JP6583020B2 - 送信機および歪補正方法 - Google Patents

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Description

本発明は、増幅器において生じる歪を抑制するための歪補正処理を行う送信機、および増幅器において生じる歪を抑制するための歪補正方法に関する。
送信機においては、増幅器によって生じる非線形歪を抑制するために、歪補正係数を用いて送信信号を補正する、DPD(Digital Pre-Distortion)処理が行われる。DPD処理においては、LUT(Look-Up Table)に格納されたデジタル音声信号の振幅に対応する歪補正ベクトルがデジタル音声信号に乗算される。
特許文献1に開示されるOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数多重分割)変調器は、入力信号に応じたベースバンド信号と増幅器からのフィードバック信号との誤差である誤差信号を所定のサンプル毎に抽出して誤差信号の平均値を算出し、平均値の間を補間する。該OFDM変調器は、補間された誤差信号の平均値に基づいて歪を推定し、その歪から歪補償用のデータを生成する。
特許文献2に開示される非線形歪み補償送信装置は、入力信号とA−D(Analogue-to-Digital)変換器の出力信号とを比較し、差異である歪成分を検出する。非線形歪み成分を打ち消すための補償データを更新する際には、近似計算区間がシフトされ、シフトされた近似計算区間の補償データについて関数近似計算が行われ、補償データが更新される。
歪補正値の演算時間を短縮するため、特許文献3に開示される無線機は、送信増幅器の出力と送信部に入力する入力信号とを比較することにより送信増幅器の補正すべき歪量を出力し、さらに歪量を使用して補間処理により一括して歪補正値を求める。歪補正値であらかじめ変調信号を補正して送信増幅器へ入力することにより、送信増幅器で発生する出力歪が補正される。
特開2011−188093号公報 特開2004−343594号公報 特開平08−079143号公報
送信中の時間経過にともない増幅器の温度が変化すると、非線形歪の量が変化する。そのため、LUTに格納された歪補正ベクトルは、送信機の運用中に随時更新される必要がある。送信機の運用中のデジタル音声信号の振幅値にはばらつきがあり、LUTの全てのアドレス、すなわち音声信号の振幅値が取り得る全ての値に対応する、歪補正ベクトルの算出に用いられる歪特性データの収集に時間を要し、歪補正ベクトルが更新されるまでに時間を要する場合がある。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る送信機は、
増幅器に入力される送信信号を遅延した信号である遅延送信信号、および前記増幅器で増幅された前記送信信号のフィードバックである帰還信号に基づいて、前記遅延送信信号の電力、および前記遅延送信信号の複素共役である信号と前記帰還信号との乗算値を算出するデータ算出部と、
前記遅延送信信号の電力に応じたアドレスごとに、前記増幅器における歪を補正する歪補正ベクトル、該遅延送信信号の電力の総和である第1の総和値、および前記乗算値の総和である第2の総和値が記憶される記憶部と、
前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在する前記アドレスである基準アドレスについて、前記第1の総和値と前記第2の総和値の比から歪ベクトルを算出する歪ベクトル算出部と、
前記歪ベクトル算出部で算出された前記歪ベクトルに基づいて、前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在しない前記アドレスの歪ベクトルを推定し、前記アドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する推定処理部と、
前記歪ベクトル推定値から前記歪補正ベクトルを算出して出力する歪補正ベクトル算出部と、
前記歪補正ベクトル算出部から出力される前記歪補正ベクトルで前記記憶部に記憶された前記歪補正ベクトルを更新する更新部と、
前記増幅器に入力される前記送信信号を前記記憶部に記憶された前記歪補正ベクトルに応じて補正するプリディストーション部と、
を備える。
好ましくは、前記歪補正ベクトル算出部から出力される前記歪補正ベクトルの利得が利得閾値以下であるか否かを判定する利得判定部をさらに備え、
前記利得判定部において前記歪補正ベクトルの利得が前記利得閾値以下であると判定された場合には、前記更新部の処理を行い、
前記利得判定部において前記歪補正ベクトルの利得が前記利得閾値より大きいと判定された場合には、前記更新部の処理を行わず、前記記憶部に記憶された前記第1の総和値および前記第2の総和値をリセットする。
好ましくは、前記推定処理部は、
前記基準アドレスの最小値以上、かつ、前記基準アドレスの最大値以下のアドレスを含む基準アドレス範囲について、前記歪ベクトルに基づいて第1の近似式を算出し、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに、前記第1の近似式から前記歪ベクトル推定値を算出する第1の近似処理部と、
前記最小値未満の前記アドレスおよび前記最大値より大きい前記アドレスについて、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値の内、少なくとも一部に基づいて近似処理を行い、前記歪ベクトル推定値を算出する第2の近似処理部と、
を備える。
好ましくは、前記第1の近似処理部は、それぞれに複数の前記アドレスが含まれ、含まれる前記アドレスの少なくとも一部が重複する複数の近似対象アドレス範囲のそれぞれについて、前記歪ベクトルから2次近似式を算出し、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに、該アドレスが含まれる前記近似対象アドレス範囲に対応する前記2次近似式を、合計が1となる係数を用いて線形結合して前記第1の近似式を算出する。
好ましくは、前記推定処理部は、前記基準アドレスに対応する前記歪ベクトルおよび前記第1の近似式に基づいて算出される該アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値から、前記第1の近似式に含まれる誤差を検出し、前記誤差が誤差閾値以下であるか否かを判定する近似値誤差判定部をさらに備え、
前記誤差が前記誤差閾値以下であると判定された場合には、前記第2の近似処理部の処理を行い、
前記誤差が前記誤差閾値より大きいと判定された場合には、前記第2の近似処理部、前記歪補正ベクトル算出部および前記更新部の処理を行わず、前記記憶部に記憶された前記第1の総和値および前記第2の総和値をリセットする。
好ましくは、前記推定処理部は、前記基準アドレスの最小値以上、かつ、前記基準アドレスの最大値以下のアドレスを含む基準アドレス範囲について、前記歪ベクトルに基づく補間処理を行って、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに前記歪ベクトル推定値を算出し、前記最小値に対応する前記歪ベクトルを前記最小値未満の前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値とし、前記最大値に対応する前記歪ベクトルを前記最大値より大きい前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値とする。
好ましくは、前記歪補正ベクトル算出部は、前記最小値を中心とする複数の前記アドレスが含まれる第1のアドレス範囲、および前記最大値を中心とする複数のアドレスが含まれる第2のアドレス範囲のそれぞれにおいて、前記歪補正ベクトルから第2の近似式を算出し、前記アドレスごとに、前記歪補正ベクトルと前記第2の近似式に基づいて算出される歪補正ベクトル近似値とを、合計が1となる係数を用いて線形結合し、前記線形結合の結果を前記歪補正ベクトルとして出力する。
好ましくは、前記基準アドレスに応じて、前記第1の総和値および前記第2の総和値のデータ量が十分であるか否かを判定するデータ量判定部をさらに備え、
前記データ量判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す。
好ましくは、前記データ算出部の処理回数が処理回数閾値以上である場合には前記データ量が十分であると判定する処理回数判定部をさらに備え、
前記データ量判定部および前記処理回数判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す。
好ましくは、前記処理回数判定部は、前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの振幅が振幅閾値以上であるか否かを判定し、前記処理回数が前記処理回数閾値未満である場合であっても、前記振幅が前記振幅閾値以上である場合には、前記データ量が十分であると判定し、
前記データ量判定部および前記処理回数判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す。
好ましくは、前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの収束の程度に応じて前記処理回数閾値を調節する閾値調節部をさらに備える。
好ましくは、前記閾値調節部は、前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの収束の程度に加え、前記基準アドレスの内、少なくとも一部の前記アドレスに対応する前記歪ベクトルの収束の程度に応じて前記処理回数閾値を調節する。
本発明の第2の観点に係る歪補正方法は、
入力される送信信号を増幅器で増幅し、増幅された前記送信信号をアンテナから出力する送信機が行う歪補正方法であって、
前記送信信号を遅延した信号である遅延送信信号、および前記増幅器で増幅された前記送信信号のフィードバックである帰還信号に基づいて、前記遅延送信信号の電力、および前記遅延送信信号の複素共役である信号と前記帰還信号との乗算値を算出するデータ算出ステップと、
前記遅延送信信号の電力に応じたアドレスごとに、該遅延送信信号の電力の総和である第1の総和値、および前記乗算値の総和である第2の総和値を算出する総和値算出ステップと、
対応する前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在する前記アドレスである基準アドレスについて、前記第1の総和値を前記第2の総和値の比から歪ベクトルを算出する歪ベクトル算出ステップと、
前記歪ベクトル算出ステップで算出された前記歪ベクトルに基づいて、対応する前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在しない前記アドレスの歪ベクトルを推定し、前記アドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する推定処理ステップと、
前記歪ベクトル推定値から前記増幅器における歪を補正する歪補正ベクトルを算出する歪補正ベクトル算出ステップと、
前記増幅器に入力される前記送信信号を前記歪補正ベクトルに応じて補正するプリディストーションステップと、
を備える。
本発明によれば、アドレスごとに積算されたデータから算出される歪ベクトルに基づいて推定処理を行い、歪ベクトル推定値から増幅器における歪を補正する歪補正ベクトルを算出することで、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。
本発明の実施の形態1に係る送信機の構成例を示すブロック図である。 実施の形態1に係る歪解析部の構成例を示すブロック図である。 実施の形態1に係るデータ算出部の構成例を示すブロック図である。 実施の形態1に係る推定処理部の構成例を示すブロック図である。 実施の形態1における近似処理の例を示す図である。 実施の形態1における近似処理の例を示す図である。 実施の形態1におけるスムージング処理の例を示す図である。 実施の形態1における最大アドレス付近での歪補正ベクトルの利得低下の例を示す図である。 実施の形態1に係る歪解析部の他の構成例を示すブロック図である。 実施の形態1に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2に係る推定処理部の構成例を示すブロック図である。 実施の形態2に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態3に係る歪解析部の構成例を示すブロック図である。 実施の形態3に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る送信機の構成例を示すブロック図である。送信機1は、入力される送信信号を増幅し、増幅された送信信号をアンテナ10から出力する。送信機1は、増幅時に生じる送信信号の歪を予め補正するプリディストーション処理を行う。送信機1の各部は、コントローラ30によって制御される。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)31、RAM(Random Access Memory)33、およびROM(Read-Only Memory)34を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ30から各部への信号線が省略されているが、コントローラ30は送信機1の各部にI/O(Input/Output)32を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。ROM34は、コントローラ30が送信機1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ30は、制御プログラムに基づいて、送信機1を制御する。送信機1の各部について説明する。
図示しない送信源から送信機1に入力される送信信号は、DPD(Digital Pre-Distortion)処理部2、電力算出部3および歪補正ベクトル算出部20に入力される。送信信号は、2信号またはSSB(Single Side Band:単側波帯)方式の音声信号などのI(In-phase)Q(Quadrature)信号である。電力算出部3は、下記(1)式で表されるように、送信信号の電力を算出し、アドレス検出部4に送る。下記(1)式において、s(t)は複素送信信号であり、s(t)はs(t)の複素共役である複素共役信号であり、s(t)は、s(t)のI成分であり、s(t)は、s(t)のQ成分であり、jは虚数単位である。
Figure 0006583020
アドレス検出部4は、下記(2)式で表されるように、送信信号の電力に対応するアドレスa(s)を検出し、LUT(Look Up Table)5に送る。下記(2)式において、Pmaxは、DPD処理部2で処理を行う前の送信信号s(t)の最大電力であり、Nは、D−A(Digital-to-Analogue)変換器6のビット数である。
Figure 0006583020
LUT5は、アドレス検出部4から送られたアドレスに対応する歪補正ベクトルをDPD処理部2に出力する。DPD処理部2は、下記(3)式で表されるように、送信信号s(t)に歪補正ベクトルを複素乗算することで、送信信号を歪補正ベクトルに応じて補正する歪補正処理を行い、歪補正処理が行われた送信信号sPD(t)を、D−A変換器6に送る。下記(3)式において、L(a)は、アドレスa(s)に応じてLUT5が出力する歪補正ベクトルである。L(a)は、L(a)のI成分であり、L(a)は、L(a)のQ成分である。
Figure 0006583020
D−A変換器6は、歪補正処理が行われた送信信号sPD(t)をデジタル信号からアナログ信号に変換して、ミキサ7に送る。ミキサ7は、局部発振器8が出力する信号である基準信号に応じてアナログに変換された送信信号を直交変調し、増幅器9に送る。増幅器9は、直交変調された送信信号を増幅してアンテナ10に出力し、アンテナ10から増幅された送信信号が出力される。増幅器9が出力する送信信号のフィードバックである帰還信号は利得調節部11に入力される。利得調節部11は、増幅器および減衰器の少なくともいずれかで構成される。利得調節部11は、帰還信号の利得を調節し、ミキサ12に送る。ミキサ12は、局部発振器8が出力する基準信号に応じて帰還信号を直交復調し、A−D(Analogue-to-Digital)変換器13に送る。A−D変換器13は、直交復調された帰還信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して歪補正ベクトル算出部20に送る。
D−A変換器6、D−A変換器6からA−D変換器13までのアナログ回路、およびA−D変換器13を通ることで、帰還信号には遅延が生じる。そのため、歪補正ベクトル算出部20は、帰還信号に生じる遅延に応じて遅延された送信信号と、帰還信号との誤差に応じて、増幅器9における歪を補正する歪補正ベクトルを算出する。歪補正ベクトル算出部20は、送信信号を遅延させる遅延部21、遅延された送信信号と、帰還信号との誤差に応じて、歪補正ベクトルを算出する歪解析部22、ならびに、遅延された送信信号、および帰還信号に応じて帰還信号に生じる遅延時間を検出する遅延検出部23を備える。遅延検出部23で検出された遅延時間が遅延部21に設定され、歪解析部22に入力される送信信号は、帰還信号に生じる遅延と同じ遅延時間だけ遅延される。歪解析部22は、算出した歪補正ベクトルでLUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する。歪解析部22は、定められた間隔で歪補正ベクトルを算出し、LUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する。
図2は、実施の形態1に係る歪解析部の構成例を示すブロック図である。歪解析部22は、遅延された送信信号である遅延送信信号s(t)および帰還信号r(t)に基づいて、歪ベクトルの算出に必要なデータを算出するデータ算出部41、データ算出部41で算出されたデータの総和値を記憶するメモリ42、メモリ42に記憶された総和値から歪ベクトルを算出する歪ベクトル算出部43、歪ベクトルに基づく推定処理を行って歪ベクトル推定値を算出する推定処理部44、歪ベクトル推定値から増幅器9における歪を補正する歪補正ベクトルを算出する歪補正ベクトル算出部45、および該歪補正ベクトルでLUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する更新部46を備える。歪解析部22の各部について説明する。
図3は、実施の形態1に係るデータ算出部の構成例を示すブロック図である。データ算出部41は、サンプリング時間ごとに、歪ベクトルの算出に必要なデータを算出する。遅延送信信号s(t)は、共役変換部51および乗算器52に入力される。共役変換部51は、遅延送信信号の複素共役である複素共役信号s (t)を乗算器52,53に出力する。乗算器52は、上記(1)式と同様に複素乗算を行い、遅延送信信号s(t)の電力を加算器54およびアドレス検出部55に出力する。乗算器53は、複素共役信号s (t)と帰還信号r(t)とを複素乗算し、複素共役信号s (t)と帰還信号r(t)との乗算値s (t)r(t)を加算器56に出力する。アドレス検出部55は、アドレス検出部4と同様に、遅延送信信号s(t)の電力に対応するアドレスa(s)を検出し、メモリ42を構成するメモリ42a,42bに送る。
メモリ42aには、遅延送信信号s(t)の電力の総和である第1の総和値が記憶され、メモリ42bには、複素共役信号s (t)と帰還信号r(t)との乗算値s (t)r(t)の総和である第2の総和値が記憶されている。メモリ42aは、送られたアドレスa(s)に対応する第1の総和値を出力調節部57に出力し、メモリ42bは、送られたアドレスa(s)に対応する第2の総和値を出力調節部58に出力する。出力調節部57は、データの飽和を抑制するために、メモリ42aが出力する第1の総和値に係数αを乗算して加算器54に出力する。同様に、出力調節部58は、第2の総和値に係数αを乗算して加算器56に出力する。増幅器9における歪特性が定常であればαは1でよいが、歪特性の変化が早い場合、または長いデータの総和を演算する場合には、飽和が生じる可能性がある。飽和を抑制するため、αは1より若干小さな値、例えば0.9999に設定される。
加算器54は、乗算器52が出力する遅延送信信号s(t)の電力を出力調節部57で係数が乗算されたアドレスa(s)に対応する第1の総和値に加算し、メモリ42aに記憶する。第1の総和値は、アドレスごとの遅延送信信号s(t)の総和電力を示す。同様に、加算器56は、乗算器53が出力する複素共役信号s (t)と帰還信号r(t)との乗算値s (t)r(t)を出力調節部58で係数が乗算されたアドレスa(s)に対応する第2の総和値に加算し、メモリ42bに記憶する。第2の総和値は、アドレスごとの位相歪および振幅歪に対応した値の総和を示す。
後述する歪ベクトル算出部43において算出される歪ベクトルのばらつきを低減するため、送信機1は、データ算出部41の上述の処理を所定の回数、例えば1000回繰り返す。すなわち、1000サンプルについて上述のデータ算出処理が行われた後に、歪ベクトル算出部43の処理が行われる。
歪ベクトルのばらつきを低減するために、第1の総和値および第2の総和値のデータ量が十分であるか否かを判定するデータ量判定部としての機能をコントローラ30にもたせてもよい。その場合、データ量判定部は、メモリ42aに記憶される第1の総和値およびメモリ42bに記憶される第2の総和値のデータ量が十分であるか否かを判定する。データ量判定部においてデータ量が十分であると判定されるまで、送信機1は、データ算出部41の処理を繰り返す。データ量判定部は、第1の総和値および第2の総和値が存在するアドレスである基準アドレスに基づいて、データ量が十分であるか否かを判定する。例えば、基準アドレスの最大値が最大アドレス2に1/2を乗算した結果、すなわち2N−1以上であること、基準アドレスの最小値が2に1/4を乗算した結果、すなわち2N−2以下であること、および基準アドレスの数が、基準アドレスの最大値から基準アドレスの最小値を減算した結果に1/4を乗算した値以上であることの全てが成立する場合に、データ量判定部はデータ量が十分であると判定する。
基準アドレスの最大値が2N−1以上であること、および基準アドレスの最小値が2N−2以下であることが成立すれば、後述する推定処理部44での近似処理において、基準アドレス範囲外の近似誤差を抑制することが可能である。また基準アドレスの数が、基準アドレスの最大値から基準アドレスの最小値を減算した結果に1/4を乗算した値以上であることが成立すれば、後述する推定処理部44での近似処理において、基準アドレス範囲内の近似誤差を抑制することが可能である。
また歪ベクトルデータのばらつきを低減するために、データ算出部41の処理回数が、定められた閾値である処理回数閾値以上である場合に、上記データ量が十分であると判定する処理回数判定部としての機能をコントローラ30にもたせてもよい。その場合、処理回数判定部は、データ算出部41の処理回数が処理回数閾値以上である場合には、データ量が十分であると判定し、データ量判定部および処理回数判定部でデータ量が十分であると判定されるまで、送信機1は、データ算出部41の処理を繰り返す。
歪ベクトル算出部43は、下記(4)式で表されるように、第1の総和値d(a)と第2の総和値d(a)の比から歪ベクトルを算出する。歪ベクトル算出部43は、例えばデータ算出部41で上述の処理を1000回行った後に、基準アドレスについて、歪ベクトルを算出する。
Figure 0006583020
処理回数判定部は、さらに基準アドレスの最大値に対応する歪ベクトルの振幅が、定められた閾値である振幅閾値以上であるか否かを判定し、処理回数が処理回数閾値未満であっても、振幅が振幅閾値以上である場合には、データ量が十分であると判定し、送信機1が後述の推定処理部44の処理を開始してもよい。これにより、送信信号の歪が大きい場合には素早くLUT5を更新することが可能である。処理回数が処理回数閾値未満であって、振幅が振幅閾値未満である場合には、送信機1はデータ算出部41および歪ベクトル算出部43の処理を繰り返し行う。
歪ベクトルは、音声信号などのデータから生成されているため、全てのアドレスに対して歪ベクトルが得られるとは限らない。そのため、推定処理部44は、歪ベクトル算出部43で算出された歪ベクトルに基づいて、第1の総和値d(a)および第2の総和値d(a)が存在しないアドレスの歪ベクトルを推定し、アドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する。データがないアドレスについても推定処理を行って歪ベクトルの推定値を算出することで、後述する歪補正ベクトルの算出を行うことができ、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。
推定処理部44における推定処理について説明する。図4は、実施の形態1に係る推定処理部の構成例を示すブロック図である。図4に示す推定処理部44は、歪ベクトルに基づく近似処理を行って、歪ベクトル推定値を算出する。推定処理部44は、基準アドレスの最小値以上、かつ、基準アドレスの最大値以下のアドレスを含む基準アドレス範囲について、近似処理を行って、基準アドレス範囲内のアドレスごとの歪ベクトル推定値を算出する第1の近似処理部44a、および基準アドレスの最小値未満のアドレスおよび基準アドレスの最大値より大きいアドレスについて、基準アドレス範囲内のアドレスに対応する歪ベクトル推定値の内、少なくとも一部に基づいて近似処理を行い、歪ベクトル推定値を算出する第2の近似処理部44bを備える。
第1の近似処理部44aは、高次の多項式近似による近似処理を行う。第1の近似処理部44aは、基準アドレス範囲について、歪ベクトルに基づいて第1の近似式を算出し、基準アドレス範囲内のアドレスごとに、第1の近似式から歪ベクトル推定値を算出する。第1の近似処理部44aは、最小二乗法により、下記(5)式の係数c(0≦k≦n)を算出し、第1の近似式として近似多項式を導出する。第1の近似処理部44aは、下記(6)式の計算を行うことで、係数cを算出する。
Figure 0006583020
Figure 0006583020
第1の近似処理部44aは、高次の多項式近似に代えて、複数の領域における2次近似の線形結合による近似処理を行ってもよい。図5は、実施の形態1における近似処理の例を示す図である。横軸はアドレスであり、縦軸は歪ベクトルの振幅を示す。図中の黒丸は歪ベクトル算出部43で算出された歪ベクトルを示す。第1の近似処理部44aは、黒丸で示される歪ベクトルの間のデータを補間する。aminは基準アドレスの最小値であり、amaxは基準アドレスの最大値であり、d(amin)は、aminに対応する歪ベクトルであり、d(amax)はamaxに対応する歪ベクトルである。第1の近似処理部44aは、それぞれに複数のアドレスが含まれ、含まれるアドレスの少なくとも一部が重複する複数の近似対象アドレス範囲のそれぞれについて、上記(5)式および(6)式を用いて、歪ベクトルから2次近似式を算出する。第1の近似処理部44aは、基準アドレス範囲内のアドレスごとに、該アドレスが含まれる近似対象アドレス範囲に対応する2次近似式を、合計が1となる係数を用いて線形結合して第1の近似式を算出する。
図5の例では、第1の近似処理部44aは、近似対象アドレス範囲F1,F2,F3,F4,G1,G2,G3のそれぞれについて、2次近似式を算出する。第1の近似処理部44aは、例えば近似対象アドレス範囲F1,G1の両方に含まれるアドレスについては、近似対象アドレス範囲F1における2次近似式と近似対象アドレス範囲G1における2次近似式の線形結合により、歪ベクトル推定値を算出する。
図5の例では、近似対象アドレス範囲F1,F2,F3,F4に含まれるアドレスの数はいずれもN/4である。N=256とし、図5の例において、A1=32、A2=64、A3=96、A4=128、A5=160、A6=192、A7=224、A8=256とする。アドレスa=0からアドレスa=31までの範囲の第1の近似式は、近似対象アドレス範囲F1における2次近似式であり、アドレスa=224からアドレスa=255までの範囲の第1の近似式は、近似対象アドレス範囲F4における2次近似式である。近似対象アドレス範囲G1における2次近似式をg、近似対象アドレス範囲F2における2次近似式をfとすると、アドレスa=64からアドレスa=95における第1の近似式で表される歪ベクトル推定値d’(a)は、下記(7)式で表される。
Figure 0006583020
上記(7)式で表されるように、近似対象アドレス範囲の端部に近づく程、該近似対象アドレス範囲における2次近似式の重み付けを小さくして、上記の線形結合処理を行う。例えば、アドレスa=64は近似対象アドレス範囲G1の中央であり、近似対象アドレス範囲F2の端部であるため、近似対象アドレス範囲F2における2次近似式の重み付けが、近似対象アドレス範囲G1における2次近似式の重み付けに比べて小さい。これにより、滑らかな第1の近似式が得られる。
図5の例において、近似対象アドレス範囲F4のデータ量が十分でない場合には、2次近似式が得られないため、近似対象アドレス範囲F4における第1の近似式として、近似対象アドレス範囲G3における2次近似式を用いる。複数の近似対象アドレス範囲における2次近似式を線形結合して第1の近似式を算出することで、演算量を削減し、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。
複数の近似対象アドレス範囲における2次近似の線形結合による近似処理を行う場合には、上述のデータ量判定部において、少なくとも、アドレスの中央値を含む近似対象アドレス範囲について、該近似対象アドレス範囲に含まれるアドレス数が閾値以上であることが成立するかに基づいて、データ量が十分であるか否かを判定してもよい。データ量判定部は、上述の条件が成立することに加え、例えば近似対象アドレス範囲F2,G1,G2のそれぞれに含まれるアドレス数が閾値以上であることが成立する場合に、データ量が十分であると判定する。
第2の近似処理部44bは、amin未満のアドレスおよびamaxより大きいアドレスについて、基準アドレス範囲内のアドレスに対応する歪ベクトル推定値の内、少なくとも一部に基づいて近似処理を行い、歪ベクトル推定値を算出する。図6は、実施の形態1における近似処理の例を示す図である。図の見方は、図5と同様である。データ量判定部で上述の条件が成立すると判定された場合に近似処理を行う場合には、amin未満のアドレスの数は、最大でも2N−2であり、歪ベクトル推定値に誤差が存在しても、電力が小さい範囲なので、スペクトラムへの歪の影響は少ない。そのため、amin未満のアドレスについては、aminからamin+2N−2の範囲の歪ベクトル推定値を用いて2次近似を行う。
データ量判定部の処理により、amaxより大きいアドレスの数は、最大で2N−1−1であり、amin未満のアドレス数と比べて大きい。送信信号の最大電力に対応する最大アドレス付近では、歪ベクトル推定値に誤差が生じやすく、アドレスa=0付近と比べて、スペクトラムに対する歪の影響が大きい。
maxに対応する歪ベクトルd(amax)の収束の程度を示す|d(amax)−1|が閾値th1未満である場合には、歪ベクトルが十分に収束しているとみなし、amaxより大きいアドレスについて、歪ベクトル推定値d’(a)=d(amax)とする。
|d(amax)−1|が閾値th1以上である場合には、amaxの値に応じて、近似処理に用いるデータの範囲を変更する。|d(amax)−1|が閾値th1以上であり、かつ、amaxが2N−1より大きく、2に係数K1を乗算した値未満である場合、すなわち図6に示すR1の範囲内にamaxがある場合には、a=amaxから所定の数だけ遡ったアドレス、例えばアドレスa=2N−1からa=amaxまでの歪ベクトル推定値に基づいて、amaxより大きいアドレスの歪ベクトル推定値を算出する。例えば、第2の近似処理部44bは、1次近似により歪ベクトル推定値を算出する。
|d(amax)−1|が閾値th1以上であり、かつ、amaxが2に係数K1を乗算した値以上であり、2に係数K1より大きい係数K2を乗算した値未満である場合、すなわち図6に示すR2の範囲内にamaxがある場合には、a=amaxから所定の数だけ遡ったアドレス、例えば32点分遡ったアドレスからa=amaxまでのアドレスに対応する歪ベクトル推定値に基づいて、amaxより大きいアドレスの歪ベクトル推定値を算出する。例えば、第2の近似処理部44bは、1次近似により歪ベクトル推定値を算出する。
|d(amax)−1|が閾値th1以上であり、かつ、amaxが2に係数K2を乗算した値以上である場合、すなわち図6に示すR3の範囲にamaxがある場合には、a=amaxから所定の数だけ遡ったアドレス、例えば48点分遡ったアドレスからa=amaxまでのアドレスに対応する歪ベクトル推定値に基づいて、amaxより大きいアドレスの歪ベクトル推定値を算出する。例えば、第2の近似処理部44bは、2次近似により歪ベクトル推定値を算出する。
図6の例では、R1,R2,R3の範囲の内、いずれにamaxがあるかに基づいて、近似処理の方法を変更したが、範囲の数および長さは任意に決めることができる。近似処理に用いられるデータ数、係数K1および係数K2は増幅器9の特性に応じて任意に決定され、例えば係数K1は17/32であり、係数K2は3/4である。上記の|d(amax)−1|の代わりにmax[|d(amax)−1|]を用いてもよい。|d(amax)−1|に対する閾値th1は、増幅器9におけるメモリ効果に応じて定めることができ、例えば0.003である。
最大アドレス2との差が大きい、図6に示すR1およびR2の範囲においては1次近似をして、傾きがゆるやかな歪ベクトル推定値を算出し、最大アドレス2に最も近い、図6に示すR3の範囲においては、2次近似を行うことで、実際の増幅器9で生じる、最大アドレス付近の飽和による曲線変化を2次近似で再現する。飽和による曲線変化は、1次近似より2次近似の方が精度良く再現することが可能である。
また推定処理部44は、歪ベクトルに基づく補間処理により、歪ベクトル推定値を算出してもよい。推定処理部44は、基準アドレス範囲について、歪ベクトルに基づく補間処理を行って、基準アドレス範囲内のアドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する。推定処理部44は、amin未満のアドレスに対応する歪ベクトル推定値d’(a)=d(amin)とし、amaxより大きいアドレスに対応する歪ベクトル推定値d’(a)=d(amax)としてもよい。補間処理として、例えば直線補間を行うことで、演算量を削減し、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。
歪補正ベクトル算出部45は、歪ベクトル推定値から歪補正ベクトルを算出して更新部46に出力する。歪補正ベクトル算出部45は、推定処理部44が出力する歪ベクトル推定値d’(a)に基づき、歪補正ベクトルの誤差を逐次的に小さくするように、歪補正ベクトルを算出する。歪補正ベクトル算出部45は、現時点、すなわちn回目の歪補正ベクトルL(a)および推定処理部44が出力する歪ベクトル推定値d’(a)を用いて、下記(8)式のように、次回、すなわちn+1回目の歪補正ベクトルLn+1(a)を算出する。初期値L(a)には予め定められた値が入力され、例えばL(a)=1である。下記(8)式を用いて歪補正ベクトルを算出することを繰り返すことで、d’(a)は、1に収束し、増幅器9における歪が補正される。
Figure 0006583020
下記(9)式で表されるように、歪ベクトル推定値の逆数と1との差分をエラーベクトルe(a)として定義すると、上記(7)式を変形して、下記(10)式が得られる。
Figure 0006583020
Figure 0006583020
上記(10)式におけるe(a)×L(a)は、n+1回目の歪補正ベクトルの差分ベクトルであり、上記(10)式を用いて歪補正ベクトルを算出することを繰り返すことで、エラーベクトルe(a)は、0に収束する。歪ベクトル推定値d’(a)が正確に算出されれば、エラーベクトルe(a)は0に収束するが、歪ベクトル推定値d’(a)は近似処理または補間処理による誤差を含むため、歪補正ベクトルは最適値周辺で変動し、歪補正性能の劣化が生じる。歪補正特性の劣化を抑制するため、パラメータμを上記(10)式に適用して、下記(11)式が得られる。パラメータμを1より小さい値とすることで、歪補正ベクトルの収束が遅くなるが、歪補正ベクトルの変動が抑制され、歪補正性能の劣化を抑制することが可能である。歪補正ベクトルが収束した後に、パラメータμの値を小さくし、収束後の歪補正ベクトルの変動を抑制することも可能である。
Figure 0006583020
歪補正ベクトル算出部45は、上述の処理により算出した歪補正ベクトルのスムージング処理を行ってもよい。歪ベクトル推定値は、aminおよびamaxの前後において不連続であるため、歪補正ベクトルの更新処理において適切な歪補正ベクトルが得られず、歪が増大することがある。歪補正ベクトル算出部45において、歪補正ベクトルのスムージング処理を行うことで、歪の増大を抑制することが可能である。
歪補正ベクトル算出部45は、aminを中心とする複数のアドレスが含まれる第1のアドレス範囲、およびamaxを中心とする複数のアドレスが含まれる第2のアドレス範囲のそれぞれにおいて、スムージング処理を行う。第1のアドレス範囲および第2のアドレス範囲に含まれるアドレスの数は任意に定めることができる。図7は、実施の形態1におけるスムージング処理の例を示す図である。図の見方は図5および図6と同様であり、図7ではamin付近のアドレスのみを示している。第1のアドレス範囲におけるスムージング処理について説明する。図7において丸で示される歪補正ベクトルは、amin付近において、不連続である。歪補正ベクトル算出部45は、歪補正ベクトルから第2の近似式、例えば2次近似式を算出する。
歪補正ベクトル算出部45は、下記(12)式を用いて第2の近似式を算出する。下記(12)式中におけるwは、重み付けである。aminが30であり、第1のアドレス範囲に含まれるアドレスの数を60とすると、歪補正ベクトル算出部45は、アドレス0から29までのデータに対応するwを0.25とし、アドレス30から59までのデータに対応するwを1として、第2の近似式を算出する。歪補正ベクトル算出部45は、基準アドレス範囲内のデータに基づく歪補正ベクトルが含まれる範囲については、重み付けを大きくして、第2の近似式を算出する。第2の近似式は、図7において四角で示される。
Figure 0006583020
アドレス0付近で、第2の近似式に基づいて算出される歪補正ベクトル近似値は、歪補正ベクトル算出部45が算出した歪補正ベクトルと乖離している。そこで、歪補正ベクトル算出部45は、算出した歪補正ベクトルと第2の近似式に基づいて算出される歪補正ベクトル近似値とを、合計が1となる係数を用いて線形結合し、図7において実線で示される、線形結合された結果を歪補正ベクトルとして更新部46に出力する。
歪補正ベクトル算出部45が算出した歪補正ベクトルL(a)の内、amin未満のアドレスに対応する歪補正ベクトルをL(a)とし、amin以上、かつ、amax以下のアドレスに対応する歪補正ベクトルをL(a)とし、第1のアドレス範囲における歪補正ベクトル近似値をLAL(a)とし、第1のアドレス範囲のアドレス数を2Mとすると、第1のアドレス範囲におけるスムージング処理後の歪補正ベクトルL’(a)は、下記(13)式および(14)式で表される。下記(13)式は、第1のアドレス範囲の内、amin未満のアドレスに対応するスムージング処理後の歪補正ベクトルであり、下記(14)式は、第1のアドレス範囲の内、amin以上のアドレスに対応するスムージング処理後の歪補正ベクトルである。下記(13)式および(14)式において、0≦n≦M−1である。
Figure 0006583020
Figure 0006583020
同様に、amaxより大きいアドレスに対応する歪補正ベクトルをL(a)とし、第2のアドレス範囲の歪補正ベクトル近似値をLAH(a)とし、第2のアドレス範囲のアドレス数を2Mとすると、第2のアドレス範囲におけるスムージング処理後の歪補正ベクトルL’(a)は、下記(15)式および(16)式で表される。下記(15)式は、第2のアドレス範囲の内、amax以下のアドレスに対応するスムージング処理後の歪補正ベクトルであり、下記(16)式は、第2のアドレス範囲の内、amaxより大きいアドレスに対応するスムージング処理後の歪補正ベクトルである。下記(15)式および(16)式において、0≦n≦M−1である。
Figure 0006583020
Figure 0006583020
上述のスムージング処理により、aminおよびamaxの前後における歪補正ベクトルの不連続点は解消されるが、歪補正ベクトルの更新処理を繰り返すことで、歪補正ベクトルにおいて歪みが生じる可能性がある。第1の近似処理部44aにおいて2次近似式を用い、増幅器9の出力を最大出力近くまで増大させた場合に、歪補正ベクトルにおいて歪が生じる場合がある。歪補正ベクトルにおける歪を抑制するために、上述のスムージング処理を所定の回数行った場合は、上述のスムージング処理に代えて、上記(6)式を用いて、全アドレスについて高次の多項式近似を行うことで、歪補正ベクトルのスムージングを行うことが望ましい。全アドレスについて高次の多項式近似を行う場合には、全アドレスが近似処理の対象であって、近似処理の対象の範囲が予め決まっているため、上記(6)式における逆行列を算出する部分は、予め算出された値を保持しておき、多項式近似を行う際に保持された値を用いることで、演算量を削減することが可能である。なお歪補正ベクトル算出部45の処理能力に余裕がある場合は、スムージングのたびに毎回、全アドレスについて高次の多項式近似を行ってもよい。
多項式近似でスムージングを行うと、アドレスの大きい領域では歪補正ベクトルの利得が飽和しやすくなる。しかしながら、最大アドレス2までデータが得られておらず、かつ、amaxより大きいアドレスに対応する歪ベクトル推定値d’(a)を近似処理で求めなかった場合、すなわち、amaxより大きいアドレスに対応する歪ベクトル推定値d’(a)=d(amax)とした場合には、最大アドレス2付近で歪補正ベクトルの利得が大きく低下することがある。その様子を図8に示す。
図8は、実施の形態1における最大アドレス付近での歪補正ベクトルの利得低下の例を示す図である。横軸は、アドレスであり、縦軸は歪補正ベクトルの利得である。図8において、スムージング前の歪補正ベクトルの利得を実線で示す。ここでは、歪ベクトルのデータがアドレスa=232までしか得られておらず、アドレスa=233からa=256に対応する歪ベクトル推定値を、アドレスa=232の歪ベクトルとする場合を例にして説明する。上述のように算出された歪ベクトル推定値に基づいて算出された歪補正ベクトルに対して、多項式近似、図8の例では6次の多項式近似、でスムージング処理を行うと、図8において点線で示されるような歪補正ベクトルの利得が得られる。増幅器9は最大アドレス2付近で飽和するため、歪ベクトルの大きさは最大アドレス2付近で小さくなる。一方、逆関数である歪補正ベクトルは最大アドレス2付近で大きくなる。歪補正ベクトルは、図8の例では、アドレスa=224あたりから急激に大きくなるが、歪補正ベクトルが急激に大きくなるアドレスa=224付近の領域である、アドレスa=233以降の領域において歪ベクトルのデータが得られていない。歪補正ベクトルが急激に大きくなるアドレス付近の領域においてデータが得られておらず、上述のように算出された歪ベクトル推定値に基づいて算出された歪補正ベクトルに対して多項式近似でスムージング処理を行うことで、図8に示すように歪補正ベクトルの利得が最大アドレス2付近で低下する。
図8において、点線で示す最大アドレスa=256における歪補正ベクトルの利得は、それより前のアドレスであるa=244における歪補正ベクトルの利得よりも低下している。このような状態でLUT5の更新を繰り返すと、最大アドレスa=256における歪補正ベクトルの利得の低下がさらに顕著になり、正弦波の送信信号が最大電力付近で歪んでしまう。そこで、多項式近似でスムージングした歪補正ベクトルの利得が最大アドレス付近で低下している場合には、歪補正ベクトルの利得がピーク値となるアドレスにおける歪補正ベクトルを、該アドレスから最大アドレスまでの歪補正ベクトルとしてもよい。これにより最大アドレス付近での歪補正ベクトルの利得の急激な低下を防止することができる。具体的な処理は以下の通りである。
初めに、歪補正ベクトル算出部45は、スムージング後の歪補正ベクトルに基づき、最大アドレス2と最大アドレス2における歪補正ベクトルの利得を、「最大利得アドレス」および「最大利得」として記憶する。図8の例では、「最大利得アドレス」が256で「最大利得」が1.05である。次に、歪補正ベクトル算出部45は、アドレス256から所定のアドレス、例えばアドレスa=192までの利得を順次算出し、算出対象のアドレスにおける利得が「最大利得」より大きければ、「最大アドレス」および「最大利得」を算出対象のアドレスと算出対象のアドレスにおける利得で更新する。この処理を所定のアドレスa=192まで繰り返した時、「最大利得アドレス」が256のまま、もしくは192である場合、歪補正ベクトルの利得が単調増加または単調減少していると判断し、上述の歪補正ベクトルの利得がピーク値となるアドレスにおける歪補正ベクトルを、該アドレスから最大アドレスまでの歪補正ベクトルとする処理は行われない。一方、「最大利得アドレス」が192より大きく、かつ、256未満である場合、例えばアドレス250である場合には、歪補正ベクトル算出部45は、アドレス250における歪補正ベクトルの利得がピーク値であると判断し、アドレスa=250の歪補正ベクトルを、アドレスa=251からa=256までの歪補正ベクトルとする。なお所定のアドレスは、増幅器9の特性に応じて任意に定めることができ、所定のアドレスをアドレスa=224としてもよい。所定のアドレスを大きくすることで、計算量を低減することができる。
更新部46は、歪補正ベクトル算出部45が出力する歪補正ベクトルでLUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する。
上述の処理によって、LUT5に記憶される歪補正ベクトルが更新され、DPD処理部2において、更新された歪補正ベクトルに基づいてプリディストーション処理が行われることで、送信機1の運用中に増幅器9において生じる歪の量が変化しても、増幅器9における歪を抑制することが可能である。
図9は、実施の形態1に係る歪解析部の他の構成例を示すブロック図である。図9に示す歪解析部22は、図2に示す歪解析部22の構成に加えて、歪補正ベクトル算出部45が出力する歪補正ベクトルの利得が、定められた閾値である利得閾値以下であるか否かを判定する利得判定部47をさらに備える。プリディストーションされた信号がD−A変換器6の最大入力レベルを超える、すなわち飽和すると、アナログ信号に歪みが生じてしまうためである。送信機1は、利得判定部47で歪補正ベクトルの利得が利得閾値以下であると判定された場合には、更新部46の処理を行い、利得判定部47で歪補正ベクトルの利得が利得閾値より大きいと判定された場合には、更新部46の処理を行わず、メモリ42に記憶された第1の総和値および第2の総和値をリセットする。すなわち、送信機1はメモリ42の第1の総和値および第2の総和値の記憶領域に初期値をセットする。これによりDPD処理部2でプリディストーション処理された送信信号がD−A変換器6の最大入力レベルを超えて、飽和状態となることを抑制する。利得閾値は、DPD処理部2に入力される信号の最大電力とD−A変換器6の最大入力電力の比である。送信機1は、利得判定部47で歪補正ベクトルの利得が利得閾値より大きいと判定された場合には、利得調節部11を調節して、歪補正ベクトルの利得を下げる。利得調節部11を調節して帰還信号の利得を上げると、上記(8)式における歪ベクトル推定値d’(a)の利得が上がり、歪補正ベクトルの利得が下がる。利得判定部47を設けることで、D−A変換器6の飽和を抑制することが可能である。
図10は、実施の形態1に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。データ算出部41は、遅延送信信号s(t)の電力を算出してメモリ42aに記憶されている第1の総和値に加算し、複素共役信号s (t)と帰還信号r(t)との乗算値s (t)r(t)を算出し、メモリ42bに記憶されている第2の総和値に加算する(ステップS110)。送信機1は、第1の総和値および第2の総和値のデータ量が十分であるか否かを判定し、データ量が十分でない場合には(ステップS120;N)、ステップS110に戻って、データ算出部41の処理を繰り返す。
データ量が十分である場合には(ステップS120;Y)、歪ベクトル算出部43は、第1の総和値と第2の総和値の比から歪ベクトルを算出する(ステップS130)。送信機1は、データ算出部41の処理回数が処理回数閾値以上であるか否かを判定し、処理回数が処理回数閾値以上である場合には(ステップS140;Y)、ステップS160の処理を行う。処理回数が処理回数閾値未満である場合には(ステップS140;N)、送信機1は、amaxに対応する歪ベクトルの振幅が振幅閾値以上であるか否かを判定する。振幅が振幅閾値以上である場合には(ステップS150;Y)、送信機1は、ステップS160の処理を行う。振幅が振幅閾値未満である場合には(ステップS150;N)、ステップS110に戻って、送信機1は、データ算出部41の処理を繰り返す。
第1の近似処理部44aは、基準アドレス範囲について、歪ベクトルに基づく近似処理を行い、基準アドレス範囲内のアドレスごとの歪ベクトル推定値を算出する(ステップS160)。第2の近似処理部44bは、amin未満のアドレスおよびamaxより大きいアドレスについて、基準アドレス範囲内のアドレスに対応する歪ベクトル推定値の内、少なくとも一部に基づいて近似処理を行い、歪ベクトル推定値を算出する(ステップS170)。歪補正ベクトル算出部45は、歪ベクトル推定値から歪補正ベクトルを算出する(ステップS180)。歪補正ベクトル算出部45は、第1のアドレス範囲および第2のアドレス範囲のそれぞれにおいて、歪補正ベクトルのスムージング処理を行う(ステップS190)。
利得判定部47は、スムージング処理された歪補正ベクトルの利得が、利得閾値以下であるか否かを判定する。利得判定部47で歪補正ベクトルの利得が利得閾値以下であると判定された場合には(ステップS200;Y)、更新部46は、LUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する(ステップS210)。送信機1は、利得判定部47で歪補正ベクトルの利得が利得閾値より大きいと判定された場合には(ステップS200;N)、更新部46の処理を行わず、メモリ42に記憶された第1の総和値および第2の総和値をリセットする(ステップS220)。ステップS210またはS220の処理が完了すると、送信機1は歪補正ベクトル算出処理を終了する。送信機1は上述の歪補正ベクトル算出処理を定められた間隔で繰り返し行う。
以上説明したとおり、実施の形態1に係る送信機1によれば、第1の総和値および第2の総和値から算出される歪ベクトルに基づいて推定処理を行い、歪ベクトル推定値から歪補正ベクトルを算出することで、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2に係る推定処理部の構成例を示すブロック図である。実施の形態2に係る推定処理部44は、図4に示す実施の形態1に係る推定処理部44の構成に加えて、近似値誤差判定部44cを備える。DPD処理部2がプリディストーション処理を行っている間に、アンテナ端のようにDPD回路に依存する部分に急激な電気的変化が生じると、歪ベクトルが異常な値となる。歪ベクトルの異常値に基づいてLUT5が更新されると、大きなスプリアスが生じる。歪ベクトルの異常値に基づくLUT5の更新を抑制するため、実施の形態2に係る推定処理部44は、第1の近似処理部44aが算出する第1の近似式に含まれる誤差が閾値以下である場合にのみ第2の近似処理部44bの処理を行う。
実施の形態2においては、第1の近似処理部44aは、基準アドレス範囲について、歪ベクトルに基づいて第1の近似式を算出し、基準アドレス範囲内のアドレスごとに、第1の近似式から歪ベクトル推定値を算出する。近似値誤差判定部44cは、基準アドレスに対応する歪ベクトルd(a)および第1の近似式に基づいて算出される該アドレスに対応する歪ベクトル推定値d’(a)から、下記(17)式のように、第1の近似式に含まれる誤差eを検出する。下記(17)式において、Nは基準アドレスの数であり、右辺の分子は全ての基準アドレスについて|d(a)−d’(a)|を合計することを示している。
Figure 0006583020
近似値誤差判定部44cは第1の近似式に含まれる誤差が誤差閾値以下であるか否かを判定する。誤差閾値は、求められる歪補正性能に応じて任意に定めることができ、例えば0.001である。送信機1は、第1の近似式に含まれる誤差が誤差閾値以下であると判定された場合には、第2の近似処理部44bの処理を行う。送信機1は、第1の近似式に含まれる誤差が誤差閾値より大きいと判定された場合には、第2の近似処理部44b、歪補正ベクトル算出部45および更新部46の処理を行わず、メモリ42に記憶された第1の総和値および第2の総和値をリセットする。
図12は、実施の形態2に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS110〜S160の処理、およびステップS170〜S220の処理は、図10に示す実施の形態1に係る送信機1が行う処理と同じである。ステップS160において、第1の近似処理部44aが第1の近似式を算出した後、近似値誤差判定部44cは、第1の近似式の誤差を算出し(ステップS161)、誤差が誤差閾値以下であるか判定する。送信機1は、第1の近似式の誤差が誤差閾値以下である場合には(ステップS162;Y)、ステップS170に進み、第2の近似処理部44bの処理を行う。後続の処理は、図10に示す実施の形態1に係る送信機1が行う処理と同じである。
送信機1は、第1の近似式の誤差が誤差閾値より大きい場合には(ステップS162;N)、第2の近似処理部44b、歪補正ベクトル算出部45および更新部46の処理を行わず、メモリ42に記憶された第1の総和値および第2の総和値をリセットする(ステップS220)。ステップS210またはS220の処理が完了すると、送信機1は歪補正ベクトル算出処理を終了する。送信機1は上述の歪補正ベクトル算出処理を定められた間隔で繰り返し行う。
以上説明したとおり、実施の形態2に係る送信機1によれば、近似処理における誤差が誤差閾値以上である場合にはLUT5を更新しないことで、歪補正性能の劣化を抑制することが可能である。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3に係る歪解析部の構成例を示すブロック図である。実施の形態3に係る歪解析部22は、実施の形態1,2に係る歪解析部22の構成に加えて、歪ベクトルの振幅に応じて処理回数閾値を調節する閾値調節部48をさらに備える。図13の例では、歪解析部22は、図9に示す歪解析部22の構成に加えて、閾値調節部48をさらに備える。
処理回数閾値を1000×jで表す。収束状態を表す変数cを用いて、パラメータjは、例えば下記(18)式で表される。下記(18)式において、右辺の添え字は床関数であり、c/10の整数部分の値を示す。閾値調節部48は、歪ベクトルの収束の程度に応じて変数cを変更することで、処理回数閾値を調節する。cの初期値は0である。またパラメータjとcとの関係は、下記(18)式に限られず、閾値調節部48は、予め記憶された、パラメータjの値とcの値とを一対一で対応させたテーブルに基づいて、処理回数閾値を調節してもよい。
Figure 0006583020
閾値調節部48は、第2の近似処理部44bで用いた閾値th1を用い、歪ベクトルと値が1のベクトルとの差分に応じて変数cを調節する。閾値調節部48は、amaxに対応する歪ベクトルd(amax)に応じて、変数cを調節する。閾値調節部48は、amaxに対応する歪ベクトルd(amax)の収束の程度を示す|d(amax)−1|が閾値th1より大きい場合には、歪ベクトルが十分に収束していないため、例えば、c=c−20とし、LUT5の更新速度を速くする。cの減少によってjも減少し、データ算出部41での演算量が低減され、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間が短くなる。
閾値調節部48は、amaxに対応する歪ベクトルd(amax)の収束の程度に加え、基準アドレスの内、少なくとも一部のアドレスに対応する歪ベクトルd(a)の収束の程度に応じて、変数cを調節する。閾値調節部48は、|d(amax)−1|に加えて、下記(19)式で表される差分平均eaveに応じて変数cを調節する。下記(19)式において、右辺の分子は、全ての基準アドレスについて|d(a)−1|を合計することを示している。下記(19)式では全ての基準アドレスを対象としたが、一部の基準アドレスのみを対象としてもよい。一部の基準アドレスを対象とする場合には、amaxから一定数遡ったアドレスからamaxまでを対象とし、分母を対象となる基準アドレスの数とする。
Figure 0006583020
閾値調節部48は、|d(amax)−1|が閾値th1以下であり、eaveが閾値th2より大きい場合には、例えば、c=c−10とし、LUT5の更新速度を速くする。閾値調節部48は、|d(amax)−1|が閾値th1以下であり、eaveが閾値th2以下である場合には、例えば、c=c+1とし、LUT5の更新速度を遅くする。歪ベクトルの収束が十分でない間は、cを増加させないようにして、歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮することが可能である。歪ベクトルが収束するにしたがって、cを増加させ、歪補正ベクトルの更新に必要なデータ量を増加させることで、歪補正ベクトルの精度を向上させることが可能である。
なお閾値th2は、cに依存する変数であってもよい。例えば、cが10未満の場合の閾値th2は0.001であり、cが10以上、20未満の場合の閾値th2は0.0005であり、cが20以上、30未満の場合の閾値th2は0.0003であり、cが30以上、40未満の場合の閾値th2は0.00015であり、cが40以上、50未満の場合の閾値th2は0.0001であり、cが50以上の場合の閾値th2は0.00005である。
図14は、実施の形態3に係る送信機が行う歪補正ベクトル算出処理の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS110〜S200までの処理、およびステップS210,S220の処理は、図12に示す実施の形態2に係る送信機1が行う処理と同じである。ステップS200において、利得が利得閾値以下であると判定された場合には(ステップS200;Y)、閾値調節部48は処理回数閾値を調節する(ステップS201)。ステップS201の処理が完了すると、更新部46はLUT5に記憶される歪補正ベクトルを更新する(ステップS210)。
以上説明したとおり、実施の形態3に係る送信機1によれば、歪ベクトルの収束の程度に応じて、LUT5の更新速度を変更することで、歪ベクトルの収束が十分でない間は歪補正ベクトルの更新処理に要する時間を短縮し、歪ベクトルが収束するにしたがって歪補正ベクトルの精度を向上させることが可能である。
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られず、上述の実施の形態のうち複数の形態を任意に組み合わせたもので構成してもよい。上述の実施の形態における回路構成は一例である。
1 送信機
2 DPD処理部
3 電力算出部
4、55 アドレス検出部
5 LUT
6 D−A変換器
7、12 ミキサ
8 局部発振器
9 増幅器
10 アンテナ
11 利得調節部
13 A−D変換器
20 歪補正ベクトル算出部
21 遅延部
22 歪解析部
23 遅延検出部
30 コントローラ
31 CPU
32 I/O
33 RAM
34 ROM
41 データ算出部
42、42a、42b メモリ
43 歪ベクトル算出部
44 推定処理部
44a 第1の近似処理部
44b 第2の近似処理部
44c 近似値誤差判定部
45 歪補正ベクトル算出部
46 更新部
47 利得判定部
48 閾値調節部
51 共役変換部
52、53 乗算器
54、56 加算器
57、58 出力調節部

Claims (13)

  1. 増幅器に入力される送信信号を遅延した信号である遅延送信信号、および前記増幅器で増幅された前記送信信号のフィードバックである帰還信号に基づいて、前記遅延送信信号の電力、および前記遅延送信信号の複素共役である信号と前記帰還信号との乗算値を算出するデータ算出部と、
    前記遅延送信信号の電力に応じたアドレスごとに、前記増幅器における歪を補正する歪補正ベクトル、該遅延送信信号の電力の総和である第1の総和値、および前記乗算値の総和である第2の総和値が記憶される記憶部と、
    前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在する前記アドレスである基準アドレスについて、前記第1の総和値と前記第2の総和値の比から歪ベクトルを算出する歪ベクトル算出部と、
    前記歪ベクトル算出部で算出された前記歪ベクトルに基づいて、前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在しない前記アドレスの歪ベクトルを推定し、前記アドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する推定処理部と、
    前記歪ベクトル推定値から前記歪補正ベクトルを算出して出力する歪補正ベクトル算出部と、
    前記歪補正ベクトル算出部から出力される前記歪補正ベクトルで前記記憶部に記憶された前記歪補正ベクトルを更新する更新部と、
    前記増幅器に入力される前記送信信号を前記記憶部に記憶された前記歪補正ベクトルに応じて補正するプリディストーション部と、
    を備える送信機。
  2. 前記歪補正ベクトル算出部から出力される前記歪補正ベクトルの利得が利得閾値以下であるか否かを判定する利得判定部をさらに備え、
    前記利得判定部において前記歪補正ベクトルの利得が前記利得閾値以下であると判定された場合には、前記更新部の処理を行い、
    前記利得判定部において前記歪補正ベクトルの利得が前記利得閾値より大きいと判定された場合には、前記更新部の処理を行わず、前記記憶部に記憶された前記第1の総和値および前記第2の総和値をリセットする、
    請求項1に記載の送信機。
  3. 前記推定処理部は、
    前記基準アドレスの最小値以上、かつ、前記基準アドレスの最大値以下のアドレスを含む基準アドレス範囲について、前記歪ベクトルに基づいて第1の近似式を算出し、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに、前記第1の近似式から前記歪ベクトル推定値を算出する第1の近似処理部と、
    前記最小値未満の前記アドレスおよび前記最大値より大きい前記アドレスについて、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値の内、少なくとも一部に基づいて近似処理を行い、前記歪ベクトル推定値を算出する第2の近似処理部と、
    を備える請求項1または2に記載の送信機。
  4. 前記第1の近似処理部は、それぞれに複数の前記アドレスが含まれ、含まれる前記アドレスの少なくとも一部が重複する複数の近似対象アドレス範囲のそれぞれについて、前記歪ベクトルから2次近似式を算出し、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに、該アドレスが含まれる前記近似対象アドレス範囲に対応する前記2次近似式を、合計が1となる係数を用いて線形結合して前記第1の近似式を算出する請求項3に記載の送信機。
  5. 前記推定処理部は、前記基準アドレスに対応する前記歪ベクトルおよび前記第1の近似式に基づいて算出される該アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値から、前記第1の近似式に含まれる誤差を検出し、前記誤差が誤差閾値以下であるか否かを判定する近似値誤差判定部をさらに備え、
    前記誤差が前記誤差閾値以下であると判定された場合には、前記第2の近似処理部の処理を行い、
    前記誤差が前記誤差閾値より大きいと判定された場合には、前記第2の近似処理部、前記歪補正ベクトル算出部および前記更新部の処理を行わず、前記記憶部に記憶された前記第1の総和値および前記第2の総和値をリセットする、
    請求項3または4に記載の送信機。
  6. 前記推定処理部は、前記基準アドレスの最小値以上、かつ、前記基準アドレスの最大値以下のアドレスを含む基準アドレス範囲について、前記歪ベクトルに基づく補間処理を行って、前記基準アドレス範囲内の前記アドレスごとに前記歪ベクトル推定値を算出し、前記最小値に対応する前記歪ベクトルを前記最小値未満の前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値とし、前記最大値に対応する前記歪ベクトルを前記最大値より大きい前記アドレスに対応する前記歪ベクトル推定値とする請求項1または2に記載の送信機。
  7. 前記歪補正ベクトル算出部は、前記最小値を中心とする複数の前記アドレスが含まれる第1のアドレス範囲、および前記最大値を中心とする複数のアドレスが含まれる第2のアドレス範囲のそれぞれにおいて、前記歪補正ベクトルから第2の近似式を算出し、前記アドレスごとに、前記歪補正ベクトルと前記第2の近似式に基づいて算出される歪補正ベクトル近似値とを、合計が1となる係数を用いて線形結合し、前記線形結合の結果を前記歪補正ベクトルとして出力する請求項3から6のいずれか1項に記載の送信機。
  8. 前記基準アドレスに応じて、前記第1の総和値および前記第2の総和値のデータ量が十分であるか否かを判定するデータ量判定部をさらに備え、
    前記データ量判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す請求項1から7のいずれか1項に記載の送信機。
  9. 前記データ算出部の処理回数が処理回数閾値以上である場合には前記データ量が十分であると判定する処理回数判定部をさらに備え、
    前記データ量判定部および前記処理回数判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す、
    請求項8に記載の送信機。
  10. 前記処理回数判定部は、前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの振幅が振幅閾値以上であるか否かを判定し、前記処理回数が前記処理回数閾値未満である場合であっても、前記振幅が前記振幅閾値以上である場合には、前記データ量が十分であると判定し、
    前記データ量判定部および前記処理回数判定部で前記データ量が十分であると判定されるまで、前記データ算出部の処理を繰り返す、
    請求項9に記載の送信機。
  11. 前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの収束の程度に応じて前記処理回数閾値を調節する閾値調節部をさらに備える請求項9または10に記載の送信機。
  12. 前記閾値調節部は、前記基準アドレスの最大値に対応する前記歪ベクトルの収束の程度に加え、前記基準アドレスの内、少なくとも一部の前記アドレスに対応する前記歪ベクトルの収束の程度に応じて前記処理回数閾値を調節する請求項11に記載の送信機。
  13. 入力される送信信号を増幅器で増幅し、増幅された前記送信信号をアンテナから出力する送信機が行う歪補正方法であって、
    前記送信信号を遅延した信号である遅延送信信号、および前記増幅器で増幅された前記送信信号のフィードバックである帰還信号に基づいて、前記遅延送信信号の電力、および前記遅延送信信号の複素共役である信号と前記帰還信号との乗算値を算出するデータ算出ステップと、
    前記遅延送信信号の電力に応じたアドレスごとに、該遅延送信信号の電力の総和である第1の総和値、および前記乗算値の総和である第2の総和値を算出する総和値算出ステップと、
    対応する前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在する前記アドレスである基準アドレスについて、前記第1の総和値を前記第2の総和値の比から歪ベクトルを算出する歪ベクトル算出ステップと、
    前記歪ベクトル算出ステップで算出された前記歪ベクトルに基づいて、対応する前記第1の総和値および前記第2の総和値が存在しない前記アドレスの歪ベクトルを推定し、前記アドレスごとに歪ベクトル推定値を算出する推定処理ステップと、
    前記歪ベクトル推定値から前記増幅器における歪を補正する歪補正ベクトルを算出する歪補正ベクトル算出ステップと、
    前記増幅器に入力される前記送信信号を前記歪補正ベクトルに応じて補正するプリディストーションステップと、
    を備える歪補正方法。
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