本発明の実施の形態について、図面を用いて以下、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域の大きさ等の各構成要素の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書等において、蓄電装置用の正極及び負極の双方を併せて電極とよぶことがあるが、この場合、電極は正極及び負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
なお、本明細書等において充電レート及び放電レートとは、二次電池などの蓄電装置を充電及び放電する際の電流値を表す。例えば、容量X[Ah]の蓄電装置を定電流充電する際に、充電レート1Cとは、ちょうど1時間で充電終了となる電流値I[A]のことであり、充電レート0.2Cとは、I/5[A]、すなわち5時間で充電終了となる電流値のことである。同様に、放電レート1Cとは、ちょうど1時間で放電終了となる電流値I[A]のことであり、放電レート0.2Cとは、I/5[A]のことである。
(実施の形態1)
本実施の形態では、集電体と活物質層との間に密着性を高めるための層を設ける。またペルヒドロポリシラザンを用いて活物質へ被膜を形成する。
ペルヒドロポリシラザンを用いて、蓄電装置用電極の活物質の表面に被膜を形成することができる。このような被膜は、活物質と電解液の反応を抑制し、不可逆容量を低減させることができる。
また、ペルヒドロポリシラザンを用いて蓄電装置用の電極が有する活物質の表面に被膜を形成する際に、結着剤としてカルボキシル基(−COOH)を有する結着剤を用いた場合、当該カルボキシル基とペルヒドロポリシラザンとの相互作用によって多孔質状の被膜を形成することができる。この多孔質状の被膜を用いた電極は、より優れたサイクル特性を示す。
被膜が多孔質状とは、被膜がその表面及び内部において多数の空孔を有する形状である。また、細線状の活物質が不規則に配列して網状の骨格を形成した形状とみることもできる。
カルボキシル基を有する結着剤とペルヒドロポリシラザンとの間に相互作用が生じたことは、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)分析の結果により示唆された。NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒中に分散した結着剤(PVdF:ポリフッ化ビニリデン)を基板上に塗布し乾燥させることで得たPVdF膜(試料1)と、NMP溶媒中に分散したPVdFにペルヒドロポリシラザンを添加したものを基板上に塗布し乾燥させることで得たPVdF及び酸化シリコン膜(試料2)に対してFT−IR(フーリエ変換型赤外分光)分析を行ったところ、1750cm−1の波数の付近において、試料1ではピークが確認されたが、試料2ではピークが弱くなり、ピークのシフトも示唆された。1750cm−1の波数の付近のピークはカルボン酸のC=O伸縮振動に帰属されるピークである。このことから、PVdFとペルヒドロポリシラザンとの間に何らかの相互作用があると考えられる。すなわち、ペルヒドロポリシラザンから酸化シリコンへの反応において、カルボン酸が寄与していると考えられる。
ここで、ペルヒドロポリシラザンは、以下の式(1)に示す反応によって酸化シリコンを形成する。
−(SiH2NH)−n +2nH2O→ nSiO2 +nNH3+2nH2 (1)
なお、反応式1において、中間体として例えば水酸基(−OH)が付加された状態などを経由すると推測される。水酸基が付加された中間体は、その後、縮合して酸化シリコンを形成する。中間体を形成する過程において、PVdF中に含まれるカルボキシル基がペルヒドロポリシラザンと反応し、アンモニア(NH3)及び水素(H2)を発生させる。この反応は、PVdFとペルヒドロポリシラザンとを混合する室温でのスラリーの作製工程において開始されると考えられる。このため、結果的に形成される被膜は、アンモニア等の発生した気体の影響で多数の空孔を有する多孔質状又は海綿状の膜となったと考えられる。
図9は、多孔質状の形状を有する被膜に表面の一部を覆われた活物質を活物質層に有する電極のSEM(Scanning Electron Microscopeの略。走査型電子顕微鏡)の観察結果である。図9に、上記のカルボキシル基を含む結着剤を用いた本発明の一態様に係る蓄電装置用電極の、活物質層のSEMによる表面観察結果を示す。ここで、活物質は黒鉛である。また、結着剤は、カルボキシル基を有するポリフッ化ビニリデン(PVdF)である。
図9に示すように、活物質層中に複数の粒状の黒鉛700を確認することができる観察倍率は30,000倍である。粒状の黒鉛700は被膜701に覆われている。さらに被膜701は、複数の粒状の黒鉛700を繋ぐように、複数の粒状の黒鉛700にわたって延在している様子が確認できる。
また、一つの粒状の黒鉛とその周囲の断面形状をTEM(Transmission Electron Microscopeの略。透過型電子顕微鏡)により観察したところ、粒状の黒鉛の表面に被膜が形成されている様子を確認することができた。被膜の膜厚は約60nm〜200nmであった。また、TEMのEDX(Energy Dispersive X−Ray Spectroscopyの略。EDSともいう。エネルギー分散型X線分析)により、被膜の成分を確認したところ、粒状の黒鉛の周囲にシリコン(Si)、酸素(O)が強く検出され、炭素(C)、フッ素(F)も検出された。
以上のことから、粒状の黒鉛700の表面を覆う被膜701は、炭素(C)、フッ素(F)を含む酸化シリコンであると考えられる。
ここで、ペルヒドロポリシラザンと反応する化合物が有する官能基は、カルボキシル基に限らない。例えば、水酸基でも構わない。あるいは、ペルヒドロポリシラザンと反応する化合物は、反応によりカルボキシル基や水酸基を形成するものでも構わない。例えば、エステルや、カルボン酸アミドなど、カルボニル基を有する化合物でもよい。エステルやアミド(例えばカルボン酸アミドなど)は、分解反応によりカルボキシル基を形成することができ、分解反応としては加水分解などが例としてあげられる。
次に、電極を折り曲げて観察を行った結果について述べる。ペルヒドロポリシラザンとカルボキシル基を有する結着剤とを用いて多孔質状の形状を有する被膜が形成される。該被膜に表面の一部を覆われた活物質を用いた活物質層を有する電極は、ペルヒドロポリシラザンを用いず、結着剤としてPVdFを用いた活物質層を有する電極と比較して、電極を折り曲げたときの活物質層の膜割れが抑えられることがわかった。よって、活物質同士の密着性が高く、活物質層の強度が高いといえる。また、活物質層の膜割れが抑えられることから、活物質層が柔軟であるといえる。ペルヒドロポリシラザンとカルボキシル基を有する結着剤とを用いて多孔質状の形状を有する被膜に表面の一部を覆われた活物質を用いた活物質層を有する電極を、電極Xとする。また、ペルヒドロポリシラザンを用いず、結着剤としてPVdFを用いた活物質層を有する電極を、電極Yとする。
電極Xを構成する活物質層の材料となるスラリーXの作製方法を示す。重量比12wt%のPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を含有したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に、一次粒径の平均粒径が10μmである粒状の黒鉛を添加し、混練機により2000rpmの回毎分で攪拌・混合を行い、混合物Aを得る。ここで平均粒径とは、例えば体積より算出する球換算の直径を指す。PVdFには、カルボキシル基が導入されている。その後、混合物Aにペルヒドロポリシラザン溶液を滴下し、さらに混練機により2000rpmの回毎分で攪拌・混合を行い、活物質層を塗布するためのスラリーXを得る。スラリーXは、黒鉛:PVdF:酸化シリコン=88:9.8:2.2(wt%)の重量比となるように配合する。スラリーXの作製は、水分の浸入を防ぐためにドライルーム内で行うことが好ましい。
次にブレード塗工装置を用いて、スラリーXを銅集電体に塗工する。これを70℃の温度で通風乾燥して極性溶媒を揮発させる。次に、活物質上に被膜を形成するため、湿度の高い状態でドラフトチャンバー内で、加熱する。加熱は150℃程度で行えばよい。本工程により、電極の焼成が行われるとともに、ペルヒドロポリシラザンの加水分解が進行し、中間体を経て最終的に酸化シリコンが形成される。次に、減圧雰囲気下で170℃の温度で加熱する。加熱時間は4時間以上20時間以下とすればよい。その後、プレスを行い電極Xを得る。
次に電極Yを構成する活物質層の材料となるスラリーYを作製する。重量比8wt%のPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を含有したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に一次粒径の平均粒径が10μmである粒状の黒鉛を添加し、混練機により攪拌・混合し、スラリーYを得る。スラリーYは、黒鉛の重量とPVdFの重量の比を黒鉛:PVdF=90:10(wt%)となるように配合する。なお、PVdFには、カルボキシル基が導入されている。次に、スラリーYを銅集電体上に塗布した後、乾燥を行い、電極Yを得る。
電極Xおよび電極Yを用いてCR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン形蓄電池を作製し、充放電後にセルを解体して電極を取り出す。その後、電極を折り曲げ、観察を行う。
まず、コイン型蓄電池を作製した。対極にはリチウム(Li)金属箔を用い、電解液にはエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で1:1の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いた。
次に、作製した蓄電池の充放電を10回行った。環境温度を60℃とした。ハーフセルの放電(リチウム(Li)挿入)は、1回目は0.1C、2回目乃至10回目は0.2Cのレートで、それぞれ0.01Vを下限として定電流放電を行った後、0.01Vの電圧で0.01Cに相当する電流値を下限として定電圧放電を行った。充電(リチウム(Li)脱離)は、1回目は0.1C、2回目乃至10回目は0.2Cのレートで1Vを上限として定電流充電を行った。充放電後に電極を取り出し、ジメチルカーボネート(DMC)を用いて洗浄した。その後、電極を折り曲げて観察を行った。
図4(A)に電極Xの、図4(B)に電極Yの、折り曲げ後の写真をそれぞれ示す。ペルヒドロポリシラザンを用いず、結着剤としてPVdFを用いた電極Yでは、折り曲げにより電極が割れていた。一方、ペルヒドロポリシラザンと、カルボキシル基を有する結着剤を用い、多孔質状の形状を有する被膜に表面の一部を覆われた活物質を活物質層に有する電極Xでは、電極Yに比べて割れは少なく、電極が柔軟であることが示唆された。
活物質層が柔軟であることにより、電極を繰り返し折り曲げても劣化が小さいことが期待される。例えば、この電極を可撓性を有する基板や筐体、表示装置や電子機器などに用いることができる。また、この電極を可撓性を有する蓄電装置に用いることもできる。繰り返し折り曲げても劣化が小さいことから、蓄電装置の寿命を長くすることができる。
一方、該被膜に表面の一部を覆われた活物質を用いた活物質層を有する電極はペルヒドロポリシラザンと、活物質層となるスラリーに含まれる結着剤との反応により、活物質層の活物質同士の密着力が、活物質層と集電体との密着力に比べ、より高くなることにより、集電体界面との密着性が弱くなる場合もある。そのような場合、外力、例えば集電体と電極を引き剥がす力を加えた場合、活物質と集電体界面の密着性が弱く活物質層が剥離してしまう場合がある。
また、フレキシブルな表示装置や電子機器などにおける可撓性を有する部位(筐体の全部または一部)に蓄電装置を設ける場合もある。その部位と共に蓄電装置に曲げなどの変形が繰り返し与えられると、蓄電装置の電極において、集電体と活物質との間で剥がれが生じ、蓄電装置の劣化が促進される恐れもある。
よって、活物質層を第2の電極層とし、第2の電極層と集電体の間に第2の電極層と集電体の密着性を高めるための第1の電極層を設けるとよい。第1の電極層と第2の電極層を合わせて、電極層と呼ぶ。つまり、集電体上に電極層が形成されており、電極層は第1の電極層と第2の電極層を有する。正極の電極層は正極電極層と呼ぶ。また負極の電極層は負極電極層と呼ぶ。
第1の電極層は、第1の結着剤を有する。また、第1の電極層は、集電体と活物質層や、活物質同士の導電パスを供給するための導電性粒子を有することが好ましい。また、蓄電装置のエネルギー密度を高めるためには、第1の電極層は薄いことが好ましい。第1の電極層の厚さは好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。また、第1の電極層は、膜状でなくともよく、例えば島状に形成されていてもよい。
第1の電極層を形成後、第2の電極層を形成する。第2の電極層は、スラリーを集電体及び第1の電極層上に塗布して形成する。第2の電極層を形成するためのスラリーは、第1の電極層が有する第1の結着剤と反応する材料を有することが好ましい。
また、第2の電極層を形成する際に、第2の電極層を形成するためのスラリーが第1の電極層を一部溶解し、その表面に凹凸を形成してもよい。第1の電極層の一部が溶解し再度固化する際に第2の電極層と混在し、密着性を向上させることができる。また、第1の電極層の表面に凹凸を有することにより、第2の電極層と第1の電極層とが接する表面積が増大し、密着性を向上させることができる。
第2の電極層を形成するためのスラリーは、活物質、ペルヒドロポリシラザン、第2の結着剤および溶媒を含む。また、触媒として例えばアミンなどを含んでもよい。また、導電助剤を含んでもよい。第2の電極層を形成するためのスラリーが、第1の電極層が有する第1の結着剤と反応する材料を有することにより、第2の電極層を形成する際に第1の電極層と第2の電極層との密着性を高めることができる。例えば、第1の電極層が有する第1の結着剤と、ペルヒドロポリシラザンが反応し結合を形成することにより密着性を高めることができる。
あるいは、第1の電極層と、触媒としてのアミンが反応してもよい。第1の電極層が有する第1の結着剤と、アミンと、が反応することにより、第1の結着剤が変質し、ペルヒドロポリシラザンと反応しやすくなる場合もある。また、アミンと反応して第1の電極層が一部溶解し、凹凸を形成する場合もある。
図1(A)乃至(D)は、本発明の一態様に係る蓄電装置用電極100を示した図である。図1(A)は、蓄電装置用電極100の斜視図である。蓄電装置用電極100は、集電体101の両面(又は図示しないが、一方の面)に第1の電極層106と第2の電極層102が形成されている。図1(B)に、図1(A)に破線で示した箇所の断面図を示す。
集電体101には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高い材料を用いることができる。また、シリコン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体101は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
第1の電極層106は、膜状でなくともよく、例えば島状の形態を有していてもよい。第1の電極層106は、第1の結着剤と、導電性粒子とを有する。第1の電極層106に用いる第1の結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂材料を用いることができる。
また、第1の結着剤はカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一を官能基として有し、活物質、導電助剤、または集電体を結着することが好ましい。
また、第1の電極層106に用いる導電性粒子としては、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック(AB)又はグラフェンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、X線光電子分光法(XPS)で測定した場合に、検出される元素の全体に対して、2atoms%以上20atoms%以下、好ましくは3atoms%以上15atoms%以下である。
第2の電極層102は、第1の電極層106を設けた後、第1の電極層106を介して、集電体101の片面又は両面上に設けられる。図1(C)に第2の電極層102の厚さ方向の断面を模式的に示す。第2の電極層102は、活物質103、活物質の表面の少なくとも一部を覆った被膜104、及び第2の結着剤を含む。
本発明の一態様に係る蓄電装置用電極に用いる活物質には、キャリアイオンが挿入及び脱離することにより充放電反応を行うことが可能な材料を用い、例えば粒状の形状をした材料を用いる。
ここで粒状とは、例えば球状、粉末状、板状、角状、柱状、針状又は鱗片状等の形状を含む任意の表面積を有する活物質の外観形状を示す語句である。粒状の活物質は、球状である必要はなく、また、それぞれの形状が互いに異なる任意の形状であってもよい。また、以上のような形状である限り、その製造方法は特に限定されない。
粒状の活物質の平均粒径は特に限定されず、通常の平均粒径や粒径分布を有する活物質を用いればよい。活物質には、平均粒径が例えば1μm以上50μm以下の範囲にある活物質を用いることができる。また、活物質が2次粒子である場合には、当該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒径が10nm以上1μm以下の範囲である活物質を用いることができる。
また、活物質の形状は粒状に限られず、単一の膜状や複数の膜状の活物質を複数積層した積層状であっても、本発明の一形態に係る被膜をその上に形成することで、同様の効果を得ることできる。
活物質103が負極活物質の場合、材料としては、蓄電分野に一般的な炭素材である黒鉛を用いることができる。黒鉛は、低結晶性炭素として軟質炭素や硬質炭素等が挙げられ、高結晶性炭素として、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、液晶ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、液晶ピッチ、石油又は石炭系コークス等が挙げられる。
また、負極活物質には上述の炭素材の他、キャリアイオンとの合金化、脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合金系材料としては、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg及びIn等のうちの少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような金属は黒鉛に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。
活物質103が正極活物質の場合、材料はキャリアイオンの挿入及び脱離が可能なものであればよく、例えば、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。
または、リチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
または、一般式Li2MSiO4(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li2MSiO4の代表例としては、Li2FeSiO4、Li2NiSiO4、Li2CoSiO4、Li2MnSiO4、Li2FekNilSiO4、Li2FekColSiO4、Li2FekMnlSiO4、Li2NikColSiO4、Li2NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li2FemNinCoqSiO4、Li2FemNinMnqSiO4、Li2NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li2FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
蓄電装置に用いるキャリアイオンとして、代表的なリチウムイオンの他、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンを用いることができる。なお、これらリチウム以外のイオンをキャリアイオンとして用いる場合には、正極活物質として上述したリチウム化合物、リチウム含有複合リン酸塩及びリチウム含有複合ケイ酸塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
図1(C)では、活物質103として複数の粒状の活物質を示している。粒状の活物質103の平均粒径は特に限定されず、通常の平均粒径や粒径分布を有する活物質を用いればよい。活物質103には、平均粒径が例えば1μm以上50μm以下の範囲にある活物質を用いることができる。また、活物質103が2次粒子である場合には、当該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒径が10nm以上1μm以下の範囲である活物質を用いることができる。
粒状の活物質103のそれぞれは完全に被膜104によって絶縁分離されず、いくつかの粒状の活物質どうしが互いに接して凝集体を形成している。この凝集体の表面を被膜104が覆っている。図1(C)においては、各凝集体それぞれ被膜104により覆われているが、凝集体は図の奥行き方向にも連なっているため、立体的に個々の粒状の活物質103が接触しあって導電経路を有している。
また、被膜104は、活物質103、あるいは凝集体の表面の全体を必ずしも覆うものではなく、少なくともその一部が覆われていればよい。完全に周囲を絶縁された粒状の活物質103にあっては、電子が活物質103の内外を自由に移動することが抑制されるから、電池反応を起こすことが困難となる。部分的に露出した活物質103の表面が、他の活物質103と接触して電気伝導性を確保する場合もある。
被膜104は、キャリアイオンを通過させることができる。従って、当該被膜はキャリアイオンを通過させることができる材料によって構成され、また、キャリアイオンを通過させることができる程度に膜厚が薄いことが必要である。被膜104の膜厚は、例えば10nm以上10μm以下であるとよい。
なお、活物質103として充放電時に体積変化を伴う活物質を用いる場合には、被膜104は活物質103の体積変化による形状の変化に追随することが好ましい。このため、被膜のヤング率は、70GPa以下であることが好ましい。
図1(D)は、活物質103上の被膜104の一部を拡大した断面を示す模式図である。被膜104は、その表面及び内部に多数の空孔105を有した多孔質状の形状である。また、別言すると、海綿状と表現することもできる。空孔105は、被膜104の表面に形成されたものや、被膜104中に形成されたものなど、任意の位置に形成される。これら複数の空孔105が結合することにより、被膜104の表面から活物質103の表面まで到達する場合もある。また、空孔105は図1(D)の紙面に対して奥行き方向にも延在する。このため、複数の空孔105どうしが接続して網状に広がっている部分を有する。このため、換言すると、被膜104は、当該空孔105の部分を除いた細線状の部分が網状の骨格となった中空の構造を形成していると表現することもできる。
空孔105の直径は、特に限定されないが、被膜104の膜厚よりも小さいことが好ましい。例えば、空孔105の直径を1nm以上1μm以下とすることができる。また、被膜104中において空孔105の密度は高い方が好ましく、すなわち被膜104は空孔の数が多く、全体として疎であることが好ましい。
このような被膜104の多孔質状の形状は、被膜形成時に発生するアンモニア等の気体の流出経路として形成されたと考えることができる。
被膜104は、キャリアイオンを通過させることができる。従って、当該被膜はキャリアイオンを通過させることができる材料によって構成され、また、キャリアイオンを通過させることができる程度に膜厚が薄いことが必要である。
被膜の材料には、絶縁体として酸化シリコンを用いる。特に、本発明の一態様においては、酸化シリコンは、シリコン(Si)、酸素(O)の元素の他、少なくとも炭素(C)及びフッ素(F)を含有する。当該被膜は、従来の電解液の分解生成物により活物質の表面に形成される表面皮膜に比べ、十分緻密な膜である。
従って、活物質103を覆う被膜104がキャリアイオン伝導性を有することで、キャリアイオンはこの被膜104を透過することができ、活物質103が電池反応を行うことができる。一方で、被膜104が絶縁性を有することで、電解液と活物質103との反応を抑制することができる。
本発明の一態様における被膜は、電解液と活物質との分解反応により生じる表面皮膜とは明確に区別されるものであり、蓄電装置の充放電を行うよりも以前に、あらかじめ人工的に設けられた膜である。このため、本明細書等においては、表面皮膜の「皮膜」に対して「被膜」と区別して記載する。
また、第2の電極層102には、活物質103、第2の結着剤の他、第2の電極層102の導電性を向上させるために、導電助剤を添加してもよい。
第2の結着剤として、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂材料を用いることができる。
また、第2の結着剤はカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一を官能基として有し、活物質、導電助剤、または集電体を結着するものであることが好ましい。
導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いるとよい。また、カーボンナノチューブやグラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。
図2は、活物質110上に設けられた、図1(D)とは異なる被膜111の断面を示す模式図である。図1(D)に記載の被膜104とは異なり、複数の空孔112のほとんどが他の空孔112と接触しない。このため、空孔112が多数つながることにより、活物質110の表面から被膜111の表面に達する空孔がほとんどない。このため、電解液は、被膜111が設けられた領域において、活物質110と接しない。したがって、電解液と活物質との間に生じる表面皮膜の発生を抑制することができる。
以上のように、活物質の一部を被覆する被膜を活物質の表面に形成することで、活物質の電池反応を可能としつつ、電解液の分解反応を抑制することができる。
次に、蓄電装置用電極の製造方法の一例について、図3を用いて説明する。
まず、第1の結着剤と導電性粒子と溶媒とを合わせ、撹拌して第1の混合物を作製する(ステップS150)。
第1の結着剤として、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂材料を用いることができる。
また、第1の結着剤は、ペルヒドロポリシラザンと反応しやすいカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一を有することが好ましい。
第1の結着剤中のカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一は、第1の結着剤に対する重量比を0.2wt%以上10wt%未満とする。
次に、作製した第1の混合物を集電体上に設ける(ステップS151)。
次に、乾燥を行う(ステップS152)。こうして、第1の電極層を形成することができる。
次に、第2の結着剤と活物質と溶媒とを合わせ、撹拌して第2の混合物を作製する(ステップS153)。
第2の結着剤は活物質、導電助剤、または集電体を結着するものであればよい。結着剤として、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂材料を用いることができる。
また、第2の結着剤はカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一を官能基として有することが好ましい。第2の結着剤中のカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一は、第2の結着剤に対する重量比を0.2wt%以上10wt%未満とする。
次に、作製した第2の混合物にペルヒドロポリシラザン溶液を添加して、第3の混合物を作製する(ステップS154)。
このとき、第2の結着剤が含む官能基がペルヒドロポリシラザンと反応を開始すると考えられる。
作製した第3の混合物を集電体及び第1の電極層上に設ける(ステップS155)。
ステップS153乃至ステップS155までのステップは、いずれもドライルーム等の低湿度の環境下にて行う。これにより、混合物が集電体上に設けられる前に、ペルヒドロポリシラザンが加水分解することを抑制する。低湿度の環境として、露点は−20℃以下、好ましくは−40℃以下とする。なお、低湿度の環境下にて混合物を作製することにより、雰囲気中の水分とペルヒドロポリシラザンとの反応を抑制することができる一方で、第2の結着剤がペルヒドロポリシラザンと反応する官能基を有する場合、官能基とペルヒドロポリシラザンは低湿度の環境下においても反応できることが好ましい。この反応により、多孔質状の優れた被膜を形成できる。また、第1の結着剤とペルヒドロポリシラザンが反応してもよい。この反応により、第1の電極層と第2の電極層の密着性を高めることができる。
なお、図示しないが、ステップS155の後に、ドライルーム等の低湿度環境において、集電体上に設けた第3の混合物を乾燥させるとよい。乾燥は通風乾燥とするとよい。乾燥のための熱処理は、50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下の温度範囲で行うとよい。
その後、熱処理により第3の混合物を焼成する。焼成と同時にペルヒドロポリシラザンを加水分解する(ステップS156)。当該ステップは、集電体及びその上に設けられた第2の混合物をドライルーム外へ搬出し、大気中で行う。大気中の水分を利用することにより、ペルヒドロポリシラザンの加水分解が進行する。なお、ペルヒドロポリシラザンは加水分解した後、中間体を形成し、最終的に縮合反応により酸化シリコンを形成すると考えられる。中間体としては例えばシラノール基を有する形態などが考えられる。シラノールは脱水縮合により、酸化シリコンを形成すると考えられる。このとき、第1の結着剤がペルヒドロポリシラザンの中間体と脱水縮合する官能基を有することが好ましい。この脱水縮合により、第1の電極層と第2の電極層の密着性を高めることができる。また、脱水縮合によりペルヒドロポリシラザンの中間体と第2の結着剤が反応してもよい。当該ステップにおける熱処理は、50℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上180℃以下の温度範囲で行うとよい。例えば、150℃に設定したホットプレートにより熱処理を行うことができる。こうして、第2の電極層を形成する。
ステップS156により、ペルヒドロポリシラザンは酸化シリコンへと構造を変化させる。当該ステップおいて発生するアンモニア等の気体が外部へ放出されるため、形成される被膜は多孔質状となると考えられる。また、第1の電極層と第2の電極層の密着性を高めることができる。
この後、ステップS157として、減圧雰囲気下で乾燥することで、被膜に覆われた活物質を含む蓄電装置用電極を得ることができる。乾燥の温度は、50℃以上200℃以下、好ましくは140℃以上180℃以下とする。例えば、170℃で真空乾燥するとよい。
なお、ステップS150乃至S157においては、ロールプレス機等を用いた圧延加工のステップの記載を省略したが、電極層の密度を高めるため、適宜圧延加工のステップを行うとよい。
以上の工程によって、多孔質状の被膜により覆われた活物質を含む蓄電装置用電極を作製することができる。このようにカルボキシル基、カルボニル基または水酸基の少なくとも一を有する結着剤と、ペルヒドロポリシラザンを用いて活物質に被膜を形成する場合、複雑な工程を経ずに形成することが可能であるため、量産工程に最適な製造方法である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示す電極を用いた蓄電装置の構造について、図11乃至図14を参照して説明する。また、蓄電装置(蓄電池)の構造例について、図15乃至図19を用いて説明する。また、電子機器の一例について、図20を用いて説明する。
[コイン型蓄電池]
図11(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図11(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。ここで、正極304又は負極307の少なくとも一方には、本発明の一態様に係る蓄電装置用電極を用いる。
正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極電極層306により形成される。正極電極層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、正極電極層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。導電助剤としては、導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。また、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。また、正極304に実施の形態1で示した蓄電装置用電極を用いることが好ましい。つまり、正極電極層306は、活物質を有する第2の電極層と、密着性を高めるための第1の電極層を有することが好ましく、活物質はペルヒドロポリシラザンを用いて形成された被膜を有することが好ましい。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極電極層309により形成される。負極電極層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、負極電極層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。また、負極307に実施の形態1で示した蓄電装置用電極を用いることが好ましい。つまり、負極電極層309は、活物質を有する第2の電極層と、密着性を高めるための第1の電極層を有することが好ましく、活物質はペルヒドロポリシラザンを用いて形成された被膜を有することが好ましい。
正極電極層306と負極電極層309との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
セパレータ310は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリエチレン等の絶縁体を用いることができる。
電解液は、電解質として、キャリアイオンを有する材料を用いる。電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンが移動可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオン等が挙げられる。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、正極缶301や負極缶302を、ニッケルやアルミニウム等で被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解液に含浸させ、図11(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
ここで図11(C)を用いて蓄電装置の充電時の電流の流れを説明する。リチウムイオンを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムイオンを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
図11(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池400は、正極402と負極404の間にセパレータ408及び電解液406を有する。蓄電池400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図11(C)では、蓄電池400の外部の端子から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中において、正極402から負極404の方へ流れ、負極から蓄電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
[円筒型蓄電池]
次に、円筒型の蓄電池の一例について、図12を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は図12(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図12(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、電池缶602を、ニッケルやアルミニウム等で被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604又は負極606の少なくとも一方には、本発明の一態様に係る蓄電装置用電極を用いる。正極604及び負極606は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造すればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
[ラミネート型蓄電池]
次に、ラミネート型の蓄電池の一例について、図13(A)を参照して説明する。ラミネート型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図13(A)に示すラミネート型の蓄電池500は、正極集電体501および正極電極層502を有する正極503と、負極集電体504および負極電極層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。正極503又は負極506の少なくとも一方には、本発明の一態様に係る蓄電装置用電極を用いる。つまり、正極電極層502は、活物質を有する第2の電極層と、密着性を高めるための第1の電極層を有することが好ましく、活物質はペルヒドロポリシラザンを用いて形成された被膜を有することが好ましい。また、負極506に実施の形態1で示した蓄電装置用電極を用いることが好ましい。つまり、負極電極層505は、活物質を有する第2の電極層と、密着性を高めるための第1の電極層を有することが好ましく、活物質はペルヒドロポリシラザンを用いて形成された被膜を有することが好ましい。
図13(A)に示すラミネート型の蓄電池500において、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
ラミネート型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
また、ラミネート型の蓄電池500の断面構造の一例を図13(B)に示す。図13(A)では簡略のため、2つの集電体のそれぞれに設けられた電極層で構成する例を示しているが、3以上の集電体のそれぞれに設けられた電極層で構成することがより好ましい。
図13(B)では、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても蓄電池500は、可撓性を有する。図13(B)では負極集電体504が8層と、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、図13(B)は負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、ラミネート型及び円筒型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
また、可撓性を有するラミネート型の蓄電池を電子機器に実装する例を図14に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図14(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図14(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図14(C)に示す。蓄電装置7407はラミネート型の蓄電池である。
図14(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図14(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。
[蓄電装置の構造例]
蓄電装置(蓄電池)の構造例について、図15乃至図19を用いて説明する。
図15(A)及び図15(B)は、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基板900と、蓄電体913と、を有する。蓄電体913には、ラベル910が貼られている。さらに、図15(B)に示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、を有し、ラベル910の裏にアンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電体913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電体913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電装置の構造は、図15に限定されない。
例えば、図16(A−1)及び図16(A−2)に示すように、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図16(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図16(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図16(A−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図16(A−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電体913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
又は、図16(B−1)及び図16(B−2)に示すように、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図16(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図16(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図15(A)及び図15(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図16(B−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、図16(B−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電装置と他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図17(A)に示すように、図15及至図16に示す蓄電体913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図15及至図16に示す蓄電装置と同じ部分については、図15及至図16に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図17(B)に示すように、図15及至図16に示す蓄電体913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、センサ921は、ラベル910の裏側に設けられてもよい。なお、図15及至図16に示す蓄電装置と同じ部分については、図15及至図16に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
さらに、蓄電体913の構造例について図18及び図19を用いて説明する。
図18(A)に示す蓄電体913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図18(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図18(B)に示すように、図18(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図18(B)に示す蓄電体913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、蓄電体913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図19に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図15乃至図16に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図15乃至図16に示す端子911に接続される。
[電子機器の一例:車両に搭載する例]
次に、蓄電池を車両に搭載する例について示す。蓄電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図20において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図20(A)に示す自動車8100は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8100は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8106を駆動するだけでなく、ヘッドライト8101やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8100が有するスピードメーター、タコメーターなどの計器パネルに電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8100が有するナビゲーションゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図20(B)に示す自動車8200は、自動車8200が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図20(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8200に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8200に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、実施の形態1で示した電極を作製し、電極強度の評価を行った。また、作製した電極を用いてハーフセルおよびフルセルを作製し、特性の評価を行った。
(電極の作製)
電極を作製するために、実施の形態1で示したように、最初にスラリーを作製した。
スラリーAとして、重量比12wt%のPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を含有したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)にアセチレンブラック(表面積63m2/g、粒径は約30nm)を添加し、混練機により2000rpmの回毎分で25分間撹拌・混合した。なお、PVdFにはカルボキシル基が導入されている。
スラリーBとして、ポリアリルアミン水溶液(製品名:PAA−15C)とアンカーコート剤(製品名:スーパーコロハイト)を混合した。ポリアリルアミンは、アミノ基を有する化合物である。アンカーコート剤の黒鉛と水との重量比は黒鉛:水=89.5:10.5(wt%)であった。また、アンカーコート剤には分散剤としてアンモニアが含有されている。重量比15wt%のポリアリルアミンを含有したポリアリルアミン水溶液であるPAA−15Cを、アンカーコート剤に混合した。アンカーコート剤とポリアリルアミン水溶液の重量比は0.35:99.65(wt%)とした。得られた混合物に対して、スターラーにより300rpmの回毎分で120分間の撹拌及び混合を行った。
スラリーCとして、ポリエチレンオキシド(製品名:(一級)ポリエチレングリコール2000)とアンカーコート剤とを混合した。アンカーコート剤は、スラリーBと同じものを用いた。アンカーコート剤と、ポリエチレンオキシドの重量比が1.2:98.8(wt%)となるように、混合した。得られた混合物に対して、スターラーにより300rpmの回毎分で120分間の撹拌及び混合を行った。
このようにして作製したスラリーA、スラリーBおよびスラリーCを、それぞれ銅集電体上にブレード塗工装置を用いて10mm/sec.の速度で塗工した。これを30℃の温度で5分乾燥後、さらに50℃の温度で15分乾燥した。乾燥はホットプレートを用いて行った。作業はドライルーム外で行った。
このようにして、集電体上にスラリーA、スラリーBおよびスラリーCを塗布して電極層A−1、電極層B−1および電極層C−1をそれぞれ形成し、電極A、電極Bおよび電極Cとした。
次に、スラリーDを作製するために、重量比12wt%のPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を含有したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に一次粒子の平均粒径が10μmの粒状の黒鉛を添加し、混練機により2000rpmの回毎分で10分間の攪拌および混合を3回繰り返した。なお、PVdFにはカルボキシル基が導入されている。黒鉛4gに対して、重量比12wt%のPVdFを含有したNMP溶液の量を3.7gとした。その後、これにペルヒドロポリシラザン溶液を滴下し、さらに混練機により2000rpmの回毎分で3分間の攪拌・混合を1回行った。スラリーは、NMPを除いた重量比が、黒鉛:PVdF:酸化シリコン=88:9.8:2.2[wt%]の重量比となるように配合した。ここで、酸化シリコンの重量は、前駆体であるペルヒドロポリシラザンが全て反応した場合に見積もられる生成量である。上記のスラリーの作製は、水分の浸入を防ぐためにドライルーム内で行った。
このようにして作製したスラリーDを、電極層A−1を設けた電極Aと、電極層B−1を設けた電極B、電極層C−1を設けた電極Cおよび電極層を設けない銅集電体に、ブレード塗工装置を用いて10mm/sec.の速度で塗工した。電極層を設けない銅集電体上に塗工したサンプルを電極Dとする。次に、これらの電極を70℃の温度で20分間通風乾燥して極性溶媒を揮発させた。
次に、活物質上に被膜を形成するため、湿度の高い状態でドラフトチャンバー内で、ホットプレートを用いて70℃で1時間加熱した。雰囲気内で水を加熱することにより湿度を高めた。次に、さらにホットプレートで150℃1時間の大気焼成を行った。本工程により、電極の焼成が行われるとともに、ペルヒドロポリシラザンの加水分解が進行して酸化シリコンが形成される。ここで、PVdFが有するカルボキシル基もペルヒドロポリシラザンと反応して、アンモニア(NH3)及び水素(H2)を発生させる。なお、PVdFが有するカルボキシル基との反応は、PVdFとペルヒドロポリシラザンとを混合する室温でのスラリーの作製工程において開始されると考えられる。室温でのスラリーの作製工程及び70℃および150℃の焼成工程を経て、活物質の表面を覆う被膜は、複数の空孔を有する海綿状の酸化シリコンとなり、またPVdFと反応することによってシリコン(Si)及び酸素(O)を主成分とし、炭素(C)及びフッ素(F)を含有する酸化シリコンとなる。このようにして、スラリーDを用いて活物質層D(電極層)を作製した。
次に、減圧雰囲気下で170℃の温度で12時間加熱して電極を乾燥させ、プレスして電極を圧縮した。その後、これを打ち抜いて蓄電装置用負極である電極A、電極Bおよび電極Cを作製した。電極Aは電極層A−1と活物質層Dを有し、電極Bは電極層B−1と活物質層Dを有し、電極Cは電極層C−1と活物質層Dを有し、電極Dは活物質層Dを有する。電極A、電極B、電極Cおよび電極Dが有する活物質層D中の被膜の重量比は、活物質全体に対して2.5wt%である。
次に比較電極Eを作製した。重量比8wt%のPVdFを含有したNMPに、一次粒径の平均粒径10μmの粒状の黒鉛を添加し、混練機により攪拌・混合し、スラリーEを得た。スラリーEは、黒鉛の重量とPVdFの重量の比を黒鉛:PVdF=90:10(wt%)となるように配合した。なお、PVdFには、カルボキシル基が導入されている。次に、スラリーEを銅集電体上に塗布した後、乾燥を行い、活物質層(電極層)を有する比較電極Eを得た。
(SEM観察)
図10に電極Aの断面SEM写真を示す。図10(A)は観察倍率が1,000倍の写真を示す。また、図10(B)は観察倍率が3,000倍の写真を示す。集電体800、第1の電極層801、第2の電極層802および第2の電極層の有する活物質803が観察された。第1の電極層801は、第2の電極層802と集電体800に密着している様子が確認できた。また、第1の電極層801は、断続的に膜を形成していることがわかった。
(180°剥離試験)
図8に180°剥離試験の模式図を示す。剥離試験前には、集電体1001の片面には電極層1002が形成されている。図8(A)に示す通り、集電体1001から電極層を剥がし、180°に折り返す。剥がされた電極層の端部1004と、電極が剥がされた集電体の端部1005を固定し、剥がされた電極層の端部1004を20mm/sの速度で引き剥がしながら、その時の力を測定した。この時、電極層を引っ張る方向は、元々電極が形成されていた向きからおよそ180°であった。力の測定にはEZ graph(島津製作所製)を用いた。また、図8(B)は、同様に電極層を剥がし、引っ張る様子を示しているが、集電体上に一部の電極層1003が残っている。
180°剥離試験を行った結果を図5に示す。図5(A)は引き剥がす時の力を示す。また、図5(B)は、剥離前後の集電体上の電極層の膜厚を示す。なお、電極層の膜厚には、集電体の厚さは含まない。まず、密着性を高めるための電極層を形成していないサンプルについて述べる。ペルヒドロポリシラザンを用いずに作製した比較電極Eでは、剥離試験時の剥離力は2.8Nであった。一方、ペルヒドロポリシラザンを用いた電極Dでは剥離力は0.9Nであった。このことから、電極Dでは、折り曲げ試験では柔軟性が高い結果が得られたものの、剥離に対する強度は弱いことがわかった。
また、図5(B)より、電極A、電極B、電極Cおよび電極Dでは剥離後の集電体上の残膜厚が大きく減少しており、剥離箇所が集電体近傍であることがわかる。このことより、これらの電極においては、活物質層D内部の密着性が高い、例えば活物質同士の密着性が高いことが示唆される。
次に、電極層A−1と活物質層Dを有する電極A、電極層B−1と活物質層Dを有する電極Bおよび電極層C−1と活物質層Dを有する電極Cの、剥離強度試験結果について述べる。電極Aでは、剥離力は約1.6Nを示し、集電体と活物質層Dの間に電極層を有さない電極Dと比較し、剥離強度が向上した。電極Bでは剥離力は1.0Nを示し、約0.1N向上した。また、電極Cでは剥離力は1.1Nを示し、約0.2N向上した。
活物質層Dは、図4に示す結果より柔軟性が高いことが示唆されている。よって、電極層A−1を設けることにより、剥離強度が高く、かつ柔軟性の高い電極を得ることができることができた。また、カルボキシル基を有するPVdFを結着剤として用いた電極層A−1において、最も密着性が高い結果となった。このことから、カルボキシル基は密着性を高めるために有効であることがわかった。また、ポリアリルアミンを用いた電極B−1やポリエチレンオキシドを用いた電極C−1においても、剥離力が向上はみられたことから、ポリアリルアミンの有するアミノ基や、ポリエチレンオキシドの酸素原子が有する極性が、密着性に寄与することも考えられる。なお、剥離力は0.95N以上が好ましく、1.3N以上がより好ましい。
(ハーフセルの充放電特性)
次に、電極Aおよび電極Dを用いて作製したハーフセルの特性を示す。特性の評価は、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン形蓄電池を用いて行った。対極にはリチウム(Li)金属箔を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いた。ここで、黒鉛電極を用いたハーフセルの充電および放電は以下の式で表すことができる。
図22に、黒鉛電極と、対極であるリチウム(Li)極と、を用いたハーフセルを放電する場合における、ハーフセル121と、負荷123との接続構成を示す。ハーフセルの放電を行う場合、黒鉛電極では式(2)の反応が起こる。
xC + Li+ + e− → CxLi (2)
また、リチウム(Li)極では、式(3)の反応が起こる。
Li → Li+ + e− (3)
図21に、黒鉛電極と、対極であるリチウム(Li)極と、を用いたハーフセルを充電する場合における、ハーフセル121と、充電器122との接続構成を示す。ハーフセルに充電を行う場合、黒鉛電極では、式(4)の反応が起こる。
CxLi → xC + Li+ + e− (4)
また、リチウム(Li)極では、式(5)の反応が起こる。
Li+ + e− → Li (5)
ここで、式(2)乃至式(5)において、xは6≦xを満たす。但し、黒鉛の種類によっては、xは6より小さい値を有してもよい。
式(2)乃至式(5)が示す通り、放電でリチウム(Li)が黒鉛に挿入され、充電で黒鉛からリチウム(Li)が脱離する。すなわち、ハーフセルの評価は、放電動作から開始する。
ハーフセルの放電(リチウム(Li)挿入)は、1回目および2回目は0.1C、3回目は0.2C、4回目は0.3Cのレートで、それぞれ0.01Vを下限として定電流放電を行った後、0.01Vの電圧で0.01Cに相当する電流値を下限として定電圧放電を行った。充電(リチウム(Li)脱離)は、1回目から4回目まで全て0.1Cのレートで1Vを上限として定電流充電を行った。結果を図6に示す。図6(A)は、電極Aを用いたセルの特性を示し、図6(B)は電極Dを用いたセルの特性を示す。電極層A−1を設けることによる特性の低下はみられず、良好な特性がみられた。
(フルセルの充放電特性)
次に、電極Aを用いてフルセルを作製した。特性の評価は、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン形蓄電池を用いて行った。正極にはLiFePO4を活物質とする電極を用いた。また電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いた。充放電は、0.2Cのレートで定電流充放電した。充放電の上限電圧を4.0V、下限電圧は2Vとした。また、測定温度は25℃で行った。なお、レートはLiFePO4の理論容量である170mAh/gを基準として算出している。
充放電の結果を図7に示す。初回の充放電を実線で、2回目の充放電を破線で示した。初回と2回目の放電カーブはほぼ重なっている。図7より、電極層A−1を設けたフルセルは、良好な充放電特性を示すことがわかった。よって、電極の強度を増し、かつ良好な特性を示す電池を得ることができた。