以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構および変速機構の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るシンクロメッシュ機構および変速機構を搭載した車両1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、エンジンやモーターなどの動力源2と、車輪3と、動力源2側からの動力をトルク、回転数および回転方向を変更して車輪3側に伝達する変速機構4と、動力源2および変速機構4の間に配置されて動力源2側から変速機構4側への動力の伝達状態を変更する発進用クラッチ5とを備えている。なお、動力源2がモーターである場合、発進用クラッチ5は不要である。また、変速機構4と車輪3との間には、図示していないが、終減速機および差動ギアが設けられている。
図2は、変速機構4に用いられているシンクロメッシュ機構10の正面断面図である。図3は、シンクロメッシュ機構10の一部の概略側断面図である。図4は、スリーブ50がギア30と噛み合っている状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の正面断面図である。図5は、図4に示す状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の上面図である。
図2〜図5に示すように、シンクロメッシュ機構10は、車輪3(図1参照。)側に動力を伝達するシャフト11と、シャフト11にベアリング12にて回転自在に支持されているギア20と、ベアリング12に対して、図2中、軸方向左側位置に配置されたベアリング13により回転可能にシャフト11に支持され、変速段がギア20と異なるギア30と、ギア20および30の間に設けられており、シャフト11に回転方向一体に指示されたハブ40と、ハブ40に回転方向一体、かつ軸方向移動可能に支持されたスリーブ50と、ギア20、30にそれぞれ一体のテーパーコーン面22、32およびドグギア23、33と、スリーブ50に押圧されてテーパーコーン面22、32との間で摩擦トルクを発生可能なシンクロナイザーリング60、70と、スリーブ50に嵌合可能なシンクロナイザーキー14とを備えている。
シャフト11には、延在方向、すなわち、軸方向においてベアリング12およびベアリング13の間にハブ40が配置されていて、この内周面に設けられ軸方向に延在しているスプライン41が、シャフト11の外周に形成されたスプライン11aと嵌合されて、ハブ40とシャフト11とは一体回転するようにされている。
ギア20は、ハブ40側とは反対の端部の外周に歯21を備え、図示しない変速用のギアと常時噛み合っている。ギア20は、図2中の左端部の外周にテーパーコーン面22が形成されている。また、ギア20の外周には、軸方向において歯21およびテーパーコーン面22の間に、軸方向に延在しているドグギア23を備えている。ドグギア23は、軸方向に対して傾いている傾斜面としてのチャンファ23aが図2中の左端部に形成されている。
ギア30は、軸方向における図2中の左端部の外周に歯31を備え、図示しない変速用のギアと常時噛み合っている。ギア30は、図2中の右端部の外周にテーパーコーン面32が形成されている。また、ギア30の外周には、軸方向において歯31およびテーパーコーン面32の間にドグギア33を備えている。ドグギア33は、軸方向に対して傾いている傾斜面としてのチャンファ33aが図2中の右端部に形成されている。
なお、ギア20が本発明の第1のギアである場合、テーパーコーン面22、ギア30、テーパーコーン面32、シンクロナイザーリング60、シンクロナイザーリング70は、それぞれ、本発明の第1の円錐面、第2のギア、第2の円錐面、第1のシンクロナイザーリング、第2のシンクロナイザーリングである。同様に、ギア30が本発明の第1のギアである場合、ギア20、テーパーコーン面22、テーパーコーン面32、シンクロナイザーリング60、シンクロナイザーリング70は、それぞれ、本発明の第2のギア、第2の円錐面、第1の円錐面、第2のシンクロナイザーリング、第1のシンクロナイザーリングである。例えば、ギア20、30は、それぞれ、1速、2速を実現するための被動ギアである。これらのギア20、30は、中心線10a上に同心で配置される。
ハブ40は、軸方向においてギア20およびギア30の間に配置され、その内周に形成されたスプライン41がシャフト11のスプライン11aと噛み合い、シャフト11と一体回転するようにしている。一方、ハブ40の外周には、軸方向に延在しているスプライン42が形成されている。ハブ40は、周方向における等間隔の3箇所に半径方向に伸ばされた溝43が形成されている。
スリーブ50は、軸方向に延在しているスプライン51を内周に備え、ハブ40のスプライン42と噛み合い、ハブ40と一体回転、かつ軸方向移動可能にハブ40に支持されている。スプライン51は、図2の中立位置から右側に移動するとギア20のドグギア23に、また、左側に移動するとギア30のドグギア33にそれぞれ噛み合うこともできる。すなわち、スリーブ50は、軸方向に移動することによってギア20およびギア30との噛み合いを切り替え可能である。スプライン51は、軸方向に対して傾いているチャンファ51aがギア20側端部に形成されているとともに、軸方向に対して傾いているチャンファ51bがギア30側端部に形成されている。スプライン51は、軸方向における中央より右側付近に周方向に沿った溝51cが形成されているとともに、軸方向における中央より左側付近に周方向に沿った溝51dが形成されている。溝51cおよび溝51dは、それぞれ、軸方向における両端部にそれぞれスロープが形成されている。スリーブ50の外周の中央部には、シフトフォーク16が嵌合する、周方向に延在する環状の溝52が形成されている。また、後で説明するが、上記構成に加え、スリーブ50のギア20、30のドグギア23、33との噛み合いの寸法関係やスリーブ50とシンクロナイザーキー14との関係を従来技術のものと異ならせてある。
シンクロナイザーリング60は、ハブ40とギア20との間に配置され、ギア20のテーパーコーン面22に対応する円錐状の摩擦面61が内周に形成されている。シンクロナイザーリング60の外周には、スリーブ50のスプライン51と噛み合うことができるスプライン62を備えている。スプライン62は、軸方向に対して傾いているチャンファ62aが図2中の左端部に形成されている。また、シンクロナイザーリング60は、図示していない一部がハブ40の図示していない溝に挿入されるなどの構造によって、ハブ40に対して周方向に、例えばスプライン62の約1ピッチ分だけ回転可能な状態で、ハブ40に対する回転が制限されている。
一方、シンクロナイザーリング70は、ハブ40とギア30との間に配置され、ギア30のテーパーコーン面32に対応する円錐状の摩擦面71が内周に形成されている。シンクロナイザーリング70の外周には、スリーブ50のスプライン51と噛み合うことができるスプライン72を備えている。スプライン72は、軸方向に対して傾いているチャンファ72aが図2中の右端部に形成されている。シンクロナイザーリング70は、図示していない一部がハブ40の図示していない溝に挿入されるなどの構造によって、ハブ40に対して周方向に、例えばスプライン72の約1ピッチ分だけ回転可能な状態で、ハブ40に対する回転が制限されている。
シンクロナイザーキー14は、ハブ40の溝43にそれぞれ配置されている。これらのシンクロナイザーキー14は、本実施例ではスリーブ50の溝51cまたは溝51dのいずれかに選択的に嵌合可能であり、周方向に等間隔離れた位置に3個用いている。シンクロナイザーキー14の外周には突起部14aが設けられ、スリーブ50の溝51cまたは溝51dのいずれかに嵌められている。突起部14aは、軸方向における両端部にスロープが形成されている。これらスロープの傾斜角、スリーブ50の溝51cの図2中の左側面の傾斜角、溝51dの図2中の右側面の傾斜角、シンクロナイザーリング60、70のチャンファ角などを適切に設定しておけば、ギア20、30のテーパーコーン面22、32と、シンクロナイザーリング60、70の摩擦面61、71との間に、スリーブ50の軸方向押圧で摩擦トルクが発生している限り、シンクロナイザーリング60、70はギア20、30の回転に引きずられてスリーブ50に対して相対回転した位置にあってスリーブ50のスプライン51とシンクロナイザーリング60、70のスプライン62、72とが軸方向において向き合う位置に維持されて、スリーブ50のさらなる軸方向移動を阻止することができる。同期して摩擦トルクが無くなれば、軸方向に押されているスリーブ50は、シンクロナイザーリング60、70のチャンファ62a、72aを押すことによって、シンクロナイザーリング60、70をスリーブ50に対して逆方向に相対回転させてスリーブ50のスプライン51とシンクロナイザーリング60、70のスプライン62、72とが軸方向において向き合わない位置にし、さらに軸方向移動を可能にする。
シンクロナイザーキー14は、軸方向左右において、半径外側方向にそれぞれ一対のスプリング15により付勢される。なお、シンクロナイザーキー14は、シャフト11の回転時、したがってギア切り替え時にあっては、半径外側方向に遠心力を受ける。したがって、シンクロメッシュ機構10は、必ずしもスプリング15を備えていなくても良い。
シフトフォーク16は、この内周に設けた突起部分がスリーブ50の溝52の一部に嵌って、スリーブ50を相対回転可能な状態で軸方向へ移動させることができるようにされている。なお、このシフトフォークの軸方向移動は、図示しない制御部によって図示しないアクチュエーターを駆動して行う。制御部は、出力軸の回転速度やエンジン負荷などを検出するセンサーからの信号を受けてギアの切り替えの種類や時期を演算して、アクチュエーターの駆動を制御するように構成されている。
次に、シンクロメッシュ機構10の動作について説明する。
以下においては、スリーブ50がギア30と噛み合っている状態からギア20と噛み合う状態に切り替える動作について説明する。しかしながら、スリーブ50がギア20と噛み合っている状態からギア30と噛み合う状態に切り替える動作についても同様であり、この場合の説明は省略する。
シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がギア30と噛み合っている状態では、図4および図5に示す状態になっている。すなわち、スリーブ50は、スプライン51がギア30のドグギア33と噛み合っていて、ギア30とともに回転する。したがって、スリーブ50のスプライン51と噛み合うスプライン42を備えるハブ40のスプライン41と噛み合うスプライン11aを備えるシャフト11は、ギア30とともに回転する。
ここで、以下においては、ギア20およびギア30が回転方向のうち、図5中の下方向(以下「第1回転方向」と言い、図5中、矢印10fで示す。)に回転しているものとする。また、ギア20は、ギア30より回転速度が遅いものとする。その場合、スプライン51は、上記第1回転方向とは反対方向(以下「第2回転方向」と言い、図5中、矢印10gで示す。)に存在するドグギア33から第1回転方向に押されて、第1回転方向側に存在するスプライン42を第1回転方向に押す。
アクチュエーターによるシフトレバーの操作などに応じてシフトフォーク16がギア20側方向に移動を開始すると、シフトフォーク16が嵌っている溝52が形成されているスリーブ50は、同方向に移動を開始する。
スリーブ50がギア20側方向に移動を開始すると、スリーブ50の溝51cに突起部14aが嵌っているシンクロナイザーキー14は、突起部14aのスロープが溝51cのスロープに押されることによって、ギア20側方向に移動を開始する。
シンクロナイザーキー14がギア20側方向に移動してシンクロナイザーリング60に接触すると、シンクロナイザーリング60は、シンクロナイザーキー14によってギア20側方向に押される。すなわち、スリーブ50は、シンクロナイザーキー14を介して間接的にシンクロナイザーリング60を同方向に押す。したがって、シンクロナイザーリング60は、ギア20側方向に移動して、摩擦面61でギア20のテーパーコーン面22に接触する。すなわち、シンクロメッシュ機構10は、図6に示す状態になる。
図6(a)は、シンクロナイザーキー14がシンクロナイザーリング60を押すことによってシンクロナイザーリング60の摩擦面61がギア20のテーパーコーン面22に接触している状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の正面断面図である。図6(b)は、図6(a)に示す状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の上面図である。
上述したように、ハブ40は、ギア30とともに第1回転方向に回転している。ここで、ギア20も、同方向に回転しているがギア30より回転速度が遅いので、ハブ40に対しては第2回転方向に相対的に回転している。したがって、シンクロナイザーリング60は、摩擦面61がギア20のテーパーコーン面22から第2回転方向の摩擦力を受けることによってハブ40に対して第2回転方向に相対回転し、ハブ40に対する周方向における回転可能な角度範囲のうち、図6(b)に示すように第2回転方向における端の位置で停止している。すなわち、シンクロナイザーリング60は、スプライン62がスリーブ50のスプライン51と噛み合う位置に対して、スプライン62の約半ピッチ分だけ第2回転方向に回転した状態で停止している。すなわち、このとき、スリーブ50のスプライン51は、ギア30のドグギア33のチャンファ33aに接触するとともに、シンクロナイザーリング70のスプライン72には噛み合っているものの、シンクロナイザーリング60のスプライン62にもギア20のドグギア23にも噛み合っていない。
なお、図6に示す状態では、ギア30のドグギア33のチャンファ33aがまだスリーブ50のスプライン51のチャンファ51bに接触しているので、スリーブ50は、スリーブ50に対するギア30の第1回転方向への回転に伴って、ギア30によってギア20側方向に押される。このように、スリーブ50からの押圧力により、シンクロナイザーリング60の摩擦面61がギア20のテーパーコーン面22に押圧されてこれらの間に発生する摩擦力が高まると、シンクロナイザーリング60の回転とギア20の回転との同期が進む。
図6に示す状態からスリーブ50がギア20側方向に更に移動すると、シンクロナイザーキー14は、突起部14aのスロープがスリーブ50の溝51cのスロープに押されることによって、スプリング15による付勢力およびシンクロナイザーキー14に作用する遠心力の合力に応じた、スリーブ50の押圧力で半径方向内側に移動して、突起部14aが溝51cから一部抜け出る。その分、スリーブ50がギア20側へ進行して、図7に示すように、スリーブ50のスプライン51のチャンファ51aがシンクロナイザーリング60のスプライン62のチャンファ62aに接触する。
図7(a)は、スリーブ50がシンクロナイザーリング60を押すことによってシンクロナイザーリング60の摩擦面61がギア20のテーパーコーン面22に接触している状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の正面断面図である。図7(b)は、図7(a)に示す状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の上面図である。
図7に示すように、スリーブ50によってギア20側方向に押されたシンクロナイザーリング60は、この摩擦面61とギア20のテーパーコーン面22との間に発生する摩擦力が高まる。したがって、シンクロナイザーリング60の回転とギア20の回転との同期、すなわち、スリーブ50の回転とギア20の回転との同期が進む。
シンクロナイザーリング60の回転とギア20の回転との同期が完了すると、シンクロナイザーリング60は、摩擦面61がギア20のテーパーコーン面22から第2回転方向の摩擦トルクを受けなくなる。そのため、スリーブ50のスプライン51が、スプライン62のチャンファ62aを介して、シンクロナイザーリング60をスリーブ50に対して第1回転方向に回転させる。したがって、スリーブ50のスプライン51は、さらに前進して、シンクロナイザーリング60のスプライン62と、図8に示すように噛み合う。
図8(a)は、シンクロナイザーリング60の回転と、ギア20の回転との同期が完了した状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の正面断面図である。図8(b)は、図8(a)に示す状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の上面図である。
図8に示す状態では、シンクロナイザーキー14は、突起部14aがスリーブ50の溝51cから抜け出て半径方向内側に更に押し込まれている。
図8に示す状態からスリーブ50がギア20側方向に更に移動した場合、スリーブ50のスプライン51のチャンファ51aがギア20のドグギア23のチャンファ23aに接触するとき、チャンファ51aおよびチャンファ23aの接触によってスリーブ50およびギア20が周方向に相対的に回転して、チャンファ51aおよびチャンファ23aが接触しなくなる。チャンファ51aがチャンファ23aに接触しない場合、スリーブ50は、図8中の軸方向右側への移動によって、図9に示すように、スプライン51でギア20のドグギア23に噛み合う。
図9(a)は、スリーブ50がギア20と噛み合っている状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の正面断面図である。図9(b)は、図9(a)に示す状態でのシンクロメッシュ機構10の一部の上面図である。
図9に示す状態では、ギア切り替え完了の状態であり、スリーブ50は、スプライン51がギア20のドグギア23と噛み合っていて、ギア20とともに回転する。したがって、スリーブ50のスプライン51と噛み合うスプライン42を備えるハブ40のスプライン41と噛み合うスプライン11aを備えるシャフト11は、ギア20とともに回転する。
ここで、ギア20が第1回転方向に回転しているので、スプライン51は、第2回転方向に存在するドグギア23から第1回転方向に押されて、第1回転方向に存在するスプライン42を第1回転方向に押す。
なお、図9に示す状態では、シンクロナイザーキー14は、スプリング15によって中心線10aから離隔する方向(半径方向外側)に付勢されていて、突起部14aがスリーブ50の溝51dに嵌っている。
以上に説明したように、シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がシンクロナイザーリング60およびシンクロナイザーリング70に同時に接触可能な長さであるので、ギア20からギア30への切り替え時に、スリーブ50およびギア20の噛み合いが解除されてから、シンクロナイザーリング70がスリーブ50によって直接または間接的に押されてギア30のテーパーコーン面32に接触して摩擦力を発生させるまでの時間と、ギア30からギア20への切り替え時に、スリーブ50およびギア20の噛み合いが解除されてから、シンクロナイザーリング60がスリーブ50によって直接または間接的に押されてギア20のテーパーコーン面22に接触して摩擦力を発生させるまでの時間とが従来より短い。したがって、シンクロメッシュ機構10は、ギアの切り替え時のトルク切れを従来より抑えることができる。
シンクロメッシュ機構10において、スリーブ50は、ギア30に噛み合う状態からギア20側に移動する場合に、少なくともギア30との接触が解除される前から、シンクロナイザーキー14を介して間接的にシンクロナイザーリング60を押してシンクロナイザーリング60をギア20のテーパーコーン面22に接触させる長さである。この構成により、シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がギア30に噛み合う状態からギア20に噛み合う状態に切り替える場合に、少なくともスリーブ50およびギア30の接触が解除される前から、スリーブ50によって間接的にシンクロナイザーリング60を押してシンクロナイザーリング60をギア20のテーパーコーン面22に接触させて摩擦力を発生させるので、ギア30からギア20への切り替え時のトルク切れを抑え、空走感を抑えることができる。シンクロメッシュ機構10において、スリーブ50は、ギア20に噛み合う状態からギア30側に移動する場合に、少なくともギア20との接触が解除される前から、シンクロナイザーキー14を介して間接的にシンクロナイザーリング70を押してシンクロナイザーリング70をギア30のテーパーコーン面32に接触させる長さである。したがって、シンクロメッシュ機構10は、ギア20からギア30への切り替え時にもトルク切れを抑え、空走感を抑えることができる。
シンクロメッシュ機構10において、スリーブ50は、ギア30に噛み合う状態からギア20側に移動する場合に、ギア30との接触と、シンクロナイザーリング60との接触とが異なる時期にのみ生じる最大の長さである。この構成により、シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がギア30に噛み合う状態からギア20に噛み合う状態に切り替える場合に、スリーブ50およびギア30の接触が解除された直後から、スリーブ50によってシンクロナイザーリング60を直接押してシンクロナイザーリング60をギア20のテーパーコーン面22に接触させて摩擦力を発生させるので、ギア30からギア20への切り替え時のトルク切れを抑え、空走感等を抑えることができる。シンクロメッシュ機構10において、スリーブ50は、ギア20に噛み合う状態からギア30側に移動する場合に、ギア20との接触と、シンクロナイザーリング70との接触とが異なる時期にのみ生じる最大の長さである。したがって、シンクロメッシュ機構10は、ギア20からギア30への切り替え時にもトルク切れを抑え、空走感を抑えることができる。
なお、スリーブ50は、ギア30に噛み合う状態からギア20側に移動する場合に、ギア30との接触と、シンクロナイザーリング60との接触とが異なる時期にのみ生じる長さであれば、ギア30との接触と、シンクロナイザーリング60との接触とが異なる時期にのみ生じる最大の長さでなくても良い。同様に、スリーブ50は、ギア20に噛み合う状態からギア30側に移動する場合に、ギア20との接触と、シンクロナイザーリング70との接触とが異なる時期にのみ生じる長さであれば、ギア20との接触と、シンクロナイザーリング70との接触とが異なる時期にのみ生じる最大の長さでなくても良い。
シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がギア20側方向に移動する場合に、ギア30およびスリーブ50の間の相対回転によって、ギア30のチャンファ33aがスリーブ50に接触してスリーブ50をギア20側方向に押すので、スリーブ50によってシンクロナイザーキー14を介して間接的にシンクロナイザーリング60をギア20のテーパーコーン面22に接触させるための操作力を低減することができる。同様に、シンクロメッシュ機構10は、スリーブ50がギア30側方向に移動する場合にも、スリーブ50によってシンクロナイザーキー14を介して間接的にシンクロナイザーリング70をギア30のテーパーコーン面32に接触させるための操作力を低減することができる。
図10に示すように、変速機構4は、車両1の動力源2からギア20およびギア30までの動力の伝達を遮断する必要がある場合に、車両1の動力源2からギア20およびギア30までの動力の伝達を自動で遮断する動力伝達自動遮断機構90を備えていても良い。例えば、変速機構4は、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などのオートマチックトランスミッション(AT)に用いるものであっても良いし、オートメイテッドマニュアル(AMT)などのセミオートマチックトランスミッションに用いるものであっても良い。
なお、変速機構4は、マニュアルトランスミッション(MT)のものでも良い。
変速機構4は、ギア20およびギア30以外のギアを備えていても良い。変速機構4は、シンクロメッシュ機構10が変速機構4の変速段のうち、連続している変速段を切り替える場合、これら連続している変速段の切り替え時にシンクロメッシュ機構10によってトルク切れを抑えるので、変速段をスムーズに切り替えることができる。
(第2の実施の形態)
まず、第2の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構を備えた変速機構の構成について説明する。
図11は、1速の状態である場合の本実施の形態に係る変速機構400の断面図である。図12は、変速機構400のスケルトン図である。
図11および図12に示す変速機構400は、第1の実施の形態に係る変速機構4(図1参照。)と同様に、第1の実施の形態に係る車両1(図1参照。)と同様な車両に搭載される。
変速機構400は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ方式)用の4速の変速機構である。
変速機構400は、車両の動力源に接続されるインプットシャフト411と、インプットシャフト411に回転可能に支持されて1速および3速を実現するためのギア412と、インプットシャフト411に回転可能に支持されて2速および4速を実現するためのギア413と、インプットシャフト411、ギア412およびギア413の接続状態を切り替えるシンクロメッシュ機構414と、シンクロメッシュ機構414を操作するためのシフトフォーク415とを備えている。
インプットシャフト411は、車両の動力源がモーターである場合、両端に異なるモーターが接続されることが可能である。インプットシャフト411は、外周にスプラインが形成されているハブ411aを備えている。
ギア412は、外周にスプラインが形成されたドグギア412aを備えている。ドグギア412aは、外周にテーパーコーン面412bも形成されている。
ギア413は、外周にスプラインが形成されたドグギア413aを備えている。ドグギア413aは、外周にテーパーコーン面413bも形成されている。
シンクロメッシュ機構414は、イナーシャロック型のシンクロメッシュ機構である。シンクロメッシュ機構414は、ハブ411aおよびドグギア412aの間に配置されて外周にスプラインが形成されてテーパーコーン面412bに接触して摩擦力を発生させるシンクロナイザーリング414aと、ハブ411aおよびドグギア413aの間に配置されて外周にスプラインが形成されてテーパーコーン面413bに接触して摩擦力を発生させるシンクロナイザーリング414bと、シンクロナイザーリング414aおよびシンクロナイザーリング414bの間に配置されたシンクロナイザーキー414cと、ハブ411aのスプライン、ドグギア412aのスプライン、ドグギア413aのスプライン、シンクロナイザーリング414aのスプライン、および、シンクロナイザーリング414bのスプラインと噛み合うことが可能なスプラインが内周に形成されたスリーブ414dと、ハブ411a、ギア412およびギア413とを備えている。スリーブ414dは、インプットシャフト411の延在方向に移動可能であり、シフトフォーク415が嵌るために周方向に延在する環状の溝が外周に形成されている。スリーブ414dは、第1の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構10(図2参照。)のスリーブ50(図2参照。)と同様に、シンクロナイザーリング414aおよびシンクロナイザーリング414bに同時に接触可能な長さである。また、スリーブ414dは、第1の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構10のスリーブ50と同様に、ギア412に噛み合う状態からギア413側に移動する場合に、少なくともギア412との接触が解除される前から、シンクロナイザーキー414cを介してシンクロナイザーリング414bを間接的に押してシンクロナイザーリング414bをテーパーコーン面413bに接触させるとともに、ギア413に噛み合う状態からギア412側に移動する場合に、少なくともギア413との接触が解除される前から、シンクロナイザーキー414cを介してシンクロナイザーリング414aを間接的に押してシンクロナイザーリング414aをテーパーコーン面412bに接触させる長さであっても良い。また、スリーブ414dは、第1の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構10のスリーブ50と同様に、ギア412に噛み合う状態からギア413側に移動する場合に、ギア412との接触と、シンクロナイザーリング414bとの接触とが異なる時期にのみ生じるとともに、ギア413に噛み合う状態からギア412側に移動する場合に、ギア413との接触と、シンクロナイザーリング414aとの接触とが異なる時期にのみ生じる長さである。
変速機構400は、インプットシャフト411に対して平行に配置されたカウンターシャフト416と、カウンターシャフト416に回転可能に支持されたサブシャフト417と、サブシャフト417に回転可能に支持されていて3速および4速を実現するためのギア418と、カウンターシャフト416に回転可能に支持されていて1速および2速を実現するためのギア419と、カウンターシャフト416、サブシャフト417、ギア418およびギア419の接続状態を切り替える動力切替装置420と、動力切替装置420を操作するためのシフトフォーク421および422とを備えている。
カウンターシャフト416は、外周にスプラインが形成されているドグギア416aと、ギア413と噛み合って2速および4速を実現するためのギア416bとを備えている。
サブシャフト417は、外周にスプラインが形成されているドグギア417aと、ギア412と噛み合って1速および3速を実現するためのギア417bとを備えている。
ギア418は、外周にスプラインが形成されているドグギア418aを備えている。
ギア419は、外周にスプラインが形成されているドグギア419aを備えている。
動力切替装置420は、ドグギア416aのスプライン、ドグギア417aのスプライン、および、ドグギア418aのスプラインと噛み合うことが可能なスプラインが内周に形成されたスリーブ420aと、ドグギア416aのスプライン、ドグギア417aのスプライン、および、ドグギア419aのスプラインと噛み合うことが可能なスプラインが内周に形成されたスリーブ420bと、ドグギア416a、ドグギア417a、ドグギア418a、および、ドグギア419aとを備えている。スリーブ420aは、カウンターシャフト416の延在方向に移動可能であり、シフトフォーク421が嵌るために周方向に延在する環状の溝が外周に形成されている。スリーブ420bは、カウンターシャフト416の延在方向に移動可能であり、シフトフォーク422が嵌るために周方向に延在する環状の溝が外周に形成されている。
変速機構400は、カウンターシャフト416に対して平行に配置されていて車両の車輪側に動力を伝達するアウトプットシャフトとしてのドライブシャフト423および424と、アウトプットシャフト423および424を接続するデファレンシャルギア425とを備えている。
デファレンシャルギア425は、ギア418と噛み合っていて3速および4速を実現するためのギア425aと、ギア419と噛み合っていて1速および2速を実現するためのギア425bとを備えている。
変速機構400は、動力源側から伝達された動力を車輪側に伝達する動力伝達系統として、1速および3速を切り替え可能な動力伝達系統410aと、2速および4速を切り替え可能な動力伝達系統410bとを備えている。シンクロメッシュ機構414は、動力伝達系統410aおよび410bのうち動力源側から動力が伝達されて車輪側に動力を伝達する動力伝達系統を切り替えるクラッチである。
図13は、変速機構400の制御系のブロック図である。
図13に示すように、変速機構400は、車両の状態を検知する各種のセンサー401と、インプットシャフト411(図11参照。)の延在方向にシフトフォーク415(図11参照。)、421(図11参照。)および422(図11参照。)を移動させるためのアクチュエーター402と、センサー401による検知結果に応じてアクチュエーター402の動作を制御する制御部403とを備えている。
センサー401としては、例えば、車両のアクセルペダル開度を検知するセンサー、車両の車速を検知するセンサーなどが存在する。
制御部403は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行する。
次に、変速機構400の動作について説明する。
まず、変速機構400が各変速段である場合のシンクロメッシュ機構414および動力切替装置420の状態について説明する。
変速機構400が1速の状態である場合、図11に示すように、シンクロメッシュ機構414は、スリーブ414dをハブ411aおよびドグギア412aに接続している。動力切替装置420は、スリーブ420aをドグギア416aおよび417aに接続しており、スリーブ420bをドグギア416aおよび419aに接続している。したがって、インプットシャフト411に入力された動力は、ギア412、417、419、425aを順に伝達して、ドライブシャフト423および424から出力される。
変速機構400が2速の状態である場合、図14に示すように、シンクロメッシュ機構414は、スリーブ414dをハブ411aおよびドグギア413aに接続している。動力切替装置420は、スリーブ420aをドグギア416aおよび417aに接続しており、スリーブ420bをドグギア416aおよび419aに接続している。したがって、インプットシャフト411に入力された動力は、ギア413、416b、419、425aを順に伝達して、ドライブシャフト423および424から出力される。
変速機構400が3速の状態である場合、図15に示すように、シンクロメッシュ機構414は、スリーブ414dをハブ411aおよびドグギア412aに接続している。動力切替装置420は、スリーブ420aをドグギア417aおよび418aに接続しており、スリーブ420bをドグギア416aおよび419aに接続している。したがって、インプットシャフト411に入力された動力は、ギア412、417、418、425aを順に伝達して、ドライブシャフト423および424から出力される。
変速機構400が4速の状態である場合、図16に示すように、シンクロメッシュ機構414は、スリーブ414dをハブ411aおよびドグギア413aに接続している。動力切替装置420は、スリーブ420aをドグギア417aおよび418aに接続しており、スリーブ420bをドグギア416aおよび417aに接続している。したがって、インプットシャフト411に入力された動力は、ギア413、416b、418、425aを順に伝達して、ドライブシャフト423および424から出力される。
次に、1速から2速に切り替える場合の変速機構400の動作について説明する。
変速機構400が図11に示す1速の状態である場合、制御部403は、例えばセンサー401によって検知されたアクセルペダル開度、車速などの情報に基づいて、1速から2速に切り替える状況であることを判断すると、アクチュエーター402を操作してシンクロメッシュ機構414においてスリーブ414dをハブ411aおよびドグギア413aに接続する。これによって、変速機構400は、図14に示す2速の状態になる。
次に、2速から3速に切り替える場合の変速機構400の動作について説明する。
変速機構400が図14に示す2速の状態である場合、制御部403は、例えばセンサー401によって検知されたアクセルペダル開度、車速などの情報に基づいて、2速から3速に切り替える状況であることを判断すると、アクチュエーター402を操作して図17に示すように動力切替装置420においてスリーブ420aをドグギア417aおよび418aに接続する。
次いで、制御部403は、アクチュエーター402を操作してシンクロメッシュ機構414においてスリーブ414dをハブ411aおよびドグギア412aに接続する。これによって、変速機構400は、図15に示す3速の状態になる。
次に、3速から4速に切り替える場合の変速機構400の動作について説明する。
変速機構400が図15に示す3速の状態である場合、制御部403は、例えばセンサー401によって検知されたアクセルペダル開度、車速などの情報に基づいて、3速から4速に切り替える状況であることを判断すると、アクチュエーター402を操作して図18に示すように動力切替装置420においてスリーブ420bをドグギア416aおよび417aに接続する。
次いで、制御部403は、アクチュエーター402を操作してシンクロメッシュ機構414においてスリーブ414dをハブ411aおよびドグギア413aに接続する。これによって、変速機構400は、図16に示す4速の状態になる。
以上のように、変速機構400は、2速から3速に切り替える場合、動力伝達系統410aにおいて3速の状態に切り替えた後、動力源側から伝達された動力を車輪側に伝達する動力伝達系統を、動力伝達系統410bから動力伝達系統410aに切り替える。また、変速機構400は、3速から4速に切り替える場合、動力伝達系統410bにおいて4速の状態に切り替えた後、動力源側から伝達された動力を車輪側に伝達する動力伝達系統を、動力伝達系統410aから動力伝達系統410bに切り替える。
以上においては、シフトアップ時の変速機構400の動作について説明した。変速機構400は、4速から3速に切り替えるシフトダウン時、3速から2速に切り替えるシフトダウン時、および、2速から1速に切り替えるシフトダウン時の動作も同様に、切り替え先の変速段が所属する動力伝達系統において切り替え先の変速段に動力切替装置420によって切り替えた後、切り替え先の変速段が所属する動力伝達系統にシンクロメッシュ機構414によって切り替える。
シンクロメッシュ機構414は、第1の実施の形態に係るシンクロメッシュ機構10(図2参照。)と同様の効果を得ることができる。
変速機構400は、連続している変速段の切り替え時にシンクロメッシュ機構414によってトルク切れを抑えるので、変速段をスムーズに切り替えることができる。
変速機構400は、変速段を切り替える場合、切り替え先の変速段が所属する動力伝達系統において切り替え先の変速段に動力切替装置420によって切り替えた後、切り替え先の変速段が所属する動力伝達系統にシンクロメッシュ機構414によって切り替えるので、変速段を瞬時に切り替えることができる。したがって、変速機構400は、変速段の切り替えの際にトルク切れが生じ難く、車両の運転者が感じる空走感を抑えることができる。
変速機構400は、動力伝達系統410a、410bを切り替える機構がディスククラッチではなくシンクロメッシュ機構414であるので、動力伝達系統410a、410bを切り替える機構がディスククラッチである構成と比較して、動力伝達系統410a、410bを切り替える機構の回転部分の径を小さくすることができる。したがって、変速機構400は、動力伝達系統410a、410bを切り替える際に同期しなくてはならない慣性モーメントを小さくすることができる。したがって、変速機構400は、動力切替装置420にシンクロメッシュ機構を設ける必要がない。
以上においては、変速機構400として、4速の変速機構について説明している。しかしながら、変速機構400は、4速以外の変速機構であっても良い。ここで、変速機構400は、カウンターシャフトを追加することによって、インプットシャフト411の延在方向における変速機構400全体の長さを抑えながら、変速の段数を増やすことが可能である。
また、以上においては、変速機構400として、FF用の変速機構について説明している。しかしながら、変速機構400は、例えば、FR(フロントエンジン・リアドライブ方式)用の変速機構など、FF用以外の変速機構であっても良いし、さらには車両以外の変速機構にも適用することができる。