JP6581029B2 - 滅菌袋用原紙および滅菌袋 - Google Patents

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Description

本発明は、滅菌袋用原紙および滅菌袋に関する。
医療用器具などは、滅菌袋に収納されて滅菌され、手術や治療に用いる際に滅菌袋を開封し、滅菌袋から取り出して使用される。
滅菌袋としては、紙のみで製袋したものと、紙(滅菌袋用原紙)およびフィルムの周縁部同士をヒートシールして製袋したコンビネーションタイプのものがある。近年、透明フィルムを用いることで内容物を確認できるコンビネーションタイプの滅菌袋が増えてきている。また、滅菌処理量の効率化を図るべく、滅菌袋は大型化の傾向にある。
滅菌袋を用いた滅菌の方法としては、ガス滅菌、蒸気滅菌、放射線滅菌などがある。
ガス滅菌では、まず、医療用器具などの被滅菌物を収納し、開口部を封止した滅菌袋(以下、「包装物」ともいう。)を真空容器に入れて真空容器を減圧し、包装物の内部の空気を排出させる。ついで、エチレンオキサイドガス等のガスを真空容器に満たして包装物の内部にガスを浸透させて滅菌する。
蒸気滅菌では、オートクレーブなどを用いて包装物を高温の水蒸気に曝し、減圧と加圧を繰り返して滅菌する。
放射線滅菌では、放射線を包装物に照射して滅菌する。
滅菌袋や滅菌袋用原紙に要求される特性としては、以下に示すものが挙げられる。
(1)ガスおよび水蒸気の透気性(通気性)が良好であること。
(2)ピンホールがないこと。
(3)サイズ度や湿潤強度(湿潤引張強さ)が高く、耐水性が良好であること。
(4)滅菌後に医療用器具などを滅菌袋から取り出す際に必要な特性であるピール性(フィルムから滅菌袋用原紙が破れずにきれいに剥れること)が良好であること。
(5)ヒートシール性を有すること。
ピール性とヒートシール性を兼ね備えた滅菌袋用原紙として、例えば特許文献1には、パルプ繊維に対してアルミン酸塩を含有してなる基紙の片面に、アクリル系共重合体とアルキルケテンダイマー(AKD)とを含有する塗工層を設けた滅菌袋用原紙が開示されている。
特開平9−290808号公報
コンビネーションタイプの滅菌袋は、通常、以下のようにして連続的に製造される。
まず、ロール状に巻き取られた滅菌袋用原紙の巻回体から滅菌袋用原紙を一対のガイドロールでニップしながら繰り出す。
別途、ロール状に巻き取られたフィルムの巻回体からフィルムを一対のガイドロールでニップしながら繰り出す。
繰り出された滅菌袋用原紙とフィルムとを、例えば滅菌袋用原紙が下側になるように重ね合せ、ヒートシール機等の熱溶着装置を用いて所定の箇所をヒートシールする。
特許文献1に記載のように、滅菌袋用原紙には耐水性を付与する目的でAKD等のサイズ剤が含まれているが、製袋時のガイドロールとの接触によりサイズ剤が滅菌袋用原紙から脱落し、ガイドロールに付着することがあった。さらに、ガイドロールに付着したサイズ剤が脱離して滅菌袋用原紙上に付着し、このサイズ剤(異物)が滅菌袋内に残留してしまうことがあった。
そのため、定期的に運転を停止してガイドロールに付着したサイズ剤を取り除いて滅菌袋への異物の混入を防ぐ必要があった。
本発明の目的は、滅菌袋を連続生産する場合であっても滅菌袋内への異物の混入が発生しにくい滅菌袋用原紙および滅菌袋を提供することである。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、アルキルケテンダイマーと、アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤とを含有する滅菌袋用原紙であって、前記アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤からなる層が、アルキルケテンダイマーよりも外側に形成されている、滅菌袋用原紙。
[2]前記アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤がスチレンアクリル樹脂である、[1]に記載の滅菌袋用原紙。
[3][1]または[2]に記載の滅菌袋用原紙を備えた、滅菌袋。
本発明によれば、滅菌袋を連続生産する場合であっても滅菌袋内への異物の混入が発生しにくい滅菌袋用原紙および滅菌袋を提供できる。
本発明の第一実施形態の滅菌袋用原紙の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の第二実施形態の滅菌袋用原紙の一例を模式的に示す断面図である。
[滅菌袋用原紙]
本発明の滅菌袋用原紙(以下、単に「原紙」ともいう。)は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、アルキルケテンダイマーと、アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤(以下、「表面サイズ剤」ともいう。)とを含有し、表面サイズ剤からなる層(以下、「表面サイズ剤層」ともいう。)が、アルキルケテンダイマーよりも外側に形成されている。
以下、本発明の滅菌袋用原紙について、図面を参照しながら具体的に説明する。
「第一実施形態」
図1は、本発明の第一実施形態の滅菌袋用原紙の一例を模式的に示す断面図である。
本実施形態の滅菌袋用原紙10は、基紙11と、基紙11上に形成された表面サイズ剤層12とを備えている。
なお、図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
<基紙>
本実施形態の基紙11は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、アルキルケテンダイマーとを含む。
基紙11の厚さは、85〜125μmが好ましく、105〜120μmがより好ましい。
基紙11の坪量は、60〜90g/mが好ましく、70〜80g/mがより好ましい。
(パルプ)
パルプは、原紙の主原料である。
パルプとしては、木材パルプ、天然繊維、再生繊維、合成繊維などが挙げられる。
木材パルプとしては、例えば針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP;N材)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP;N材、NB材)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP;L材)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、L材)等の化学パルプ;グランドウッドパルプ(GP)、プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプやセミケミカルパルプ(CP)などが挙げられる。
天然繊維としては、例えば木綿、わら、竹、エスパルト、バガス、リンター、マニラ麻、亜麻、麻、黄麻、雁皮等のパルプ状繊維などが挙げられる。
これらパルプは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
パルプとしては、繊維長が長くシート強度が高まる観点から、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP;N材、NB材)が好ましい。
針葉樹晒クラフトパルプの含有量は、パルプの原料の総質量に対して50質量%以上が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
(乾燥紙力剤)
乾燥紙力剤は、原紙に乾燥強度を付与するものである。
乾燥紙力剤としては、両性ポリアクリルアミド樹脂等の両性ポリマー;アニオン性ポリアクリルアミド樹脂等のアニオン性ポリマー;カチオン性ポリアクリルアミド樹脂等のカチオン性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、パルプや他の内添剤との定着性の観点から、両性ポリマーが好ましく、両性ポリアクリルアミド樹脂が特に好ましい。
これら乾燥紙力剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
乾燥紙力剤の含有量は、パルプの総質量に対して0.5〜1.5質量部が好ましく、0.6〜1.0質量部がより好ましい。乾燥紙力剤の含有量が、上記下限値以上であれば乾燥強度の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば透気度を良好に維持できる。
(湿潤紙力剤)
湿潤紙力剤は、原紙に湿潤強度(水に濡れた際の強度)を付与するものである。
湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂(以下「エピクロル樹脂」ともいう。)、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの中でも、使用可能な抄紙pH領域が広い、ホルムアルデヒドを含まない、湿潤力が高いなどの観点から、エピクロル樹脂が好ましい。
これら湿潤紙力剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
湿潤紙力剤の含有量は、パルプの総質量に対して0.5〜1.5質量部が好ましく、0.6〜1.0質量部がより好ましい。乾燥紙力剤の含有量が、上記下限値以上であれば湿潤強度の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば透気度を良好に維持できる。
(アルキルケテンダイマー)
アルキルケテンダイマー(AKD)は、サイズ剤であり、原紙に耐水性を付与するものである。
AKDとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006581029
式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数8〜30のアルキル基である。
AKDの含有量は、パルプの総質量に対して0.1〜1.0質量部が好ましく、0.2〜0.5質量部がより好ましい。AKDの割合が、上記下限値以上であれば耐水性の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば原紙からの脱落をより防止できる。
(他の成分)
基紙11は、パルプ、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤およびAKD以外の成分(他の成分(A))を含んでいてもよい。
他の成分(A)としては、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤などが挙げられる。
基紙11は、表面サイズ剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
<表面サイズ剤層>
表面サイズ剤層12は、表面サイズ剤からなる。
(表面サイズ剤)
表面サイズ剤はアルキルケテンダイマー以外のサイズ剤であり、原紙に耐水性を付与しつつ、AKDが原紙から脱落するのを防止するものである。
基紙11上に表面サイズ剤層12が形成されていることで、AKDが原紙から脱落するのを防止できる。
表面サイズ剤としては、スチレンアクリル樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、AKDの原紙からの脱落をより防止でき、本発明の原紙を用いて滅菌袋を製袋する際に、ガイドロール等のロールへのAKDの移行をより抑制できる観点から、スチレンアクリル樹脂が好ましい。
これら表面サイズ剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体とを共重合した共重合体である。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどが挙げられる。
これらスチレン系単量体は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
アクリル系単量体としては、例えばアクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸フェニル等のメタアクリル酸エステル;アクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸の誘導体;メタアクリロニトリル、メタアクリルアミド等のメタアクリル酸の誘導体などが挙げられる。
これらアクリル系単量体は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体単位およびアクリル系単量体単位以外の単量体単位(他の単量体単位)を有していてもよい。
他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類などが挙げられる。
これらアクリル系単量体は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
表面サイズ剤の含有量は、パルプの総質量に対して1.0〜3.0質量部が好ましく、1.5〜2.5質量部がより好ましい。表面サイズ剤の割合が、上記下限値以上であれば原紙からのAKDの脱落をより防止でき、上記上限値以下であればピール性および透気度を良好に維持できる。
(他の成分)
表面サイズ剤層12は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、表面サイズ剤以外の成分(他の成分(B))を含んでいてもよい。
他の成分(B)としては、他の成分(A)と同様のものが挙げられる。
なお、表面サイズ剤層12は、AKDを含まない。
<製造方法>
以下、本実施形態の滅菌袋用原紙の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の滅菌袋用原紙の製造方法は、下記工程(I−1)〜(I−3)を含む。
工程(I−1):パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、AKDとを混合し、原料スラリー(I)を調製する工程。
工程(I−2):原料スラリー(I)を湿式抄紙し、基紙(I)を得る工程。
工程(I−3):工程(I−2)で得られた基紙(I)の少なくとも一方の面に、表面サイズ剤を含む塗工液(I)を塗工する工程。
(工程(I−1))
工程(I−1)は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、AKDと、必要に応じて他の成分(A)とを混合し、原料スラリー(I)を調製する工程である。
パルプは、予め叩解しておくことが好ましい。叩解は、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、ビーター等の叩解機により適宜行なうことができる。叩解度は、40゜SR以下が好ましく、20〜35゜SRがより好ましい。
原料スラリー(I)は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、AKDと、必要に応じて他の成分(A)とを水に分散させることで得られる。
工程(I−1)では、パルプの総質量に対して、乾燥紙力剤が0.5〜1.5質量部、湿潤紙力剤が0.5〜1.5質量部、AKDが0.1〜1.0質量部となるように混合することが好ましい。
(工程(I−2))
工程(I−2)は、原料スラリー(I)を湿式抄紙し、基紙(I)を得る工程である。
工程(I−2)で用いる湿式抄紙機としては特に限定されず、一般の抄紙技術に適用されている抄紙機、具体的には長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜式抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを使用できる。
(工程(I−3))
工程(I−3)は、工程(I−2)で得られた基紙(I)の少なくとも一方の面に、表面サイズ剤を含む塗工液(I)を塗工する工程である。
塗工液(I)は、表面サイズ剤を水等の溶媒に溶解することで得られる。
塗工液(I)は、必要に応じて他の成分(B)を含んでいてもよい。
塗工液(I)中の表面サイズ剤の濃度および塗工量は、パルプの総質量に対して表面サイズ剤の割合が1.0〜3.0質量部となるように設定することが好ましい。
具体的には、塗工液(I)中の表面サイズ剤の濃度は、3〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
塗工液(I)の塗工量は、0.5〜2.5g/mが好ましく、0.7〜2.0g/mがより好ましい。
塗工液(I)の塗工方法としては特に限定されず、例えばサイズプレス塗工、ロードコータ、スクイズコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、トランスファロールコータなどの塗工方式が挙げられる。
基紙(I)上に塗工された塗工液(I)を乾燥することで、基紙(I)上に表面サイズ剤層が形成された滅菌袋用原紙が得られる。
<作用効果>
以上説明した本実施形態の滅菌袋用原紙は、基紙上に表面サイズ剤層が形成されている(すなわち、表面サイズ剤層がAKDよりも外側に形成されている)ので、サイズ剤(AKDおよび表面サイズ剤)が滅菌袋用原紙から脱落するのを防止できる。係る理由は、表面サイズ剤層がAKDよりも外側に形成されていることで、AKDが表面サイズ剤によって覆われるようにパルプに固着しているためと考えられる。
よって、コンビネーションタイプの滅菌袋を連続的に製造するに際して本実施形態の滅菌袋用原紙を用いれば、サイズ剤が滅菌袋用原紙から脱落してガイドロールに付着することを抑制できる。また、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、サイズ剤(異物)が滅菌袋内に残留してしまう恐れもなく、滅菌袋への異物の混入が発生しにくい。加えて、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、定期的に運転を停止してガイドロールに付着したサイズ剤を取り除く必要もなく、滅菌袋を連続生産できる。
このように、本実施形態の滅菌袋用原紙は、滅菌袋を連続生産する場合であっても滅菌袋内への異物の混入が発生しにくい。
なお、本実施形態の滅菌袋用原紙は上述したものに限定されない。例えば、図1に示す滅菌袋用原紙10は、基紙11の片面に表面サイズ剤層12が形成されているが、表面サイズ剤層12は基紙11の両面に形成されていてもよい。
ただし、透気性やコストの観点からは、表面サイズ剤層12は基紙11の片面のみに形成されていることが好ましい。ヒートシール面の自由度という観点からは、表面サイズ剤層12は基紙11の両面に形成されていてもよい。
「第二実施形態」
図2は、本発明の第二実施形態の滅菌袋用原紙の一例を模式的に示す断面図である。
本実施形態の滅菌袋用原紙20は、基紙21と、基紙21上に形成されたAKDからなる層(以下、「AKD層」ともいう。)22と、AKD層22上に形成された表面サイズ剤層23とを備えている。
なお、図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
<基紙>
本実施形態の基紙21は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤とを含む。
基紙21の厚さは、85〜125μmが好ましく、105〜120μmがより好ましい。
基紙21の坪量は、60〜90g/mが好ましく、70〜80g/mがより好ましい。
基紙21に含まれるパルプ、乾燥紙力剤および湿潤紙力剤としては、それぞれ第一実施形態と同様のものが挙げられる。
乾燥紙力剤の含有量は、パルプの総質量に対して0.5〜1.5質量部が好ましく、0.6〜1.0質量部がより好ましい。乾燥紙力剤の含有量が、上記下限値以上であれば乾燥強度の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば透気度を良好に維持できる。
湿潤紙力剤の含有量は、パルプの総質量に対して0.5〜1.5質量部が好ましく、0.6〜1.0質量部がより好ましい。乾燥紙力剤の含有量が、上記下限値以上であれば湿潤強度の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば透気度を良好に維持できる。
基紙21は、パルプ、乾燥紙力剤および湿潤紙力剤以外の成分(他の成分(C))を含んでいてもよい。
他の成分(C)としては、第一実施形態で例示した他の成分(A)と同様のものが挙げられる。
基紙21は、AKDを含んでもよいし、含まなくてもよい。また、基紙21は、表面サイズ剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
<AKD層>
AKD層22は、AKDからなる。
AKDとしては、第一実施形態と同様のものが挙げられる。
AKDの含有量は、パルプの総質量に対して0.1〜1.0質量部が好ましく、0.3〜0.8質量部がより好ましい。AKDの割合が、上記下限値以上であれば耐水性の高い原紙が得られ、上記上限値以下であれば原紙からの脱落をより防止できる。
AKD層22は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、AKD以外の成分(他の成分(D))を含んでいてもよい。
他の成分(D)としては、第一実施形態で例示した他の成分(A)と同様のものが挙げられる。
なお、AKD層22は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、表面サイズ剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
<表面サイズ剤層>
表面サイズ剤層23は、表面サイズ剤からなる。
表面サイズ剤としては、第一実施形態と同様のものが挙げられる。
表面サイズ剤の含有量は、パルプの総質量に対して1.0〜3.0質量部が好ましく、1.5〜2.5質量部がより好ましい。表面サイズ剤の割合が、上記下限値以上であれば原紙からのAKDの脱落をより防止でき、上記上限値以下であればピール性および透気度を良好に維持できる。
表面サイズ剤層23は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、表面サイズ剤以外の成分(他の成分(E))を含んでいてもよい。
他の成分(E)としては、第一実施形態で例示した他の成分(A)と同様のものが挙げられる。
なお、表面サイズ剤層23は、AKDを含まない。
<製造方法>
以下、本実施形態の滅菌袋用原紙の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の滅菌袋用原紙の製造方法は、下記工程(II−1)〜(II−4)を含む。
工程(II−1):パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤とを混合し、原料スラリー(II)を調製する工程。
工程(II−2):原料スラリー(II)を湿式抄紙し、基紙(II)を得る工程。
工程(II−3):工程(II−2)で得られた基紙(II)の少なくとも一方の面に、AKDを含む塗工液(II)を塗工する工程。
工程(II−4):前記塗工液(II)の塗工面上に、表面サイズ剤を含む塗工液(III)をさらに塗工する工程。
(工程(II−1))
工程(II−1)は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、必要に応じて他の成分(C)とを混合し、原料スラリー(II)を調製する工程である。
第一実施形態と同様、パルプは、予め叩解しておくことが好ましい。
原料スラリー(II)は、パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、必要に応じて他の成分(C)とを水に分散させることで得られる。
工程(II−1)では、パルプの総質量に対して、乾燥紙力剤が0.5〜1.5質量部、湿潤紙力剤が0.5〜1.5質量部となるように混合することが好ましい。
(工程(II−2))
工程(II−2)は、原料スラリー(II)を湿式抄紙し、基紙(II)を得る工程である。
工程(II−2)で用いる湿式抄紙機としては特に限定されず、第一実施形態と同様のものが挙げられる。
(工程(II−3))
工程(II−3)は、工程(II−2)で得られた基紙(II)の少なくとも一方の面に、AKDを含む塗工液(II)を塗工する工程である。
塗工液(II)は、AKDを水等の溶媒に溶解することで得られる。
塗工液(II)は、必要に応じて他の成分(D)を含んでいてもよい。
塗工液(II)中のAKDの濃度および塗工量は、パルプの総質量に対してAKDの割合が0.1〜1.0質量部となるように設定することが好ましい。
具体的には、塗工液(II)中のAKDの濃度は、0.3〜1.5質量%が好ましく、0.5〜1.0質量%がより好ましい。
塗工液(II)の塗工量は、0.2〜1.5g/mが好ましく、0.3〜1.0g/mがより好ましい。
塗工液(II)の塗工方法としては特に限定されず、第一実施形態で例示した塗工液(I)の塗工方法と同様のものが挙げられる。
基紙(I)に塗工された塗工液(II)は、工程(II−4)にて塗工液(III)を塗工する前に乾燥してもよいし、塗工液(III)を塗工した後に、塗工液(III)とともに乾燥してもよい。
(工程(II−4))
工程(II−4)は、塗工液(II)の塗工面上に、表面サイズ剤を含む塗工液(III)をさらに塗工する工程である。
塗工液(III)は、表面サイズ剤を水等の溶媒に溶解することで得られる。
塗工液(III)は、必要に応じて他の成分(E)を含んでいてもよい。
塗工液(III)中の表面サイズ剤の濃度および塗工量は、第一実施形態の塗工液(I)と同様である。
塗工液(III)の塗工方法としては特に限定されず、第一実施形態で例示した塗工液(I)の塗工方法と同様のものが挙げられる。
塗工液(II)の塗工面上に塗工された塗工液(III)を乾燥することで、基紙(I)上にAKD層および表面サイズ剤層がこの順に形成された滅菌袋用原紙が得られる。
<作用効果>
以上説明した本実施形態の滅菌袋用原紙は、基紙上にAKD層および表面サイズ剤層がこの順に形成されている(すなわち、表面サイズ剤層がAKDよりも外側に形成されている)ので、サイズ剤(AKDおよび表面サイズ剤)が滅菌袋用原紙から脱落するのを防止できる。
よって、コンビネーションタイプの滅菌袋を連続的に製造するに際して本実施形態の滅菌袋用原紙を用いれば、サイズ剤が滅菌袋用原紙から脱落してガイドロールに付着することを抑制できる。また、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、サイズ剤(異物)が滅菌袋内に残留してしまう恐れもなく、滅菌袋への異物の混入が発生しにくい。加えて、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、定期的に運転を停止してガイドロールに付着したサイズ剤を取り除く必要もなく、滅菌袋を連続生産できる。
このように、本実施形態の滅菌袋用原紙は、滅菌袋を連続生産する場合であっても滅菌袋内への異物の混入が発生しにくい。
なお、本実施形態の滅菌袋用原紙は上述したものに限定されない。例えば、図2に示す滅菌袋用原紙20は、基紙21の片面にAKD層22および表面サイズ剤層23が形成されているが、AKD層22および表面サイズ剤層23は基紙21の両面に形成されていてもよい。この場合、AKD層22の外側に表面サイズ剤層23が形成されるものとする。
ただし、透気性やコストの観点からは、AKD層22および表面サイズ剤層23は基紙21の片面にのみ形成されていることが好ましい。ヒートシール面の自由度という観点からは、AKD層22および表面サイズ剤層23は基紙21の両面に形成されていてもよい。
「滅菌袋」
本発明の滅菌袋は、上述した本発明の滅菌袋用原紙を備える。
滅菌袋の形態としては、例えば滅菌袋用原紙およびフィルムの周縁部同士をヒートシールして製袋したコンビネーションタイプが挙げられる。
フィルムは単層構造であってもよいし、積層構造であってもよいが、フィルムの強度とヒートシール性のバランスを考慮した場合、基材フィルムにヒートシール層が積層した積層構造のフィルム(積層フィルム)が好ましい。基材フィルムとヒートシール層との間には、印刷等が施された中間層が設けられていてもよい。
基材フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。
ヒートシール層を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンなどが挙げられる。
中間層を構成する樹脂としては、基材フィルムやヒートシール層に用いられる材料を適用することができる。
フィルムとしては、PETを主成分とするフィルム上に、ポリオレフィンを主成分とするフィルムが積層した積層フィルムが好ましい。ここで、「主成分」とは90質量%以上を占める成分のことを言い、95質量%以上を占める成分であることが好ましく、100質量%を占める成分であってもよい。
コンビネーションタイプの滅菌袋は、例えば所定の大きさのフィルムと滅菌袋用原紙とを重ね合わせ、三方の周縁部をヒートシールすることで得られる。このとき、フィルムはヒートシール層が滅菌袋の内側となるように、滅菌袋用原紙は表面サイズ剤層が滅菌袋の内側となるように、両者を重ね合わせる。
また、コンビネーションタイプの滅菌袋を連続生産する場合は、例えば以下のようにしても製造することが好ましい。
まず、ロール状に巻き取られた滅菌袋用原紙の巻回体から滅菌袋用原紙を一対のガイドロールでニップしながら繰り出す。
別途、ロール状に巻き取られたフィルムの巻回体からフィルムを一対のガイドロールでニップしながら繰り出す。
次いで、繰り出された滅菌袋用原紙とフィルムとを重ね合せ、長手方向(走行方向)の両端をヒートシールした後、ロール状に巻き取り、滅菌袋の巻回体を得る。このとき、フィルムはヒートシール層が滅菌袋の内側となるように、滅菌袋用原紙は表面サイズ剤層が滅菌袋の内側となるように、両者を重ね合わせる。
滅菌袋の巻回体を使用する際は、滅菌袋の巻回体から滅菌袋を繰り出し、所望の大きさになるように、繰り出し方向に対して垂直に切断し、一方の端部をヒートシールする。切断とヒートシールは同時に行ってもよいし、ヒートシール後に切断してもよい。こうすることで、三方の周縁部がヒートシールされた滅菌袋が得られる。
なお、上記の方法で滅菌袋を連続生産する場合、繰り出された滅菌袋用原紙とフィルムの長手方向(走行方向)の両端をヒートシールする際に、任意の位置で長手方向(走行方向)に対して垂直方向にもヒートシールしてもよい。次いで、長手方向(走行方向)に対して垂直方向に切断することで、三方の周縁部がヒートシールされた滅菌袋が得られる。切断の位置は、得られる滅菌袋の三方の周縁部がヒートシールされ、残りの一方が開口している状態となれば特に制限されないが、垂直方向のヒートシール部の近傍が好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の滅菌袋は、表面サイズ剤層がAKDよりも外側に形成されている滅菌袋用原紙を備えている。この滅菌袋用原紙は、サイズ剤(AKDおよび表面サイズ剤)が脱落しにくい。
よって、コンビネーションタイプの滅菌袋を連続的に製造するに際して本発明の滅菌袋用原紙を用いれば、サイズ剤が滅菌袋用原紙から脱落してガイドロールに付着することを抑制できる。また、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、サイズ剤(異物)が滅菌袋内に残留してしまう恐れもなく、滅菌袋への異物の混入が発生しにくい。加えて、サイズ剤がガイドロールに付着しにくいので、定期的に運転を停止してガイドロールに付着したサイズ剤を取り除く必要もなく、滅菌袋を連続生産できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「成分」
各例で用いた化合物は以下の通りである。
・NBKP:針葉樹晒クラフトパルプ。
・LBKP:広葉樹晒クラフトパルプ。
・PS1280:両性ポリアクリルアミド樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:「ポリストロン1280」)。
・PS117:アニオン性ポリアクリルアミド樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:「ポリストロン117」)。
・AF100:ポリアミドポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:「アラフィックス100」)。
・AD−1640:アルキルケテンダイマー(星光PMC株式会社製、商品名:「サイズ剤AD−1640」)。
・SE2016:スチレンアクリル樹脂(星光PMC株式会社製、商品名:「SE2016」)。
「測定・評価」
<透気度の測定>
JIS P 8117に記載の「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」準拠して、滅菌袋用原紙の透気度を測定した。
<層間剥離強さの測定>
紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)の紙パルプ試験方法No.19−1:2000に記載の「板紙−すき合わせ層のはく離強さ試験方法−」に準拠して、滅菌袋用原紙の層間剥離強さを測定した。
<サイズ度の測定>
JIS P 8122に記載の「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」準拠して、滅菌袋用原紙のサイズ度を測定した。
<湿潤引張強さの測定>
JIS P 8135に記載の「紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法−」準拠して、滅菌袋用原紙の湿潤引張強さを測定した。
<静摩擦係数の測定>
(測定器具)
・定盤:水平に設置した。
・錘:質量1000g、寸法(縦)76mm、(横)76mm、(厚さ)一定、底面は平滑なゴム張りとした。
・ゲージ:チャタリオンプッシュブルゲージで水平に校正されたもの。
・ゲージ駆動装置:ゲージを水平方向にむらなく90cm/minの速さで動かし得るもの。
(供試用紙)
・寸法:187.32mm×82.55mm
・枚数:11枚
(測定方法)
11枚の用紙(滅菌袋用原紙)を重ねて定盤の上に、用紙の短辺の左端をストッパーに当てて置いた。なお、用紙を取り扱う際には、用紙の淵を持って行い、表面に触れないようにした。
次いで、一番上の用紙を1枚、右方向に約50mmずらし、その上に錘を乗せた。錘は11枚全部の用紙で支持させるよう下側の用紙の右端に、それから外れないようにしておいた。
次いで、ゲージを錘に当て、錘を用紙の右端から左方に押すように置き、錘をゲージで動かした。
錘と一番上の用紙が動き始めるときのゲージの読み(g)を読み取り、それを1000で除したものを静摩擦係数とした。
測定は、まず一番上の用紙について行い、終了したら、それを一番下に入れ、次の用紙につて行なった。これを全ての用紙について行ない、静摩擦係数の平均値を求めた。
<サイズ剤の脱落防止性1の評価>
評価用原紙として、ロール状に巻き取られた滅菌袋用原紙の巻回体(幅250mm以上、長さ50m)を用いた。
剥離材として、表面保護フィルム(日東電工株式会社製、商品名:「SPVテープ」)を用いた。
評価装置として、紙用巻き替え機(ワインダー)を用いた。
(評価方法)
SPVテープの粘着面を外側に巻いたガイドロール面に、評価用原紙を毎分10mの速度で接触して走行させた。SPVテープの粘着面に付着した、評価用原紙からの脱落物(剥離物)を目視観察し、以下の評価基準にて滅菌袋用原紙からのサイズ剤の脱落防止性を評価した。なお、評価用原紙は、表面サイズ剤層がガイドロール面と接するようにした。
◎:白濁していない。
○:薄く白濁している。
△:若干白濁している。
<印刷性の評価>
グラビア印刷機にて、滅菌袋用原紙の両面に文字・記号やインジケーターを印刷した。印刷面を目視にて観察し、以下の評価基準にて印刷性(インクの定着度合(インク載り))を評価した。なお、紙面にインク定着を阻害する物質がある場合、インクの弾きや滲みが発生する。また、紙面の平滑性が低い場合、文字や記号のカスレが発生する。 「インジケーター」部は、滅菌処理にて変色する特殊インクを使用しており、滅菌処理の有無を確認することができる。
○:滲み・カスレがない。
△:若干の滲みまたはカスレがある。
×:滲みまたはカスレが顕著である。
<サイズ剤の脱落防止性2の評価>
製袋機を用いて、以下のようにして滅菌袋を製造した。なお、製袋機には、滅菌袋用原紙およびフィルムをそれぞれ繰り出すガイドロールと、紙送りの役割を果たす防滑樹脂ロールと、滅菌袋用原紙およびフィルムをヒートシールする熱圧部を備えている。
ロール状に巻き取られた滅菌袋用原紙の巻回体から滅菌袋用原紙を一対のガイドロールでニップしながら繰り出した。
別途、ロール状に巻き取られたフィルム(PETフィルム上にPPフィルムが積層した積層フィルム)の巻回体から積層フィルムを一対のガイドロールでニップしながら繰り出した。
次いで、繰り出された滅菌袋用原紙と積層フィルムとを、滅菌袋用原紙が下側になるように重ね合せ、長手方向(走行方向)の両端をヒートシールした後、ロール状に巻き取り、滅菌袋の巻回体を得た。このとき、フィルムはPPフィルムが滅菌袋の内側となるように、滅菌袋用原紙は表面サイズ剤層が滅菌袋の内側となるように、両者を重ね合わせた。
原反1本の巻長さである5000mを製袋機で処理した際、滅菌袋用原紙が接する金属製のガイドロール表面に、滅菌袋用原紙の表面からサイズ剤が脱落して付着(転写)するか否かを目視にて確認した。さらに、ガイドロール表面へのサイズ剤等の付着(転写)・堆積が進行して白粉となり、滅菌袋用原紙や床へ落下するか否かを目視にて確認し、以下の評価基準にてサイズ剤の脱落防止性を評価した。
○:サイズ剤がガイドロール表面へ付着せず、滅菌袋用原紙および床への白粉の落下もない。
△:サイズ剤がガイドロール表面へ若干付着したが、滅菌袋用原紙および床への白粉の落下はない。
×:滅菌袋用原紙または床への白粉の落下がある。
<ロール付着防止性の評価>
サイズ剤の脱落防止性2の評価と同様にして、滅菌袋の巻回体を得た。
原反1本の巻長さである5000mを製袋機で処理した際、紙送りとなる防滑樹脂ロールの表面に、滅菌袋用原紙の表面からサイズ剤が脱落して付着(転写)するか否かを目視にて確認し、以下の評価基準にてロール付着防止性を評価した。
○:サイズ剤が防滑樹脂ロール表面へ付着していない。
△:サイズ剤が防滑樹脂ロール表面へ若干付着している。
×:サイズ剤が防滑樹脂ロール表面へ顕著に付着し、白濁している。
<破袋試験>
(1):通常
ステンレスバットに医療鋼製器具を入れ、それを滅菌袋に入れた。
開口部をヒートシールし、オートクレーブにて135℃、30分の蒸気滅菌処理を行った。蒸気滅菌処理の滅菌袋を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:滅菌袋用原紙に汚れや変色がなく、破袋が生じていない。
○:滅菌袋用原紙に汚れや変色はないが、ヒートシール部の幅方向の一部に剥離がある。
×:滅菌袋用原紙に汚れや変色はないが、ヒートシール部の幅方向の全てにおいて剥離がある。
(2):過重
ステンレスバットに入れる医療鋼製器具の内容量を1.5倍とした以外は、(1)と同様にして蒸気滅菌処理を行い、蒸気滅菌処理の滅菌袋を目視にて観察し、(1)と同様の評価基準にて評価した。
<シール強度の測定>
滅菌袋における滅菌袋用原紙と積層フィルムとのシール強度(貼り合せ強さ)を、物理特性試験「層間剥離強さ」に準拠して測定した。シール強度が9.0N/25mm以上の場合を合格とした。以下の評価基準に評価した。
<ピール負荷の評価>
破袋試験と同様にして蒸気滅菌処理を行った。
熟練評価者5人により、蒸気滅菌処理後の滅菌袋を手作業で開封したときのヒートシール部の層間剥離強さをピール負荷とし、以下の評価基準にて開封のしやすさを評価した。
○:適度なピール負荷で開封できた。
△:若干強めのピール負荷ではあるが、問題なく開封できた。
×:ピール負荷が高すぎ、開封しにくかった。
「実施例1」
<滅菌袋用原紙の製造>
NBKP60質量部と、LBKP40質量部とを混合し、叩解度29°SRに調整したパルプ100質量部に対して、乾燥紙力剤(PS1280)0.80質量部と、湿潤紙力剤(AF100)0.60質量部と、アルキルケテンダイマー(AD−1640)0.45質量部とを添加し、固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させて、原料スラリーを調製した。
別途、濃度が8.3質量%になるように、表面サイズ剤(SE2016)を水に溶解させ、塗工液(I)を調製した。
長網抄紙機を用い、坪量70g/m、厚さ105μmとなるように原料スラリーを湿式抄紙し、基紙を得た。
基紙の片面に、塗工液(I)を塗工した後、ドライヤーパートで乾燥し、基紙上に表面サイズ剤層が形成された滅菌袋用原紙を得た。塗工液(I)の塗工量は、パルプの総質量に対する表面サイズ剤の割合が2.5質量部となる量とした。
得られた滅菌袋用原紙について、透気度、層間剥離強さ、サイズ度、湿潤引張強さ、および静摩擦係数を測定した。また、サイズ剤の脱落防止性1を評価した。結果を表1に示す。
また、得られた滅菌袋用原紙を用いて、印刷性、サイズ剤の脱落防止性2、ロール付着防止性を評価した。結果を表1に示す。
<滅菌袋の製造>
PETフィルム上にPPフィルムが積層した積層フィルムと、滅菌袋用原紙とを重ね合わせ、三方の周縁部をヒートシールして、滅菌袋を得た。このとき、積層フィルムはPPフィルムが滅菌袋の内側となるように、滅菌袋用原紙は表面サイズ剤層が滅菌袋の内側となるように、両者を重ね合わせた。
得られた滅菌袋を用いて、破袋試験を行い、シール強度を測定し、ピール負荷を評価した。結果を表1に示す。
「実施例2〜9」
表1に示す配合組成になるように原料スラリーを調製し、かつパルプの総質量に対する表面サイズ剤の割合が表1に示す値となるように塗工液(I)の濃度および塗工量を調製した以外は、実施例1と同様にして滅菌袋用原紙および滅菌袋を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
「比較例1」
濃度が0.8質量%になるように、アルキルケテンダイマー(AD−1640)を水に溶解させ、塗工液(II)を調製した。
表2に示す配合組成になるように調製した原料スラリーを用い、実施例1と同様にして基紙を作製した。
得られた基紙の両面に、塗工液(II)を塗工した後、ドライヤーパートで乾燥し、滅菌袋用原紙を得た。塗工液(II)の塗工量は、パルプの総質量に対するアルキルケテンダイマーの割合が合計で0.50質量部となる量とした。
得られた滅菌袋用原紙を用いた以外は、実施例1と同様にして滅菌袋を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表2に示す。
「比較例2」
表2に示す配合組成になるように調製した原料スラリーを用い、実施例1と同様にして基紙を作製した。
得られた基紙の両面に、水のみを塗工した後、ドライヤーパートで乾燥し、滅菌袋用原紙を得た。
得られた滅菌袋用原紙を用いた以外は、実施例1と同様にして滅菌袋を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006581029
Figure 0006581029
表1、2の結果より明らかなように、各実施例で得られた滅菌袋用原紙は、サイズ剤の脱落を防止することができた。
対して、比較例1、2で得られた滅菌袋用原紙は、アルキルケテンダイマーよりも外側に表面サイズ剤層が形成されていないため、アルキルケテンダイマーが脱落しやすかった。
10 滅菌袋用原紙
11 基紙
12 アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤からなる層(表面サイズ剤層)
20 滅菌袋用原紙
21 基紙
22 アルキルケテンダイマーからなる層(AKD層)
23 アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤からなる層(表面サイズ剤層)

Claims (4)

  1. パルプと、乾燥紙力剤と、湿潤紙力剤と、アルキルケテンダイマーと、アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤とを含有する滅菌袋用原紙であって、
    前記アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤からなる層が、アルキルケテンダイマーよりも外側に形成されており、
    前記アルキルケテンダイマー以外のサイズ剤がスチレンアクリル樹脂であり、
    前記スチレンアクリル樹脂の含有量が、前記パルプの総質量に対して1.0〜3.0質量部である、滅菌袋用原紙。
  2. 前記アルキルケテンダイマーの含有量が、前記パルプの総質量に対して0.2〜0.45質量部であり、
    かつ静摩擦係数が0.33〜0.51である、請求項1に記載の滅菌袋用原紙。
  3. 前記乾燥紙力剤が両性ポリマーである、請求項1または2に記載の滅菌袋用原紙。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の滅菌袋用原紙を備えた、滅菌袋。
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