記式(2)においてn=2〜5の化合物が得られる。
上記ジアミンに代えて、OCNR1NCOを、モノアミンに代えてR4NCO使用することもできる。
また、後述するグリースの基油を溶媒として使用することができる。
反応条件および操作方法は、特に限定されることなく、上記式(1)または式(2)で表される化合物、またはその中間体を生成できる条件であればよい。イミド環生成は、通常以下式(3)および式(4)で表される中間体を経由して生成するためである。
酸無水物と、アミンまたはイソシアネートとを適当な溶媒、または基油に溶解させ、反応温度を−10〜200℃、1〜5時間反応させることにより、上記式(1)または式(2)で表される化合物が得られる。
基油としては、鉱油、合成炭化水素油、エステル油、エーテル油、イオン液体、シリコーン油、フッ素油などが使用できる。
本発明に使用できる合成炭化水素油としては、脂肪族炭化水素油が好ましく、脂肪族炭化水素油の中でもPAO油、α-オレフィンとオレフィンとの共重合体等がより好ましい。これらは、α-オレフィン等の低重合体であるオリゴマーの末端二重結合に水素を添加した構造である。また、PAO油の1種であるポリブテンも使用でき、これはイソブチレンを主体とする出発原料から塩化アルミニウム等の触媒を用いて重合して製造できる。ポリブテンは、そのまま用いても水素添加して用いてもよい。
芳香族エステル油は、芳香族多塩基酸またはその誘導体と、高級アルコールとの反応で得られる化合物が好ましい。芳香族多塩基酸としては、トリメリット酸、ビフェニルトリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸、またはこれらの酸無水物などの誘導体が挙げられる。高級アルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコールなどの炭素数4以上の脂肪族1価アルコールが好ましい。芳香族エステル油の例としては、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。
ポリオールエステル油は、ポリオールと一塩基酸との反応で得られる分子内にエステル基を複数個有する化合物が好ましい。ポリオールに反応させる一塩基酸は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。なお、オリゴエステルの場合には二塩基酸を用いてもよい。
ポリオールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
一塩基酸としては、炭素数4〜18の1価の脂肪酸が挙げられる。例えば、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。なお、表1下部に示すように、エーテル油は松村石油研究所製:モレスコハイルーブLS150(150mm2/s(40℃))、エステル油はHATCO社製:ハトコールH3855(148mm2/s(40℃))、イオン液体はメルク社製:OMI−TFSI(91mm2/s(20℃))をそれぞれ用いた。
MDI(ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシアネート)と無水フタル酸とをアセトンおよびジメチルアセトアミド溶媒中で溶解させ、これに触媒としてトリエチレンジアミンを加えた。無水フタル酸の配合量は、モル比でMDIの2倍である。
混合溶液を50℃で24時間反応させて、得られた反応生成物を多量のアセトンで洗浄後乾燥して、粉末状の化合物を得た。この化合物は赤外分光分析の結果、略1780cm-1にイミド環に基づく吸収が認められた。
得られた粉末状の化合物全量をエーテル油50gに加えて撹拌した後、ロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
MDIと酸一無水物とを基油に加熱溶解させ、これに触媒としてトリエチレンジアミンまたはテトラエチレンジアミンを加えた。酸一無水物の配合量は、モル比でMDIの2倍である。
基油溶液を90〜150℃で10時間反応させて、生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。なお、実施例4は、酸化防止剤としてのセバシン酸ナトリウムを添加し撹拌した後、ロールミルに通した。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
ジメチルアセトアミド溶媒100gにDDE(4,4'−ジアミノジフェニルエーテル)21.9gを溶解させて、溶液を0℃に冷却して、この溶液中にPMDA(ピロメリット酸無水物)11.9gを粉末で添加して透明な溶液を得た。DDEの配合量はモル比でPMDAの2倍である。この溶液に無水フタル酸を16.2g添加して、十分に撹拌した。その後、溶液温度を120℃に上昇させ、この温度で1時間反応させることにより沈殿物を得た。沈殿物を多量のアセトンで洗浄後乾燥して、粉末状の化合物を得た。この化合物は赤外分光分析の結果、略1780cm-1にイミド環に基づく吸収が認められた。
得られた粉末状の化合物全量をエーテル油50gに加えて、ロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
基油中でDDEと無水フタル酸をモル比で1:2で加熱融解させた。基油溶液を90〜150℃で10時間反応させて、生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
ジメチルアセトアミド溶媒100gにp−ドデシルアニリン28.2gを溶解させて、溶液を0℃に冷却して、この溶液中にPMDA11.8gを粉末で添加して透明な溶液を得た。p−ドデシルアニリンの配合量はモル比でPMDAの2倍である。その後、溶液温度を120℃に上昇させ、この温度で1時間反応させることにより沈殿物を得た。沈殿物を多量のアセトンで洗浄後乾燥して、粉末状の化合物を得た。この化合物は赤外分光分析の結果、略1780cm-1にイミド環に基づく吸収が認められた。
得られた粉末状の化合物全量をエステル油60gに加えて、ロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
基油中でPMDAとモノアミンをモル比で1:2で加熱融解させた。基油溶液を90〜150℃で10時間反応させて、生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で基油および増ちょう剤の原料を使用してグリースを作製した。
MDIを基油半量に加熱溶解させ、これにp−トルイジンを同基油半量に加熱溶解させたものを加えた。p−トルイジンの配合量は、モル比でMDIの2倍量である。
生成したベースグリースをロールミルに通し、半固形状のグリースを得た。得られたグリースの混和ちょう度の測定結果を表1に示す。また、以下に示す高温高速耐久性試験を行ない、これらの結果を表1に併記する。
転がり軸受(軸受寸法:内径 20mm、外径 47mm、幅 14mm)に各実施例、比較例のグリースを1.8g封入し、軸受外輪外径部温度を180℃、200℃、ラジアル荷重を67N、アキシャル荷重を67Nの下で10,000rpmの回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間(時間(h))を測定した。結果を表1に併記する。
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
Claims (6)
- 前記R1およびR2は、それぞれ独立に、脂肪族、脂環族、または芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載のグリースの製造方法。
- 前記R1 およびR2は、芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載のグリースの製造方法。
- 前記反応がアミン系触媒の存在下に行なわれることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のグリースの製造方法。
- 前記アミン系触媒がジアミンであることを特徴とする請求項4記載のグリースの製造方法。
- 前記基油がエーテル油、エステル油およびイオン液体から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のグリースの製造方法。
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