JP6579862B2 - レンチナン含量が高いシイタケ - Google Patents
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Description
[1] 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大している、シイタケ菌。
[2] 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて、2倍以上である、[1]のシイタケ菌。
[3] 収穫後4日における子実体におけるレンチナン残存率が80%以上である、[1]又は[2]のシイタケ菌。
[4] exo‐β‐1,3‐グルカナーゼ(EXG2)のアミノ酸配列において、710番目のアミノ酸残基における置換変異を含む、変異型EXG2を有する、[1]〜[3]のいずれかのシイタケ菌。
[5] 変異型EXG2が、710番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸への置換を含む、[4]のシイタケ菌。
[6] NITE P−01865として寄託されたものである、[1]〜[5]のいずれかのシイタケ菌。
[7] [1]〜[6]のいずれかのシイタケ菌を栽培して子実体を形成させ、該子実体を回収することを含む、レンチナンの製造方法。
[8] 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大しているシイタケ菌の検出方法であって、EXG2のアミノ酸配列において、710番目のアミノ酸残基における置換変異の有無を検出し、710番目のアミノ酸残基に置換変異が存在する場合、子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大しているシイタケ菌であると認定する工程を含む、上記方法。
[9] 710番目のアミノ酸残基における置換変異が、アスパラギン酸への置換である、[8]の方法。
本発明のシイタケ菌は、子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大していることを特徴とする。
本発明のシイタケ菌は、突然変異誘発法や遺伝子組換え手法を利用して製造することができる。
(a) 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列よりなるポリペプチド;
(b) 配列番号1で示されるアミノ酸配列において、一又は複数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列を含むか当該アミノ酸配列よりなり、かつレンチナン分解活性を有するポリペプチド;
(c) 配列番号1で示されるアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか当該アミノ酸配列よりなり、かつレンチナン分解活性を有するポリペプチド。
(a’) 配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列よりなるポリペプチド;
(b’) 配列番号2で示されるアミノ酸配列において、一又は複数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列を含むか当該アミノ酸配列よりなるポリペプチド;
(c’) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか当該アミノ酸配列よりなるポリペプチド。
(a’’) 配列番号3で示される塩基配列;
(b’’) 配列番号3で示される塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を有する塩基配列;
(c’’) 配列番号3で示される塩基配列に相補的な配列からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な塩基配列;
(d’’) 配列番号3で示される塩基配列と、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性を有する塩基配列。
上記手法により製造されたシイタケ菌より、子実体におけるレンチナン含量が増大されている目的のシイタケ菌を以下の手法により評価・選抜することができる。
exg2遺伝子における変異の有無の確認は、塩基配列の解析に用いられる公知の手法を用いて行うことができるが、TILLING(Targeting Induced Local Lesions In Genomes)法を用いることによって、多数の検体を処理することが可能であり、集団の中からexg2遺伝子に変異を有する菌株が存在するか否かを容易に識別でき、効率的にexg2遺伝子に変異を有する菌株を選抜することができる。TILLING法は公知の手法で行うことができる。すなわち、上記手法により製造されたシイタケ菌のDNAを鋳型として、exg2遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、exg2遺伝子のDNA断片を得る。得られたexg2遺伝子のDNA断片を、別個の2〜3株より同様に調製されたexg2遺伝子のDNA断片と合わせるか、野生型のexg2遺伝子のDNA断片と合わせ、熱変性して一本鎖とした後、再度アニーリングさせる。この時、変異を有するDNA断片が存在する場合には、変異型DNA断片と野生型DNA断片との間で塩基対のミスマッチが生じる。アニーリングさせたDNA断片をミスマッチ塩基対を認識して切断する酵素(例えばCEL1等)で処理することによって、塩基対を形成していない部位のみが切断され、増幅したDNA断片とは異なる長さのDNA断片が生成される。酵素処理後のDNA断片を電気泳動し、異なる長さのDNA断片を検出することによって、exg2遺伝子に変異を有する菌株を選抜することができる。
子実体におけるレンチナン含有量は、上記手法により測定することができる。本発明においては、収穫直後の従来品種の子実体と比較して、収穫直後の子実体におけるレンチナン含有量が多い場合に、目的のシイタケ菌として評価・選抜することができる。好ましくは上記手法により測定された、収穫直後のレンチナン含有量が、同様に測定された従来品種の収穫直後の子実体におけるレンチナン含有量と比較して、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、又はそれ以上であるシイタケ菌を選抜する。
上記手法により製造・確立された後は、本発明のシイタケ菌はPCR法によりexg2遺伝子における変異の有無を確認することによって検出することができる。exg2遺伝子における変異とは、EXG2のアミノ酸配列における710番目のアミノ酸残基が、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミンに、好ましくは、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換される変異、特に好ましくは、710番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸に置換される変異を意味する。好ましくは、exg2遺伝子における、2128番目の塩基置換、より好ましくは2128番目の塩基のグアニンへの置換を意味する。
(種菌)
種菌(親株)として、公益財団法人岩手生物工学研究センター保有の交雑株、シイタケ(Lentinula edodes)SR−1株(二核菌糸体)を使用した。
種菌の菌糸を寒天培地より薄く掻き取り、寒天培地8枚分の菌糸を100mlの0.25×MYPG液体培地(2本)へ植菌し23℃、170rpmにて2週間振とう培養を行った。培養後にガラスフィルター(ガラス濾過器P250、柴田科学)によって菌糸を回収し、0.5×MYPG液体培地(0.5%麦芽エキス,0.2%酵母エキス,0.2%ペプトン,1.0%グルコース)へ移した。
プロトプラスト液に対しUVを照射し、変異株を作出した。SR−1株はプロトプラスト化することで、核の構成をそのまま維持する二核菌糸体と、片方の核が脱落する一核菌糸体が得られるが、本実験では、二核菌糸体を用いた。
菌糸からのゲノムDNAの回収はDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いた。手順はQiagenのプロトコールに従って行った。
フォワードプライマー:GCTACGGACTGACCTCGGACAGCAGCATGTTTTGCCTCTT (配列番号4)
リバースプライマー:CTGACGTGATGCTCCTGACGACAGGGACGTCATTTCGTGT (配列番号5)
TILLING用のPCR組成[10×ExTaqバッファー 2μl、2.5mM dNTP mix 1.6μl、フォワードプライマー(10μM)0.2μl,リバースプライマー(10μM)0.2μl、精製後DNA(3μl)、12.9μl滅菌水、Ex Taq 0.1μl/合計20μl]
PCR反応条件:[95℃ 2分間、(95℃ 1分間、55℃ 1分間、72℃ 1分30秒間)×35サイクル、72℃ 7分間、10℃にて保管]。
ExoProStarは20倍に希釈し、使用した。(50μlエキソヌクレアーゼI、50μlアルカリフォスフォターゼ、900μl水)
プライマーセットの配列は下記の通り。
フォワードプライマー:GCTACGGACTGACCTCGGAC (配列番号6)
リバースプライマー:CTGACGTGATGCTCCTGACG (配列番号7)
TILLING用のPCR組成[10×ExTaqバッファー 2μl、2.5mM dNTP mix 1.6μl、フォワードプライマー(10μM)0.4μl,リバースプライマー(10μM)0.4μl、精製後DNA(4μl)、11.5μl滅菌水、Ex Taq 0.06μl/合計20μl]
PCR反応条件:[95℃ 2分間、(95℃ 1分間、55℃ 1分間、72℃ 1分30秒間)×35サイクル、72℃ 7分間、次いで、(99℃ 10分間、70℃ 0.2〜0.3分間)×70サイクル、10℃にて保管]。
本研究では、UV照射したプロトプラストから再生した二核菌糸体935株(Mu001株〜Mu935株)を得ることができた。
(子実体の形成及びサンプリング)
植菌後103日間23℃の恒温室で菌糸を培養した後、一晩菌床全体を水に浸漬し、次いで、湿度90%以上の12時間日長、15℃のインキュベーター内に静置して発生操作を行った。菌傘の膜が切れた段階で子実体を収穫し、25℃のデシケーター内に保存して、保存試験を行った。
サンプリング後の子実体(柄、傘、ひだを含む)を、凍結乾燥後、乳ばちでパウダー状になるまですりつぶした。0.5gを測りとった後、10倍量の水を加え、オートクレーブで121℃にて20分間、熱水抽出した。抽出液をろ紙一枚、ガーゼ3枚を重ねたガラスフィルター(ガラス濾過器P250、柴田科学)で吸引ろ過し、ろ液に等量のエタノールを加えて、一時間以上4℃でエタノール沈澱を行った。遠心後、ペレットを100%エタノールで2回洗浄し、ペレットを凍結乾燥した。ペレットの総重量を測り、細かく砕いた後、1mgを測りとり、1時間以上20mlの水で膨潤させた後、オートクレーブで121℃、15分処理して完全に溶解させ、抗原溶液とした。
Mu789株の子実体を上記のとおり形成し、そのレンチナン量及び収穫後のレンチナン量を測定した。比較対象として、収穫後のレンチナン分解が明らかになっている市販株(H600株)、Mu789株の親株であるSR−1株、SR−1株においてexg2株をRNAi法により抑制したivr−exg2株(EXG2抑制モデル株:特開2006−271218号公報)の子実体におけるレンチナン量を、同様に測定した。結果を表1に示す。
Mu789株を育種親として利用するために、単胞子由来の菌株から、Mu789株と同様に変異を有する菌株を選抜する手法の確立を試みた。
フォワードプライマー:AGCAGCATGTTTTGCCTCTT (配列番号8)
リバースプライマー:ACAGGGACGTCATTTCGTGT (配列番号9)
フォワードプライマー:TGAACAGGTGCCGGACTTGC (配列番号10)
リバースプライマー:TGTACAGGGACGTCATTTCG (配列番号11)
(下線は野生型ではTA)
変異検出PCRの組成[10×ExTaqバッファー 1μl、2.5mM dNTP mix 0.8μl、フォワードプライマー(10μM)0.2μl,リバースプライマー(10μM)0.2μl、精製後DNA(2μl)、5.77μl滅菌水、Ex Taq 0.03μl/合計10μl]
PCR反応条件:[95℃ 2分間、(95℃ 1分間、60℃ 1分間、72℃ 30分間)×35サイクル、72℃ 7分間、10℃にて保管]。
ダイレクトPCRの結果得られた各PCR産物を電気泳動した結果を、図5に示す。野生型に対し、変異検出用のプライマーを用いた場合(レーン1及び3)においては、コントロールのプライマーを用いた場合(レーン2及び4)と比較して明瞭なバンドが確認されなかった。一方、変異株であるMu789株に対し、変異検出用のプライマーを用いた場合(レーン5及び7)においては、Mu789株に対しコントロールのプライマーを用いた場合(レーン6及び8)と比較して明瞭なバンドが確認された。すなわち、変異検出用のプライマーを用いたPCRを行うことによって変異株を検出できることが明らかとなった。
(I)方法
(i)子実体の形成及びサンプリング
Mu789株の子実体より単胞子分離を行い、変異型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株と野生型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株の作出を行った。すなわち、上記「2.子実体の保存試験」で得られたMu789株の子実体より、落下した胞子を回収し、滅菌水に懸濁した。得られた懸濁液を最小寒天培地に塗布した後、再生した菌糸を分離した。再生した菌糸については、顕微鏡下でクランプ結合の有無を確認し、クランプ結合のない一核菌糸のみを単離した(単胞子分離株)。
収穫した直後(収穫0日目)、及び収穫から4日目(収穫4日目)の子実体のヒダ部分を液体窒素で粉砕したのち、200mM酢酸ナトリウムを加えて、グルカナーゼの抽出を行った。得られた抽出液を遠心分離し、上澄みを酵素液とした。グルカナーゼ活性は、酵素液と1%ラミナリン基質液を混合し、37℃にて30分間反応を行い、生成された還元糖量を4−ヒドロキシ−ベンゾヒドラジド(PAHBAH)法を用いて測定した。なお、グルカナーゼ活性は、酵素液中のタンパク質をブラッドフォード(Bradford)法を用いて定量し、タンパク質1mgあたりのunit(U/mgタンパク質)であらわす。
前記酵素液を用いてウエスタンブロッティングを行い、EXG2発現量を確認した。はじめに、全ての酵素液のタンパク質濃度が等しくなるように、200mM酢酸ナトリウムで調整し、調整した酵素液とSDSサンプルバッファーを混合、煮沸し、5〜20%グラジエントSDS−PAGEを行った。泳動したタンパク質はiBlot(登録商標)Gel Transfer Device(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用し、ゲルからメンブレンに転写した。抗体反応には、一次抗体にEXG2−rabbit抗体、二次抗体にanti−Rabbit抗体を用いた。検出はECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GEヘルスケア)を使用し、化学発光法にてバンドを確認した。
交配により、変異型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株を3菌株(a,bおよびcと記載する)、野生型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株を4菌株(d,e,fおよびgと記載する)を得、それぞれより子実体を得た。これら子実体と、exg2の変異をヘテロに持つMu789株(hと記載する)の子実体について、収穫した直後、及び収穫から4日目のグルカナーゼ活性の測定を行った。
結果、野生型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株(d,e,fおよびg)の全てにおいて、収穫直後(D0)よりも収穫から4日目(D4)のグルカナーゼ活性が高くなった。
結果を図7に示す。
結果、全ての菌株でEXG2の発現が確認できたが、変異型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株(a,bおよびc)では、野生型のexg2遺伝子をホモに持つ菌株(d,e,fおよびg)に比べてEXG2発現量が少なかった。
Claims (6)
- 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大している、シイタケ菌であって、
exo‐β‐1,3‐グルカナーゼ(EXG2)のアミノ酸配列において、710番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸への置換を含む、変異型EXG2を有する、前記シイタケ菌。 - 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて、2倍以上である、請求項1に記載のシイタケ菌。
- 収穫後4日における子実体におけるレンチナン残存率が80%以上である、請求項1又は2に記載のシイタケ菌。
- NITE P−01865として寄託されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシイタケ菌。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のシイタケ菌を栽培して子実体を形成させ、該子実体を回収することを含む、レンチナンの製造方法。
- 子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大しているシイタケ菌の検出方法であって、EXG2のアミノ酸配列において、710番目のアミノ酸残基における置換変異の有無を検出し、710番目のアミノ酸残基にアスパラギン酸への置換変異が存在する場合、子実体におけるレンチナン含量が従来品種と比べて増大しているシイタケ菌であると認定する工程を含む、上記方法。
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