図1〜図17を用いて、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、スプールの回転軸方向、回転径方向及び回転周方向をそれぞれ示すものとする。また以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、スプールの回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、図示しないウェビングを巻取るスプール14と、第1フォースリミッタ機構16を構成するトーションシャフト18(図2も参照)と、を備えている。また、ウェビング巻取装置10は、車両緊急時にスプール14を強制的に巻取方向へ回転させるプリテンショナ機構20と、フォースリミッタ荷重発生機構及びフォースリミッタ荷重調節機構を有する第2フォースリミッタ機構22と、を備えている。
フレーム12は、矩形枠状に形成されていると共に、車体に固定される板状の背板12Aを備えている。また、背板12Aの幅方向両端部からは脚片12B,12Cが略直角に延出されており、この脚片12B,12Cにおける背板12Aとは反対側の端部は、接続板12Dによって繋がれている。
図2には、スプール組立体80が示されている。この図に示されるように、スプール組立体80は、乗員に装着される図示しないウェビングが巻取られるスプール14を備えている。また、スプール組立体80は、スプール14の軸方向一方側の端部に設けられた回転力伝達機構82と、スプール14と一体回転可能に設けられたロック部としてのベースロック30と、スプール14とベースロック30とを繋ぐトーションシャフト18と、を備えている。
スプール14は、略円柱状に形成されていると共に図示しないウェビングが巻取られる巻取部14Aを備えている。この巻取部14Aには、ウェビングが挿通される挿通孔14Bが形成されており、この挿通孔14Bは、径方向外側から見て軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。また、ウェビングが挿通孔14Bに挿通されて、当該ウェビングの長手方向の端部にストッパ部材が取付けられることで、当該ウェビングの長手方向の端部がスプール14に係止されている。そして、スプール14が周方向他方側(矢印C方向とは反対方向)へ回転されることで、すなわち、スプール14が巻取方向へ回転されることで、ウェビングがスプール14に巻取られる。また、ウェビングがスプール14から引出されることで、スプール14が周方向一方側(矢印C方向)へ回転される、すなわち、スプール14が引出方向へ回転されるようになっている。
スプール14の軸方向他方側(矢印Z方向とは反対方向)の端部は、後述するプリテンショナ機構20の一部を構成するピニオンギヤ88(図1参照)の回転力がワンウェイクラッチ84を介して伝達される図示しない回転力伝達部とされている。また、このワンウェイクラッチ84は、ピニオンギヤ88の巻取方向への回転力のみをスプール14に伝達するように構成されている。
スプール14の軸心部には、後述するトーションシャフト18が挿入されるトーションシャフト挿入孔14Dが形成されている。また、トーションシャフト挿入孔14Dの軸方向他方側には、トーションシャフト18に形成された第1セレーション部18Bが係合される図示しない第1被係合部が形成されている。そして、トーションシャフト18の第1セレーション部18Bが当該第1被係合部に係合されることで、トーションシャフト18とスプール14とが一体回転可能に結合されるようになっている。
また、スプール14の軸方向一方側には、ロック機構の一部を構成するベースロック30及びロックギヤ32が設けられている。ベースロック30は、軸方向を厚み方向とする略円板状に形成されており、このベースロック30には、ロックギヤ32が傾動可能に支持されている。そして、車両の緊急時に、フレーム12の脚片12C(図1参照)に設けられた図示しないラチェット歯に、ベースロック30及びロックギヤ32が係合されることで、ベースロック30の引出方向への回転が規制されるようになっている。
また、ベースロック30の軸心部には、後述するトーションシャフト18に形成された第2セレーション部18Cが係合される第2被係合部30Aが形成されている。そして、トーションシャフト18の第2セレーション部18Cが第2被係合部30Aに係合されることで、トーションシャフト18とベースロック30とが一体回転可能に結合されるようになっている。
トーションシャフト18は、略棒状に形成されており、このトーションシャフト18の軸方向の中間部及び一方側の端部には、スプール14に設けられた第1被係合部及びベースロック30に設けられた第2被係合部30Aにそれぞれ係合される第1セレーション部18B及び第2セレーション部18Cが形成されている。また、トーションシャフト18における第1セレーション部18Bと第2セレーション部18Cとの間の部位は、当該第1セレーション部18B及び第2セレーション部18Cよりも小径とされていると共に、軸方向に沿って略一定の円形断面とされた捩れ部18Aとされている。そして、スプール14のベースロック30に対する引出方向への回転がトーションシャフト18を介して制限された状態において、ウェビングから乗員に作用される荷重が所定値を超えた際に、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れて、スプール14のベースロック30に対する引出方向への回転が許容されるようになっている。また、トーションシャフト18の軸方向他方側の部位は、スプール14の軸方向他方側の端部に形成された図示しない貫通孔に挿通されると共に図示しないリターンスプリング等が係合される係合軸部18Dとされている。なお、この係合軸部18Dにストッパ部材86が取付けられることで、トーションシャフト18がスプールに形成されたトーションシャフト挿入孔14Dから抜落ちないようになっている。
図1に示されるように、プリテンショナ機構20は、ケース34に接続されたシリンダ36と、シリンダ36内に配置された図示しないラックと、移動されるラックと噛合うピニオンギヤ88と、シリンダ36の一端部に取付けられたガスジェネレータ42と、を含んで構成されている。そして、ガスジェネレータ42の作動により発生した高圧のガスによってシリンダ36内の圧力が上昇することで、ラックが移動されて、当該ラックと噛合うピニオンギヤ88が巻取方向へ回転される。これにより、スプール14が巻取方向へ回転されるようになっている。
図3に示されるように、第2フォースリミッタ機構22は、フレーム12の脚片12C(図1参照)に固定されるハウジング44と、ハウジング44の軸方向一方側の端部に取付けられるカバーシート46と、を備えている。また、第2フォースリミッタ機構22は、ハウジング44とカバーシート46との間に配置される巻付リング48、エネルギ吸収ワイヤ50、ワイヤガイド52、レバー54、及びカム56を備えている。
ハウジング44は、軸方向一方側が開放された箱状に形成されており、このハウジング44は、フレーム12の脚片12C(図1参照)と対向して延びる底壁44Aと、底壁44Aの外周端から軸方向一方側に向けて屈曲して延びる側壁44Bと、を備えている。底壁44Aには、スプール14(図1参照)の軸方向一方側の端部が挿通される挿通孔44Cが形成されている。また、後述する巻付リング48は、この挿通孔44Cの内周縁部に形成された段差部44Dに係合されることで回転可能に支持されている。また、底壁44Aにおいて挿通孔44Cが形成された部位の径方向外側には、後述するワイヤガイド52が取付けられるワイヤガイド取付部44Eが設けられており、このワイヤガイド取付部44Eには、円形の支持孔44Fが形成されている。側壁44Bの径方向内側の面は、後述する巻付リング48と径方向に対向して配置されており、この側壁44Bの径方向内側の面の一部は、円筒面状に形成されたプリセット面44Gとされている。また、側壁44Bにおいて底壁44Aのワイヤガイド取付部44Eに対応する部位には、後述するレバー54を傾動可能に支持する凹状のレバー支持部44Hが形成されている。さらに、側壁44Bにおいて底壁44Aのワイヤガイド取付部44Eに対応する部位でかつレバー支持部44Hに隣接する部位には、後述するカム56が配置される凹状のカム配置部44Iが形成されている。なお、底壁44Aにおいてカム配置部44Iに対応する部位には、後述するカム56の軸方向他方側の端部を支持する図示しない軸支孔が形成されている。
カバーシート46は、ハウジング44の側壁44Bの軸方向一方側の端部に取付けられており、このカバーシート46には、ハウジング44の底壁44Aに形成された挿通孔44Cに対応する挿通孔46Aが形成されている。また、カバーシート46においてハウジング44のワイヤガイド取付部44Eと軸方向に対向する部位には、円形の支持孔46Bが形成されており、さらにカバーシート46においてハウジング44のカム配置部44Iに対応する部位には、後述するカム56の軸部56Aが挿通される挿通孔46Cが形成されている。
回転力伝達部材としての巻付リング48は、筒状に形成されており、この巻付リング48は、スプール14と同軸上でかつ当該スプール14の軸方向一方側の端部(後述する回転力伝達機構82(図1参照)が設けられた部位)の径方向外側に配置されている。また、巻付リング48の内周部には、後述するパウル92が係合される複数の係合歯部48Aが周方向に沿って形成されている。さらに、図3、図8及び図9に示されるように、巻付リング48の外周部における軸方向他方側の端部には、径方向外側に向けて突出するフランジ部48Bが形成されている。また、巻付リング48の外周面においてフランジ部48Bよりも軸方向一方側の部位は、後述するエネルギ吸収ワイヤ50が巻取られる巻取面48Cとされている。
エネルギ吸収ワイヤ50は、鋼材等を用いて形成された線状の部材(針金状の部材)が巻回されることによって形成されている。具体的には、エネルギ吸収ワイヤ50は、線状の部材が軸方向に沿って周方向に環状に巻回されることによって形成された環状部50Aを備えている。また、前述のハウジング44のプリセット面44Gにセットされる前の自然状態の環状部50Aの外径は、当該プリセット面44Gの内径よりも大きな外径とされている。そして、環状部50Aが縮径された状態で、環状部50Aがプリセット面44Gの径方向内側に配置されて、当該環状部50Aの径方向外側の面がプリセット面44Gの径方向内側の面に当接することで、エネルギ吸収ワイヤ50がハウジング44に取付けられるようになっている。また、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向一方側の端部50Bは、環状部50Aの一部を構成している。図4に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cは、環状部50Aの径方向内側を通じて当該環状部50Aの軸方向一方側に変位されている。そして、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cが、巻付リング48の軸方向一方側の端部に係止されている。これにより、図8に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50において巻付リング48に係止されている部位50Dと後述するワイヤガイド52とレバー54との間に挟持されている部位50Eとが巻付リング48の軸方向にオフセットして配置されるようになっている。
図3及び図4に示されるように、ワイヤガイド52は、エネルギ吸収ワイヤ50よりも強度の低い材料を用いて形成されており、このワイヤガイド52は、軸方向視で径方向外側の面及び径方向内側の面が緩やかに湾曲された三日月状に形成されていると共に、軸方向に所定の厚みを有するブロック状に形成されている。また、ワイヤガイド52の軸方向他方側及び一方側には、ハウジング44に形成された支持孔44F及びカバーシート46に形成された支持孔46Bに挿入される円柱状の支持柱52A,52Bが設けられている。また、ワイヤガイド52の径方向内側の面は、ハウジング44に取付けられたエネルギ吸収ワイヤ50の環状部50Aが当接するセット面52Cとされている。このセット面52Cは、ワイヤガイド52がハウジング44のワイヤガイド取付部44Eに取付けられた状態において、プリセット面44Gの延長上に配置されるようになっている。なお、セット面52Cの曲率とプリセット面44Gの曲率とは略同一の曲率となるように設定されている。また、ワイヤガイド52の径方向外側の面は、エネルギ吸収ワイヤ50の軸方向他方側の端部50Cと環状部50Aから変位された部位との間の部位をガイドするガイド面52Dとされている。また、このガイド面52Dの周方向の中間部には、窪み部52Eが形成されている。これにより、ガイド面52Dには、複数の湾曲部が形成されている。
レバー54は、ハウジング44に形成されたレバー支持部44H内に配置される軸部54Aと、軸部54Aからワイヤガイド52側に向けて延びる腕部54Bと、腕部54Bの先端に設けられた移動部54Cと、を有するブロック状に形成されている。具体的には、軸部54Aは、レバー支持部44Hの内周面の形状に対応する円柱状に形成されており、この軸部54Aがレバー支持部44H内に配置されることで、腕部54Bが傾動されるようになっている。また、腕部54Bが傾動されることで、当該腕部54Bの先端に設けられた移動部54Cがワイヤガイド52と近接する又は離間する方向へ移動するようになっている。移動部54Cは、ワイヤガイド52のガイド面52Dに形成された窪み部52Eと対向して配置されている。そして、移動部54Cがワイヤガイド52側へ向けて移動されることで、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間に挟持されると共にワイヤガイド52のガイド面52Dに沿った形状に変形されるようになっている。
カム56は、略円柱状に形成された軸部56Aと、軸部56Aの軸方向他端側に設けられていると共に回転されることでレバー54の移動部54Cを押圧するカム本体部56Bと、を備えている。図4に示されるように、カム本体部56Bは、一部が切欠かれた円柱状に形成されており、これによりカム本体部56Bの外周部には、大径部56Cと、この大径部よりも曲率半径が小さく設定された小径部56Dと、大径部56Cと小径部56Dとを繋ぐ接続部56Eと、が設けられている。そして、カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと近接して配置されており、またカム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置されるようになっている。
また、図5に示されるように、上記カム56は、カム回動機構58を介して減速して回転されるようになっている。具体的には、カム回動機構58は、トーションシャフト18の軸方向一方側の端部に取付けられることでスプール14と一体回転可能とされたプライマリギヤ60と、カム56の軸方向一方側の端部に取付けられたファイナルギヤ62と、プライマリギヤ60の回転をファイナルギヤ62に伝達する第1中間ギヤ64及び第2中間ギヤ66と、を含んで構成されている。そして、ウェビングがスプール14に全量巻取られた状態から所定の長さまで引出される際には、図7に示されるように、カム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している。これにより、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置される。また、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えて引出されると、図6に示されるように、カム本体部56Bの接続部56Eとレバー54の移動部54Cとが当接した後に、当該カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接するようになっている。これにより、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dに近接して配置されるようになっている。なお、本実施形態では、ウェビングが小柄な乗員に装着された際に、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えずに引出されると共に、ウェビングが大柄な乗員に装着された際に、ウェビングがスプール14から上記所定の長さを超えて引出されるように設定されている。なお、小柄な乗員とは、AF05のダミーと同体型とされた乗員であり、大柄な乗員とは、AM50ダミーと同体型とされた乗員である。また、図5に示されるように、本実施形態では、上記カム回動機構58を構成するプライマリギヤ60、ファイナルギヤ62、第1中間ギヤ64及び第2中間ギヤ66は、フレーム12の脚片12Cに取付けられるギヤケース68に形成されたギヤ収容凹部68A内に配置されており、このギヤ収容凹部68Aは、ギヤカバー70(図1参照)により閉止されている。
次に、本実施形態の要部である回転力伝達機構82について説明する。
図10及び図11に示されるように、回転力伝達機構82は、スプール14の回転力を前述の巻付リング48(図3参照)に伝達するものである。この回転力伝達機構82は、スプール14の軸方向一方側の端部に設けられたパウル格納部90と、パウル格納部90内に格納されたパウル92と、パウル格納部90の外周部に取付けられた規制部材及びパウル変位部材としてのトリガリング94と、を含んで構成されている。
図2に示されるように、パウル格納部90は、ウェビングが巻取られる巻取部14Aと隣合って設けられており、このパウル格納部90の外周面は、規制部材巻付部及びパウル変位部材巻付部としてのトリガリング取付部90Aとされている。また、トリガリング取付部90Aの軸方向一方側及び他方側には、径方向外側に向けて突出する一対のフランジ90Bが形成されており、このフランジ90Bのトリガリング取付部90Aに対する高さ(径方向への寸法)は後述するトリガリング94の厚みよりも高い寸法に設定されている。また、パウル格納部90には、径方向外側が開放されたパウル格納孔90Cが形成されており、このパウル格納孔90Cの径方向内側かつ周方向他方側の端部は、パウル92を傾動可能に支持する支持部90D(図13も参照)とされている。さらに、パウル格納部90の軸方向一方側の端部の外周部には、後述するトリガリング94の接続部94Hが周方向に移動可能に配置される接続部配置凹部90Eが形成されている。この接続部配置凹部90Eの周方向他方側の縁の一部は、接続部94Hが当接される被当接部90Fとされている。
図13に示されるように、パウル92は、スプール14のパウル格納部90に形成されたパウル格納孔90C内に配置されており、このパウル92の長手方向一方側の端部は、パウル格納孔90C内に設けられた支持部90Dに支持される被支持部92Aとされている。また、パウル92の長手方向他方側の端部には、周方向に沿って隣合って配置された2つの係合歯92Bが設けられている。なお、周方向他方側の係合歯92Bを主係合歯92B(G1)というものとし、周方向一方側に配置された係合歯92Bを補助係合歯92B(G2)というものとする。また、パウル92の長手方向の中間部における径方向外側の部位には、径方向外側に向けて凸状に形成された丘部92Cが形成されており、パウル92の長手方向の中間部における径方向内側の部位には、径方向内側に向けて凸状に形成された足部92Dが形成されている。さらに、パウル92における足部92Dと補助係合歯92B(G2)との間には、径方向内側が開放された窪み92Eが形成されている。なお、パウル92が支持部90D回りに矢印Y1方向に最も傾動された状態が、当該パウル92が格納位置K1に位置している状態というものとする。また、本実施形態では、パウル格納部90の深さ(パウル92が格納位置K1に位置している状態における当該パウル92の長手方向への深さ)が、パウル92の長手方向への寸法に比して浅く設定されている。これにより、パウル92が格納位置K1に位置している状態では、当該パウル92の主係合歯92B(G1)の歯先が、トリガリング取付部90Aよりも若干径方向外側に位置するようになっている。また、図17に示されるように、パウル92が支持部90D回りに矢印Y2方向に傾動されて当該パウル92の係合歯92Bが巻付リング48の係合歯部48Aに係合可能とされた状態が、当該パウル92が係合位置K2に位置している状態というものとする。さらに、パウル92が係合位置K2に位置している状態では、当該パウル92の主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)が、トリガリング取付部90Aよりも径方向外側に位置するようになっている。
図2及び図12に示されるように、トリガリング94は、鋼板等の金属板が所定の形状に打抜かれることにより形成された単一の板状部材に曲げ加工等が施されることにより形成されている。具体的には、トリガリング94は、環状に形成されていると共に径方向を厚み方向として延在する巻付部94Aを備えている。また、本実施形態では、巻付部94Aの周方向一方側の端94Bから他方側の端94Cまでの寸法(周方向の長さ)は、巻付リング48(図3参照)の内周長(軸方向視で係合歯部48Aの歯先を通る円の周長)よりも長く設定されている。これに加えて、本実施形態では、巻付部94Aの周方向一方側の端部94Dと周方向他方側の端部94Eとが重合わされており、この巻付部94Aの周方向他方側の端部94Eは、周方向一方側の端部94Dよりも径方向外側に配置されている。また、巻付部94Aがパウル格納部90のトリガリング取付部90Aに取付けられる前の状態における当該巻付部94Aの内径D1は、トリガリング取付部90Aの外径D2(図13参照)よりも小さくなるように設定されている。そして、巻付部94Aがトリガリング取付部90Aの外径D2に対応する内径に広げられることで当該巻付部94に生じるバネ力によって、当該巻付部94Aがトリガリング取付部90Aに巻付きついて保持されるようになっている。
また、図13に示されるように、巻付部94Aがトリガリング取付部90Aに巻付けられた状態で、且つスプール組立体80が組立てられた状態では、巻付部94Aの一部が、パウル92の主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)を径方向外側から覆うと共に主係合歯92B(G1)の歯先を径方向内側に向けて押圧するようになっている。なお、巻付部94Aにおいてパウル92の主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)を径方向外側から覆う部分を規制部94Fというものとする。また、この規制部94Fが主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)を覆う位置に配置されている状態を規制部94Fが規制位置B1に配置されている状態というものとする。さらに、図10、図11に示されるように、規制部94Fにおいて巻付リング48の複数の係合歯部48Aと径方向に対向して配置される端T1(軸方向他方側の端)が、周方向一方側に向かうにつれて軸方向一方側に傾斜(湾曲)されている。ここで、図13に示されるように、規制部94Fにおいて巻付リング48の複数の係合歯部48Aと径方向に対向して配置される上記傾斜(湾曲)された端T1の周方向への寸法は、巻付リング48の複数の係合歯部48Aのピッチを超える寸法に設定されている、すなわち、一の係合歯部48Aの歯先48Dと当該一の係合歯部48Aと周方向に隣合って配置された他の係合歯部48Aの歯先48Dとの周方向の間隔を超える寸法に設定されている。
さらに、スプール14がトリガリング94に対して周方向一方側に回転される(トリガリング94がスプール14に対して周方向他方側に変位される)と、図15〜図17に示されるように、規制部94Fが主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)を覆わない位置に配置される。なお、規制部94Fが主係合歯92B(G1)及び補助係合歯92B(G2)を覆わない位置に配置されている状態を規制部94Fが許容位置B2に配置されている状態というものとする。そして、規制部94Fが許容位置B2に配置されることで、パウル92が矢印Y2方向側に傾動されることが許容されるようになっている。
また、図2及び図12に示されるように、トリガリング94は、巻付部94Aの軸方向他方側の部位からパウル格納部90に形成されたパウル格納孔90C内に向けて(径方向内側に向けて)延出されていると共にパウル格納孔90C内に設けられたパウル92に対して周方向一方側に配置されるパウル当接部94Gを備えている。このパウル当接部94Gは、軸方向視で周方向他方側に向けて径方向内側に向けて傾斜されている。さらに、図17に示されるように、パウル当接部94Gは、パウル92が当接された際に当該パウル92とは反対側へ変形可能とされていると共に変形された状態からパウル92側へ復元可能とされている。
また、図2及び図12に示されるように、トリガリング94は、巻付部94Aの軸方向一方側の端から径方向内側に向けて延びる対向部及び当接部としての接続部94Hを備えており、この接続部94Hは、軸方向を厚み方向として延在している。また、接続部94Hは、軸方向視で略矩形状に形成された第1延在部E1と、第1延在部E1の径方向内側からに周方向他方側に向けて延びる第2延在部E2と、を含んで構成されている。そして、以上説明した接続部94Hが、パウル格納部90に形成された接続部配置凹部90E内に配置されることで、トリガリング94のスプールに対する変位量(回動角度)が制限されている。また、接続部94Hが、パウル格納部90に形成された接続部配置凹部90Eとベースロック30との間に配置されることで、当該接続部94Hの軸方向への移動が規制されるようになっている。
また、トリガリング94は、接続部94H(第2延在部E2)の周方向他方側の端部から軸方向一方側に向けて延びる係止部94Iを備えている。この係止部94Iは、ベースロック30に形成された被係止部としての円形の係止孔30Bに係止されるようになっている。なお、図13〜図17においては、係止孔30Bを二点鎖線で示している。また、図13に示されるように、スプール組立体80が組立てられた状態では、係止部94Iは係止孔30Bの中央部に当該係止孔30Bの縁に当接していない状態で配置されている。そして、スプール14がベースロック30(図2も参照)に対して引出方向へ回転されると、図14に示されるように、係止部94Iが係止孔30Bの縁に当接される。これにより、トリガリング94のベースロック30に対する周方向一方側への変位が規制される。そしてさらに、スプール14がベースロック30に対して引出方向へ回転されると、スプール14がトリガリング94に対して周方向一方側へ回転(変位)される(トリガリング94がスプール14に対して周方向他方側へ変位される)。これにより、図15に示されるように、トリガリング94の規制部94Fが規制位置B1から許容位置B2に配置されると共に、図16に示されるように、パウル92の補助係合歯92B(G2)がトリガリング94のパウル当接部94Gに当接された後に当該パウル当接部94Gに沿って移動される。その結果、図17に示されるように、パウル92が格納位置K1から係合位置K2に配置されて、パウル92の係合歯92Bが巻付リング48の係合歯部48Aに係合される。これにより、スプール14の回転力が巻付リング48に伝達されて、巻付リング48がスプール14と共に引出方向へ回転される。
また、トリガリング94の規制部94Fが許容位置B2に配置されると、トリガリング94の接続部94H(第1延在部E1)が接続部配置凹部90Eの被当接部90F(図2参照)に当接される。これにより、トリガリング94のスプール14に対する周方向他方側への変位が規制されるようになっている。そして、トリガリング94の接続部94H(第1延在部E1)が接続部配置凹部90Eの被当接部90Fに当接された状態で、スプール14がトリガリング94と共に引出方向へ回転されると、当該トリガリング94の係止部94Iが変形してベースロック30に設けられた係止孔30Bから外れるようになっている。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図1に示されるように、本実施形態では、図示しないウェビングがスプール14から引出されることで、ウェビングが車両の乗員の身体に装着される。
また、ウェビングが車両の乗員の身体に装着された状態で、車両が衝突することにより、ロック機構が作動すると、ベースロック30の引出方向への回転が阻止される。その結果、このベースロック30にトーションシャフト18を介して連結されたスプール14の引出方向への回転が制限されて、スプール14からのウェビングの引出しが制限される。したがって、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビングによって拘束される。
また、車両が衝突することにより、ガスジェネレータ42が作動されると、図示しないラックが移動されて、当該ラックと噛合うピニオンギヤ88が巻取方向へ回転される。これにより、スプール14が巻取方向へ回転される。その結果、ウェビングがスプール14に所定の長さだけ巻取られ、乗員に装着されたウェビングの弛みが取除かれると共にウェビングによる乗員の拘束力が増加される。
また、ベースロック30の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビングを引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がトーションシャフト18の捩れ部18A(図2参照)の耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、捩れ部18Aが捩れる(変形する)。すなわち、第1フォースリミッタ機構16が作動される。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(捩れ部18Aの耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。したがって、捩れ部18Aの捩れによりスプール14の引出方向への回転が許容されて、ウェビングのスプール14からの引出しが許容されることで、ウェビングによる乗員の胸部への負荷(負担)が軽減される。また捩れ部18Aの捩れ分だけウェビングの引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
ところで、図4及び図6に示されるように、ウェビングが大柄な乗員に装着されていることにより、カム本体部56Bの大径部56Cとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dに近接して配置される。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間に挟持されると共にワイヤガイド52のガイド面52Dに沿った略波線形状に変形される。
また、スプール14がベースロック30に対して引出方向へ回転され始めると、すなわち、トーションシャフト18が捩れ始めると、図11及び図17に示されるように、前述の回転力伝達機構82が作動されて、パウル92の係合歯92Bが巻付リング48の係合歯部48Aに係合される。これにより、スプール14と巻付リング48とが引出方向に一体に回転される。さらに、巻付リング48が回転されると、図6に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50が、移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されながら当該移動部54Cとワイヤガイド52との間から引出されて、図9に示されるように、エネルギ吸収ワイヤ50が、巻付リング48に巻取られる。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(トーションシャフト18の捩れ部18Aの耐捩れ荷重とエネルギ吸収ワイヤ50の扱き荷重との合計)以上での引出方向への回転が許容される。
したがって、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れると共にエネルギ吸収ワイヤ50が変形されながら移動部54Cとワイヤガイド52との間から引出されることで、ウェビングによる乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、トーションシャフト18の捩れ部18Aが捩れ変形された分及びエネルギ吸収ワイヤ50が変形された分のウェビングの引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
一方、図7に示されるように、ウェビングが小柄な乗員に装着されていることにより、カム本体部56Bの小径部56Dとレバー54の移動部54Cとが当接している状態では、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52のガイド面52Dと離間して配置される。これにより、エネルギ吸収ワイヤ50が移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されない、或いは、ほとんど変形されない状態となる。そのため、スプール14が巻付リング48と共に引出方向へ回転されると、エネルギ吸収ワイヤ50は移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形されない(或いはほとんど変形されない)で巻付リング48に巻取られる。これにより、スプール14のフォースリミッタ荷重(トーションシャフト18の捩れ部18Aの耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
以上説明したように、本実施形態では、ウェビングが大柄な乗員に装着されている場合では、フォースリミッタ荷重の荷重値が高荷重値にされる。一方、ウェビングが小柄な乗員に装着されている場合では、フォースリミッタ荷重の荷重値が低荷重値にされる。このため、乗員を体格に応じて適切に保護することができる。
ここで、本実施形態では、図2及び図13に示されるように、スプール14がベースロック30に対して回転される前の状態では、トリガリング94の規制部94Fがパウル92の傾倒を規制している。すなわち、スプール14がベースロック30に対して回転される前の状態では、パウル92が巻付リング48に係合されないようになっている。これにより、本実施形態では、スプール14の回転力が巻付リング48に不要に伝達されることを抑制することができる。
また、本実施形態では、トリガリング94の規制部94Fにおいて巻付リング48の複数の係合歯部48Aと径方向に対向して配置される傾斜(湾曲)された端T1の周方向への寸法が、巻付リング48の複数の係合歯部48Aのピッチを超える寸法に設定されている。これにより、スプール14がトリガリング94に対して引出方向へ回転されると、上記傾斜(湾曲)された端T1が係合歯部48A設けられた2つの歯先48D上を横切る。これにより、トリガリング94の規制部94Fの端T1が、巻付リング48の複数の係合歯部48Aに不用意に係合されることを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、スプール14がベースロック30に対して回転される前の状態では、パウル92の主係合歯92B(G1)の歯先が、トリガリング取付部90Aよりも若干径方向外側に位置することで、トリガリング94の規制部94Fがパウル92の主係合歯92B(G1)の歯先を径方向内側に向けて押圧している。これにより、ウェビングがスプール14から引出される際に、或いは、ウェビングがスプール14に巻取られる際に、スプール14と共に回転されるパウル92がパウル格納孔90C内で振動することを抑制することができる。
また、本実施形態では、トリガリング94の係止部94Iがベースロック30の被係止孔30Bに係止されることで、トリガリング94のベースロック30に対する周方向への変位が規制される。これにより、トリガリング94の規制部94Fを規制位置B1から許容位置B2に配置させる機構を別途設けなくても、スプール14がベースロック30に対して引出方向へ回転されることでトリガリング94の規制部94Fを規制位置B1から許容位置B2に配置させることができると共に、パウル92を係合位置K2に傾動させることができる。
さらに、本実施形態では、トリガリング94の接続部94Hが、パウル格納部90に形成された接続部配置凹部90Eとベースロック30との間に配置されることで、当該接続部94Hの軸方向への移動が規制される。この接続部94Hから係止部94Iをベースロック30側へ向けて延出するように形成することにより、トリガリング94の係止部94Iがベースロック30の係合孔30Bから不要に外れることを抑制することができる。
また、本実施形態では、トリガリング94の接続部94H(第1延在部E1)が接続部配置凹部90Eの被当接部90Fに当接された状態で、スプール14がトリガリング94と共に引出方向へ回転されると、当該トリガリング94の係止部94Iが変形してベースロック30に設けられた係止孔30Bから外れる。これにより、スプール14のベースロック30に対する引出方向への回転がトリガリング94を介して制限されることを抑制することができる。すなわち、ウェビングのスプール14からの引出荷重が意図しない荷重となることを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、トリガリング94の巻付部94Aがスプール14のトリガリング取付部90Aに取付けられていると共に、トリガリング94の巻付部94Aが径方向を厚み方向とする板状に形成されている。これにより、トリガリング94の巻付部94Aがスプール14のトリガリング取付部90Aに対して回転径方向外側へ突出することを抑制することができる。これにより、ウェビング巻取装置10の体格の大型化を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、トリガリング94の巻付部94Aがパウル格納部90のトリガリング取付部90Aに取付けられる前の状態における当該巻付部94Aの内径D1は、トリガリング取付部90Aの外径D2よりも小さくなるように設定されている。これにより、トリガリング94の巻付部94Aを拡径させてトリガリング取付部9に取付けることで、巻付部94Aがトリガリング取付部90Aにバネ力によって巻付けられる。これにより、取付け作業が容易にできると共に、バネ力で安定して保持される。
また、本実施形態では、トリガリング94の巻付部94Aの周方向一方側の端部94Dと周方向他方側の端部94Eとが重合わされており、この巻付部94Aの周方向他方側の端部94Eは、周方向一方側の端部94Dよりも径方向外側に配置されている。そのため、スプール14が引出方向へ回転されている際に、トリガリング94の巻付部94Aが拡径されたとしても、トリガリング94の巻付部94Aの引出方向側の端部(周方向一方側の端部94D)が巻付リング48の係合歯部48Aに引掛かることを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、トリガリング94の巻付部94Aが、巻付リング48に対してスプール14の径方向内側に配置されていることに加えて、巻付部94Aの周方向一方側の端94Bから他方側の端94Cまでの寸法(周方向の長さ)が、巻付リング48の内周長(軸方向視で係合歯部48Aの歯先を通る円の周長)よりも長く設定されている。そのため、スプール14が引出方向へ回転されている際に、トリガリング94の巻付部94Aが拡径されたとしても、トリガリング94の巻付部94Aの引出方向側の端部(周方向一方側の端部94D)が巻付部94Aの外周に露出されて巻付リング48の係合歯部48Aに引掛かることを防止することができる。これにより、スプール14の回転力がトリガリング94を介して巻付リング48に伝達されることを防止することができる。
また、本実施形態では、図15〜図17に示されるように、パウル92が係合位置K2側に向けて変位される過程で、当該パウル92が係合位置K2とは反対側に向けて押戻されると、トリガリング94のパウル当接部94Gがパウル92とは反対側に向けて変形される。ここで、パウル92とは反対側へ変形されたパウル当接部94Gはパウル92側に向けて復元可能となっている。これにより、係合位置K2とは反対側に向けて押戻されたパウル92を係合位置K2側に向けて付勢することができる。
さらに、本実施形態では、パウル92がトリガリング94の巻付部94Aの径方向内側に配置されていると共に、パウル92が当接されるパウル当接部94Gが巻付部94Aの径方向内側に向けて延出されている。これにより、スプール14の回転力を巻付リング48に伝達させる回転力伝達機構82が、スプール14の回転径方向に大型化することを抑制することができる。
(第2形態に係る回転力伝達機構)
次に、図18を用いて第2形態に係る回転力伝達機構82について説明する。なお、上記実施形態と対応する部材及び部分には上記実施形態と同一の符号を付して、当該部材及び部分についての説明を省略することがある。
図18(A)〜(E)に示されるように、本実施形態での回転力伝達機構82では、トリガリング94の巻付部94Aにおいてパウル当接部94G及び規制部94Fが設けられていない部分の幅W1が、巻付部94Aにおいてパウル当接部94G及び規制部94Fが設けられた部分の幅W2に比して狭く設定されている。当該構成とすることにより、トリガリング94の巻付部94Aを拡径させるのに要する力を低減することができる。その結果、本形態では、トリガリング94の巻付部94Aをパウル格納部90のトリガリング取付部90Aに取付ける際の作業性を良好にすることができる。
(第3形態に係る回転力伝達機構)
次に、図19〜図21を用いて第3形態に係る回転力伝達機構82について説明する。なお、上記実施形態等と対応する部材及び部分には上記実施形態等と同一の符号を付して、当該部材及び部分についての説明を省略することがある。
図19に示されるように、本形態の回転力伝達機構82では、トリガリング94の巻付部94Aの周方向一方側の端部94Dに略L字状に形成された規制部94Fが設けられていると共に、巻付部94Aの周方向他方側の端部94Eにパウル当接部94Gが設けられている。また、本形態では、トリガリング94の規制部94Fの軸方向一方側の端部T2が配置される規制部配置溝90Gがパウル格納孔90Cと一体に形成されている。そして、図20に示されるように、トリガリング94の規制部94Fが、パウル92の径方向外側の面(丘部92C(図13参照)が形成された面)に当接されることで、パウル92の傾動が規制されるようになっている。
また、スプール14がトリガリング94に対して引出方向へ回転されると、図21に示されるように、トリガリング94の規制部94Fにおいて規制部配置溝90Gに係止されている部分(軸方向一方側の端部T2)が変形されると共にパウル92の径方向外側の面と当接されない状態となる(トリガリング94の規制部94Fが許容位置B2に配置される)。そして、パウル92がトリガリング94のパウル当接部94Gに沿って傾動されることで、当該パウル92を巻付リング48(図3参照)に係合させることができる。
なお、上記実施形態等においては、回転力伝達機構82が作動されることで、スプール14の回転力が巻付リング48に伝達されるように構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプール14がベースロック30に対して所定の回転数だけ回転された際に回転力伝達機構82が作動されることで、スプール14の回転力がフレーム12に伝達されるように構成することもできる。当該構成では、スプール14がベースロック30に対して所定の回転数だけ回転された際に、パウル92がフレーム12に係合される。これにより、スプール14の引出方向への回転を制限することができる。
さらに、上記実施形態等においては、単一の板状部材を用いてトリガリング94を形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、トリガリング94が針金状の部材を用いて形成されていてもよい。
また、図5〜図7に示されるように、上記実施形態等においては、カム回動機構58を設けることにより、エネルギ吸収ワイヤ50をレバー54の移動部54Cとワイヤガイド52との間で変形させるか否かが切替えられるように構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウェビングが大柄な乗員に装着されている場合に作動されるアクチュエータを設け、当該アクチュエータが作動されることで、レバー54の移動部54Cがワイヤガイド52側に向けて移動するように構成することもできる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。