JP6586890B2 - 軸受キャップの製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、上述した従来構造の第1例の軸受キャップ8の様に、前記挿入孔15が軸方向に貫通した貫通孔である場合には、この挿入孔15のうち、少なくとも軸方向外側の一部分を、前記固定型により成形する事ができる。これに対して、上述した従来構造の第2例の軸受キャップ8aの様に、前記挿入孔15aが軸方向内側面側にのみ開口した有底孔である場合には、この挿入孔15aの全体を、前記可動型により成形する事になる。従って、この場合には、樹脂の成形収縮により発生する、前記可動型に対する前記挿入孔の内周面の係止力が強くなる。この結果、前記成形用空間を開放する際に、前記キャップ本体9(9a)が前記可動型の側に残ってしまったり、或いは、このキャップ本体9(9a)が規定外の位置に落下したりして、生産ラインの障害になる可能性がある。この様な不都合は、回転速度検出の精度を高めるべく、前記エンコーダ13の直径を大きくする事に伴い、このエンコーダ13との干渉を避ける為に、前記キャップ本体9aを構成する樹脂筒部11aの径方向厚さ寸法や軸方向長さ寸法を小さくする(樹脂の成形収縮により発生する、前記固定型に対する前記樹脂筒部11aの内周面の係止力が小さくなる)場合に、発生し易くなると考えられる。
このキャップ本体は、合成樹脂により有底円筒状に造られたもので、前記外輪の軸方向内端部にこの外輪と同軸に取り付けられる樹脂筒部と、この樹脂筒部の軸方向内端開口を塞ぐ樹脂底板部と、この樹脂底板部のうちで周囲の部分に比べて軸方向の肉厚が大きくなった厚肉部と、この厚肉部のうち、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する部分に、この厚肉部の軸方向内側面側にのみ開口する状態で設けられた、前記センサホルダのうちでセンサを保持した部分を挿入する為の挿入孔と、前記厚肉部のうちでこの挿入孔に対して離隔した部分(好ましくは、この挿入孔に隣接する部分)に、この厚肉部の軸方向外側面側にのみ開口する状態で設けられた除肉部とを備えている。
そして、本発明の軸受キャップの製造方法は、前記キャップ本体を、このキャップ本体の成形用空間の位置を基準として軸方向外側に配置される、移動しない(変位しない)固定型と、この固定型と共に前記成形用空間を構成し、この成形用空間の位置を基準として軸方向内側に配置される、前記固定型に対して軸方向に遠近動する可動型とから成る金型装置を使用した射出成形(アキシャルドロー成形)により造る。そして、この際に、前記挿入孔を、前記可動型に設けられた挿入孔成形部により成形すると共に、前記除肉部を、前記固定型に設けられた除肉部成形部により成形する。
又、本発明の軸受キャップの製造方法を実施する場合には、追加的に、前記樹脂筒部にモールド固定された状態で、前記外輪の軸方向内端部に嵌合固定される、金属環を設ける事もできる。
このうちの固定型は、前記キャップ本体の成形用空間の位置を基準として軸方向外側に配置されるもので、移動しない。
又、前記可動型は、前記固定型と共に前記成形用空間を構成し、この成形用空間の位置を基準として軸方向内側に配置されるもので、前記固定型に対して軸方向に遠近動する。
又、前記可動型に、前記挿入孔を成形する為の挿入孔成形部が設けられていると共に、前記固定型に、前記除肉部を成形する為の除肉部成形部が設けられている。
このうちの外輪は、内周面に単列又は複列の外輪軌道を有する。
又、前記ハブは、外周面に単列又は複列の内輪軌道を有し、使用時に回転する。
又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に、転動自在に設けられている。これら各転動体としては、玉、円すいころ、円筒ころ、球面ころ、ニードル等を使用する事ができる。
又、前記エンコーダは、前記ハブの軸方向内端部に、このハブと同軸に支持固定されており、軸方向内側面に、このハブと同軸の被検出面を有する。そして、この被検出面の特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させている。
更に、前記軸受キャップは、前記外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着されると共に、その一部にセンサホルダが支持固定される。
そして、この軸受キャップが、本発明の製造方法の対象となる軸受キャップである。
即ち、本発明の場合、前記固定型は、前記成形用空間の位置を基準として軸方向外側に配置される為、前記キャップ本体を構成する樹脂筒部の内周面は、この固定型により成形される事になる。従って、この樹脂筒部の内周面は、樹脂の成形収縮により、この固定型に係止される。これに対し、前記可動型は、前記キャップ本体を構成する樹脂底板部に設けられた挿入孔を成形する為の挿入孔成形部を備えている。この為、この挿入孔の内周面は、樹脂の成形収縮により、この挿入孔成形部に係止される。そして、前記成形用空間を開放する際には、前記固定型に対する前記樹脂筒部の内周面の係止力が、前記キャップ本体をこの固定型の側に残す力として作用するのに対し、前記挿入孔成形部に対する前記挿入孔の内周面の係止力が、前記キャップ本体を前記可動型の側に残す力として作用する。
又、これらの事に加えて、本発明の場合、前記固定型は、前記樹脂底板部に設けられた除肉部を成形する為の除肉部成形部を備えている。この為、この除肉部の内周面は、樹脂の成形収縮により、この除肉部成形部に係止される。そして、前記成形用空間を開放する際には、この除肉部成形部に対する前記除肉部の内周面の係止力が、前記キャップ本体を前記固定型の側に残す力として作用する。従って、本発明の場合には、この様な除肉部成形部に対する除肉部の内周面の係止力が発生する分、前記成形用空間を開放する際に、前記キャップ本体が前記固定型の側に残り易くなる。
更に、本発明を実施する場合に、前記除肉部を前記挿入孔と隣接する部分に設ければ、前記成形用空間を開放する際に、前記挿入孔成形部に対する前記挿入孔の内周面の係止力と、前記除肉部成形部に対する前記除肉部の内周面の係止力とによって前記樹脂底板部に作用するモーメントを、小さく抑えられる。従って、完成直後で未だ軟らかい前記キャップ本体が、当該モーメントによって変形する事を有効に防止できる。
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜9を参照しつつ説明する。本例の特徴は、外輪2aの軸方向内端開口を塞ぐ為の軸受キャップ8bの構造を工夫した点、及び、この軸受キャップ8bを構成するキャップ本体9bをアキシャルドロー成形により造る為の金型装置の構造を工夫した点にある。その他の部分の構成及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と基本的には同じであるので、以下、本例の特徴部分及び先に説明しなかった部分を中心に説明する。
そして、前記成形用空間54を開放する際には、前記固定型52の一部外周面に対する、前記樹脂筒部11bの内周面、及び、前記円筒状リブ47の内周面、及び、前記係止溝63の内面のうちで径方向外側に位置する内周面の係止力が、前記キャップ本体9bをこの固定型52の側に残す力として作用する。これに対し、前記挿入孔成形部62の外周面に対する前記挿入孔15bの内周面の係止力が、前記キャップ本体9bを前記可動型53の側に残す力として作用する。
ここで、前記キャップ本体9bが前記固定型52の側に残る為には、このキャップ本体9bをこの固定型52の側に残す力が、このキャップ本体9bを前記可動型53の側に残す力よりも大きくならなければならない。しかしながら、上述した様なキャップ本体9bを固定型52の側に残す力は、十分に大きいとは言えない。即ち、前記樹脂筒部11b(前記小径筒部37)の内周面、及び、前記係止溝63の内面のうちで径方向外側に位置する内周面は、それぞれ軸方向寸法が短く、又、前記円筒状リブ47の内周面は、軸方向寸法が短い上に、前記樹脂底板部12bの径方向中心寄り部分に設けられているので、これら各内周面が前記固定型52の一部外周面に対し、樹脂の成形収縮により係止される力は、十分に大きいとは言えない。
前記挿入孔成形部62の外周面の粗さを極力良くすると共に、この挿入孔成形部62の外周面(軸方向内端部のテーパ状の案内面成形部を除く)に、10分程度の角度の抜き勾配を設ける事により、この挿入孔成形部62の外周面に対する前記挿入孔15bの内周面の係止力を小さくしている。
又、除肉部成形部55の外周面の粗さを、前記挿入孔成形部62の外周面の粗さよりも粗くして、前記除肉部成形部55の外周面に対する前記除肉部45の内周面の係止力(粗さの谷部に樹脂が入り込む事による食い付き力)を大きくしている。但し、この係止力は、前記キャップ本体9bを前記エジェクターピンにより前記固定型52から外す際に、前記除肉部45の内周面を破損させない程度としている。
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図10〜11を参照しつつ説明する。
本例の場合には、軸受キャップ8cを構成するキャップ本体9cの樹脂底板部12cの軸方向外側面に、射出成形時の溶融樹脂の流れの改善を主目的として設けられた円筒状リブ47とは別に、射出成形後のキャップ本体9cを固定型の側に残す力の向上を主目的とした第二の円筒状リブ64を、前記円筒状リブ47の径方向外側(前記樹脂底板部12cの軸方向外側面の径方向外端寄り部分)に、この円筒状リブ47と同軸(同心)となる様に突設している。前記第二の円筒状リブ64の内外両周面のうち、少なくとも内周面は、軸方向に関して直径が変化しない円筒面になっている。これにより、射出成形時に、樹脂の成形収縮によって、前記第二の円筒状リブ64の内周面が、前記固定型の一部外周面に強く係止される様にしている。尚、図示の例では(図11に示す様に)、前記第二の円筒状リブ64の外周面は、軸方向外側(図11に於ける左側)に向かう程直径が小さくなる方向に傾斜した(先細りの)テーパ面になっている。但し、本発明を実施する場合には、この外周面も、軸方向に関して直径が変化しない円筒面とする事ができる。又、本例の場合、前記第二の円筒状リブ64の円周方向複数箇所には、平板状リブ46、46の一部が連結されている。この為、これら平板状リブ46、46の成形収縮力により、前記第二の円筒状リブ64の成形収縮力を向上させ、この第二の円筒状リブ64の内周面が前記固定型の一部外周面に係止される力を、増大させる事ができる。尚、図示の例では、第二の円筒状リブ64を1つだけ設けているが、本発明を実施する場合には、この様な第二の円筒状リブ64を、互いの直径を異ならせて複数設ける事もできる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
又、上述した実施の形態では、本発明の製造方法により造られる軸受キャップを、車輪支持用の転がり軸受ユニットに組み込んだ場合に就いて説明したが、本発明の製造方法により造られる軸受キャップを組み込む転がり軸受ユニットは、この様な用途に限定されず、例えば工作機械等、種々の用途に適用する事ができる。
2、2a 外輪
3、3a ハブ
4 転動体
5、5a 固定側フランジ
6、6a 回転側フランジ
7 シールリング
8、8a、8b、8c 軸受キャップ
9、9a、9b、9c キャップ本体
10、10a、10b ナット
11、11a、11b 樹脂筒部
12、12a、12b、12c 樹脂底板部
13、13a エンコーダ
14 センサホルダ
15、15a、15b 挿入孔
16 ホルダ本体部
17 取付フランジ部
18 ボルト
19、19a 塞ぎ板部
20、20a 金属環
21a、21b 外輪軌道
22 ハブ本体
23 内輪
24 かしめ部
25a、25b 内輪軌道
26 支持環
27 エンコーダ本体
28 支持円筒部
29 支持円輪部
30 被検出面
31 センサユニット
32 センサホルダ
33 センサ
34 ホルダ本体部
35 取付フランジ部
36 Oリング
37 小径筒部
38 大径筒部
39 段差面
40 円筒部
41 外向フランジ部
42、42a、42b 厚肉部
43 雌ねじ部
44 係合凹溝
45 除肉部
46 平板状リブ
47 円筒状リブ
48 円環状凸部
49 凸部
50 通孔
51 金型装置
52 固定型
53 可動型
54 成形用空間
55 除肉部成形部
56 流路
57 除肉部成形部用流路
58 円孔
59 仕切り板
60 保持部材
61 保持孔
62 挿入孔成形部
63 係止溝
64 第二の円筒状リブ
Claims (2)
- 軸方向内端部にエンコーダを支持したハブを、その径方向内側に複数個の転動体を介して回転自在に支持した外輪の軸方向内端部に装着された状態で、この外輪の軸方向内端開口を塞ぐと共に、センサホルダを支持固定する為に使用され、
合成樹脂により有底円筒状に造られて、前記外輪の軸方向内端部にこの外輪と同軸に取り付けられる樹脂筒部と、この樹脂筒部の軸方向内端開口を塞ぐ樹脂底板部と、この樹脂底板部のうちで周囲の部分に比べて軸方向の肉厚が大きくなった厚肉部と、この厚肉部のうち、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する部分に、この厚肉部の軸方向内側面側にのみ開口する状態で設けられた、前記センサホルダのうちでセンサを保持した部分を挿入する為の挿入孔と、前記厚肉部のうちでこの挿入孔に対して離隔した部分に、この厚肉部の軸方向外側面側にのみ開口する状態で設けられた除肉部とを有する、キャップ本体を備えた、
軸受キャップの製造方法であって、
前記キャップ本体を、このキャップ本体の成形用空間の位置を基準として軸方向外側に配置される、移動しない固定型と、この固定型と共に前記成形用空間を構成し、この成形用空間の位置を基準として軸方向内側に配置される、前記固定型に対して軸方向に遠近動する可動型とから成る金型装置を使用した射出成形により造り、この際に、前記挿入孔を、前記可動型に設けられた挿入孔成形部により成形すると共に、前記除肉部を、前記固定型に設けられた除肉部成形部により成形する
事を特徴とする軸受キャップの製造方法。 - 前記除肉部成形部の形状を、軸方向外側から軸方向内側に向けて先細りとなる四角錐台状とし、
前記除肉部成形部の外周面を構成する4つの台形側面に関する、互いに径方向反対側に位置する1対の台形側面同士の交角を1〜3゜とし、
前記除肉部成形部の内部に設けられた、軸方向に伸長する円孔とこの円孔の内側に挿入された仕切り板とから成る冷却用流体の流路に冷却用流体を流しながら、前記キャップ本体の射出成形を行う
請求項1に記載した軸受キャップの製造方法。
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