以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る給水システムを示す模式図である。この給水システムは、高層建築物に使用される直結式の給水システムである。図1に示すように、この給水システムは、水道本管2に直結される第1の増圧ポンプ装置BP1と、第1の増圧ポンプ装置BP1に直列に連結された第2の増圧ポンプ装置BP2とを有している。第1の増圧ポンプ装置BP1は、グランドレベルまたは地下に設置されており、第2の増圧ポンプ装置BP2は、建物1の内部に設置されている。
第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込口は、導入管5を介して水道本管2に接続されている。第1の増圧ポンプ装置BP1の吐出口と第2の増圧ポンプ装置BP2の吸込口とは第1の配水管7によって連結されており、この第1の配水管7は、建物1の各給水栓9に枝管12を介して連通している。第2の増圧ポンプ装置BP2の吐出口には、第2の配水管15が接続されており、この第2の配水管15は、建物1の各給水栓10に枝管13を介して連通している。給水栓10は給水栓9よりも高い階層に設置されている。例えば、給水栓9は建物1の下層階に設置され、給水栓10は建物1の上層階に設置される。給水栓9および給水栓10の典型例は、蛇口である。第1の増圧ポンプ装置BP1は、水道本管2からの水を増圧して建物1の各給水栓9に水を供給し、第2の増圧ポンプ装置BP2は、第1の増圧ポンプ装置BP1から移送された水を増圧して建物1の各給水栓10に水を供給するようになっている。
図2は、第1の増圧ポンプ装置BP1を示す模式図である。図2に示すように、第1の増圧ポンプ装置BP1は、導入管5を介して水道本管2に連結される第1のポンプとしてのポンプP1と、このポンプP1を駆動する第1の駆動源としてのモータM1と、モータM1の回転速度を増減する第1のインバータとしてのインバータINV1と、第1の増圧ポンプ装置BP1の給水動作(すなわちポンプP1の運転)を制御する第1の制御部としての制御部CN1と、ポンプP1の下流側に配置された逆止弁CV1と、逆止弁CV1の下流側に配置されたフロースイッチSW1、吐出側圧力センサDP1、および圧力タンクPT1と、ポンプP1の上流側に配置された吸込側圧力センサSP1と、運転情報を表示する表示器49とを備えている。本実施形態では、これら構成要素は、キャビネットCB1内に収容されている。一実施形態では、上記構成要素のうちいくつかのみ(例えば、制御部CN1およびインバータINV1のみ)をキャビネットCB1内に収容してもよい。また、本実施形態では、第1の増圧ポンプ装置BP1は、1組のポンプP1、モータM1、インバータINV1、逆止弁CV1、およびフロースイッチSW1を備えているが、2組以上のポンプP1、モータM1、インバータINV1、逆止弁CV1、フロースイッチSW1を備えてもよい。
逆止弁CV1は、ポンプP1の吐出口に接続された吐出管L1に設けられており、ポンプP1が停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチSW1は吐出管L1を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。吐出側圧力センサDP1は、吐出側圧力(すなわち、第1の増圧ポンプ装置BP1に加わる背圧)を測定するための水圧測定器である。圧力タンクPT1は、ポンプP1が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。吸込側圧力センサSP1は、水道本管2からポンプP1に流入する水の圧力、すなわち流入圧を測定するための水圧測定器である。第1の配水管7は吐出管L1に接続されている。
ポンプP1の吸込口には吸込管F1の一端が接続されており、吸込管F1の他端は導入管5に接続されている。吸込管F1には、逆流防止装置20と吸込側圧力センサSP1が取り付けられている。逆流防止装置20は、水道本管2への水の逆流を確実に防止するために設置されている。吸込側圧力センサSP1は逆流防止装置20の上流側に配置されている。
第1の増圧ポンプ装置BP1は、ポンプP1を迂回するバイパス管11を備えている。バイパス管11の上流側端部は吸込管F1に接続され、バイパス管11の下流側端部は吐出管L1に接続されている。バイパス管11の上流側端部は、ポンプP1の吸込口と逆流防止装置20との間に位置しており、バイパス管11の下流側端部は、フロースイッチSW1の下流側に位置している。バイパス管11には逆止弁16が取り付けられており、バイパス管11内での水の逆流を防止している。このバイパス管11は、ポンプP1が停止しているときでも、流入圧のみで給水を可能とするために設けられている。
インバータINV1、フロースイッチSW1、吐出側圧力センサDP1、吸込側圧力センサSP1は、制御部CN1に信号線を介して接続されている。水の流量が所定の値にまで低下したことがフロースイッチSW1により検知されると、制御部CN1はポンプP1の運転速度を一時的に上げるようインバータINV1に指令を出し、圧力タンクPT1に蓄圧してからポンプP1の運転を停止させるようになっている。一方、吐出側圧力(吐出管L1内の水圧)が所定の値まで低下すると、制御部CN1はポンプP1の運転を開始するようインバータINV1に指令を出す。
制御部CN1は、インバータINV1およびモータM1の動作を制御することによって、ポンプP1の動作を制御する。より具体的には、制御部CN1は、吐出側圧力センサDP1の出力信号に基づいて、ポンプP1の運転速度(すなわち回転速度)を制御する。一般的には、吐出側圧力センサDP1により測定された圧力信号が設定された目標圧力と一致するようにポンプP1の運転速度を制御してポンプP1の吐出圧力が一定になるように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプP1の吐出圧力の目標値を適切に変化させることにより給水栓における水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御などが行われる。
図3は、第2の増圧ポンプ装置BP2を示す模式図である第2の増圧ポンプ装置BP2は、第1の配水管7に接続された第2のポンプとしてのポンプP2と、このポンプP2を駆動する第2の駆動源としてのモータM2と、モータM2の回転速度を増減する第2のインバータとしてのインバータINV2と、第2の増圧ポンプ装置BP2の給水動作(すなわちポンプP2の運転)を制御する第2の制御部としての制御部CN2と、ポンプP2の下流側に配置された逆止弁CV2と、逆止弁CV2の下流側に配置されたフロースイッチSW2、吐出側圧力センサDP2、および圧力タンクPT2と、運転情報を表示する表示器49とを備えている。本実施形態では、これら構成要素は、キャビネットCB2内に収容されている。一実施形態では、上記構成要素のうちいくつかのみ(例えば、制御部CN2およびインバータINV2のみ)をキャビネットCB2内に収容してもよい。また、本実施形態では、第2の増圧ポンプ装置BP2は、1組のポンプP2、モータM2、インバータINV2、逆止弁CV2、およびフロースイッチSW2を備えているが、2組以上のポンプP2、モータM2、インバータINV2、逆止弁CV2、フロースイッチSW2を備えてもよい。水道本管2に直結されていない第2の増圧ポンプ装置BP2には、逆流防止装置を設けることは義務付けられていないため、逆流防止装置を設けない場合もある。
ポンプP2の吸込口には吸込管F2の一端が接続されており、吸込管F2の他端は第1の配水管7に接続されている。第2の増圧ポンプ装置BP2は、ポンプP2を迂回するバイパス管21を備えている。バイパス管21の上流側端部は吸込管F2に接続され、バイパス管21の下流側端部は吐出管L2に接続されている。バイパス管21の下流側端部は、フロースイッチSW2の下流側に位置している。バイパス管21には逆止弁26が取り付けられており、バイパス管21内での水の逆流を防止している。このバイパス管21は、ポンプP2が停止しているときでも、第1の配水管7内の水圧のみで給水を可能とするために設けられている。
インバータINV2、フロースイッチSW2、吐出側圧力センサDP2は、制御部CN2に信号線を介して接続されている。制御部CN2は、インバータINV2およびモータM2の動作を制御することによって、ポンプP2の動作を制御する。第2の増圧ポンプ装置BP2の基本的な動作は、上述した第1の増圧ポンプ装置BP1と同様であるので、その重複する説明を省略する。
第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1および第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2は、制御部CN1と制御部CN2の間での通信を可能とする通信機能をそれぞれ有している。制御部CN1,CN2は、RS−232などのインターフェイス(シリアルポート)を有しており、通信線25を介して互いに接続されている。制御部CN1,CN2は、この通信線25を通じて双方向の通信が可能となっている。なお、シリアル通信に代えて、接点信号(電気的なON/OFF信号)を用いる通信を用いてもよい。ポンプP1,P2の運転状態(運転または停止)、ポンプP1,P2の回転速度、吐出側圧力センサDP1,DP2で取得された吐出側圧力の測定値、吸込側圧力センサSP1で取得された流入圧の測定値、増圧ポンプ装置BP1,BP2の故障情報、ポンプP1,P2に対する運転指令(例えば、後述する停止指令信号)を含む運転情報は、制御部CN1と制御部CN2との間で双方向に伝送される。このような通信機能は、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2の連携運転を可能とする。なお、通信線25を用いた有線方式に代えて、通信線を用いない無線方式を採用してもよい。
水道本管2内の水圧が低下すると、水道本管2から第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1に流入する水の圧力、すなわち流入圧が低下する。ここで、流入圧低下とは、流入圧がある規定値を下回った状態が所定の監視時間継続されることをいう。このような流入圧低下が発生したときに、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2が給水動作を行っていると、水道本管2の内部に負圧が形成され、汚染された水が水道本管2に流入するおそれがある。
そこで、水道本管2内での負圧の形成を防止するために、流入圧低下を予測して第2の増圧ポンプ装置BP2の給水動作をまず停止し、流入圧低下が検出された場合には、第1の増圧ポンプ装置BP1の給水動作を停止するようになっている。第2の増圧ポンプ装置BP2および第1の増圧ポンプ装置BP1の給水動作をこの順に停止させる理由は次の通りである。第2の増圧ポンプ装置BP2の給水動作を停止させると、給水量が低下するため、水道本管2内の水圧が上昇することがある。結果として、流入圧低下が回避され、第1の増圧ポンプ装置BP1の給水動作を継続できる場合がある。また、第1の増圧ポンプ装置BP1の下流側にある第2の増圧ポンプ装置BP2の給水動作を先に停止させることにより、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2との間にある第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止され、汚水や空気の第1の配水管7内への侵入を防ぐことができる。
第1の実施形態では、次のようにして、第2の増圧ポンプ装置BP2および第1の増圧ポンプ装置BP1の給水動作を順番に停止させる。第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1は、流入圧用の第1のしきい値および第2のしきい値を予め記憶している。第2のしきい値は、第1のしきい値よりも大きく、第1のしきい値は、上述した流入圧低下の検出に使用される規定値に相当する。第1のしきい値および第2のしきい値は、圧力[Pa]または揚程[m]の値として表される。例えば、第1のしきい値は7m、第2のしきい値は10mである。
制御部CN1は、流入圧が第2のしきい値を下回った場合には、第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2に停止指令信号を送るように構成されている。制御部CN2は、この停止指令信号を受けてポンプP2の運転を停止させる。流入圧が一時的に第2のしきい値を下回った後に直ぐに上昇して第2のしきい値を上回ることもあり得るため、制御部CN1は、流入圧が第2のしきい値を下回った状態が所定の時間継続された場合には、制御部CN2に停止指令信号を送ることが好ましい。
制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った場合には、ポンプP1の運転を停止させる。より具体的には、制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った状態が所定の時間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。これは、ポンプP1の頻繁な停止および起動を回避するためである。
図4は、流入圧の変化を示すグラフである。図4において、縦軸は流入圧を表し、横軸は時間を表している。流入圧が第2のしきい値を下回った状態が所定の時間t2の間継続された場合には、制御部CN1は制御部CN2に停止指令信号を送る。制御部CN2は、この停止指令信号を受けてポンプP2の運転を停止させる。ポンプP2の運転が停止されたことにより、図5に示すように、流入圧が回復することもあり得る。この場合には、流入圧は、第1のしきい値に達せず、したがって、流入圧低下およびポンプP1の運転停止が回避される。
しかしながら、水道本管2内の水圧がさらに低下した結果、図4に示すように、流入圧が第1のしきい値に到達することもある。制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った状態が所定の時間t1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。この場合は、ポンプP1およびポンプP2の両方の運転が停止されるので、水道本管2内での負圧の形成が防止される。所定の時間t1は、上述した流入圧低下の検出に使用される監視時間に相当する。所定の時間t1と所定の時間t2は、等しくてもよく、または異なってもよい。
このように、本実施形態によれば、流入圧低下を予測して、第2の増圧ポンプ装置BP2のポンプP2を第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1よりも先に停止することにより、流入圧低下が回避される可能性が高められる。したがって、ポンプP1の運転停止、すなわち建物の断水を極力回避することができる。ポンプP2の運転が停止された場合であっても、ポンプP1の運転が継続されている限り、バイパス管21(図3参照)を通って給水栓10の一部には水が供給されることもある。さらに、第2の増圧ポンプ装置BP2のポンプP2を第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1よりも先に停止することにより、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2との間にある第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止され、汚水や空気の第1の配水管7内への侵入を防ぐことができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した第1の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図6は、本実施形態における制御部CN1の動作を説明するグラフである。本実施形態では、制御部CN1は、流入圧用の1つのしきい値のみを予め記憶している。このしきい値は、上述した第1の実施形態における第1のしきい値に相当する。すなわち、第2の実施形態に使用されるしきい値は、流入圧低下の検出に使用される上記規定値に相当する。制御部CN1は、第1の設定時間T1および第2の設定時間T2を予め記憶している。第2の設定時間T2は第1の設定時間T1よりも短く、第1の設定時間T1は、上述した流入圧低下の検出に使用される監視時間に相当する。
制御部CN1は、流入圧がしきい値を下回った状態が第2の設定時間T2の間継続された場合には、第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2に停止指令信号を送るように構成されている。制御部CN2は、この停止指令信号を受けてポンプP2の運転を停止させる。制御部CN1は、流入圧が上記しきい値を下回った状態が第1の設定時間T1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
制御部CN2がポンプP2の運転を停止させると、図7に示すように、第1の設定時間T1が経過する前に流入圧が回復することもあり得る。この場合には、流入圧低下およびポンプP1の運転停止が回避される。
本実施形態においても、流入圧低下を予測して、第2の増圧ポンプ装置BP2のポンプP2を第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1よりも先に停止することにより、流入圧低下が回避される可能性が高められる。したがって、ポンプP1の運転停止、すなわち建物の断水を極力回避することができる。さらに、ポンプP2をポンプP1よりも先に停止することにより、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2との間にある第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止され、汚水や空気の第1の配水管7内への侵入を防ぐことができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、第1の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、制御部CN2は、第1の実施形態で説明した第2のしきい値を予め記憶しており、制御部CN1は、第1の実施形態で説明した第1のしきい値を予め記憶している。第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込側圧力センサSP1によって得られた流入圧の測定値は、制御部CN1から第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2に送られ、制御部CN2は流入圧が上述した第2のしきい値を下回ったか否かを判断する。
制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回ったか否かを判断する一方で、制御部CN2は、流入圧が第2のしきい値を下回ったか否かを判断する。より具体的には、第1の実施形態で説明した図4に示すように、流入圧が第2のしきい値を下回った状態が所定の時間t2の間継続された場合には、制御部CN2は、ポンプP2の運転を停止させる。制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った状態が所定の時間t1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
本実施形態においても、流入圧低下を予測して、第2の増圧ポンプ装置BP2のポンプP2を第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1よりも先に停止することにより、流入圧低下が回避される可能性が高められる。したがって、ポンプP1の運転停止、すなわち建物の断水を極力回避することができる。さらに、ポンプP2をポンプP1よりも先に停止することにより、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2との間にある第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止され、汚水や空気の第1の配水管7内への侵入を防ぐことができる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、第2の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込側圧力センサSP1によって得られた流入圧の測定は、第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1から第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2に送られる。
制御部CN1および制御部CN2は、それぞれ、共通のしきい値を予め記憶している。このしきい値は、第2の実施形態で説明したしきい値と同じである。さらに、制御部CN1は、第2の実施形態で説明した第1の設定時間T1を予め記憶しており、制御部CN2は、第2の実施形態で説明した第2の設定時間T2を予め記憶している。第2の設定時間T2は第1の設定時間T1よりも短い。
第2の実施形態で説明した図6に示すように、制御部CN2は、流入圧がしきい値を下回った状態が第2の設定時間T2の間継続された場合には、ポンプP2の運転を停止させる。制御部CN1は、流入圧が上記しきい値を下回った状態が第1の設定時間T1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
本実施形態においても、流入圧低下を予測して、第2の増圧ポンプ装置BP2のポンプP2を第1の増圧ポンプ装置BP1のポンプP1よりも先に停止することにより、流入圧低下が回避される可能性が高められる。したがって、ポンプP1の運転停止、すなわち建物の断水を極力回避することができる。さらに、ポンプP2をポンプP1よりも先に停止することにより、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2との間にある第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止され、汚水や空気の第1の配水管7内への侵入を防ぐことができる。
図8は、第1の増圧ポンプ装置BP1および第2の増圧ポンプ装置BP2の他の配置例を示す模式図である。図8に示す例では、第2の増圧ポンプ装置BP2は建物1の屋上に配置されている。その他の構成は、図1に示す給水システムの構成と同じである。第1の実施形態乃至第4の実施形態における制御部CN1および制御部CN2の動作は、図8に示す給水システムにも適用することができる。
図9は、第1の増圧ポンプ装置BP1および第2の増圧ポンプ装置BP2のさらに他の配置例を示す模式図である。図9に示す例では、第2の増圧ポンプ装置BP2は建物1の屋上に配置されており、第1の増圧ポンプ装置BP1には給水栓は接続されていない。第1の増圧ポンプ装置BP1は、水を第1の配水管7を通じて第2の増圧ポンプ装置BP2に送り、第2の増圧ポンプ装置BP2は、建物1内に設置されている全ての給水栓10に水を供給する。給水栓10が接続されている第2の配水管15は、屋上から下方に延びている。その他の構成は、図1に示す給水システムの構成と同じである。第1の実施形態乃至第4の実施形態における制御部CN1および制御部CN2の動作は、図9に示す給水システムにも適用することができる。
図10は、第1の増圧ポンプ装置BP1と第2の増圧ポンプ装置BP2に加えて、第3の増圧ポンプ装置BP3をさらに備えた給水システムの実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態に係る給水システムの構成は、図1に示す給水システムの構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図10に示すように、第3の増圧ポンプ装置BP3は、第2の増圧ポンプ装置BP2よりも高い位置に配置されている。第3の増圧ポンプ装置BP3の吸込口は、第2の配水管15によって第2の増圧ポンプ装置BP2の吐出口に接続されている。第3の増圧ポンプ装置BP3の吐出口には第3の配水管28が接続されており、この第3の配水管28は、建物1の各給水栓30に枝管29を介して連通している。給水栓30は、第2の増圧ポンプ装置BP2に連通する給水栓10よりも高い階層に設置されている。例えば、給水栓9は建物1の下層階に設置され、給水栓10は建物1の中層階に設置され、給水栓30は建物1の上層階に設置される。
図11は、第3の増圧ポンプ装置BP3を示す模式図である。第3の増圧ポンプ装置BP3は、第2の配水管15に接続された第3のポンプとしてのポンプP3と、このポンプP3を駆動する第3の駆動源としてのモータM3と、モータM3の回転速度を増減する第3のインバータとしてのインバータINV3と、第3の増圧ポンプ装置BP3の給水動作(すなわちポンプP3の運転)を制御する第3の制御部としての制御部CN3と、ポンプP3の下流側に配置された逆止弁CV3と、逆止弁CV3の下流側に配置されたフロースイッチSW3、吐出側圧力センサDP3、および圧力タンクPT3と、運転情報を表示する表示器49とを備えている。本実施形態では、これら構成要素は、キャビネットCB3内に収容されている。一実施形態では、上記構成要素のうちいくつかのみ(例えば、制御部CN3およびインバータINV3のみ)をキャビネットCB3内に収容してもよい。また、本実施形態では、第3の増圧ポンプ装置BP3は、1組のポンプP3、モータM3、インバータINV3、逆止弁CV3、およびフロースイッチSW3を備えているが、2組以上のポンプP3、モータM3、インバータINV3、逆止弁CV3、フロースイッチSW3を備えてもよい。水道本管2に直結されていない第3の増圧ポンプ装置BP3には、逆流防止装置を設けることは義務付けられていないため、逆流防止装置を設けない場合もある。
ポンプP3の吸込口には吸込管F3の一端が接続されており、吸込管F3の他端は第2の配水管15に接続されている。第3の増圧ポンプ装置BP3は、ポンプP3を迂回するバイパス管31を備えている。バイパス管31の上流側端部は吸込管F3に接続され、バイパス管31の下流側端部は吐出管L3に接続されている。バイパス管31の下流側端部は、フロースイッチSW3の下流側に位置している。バイパス管31には逆止弁36が取り付けられており、バイパス管31内での水の逆流を防止している。このバイパス管31は、ポンプP3が停止しているときでも、第2の配水管15内の水圧のみで給水を可能とするために設けられている。
インバータINV3、フロースイッチSW3、吐出側圧力センサDP3は、制御部CN3に信号線を介して接続されている。制御部CN3は、インバータINV3およびモータM3の動作を制御することによって、ポンプP3の動作を制御する。第3の増圧ポンプ装置BP3の基本的な動作は、上述した第1の増圧ポンプ装置BP1および第2の増圧ポンプ装置BP2と同様であるので、その重複する説明を省略する。
第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2および第3の増圧ポンプ装置BP3の制御部CN3は、制御部CN2と制御部CN3の間での通信を可能とする通信機能をそれぞれ有している。制御部CN2,CN3は、RS−232などのインターフェイス(シリアルポート)を有しており、通信線35を介して互いに接続されている。制御部CN2,CN3は、この通信線35を通じて双方向の通信が可能となっている。なお、シリアル通信に代えて、接点信号(電気的なON/OFF信号)を用いる通信を用いてもよい。ポンプP1,P2,P3の運転状態(運転または停止)、ポンプP1,P2,P3の回転速度、吐出側圧力センサDP1,DP2,DP3で取得された吐出側圧力の測定値、増圧ポンプ装置BP1,BP2,BP3の故障情報、ポンプP1,P2,P3に対する運転指令(例えば、停止指令信号)を含む運転情報は、制御部CN2と制御部CN3との間で双方向に伝送される。さらに、第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込側圧力センサSP1で取得された流入圧の測定値は、制御部CN1から制御部CN2に、さらに制御部CN2から制御部CN3に送られる。なお、通信線35を用いた有線方式に代えて、通信線を用いない無線方式を採用してもよい。
先に説明した第1の実施形態乃至第4の実施形態におけるポンプP1,P2の停止動作は、図11に示す給水システムにも同様に適用することができる。以下、第1の実施形態を3つの増圧ポンプ装置BP1,BP2,BP3を備えた給水システムに適用した例を説明する。第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1は、流入圧用の第1のしきい値および第2のしきい値を予め記憶している。図12は、流入圧の変化を示すグラフである。図12に示すように、流入圧が第2のしきい値を下回った状態が所定の時間t2の間継続された場合には、制御部CN1は制御部CN2に停止指令信号を送る。制御部CN2は、ポンプP2の運転を停止させる前に、上記停止指令信号を第3の増圧ポンプ装置BP3の制御部CN3に送る。制御部CN3は停止指令信号を受けてポンプP3の運転を停止させる。制御部CN2は、ポンプP3の運転が停止した後に、ポンプP2の運転を停止させる。あるいは、制御部CN3がポンプP3の運転を停止させると同時に、制御部CN2はポンプP2の運転を停止させてもよい。制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った状態が所定の時間t1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
次に、先に説明した第2の実施形態を3つの増圧ポンプ装置BP1,BP2,BP3を備えた図11に示す給水システムに適用した例を説明する。第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1は、流入圧用の1つのしきい値、第1の設定時間T1、および第2の設定時間T2を予め記憶している。図13は、流入圧の変化を示すグラフである。図13に示すように、流入圧がしきい値を下回った状態が第2の設定時間T2の間継続された場合には、制御部CN1は制御部CN2に停止指令信号を送る。制御部CN2は、ポンプP2の運転を停止させる前に、上記停止指令信号を第3の増圧ポンプ装置BP3の制御部CN3に送る。制御部CN3は停止指令信号を受けてポンプP3の運転を停止させる。制御部CN2は、ポンプP3の運転が停止した後に、ポンプP2の運転を停止させる。あるいは、制御部CN3がポンプP3の運転を停止させると同時に、制御部CN2はポンプP2の運転を停止させてもよい。制御部CN1は、流入圧が上記しきい値を下回った状態が第1の設定時間T1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
次に、先に説明した第3の実施形態を3つの増圧ポンプ装置BP1,BP2,BP3を備えた図11に示す給水システムに適用した例を説明する。第1の増圧ポンプ装置BP1の制御部CN1は、流入圧用の第1のしきい値を予め記憶しており、第2の増圧ポンプ装置BP2の制御部CN2および第3の増圧ポンプ装置BP3の制御部CN3は、流入圧用の第2のしきい値を予め記憶している。第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込側圧力センサSP1によって得られた流入圧の測定値は、制御部CN1から制御部CN2に、さらに制御部CN2から制御部CN3に送られ、制御部CN2および制御部CN3は流入圧が上述した第2のしきい値(図12参照)を下回ったか否かを判断する。図12に示すように、流入圧が第2のしきい値を下回った状態が所定の時間t2の間継続された場合には、制御部CN3は、ポンプP3の運転を停止させ、制御部CN2は、ポンプP3の運転が停止された後にポンプP2の運転を停止させる。あるいは、制御部CN3がポンプP3の運転を停止させると同時に、制御部CN2はポンプP2の運転を停止させてもよい。制御部CN1は、流入圧が第1のしきい値を下回った状態が所定の時間t1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
次に、先に説明した第4の実施形態を3つの増圧ポンプ装置BP1,BP2,BP3を備えた図11に示す給水システムに適用した例を説明する。制御部CN1、制御部CN2、および制御部CN3は、共通のしきい値をそれぞれ予め記憶している。さらに、制御部CN1は、第4の実施形態で説明した第1の設定時間T1を予め記憶しており、制御部CN2および制御部CN3は、第4の実施形態で説明した第2の設定時間T2を予め記憶している。第1の増圧ポンプ装置BP1の吸込側圧力センサSP1によって得られた流入圧の測定値は、制御部CN1から制御部CN2に、さらに制御部CN2から制御部CN3に送られ、制御部CN2および制御部CN3は流入圧が上述したしきい値(図13参照)を下回ったか否かを判断する。図13に示すように、流入圧がしきい値を下回った状態が第2の設定時間T2の間継続された場合には、制御部CN3は、ポンプP3の運転を停止させ、制御部CN2は、ポンプP3の運転が停止された後にポンプP2の運転を停止させる。あるいは、制御部CN3がポンプP3の運転を停止させると同時に、制御部CN2はポンプP2の運転を停止させてもよい。制御部CN1は、流入圧が上記しきい値を下回った状態が第1の設定時間T1の間継続された場合には、ポンプP1の運転を停止させる。
このように、本発明は、3台またはそれよりも多い増圧ポンプ装置を備えた給水システムにも同じように適用することができる。
次に、上述した第1の増圧ポンプ装置BP1のより詳細な構成について図14を参照して説明する。なお、以下に説明する第1の増圧ポンプ装置BP1の構成は、第2の増圧ポンプ装置BP2にも同様に適用してもよい。さらに、以下に説明する構成は、3台またはそれよりも多い増圧ポンプ装置を備えた給水システムにも同じように適用することができる。
図14に示すように、第1の増圧ポンプ装置BP1は、ポンプP1の給水動作を制御する制御部(制御装置)CN1と、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を含む運転情報を表示する表示器49とを備えている。制御部CN1は、設定部46、記憶部47、演算部48、I/O部50、及び運転パネル51を備えている。運転パネル51は、ヒューマンインターフェースとして機能する。設定部46には、ポンプP1の運転制御に関する各種設定値が入力される。設定部46及び表示器49は、運転パネル51に設けられている。表示器49は液晶パネルであり、設定部46はタッチパネル式操作器でもよい。本実施形態では、表示器49は制御部CN1に取り付けられているが、表示器49は制御部CN1から離れて配置されてもよい。また、表示器49は液晶パネルと7セグメントLEDや表示灯を組み合わせた構成でもよい。
記憶部47は、上述した第1乃至第4の実施形態で説明したしきい値を記憶する。しきい値は、記憶部47に予め記憶されていてもよいし、あるいは設定部46を通じて記憶部47に入力されてもよい。演算部48は、吸込側圧力センサSP1から送られてくる流入圧の測定値を監視し、流入圧と上記しきい値とを比較する。演算部48としては、CPUが使用される。表示器49は、ヒューマンインターフェースとして機能し、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を含む運転情報を表示する。ユーザーは、設定部46上のクリアボタン53を押すことにより、表示器49での表示を消去することができる。
図15は記憶部47の詳細を示す図である。図15に示すように、記憶部47は、不揮発性メモリから構成された不揮発性記憶領域47aと、揮発性メモリから構成された揮発性記憶領域47bを備えている。不揮発性記憶領域47aは、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の履歴、上述したしきい値や設定時間などの各種設定値、故障履歴、運転履歴などを記憶する領域である。揮発性記憶領域47bは、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止、圧力信号、ポンプ回転数、電流値、故障、警報などを記憶する領域である。
図16は第1の増圧ポンプ装置BP1の他の実施形態を示す図である。本実施形態では、表示器49に加えて、外部表示器61がさらに設けられている。図16に示すように、制御部CN1は通信部60をさらに備えている。制御部CN1は有線通信または無線通信によって外部表示器61に接続されている。外部表示器61として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレットの汎用端末機器または遠隔監視器などの専用端末機器が採用される。本実施形態では、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器であり、外部表示器61は液晶画面と液晶画面のタッチ入力方式や押圧ボタン方式用いた高機能表示器である。簡易な表示器49に比べて外部表示器61は表示できる情報量が格段に多いため、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を外部表示器61に表示することによって、給水装置に不慣れなユーザーは誤解することなく、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を認識することが出来る。
第1の増圧ポンプ装置BP1は機械室やポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。本実施形態によれば、第1の増圧ポンプ装置BP1に組み込まれる表示器49として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器を使用することにより、外部環境から発生される電気的なノイズにより外部表示器61の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示器49により第1の増圧ポンプ装置BP1の運転に必要な最低限度の表示や操作を行うことが可能なため、第1の増圧ポンプ装置BP1を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。さらに、外部表示器61として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレットなどの汎用端末機器を使用すると、ユーザーは専用のアプリケーションソフトウエアを用いて、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を表示させることができるため、専用のアプリケーションソフトウエアを複数用意し使い分けることによりユーザーのレベルに沿った水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の表示を提供することが可能である。
図17は第1の増圧ポンプ装置BP1のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部CN1に表示器49は設けられていなく、代わりに外部表示器(高機能表示器)61のみが設けられる。その他の構成は、図16に示す実施形態と同様である。図17に示す実施形態によれば、第1の増圧ポンプ装置BP1には表示器自体を設ける必要がなくなるので、第1の増圧ポンプ装置BP1全体のコストを更に下げることが可能である。
図18は第1の増圧ポンプ装置BP1のさらに他の実施形態を示す図である。図18において、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器である。通信部60は公衆回線を介して保守管理会社または管理人室に設けられた外部表示器65に接続されている。制御部CN1は、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を判断し、外部表示器65は制御部CN1に公衆回線を通じて定期的に通信し、水道本管側での流入圧低下が発生したか否か、および水道本管側での流入圧低下に起因してポンプP1,P2が停止したか否かを制御部CN1に問い合わせる。そして、水道本管側での流入圧低下が発生し、および流入圧低下に起因したポンプP1,P2が停止した場合は、外部表示器65は水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を表示する。外部表示器65は、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を他の情報に追加的に表示してもよい。
本実施形態の制御部CN1は、図14に示すクリアボタン53を備えていなく、代わりに、外部表示器65は、図18に示すように、クリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、外部表示器65上に表示されている、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の表示が消去される。
図19は第1の増圧ポンプ装置BP1のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態の制御部CN1の基本的構成は図17に示す実施形態の制御部CN1の構成と同じであるが、制御部CN1が通信部60に代えて、制御部側アンテナ部67を備えている点、および制御部側アンテナ部67に接続された集積回路68を備えている点で異なっている。集積回路68は、不揮発性値記憶領域47a、揮発性記憶領域47bを有する記憶部47に電気的に接続されている。なお、本実施形態の制御部CN1は表示器49を備えていないが、制御部CN1に表示器49を設けてもよい。
外部表示器70は、電波を送受信する表示器側アンテナ部71と、表示器側アンテナ部71で受信したデータを読み取るデータリーダー74と、データリーダー74によって読み取られたデータ(例えば、水道本管側での流入圧低下の発生、水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止、ポンプP1の運転状態、吐出し圧力など)を表示する表示部72と、データリーダー74、表示器側アンテナ部71、および表示部72に電力を供給するバッテリー73とを備えている。外部表示器70として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器でもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器でもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、給水システムのコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を表示させることができるので、マンションやビルの管理人のような給水装置に関する専門知識のないユーザーに対しても、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を分かり易く知らせることができる給水システムを安価に提供することができる。
外部表示器70は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部CN1と接続される。より具体的には、外部表示器70を制御部CN1に近づけた状態で、表示器側アンテナ部71が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部67が受け取り、制御部側アンテナ部67は電波を電力に変換する。この電力は集積回路68および記憶部47に供給されてこれら集積回路68および記憶部47を駆動する。集積回路68は記憶部47に記憶されている上記データを読み取り、制御部側アンテナ部67にデータを送る。制御部側アンテナ部67は、データとともに電波を表示器側アンテナ部71に送信する。データリーダー74は、表示器側アンテナ部71が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部72に表示させる。
外部表示器70は、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の表示を消去するためのクリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、表示部72に表示されている、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の表示が消去される。本実施形態のクリアボタン66は、表示部72の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン66は表示部72の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。本実施形態の制御部CN1はクリアボタンを備えていないが、制御部CN1にクリアボタンを設けてもよい。なお、これらの操作には、操作制限を設けてもよい。具体的には、ユーザーが主に使用する外部表示器70にクリアボタン66を設け、メンテナンス員が主に使用する制御部CN1にリセットボタン52を設ける。このように制御部CN1にのみリセットボタン52を設けることで、ユーザーのリセットボタン52の誤操作を防ぐことができる。パスワード等の複雑な使用制限の解除方法ではなく、外部表示器70を設けることで、ユーザーの誤操作による消耗部品の使用期間のクリアを防止することができる。
本実施形態では、外部表示器70と制御部CN1との間で無線通信が行われ、記憶部47に記憶されている、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止などを含むデータは、制御部CN1から外部表示器70に送られる。本実施形態によれば、第1の増圧ポンプ装置BP1の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部67は外部表示器70から発せられる電波から電力を発生し、集積回路68および記憶部47を駆動することができる。したがって、第1の増圧ポンプ装置BP1のメンテンナンス中などにおいて制御部CN1に電力が供給されていないときでも、外部表示器70は、制御部CN1の記憶部47から、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を含むデータを取得し、該データを表示することができる。
制御部CN1が故障した場合には新制御部CN1に交換する必要がある。この制御部CN1の交換時に、故障した旧制御部CN1はすでに電源が入らない状態においても、本実施形態では、旧制御部CN1の、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止に関するデータを新制御部CN1の記憶部47に継承することが可能となる。具体的には、旧制御部CN1の記憶部47の該データを外部表示器70にて表示し、その表示を確認しながらメンテナンス員が新制御部CN1の操作部より入力し、新制御部CN1の記憶部47に該データを記憶させてもよいし、旧制御部CN1の該データを外部表示器70にて取得し、外部表示器70から新しい制御部CN1の記憶部47へと通信手段にて書き込んでもよい。制御部CN1が電源が入らない状態で故障しても、不揮発性記憶領域47aに記憶されているデータを新制御部CN1の記憶部47に継承できるので、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止のデータが損失されることない。これは、第1の増圧ポンプ装置BP1が新制御部CN1にて自動運転を開始した後でも、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止の履歴を表示することができることを意味する。
本実施形態によれば、第1の増圧ポンプ装置BP1に電力が供給されていないときでも、ユーザーやメンテナンス員が外部表示器70を制御部CN1に近づけるだけで、記憶部47から水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を含む情報を取得することが可能である。
本実施形態で採用される近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)は、数cmの近距離でのみ相互通信が可能な技術である。したがって、外部表示器70に、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止やその他の各種情報を表示させるためには、ユーザーやメンテナンス員は外部表示器70を制御部CN1に近づける必要がある。このことは、外部表示器70を操作するときは、ユーザーやメンテナンス員は第1の増圧ポンプ装置BP1の近くにいることを意味する。したがって、ユーザーやメンテナンス員は第1の増圧ポンプ装置BP1を目視しながら外部表示器70を操作することになり、誤操作に起因した第1の増圧ポンプ装置BP1の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数の増圧ポンプ装置が設置された現場では、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止を表示したい増圧ポンプ装置の近距離でのみ通信可能となる為、無線通信にてよくある意図しない別の増圧ポンプ装置の情報を表示してしまうという誤表示を防止することが出来る。
図20は第1の増圧ポンプ装置BP1のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部CN1は通信部60を備えている。通信部60は、有線通信または無線通信によって外部表示器75の通信部76に接続されている。外部表示器75は制御部80を備えており、制御部80は通信部76、記憶部77、演算部78、および表示部79を備えている。制御部CN1は、表示器49を備えていてもよい。また、記憶部77は記憶部47と同様に図15の構成とする。
図21は第1の増圧ポンプ装置BP1のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部CN1には表示器は設けられておらず、代わりに、外部表示器75に表示部79と設定部82が設けられている。その他の構成は図20に示す実施形態と同様である。本実施形態では、水道本管側での流入圧低下の発生、および水道本管側での流入圧低下に起因したポンプP1,P2の停止は表示部79に表示され、各種設定値の入力は、外部表示器75の設定部82を通じて行われる。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。