JP6589709B2 - 電磁アクチュエータ - Google Patents
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Description
このように、永久磁石が固定される基端部の磁気短絡を抑制する課題と、カムシャフトに当接する出力ピンの先端部の強度を確保する課題とを両立するため、特許文献1、2に開示された電磁アクチュエータでは、非磁性材で形成された基端部と磁性材で形成された先端部とを結合し、出力ピンを構成している。
本発明は、上述の問題に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡易な構成で、出力ピンの基端部における磁気短絡の抑制と先端部における強度の確保とを両立する電磁アクチュエータを提供することにある。
出力ピンは、磁性体で形成されており、軸方向に前進後退可能に設けられている。
ステータは、軟磁性体で形成され、永久磁石に対し出力ピンの基端部側に設けられている。
コイルは、通電時、永久磁石の磁界と逆方向の磁界を生成し、ステータと永久磁石との間に反発力が発生する。
さらには、電磁アクチュエータは、軟磁性体で形成され、永久磁石に対して出力ピンの基端側で、出力ピンの基端面が露出するように永久磁石に接合されるリアプレートをさらに備え、短絡抑制部は、永久磁石の磁気短絡の抑制に寄与する部分の深さである有効深さが基端面からリアプレートと永久磁石との接合面までの距離よりも長くなるように形成されていることが好ましい。また、出力ピンは、永久磁石における先端部側の端面(454)から出力ピンの基端面(611)に向かって、少なくとも一部の径が縮小するように形成されていることが好ましい。このような構成によって、短絡抑制部(161)が形成される。
第1実施形態の電磁アクチュエータ101の構成について、図1〜図6を参照して説明する。以下、実施形態の説明では、第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
電磁アクチュエータ101を適用するバルブリフト調整装置50の概略構成および作用について図1、2を参照して簡単に説明する。
小リフトカム58と大リフトカム59とは、スライダ51の軸方向中央よりに、互いに隣接して設けられ、回転方向の一方で基準円に対し、外側に偏心している。また大リフトカム59の形状は、小リフトカム58よりも基準円からの偏心量が大きくなるように形成されている。
吸気バルブリフト52は、小リフトカム58と大リフトカム59とに当接し、シリンダヘッド53に収容された吸気バルブ91を有する。
電磁アクチュエータ101は、一体となったスライダ51とカムシャフト94と当接されており、電磁アクチュエータ101の出力ピン60が、係合溝511の直上に位置している。
図1、図2に示すように、吸気バルブリフト52に当接する小リフトカム58または大リフトカム59のトルクにより、吸気バルブリフト52を押し下げ、これにより、シリンダヘッド53の吸気バルブ91がリフト量L1またはリフト量L2だけ開弁する。
図3、図4に示すように、電磁アクチュエータ101は、エンジンヘッド90の取り付穴92に取り付けられ、バルブリフト調整装置50のカムシャフト94に対して出力ピン60が作動する。
コイル31は、ステータ32に外挿されたボビン30の外周に巻線が巻回されることで構成される。ボビン30は樹脂で形成され、コイル31の巻線とステータ32とを絶縁する。コイル31に対し可動部14と反対側には、コネクタ部17と一体に樹脂モールド部16が設けられている。図示しない外部の電源からコネクタ部17のターミナル18を経由して通電されることにより、コイル31は磁界を生成する。この磁界により発生する電磁力の作用については後述で説明する。
ヨーク35のスリーブ70側の開口部には、エンジンヘッド90への取り付けに用いられる鍔部39が形成されている。
筒部73は、先端面74がカムシャフト94に対向するように基部71から突出している。また、筒部73の中心軸に沿って、出力ピン60が挿通される挿通穴75が形成されている。
永久磁石40は、径方向の断面形状が円形の板状であり、出力ピン60の基端部61に固定されており、例えばリアプレート44側がN極、フロントプレート45側がS極(図5参照)というように軸方向の両端が互いに異なる極性となるように着磁されている。なお、N極およびS極の配置は逆であってもよい。
永久磁石40は、中心軸Oに沿って、出力ピン60の基端部61が挿入される挿入穴401を有している。
以下、リアプレート44のコイル31側の端面を後端面443、フロントプレート45のスリーブ70側の端面を前端面457という。また、リアプレート44の永久磁石40側の端面をリア接合面445といい、フロントプレート45の永久磁石40側の端面をフロント接合面454という。
第1実施形態では、有効深さD1は、D1>βとなるように設定されている。
なお、穴の加工方法は、ドリル等の工具による機械加工、放電加工等、何でもよい。
非通電状態では、リアプレート44の後端面443とステータ32の対向部端面340との間の磁気吸引力により、可動部14は後退限に保持される。この磁気吸引力は、少なくとも、引込みストロークLuに対応する引込み位置から後退限まで可動部14を吸引可能となるように設定される。
永久磁石40の磁気吸引力によって可動部14が後退限に保持されたとき、破線矢印ΦMで示すように「永久磁石40のN極→リアプレート44→ステータ32→ヨーク35→フロントプレート45→永久磁石40のS極」というルートで磁気回路が生成される。
フロントプレート45の前端面457がスリーブ70の端面72に近づくと、図4に示すように、前端面457と端面72との間の磁気吸引力により、可動部14は前進限に保持される。
図6に示すように、穴201が形成されていることにより、出力ピン60を経由して永久磁石40のN極とS極とを連絡する磁気の通路(磁路)の断面積が絞られる。したがって、磁極間の磁気短絡を抑制するように作用する。
ここで、穴201により、出力ピン60を経由しての永久磁石40のN極から永久磁石40のS極への短絡は、ほとんど無視できると考えられる。したがって、磁力線を図示しない。
(第2実施形態)
第2実施形態の電磁アクチュエータ102について、第1実施形態の図6に対応する図7(a)を参照して説明する。第1実施形態の電磁アクチュエータ101と比較して、短絡抑制部としての穴の深さが異なる。
第2実施形態において、穴202が形成されるため、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第1実施形態と同様の作用により、短絡磁気の磁力線を図示しない。
第3実施形態の電磁アクチュエータ103について、第1実施形態の図6に対応する図7(b)を参照して説明する。第3実施形態も同様、短絡抑制部としての穴の深さが異なる。
(効果)
(1)図8(a)(b)は、可動部14のストロークと、永久磁石40の吸引力特性との関係を示した図である。横軸のストロークL0は後退限を示し、ストロークLmaxは前進限を示す。縦軸は、吸引力0の線を基準として、正方向に大きいほど後退方向への吸引力が大きく、負方向に大きいほど前進方向への吸引力が大きいことを意味する。非通電状態では、L0の位置での吸引力は、リアプレート44とステータ32との保持力であり、大きいほど保持力が高いことを意味する。また吸引力が高いことは、エンジン内の振動と可動部14の自重によって、リアプレート44とステータ32とが外れることなく保持され、電磁アクチュエータの駆動の安定性が増すことを意味する。
図18に、磁性体で形成された出力ピン69に短絡抑制部が形成されていない第2比較例の電磁アクチュエータ109を示す。第2比較例の電磁アクチュエータ109の参照特性Ref2を二点破線で図8に示す。
第1比較例の参照特性Ref1は、出力ピンに非磁性体を用いているため、出力ピンでの磁気回路の短絡がなく、ΦMsが無視でき、L0の位置での吸引力(保持力)は参照特性Ref2と比較して大きくなっている。
第2比較例の参照特性Ref2は、出力ピン69に磁性体を用いており、図18に示すように、短絡した磁気回路ΦMsへ磁気が通るため、磁気回路ΦMへ通る磁気が減少し、L0の位置での吸引力(保持力)は参照特性Ref1と比較して小さくなっている。
第4実施形態では、出力ピンの形状が異なる点を除き、第1から第3実施形態と同様である。
第4実施形態の電磁アクチュエータ104における出力ピン160は、フロント接合面454から基端面611に向かって、基端部61の径が縮小するように形成されている。ここで、フロント接合面454は、永久磁石40における出力ピン160の先端部64側の端面に一致する。
図9に示すように、先端部64の径をW1とし、基端部61の基端面611の径をW2とする。
図11に示すように、径が縮小されている範囲Sにおいて出力ピン160の磁気が絞られるため、第1実施形態と同様の効果を奏し、参照特性Ref1および参照特性Ref2と比較すると、第4実施形態の特性A4では大きい吸引力(保持力)が得られる。
(i)出力ピン60の外側面612と離間しつつ、永久磁石40の磁極間の磁気短絡を抑制するように形成された短絡抑制部に関する他の実施形態の例を図12、図13に示す。
図12(a)、(b)に示す形態では、有効深さD4>βとなるように、短絡抑制部としての複数(例えば4つ)の穴204が形成されている。ここで、図12(b)では、出力ピン60のみの断面図を記載する。
図13(a)、(b)に示す形態では、有効深さD5>βとなるように、短絡抑制部としての環状溝205が形成されている。図13(b)では、出力ピン60のみの断面図を記載する。
さらに、短絡抑制部は、有底穴ではなく、出力ピンの基端面から先端面まで貫通する貫通穴としてもよい。このように、短絡抑制部は数や形状を問わず、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
オイル排出用の溝や、研磨加工時の保芯に用いられるセンタ穴は本発明の短絡抑制部に含まれない。永久磁石に出力ピンが挿入される高さを決めるために、出力ピンが段付き形状の断面を有することがある。センタ穴と同様に、挿入高さ決め用の段付き形状の出力ピンの径が縮小されている範囲は、本発明の短絡抑制部に含まれない。
樹脂やゴムといった非磁性部材206は、磁性体よりも硬度が低いため摩耗しやすく、自己犠牲により出力ピンを保護する効果すなわち出力ピン60とステータ32との接触による摩耗抑制効果も奏する。さらに、出力ピンの共振周波数が変化するため、防振効果も奏する。
また、図16(a)(b)に示すように、電磁アクチュエータ106における出力ピン180は多段付き形状になっていてもよい。さらに、リア接合面445から基端面611に向かう範囲において径が縮小するように出力ピンを形成してもよい。
さらに、図17(a)(b)に示すように、第4実施形態と第1実施形態とを組み合わせてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
201〜204 ・・・穴(短絡抑制部)、
205 ・・・環状溝(短絡抑制部)、
31 ・・・コイル、
32 ・・・ステータ、
40 ・・・永久磁石、 401 ・・・挿入穴、
60、160 ・・・出力ピン、 61 ・・・基端部、 64 ・・・先端部、
611 ・・・基端面、 612 ・・・外側面。
Claims (5)
- 磁性体で形成され、軸方向に前進後退可能に設けられている出力ピン(60、160)と、
前記出力ピンの基端部(61)が挿入される挿入穴(401)を有し、前記挿入穴に貫通し保持された前記出力ピンと共に移動可能であり、軸方向の両端が互いに異なる極性となるように着磁された板状の永久磁石(40)と、
軟磁性体で形成され、前記永久磁石に対し前記基端部側に設けられたステータ(32)と
通電時、前記永久磁石の磁界と逆方向の磁界を生成し、前記ステータと前記永久磁石との間に反発力が発生するコイル(31)と、
を備え、
前記出力ピンは、前記出力ピンの周縁部(613)を残しつつ、軸方向の所定範囲に、前記永久磁石の磁極間の磁気短絡を抑制するように形成された一つ以上の穴(201、202、203、204)または環状溝(205)を少なくとも含む短絡抑制部を有する電磁アクチュエータ。 - 軟磁性体で形成され、前記永久磁石に対し前記基端部側で、前記出力ピンの基端面(611)が露出するように前記永久磁石に接合されるリアプレート(44)をさらに備え、
前記短絡抑制部は、前記永久磁石の磁気短絡の抑制に寄与する部分の深さである有効深さが、前記基端面から前記リアプレートと前記永久磁石との接合面(445)までの距離(α)よりも長くなるように形成されている請求項1に記載の電磁アクチュエータ。 - 前記短絡抑制部は、前記有効深さが、前記基端面から前記永久磁石における前記出力ピンの先端部(64)側の端面(454)までの距離(β)よりも長くなるように形成されている請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記短絡抑制部を形成する一つ以上の穴または環状溝に、非磁性部材(206)が埋め込まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記出力ピンは、前記永久磁石における前記出力ピンの先端部(64)側の端面(454)から前記出力ピンの基端面(611)に向かって、少なくとも一部の径が縮小するように形成され、
前記短絡抑制部は、前記出力ピンの径が縮小されている前記出力ピンの範囲(S)を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁アクチュエータ。
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