以下に本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るフロントフォーク1を備えた自動二輪車2の全体を示す側面図である。
自動二輪車2は、車両本体の一部を構成する車体フレーム3と、車体フレーム3の前端部に取り付けられたヘッドパイプ4と、ヘッドパイプ4に設けられた一対の第1脚1aと第2脚(図示しない)とを備えるフロントフォーク1と、フロントフォーク1の下端に車軸5を介して取り付けられた前輪6aとを有している。図1では、進行方向に向かって前輪6aの右側に配置されている第1脚1aを示し、進行方向に向かって前輪6aの左側に配置されている第2脚を示していない。なお、以下の本発明の説明では、進行方向に向かって右側に第1脚1aを備えた実施例を示している。しかし、これに限定されることなく、進行方向に向かって左側に第1脚1aを備えてもよいことは勿論である。また第1脚1aと第2脚(図示しない)とは、同じ構造であっても、異なる構造であってもよいことは勿論である。
また自動二輪車2は、フロントフォーク1の上部に取り付けられたハンドル7と、車体フレーム3の下部にスイング自在に取り付けられたスイングアーム8と、スイングアーム8の後端に取り付けられた後輪6bと、スイングアーム8と車体フレーム3との間に取り付けられた一対の第1脚9aと第2脚(図示しない)とを備えるリヤサスペンション9とを有している。図1では、進行方向に向かって後輪6bの右側に配置されている第1脚9aを示し、進行方向に向かって後輪6bの左側に配置されている第2脚を示していない。なお、以下の本発明の説明では、進行方向に向かって右側に第1脚9aを備えた実施例を示している。しかし、これに限定されることなく、進行方向に向かって左側に第1脚9aを備えてもよいことは勿論である。また第1脚9aと第2脚(図示しない)とは、同じ構造であっても、異なる構造であってもよいことは勿論である。
ヘッドパイプ4の内部には、ハンドル7及びフロントフォーク1と一体として設けられるハンドル回転軸(図示しない)が挿入され、ヘッドパイプ4は、このハンドル回転軸を回転可能に支持する。前輪6aは、車体フレーム3の進行方向に向かって前側に配置された車輪である。ハンドル7は、車体フレーム3の進行方向に向かって前側に配置され、自動二輪車2の操舵のために運転者が握る部材である。フロントフォーク1は、地面の凹凸等により走行時に前輪6aの受ける衝撃を車体フレーム3へ伝達することを抑制する緩衝装置である。
スイングアーム8は、進行方向に向かって前端が車体フレーム3に回転可能に支持され、進行方向に向かって後端が後輪6bを支持する部材である。スイングアーム8は、後輪6bの動きに追従するように進行方向に向かって前端を中心に回転する。後輪6bは、車体フレーム3の進行方向に向かって後側に配置された車輪である。リヤサスペンション9は、地面の凹凸等により走行時に後輪6bの受ける衝撃を車体フレーム3へ伝達することを抑制する緩衝装置である。
次に、フロントフォーク1が備える第1脚1aの構成について説明する。
図2は、第1実施形態に係るフロントフォークの第1脚1aの縦断面図である。図3は、図1に示す第1脚1aの中央部を部分拡大した縦断面図である。図4は、図1に示す第1脚1aの下部を部分拡大した縦断面図である。図5は、図1に示す第1脚1aの上部を部分拡大した縦断面図である。
図2に示すように、第1脚1aは、上端側に設けられたアウタチューブ11と、下端側に設けられると共に、上端側から下端側に向かう軸方向にアウタチューブ11の内周に摺動自在に挿入されたインナチューブ12と、油が封入されて、アウタチューブ11の内側に設けられると共に、その上端がアウタチューブ11の上端に取り付けられ、軸方向に沿って下端側に向かって延設されたシリンダ16と、シリンダ16の内側に摺動可能に嵌装されたピストン42と、その上端側がピストン42を貫通してピストン42に取り付けられると共に、軸方向に沿って下端側に向かってシリンダ16の外部に延設されて、その内部が軸方向に貫通されて形成された中空部20cを有するピストンロッド20と、シリンダ16内でピストン42に区画されて、ピストン42よりも上端側に形成されたピストン側油室43aと、シリンダ16内でピストン42に区画されて、ピストン42よりも下端側に形成されたロッド側油室43bと、ピストン42に設けられると共にロッド側油室43bとピストン側油室43aとが連通される圧側流路45及び伸側流路44と、ピストン42の下端に設けられると共に、圧側行程時に圧側流路45の油圧が所定の圧力に達したときに、ピストン42より離間して圧側流路を開き、その油の流れに応じた減衰力を発生させる圧側減衰バルブ45aと、ピストン42の上端に設けられると共に、伸側行程時に伸側流路44の油圧が所定の圧力に達したときに、ピストン42より離間して伸側流路を開き、その油の流れに応じた減衰力を発生させる伸側減衰バルブ44aと、伸側減衰バルブ44aの開閉を調整する減衰力調整装置47aとを備える。なお、中空部20cは、第1の中空部として機能する。
第1脚1aは、更にピストンロッド20の上端に取り付けられるとともにピストン42を軸方向に貫通したピストンホルダ部41と、ピストンロッド20の上端近傍にあるピストンホルダ部41に設けられると共にピストン側油室43aとロッド側油室43bとが連通されるバイパス流路48と、その下端がインナチューブ12の下端近傍に取り付けられ、インナチューブ12の下端近傍からピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に沿って延設されると共にバイパス流路48を流れる油の流量を調整する流量調整装置47bとを備える。このときピストンロッド20は、ピストンホルダ部41を介して前記ピストン42に取付けられることになる。
なお、図2及び図3に示すピストンホルダ部41は、ピストンロッド20の上端に取り付けられ、別体であるものを示しているが、これに限定されることなく、ピストンロッド20と一体であってもよいことは勿論である。
アウタチューブ11及びインナチューブ12は、略円筒状の部材であり、同軸的に配置される。インナチューブ12は、上端側から下端側に向かう軸方向にアウタチューブ11の内周に摺動自在に挿入される。アウタチューブ11は、図1に示す車体側に配置したヘッドパイプ4にブラケット10a,10bを介して支持される。アウタチューブ11の上端側は閉鎖し、下端側は開口している。また、インナチューブ12は、図1に示す車軸5に連結され、アウタチューブ11に対して伸縮するように軸方向に沿って移動する。インナチューブ12の上端側は開口し、下端側は閉鎖している。以下では、フロントフォーク1、第1脚1a、アウタチューブ11及びインナチューブ12の中心線の方向を、「軸方向」と称し、車体フレーム3側を「上端側」、前輪6a側を「下端側」と称する。
図2に示すように、アウタチューブ11の内側には、シリンダ16が設けられる。シリンダ16は筒状であり、シリンダ16の内部には油が封入されている。また、シリンダ16は、上シリンダ16aの下端側と下シリンダ16bの上端側とをパイプナット16cで接続して構成される。上シリンダ16aの上端部16dは、アウタチューブ11の内周面に対して設けられたシール部材71を介してアウタチューブ11の上端部11aに螺着される。上シリンダ16aの上端部16dの内周には、上シリンダ16aの内周面に対して設けられたシール部材72を介して、フォークボルト15が挿入されて螺着される。そして、上シリンダ16aの上部開口端は、フォークボルト15により閉鎖される。シリンダ16の下シリンダ16bは、軸方向に沿ってアウタチューブ11の下端側に向かって延設される。下シリンダ16bには、軸方向に係止されたスプリングカラー25が外装している。また、シリンダ16の内側には、ピストン42が摺動可能に嵌装される。
図4に示すように、オイルロックカラー17は、インナチューブ12の内周に設けられたシール部材73を介して、インナチューブ12の下端の内周に液密に嵌装される。インナチューブ12の下端の外周は、車軸ブラケット19の内周19cに螺着される。また、インナチューブ12の下端近傍と車軸ブラケット19との間には、オイルロックカラー17の基端部17cが挟み止めされる。
また、オイルロックカラー17の基端部17cは、車軸ブラケット19の底面19aに設けられたシール部材74を介して、車軸ブラケット19の底面19a上に液密に着座される。
ボトムボルト18は、車軸ブラケット19の内周19bに設けられたシール部材75を介して、車軸ブラケット19に対して下端側から液密に嵌合される。さらに、ボトムボルト18は、オイルロックカラー17の貫通孔17bに螺着される。ボトムボルト18には、ピストンロッド20の基端部20aが螺着される。そして、ボトムボルト18に螺着されたピストンロッド20の基端部20aは、上端側からロックナット18aにより固定される。なお、インナチューブ12は、このボトムボルト18およびオイルロックカラー17と一体であっても別体であってもよい。
図2及び図4に示すように、ピストンロッド20は、筒状の部材であり、軸方向に貫通した中空部20cを有する。また、ピストンロッド20は、その上端側に、ピストンホルダ部41が取り付けられる。ピストンロッド20の上端側のピストンホルダ部41は、ピストン42の中央部を貫通してピストン42に取り付けられる。そして、ピストンロッド20は、インナチューブ12の下端側に向かってシリンダ16の外部に延設される。
図2及び図3に示すように、下シリンダ16bの下端側の開口部には、ロッドガイド21が螺着される。そして、ピストンロッド20は、ロッドガイド21に設けられたブッシュ21aに摺動自在に支持される。ピストンロッド20の上端は、シリンダ16の内部に挿入されている。そして、ピストンロッド20は、シリンダ16に対して挿入及び退出するように軸方向に沿って移動する。
また、シリンダ16の内部には、図2及び図3に示すように、ピストン42によって区画され、ピストン42よりも上端側に形成されるピストン側油室43aと、ピストン42よりも下端側に形成されるロッド側油室43bとが設けられる。
図3に示すように、ロッドガイド21はシール部材21bを備える。シール部材21bは、シリンダ16内のロッド側油室43bを封止する。また、シール部材21bは、ロッド側油室43b内に充填された油がシリンダ16の外部に漏れることを阻止する一方向性のシール機能を有する。ロッドガイド21の上端に、ばね受け27を介してリバウンドスプリング23が支持されている。また、ロッドガイド21の下端側面に、オイルロックカラー22が設けられている。
図2及び図4に示すように、懸架スプリング13は、オイルロックカラー17の段部17aに装着されているスプリング受け部24と、下シリンダ16bの外周に取り付けられたスプリングカラー25の下端に装着されているスプリング受け部26との間に軸方向に介装される。なお、このスプリングカラー25は、多数の連通孔25aを有する。
図2に示すように、アウタチューブ11とインナチューブ12の内部には、リザーバ30を構成する油室31と気体室32とが設けられる。油室31と気体室32とは接触しており、油はスプリングカラー25の連通孔25aを通じて、第1脚1aの伸縮動に応じて油室31と気体室32とを往来している。気体室32に閉じ込められている気体は、気体ばねを構成する。そして、上記した懸架スプリング13と気体ばねは、自動二輪車2の走行時に路面から受ける衝撃力を吸収する。
また、図2に示すように、シリンダ16内には、メインバルブ装置40とサブバルブ装置50とが設けられる。メインバルブ装置40は、シリンダ16の下端側にある下シリンダ16b内に設けられ、第1脚1aの主に伸側行程時における減衰力を発生する。サブバルブ装置50は、シリンダ16の上端側にある上シリンダ16a内に設けられ、第1脚1aの主に圧側行程時における減衰力を発生する。そして、第1脚1aは、メインバルブ装置40によって発生する減衰力とサブバルブ装置50によって発生する減衰力とによって、懸架スプリング13と気体ばねとによる路面からの衝撃力の吸収に伴うアウタチューブ11とインナチューブ12の伸縮振動を抑制する。
メインバルブ装置40について説明する。
メインバルブ装置40は、図2及び図3に示すように、ピストン42と、ピストン42に設けられた伸側減衰バルブ44a及び圧側減衰バルブ45aと、ピストンホルダ部41と、減衰力調整装置47aと、流量調整装置47bとを備える。
図3に示すように、ピストン42は、ピストンホルダ部41を介してピストンロッド20に取り付けられる。また、ピストン42は、シリンダ16の下シリンダ16bの内周を自在に摺動する。またピストン42は、下シリンダ16b内で、上端側に区画されるピストン側油室43aと下端側に区画されるロッド側油室43bとに区画する。またピストン42は、ピストン側油室43aとロッド側油室43bとを連通可能にする伸側流路44と、伸側流路44の上端に設けられる板状の伸側減衰バルブ44aと、ピストン側油室43aとロッド側油室43bとを連通可能にする圧側流路45と、圧側流路45の下端に設けられる圧側減衰バルブ45aとを備える。
伸側減衰バルブ44aは、ピストンワッシャー46cを介してナット46aとピストン42とに挟持されることより、内周側が固定されるとともに外周側が撓むように、ピストン42の上端に設けられる。そして、矢印E1に示すように伸側流路44内をロッド側油室43bからピストン側油室43aに流れる油の油圧が所定の圧力に達したときに、伸側減衰バルブ44aは、外周側の撓みによってピストン42の上端より上端側に離間して伸側流路44を開いて、減衰力が発生する。また圧側減衰バルブ45aは、ピストン42とバルブシート46bとに挟持されることにより、内周側が固定されるとともに外周側が撓むように、ピストン42の下端に設けられる。そして、矢印C3に示すように圧側流路45内をピストン側油室43aからロッド側油室43bに流れる油の油圧が所定の圧力に達したときに、圧側減衰バルブ45aは、外周側の撓みによってピストン42の下端より下端側に離間して圧側流路45を開いて、減衰力が発生する。
図3に示すように、ピストンホルダ部41は、ピストンロッド20の連結部20bを覆うと共に凹部41fを有する大径部41aと、大径部41aから上端側に設けられると共にその内部が軸方向に貫通して形成された中空部41gを有する中径部41eと、ピストン42並びに圧側減衰バルブ45a及び伸側減衰バルブ44aを貫通すると共にその内部が軸方向に貫通して形成された中空部41dを有する小径部41bとを備える。大径部41aの凹部41fは、中径部41eの中空部41gと連通し、この中径部41eの中空部41gは、小径部41bの中空部41dと連通している。即ち、ピストンホルダ部41は、ピストン42並びに圧側減衰バルブ45a及び伸側減衰バルブ44aを貫通すると共にその内部が軸方向に貫通されて形成された中空部41g及び中空部41dを有することになる。また小径部41bの中空部41dは、ピストンロッド20の中空部20cと連通している。なお、中空部41dは、第2の中空部として機能する。
またピストンホルダ部41の中径部41eには、アウタチューブ11の中心線11bから軸方向と垂直である径方向に貫通する貫通孔41cが設けられる。この貫通孔41cを介してロッド側油室43bと小径部41bの中空部41dとが連通される。更にこの小径部41bの中空部41dを介して貫通孔41cとピストン側油室43aとが連通される。
バイパス流路48は、ロッド側油室43bと連通する貫通孔41cと、貫通孔41cと連通すると共にピストン側油室43aと連通する小径部41bの中空部41dとから構成される。すなわち、ピストンホルダ部41の中空部41d、貫通孔41cは、それぞれバイパス流路の一部をなすことになる。これにより、バイパス流路48を介してロッド側油室43bとピストン側油室43aとが連通される。
図2に示すように、アウタチューブ11及びインナチューブ12の内部には、伸側減衰バルブ44aの開閉を調整する減衰力調整装置47aとバイパス流路48を流れる油の流量を調整する流量調整装置47bとが設けられる。図3及び図4に示すように、減衰力調整装置47aの下端及び流量調整装置47bの下端は、インナチューブ12の下端近傍に取り付けられる。
減衰力調整装置47aについて説明する。
減衰力調整装置47aは、図2〜図4に示すように、軸方向に延設されたロッド部471aと、ロッド部471aの上端から径方向に設けられた支持部471cと、支持部471cの径方向外側から下端側に向かって設けられたバルブ押さえ部471bとを備える。なお、ロッド部471aと支持部471cとバルブ押さえ部471bとはそれぞれ一体で あっても別体であってもよい。
また減衰力調整装置47aは、その一端が、インナチューブ12の下端近傍に取り付けられ、インナチューブ12の下端近傍からピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に沿って延設されてピストン42、圧側減衰バルブ45a及び伸側減衰バルブ44aを貫通すると共に、その他端であるバルブ押さえ部471bの下端が、伸側減衰バルブ44aがピストン42より離間した場合に上端側から伸側減衰バルブ44aと接触可能である。
ロッド部471aは、例えば、中空または中実の棒状部材で構成される。減衰力調整装置47aの一端であるロッド部471aの下端は、車軸ブラケット19に螺着しているボトムボルト18の下端部に外部から回転操作される。また、ロッド部471aは、インナチューブ12の下端近傍からピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に沿って上端側に延設され、さらにピストンホルダ部41の中空部41d内を軸方向に沿って延設されて、バルブシート46b、圧側減衰バルブ45a、ピストン42、ピストンワッシャー46c及びナット46aを貫通している。
図4に示すように、例えば、ロッド部471aの下端の外周には、ねじ部471eが形成され、後述する流量調整装置47bの下端部に形成されたねじ部47eに螺合する。そして、ロッド部471aのねじ部471eと流量調整装置47bのねじ部47eとの螺合によって、ロッド部471aは軸方向に移動可能となる。
即ち、ロッド部471aを、例えば時計回りに回転させることにより、ロッド部471aを下端側に移動させ、反時計回りに回転させることにより、ロッド部471aを上端側に移動させることができる。しかしこれに限定されることなく、このロッド部471aを、例えば時計回りに回転させることにより、ロッド部471aを上端側に移動させてもよく、反時計回りに回転させることにより、ロッド部471aを下端側に移動させてもよいことは勿論である。
図3に示すように支持部471cは、ピストン側油室43aとバイパス流路48とを連通させる油路49を備える。バルブ押さえ部471bは、支持部471cに上端が取り付けられると共に、下端側に延設される。バルブ押さえ部471bの下端は、減衰力調整装置47aの他端である。このバルブ押さえ部471bの下端は、矢印E1に示すようにロッド側油室43bから伸側流路44に流入した油によって伸側減衰バルブ44aがピストン42の上端より離間した場合、アウタチューブ11の上端側から、撓み変形した伸側減衰バルブ44aの上面と接触可能である。
またロッド部471aの上端側への移動と共に、同様に、ロッド部471aの上端から径方向に設けられた支持部471cに取り付けられたバルブ押さえ部471bも上端側へ移動する。一方、ロッド部471aの下端側への移動と共に、同様にバルブ押さえ部471bも下端側へ移動する。このときバルブ押さえ部471bの軸方向の位置を調整することで、バルブ押さえ部471bの下端に接触する伸側減衰バルブ44aの撓み量を調整でき、伸側減衰バルブ44aの開閉を調整することができる。減衰力調整装置47aは、バルブ押さえ部471bによって伸側減衰バルブ44aの開閉を調整することで、第1脚1aの伸側行程時において伸側流路44内をロッド側油室43bからピストン側油室43aに流れる油の圧力を調整できる。このため、バルブ押さえ部471bによる伸側減衰バルブ44aの開閉を調整することで、伸側流路44内を流れる油の流れに応じて発生する減衰力を調整することができる。
例えば、ロッド部471aが上端側に移動させると、ロッド部471aと一体的に移動するバルブ押さえ部471bも上端側に移動する。このため、伸側流路44を流れる油の流量が少なく流速が遅い段階では、伸側減衰バルブ44aの撓み量も小さく、バルブ押さえ部471bの下端に伸側減衰バルブ44aが接触せず、伸側流路44を流れる油の流量が多くなり流速が速い段階になって、バルブ押さえ部471bの下端に伸側減衰バルブ44aが接触する。このため、バルブ押さえ部471bが上端部に移動すると、相対的に伸側流路44を流れる油の流量が多く流速が速くなって減衰力が大きく上昇していくことになる。
一方、ロッド部471aが下端側に移動させると、ロッド部471aと一体的に移動するバルブ押さえ部471bも下端側に移動する。このため、伸側流路44を流れる油の流量が少なく流速が遅い段階であって、伸側減衰バルブ44aの撓み量も小さくても、バルブ押さえ部471bの下端に伸側減衰バルブ44aが接触する。このため、バルブ押さえ部471bが下端部に移動すると、相対的に伸側流路44を流れる油の流量が少なく流速が遅い段階からでも減衰力が大きく上昇していくことになる。
従って、減衰力調整装置47aは、その軸方向の移動により伸側減衰バルブ44aの撓み量を調整し、伸側減衰バルブ44aの開閉を調整し、伸側流路44内を流れる油の流れに応じて発生する減衰力を調整することができる。
次に、流量調整装置47bについて説明する。
図2〜図4に示すように、流量調整装置47bは、その下端がインナチューブ12の下端近傍に取付けられ、インナチューブ12の下端近傍からピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に沿って延設されると共にバイパス流路48を流れる油の流量を調整している。この流量調整装置47bは、ピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に移動することにより、バイパス流路48の流路面積が調整され、バイパス流路48を流れる油の流量を調整することができる。
また流量調整装置47bは、例えば、その内部が軸方向に貫通されて形成された中空部80を有する筒状部材で形成される。流量調整装置47bの中空部80の内径は、ロッド部471aの外径より大きい。また、減衰力調整装置47aの少なくとも一部であるロッド部471aは、流量調整装置47bの中空部80内を軸方向に貫通している。流量調整装置47bの下端は、車軸ブラケット19に取り付けられているボトムボルト18のねじ部18fに螺着されているため、ボトムボルト18の下端側から回転操作できる。また、流量調整装置47bは、ロッド部471aに対して同軸的に配置され、インナチューブ12の下端側からピストンロッド20の中空部20c内を軸方向に沿って上端側に延設される。なお、中空部80は、第3の中空部として機能する。
図4に示すように、例えば、流量調整装置47bの下端の外周には、ねじ部47fが形成され、ボトムボルト18に形成されたねじ部18fに螺合する。そして、流量調整装置47bのねじ部47fとボトムボルト18のねじ部18fとの螺合によって、流量調整装置47bはアウタチューブ11の軸方向に移動可能となる。
即ち、流量調整装置47bの端部472aを、例えば時計回りに回転させることにより、流量調整装置47bを上端側に移動させ、流量調整装置47bの端部472aを、反時計回りに回転させることにより、流量調整装置47bを下端側に移動させることができる。しかしこれに限定されることなく、流量調整装置47bの端部472aを、例えば時計回りに回転させることにより、流量調整装置47bを下端側に移動させてもよく、反時計回りに回転させることにより、流量調整装置47bを上端側に移動させてもよいことは勿論である。
なお、減衰力調整装置47a及び流量調整装置47bは、別々に操作することができる。また、上述のように、減衰力調整装置47aのロッド部471aのねじ部471eと流量調整装置47bのねじ部47eとが螺合している。そのため、流量調整装置47bの回転時に、流量調整装置47bのねじ部47eに螺合しているロッド部471aが意図せずに回転して移動する場合には、流量調整装置47bの回転操作が完了した後に、ロッド部471aを再度回転させて所望の位置に改めて調整することもできる。このように、減衰力調整装置47aと流量調整装置47bとは、それぞれ独立して回転操作ができる。
またインナチューブ12の下端とオイルロックカラー17とが固定され、このオイルロックカラー17とボトムボルト18が固定され、このボトムボルト18と流量調整装置47bとが螺着され、この流量調整装置47bと減衰力調整装置47aのロッド部471aとが螺着されている。
即ち、減衰力調整装置47aは、その一端がインナチューブ12の下端近傍に螺着されることにより、軸方向に移動可能となっている。また流量調整装置47bは、その一端がインナチューブ12の下端近傍に螺着されることにより、軸方向に移動可能となっている。
流量調整装置47bの上端は、流量調整装置47bの軸方向の移動によって、図3に示すように、バイパス流路48における貫通孔41cの流路断面積を調整することができる。例えば、流量調整装置47bが上端側に移動することにより、バイパス流路48の流路断面積が減少し、バイパス流路48が閉じられることになり、相対的にバイパス流路48を流れる油の流量が減少する。一方、流量調整装置47bが下端側に移動することにより、バイパス流路48の流路断面積が増加し、バイパス流路48が開かれることになり、相対的にバイパス流路48を流れる油の流量が増加する。このため、流量調整装置47bは、その上端で貫通孔41cの流路断面積を調整することにより、矢印E2に示すように第1脚1aの伸側行程時においてバイパス流路48及び小径部41bの中空部41dを介してロッド側油室43bからピストン側油室43aに流れる油の流量を調整することができる。このため、バイパス流路48内を流れる油の流れに応じて発生する減衰力を調整することができる。
次に、サブバルブ装置50について説明する。
図5に示すように、サブバルブ装置50は、ガイドパイプ51と、サブピストンホルダ51aと、サブピストン52と、サブピストン52に設けられた圧側減衰バルブ54a及び伸側減衰バルブ55aと、フリーピストン60と、加圧スプリング70とを備える。
図5に示すように、ガイドパイプ51は、上シリンダ16aの上端部16dに螺着されているフォークボルト15に螺着される。ガイドパイプ51の下端には、サブピストンホルダ51aが螺着される。また、サブピストンホルダ51aは、例えばナット51b等によってサブピストン52を保持している。
また、上シリンダ16aの内部であって、上シリンダ16aとガイドパイプ51との間に形成される環状空間内には、フリーピストン60が移動可能に設けられる。フリーピストン60とフォークボルト15との間には、加圧スプリング70が介装される。加圧スプリング70は、例えば圧縮コイルバネからなり、フリーピストン60を下端側に付勢している。
図5に示すように、上シリンダ16aの上端側に設けられた貫通孔64を介して、リザーバ30の気体室32と気体室53bとが連通している。また、フォークボルト15には、第1脚1aの伸縮に伴って、リザーバ30の気体室32や気体室53bに侵入した空気を排出するための排気プラグ65が設けられる。
図2に示すように、サブピストン52は、シリンダ16の内部でピストン42の上端側に配置されている。また、サブピストン52は、上シリンダ16aの内周に液密に摺動自在に設けられる。このサブピストン52は、ピストン側油室43aとサブ油室53とを区画している。またサブピストン52は、軸方向に貫通された圧側流路54と、圧側流路54の上端に設けられる圧側減衰バルブ54aと、軸方向に貫通された伸側流路55と、伸側流路55の下端に設けられる伸側減衰バルブ55aとを備える。
また、サブピストンホルダ51aには、圧側流路54と伸側流路55とをバイパスして、ピストン側油室43aと油室53aとを連通するバイパス流路56を備える。このバイパス流路56は、サブピストンホルダ51aを軸方向に貫通する貫通流路56cと、貫通流路56cと連通すると共にサブピストンホルダ51aを径方向に貫通する貫通流路56bと、貫通流路56cと連通すると共にサブピストンホルダ51aを斜め方向に貫通する貫通流路56aとを備える。
貫通流路56cは、減衰力調整ロッド58のニードル58aの軸方向の移動により開閉される。この貫通流路56cの開閉により、貫通流路56cと貫通流路56b及び/又は貫通流路56cと貫通流路56aとが連通される。この貫通流路56aの下端側には、低速用圧側板バルブ54bが設けられる。この低速用圧側板バルブ54bが選択的に開閉されることにより貫通流路56cと貫通流路56aとが連通される。この低速用圧側板バルブ54bは、主に圧側行程のピストン速度の低速時に機能し、圧側流路54を流れて圧側減衰バルブ54aが開閉する前に、貫通流路56c及び貫通流路56aを流れた油によって低速用圧側板バルブ54bが開閉されることにより減衰力が発生する。いずれにしても、貫通流路56cに対する減衰力調整ロッド58のニードル58aの開閉により、バイパス流路56を介してピストン側油室43aと油室53aとが連通される。
図5に示すように、フォークボルト15に螺合された減衰力調整ロッド58は、アジャスタ59を備えるとともに、ガイドパイプ51に挿入される。減衰力調整ロッド58の下端には、ニードル58aが設けられる。減衰力調整ロッド58は、アジャスタ59を回転操作することによってアウタチューブ11の軸方向に移動し、減衰力調整ロッド58のニードル58aは、バイパス流路56内の油の流路面積を調整することができる。この減衰力調整ロッド58のニードル58aの開閉により、バイパス流路56内の流路面積を調整することで、矢印C2に示すバイパス流路56を流れる油の流量が調整される。なお、フォークボルト15の上端側の中央部には、アジャスタ59とアジャスタ59のホルダ59aとが埋込み保持されている。
また、図5に示すように、フリーピストン60の外周環状溝60aには、上下のバックアップリング62a、62bと、バックアップリング62a、62bに挟まれるOリング62cとが装填される。そして、フリーピストン60は、Oリング62cを介して上シリンダ16aの内周を液密に摺動する。また、フリーピストン60の内周凹部60bには、止め輪63a及び押え板63bにより保持されるオイルシール63cが装填される。そして、フリーピストン60は、オイルシール63cを介してガイドパイプ51の外周を液密に摺動する。また、フリーピストン60は、サブ油室53のサブピストン52側に配置されてピストン側油室43aに連通している油室53aと、フォークボルト15側に配置される気体室53bとを区画する。
第1脚1aの圧側行程では、ピストンロッド20がシリンダ16内に進入し、加圧スプリング70が収縮する。シリンダ16内の油室は、このときの加圧スプリング70のばね荷重分だけ加圧される。これにより、第1脚1aは、圧側行程において、減衰力の立ち上り応答性が向上されるとともに、伸側行程時において、シリンダ16内の油室でのキャビテーションの発生が防止される。また第1脚1aは、伸側行程時に続く圧側行程時の減衰力発生の遅れ(さぼり)も回避される。
以上のように構成されたフロントフォーク1の第1脚1aの圧側行程時及び伸側行程時の減衰作用について説明する。
はじめに、フロントフォーク1の第1脚1aの圧側行程時の減衰作用について説明する。
シリンダ16にピストンロッド20が進入する第1脚1aの圧側行程時には、図3に示すように、メインバルブ装置40において、圧側流路45内を流れる油により圧側減衰力が発生する。油が矢印C3に示すように圧側流路45を介してピストン側油室43aからロッド側油室43bを流れることにより、圧側減衰バルブ45aを撓み変形させて圧側減衰力が発生する。
このとき矢印C3に示すようにピストン側油室43aから圧側流路45を通ってロッド側油室43bに排出され、また矢印C4に示すようにピストン側油室43aから油路49及びバイパス流路48を通ってロッド側油室43bに排出される。
例えば、流量調整装置47bが上端側に移動して、貫通孔41cの流路面積が小さくなり、バイパス流路48が閉じられていく場合には、矢印C4に示すバイパス流路48を流れる油量が減少し、矢印C3に示す圧側流路45を流れる油量が増加する。これにより、圧側流路45を流れて圧側減衰バルブ45aが撓み変形する際の油量も多くなり減衰力が高くなる。一方、流量調整装置47bが下端側に移動して、貫通孔41cの流路面積が大きくなり、バイパス流路48が開いていく場合には、矢印C4に示すバイパス流路48を流れる油量が増加し、矢印C3に示す圧側流路45を流れる油量が減少する。これにより、圧側流路45を流れて圧側減衰バルブ45aが撓み変形する際の油量も少なくなり減衰力が低くなる。即ち、バイパス流路48内を流れる油の流れに応じて、圧側流路45を介してピストン側油室43aからロッド側油室43bに流れる油量を調整できるため、発生する減衰力も調整することができる。
従って、図7の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、流量調整装置47bを上端側に移動させた場合は、圧側流路45を流れる油量が増加するため、相対的にピストン速度に対する減衰力の上昇する傾きが急なグラフcとなる。流量調整装置47bを下端側に移動させた場合は、圧側流路45を流れる油量が減少するため、相対的にピストン速度に対する減衰力の上昇する傾きが緩やかなグラフdとなる。
また第1脚1aの圧側行程時には、図5に示すように、サブバルブ装置50において、圧側流路54内を流れる油により圧側減衰力が発生する。このとき、矢印C1に示すようにピストン側油室43aから圧側流路54を通ってサブ油室53の油室53aに排出され、また矢印C2に示すようにピストン側油室43aからサブピストン52のバイパス流路56を通ってサブ油室53の油室53aに排出される。このとき、圧側流路54内を流れる油が圧側減衰バルブ54aを撓み変形させてサブ油室53の油室53aへ導かれることにより、減衰力が発生する。
例えば、減衰力調整ロッド58のニードル58aが下端側に移動して、バイパス流路56が閉じられていく場合には、矢印C2に示すバイパス流路56を流れる油量が減少し、矢印C1に示す圧側流路54を流れる油量が増加する。これにより、圧側流路54を流れて圧側減衰バルブ54aが撓み変形する際の油量も多くなり減衰力が高くなる。一方、ニードル58aが上端側に移動して、バイパス流路56が開いていく場合には、矢印C2に示すバイパス流路56を流れる油量が増加し、矢印C1に示す圧側流路54を流れる油量が減少する。これにより、圧側流路54を流れて圧側減衰バルブ54aが撓み変形する際の油量も少なくなり減衰力が低くなる。即ち、バイパス流路56内を流れる油の流れに応じて、圧側流路54を介してピストン側油室43aから油室53aに流れる油量を調整できるため、発生する減衰力も調整することができる。
次に、フロントフォーク1の第1脚1aの伸側行程時の減衰作用について説明する。
図6は、伸側行程時における減衰力調整装置47aの調整により発生する減衰力とピストン速度との関係を示した図である。図7は、伸側行程時における流量調整装置47bの調整により発生する減衰力とピストン速度との関係を示した図である。
シリンダ16にピストンロッド20が退出する第1脚1aの伸側行程時には、図3に示すように、メインバルブ装置40において、伸側流路44内を流れる油により伸側減衰力が発生する。油が矢印E1に示すように伸側流路44を介してロッド側油室43bからピストン側油室43aを流れることにより、伸側減衰バルブ44aを撓み変形させて伸側減衰力が発生する。この伸側減衰バルブ44aが撓み変形する際に、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面とが接触することにより、伸側減衰バルブ44aの撓み量が制限される。
例えば、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させて、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面との距離を相対的に短くした場合には、伸側流路44を流れる油量が少ないときから伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しやすくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量が相対的に制限されやすく、相対的にピストン速度の低速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。一方、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させて、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面との距離を相対的に長くした場合には、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しにくくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されにくくなり、相対的にピストン速度の高速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
従って、図6の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させた場合は、相対的にピストン速度の低速時から減衰力が上昇するグラフaとなる。減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させた場合は、相対的にピストン速度の高速時から減衰力が上昇するグラフbとなる。
このように、伸側減衰バルブ44aに対する減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの軸方向の位置調整により、伸側減衰バルブ44aの撓み量が調整され、伸側流路44に対する伸側減衰バルブ44aの開き易さが調整されることによって、伸側行程時の減衰力が調整される。
また第1脚1aの伸側行程時には、図3に示すように、メインバルブ装置40において、矢印E1に示すように伸側流路44を介してロッド側油室43bからピストン側油室43aに流れる油が伸側減衰バルブ44aを撓み変形させることにより、減衰力が発生する。このとき矢印E1に示すようにロッド側油室43bから伸側流路44を通ってピストン側油室43aに排出され、また矢印E2に示すようにロッド側油室43bからバイパス流路48及び油路49を通ってピストン側油室43aに排出される。
例えば、流量調整装置47bが上端側に移動して、貫通孔41cの流路面積が小さくなり、バイパス流路48が閉じられていく場合には、矢印E2に示すバイパス流路48を流れる油量が減少し、矢印E1に示す伸側流路44を流れる油量が増加する。これにより、伸側流路44を流れて伸側減衰バルブ44aが撓み変形する際の油量も多くなり減衰力が高くなる。一方、流量調整装置47bが下端側に移動して、貫通孔41cの流路面積が大きくなり、バイパス流路48が開いていく場合には、矢印E2に示すバイパス流路48を流れる油量が増加し、矢印E1に示す伸側流路44を流れる油量が減少する。これにより、伸側流路44を流れて伸側減衰バルブ44aが撓み変形する際の油量も少なくなり減衰力が低くなる。即ち、バイパス流路48内を流れる油の流れに応じて、伸側流路44を介してロッド側油室43bからピストン側油室43aに流れる油量を調整できるため、発生する減衰力も調整することができる。
また第1脚1aの伸側行程時には、図5に示すように、サブバルブ装置50において、伸側流路55内を流れる油により伸側減衰力が発生する。このとき、矢印E3に示すように油室53aから伸側流路55を通ってピストン側油室43aに排出され、また矢印E4に示すように油室53aからサブピストン52のバイパス流路56を通ってピストン側油室43aに排出される。このとき、伸側流路55を介して油室53aからピストン側油室43aに流れる油が伸側減衰バルブ55aを撓み変形させることにより、減衰力が発生する。
従って、図7の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、流量調整装置47bを上端側に移動させた場合は、伸側流路44を流れる油量が増加するため、相対的にピストン速度に対する減衰力の上昇する傾きが急なグラフcとなる。流量調整装置47bを下端側に移動させた場合は、伸側流路44を流れる油量が減少するため、相対的にピストン速度に対する減衰力の上昇する傾きが緩やかなグラフdとなる。
このように、流量調整装置47bの軸方向の位置調整により、伸側流路44を流れる油量が調整され、伸側行程時の減衰力が調整される。
第1脚1aの伸側行程時には、図5に示すように、サブバルブ装置50において、矢印E3に示すようにサブ油室53の油室53aから伸側流路55を通ってピストン側油室43aに排出され、また矢印E4に示すようにサブ油室53の油室53aからサブピストン52のバイパス流路56を通ってピストン側油室43aに排出される。このとき、伸側流路55内を流れる油が伸側減衰バルブ55aを撓み変形させてピストン側油室43aへ導かれることにより、減衰力が発生する。
例えば、減衰力調整ロッド58のニードル58aが下端側に移動して、バイパス流路56が閉じられていく場合には、矢印E4に示すバイパス流路56を流れる油量が減少し、矢印E3に示す伸側流路55を流れる油量が増加する。これにより、伸側流路55を流れて伸側減衰バルブ55aが撓み変形する際の油量も多くなり減衰力が高くなる。一方、ニードル58aが上端側に移動して、バイパス流路56が開いていく場合には、矢印E4に示すバイパス流路56を流れる油量が増加し、矢印E3に示す伸側流路55を流れる油量が減少する。これにより、伸側流路55を流れて伸側減衰バルブ55aが撓み変形する際の油量も少なくなり減衰力が低くなる。即ち、バイパス流路56内を流れる油の流れに応じて、伸側流路55を介して油室53aからピストン側油室43aに流れる油量を調整できるため、発生する減衰力も調整することができる。
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に短い場合を示した図である。
図8に示す第2実施形態に係る減衰力調整装置47aは、バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に短いことにより、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面との距離を相対的に長くなる。このため、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させた場合と同様に、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しにくくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されにくくなり、相対的にピストン速度の高速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係る減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に長い場合を示した図である。
図9に示す第3実施形態に係る減衰力調整装置47aは、バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に長いことにより、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面との距離を相対的に短くなる。このため、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させた場合と同様に、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しやすくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されやすくなり、相対的にピストン速度の低速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
従って、第2実施形態に係る減衰力調整装置47aと第3実施形態に係る減衰力調整装置47aとを比較して、図6の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、第2実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合は、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させた場合と同様に、相対的にピストン速度の高速時から減衰力が上昇するグラフbとなる。一方、第3実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合は、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させた場合と同様に、相対的にピストン速度の低速時から減衰力が上昇するグラフaとなる。
このように、伸側減衰バルブ44aに対する減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの軸方向の長さの調整により、伸側減衰バルブ44aの撓み量が調整され、伸側流路44に対する伸側減衰バルブ44aの開き易さが調整されることによって、伸側行程時の減衰力が調整される。
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係る減衰力調整装置47aの支持部471cの径方向の長さが相対的に短い場合を示した図である。
図10に示す第4実施形態に係る減衰力調整装置47aは、支持部471cの径方向の長さが相対的に短いことにより、ピストン速度の低速時から伸側減衰バルブ44aがピストン42に対して開きやすくなる。このため、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面との接触は、伸側減衰バルブ44aが上端側に大きく撓んで、伸側減衰バルブ44aがピストン42と大きく離間したときとなる。このため、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させた場合と同様に、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しにくくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されにくくなり、相対的にピストン速度の高速時から伸側行程時の減衰力が上昇することになる。
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態に係る減衰力調整装置47aの支持部471cの径方向の長さが相対的に長い場合を示した図である。
図11に示す第5実施形態に係る減衰力調整装置47aは、支持部471cの径方向の長さが相対的に長いことにより、ピストン速度の低速時から伸側減衰バルブ44aがピストン42に対して開きにくくなる。このため、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面との接触は、伸側減衰バルブ44aの上端側への撓みが小さいときからとなる。このため、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させた場合と同様に、伸側減衰バルブ44aの上面とバルブ押さえ部471bの下面とが接触しやすくなり、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されやすくなり、相対的にピストン速度の低速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
従って、第4実施形態に係る減衰力調整装置47aと第5実施形態に係る減衰力調整装置47aとを比較して、図6の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、第4実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合は、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを上端側に移動させた場合と同様に、相対的にピストン速度の高速時から減衰力が上昇するグラフbとなる。一方、第5実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合は、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bを下端側に移動させた場合と同様に、相対的にピストン速度の低速時から減衰力が上昇するグラフaとなる。
このように、伸側減衰バルブ44aに対する減衰力調整装置47aの支持部471cの径方向の長さの調整により、伸側減衰バルブ44aの撓み量が調整され、伸側流路44に対する伸側減衰バルブ44aの開き易さが調整されることによって、伸側行程時の減衰力が調整される。
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態に係る減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bが支持部471cに対して斜め方向に下端側に延設された場合を示した図である。
図12に示す第6実施形態に係る減衰力調整装置47aは、バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に短い場合は、第2実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されにくくなり、相対的にピストン速度の高速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に長い場合は、第3実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、伸側減衰バルブの撓み量がより相対的に制限されやすくなり、相対的にピストン速度の低速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
従って、第6実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合には、図6の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に短い場合は、第2実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、相対的にピストン速度の高速時から減衰力が上昇するグラフbとなる。バルブ押さえ部471bの軸方向の長さが相対的に長い場合は、第3実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、相対的にピストン速度の低速時から減衰力が上昇するグラフaとなる。
この場合であっても、減衰力調整装置47aにおける伸側減衰バルブ44aとの軸方向又は径方向の距離の長短の調整により、伸側減衰バルブ44aの撓み量が調整され、伸側流路44に対する伸側減衰バルブ44aの開き易さが調整されることによって、伸側行程時の減衰力が調整される。
また第6実施形態に係る減衰力調整装置47aは、支持部471cの径方向の長さが相対的に短い場合は、第4実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されにくくなり、相対的にピストン速度の高速時から伸側行程時の減衰力が上昇することになる。支持部471cの径方向の長さが相対的に長い場合は、第5実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、伸側減衰バルブ44aの撓み量がより相対的に制限されやすくなり、相対的にピストン速度の低速時から伸側行程時の減衰力が上昇する。
従って、第6実施形態に係る減衰力調整装置47aの場合には、図6の減衰力とピストン速度の関係を示した図で示すと、支持部471cの径方向の長さが相対的に短い場合は、第4実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、相対的にピストン速度の高速時から減衰力が上昇するグラフbとなる。支持部471cの径方向の長さが相対的に長い場合は、第5実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、相対的にピストン速度の低速時から減衰力が上昇するグラフaとなる。
<第7実施形態>
図13は、第7実施形態に係る減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471b及び支持部471cが曲率を帯びて下端側に延設された場合を示した図である。
図13に示す第7実施形態に係る減衰力調整装置47aは、バルブ押さえ部471b及び支持部471cが一体となって曲率を帯びた場合である。この場合であっても、第6実施形態に係る減衰力調整装置47aと同様に、減衰力調整装置47aにおける伸側減衰バルブ44aとの軸方向又は径方向の距離の長短の調整により、伸側減衰バルブ44aの撓み量が調整され、伸側流路44に対する伸側減衰バルブ44aの開き易さが調整されることによって、伸側行程時の減衰力が調整される。
図8〜図13の第2〜第7実施形態で示されたように、第1脚1aは、伸側減衰バルブ44aがピストン42より離間した場合に、伸側減衰バルブ44aは、ピストンホルダ部41に取り付けられたナット46a及びピストンワッシャー46cとピストン42とにより挟まれて固定された固定部66と、減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bと接触する接触部67とを有する。このとき、第1脚1aは、必要に応じて所定の減衰力調整装置47aを利用することで、固定部66から接触部67までの軸方向の距離又は径方向の距離はいかようにも調整可能であることになる。これにより、第1脚1aの伸側行程時の減衰力が調整可能となる。なお、ピストンロッド20とピストンホルダ部41とが一体化されている場合は、伸側減衰バルブ44aは、径方向の内側でピストンロッド20に直接固定された固定部66を有していてもよいことは勿論である。
また第1〜第7実施形態で示された第1脚1aの場合に、特に減衰力調整装置47aの少なくともバルブ押さえ部471b及び支持部471cが弾力性のある素材で形成されていれば、バルブ押さえ部471b及び支持部471cを撓ませることにより、固定部66から接触部67までの軸方向の距離又は径方向の距離は、さらに調整が容易となる。弾力性のある素材として、例えば、チタン系の合金などの弾性体が挙げられる。このように、減衰力調整装置47aの少なくとも一部が弾力性のある素材で形成されていた場合であっても、伸側減衰バルブ44aが撓み変形する際に、伸側減衰バルブ44aの上面と減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの下面とが接触することにより、伸側減衰バルブ44aの撓み量が制限されるものであれば如何なるものであってもよい。
なお、第2実施形態乃至第7実施形態におけるサブバルブ装置50の減衰力発生機構及びその作用効果は、説明を割愛したが第1実施形態と同様であることは勿論である。
以上のように、フロントフォーク1の第1脚1aによれば、ピストン42に設けられた伸側減衰バルブ44aの開閉を調整する減衰力調整装置47aを備えることで、第1脚1aの伸側行程時に減衰力調整装置47aのバルブ押さえ部471bの軸方向の長さ及び支持部471cの径方向の長さの調整を行うことにより、メインバルブ装置40の伸側流路44内で発生する減衰力を容易に調整することができる。減衰力調整装置47aの軸方向の位置はインナチューブ12の外部から操作できるため、減衰力調整装置47aは、伸側流路44内で発生する伸側行程時の減衰力を、フロントフォークを解体せずに、外部から容易に調整することができる。
さらに、フロントフォーク1の第1脚1aによれば、ピストン42のバイパス流路48を流れる油の流量を調整する流量調整装置47bを備えることで、第1脚1aの伸側行程時に、流量調整装置47bの軸方向の移動により、バイパス流路48内を流れる油量を調整して、伸側流路44を流れる油量を調整することによって発生する減衰力を容易に調整することができる。流量調整装置47bの軸方向の位置はインナチューブ12の外部から操作できるため、流量調整装置47bは、このように伸側流路44を流れる油量を調整することにより伸側行程時の減衰力を、フロントフォークを解体せずに、外部から容易に調整することができる。
上記した実施の形態において、減衰力調整装置47aに設けられたバルブ押さえ部471b及び支持部471cの形状は、上述した形状に限定されるものではない。減衰力調整装置47aが伸側減衰バルブ44aの撓み量を調整して、伸側流路44内で発生する減衰力が調整されることができれば、バルブ押さえ部471b及び支持部471cの形状は意如何なる構造であってもよい。
また、上記した実施の形態において、第1脚1aは必ずしも流量調整装置47bを備えなくてもよい。この場合には、減衰力調整装置47aのロッド部471aに形成されたねじ部471eがボトムボルト18に形成されたねじ部18fに直接螺合されることによる。これにより、ロッド部471aは軸方向に移動することができる。
また、上記した実施の形態において、第1脚1aでは、懸架スプリング13は、コイルスプリングでなく、空気ばねであってもよいことは勿論である。
また、上記した実施の形態において、第1脚1aは、下端側に設けられたインナチューブ12が上端側に設けられたアウタチューブ11の内周に摺動自在に挿入される倒立構造として説明してきたが、上端側に設けられたインナチューブ12が下端側に設けられたアウタチューブ11の内周に摺動自在に挿入される正立構造であってよいことは勿論である。
また、上記した実施の形態において、減衰力調整装置47a及び流量調整装置47bの軸方向への移動に関係する構成は、上述した構成に限定されるものではなく、減衰力調整装置47aと流量調整装置47bとが別々に軸方向に移動することができれば如何なる構造であってよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。