JP6428484B2 - 電磁アクチュエータ - Google Patents
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Description
例えば特許文献1に開示された電磁アクチュエータは、内部に導入されたオイルによりステータ(5)内周とシャフト(2)外周との摺動面が張り付き、出力ピンの作動時間が遅くなることを防止するため、シャフト(2)の外周に通気用の溝が形成されている。
また、リアプレートとステータとの端面間のクリアランスを大きくすると、オイルが排出されやすくなる反面、磁気ギャップにより、リアプレートを後退限で保持する保持力が低下するという問題がある。
出力ピンは、バルブリフト調整装置のカムシャフトに対し前進可能に設けられ、且つ、カムシャフトに当接した先端部がカムシャフトのトルクにより後退方向に押し戻される。
板状の永久磁石は、出力ピンの基端部において軸方向の両端が互いに異なる極性となるように着磁され、出力ピンと共に移動する。
ステータは、軟磁性体で形成され、リアプレートに対し永久磁石とは反対側で対向する対向部の端面の一部に、「オイルが進入可能であり、且つ進入したオイルが自重によって排出可能な一つ以上の凹部」が形成され、外周に沿って対向部の端面を構成する周縁部が設けられている。
コイルは、通電時、永久磁石の磁界と逆方向の磁界を生成しステータとリアプレートとの間に反発力を発生させる。
凹部から一旦オイルが排出し始めると、凹部に空気が入り、オイルの排出が更に促進される。よって、本発明では、保持力を維持しつつ、オイルの粘性抵抗による出力ピンの作動の遅れやばらつきを防止することができる。
また、出力ピンが水平方向に沿って配置されたとき、ステータの凹部は、少なくとも一部が重力方向に延びるように形成されている。具体的に本発明の第一の態様では、ステータの凹部は、中心軸を含み出力ピンが水平方向に沿って配置されたとき重力方向に延びる長形状に形成された島部と、周縁部との間に環状に形成されている。本発明の第二の態様では、ステータの凹部は、中心軸を含み出力ピンが水平方向に沿って配置されたとき重力方向に延びる長形状に形成され、上端及び下端が周縁部に接続された島部と、周縁部との間に、中心軸を通る鉛直線に対し線対称に二つ形成されている。これにより、凹部のオイルが下方に落ちやすくなる。ここで、水平方向とは厳密な水平に限らず、「水平方向に沿って配置された」とは、おおよそ横に向いた状態を意味する。
(第1実施形態)
第1実施形態の電磁アクチュエータの構成について、図1〜図6を参照して説明する。図1、図2に示すように、電磁アクチュエータ10は、エンジンヘッド90の取付穴92に取り付けられ、バルブリフト調整装置のカムシャフト94に対して出力ピン60を作動させる。また、図中に重力方向を示すように、電磁アクチュエータ10は、出力ピン60がおおよそ水平方向に沿って設置されているものとする。
図1は、出力ピン60が後退限にある状態を示し、図2は、出力ピン60が前進限にある状態を示している。また、出力ピン60のカムシャフト94側の端部を先端部64といい、先端部64とは反対側の端部を基端部61という。
一方、出力ピン60の先端部64がカムシャフト94に当接した状態で長径Rb側が出力ピン60に向くようにカムシャフト94が回転すると、出力ピン60は、カムシャフト94のトルクにより後退方向に押し戻される。このとき、引込みストロークLuの位置までは押し戻され、引込みストロークLuの位置から後退限までは、電磁アクチュエータ10自体の永久磁石40の磁力によって後退する。
コイル51は、ステータ521に外挿されたボビン50の外周に巻線が巻回されることで構成される。ボビン50は樹脂で形成され、コイル51の巻線とステータ521とを絶縁する。コイル51に対し可動部14と反対側には、コネクタ部17と一体に樹脂モールド部16が設けられている。図示しない外部の電源からコネクタ部17のターミナル18を経由して通電されることにより、コイル51は磁界を生成する。この磁界により発生する電磁力の作用については後述する。
また、凹部211について「環状」とは、単に中央部の周囲を取り囲む形状であることを意味し、幅が一定である等の「輪」の概念に限定解釈されるものではない。
この凹部211には、スリーブ70のオイル通路76を経由して導入されたオイルが進入可能であり、且つ進入したオイルが自重によって排出可能である。
凹部211が深い方が排出性が良くなる反面、磁気伝達力は低下する傾向にあるため、それらのバランスから、最適な仕様を決めることが好ましい。なお、面取は、製造上の理由等により、適宜設定すればよい。
樹脂モールド部16の外周、及びステータ521の対向部54の外周には、それぞれ、ヨーク55の内周との間のシールを確保するシールリング81、82が設けられている。シールリング82を収容するスペースをボビン50側に形成するため、ステータ521の対向部54は、周縁部が比較的、肉薄に形成されている。
ヨーク55のスリーブ70側の開口部には、エンジンヘッド90への取り付けに用いられる鍔部59が形成されている。
筒部73は、先端面74がカムシャフト94に対向するように基部71から突出している。また、筒部73の中心軸に沿って、出力ピン60が挿通される挿通穴75が形成されている。
永久磁石40は、径方向の断面形状が円形の板状であり、出力ピン60の基端部61に固定されている。永久磁石40は、例えばリアプレート44側がN極、フロントプレート45側がS極(図3参照)というように軸方向に着磁されている。なお、N極及びS極の配置は逆であってもよい。
以下、リアプレート44のコイル51側の端面を後端面443、フロントプレート45のスリーブ70側の端面を前端面457という。また、リアプレート44及びフロントプレート45の永久磁石40側の端面を、それぞれ接合面444、454という。
なお、この構成では、リアプレート44とフロントプレート45との磁気短絡を防止するため、出力ピン60は非磁性体で形成されている。
永久磁石40の磁気吸引力によって可動部14が後退限に保持されたとき、破線矢印ΦMで示すように「永久磁石40のN極→リアプレート44→ステータ521→ヨーク55→フロントプレート45→永久磁石40のS極」というルートで磁気回路が生成される。
一方、ヨーク55の内周壁56とリアプレート44及び永久磁石40との間は、磁気が短絡することを防止するため、磁気ギャップを大きめに確保する必要がある。そのため、フロントプレート45の外径は、永久磁石40の外径よりも大きく形成されている。
フロントプレート45の前端面457がスリーブ70の端面72に近づくと、図2に示すように、前端面457とスリーブ端面72との間の磁気吸引力により、可動部14は前進限に保持される。
(1)まず、リアプレート44とステータ521との間に残ったオイルLの排出性に関して図6を参照する。図6(a)に示すように、ステータ521とリアプレート44との間のクリアランスが比較的小さいと、毛細管現象により、端面間のオイルLは排出されにくい。すると、オイルLの粘性により端面同士が張り付き、出力ピン60の作動時間が遅くなったり、ばらついたりするという問題がある。
一方、ステータ521とリアプレート44との間のクリアランスが比較的大きいと、オイルLは自重で落下し排出される。しかしその反面、対向部端面540の全体をリアプレート44から遠ざけると、磁気ギャップにより保持力が低下するという問題が生じる。
これにより、リアプレート44の端面443と凹部211の底面との間のクリアランスを比較的大きく確保することができる。したがって、凹部211において毛細管現象の発生を回避し、凹部211に進入したオイルの自重によってオイルを排出させることができる。また、凹部211以外の部分である周縁部210及び島部219では、クリアランスの小さい」対向部端面540の総面積を確保し、保持力を維持することができる。
凹部211から一旦オイルLが排出し始めると、凹部211に空気が入り、オイルLの排出が更に促進される。よって、本実施形態では、保持力を維持しつつ、オイルLの粘性抵抗による出力ピン60の作動の遅れやばらつきを防止することができる。
言い換えれば、基端側端面62の当接範囲のうち、少なくとも座面としての機能を確保し、磁気力を有効に伝達可能な面積を有する範囲が島部219に含まれればよい。
以下、ステータの凹部形状のバリエーションに関する第2〜第12実施形態について、図7〜図12を参照して説明する。図7〜図12では、図4と同様に、対向部端面540を破線ハッチングで示す。第2〜第12実施形態の全てにおいて、凹部は、「オイルが進入可能であり、且つ進入したオイルが自重によって排出可能」に形成されている。また、凹部は、出力ピン60の基端側端面62が当接する範囲を避けて形成されている。
また、図中に重力方向を記した第3、第4、第9、第10実施形態では、紙面の上下方向を、現実に配置された部材の上下方向又は縦方向として記載する。
なお、特許請求の範囲における凹部及び周縁部の参照符号の記載は、煩雑になることを防ぐため、詳細を省略して記載する。
図7に示す第2実施形態のステータ522は、第1実施形態と同様に、周縁部220と中央の島部229との間に環状の凹部221が形成されている。島部229は、中央部から放射状に複数(例えば4つ)の突起部がつながっている。
第2実施形態では、重力方向に対する指向性を明確に有しない回転対称系の形状が採用される。この明細書では、360°を3方向以上に均等分割した形状を回転対称系の形状という。以下の回転対称系の実施形態では、電磁アクチュエータ10の製造時において、少なくともオイル排出に関連する範囲でのステータの組付方向の管理が不要となる。
図8に示す第3、第4実施形態のステータ523、524は、重力方向に延びる縦長の凹部が鉛直線Vに対し線対称に2つ形成されている。
図8(a)に示す第3実施形態のステータ523は、第1実施形態に対し、中央縦長の島部239が上下に延長され周縁部230と一体に設けられている。2つの凹部231、232は三日月状を呈している。
第3、第4実施形態では、凹部231、232又は凹部241、242に進入したオイルが下方に落ちやすくなる。
図9に示す第5、第6実施形態のステータ525、526は、回転対称系の4つの凹部が形成されている。
図9(a)に示す第5実施形態のステータ525は、4つの円形の凹部251〜254が出力ピン60の基端側端面62の当接部を避けて形成されている。図9(b)に示す第6実施形態のステータ526は、4つの略扇形の凹部261〜264が出力ピン60の基端側端面62の当接部を避けて形成されている。第5、第6実施形態のいずれも、凹部同士の間の部分は、周縁部250、260と一体につながっている。
図10に示す第7、第8実施形態のステータ527、528は、第1〜第6実施形態のように周縁部を有しておらず、回転対称系の島部のみで対向部端面540を構成する。
図10(a)に示す第7実施形態のステータ527は、中央の円形の島部279と、島部279の周囲に配置された複数(例えば4つ)の円形の島部275〜278とが一体につながった形に設けられている。図10(b)に示す第8実施形態のステータ528は、第2実施形態に類似する島部289と、島部289の周囲に離散して配置された複数(例えば4つ)の円形の島部285〜288とが設けられている。
図11に示す第9、第10実施形態のステータ529、530は、周縁部の一部が欠落し、凹部がステータの外周に連通している。
図11(a)に示す第9実施形態のステータ529は、第4実施形態に対し、鉛直線Vの一方(例えば左側)の凹部291が下方の外周に連通し、他方(例えば右側)の凹部292が上方の外周に連通している。また、凹部291側の半周縁部297の上端、及び、凹部292側の半周縁部298の下端は、中央縦長の島部299に連続している。すなわち、鉛直線Vの一方側と他方側とが中心軸Oに対し点対称に形成されている。
第9、第10実施形態では、第3、第4実施形態と同様に、凹部291、292又は凹部301、302に進入したオイルが下方に落ちやすくなる。
図12に示す第11、第12実施形態のステータ531、532は、周縁部310、320と中央の島部319、329との間に環状の凹部が形成されているという点で、第1、第2実施形態と共通している。ただし、第11、第12実施形態では、複数の凹部の結合により環状の凹部が形成されている。
(ア)電磁アクチュエータ10の可動部14における部材同士の接合について、出力ピン60がフロントプレート45、永久磁石40及びリアプレート44の3部材を貫通する形態に限らない。例えば、リアプレート、永久磁石及びフロントプレートの3部材が予め接合され、その接合体のフロントプレート部分に出力ピンの基端部を接合するようにしてもよい。
(ウ)その他、ステータの対向部端面に凹部が形成されるという構成以外の電磁アクチュエータの各部の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、ステータ、ヨーク等の磁気回路構成部材の形状や位置関係は適宜変更してよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
211、221、231、232、241、242、251〜254他 ・・・凹部、
40 ・・・永久磁石、
44 ・・・リアプレート、
51 ・・・コイル、
521〜532・・・ステータ、
54 ・・・対向部、 540・・・対向部端面、
60 ・・・出力ピン、
61 ・・・基端部、 62 ・・・基端側端面、 64 ・・・先端部、
94 ・・・カムシャフト。
Claims (3)
- 内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブのリフト量を調整するバルブリフト調整装置に適用され、電磁力により出力ピンを駆動する電磁アクチュエータであって、
前記バルブリフト調整装置のカムシャフト(94)に対し前進可能に設けられ、且つ、前記カムシャフトに当接した先端部(64)が前記カムシャフトのトルクにより後退方向に押し戻される出力ピン(60)と、
前記出力ピンの基端部(61)において軸方向の両端が互いに異なる極性となるように着磁され、前記出力ピンと共に移動する板状の永久磁石(40)と、
軟磁性体で形成され、前記永久磁石に対し前記出力ピンの基端側で前記永久磁石に接合されたリアプレート(44)と、
軟磁性体で形成され、前記リアプレートに対し前記永久磁石とは反対側で対向する対向部(54)の端面(540)の一部に、オイルが進入可能であり、且つ進入したオイルが自重によって排出可能な一つ以上の凹部(211)が形成され、外周に沿って前記対向部の端面を構成する周縁部(210)が設けられたステータ(521)と、
通電時、前記永久磁石の磁界と逆方向の磁界を生成し前記ステータと前記リアプレートとの間に反発力を発生させるコイル(51)と、
を備え、
前記ステータの前記凹部は、中心軸を含み前記出力ピンが水平方向に沿って配置されたとき重力方向に延びる長形状に形成された島部(219)と、前記周縁部との間に環状に形成されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブのリフト量を調整するバルブリフト調整装置に適用され、電磁力により出力ピンを駆動する電磁アクチュエータであって、
前記バルブリフト調整装置のカムシャフト(94)に対し前進可能に設けられ、且つ、前記カムシャフトに当接した先端部(64)が前記カムシャフトのトルクにより後退方向に押し戻される出力ピン(60)と、
前記出力ピンの基端部(61)において軸方向の両端が互いに異なる極性となるように着磁され、前記出力ピンと共に移動する板状の永久磁石(40)と、
軟磁性体で形成され、前記永久磁石に対し前記出力ピンの基端側で前記永久磁石に接合されたリアプレート(44)と、
軟磁性体で形成され、前記リアプレートに対し前記永久磁石とは反対側で対向する対向部(54)の端面(540)の一部に、オイルが進入可能であり、且つ進入したオイルが自重によって排出可能な一つ以上の凹部(232、242)が形成され、外周に沿って前記対向部の端面を構成する周縁部(230、240)が設けられたステータ(523、524)と、
通電時、前記永久磁石の磁界と逆方向の磁界を生成し前記ステータと前記リアプレートとの間に反発力を発生させるコイル(51)と、
を備え、
前記ステータの前記凹部は、中心軸を含み前記出力ピンが水平方向に沿って配置されたとき重力方向に延びる長形状に形成され、上端及び下端が前記周縁部に接続された島部(239、249)と、前記周縁部との間に、前記中心軸を通る鉛直線に対し線対称に二つ形成されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 前記ステータの前記凹部は、前記出力ピンの基端側端面(62)が当接する範囲を避けて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
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